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特許7415330電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/05 20060101AFI20240110BHJP
   G03G 5/04 20060101ALI20240110BHJP
   G03G 5/06 20060101ALI20240110BHJP
   G03G 5/147 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G03G5/05 101
G03G5/04
G03G5/06 314A
G03G5/06 319
G03G5/06 313
G03G5/06 312
G03G5/147
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019081923
(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公開番号】P2020181009
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】北山 航
(72)【発明者】
【氏名】大路 喜一郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 智文
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/017336(WO,A1)
【文献】特開2018-004701(JP,A)
【文献】特開2006-053549(JP,A)
【文献】特開2006-119217(JP,A)
【文献】特開2008-293006(JP,A)
【文献】特開2017-053982(JP,A)
【文献】特開2016-218396(JP,A)
【文献】特開2017-194624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/00-5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と、感光層とを備え、
前記感光層は、単層であり、
前記感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、ポリアリレート樹脂とを含有し、
前記ポリアリレート樹脂は、化学式(1-1)で表される繰り返し単位と、化学式(2)で表される繰り返し単位と、化学式(3)で表される繰り返し単位とを少なくとも含み、前記化学式(2)で表される繰り返し単位の数n2に対する、前記化学式(1-1)で表される繰り返し単位の数n1の比率n1/n2は、2.0以上5.0以下であり、
前記電子輸送剤は、化学式(11-E3)で表される化合物を含み、
前記正孔輸送剤は、化学式(23-H1)又は化学式(23-H3)で表される化合物である、電子写真感光体。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【請求項2】
前記ポリアリレート樹脂は、化学式(4)で表される繰り返し単位を更に含む、請求項に記載の電子写真感光体。
【化6】
【請求項3】
前記感光層は、最表面層として備えられる、請求項1又は2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の電子写真感光体を備える、プロセスカートリッジ。
【請求項5】
像担持体と、
前記像担持体の表面を帯電する帯電装置と、
帯電された前記像担持体の前記表面を露光して、前記像担持体の前記表面に静電潜像を形成する露光装置と、
前記静電潜像をトナー像として現像する現像装置と、
前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写する転写装置と
を備え、
前記像担持体が、請求項1~3の何れか一項に記載の電子写真感光体である、画像形成装置。
【請求項6】
前記被転写体は、記録媒体であり、
前記像担持体の前記表面に前記記録媒体が接触しながら、前記転写装置が前記トナー像を前記像担持体から前記記録媒体へ転写する、請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記像担持体の前記表面に前記現像装置が接触しながら、前記現像装置が前記静電潜像を前記トナー像として現像する、請求項5又は6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記帯電装置は、帯電ローラーである、請求項5~7の何れか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真感光体は、像担持体として電子写真方式の画像形成装置(例えば、プリンター又は複合機)において用いられる。電子写真感光体は、感光層を備える。電子写真感光体としては、例えば、単層型電子写真感光体及び積層型電子写真感光体が用いられる。単層型電子写真感光体は、電荷発生の機能と、電荷輸送の機能とを有する単層の感光層を備える。積層型電子写真感光体は、電荷発生の機能を有する電荷発生層と、電荷輸送の機能を有する電荷輸送層とを含む感光層を備える。
【0003】
特許文献1には、感光層を有する電子写真感光体が記載されている。この感光層のバインダー樹脂は、下記化学式で表される構造を含むポリアリレート樹脂である。
【0004】
【化1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-322982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、本発明者らの検討により、特許文献1に記載の像形成部材は、耐摩耗性の点で不十分であることが判明した。
【0007】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐摩耗性に優れる電子写真感光体を提供することである。また、本発明の別の目的は、このような電子写真感光体を備えることで、耐久性に優れるプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子写真感光体は、導電性基体と、感光層とを備える。前記感光層は、単層である。前記感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、ポリアリレート樹脂とを含有する。前記ポリアリレート樹脂は、一般式(1)で表される繰り返し単位と、化学式(2)で表される繰り返し単位と、化学式(3)で表される繰り返し単位とを少なくとも含み、前記化学式(2)で表される繰り返し単位の数n2に対する、前記一般式(1)で表される繰り返し単位の数n1の比率n1/n2は、1.0以上である。前記電子輸送剤は、一般式(10)、(11)、又は(12)で表される化合物を含む。
【0009】
【化2】
【0010】
前記一般式(1)中、R1及びR2は各々独立に水素原子又はメチル基を表し、R3はメチル基を表し、R4は水素原子、又は炭素原子数2若しくは3のアルキル基を表す。或いは、R1及びR2は各々メチル基を表し、R3及びR4は互いに結合して炭素原子数5又は6のシクロアルキリデン基を表す。
【0011】
【化3】
【0012】
前記一般式(10)中、Q5A及びQ5Bは、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。Q6A及びQ6Bは、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。m1及びm2は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。前記一般式(11)中、Q7及びQ8は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。Q9は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。m3は、0以上4以下の整数を表す。前記一般式(12)中、Q10及びQ11は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は水素原子を表す。Q12は、ハロゲン原子又は水素原子を表す。
【0013】
本発明のプロセスカートリッジは、上述した電子写真感光体を備える。
【0014】
本発明の画像形成装置は、像担持体と、帯電装置と、露光装置と、現像装置と、転写装置とを備える。前記帯電装置は、前記像担持体の表面を帯電する。前記露光装置は、帯電された前記像担持体の前記表面を露光して、前記像担持体の前記表面に静電潜像を形成する。前記現像装置は、前記静電潜像をトナー像として現像する。前記転写装置は、前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写する。前記像担持体が、上述した電子写真感光体である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電子写真感光体は、耐摩耗性に優れる。また、本発明のプロセスカートリッジ及び画像形成装置は、耐摩耗性に優れる電子写真感光体を備えるため、耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る電子写真感光体の部分断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る電子写真感光体の部分断面図である。
図3】本発明の実施形態に係る電子写真感光体の部分断面図である。
図4】画像形成装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰り返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
【0018】
まず、本明細書で用いられる置換基について説明する。ハロゲン原子(ハロゲン基)としては、例えば、フッ素原子(フルオロ基)、塩素原子(クロロ基)、臭素原子(ブロモ基)、及びヨウ素原子(ヨード基)が挙げられる。
【0019】
炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、炭素原子数2のアルキル基、及び炭素原子数3のアルキル基は、各々、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、1-メチルブチル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、2-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,2,2-トリメチルプロピル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基及び3-エチルブチル基、直鎖状及び分枝鎖状のヘプチル基、並びに直鎖状及び分枝鎖状のオクチル基が挙げられる。炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上3以下のアルキル基、炭素原子数2のアルキル基、及び炭素原子数3のアルキル基の例は、各々、炭素原子数1以上8以下のアルキル基の例として述べた基のうち、該当する炭素原子数を有する基である。
