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特許7415346取り付け角度調整方法、及び、ターゲット板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】取り付け角度調整方法、及び、ターゲット板
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20240110BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20240110BHJP
【FI】
G01S7/497
G01S17/931
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019124509
(22)【出願日】2019-07-03
(65)【公開番号】P2021012027
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 充夫
(74)【代理人】
【識別番号】100172236
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 宣憲
(72)【発明者】
【氏名】向井 仁志
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-014846(JP,A)
【文献】特開2008-281418(JP,A)
【文献】特開2003-315442(JP,A)
【文献】特開2002-174684(JP,A)
【文献】特開2004-184331(JP,A)
【文献】特開平11-274604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
17/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザレーダの車両の前部への取り付け角度が適正位置にあるときの、レーザレーダが照射するレーザ光の第1の受光強度画像における光源の第1の位置を予め計測する工程と、
所定の反射光指向性を備え、且つ、高さの揃った2本の高反射率の線が左部と右部とに設置されるターゲット板を、車両の前方に設置する工程と、
個別のレーザレーダを前記車両の前部に取り付ける工程と、
前記個別のレーザレーダにより前記ターゲット板にレーザ光を照射して第2の受光強度画像を取得する工程と、
前記第2の受光強度画像における、レーザ光の光源から漏れる光であって前記ターゲット板に垂直に入射し反射して戻ってくる光の、反射光の第2の位置と、前記第1の受光強度画像における光源の第1の位置とを比較し、比較結果に基づいて、前記個別のレーザレーダの水平方向及び垂直方向の取り付け角度を調整する工程と、及び、
前記第2の受光強度画像における前記ターゲット板の2本の線の像により、前記個別のレーザレーダのロール方向の傾き角を検知し、該傾き角に基づいて、前記個別のレーザレーダのロール方向の取り付け角度を調整する工程と
を含む、レーザレーダの取り付け角度調整方法。
【請求項2】
前記第2の受光強度画像の各行及び各列について行方向及び列方向に画素値を積算し、積算値がピークを示す行の位置及び列の位置を、光源の第2の位置とする、
請求項に記載の、レーザレーダの取り付け角度調整方法。
【請求項3】
前記第2の受光強度画像の右半分及び左半分について、且つ、光源第2の位置と被らない範囲にて、各行について行方向に画素値を積算し、
前記第2の受光強度画像の右半分の、且つ、光源第2の位置と被らない範囲において積算値がピークを示す右半分の行の位置と、前記第2の受光強度画像の左半分の、且つ、光源第2の位置と被らない範囲において積算値がピークを示す左半分の行の位置との、差により、前記個別のレーザレーダのロール方向の傾き角が、検知される、
請求項に記載の、レーザレーダの取り付け角度調整方法。
【請求項4】
請求項乃至請求項のいずれか一に記載のレーザレーダの取り付け角度調整方法にて用いられる、所定の反射光指向性を備え、且つ、高さの揃った2本の高反射率の線が左部と右部とに設置されるターゲット板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部に取り付けられるレーザレーダの取り付け角度を調整する方法、及び、同方法にて用いられるターゲット板に関する。
【背景技術】
【0002】