【0020】
炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、及び炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基は、各々、特記なき限り、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペントキシ基、1-メチルブトキシ基、2-メチルブトキシ基、3-メチルブトキシ基、1-エチルプロポキシ基、2-エチルプロポキシ基、1,1-ジメチルプロポキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、2,2-ジメチルプロポキシ基、1,2-ジメチルプロポキシ基、n-ヘキシルオキシ基、1-メチルペンチルオキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、3-メチルペンチルオキシ基、4-メチルペンチルオキシ基、1,1-ジメチルブトキシ基、1,2-ジメチルブトキシ基、1,3-ジメチルブトキシ基、2,2-ジメチルブトキシ基、2,3-ジメチルブトキシ基、3,3-ジメチルブトキシ基、1,1,2-トリメチルプロポキシ基、1,2,2-トリメチルプロポキシ基、1-エチルブトキシ基、2-エチルブトキシ基、3-エチルブトキシ基、直鎖状及び分枝鎖状のヘプチルオキシ基、並びに直鎖状及び分枝鎖状のオクチルオキシ基が挙げられる。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、及び炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基の例は、各々、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基の例として述べた基のうち、該当する炭素原子数を有する基である。以上、本明細書で用いられる置換基について説明した。
【0021】
<電子写真感光体>
本実施形態は、電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある)に関する。以下、図1図3を参照して、本実施形態の感光体1について説明する。図1図3は、各々、感光体1の部分断面図を示す。
【0022】
図1に示すように、感光体1は、例えば、導電性基体2と、感光層3とを備える。感光層3は、単層である。感光体1は、単層の感光層3を備える単層型電子写真感光体である。
【0023】
図2に示すように、感光体1は、導電性基体2と、感光層3と、中間層4(下引き層)とを備えてもよい。中間層4は、導電性基体2と感光層3との間に設けられる。図1に示すように、感光層3は導電性基体2上に直接備えられてもよい。或いは、図2に示すように、感光層3は導電性基体2上に中間層4を介して備えられてもよい。
【0024】
図3に示すように、感光体1は、導電性基体2と、感光層3と、保護層5とを備えてもよい。保護層5は、感光層3上に設けられる。図1及び図2に示すように、感光層3が、感光体1の最表面層として備えられることが好ましい。後述するポリアリレート樹脂(PA)と後述する特定の電子輸送剤とを含有する感光層3が最表面層として備えられることで、感光体1の耐摩耗性を向上させ易い。なお、図3に示すように、保護層5が、感光体1の最表面層として備えられてもよい。
【0025】
感光層3は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、ポリアリレート樹脂とを少なくとも含有する。
【0026】
感光層3の厚さは、特に限定されないが、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。以上、図1図3を参照して、感光体1について説明した。
【0027】
(電荷発生剤)
電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン-テルル、セレン-ヒ素、硫化カドミウム、及びアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、及びキナクリドン系顔料が挙げられる。感光層は、電荷発生剤の1種のみを含有してもよく、2種以上を含有してもよい。
【0028】
フタロシアニン系顔料は、フタロシアニン構造を有する顔料である。フタロシアニン系顔料としては、例えば、無金属フタロシアニン、及び金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、チタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、及びクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。無金属フタロシアニンは、化学式(CGM-1)で表される。チタニルフタロシアニンは、化学式(CGM-2)で表される。
【0029】
【化4】
【0030】
【化5】
【0031】
フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、X型無金属フタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型、及びY型結晶(以下、それぞれをα型、β型、及びY型チタニルフタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。
【0032】
例えば、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。700nm以上の波長領域で高い量子収率を有することから、電荷発生剤としては、フタロシアニン系顔料が好ましく、無金属フタロシアニン又はチタニルフタロシアニンがより好ましく、チタニルフタロシアニンが更に好ましく、Y型チタニルフタロシアニンが特に好ましい。
【0033】
Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、例えば、ブラッグ角(2θ±0.2°)の27.2°に主ピークを有する。CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークとは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークである。Y型チタニルフタロシアニンは、CuKα特性X線回折スペクトルにおいて、26.2℃にピークを有していない。
【0034】
CuKα特性X線回折スペクトルは、例えば、次の方法によって測定できる。まず、試料(チタニルフタロシアニン)をX線回折装置(例えば、株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、例えば3°以上40°以下(スタート角3°、ストップ角40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。得られたX線回折スペクトルから主ピークを決定し、主ピークのブラッグ角を読み取る。
【0035】
電荷発生剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上4.5質量部以下であることがより好ましい。
【0036】
(バインダー樹脂)
感光層は、バインダー樹脂として、ポリアリレート樹脂を含有する。ポリアリレート樹脂は、一般式(1)で表される繰り返し単位と、化学式(2)で表される繰り返し単位と、化学式(3)で表される繰り返し単位とを少なくとも含む。化学式(2)で表される繰り返し単位の数n2に対する、一般式(1)で表される繰り返し単位の数n1の比率n1/n2は、1.0以上である。
【0037】
【化6】
【0038】
一般式(1)中、R1及びR2は各々独立に水素原子又はメチル基を表し、且つR3はメチル基を表し、且つR4は水素原子又は炭素原子数2若しくは3のアルキル基を表す。或いは、一般式(1)中、R1及びR2は各々メチル基を表し、且つR3及びR4は互いに結合して炭素原子数5又は6のシクロアルキリデン基を表す。
【0039】
以下、一般式(1)で表される繰り返し単位、化学式(2)で表される繰り返し単位、及び化学式(3)で表される繰り返し単位を、各々、繰り返し単位(1)、繰り返し単位(2)、及び繰り返し単位(3)と記載することがある。また、繰り返し単位(1)と繰り返し単位(2)と繰り返し単位(3)とを少なくとも含み、繰り返し単位(2)の数n2に対する繰り返し単位(1)の数n1の比率n1/n2が1.0以上であるポリアリレート樹脂を、ポリアリレート樹脂(PA)と記載することがある。
【0040】
ポリアリレート樹脂(PA)は、感光層に含有された場合に、感光体の耐摩耗性を向上させることができる。その理由は、以下のように推測される。
【0041】
第1に、ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位(2)及び繰り返し単位(3)を含んでいる。これにより、感光体の耐摩耗性を向上させることができる。
【0042】
第2に、ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位(1)を含んでいる。これにより、感光層形成用の溶剤に対するポリアリレート樹脂(PA)の溶解性を向上させることができる。更に、繰り返し単位(2)の数n2に対する繰り返し単位(1)の数n1の比率n1/n2が1.0以上であることで、感光層形成用の溶剤に対するポリアリレート樹脂(PA)の溶解性を更に向上させることができる。ポリアリレート樹脂(PA)の溶解性が向上することで感光層を好適に形成することができ、感光体の耐摩耗性を向上させることができる。
【0043】
ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位(1)、(2)及び(3)に加えて、化学式(4)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位(4)と記載することがある)を更に含むことが好ましい。ポリアリレート樹脂(PA)が繰り返し単位(4)を含むことで、感光体の耐摩耗性を更に向上させることができる。
【0044】
【化7】
【0045】
次に、一般式(1)について、詳細に説明する。一般式(1)中のR4が表わす炭素原子数2若しくは3のアルキル基としては、エチル基、n-プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。炭素原子数2若しくは3のアルキル基としては、エチル基又はイソプロピル基が好ましい。