車両(自動車)における先行車若しくは前方障害物の監視、又は、追従走行制御などのためのレーダの開発が進められている。それらの中でも、レーザ方式の測距装置(所謂、レーザレーダ)として、LiDAR(Light Detection and Ranging、或いはLaser Imaging Detection and Ranging)技術のものである、LiDARセンサが広く用いられている。LiDARセンサは、遠距離にある対象までの距離やその対象の性質を精度高く分析するセンサであり、特に車両前部にて上下左右の取り付け角度を正確に調整した上で取り付けられることが要請される。
【0003】
特許文献1に開示の技術では、車両前方に所定パターンを備えるターゲットが設置される。そのターゲットにレーザを照射し、レーザ反射によるセンサにおける受光の波形の形状から、センサ光軸の適正位置からずれ量が計測される。このずれ量によりレーザレーダの軸調整が行われる。この所定パターンは、レーザ反射率の大きな明部と小さい暗部から成るものである。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、ターゲットの設置に当たって、その中心位置を、センサを取り付ける高さと左右の位置に一致させなければならない。例えば、車両の車種の違いによりセンサの取り付け位置が異なれば、それに合わせてターゲットの設置位置を変更させなければならない。また、タイヤの空気圧や車両の停止位置の変動による中心位置のずれが、計測誤差を生じてしまうという問題も生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3814201号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、車両前部に取り付けられるレーザレーダの上下及び左右方向の取り付け角度を簡易に且つ適切に調整する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るレーザレーダの取り付け角度調整方法は、
所定の反射光指向性を備えるターゲット板を車両の前方に設置する工程と、
レーザレーダを前記車両の前部に取り付ける工程と、
前記レーザレーダにより前記ターゲット板にレーザ光を照射して受光強度画像を取得する工程と、及び、
前記受光強度画像における前記レーザ光の光源の位置に従って、前記レーザレーダの水平方向及び垂直方向の取り付け角度を調整する工程と
を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るレーザレーダの取り付け角度を調整する方法により、車両前部に取り付けられるレーザレーダの水平方向の取り付け角度、及び、垂直方向の取り付け角度を簡易に且つ適切に調整することができる。更に、本発明に係るレーザレーダの取り付け角度を調整する方法により、車両前部に取り付けられるレーザレーダの水平方向の取り付け角度、垂直方向の取り付け角度、及びロール方向の取り付け角度を簡易に且つ適切に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(a)は、光沢のあるターゲット板を示す図である。図1(b)は、レーザレーダの取り付け角度の調整システムの、側面図及びブロック図である。図1(c)は、レーザレーダの水平方向の検出範囲を示す平面図である
図2図2(a)は、実施の形態1に係る、レーザレーダの光軸が適正位置にあるときの、受光強度画像への光源の映り込み位置を予め把握するための、事前準備の手順を示す流れ図である。図2(b)は、実施の形態1に係る、個々のレーザレーダについての、受光強度画像への光源の映り込み位置の計測、及び、取り付け角度調整の、手順を示す流れ図である。
図3図3(a-1)は、レーザレーダの光軸が、路面方向に平行であり且つ車両の長手方向に平行であるように、車両に対してレーザレーダが取り付けられている様子を示す図である。図3(a-2)は、レーザレーダの光軸が、路面方向平行であり且つ車両の長手方向に平行である場合の、レーザレーダの受光強度画像を示す図である。図3(b-1)は、レーザレーダの光軸が、路面方向に平行ではなく、又は、車両の長手方向に平行ではなく、車両に対してレーザレーダが取り付けられている様子を示す図である。図3(b-2)は、レーザレーダの光軸が、路面方向に平行ではなく、又は、車両の長手方向に平行ではない場合の、レーザレーダの受光強度画像の例を示す図である。
図4図4(a)は、光沢があるターゲット板にレーザである入射光が照射された場合の、反射光の発生の様子を模式的に示す図である。図4(b)は、光沢がないターゲット板にレーザである入射光が照射された場合の、反射光の発生の様子を模式的に示す図である。
図5図5(a)は、ターゲット板に、レーザである入射光が照射された場合の反射光の発生の様子を模式的に示す図である。図5(b)は、図5(a)の場合の受光強度画像を示す図である。