【0046】
一般式(1)中のR3及びR4が互いに結合して表す炭素原子数5又は6のシクロアルキリデン(cycloalkylidene)基としては、シクロペンチリデン基及びシクロヘキシリデン基が挙げられる。シクロペンチリデン基及びシクロヘキシリデン基は、各々、下記化学式(5)及び(6)で表される二価の基である。炭素原子数5又は6のシクロアルキリデン基としては、シクロヘキシリデン基が好ましい。
【0047】
【化8】
【0048】
繰り返し単位(1)の好適な例としては、化学式(1-1)、(1-2)、(1-3)、(1-4)、及び(1-5)で表される繰り返し単位が挙げられる。以下、化学式(1-1)、(1-2)、(1-3)、(1-4)、及び(1-5)で表される繰り返し単位を、各々、繰り返し単位(1-1)、(1-2)、(1-3)、(1-4)、及び(1-5)と記載することがある。
【0049】
【化9】
【0050】
感光体の耐摩耗性を向上させるために、ポリアリレート樹脂(PA)が、繰り返し単位(1)、(2)、及び(3)に加えて、繰り返し単位(4)を更に含み、繰り返し単位(1)が繰り返し単位(1-1)であることが好ましい。
【0051】
ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位(1)の1種のみを含んでいてもよい。或いは、ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位(1)の2種以上を含んでいてもよい。
【0052】
ポリアリレート樹脂(PA)に含まれる繰り返し単位(2)の数n2に対する、ポリアリレート樹脂(PA)に含まれる繰り返し単位(1)の数n1の比率n1/n2は、1.0以上である。即ち、繰り返し単位(1)の数n1は、繰り返し単位(2)の数n2と等しいか、繰り返し単位(2)の数n2よりも多い。比率n1/n2が1.0以上であると、感光層形成用の溶剤に対するポリアリレート樹脂(PA)の溶解性を向上させることができ、感光体の耐摩耗性を向上させることができる。感光体の耐摩耗性を向上させるためには、比率n1/n2は、10.0以下であることが好ましく、5.0以下であることがより好ましい。感光層形成用の溶剤に対するポリアリレート樹脂(PA)の溶解性を向上させつつ、感光体の耐摩耗性を向上させるためには、比率n1/n2は、1.0、2.0、3.0、5.0及び10.0から選ばれる2つの値の範囲内であることも好ましい。比率n1/n2は、例えば、1.0以上2.0未満、又は2.0以上5.0以下であってもよい。比率n1/n2は、例えば、1.0又は3.0であってもよい。
【0053】
ポリアリレート樹脂(PA)が繰り返し単位(4)を含む場合、ポリアリレート樹脂(PA)に含まれる繰り返し単位(3)の数n3に対する、ポリアリレート樹脂(PA)に含まれる繰り返し単位(4)の数n4の比率n4/n3は、0.0より大きいことが好ましく、0.1以上であることがより好ましく、0.5以上であることが更に好ましい。比率n4/n3は、5.0以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、1.5以下であることが更に好ましい。比率n1/n2は、0.1、0.5、1.0、1.5、3.0及び5.0から選ばれる2つの値の範囲内であることも好ましい。比率n4/n3は、例えば、1.0であってもよい。
【0054】
比率n1/n2は、ポリアリレート樹脂(PA)を製造する際に添加する化合物(BP-1)の量と化合物(BP-2)の量とを変更することにより、調整することができる。また、比率n4/n3は、ポリアリレート樹脂(PA)を製造する際に添加する化合物(DC-3)の量と化合物(DC-4)の量とを変更することにより、調整することができる。なお、化合物(BP-1)、化合物(BP-2)、化合物(DC-3)及び化合物(DC-4)については後述する。
【0055】
比率n1/n2及び比率n4/n3は、各々、感光層に含有されるポリアリレート樹脂(PA)の全体(複数の分子鎖)から得られる値の平均値である。比率n1/n2及び比率n4/n3は、各々、プロトン核磁気共鳴分光計を用いてポリアリレート樹脂(PA)の1H-NMRスペクトルを測定し、得られた1H-NMRスペクトルにおける各繰り返し単位に特徴的なピークの比率を算出することにより、得ることができる。
【0056】
ポリアリレート樹脂(PA)の具体的な例としては、以下のポリアリレート樹脂が挙げられる。
繰り返し単位(1-1)、(2)及び(3)を含み、繰り返し単位(4)を含まず、比率n1/n2が2.0以上5.0以下であるポリアリレート樹脂(ポリアリレート樹脂(I)と記載することがある);
繰り返し単位(1-5)、(2)及び(3)を含み、比率n1/n2が2.0以上5.0以下であるポリアリレート樹脂(ポリアリレート樹脂(II)と記載することがある);
繰り返し単位(1-1)、(2)、(3)及び(4)を含み、比率n1/n2が2.0以上5.0以下であるポリアリレート樹脂(ポリアリレート樹脂(III)と記載することがある);
繰り返し単位(1-2)、(2)及び(3)を含み、比率n1/n2が2.0以上5.0以下であるポリアリレート樹脂(ポリアリレート樹脂(IV)と記載することがある);
繰り返し単位(1-3)、(2)及び(3)を含み、比率n1/n2が2.0以上5.0以下であるポリアリレート樹脂(ポリアリレート樹脂(V)と記載することがある);
繰り返し単位(1-4)、(2)及び(3)を含み、比率n1/n2が2.0以上5.0以下であるポリアリレート樹脂(ポリアリレート樹脂(VI)と記載することがある);及び
繰り返し単位(1-1)、(2)及び(3)を含み、繰り返し単位(4)を含まず、比率n1/n2が1.0以上2.0未満であるポリアリレート樹脂(ポリアリレート樹脂(VII)と記載することがある)。
【0057】
ポリアリレート樹脂(PA)のより具体的な例としては、以下のポリアリレート樹脂が挙げられる。
繰り返し単位として、繰り返し単位(1-1)、(2)及び(3)のみを含み、比率n1/n2が2.0以上5.0以下であるポリアリレート樹脂(ポリアリレート樹脂(i)と記載することがある);
繰り返し単位として、繰り返し単位(1-5)、(2)及び(3)のみを含み、比率n1/n2が2.0以上5.0以下であるポリアリレート樹脂(ポリアリレート樹脂(ii)と記載することがある);
繰り返し単位として、繰り返し単位(1-1)、(2)、(3)及び(4)のみを含み、比率n1/n2が2.0以上5.0以下であるポリアリレート樹脂(ポリアリレート樹脂(iii)と記載することがある);
繰り返し単位として、繰り返し単位(1-2)、(2)及び(3)のみを含み、比率n1/n2が2.0以上5.0以下であるポリアリレート樹脂(ポリアリレート樹脂(iv)と記載することがある);
繰り返し単位として、繰り返し単位(1-3)、(2)及び(3)のみを含み、比率n1/n2が2.0以上5.0以下であるポリアリレート樹脂(ポリアリレート樹脂(v)と記載することがある);
繰り返し単位として、繰り返し単位(1-4)、(2)及び(3)のみを含み、比率n1/n2が2.0以上5.0以下であるポリアリレート樹脂(ポリアリレート樹脂(vi)と記載することがある);及び
繰り返し単位として、繰り返し単位(1-1)、(2)及び(3)のみを含み、比率n1/n2が1.0以上2.0未満であるポリアリレート樹脂(ポリアリレート樹脂(vii)と記載することがある)。
【0058】
ポリアリレート樹脂(PA)の更に具体的な例としては、化学式(R-1)~(R-7)で表されるポリアリレート樹脂(以下、それぞれをポリアリレート樹脂(R-1)~(R-7)と記載する)が挙げられる。なお、化学式(R-1)~(R-7)中、各繰り返し単位の右下に付された数字は、ポリアリレート樹脂に含まれる繰り返し単位の総数に対する、各繰り返し単位の数の百分率(%)を示す。繰り返し単位の総数は、ビスフェノール由来繰り返し単位の数と、ジカルボン酸由来繰り返し単位の数との合計である。また、記載の便宜上、化学式(R-1)、(R-2)及び(R-4)~(R-7)の各々においては、繰り返し単位(3)を2つ記載している。しかし、ポリアリレート樹脂(R-1)、(R-2)及び(R-4)~(R-7)の各々に含まれる繰り返し単位の総数に対する、繰り返し単位(3)の数の百分率は、50.0%(2つの繰り返し単位(3)の右下に付された数字の合計)である。
【0059】
【化10】
【0060】
【化11】
【0061】
【化12】
【0062】
感光体の耐摩耗性を向上させるためには、繰り返し単位(1)としては、繰り返し単位(1-5)が好ましい。繰り返し単位(1)が繰り返し単位(1-5)であるポリアリレート樹脂(PA)としては、ポリアリレート樹脂(II)が好ましく、ポリアリレート樹脂(ii)がより好ましく、ポリアリレート樹脂(R-2)が更に好ましい。
【0063】
感光体の耐摩耗性を向上させるためには、繰り返し単位(1)としては、繰り返し単位(1-1)も好ましい。繰り返し単位(1)が繰り返し単位(1-1)であるポリアリレート樹脂(PA)としては、ポリアリレート樹脂(I)及び(III)が好ましく、ポリアリレート樹脂(i)及び(iii)がより好ましく、ポリアリレート樹脂(R-1)及び(R-3)が更に好ましい。
【0064】
感光体の耐摩耗性を更に向上させるためには、繰り返し単位(1)が繰り返し単位(1-1)であり、繰り返し単位(4)が更に含まれることが好ましい。繰り返し単位(1)が繰り返し単位(1-1)であり繰り返し単位(4)を更に含むポリアリレート樹脂(PA)としては、ポリアリレート樹脂(III)が好ましく、ポリアリレート樹脂(iii)がより好ましく、ポリアリレート樹脂(R-3)が更に好ましい。
【0065】
ポリアリレート樹脂(PA)において、ビスフェノール由来繰り返し単位と、ジカルボン酸由来繰り返し単位とは、隣接して互いに結合している。ポリアリレート樹脂(PA)に含まれるビスフェノール由来繰り返し単位の数は、ジカルボン酸由来繰り返し単位の数と等しい。ビスフェノール由来繰り返し単位は、例えば、繰り返し単位(1)及び(2)である。また、ジカルボン酸由来繰り返し単位は、例えば、繰り返し単位(3)である。ポリアリレート樹脂(PA)が繰り返し単位(4)を含む場合には、ジカルボン酸由来繰り返し単位は、例えば、繰り返し単位(3)及び(4)である。
【0066】
ポリアリレート樹脂(PA)は、例えば、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体又はブロック共重合体であってもよい。ポリアリレート樹脂(PA)において、繰り返し単位の配列は、ビスフェノール由来繰り返し単位とジカルボン酸由来繰り返し単位とが隣接して互いに結合している限り、特に限定されない。例えば、繰り返し単位(3)の両端に繰り返し単位(1)が結合していてもよい。或いは、繰り返し単位(3)の両端に繰り返し単位(2)が結合していてもよい。或いは、繰り返し単位(3)の一方端に繰り返し単位(1)が結合し、繰り返し単位(3)の他方端に繰り返し単位(2)が結合していてもよい。
【0067】
ポリアリレート樹脂(PA)が繰り返し単位(4)を含まない場合、ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(1)、(2)及び(3)のみを含んでいてもよい。ポリアリレート樹脂(PA)が繰り返し単位(4)を含まない場合、ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(1)、(2)及び(3)に加えて、繰り返し単位(1)、(2)、(3)及び(4)以外の繰り返し単位を更に含んでいてもよい。
【0068】
ポリアリレート樹脂(PA)が繰り返し単位(4)を含む場合、ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(1)、(2)、(3)及び(4)のみを含んでいてもよい。ポリアリレート樹脂(PA)が繰り返し単位(4)を含む場合、ポリアリレート樹脂(PA)は、繰り返し単位として、繰り返し単位(1)、(2)、(3)及び(4)に加えて、繰り返し単位(1)、(2)、(3)及び(4)以外の繰り返し単位を更に含んでいてもよい。
【0069】
ポリアリレート樹脂(PA)の粘度平均分子量は、10,000以上であることが好ましく、20,000以上であることがより好ましく、30,000以上であることが更に好ましく、40,000以上であることが特に好ましい。ポリアリレート樹脂(PA)の粘度平均分子量が10,000以上であると、感光体の耐摩耗性を向上させることができる。一方、ポリアリレート樹脂(PA)の粘度平均分子量は、80,000以下であることが好ましく、70,000以下であることがより好ましい。ポリアリレート樹脂(PA)の粘度平均分子量が80,000以下であると、ポリアリレート樹脂(PA)が感光層形成用の溶剤に溶解し易くなる。
【0070】
ポリアリレート樹脂(PA)の製造方法は、特に限定されない。ポリアリレート樹脂(PA)の製造方法として、例えば、ビスフェノール由来繰り返し単位を構成するためのビスフェノールと、ジカルボン酸由来繰り返し単位を構成するためのジカルボン酸とを縮重合させる方法が挙げられる。縮重合させるためには、公知の合成方法(例えば、溶液重合、溶融重合又は界面重合)を採用することができる。
【0071】
ビスフェノール由来繰り返し単位を構成するためのビスフェノールとしては、例えば、一般式(BP-1)で表される化合物(以下、化合物(BP-1)と記載することがある)、及び化学式(BP-2)で表される化合物(以下、化合物(BP-2)と記載することがある)が挙げられる。ジカルボン酸由来繰り返し単位を構成するためのジカルボン酸としては、例えば、化学式(DC-3)で表される化合物(以下、化合物(DC-3)と記載することがある)が挙げられる。ポリアリレート樹脂(PA)が繰り返し単位(4)を含む場合には、ジカルボン酸として、化合物(DC-3)に加えて、化学式(DC-4)で表される化合物(以下、化合物(DC-4)と記載することがある)を更に添加する。一般式(BP-1)中のR1、R2、R3及びR4は、各々、一般式(1)中のR1、R2、R3及びR4と同義である。
【0072】
【化13】
【0073】
化合物(BP-1)の好適な例としては、化学式(BP-1-1)~(BP-1-5)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(BP-1-1)~(BP-1-5)と記載することがある)が挙げられる。
【0074】
【化14】
【0075】
ビスフェノール(例えば、化合物(BP-1)及び化合物(BP-2))は、芳香族ジアセテートに誘導体化して使用してもよい。ジカルボン酸(例えば、化合物(DC-3)及び化合物(DC-4))は、誘導体化して使用してもよい。ジカルボン酸の誘導体の例としては、ジカルボン酸ジクロライド、ジカルボン酸ジメチルエステル、ジカルボン酸ジエチルエステル及びジカルボン酸無水物が挙げられる。ジカルボン酸ジクロライドは、ジカルボン酸が有する2個の「-C(=O)-OH」基が各々「-C(=O)-Cl」基で置換された化合物である。
【0076】
ビスフェノールとジカルボン酸との縮重合において、塩基及び触媒の一方又は両方を添加してもよい。塩基の例としては、水酸化ナトリウムが挙げられる。触媒の例としては、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、アンモニウムクロライド、アンモニウムブロマイド、4級アンモニウム塩、トリエチルアミン及びトリメチルアミンが挙げられる。以上、ポリアリレート樹脂(PA)について説明した。
【0077】
感光層は、1種のポリアリレート樹脂(PA)のみを含有してもよく、2種以上のポリアリレート樹脂(PA)を含有してもよい。感光層は、バインダー樹脂として、ポリアリレート樹脂(PA)のみを含有してもよい。また、感光層は、バインダー樹脂として、ポリアリレート樹脂(PA)以外のバインダー樹脂(以下、その他のバインダー樹脂と記載することがある)を更に含有してもよい。
【0078】
その他のバインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂(より具体的には、ポリカーボネート樹脂、スチレン系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、及びポリエーテル樹脂)、熱硬化性樹脂(より具体的には、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、及びこれら以外の架橋性熱硬化性樹脂)、及び光硬化性樹脂(より具体的には、エポキシ-アクリル酸系樹脂、及びウレタン-アクリル酸系共重合体)が挙げられる。
【0079】
(電子輸送剤)
感光層は、電子輸送剤として、一般式(10)、(11)、又は(12)で表される化合物(以下、それぞれを化合物(10)、(11)、及び(12)と記載することがある)を含有する。感光層が、ポリアリレート樹脂(PA)とともに、化合物(10)、(11)、又は(12)を含有することで、感光体の耐摩耗性を向上できる。
【0080】
【化15】
【0081】
一般式(10)中、Q5A及びQ5Bは、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。Q6A及びQ6Bは、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。m1及びm2は、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。
【0082】
1が2以上4以下の整数を表すとき、複数のQ6Aは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。m2が2以上4以下の整数を表すとき、複数のQ6Bは、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0083】
一般式(10)中、Q5A及びQ5Bは、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことがより好ましく、1,1-ジメチルプロピル基を表すことが更に好ましい。m1及びm2は、0を表すことが好ましい。
【0084】
一般式(11)中、Q7及びQ8は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。Q9は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。m3は、0以上4以下の整数を表す。
【0085】
3が2以上4以下の整数を表すとき、複数のQ9は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0086】
一般式(11)中、Q7及びQ8は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことがより好ましく、tert-ブチル基を表すことが更に好ましい。m3は、0を表すことが好ましい。
【0087】
一般式(12)中、Q10及びQ11は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は水素原子を表す。Q12は、ハロゲン原子又は水素原子を表す。
【0088】
一般式(12)中、Q10及びQ11は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、tert-ブチル基を表すことがより好ましい。Q12は、ハロゲン原子を表すことが好ましく、塩素原子を表すことがより好ましい。
【0089】
感光体の耐摩耗性を向上させるために、化合物(10)としては、化学式(10-E1)で表される化合物(以下、化合物(10-E1)と記載することがある)が好ましい。同じ理由から、化合物(11)としては、化学式(11-E3)で表される化合物(以下、化合物(11-E3)と記載することがある)が好ましい。同じ理由から、化合物(12)としては、化学式(12-E2)で表される化合物(以下、化合物(12-E2)と記載することがある)が好ましい。
【0090】
【化16】
【0091】
電子輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、5質量部以上150質量部以下であることが好ましく、10質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、20質量部以上40質量部以下であることが更に好ましい。
【0092】
感光層は、1種の電子輸送剤のみを含有してもよく、2種以上の電子輸送剤を含有してもよい。感光層は、化合物(10)、(11)、及び(12)以外の電子輸送剤(以下、その他の電子輸送剤と記載することがある)を更に含有してもよい。その他の電子輸送剤としては、例えば、キノン系化合物、ジイミド系化合物、ヒドラゾン系化合物、マロノニトリル系化合物、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7-テトラニトロ-9-フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8-トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸、及びジブロモ無水マレイン酸が挙げられる。キノン系化合物としては、例えば、ジフェノキノン系化合物、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物、及びジニトロアントラキノン系化合物が挙げられる。