図6図6(a-1)は、ターゲット板にレーザである入射光が垂直に入射する様子と、その際の光源に戻ってくる反射光を映す受光強度画像とを、示す図である。図6(a-2)は、レーザレーダの垂直方向の取り付け角度を下げると、受光強度画像にて上方にずれて反射光が映る、ということを示す図である。図6(b-1)は、図6(a-1)と同様に、ターゲット板にレーザである入射光が垂直に入射する様子と、その際の光源に戻ってくる反射光を映す受光強度画像とを、示す図である。図6(b-2)は、レーザレーダの垂直方向の取り付け位置を下げても、レーザの主たる光線である光軸上の光が反射して光源に戻ってくることに変わりはなく、受光強度画像にて映る反射光の位置も変わらない、ということを示す図である。
図7図7(a)は、光源位置計測処理回路が、受光強度画像上への光源の映り込み位置の水平位置を計測する様子を示す図である。図7(b)は、光源位置計測処理回路の計測及び比較処理の結果に基づいて、調整装置が、レーザレーダの水平方向の取り付け角度の微調整を行う様子を示す図である。
図8図8(a)は、光源位置計測処理回路が、受光強度画像上への光源の映り込み位置の垂直位置を計測する様子を示す図である。図8(b)は、光源位置計測処理回路の計測及び比較処理の結果に基づいて、調整装置が、レーザレーダの垂直方向の取り付け角度の微調整を行う様子を示す図である。
図9図9(a)は、実施の形態2に係るレーザレーダの取り付け角度を調整する方法を実施するに当たって用いられるターゲット板を示す図である。図9(b)は、車両の前部にレーザレーダがロール方向に傾いて取り付けられると、受光強度画像において2本の線も傾いて映ることになる、ということを示す図である。
図10図10(a)は、高さの揃った2本の線が設置される光沢のあるターゲット板を示す図である。図10(b)は、レーザレーダの取り付け角度の調整システムの側面図及びブロック図である。図10(c)は、レーザレーダの水平方向の検出範囲を示す平面図である。
図11図11(a)は、実施の形態2に係る、レーザレーダ光軸が適正位置にあるときの、受光強度画像への光源の映り込み位置の水平垂直位置を予め把握するための、事前準備の手順を示す流れ図である。図11(b)は、実施の形態2に係る、個々のレーザレーダについての、受光強度画像への光源の映り込み位置の水平垂直位置の算出、垂直方向及び水平方向の取り付け角度の調整、ロール方向の傾きの検知、並びに、ロール方向の取り付け角度の調整の、手順を示す流れ図である。
図12】光源映り込み位置算出・ロール方向傾き検知回路が、受光強度画像上の2本の線の映り込み像により、レーザレーダのロール方向の傾き角を計測する様子を示す図である。
図13図13(a)は、レーザレーダを前部に取り付けた車両の側面図の例である。図13(b)は、レーザレーダを前部に取り付けた車両の平面図の例である。
図14図14(a)は、レーザレーダの光軸が適正位置にあるが、軸調整用ターゲットの中心位置がレーザレーダの光軸の位置と一致していない、という状態を示す図である。図14(b)は、軸調整用ターゲットの中心位置とレーザレーダの光軸の位置の両方に、ずれがある状態を示す図である。
図15図15(a)は、レーザレーダの光軸が、路面方向に平行であり且つ車両の長手方向に平行であるように、車両に対してレーザレーダが取り付けられている様子を示す図である。図15(b)は、受光強度画像に映り込む光源を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、適宜図面を参照しながら、本発明に係る実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0011】
なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0012】
(本開示に至る経緯)
図13(a)は、レーザレーダ(センサ)4を前部に取り付けた車両6の側面図の例である。図13(a)に示す側面図にて、路面方向9aとレーザレーダ(センサ)4の光軸10とは、完全には平行でなく、レーザレーダ(センサ)4は、上下方向の取り付け角度のずれ11aを生じている。また、図13(b)は、レーザレーダ(センサ)4を前部に取り付けた車両6の平面図の例である。図13(a)に示す側面図にて、車両6の長手方向9bとレーザレーダ(センサ)4の光軸10とは、完全には平行でなく、レーザレーダ(センサ)4は、左右方向の取り付け角度のずれ11bを生じている。
【0013】
レーザレーダ(センサ)4を車両6に取り付けるに当たって、レーザレーダ(センサ)4の光軸10が、路面方向に対して水平(平行)であり、且つ車両6の長手方向に対して平行であるように、レーザレーダ(センサ)4を取り付けることが要請されている。上下方向の取り付け角度のずれ、及び、左右方向の取り付け角度のずれは、僅かなものであっても、レーザレーダ(センサ)4の検出領域の大きなずれに繋がるからである。