【0093】
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤としては、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ジアミン誘導体(例えば、N,N,N’,N’-テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’-テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’-テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’-テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体、及びジ(アミノフェニルエテニル)ベンゼン誘導体)、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5-ジ(4-メチルアミノフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)、スチリル系化合物(例えば、9-(4-ジエチルアミノスチリル)アントラセン)、カルバゾール系化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1-フェニル-3-(p-ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン)、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、及びトリアゾール系化合物が挙げられる。感光層は、1種の正孔輸送剤のみを含有してもよく、2種以上の正孔輸送剤を含有してもよい。
【0094】
正孔輸送剤の好適な例としては、一般式(20)、(21)、(22)、(23)、(24)、及び(25)で表される化合物(以下、それぞれを、化合物(20)、(21)、(22)、(23)、(24)、及び(25)と記載することがある)が挙げられる。感光層が、ポリアリレート樹脂(PA)と、電子輸送剤である化合物(10)、(11)、又は(12)とともに、正孔輸送剤として化合物(20)、(21)、(22)、(23)、(24)、又は(25)を含有することで、感光体の感度特性を損なうことなく、感光体の耐摩耗性を向上させることができる。
【0095】
【化17】
【0096】
【化18】
【0097】
一般式(20)中、R10、R11、R12、R13、及びR14は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は水素原子を表す。a及びbは、各々独立に、0又は1を表す。
【0098】
一般式(20)中、R10、R11、R12、R13、及びR14は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基を表すことが更に好ましい。
【0099】
一般式(21)中、R15、R16、及びR17は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。R18は、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は水素原子を表す。r、s、及びtは、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
【0100】
一般式(21)中、rが2以上5以下の整数を表すとき、複数のR15は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。sが2以上5以下の整数を表すとき、複数のR16は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。tが2以上5以下の整数を表すとき、複数のR17は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0101】
一般式(21)中、R18は、水素原子を表すことが好ましい。r、s、及びtは、各々、0を表すことが好ましい。
【0102】
一般式(22)中、R19、R20、R21、及びR22は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。u、v、w、及びxは、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
【0103】
一般式(22)中、uが2以上5以下の整数を表すとき、複数のR19は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。vが2以上5以下の整数を表すとき、複数のR20は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。wが2以上5以下の整数を表すとき、複数のR21は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。xが2以上5以下の整数を表すとき、複数のR22は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0104】
一般式(22)中、R19、R20、R21、及びR22は、各々独立に、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基又はエチル基を表すことがより好ましい。u、v、w、及びxは、各々独立に、1以上3以下の整数を表すことが好ましく、1を表すことがより好ましい。
【0105】
一般式(23)中、R23及びR24は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。R25及びR26は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表す。R27、R28、R29、R30、及びR31は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表す。R27、R28、R29、R30、及びR31のうちの隣接した2つが互いに結合して環を表してもよい。d及びeは、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。f及びgは、各々独立に、1又は2を表す。
【0106】
一般式(23)中、dが2以上5以下の整数を表すとき、複数のR25は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。eが2以上5以下の整数を表すとき、複数のR26は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。R27、R28、R29、R30、及びR31のうちの隣接した2つが互いに結合して環が形成される場合、この環と、R27、R28、R29、R30、及びR31が結合するフェニル基とが縮合して、二環縮合環基が形成される。この場合、環とフェニル基との縮合部位は、二重結合を含んでもよい。
【0107】
一般式(23)中、R23及びR24は、各々、水素原子を表すことが好ましい。R27、R28、R29、R30、及びR31は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表すことが好ましい。R27、R28、R29、R30、及びR31が表わす炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、又はn-ブチル基を表すことが好ましい。R27、R28、R29、R30、及びR31が表わす炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基としては、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基が好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基がより好ましく、エトキシ基が更に好ましい。d及びeは、各々、0を表すことが好ましい。
【0108】
一般式(24)中、R32及びR33は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又はフェニル基を表す。R34、R35、R46、及びR47は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基又はフェニル基を表す。R36~R45は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、又はフェニル基を表す。p及びqは、各々独立に、0又は1を表す。h及びiは、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。j及びkは、各々独立に、0以上4以下の整数を表す。
【0109】
一般式(24)中、hが2以上5以下の整数を表すとき、複数のR34は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。iが2以上5以下の整数を表すとき、複数のR35は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。jが2以上4以下の整数を表すとき、複数のR46は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。kが2以上4以下の整数を表すとき、複数のR47は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0110】
一般式(24)中、R32及びR33は、各々、水素原子を表すことが好ましい。R36~R45は、各々独立に、水素原子、又は炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましい。R36~R45が表わす炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基がより好ましく、メチル基又はエチル基が更に好ましい。p及びqは、各々、0を表すことが好ましい。h及びiは、各々、0を表すことが好ましい。j及びkは、各々、0を表すことが好ましい。
【0111】
一般式(25)中、R48、R49、及びR50は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表す。R51、R52、及びR53は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表す。
【0112】
一般式(25)中、R48、R49、及びR50は、各々独立に、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、メチル基を表すことが更に好ましい。R48、R49、及びR50は、ブタジエニル基に対して、フェニル基のメタ位に結合することが好ましい。R51、R52、及びR53は、各々、水素原子を表すことが好ましい。
【0113】
正孔輸送剤のより好適な例としては、化学式(20-H8)、(20-H9)、(21-H4)、(22-H6)、(23-H1)、(23-H2)、(23-H3)、(24-H7)、及び(25-H5)で表される化合物(以下、それぞれを、化合物(20-H8)、(20-H9)、(21-H4)、(22-H6)、(23-H1)、(23-H2)、(23-H3)、(24-H7)、及び(25-H5)と記載することがある)が挙げられる。
【0114】
【化19】
【0115】
【化20】
【0116】
【化21】
【0117】
なお、化合物(20-H8)、及び(20-H9)は、各々、化合物(20)の好適な例である。化合物(21-H4)は、化合物(21)の好適な例である。化合物(22-H6)は、化合物(22)の好適な例である。化合物(23-H1)、(23-H2)、及び(23-H3)は、各々、化合物(23)の好適な例である。化合物(24-H7)は、化合物(24)の好適な例である。化合物(25-H5)は、化合物(25)の好適な例である。
【0118】
正孔輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、50質量部以上90質量部以下であることがより好ましく、60質量部以上80質量部以下であることが更に好ましい。
【0119】
(添加剤)
添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項消光剤、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤、電子アクセプター化合物、及びレベリング剤が挙げられる。
【0120】
(材料の組み合わせ)
感光体の耐摩耗性を向上させるためには、ポリアリレート樹脂及び電子輸送剤の組み合わせが、表1に示す組み合わせNo.C-1~C-27の各々であることが好ましい。同じ理由から、ポリアリレート樹脂及び電子輸送剤の組み合わせが、表1に示す組み合わせNo.C-1~C-27の各々であり、電荷発生剤がY型チタニルフタロシアニンであることがより好ましい。
【0121】
【表1】
【0122】
感光体の耐摩耗性を向上させるためには、ポリアリレート樹脂、正孔輸送剤、及び電子輸送剤の組み合わせが、表2に示す組み合わせNo.D-1~D-51の各々であることが好ましい。同じ理由から、ポリアリレート樹脂、正孔輸送剤、及び電子輸送剤の組み合わせが、表2に示す組み合わせNo.D-1~D-51の各々であり、電荷発生剤がY型チタニルフタロシアニンであることがより好ましい。
【0123】
【表2】
【0124】
上述の表1及び表2中、「No.」は「組み合わせNo.」を示し、「HTM」は「正孔輸送剤」を示し、「ETM」は「電子輸送剤」を示し、「樹脂」は「ポリアリレート樹脂」を示す。
【0125】
(導電性基体)
導電性基体は、感光体の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体は、少なくとも表面部が導電性を有する材料で構成されていればよい。導電性基体の一例としては、導電性を有する材料で構成される導電性基体が挙げられる。導電性基体の別の例としては、導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、及び真鍮が挙げられる。これらの導電性を有する材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて(例えば、合金として)用いてもよい。これらの導電性を有する材料のなかでも、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム及びアルミニウム合金が好ましい。
【0126】
導電性基体の形状は、画像形成装置の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体の形状としては、例えば、シート状及びドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚さは、導電性基体の形状に応じて適宜選択される。
【0127】
(中間層)
中間層(下引き層)は、例えば、無機粒子及び中間層に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層が存在することにより、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇を抑制できる。
【0128】
無機粒子としては、例えば、金属(例えば、アルミニウム、鉄、及び銅)の粒子、金属酸化物(例えば、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、及び酸化亜鉛)の粒子、及び非金属酸化物(例えば、シリカ)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0129】
中間層用樹脂の例は、上述したその他のバインダー樹脂の例と同じである。中間層及び感光層を良好に形成するためには、中間層用樹脂は、感光層に含有されるバインダー樹脂と異なることが好ましい。中間層は、添加剤を含有してもよい。中間層に含有される添加剤の例は、感光層に含有される添加剤の例と同じである。
【0130】
(感光体の製造方法)
次に、感光体の製造方法の一例を説明する。感光体の製造方法は、感光層形成工程を含む。感光層形成工程では、感光層を形成するための塗布液(以下、感光層用塗布液と記載することがある)を調製する。感光層用塗布液を導電性基体上に塗布する。次いで、塗布した感光層用塗布液に含有される溶剤の少なくとも一部を除去して感光層を形成する。感光層用塗布液は、例えば、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂と、溶剤とを含有する。感光層用塗布液は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、バインダー樹脂とを、溶剤に溶解又は分散させることにより調製される。
【0131】
感光層用塗布液に含有される溶剤は、感光層用塗布液に含有される各成分を溶解又は分散できる限り、特に限定されない。溶剤としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及びブタノール等)、脂肪族炭化水素(より具体的には、n-ヘキサン、オクタン、及びシクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、トルエン、及びキシレン等)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、及びクロロベンゼン等)、エーテル(より具体的には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、及びジエチレングリコールジメチルエーテル等)、ケトン(より具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、及びシクロヘキサノン等)、エステル(より具体的には、酢酸エチル、及び酢酸メチル等)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、及びジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0132】
感光層用塗布液は、それぞれ各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー、又は超音波分散器を用いることができる。
【0133】
感光層用塗布液を塗布する方法は、感光層用塗布液を均一に塗布できる方法であれば、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法、及びバーコート法が挙げられる。
【0134】
感光層用塗布液に含有される溶剤の少なくとも一部を除去する方法としては、例えば、加熱、減圧、又は加熱と減圧との併用が挙げられる。より具体的には、高温乾燥機、又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理の温度は、例えば、40℃以上150℃以下である。熱処理の時間は、例えば、3分以上120分以下である。
【0135】
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて中間層を形成する工程を更に含んでいてもよい。中間層を形成する工程は、公知の方法を適宜選択することができる。
【0136】
<画像形成装置>
次に、本実施形態の感光体1を備える、画像形成装置について説明する。以下、図4を参照しながら、タンデム方式のカラー画像形成装置を例に挙げて説明する。図4は、画像形成装置の一例を示す断面図である。
【0137】
図4に示す画像形成装置100は、画像形成ユニット40a、40b、40c、及び40dと、転写ベルト50と、定着装置54とを備える。以下、区別する必要がない場合には、画像形成ユニット40a、40b、40c、及び40dの各々を、画像形成ユニット40と記載する。
【0138】
画像形成ユニット40は、像担持体30と、帯電装置42と、露光装置44と、現像装置46と、転写装置48と、クリーニング部材52とを備える。像担持体30は、本実施形態の感光体1である。
【0139】
既に述べたように、本実施形態の感光体1によれば、耐摩耗性を向上できる。従って、像担持体30として感光体1を備えることで、画像形成装置100の耐久性を向上できる。
【0140】
画像形成ユニット40の中央位置に、像担持体30が設けられる。像担持体30は、矢符方向(反時計回り)に回転可能に設けられる。像担持体30の周囲には、像担持体30の回転方向の上流側から記載された順に、帯電装置42と、露光装置44と、現像装置46と、転写装置48と、クリーニング部材52とが設けられる。
【0141】
画像形成ユニット40a~40dの各々によって、転写ベルト50上の記録媒体Pに、複数色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローの4色)のトナー像が順に重ねられる。
【0142】
帯電装置42は、像担持体30の表面(例えば、周面)を、例えば正極性に、帯電させる。帯電装置42は、例えば、帯電ローラーである。
【0143】
露光装置44は、帯電された像担持体30の表面に露光光を照射する。即ち、露光装置44は、帯電された像担持体30の表面を露光する。これにより、像担持体30の表面に静電潜像が形成される。静電潜像は、画像形成装置100に入力された画像データに基づいて形成される。
【0144】
現像装置46は、像担持体30の表面にトナーを供給し、静電潜像をトナー像として現像する。像担持体30の表面に現像装置46の表面(例えば、周面)が接触しながら、現像装置46は静電潜像をトナー像として現像する。即ち、画像形成装置100は、接触現像方式を採用している。現像装置46は、例えば、現像ローラーである。現像剤が一成分現像剤である場合、現像装置46は、像担持体30に形成された静電潜像に一成分現像剤であるトナーを供給する。現像剤が二成分現像剤である場合、現像装置46は、像担持体30に形成された静電潜像に、二成分現像剤に含有されるトナーとキャリアとのうち、トナーを供給する。このようにして、像担持体30は、トナー像を担持する。
【0145】
転写ベルト50は、像担持体30と転写装置48との間に記録媒体Pを搬送する。転写ベルト50は、無端状のベルトである。転写ベルト50は、矢符方向(時計回り)に回転可能に設けられる。
【0146】
転写装置48は、現像装置46によって現像されたトナー像を、像担持体30の表面から、被転写体へ転写する。被転写体は、記録媒体Pである。詳しくは、像担持体30の表面に記録媒体Pが接触しながら、転写装置48は、トナー像を像担持体30の表面から記録媒体Pへ転写する。即ち、画像形成装置100は、直接転写方式を採用している。転写装置48は、例えば、転写ローラーである。
【0147】
像担持体30の表面にクリーニング部材52を圧接させて、クリーニング部材52は、像担持体30の周面に付着したトナーを回収する。クリーニング部材52は、例えば、クリーニングブレードである。
【0148】
転写装置48によってトナー像が転写された記録媒体Pは、転写ベルト50によって、定着装置54へ搬送される。定着装置54は、例えば、加熱ローラー及び/又は加圧ローラーである。転写装置48によって転写された未定着のトナー像が、定着装置54によって、加熱及び/又は加圧される。トナー像が加熱及び/又は加圧されることにより、記録媒体Pにトナー像が定着する。その結果、記録媒体Pに画像が形成される。
【0149】
以上、画像形成装置の一例について説明したが、画像形成装置は、上述した画像形成装置100に限定されない。上述した画像形成装置100はカラー画像形成装置であったが、画像形成装置はモノクロ画像形成装置であってもよい。この場合、画像形成装置は、例えば画像形成ユニットを1つだけ備えていればよい。また、上述した画像形成装置100はタンデム方式を採用していたが、画像形成装置は例えばロータリー方式を採用してもよい。帯電装置42として帯電ローラーを例に挙げて説明したが、帯電装置は帯電ローラー以外の帯電装置(例えば、スコロトロン帯電器、帯電ブラシ、又はコロトロン帯電器)であってもよい。上述した画像形成装置100は接触現像方式を採用していたが、画像形成装置は非接触現像方式を採用してもよい。上述した画像形成装置100は直接転写方式を採用していたが、画像形成装置は中間転写方式を採用してもよい。画像形成装置が中間転写方式を採用する場合、被転写体は中間転写ベルトに相当する。クリーニング部材52としてクリーニングブレードを例に挙げて説明したが、クリーニング部材はクリーニングローラーであってもよい。なお、上述した画像形成ユニット40は除電装置を備えていなかったが、画像形成ユニットは除電装置を更に備えていてもよい。
【0150】
<プロセスカートリッジ>
次に、図4を引き続き参照して、本実施形態の感光体1を備えるプロセスカートリッジの一例について説明する。プロセスカートリッジは、画像形成ユニット40a~40dの各々に相当する。プロセスカートリッジは、像担持体30を備える。像担持体30は、本実施形態の感光体1である。プロセスカートリッジは、像担持体30に加えて、帯電装置42、及びクリーニング部材52のうちの少なくとも一方を更に備える。
【0151】
既に述べたように、本実施形態の感光体1によれば、耐摩耗性を向上できる。従って、像担持体30として感光体1を備えることで、プロセスカートリッジは、耐久性に優れる。
【0152】
プロセスカートリッジには、像担持体30、帯電装置42、及びクリーニング部材52に加えて、露光装置44、現像装置46、及び転写装置48のうちの少なくとも1つが更に備えられてもよい。プロセスカートリッジには、除電装置(不図示)が更に備えられてもよい。プロセスカートリッジは、画像形成装置100に対して着脱自在に設計される。そのため、プロセスカートリッジは取り扱いが容易であり、像担持体30の感度特性等が劣化した場合に、像担持体30を含めて容易かつ迅速に交換することができる。以上、図4を参照して、本実施形態の感光体1を備えるプロセスカートリッジについて説明した。
【実施例
【0153】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
【0154】
まず、感光体の感光層を形成するための材料として、以下の電荷発生剤、電子輸送剤、正孔輸送剤、及びバインダー樹脂を準備した。
【0155】
(電荷発生剤)
電荷発生剤として、実施形態で述べたY型チタニルフタロシアニンを準備した。
【0156】
(電子輸送剤)
電子輸送剤として、実施形態で述べた化合物(10-E1)、(11-E3)、及び(12-E2)の各々を準備した。
【0157】
(正孔輸送剤)
正孔輸送剤として、実施形態で述べた化合物(20-H8)、(20-H9)、(21-H4)、(22-H6)、(23-H1)、(23-H2)、(23-H3)、(24-H7)、及び(25-H5)を準備した。
【0158】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂として、実施形態で述べたポリアリレート樹脂(R-1)~(R-7)の各々を、合成した。
【0159】
(ポリアリレート樹脂(R-1)の合成)
反応容器として、温度計、三方コック、及び滴下ロートを備えた三口フラスコを用いた。反応容器に、化合物(BP-1-1)(30.9ミリモル)と、化合物(BP-2)(10.3ミリモル)と、p-tert-ブチルフェノール(0.413ミリモル)と、水酸化ナトリウム(98ミリモル)と、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド(0.384ミリモル)とを入れた。反応容器内の空気をアルゴンガスで置換した。反応容器の内容物に水(300mL)を加えた。反応容器の内容物を50℃で1時間攪拌した。反応容器の内容物の温度が10℃になるまで反応容器の内容物を冷却して、アルカリ性水溶液Aを得た。
【0160】
次に、化合物(DC-3)のジカルボン酸ジクロライド(32.4ミリモル)を、クロロホルム(150mL)に溶解させた。これにより、クロロホルム溶液Bを得た。
【0161】
アルカリ性水溶液Aに対して、滴下ロートを用いて、110分間かけてゆっくりとクロロホルム溶液Bを滴下した。反応容器の内容物の温度(液温)を15±5℃に調節しながら、反応容器の内容物を4時間攪拌して重合反応を進行させた。デカントを用いて反応容器の内容物の上層(水層)を除去し、有機層を得た。次いで、三角フラスコに、イオン交換水(400mL)を加えた。三角フラスコ内に、得られた有機層を更に加えた。三角フラスコ内に、クロロホルム(400mL)及び酢酸(2mL)を更に加えた。三角フラスコ内容物を、室温(25℃)で30分間攪拌した。デカントを用いて三角フラスコ内容物の上層(水層)を除去し、有機層を得た。分液ロートを用いて、イオン交換水(1L)で、得られた有機層を洗浄した。イオン交換水による洗浄を5回繰り返し、水洗した有機層を得た。次に、水洗した有機層をろ過し、ろ液を得た。メタノール(1L)に得られたろ液をゆっくりと滴下し、沈殿物を得た。沈殿物をろ過により取り出した。取り出した沈殿物を温度70℃で12時間真空乾燥させた。これにより、ポリアリレート樹脂(R-1)が得られた。
【0162】
(ポリアリレート樹脂(R-2)の合成)
化合物(BP-1-1)(30.9ミリモル)を化合物(BP-1-5)(30.9ミリモル)に変更した以外は、ポリアリレート樹脂(R-1)の合成と同じ方法で、ポリアリレート樹脂(R-2)を得た。
【0163】
(ポリアリレート樹脂(R-3)の合成)
化合物(DC-3)のジカルボン酸ジクロライド(32.4ミリモル)を、化合物(DC-3)のジカルボン酸ジクロライド(16.2ミリモル)及び化合物(DC-4)のジカルボン酸ジクロライド(16.2ミリモル)に変更した以外は、ポリアリレート樹脂(R-1)の合成と同じ方法で、ポリアリレート樹脂(R-3)を得た。
【0164】
(ポリアリレート樹脂(R-4)の合成)
化合物(BP-1-1)(30.9ミリモル)を化合物(BP-1-2)(30.9ミリモル)に変更した以外は、ポリアリレート樹脂(R-1)の合成と同じ方法で、ポリアリレート樹脂(R-4)を得た。
【0165】
(ポリアリレート樹脂(R-5)の合成)
化合物(BP-1-1)(30.9ミリモル)を化合物(BP-1-3)(30.9ミリモル)に変更した以外は、ポリアリレート樹脂(R-1)の合成と同じ方法で、ポリアリレート樹脂(R-5)を得た。
【0166】
(ポリアリレート樹脂(R-6)の合成)
化合物(BP-1-1)(30.9ミリモル)を化合物(BP-1-4)(30.9ミリモル)に変更した以外は、ポリアリレート樹脂(R-1)の合成と同じ方法で、ポリアリレート樹脂(R-6)を得た。
【0167】
(ポリアリレート樹脂(R-7)の合成)
化合物(BP-1-1)(30.9ミリモル)及び化合物(BP-2)(10.3ミリモル)を、化合物(BP-1-1)(20.6ミリモル)及び化合物(BP-2)(20.6ミリモル)に変更した以外は、ポリアリレート樹脂(R-1)の合成と同じ方法で、ポリアリレート樹脂(R-7)を得た。
【0168】
得られたポリアリレート樹脂(R-1)、(R-2)、(R-3)、(R-4)、(R-5)、(R-6)及び(R-7)の粘度平均分子量は、各々、50500、51,000、50,000、45,000、47,300、45,500、及び48,700であった。
【0169】
プロトン核磁気共鳴分光計(日本分光株式会社製、300MHz)を用いて、得られたポリアリレート樹脂(R-1)~(R-7)の1H-NMRスペクトルを測定した。溶媒としてCDCl3を用いた。内部標準試料としてテトラメチルシラン(TMS)を用いた。ポリアリレート樹脂(R-1)~(R-7)のうちの代表例として、ポリアリレート樹脂(R-7)の化学シフト値を以下に示す。化学シフト値から、ポリアリレート樹脂(R-7)が得られていることを確認した。ポリアリレート樹脂(R-1)~(R-6)についても同じ方法で、ポリアリレート樹脂(R-1)~(R-6)が各々得られていることを確認した。
【0170】
ポリアリレート樹脂(R-7):1H-NMR(300MHz,CDCl3)δ=8.21-8.26(m,8H), 7.25-7.29(m,4H), 7.07-7.23(m,20H), 2.16(q,2H), 1.65(s,3H), 0.78(t,3H).
【0171】
また、比較例で使用するバインダー樹脂として、ポリアリレート樹脂(R-A)~(R-G)の各々も準備した。ポリアリレート樹脂(R-A)~(R-C)の各々は、下記化学式(R-A)~(R-C)で表される。なお、各繰り返し単位の右下に付された数字は、ポリアリレート樹脂に含まれる繰り返し単位の総数に対する、各繰り返し単位の数の百分率(単位:%)を示す。
【0172】
【化22】
【0173】
比較例で使用するポリアリレート樹脂(R-D)は、ビスフェノール由来繰り返し単位として、下記繰り返し単位(BP-A)及び(BP-C)のみを含む。ポリアリレート樹脂(R-D)は、ジカルボン酸由来繰り返し単位として、下記繰り返し単位(3)、(DC-T)及び(DC-I)のみを含む。ポリアリレート樹脂(R-D)に含まれる繰り返し単位の総数に対する、繰り返し単位(BP-A)の数の百分率、繰り返し単位(BP-C)の数の百分率、繰り返し単位(3)の数の百分率、繰り返し単位(DC-T)の数の百分率、及び繰り返し単位(DC-I)の数の百分率は、各々、25.0%、25.0%、25.0%、15.0%、及び10.0%である。
【0174】
【化23】
【0175】
比較例で使用するポリアリレート樹脂(R-E)は、ビスフェノール由来繰り返し単位として、下記繰り返し単位(BP-C)のみを含む。ポリアリレート樹脂(R-E)は、ジカルボン酸由来繰り返し単位として、下記繰り返し単位(3)、(DC-T)及び(DC-I)のみを含む。ポリアリレート樹脂(R-E)に含まれる繰り返し単位の総数に対する、繰り返し単位(BP-C)の数の百分率、繰り返し単位(3)の数の百分率、繰り返し単位(DC-T)の数の百分率、及び繰り返し単位(DC-I)の数の百分率は、各々、50.0%、25.0%、15.0%、及び10.0%である。
【0176】
【化24】
【0177】
比較例で使用するポリアリレート樹脂(R-F)は、ビスフェノール由来繰り返し単位として、下記繰り返し単位(BP-A)のみを含む。ポリアリレート樹脂(R-F)は、ジカルボン酸由来繰り返し単位として、下記繰り返し単位(3)、(DC-T)及び(DC-I)のみを含む。ポリアリレート樹脂(R-F)に含まれる繰り返し単位の総数に対する、繰り返し単位(BP-A)の数の百分率、繰り返し単位(3)の数の百分率、繰り返し単位(DC-T)の数の百分率、及び繰り返し単位(DC-I)の数の百分率は、各々、50.0%、25.0%、15.0%、及び10.0%である。
【0178】
【化25】
【0179】
比較例で使用するポリアリレート樹脂(R-G)は、ビスフェノール由来繰り返し単位として、下記繰り返し単位(BP-Z)のみを含む。ポリアリレート樹脂(R-G)は、ジカルボン酸由来繰り返し単位として、下記繰り返し単位(3)、(DC-T)及び(DC-I)のみを含む。ポリアリレート樹脂(R-G)に含まれる繰り返し単位の総数に対する、繰り返し単位(BP-Z)の数の百分率、繰り返し単位(3)の数の百分率、繰り返し単位(DC-T)の数の百分率、及び繰り返し単位(DC-I)の数の百分率は、各々、50.0%、25.0%、15.0%、及び10.0%である。
【0180】
【化26】
【0181】
なお、ポリアリレート樹脂(R-A)、(R-B)、(R-C)、(R-D)、(R-E)、(R-F)及び(R-G)の粘度平均分子量は、各々、45,300、51,000、46,700、46,800、51,000、45,000、及び44,400であった。
【0182】
準備したポリアリレート樹脂(R-1)~(R-7)及び(R-A)~(R-G)のビスフェノール由来繰り返し単位の種類、比率n1/n2、及びジカルボン酸由来繰り返し単位の種類を、表3に示す。表3中の「-」は該当する値がないことを示す。
【0183】
【表3】
【0184】
<感光体の製造>
上述した電荷発生剤、電子輸送剤、正孔輸送剤、及びバインダー樹脂を用いて、感光体(A-1)~(A-17)及び(B-1)~(B-7)を製造した。
【0185】
(感光体(A-1)の製造)
電荷発生剤であるY型チタニルフタロシアニン3質量部、正孔輸送剤である化合物(23-H1)70質量部、バインダー樹脂であるポリアリレート樹脂(R-1)100質量部、電子輸送剤である化合物(10-E1)30質量部、及び溶剤であるテトラヒドロフラン800質量部を、ボールミルを用いて50時間混合し、感光層用塗布液を得た。ディップコート法により、導電性基体(アルミニウム製のドラム状支持体)上に、感光層用塗布液を塗布した。塗布した感光層用塗布液を、120℃で60分間熱風乾燥させた。このようにして、導電性基体上に感光層(膜厚28μm)を形成し、感光体(A-1)を得た。感光体(A-1)において、導電性基体上に単層の感光層が直接備えられていた。
【0186】
(感光体(A-2)~(A-17)及び(B-1)~(B-7)の製造)
表4に示す種類の正孔輸送剤、電子輸送剤、及びバインダー樹脂を使用したこと以外は、感光体(A-1)の製造と同じ方法で、感光体(A-2)~(A-17)及び(B-1)~(B-7)の各々を製造した。
【0187】
<感度特性の評価>
感光体(A-1)~(A-17)及び(B-1)~(B-7)の各々に対して、温度23℃及び相対湿度50%RHの環境下で、感度特性を評価した。詳しくは、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、感光体の表面を+750Vに帯電させた。次いで、単色光(波長:780nm、露光量:0.7μJ/cm2)をハロゲンランプの光からバンドパスフィルターを用いて取り出し、感光体の表面に照射した。単色光の照射終了から40ミリ秒が経過した時点の感光体の表面電位を測定した。測定した表面電位を、感光体の露光後電位VL(単位:+V)とした。感光体の露光後電位VLを、表4に示す。露光後電位VLの絶対値が小さいほど、感光体の感度特性が優れていることを示す。
【0188】
<耐摩耗性の評価>
感光体(A-1)~(A-17)及び(B-1)~(B-7)の各々に対して、耐摩耗性を評価した。耐摩耗性を評価するための評価機として、画像形成装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS-C5250DN」)を使用した。この画像形成装置は、帯電ローラー及びクリーニングブレードを備えていた。また、この画像形成装置は、接触現像方式、及び直接転写方式を採用していた。
【0189】
まず、感光体の感光層の膜厚T1を測定した。次いで、感光体を評価機に搭載した。次いで、常温常湿環境(温度23℃及び相対湿度50%RH)下で、評価機を用いて、50,000枚の用紙(京セラドキュメントソリューションズ株式会社販売「京セラドキュメントソリューションズブランド紙VM-A4」)に、画像I(印字率1%のパターン画像)を連続して印刷した。印刷後に、感光体の感光層の膜厚T2を測定した。そして、式「平均摩耗量=(T1-T2)/50」から、1000枚印刷した場合の平均摩耗量(単位:μm)を求めた。求めた平均摩耗量を、表4に示す。平均摩耗量が少ないほど、感光体の耐摩耗性が優れていることを示す。
【0190】
表4中、HTM、樹脂、ETM、摩耗量は、各々、正孔輸送剤、バインダー樹脂、電子輸送剤、及び1000枚印刷した場合の平均摩耗量を示す。表4中、「溶解せず」は、感光層塗布液の調製時に、バインダー樹脂が溶剤に溶解せず、感光層が形成できなかったことを示す。
【0191】
【表4】
【0192】
表4に示すように、感光体(A-1)~(A-17)の感光層は、単層であり、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、電子輸送剤と、ポリアリレート樹脂(より具体的には、ポリアリレート樹脂(R-1)~(R-7)の何れか)とを含有していた。ポリアリレート樹脂(R-1)~(R-7)は、各々、繰り返し単位(1)と、繰り返し単位(2)と、繰り返し単位(3)とを少なくとも含み、繰り返し単位(2)の数n2に対する繰り返し単位(1)の数n1の比率n1/n2が1.0以上であった。感光層は、電子輸送剤として、化合物(10)、(11)、又は(12)(より具体的には、化合物(10-E1)、(11-E3)、及び(12-E2)の何れか)を含有していた。感光体(A-1)~(A-17)摩耗減量は、0.07μm/1000枚以下であり、感光体(A-1)~(A-17)は耐摩耗性に優れていた。また、感光体(A-1)~(A-17)の露光後電位VLは+129V以下であり、感光体(A-1)~(A-17)は、実使用可能な程度の感度特性を維持できていた。
【0193】
以上のことから、本発明に係る感光体は、耐摩耗性に優れることが示された。本発明に係る感光体は耐摩耗性に優れるため、本発明に係る感光体を備えるプロセスカートリッジ及び画像形成装置は、耐久性に優れている。
【産業上の利用可能性】
【0194】
本発明に係る感光体及びプロセスカートリッジは、画像形成装置に利用できる。本発明に係る画像形成装置は、記録媒体に画像を形成するために利用できる。
【符号の説明】
【0195】
1 :感光体(電子写真感光体)
2 :導電性基体
3 :感光層
30 :像担持体
42 :帯電装置
44 :露光装置
46 :現像装置
48 :転写装置
100 :画像形成装置
P :記録媒体
図1
図2
図3
図4