そのために、レーザレーダ(センサ)4を車両6に取り付ける工程にて、レーザレーダ(センサ)4の光軸10が、上下若しくは左右の方向にずれているのか否か、ずれているのであればどれだけずれているのか、を迅速かつ簡易に判別することが要請されている。
【0014】
特許文献1に開示の技術では、レーザレーダ(センサ)の前方に明部と暗部とからなる所定のパターンを配置した軸調整用ターゲットが設置される。軸調整用ターゲットにはレーザ光が照射され、その反射光に対するレーザレーダ(センサ)の受光量波形の形状から、レーザレーダ(センサ)の光軸の適正位置からのずれ量が計測される。ここで特許文献1に開示の技術では、図14(a)に示すようにレーザレーダ(センサ)4の光軸10が適正位置にあるときに、軸調整用ターゲット3の中心位置がレーザレーダ(センサ)4の光軸10の位置と一致するように、軸調整用ターゲット3を設置しなければならない。従って、軸調整用ターゲット3の中心位置とレーザレーダ(センサ)4の光軸10の位置の両方に、図14(b)に示すようにずれがある場合は、調整後のレーザレーダ(センサ)4の検出範囲17がその分ずれてしまう、という問題が生じる。
【0015】
レーザレーダ(センサ)4を車両6に取り付ける工程にて、レーザレーダ(センサ)4の光軸10が、上下若しくは左右の方向にずれているのか否か、ずれているのであればどれだけずれているのか、を迅速かつ簡易に判別するために、本発明者は、光沢のあるターゲット板を用いることに想到した。
【0016】
(実施の形態1)
1.1.本実施の形態の構成
1.1.1.レーザレーダ取り付け角度を調整する方法を実施するための構成
実施の形態1に係る、レーザレーダの取り付け角度を調整する方法を実施するに当たっては、光沢のあるターゲット板2を用いる。光沢のあるターゲット板2は、車両6の前方数m辺りに、路面に垂直に且つ車両の長手方向に垂直に、設置されるのが好ましい。
【0017】
図3(a-1)は、レーザレーダ(センサ)4の光軸10が、路面方向9aに平行であり且つ車両6の長手方向に平行であるように、車両6に対してレーザレーダ(センサ)4が取り付けられている様子を示す図である。図3(a-2)は、レーザレーダ(センサ)4の光軸10が、路面方向9aに平行であり且つ車両6の長手方向に平行である場合(即ち、レーザレーダ(センサ)4の取り付け角度が適正である場合)の、レーザレーダ(センサ)4の受光強度画像8を示す図である。
【0018】
図3(a-2)の場合、即ち、レーザレーダ(センサ)4の取り付け角度が適正である場合の、受光強度画像8上での、レーザ光による光源の位置が、確定(若しくは計測)されていることが好ましい。なお、受光強度画像8上での光源の位置は、レーザレーダ(センサ)4の設計情報から理論的に求められてもよいし、実測で求められてもよい。
【0019】
一方、図3(b-1)は、レーザレーダ(センサ)4の光軸10が、路面方向9aに平行ではなく、又は、車両6の長手方向に平行ではなく、車両6に対してレーザレーダ(センサ)4が取り付けられている様子を示す図である。図3(b-2)は、レーザレーダ(センサ)4の光軸10が、路面方向9aに平行ではなく、又は、車両6の長手方向に平行ではない場合(即ち、レーザレーダ(センサ)4の取り付け角度が適正でない場合)の、レーザレーダ(センサ)4の受光強度画像8(の例)を示す図である。
【0020】
図3(b-2)における、光源の受光強度画像8上での映り込み位置が、図3(b-1)に示す適正時(即ち、レーザレーダ(センサ)4の取り付け角度が適正であるとき)の位置と一致するように、レーザレーダ(センサ)4の取り付け角度を調整すれば、レーザレーダ(センサ)4の取り付け角度は適正となる。
【0021】
実施の形態1に係る調整方法では、光沢のあるターゲット板2を車両6の前方数m辺りに、好ましくは路面に垂直に且つ車両の長手方向に垂直に設置する。光沢のあるターゲット板2には、光源としてレーザレーダ(センサ)4のレーザ光が照射される。このとき、レーザレーダ(センサ)4による受光強度画像8上での当該光源の位置が調整されるように、レーザレーダ(センサ)4の取り付け角度を調整すれば、レーザレーダ(センサ)4の取り付け角度は適正となり得る。この実施の形態1に係る調整方法における原理を、以下、図4図6を用いて説明する。
【0022】
まず図4(b)は、光沢がないターゲット板に、レーザ光である入射光が照射された場合の、反射光の発生の様子を模式的に示す図である。光沢がない、ということは、図4(b)に示すように、反射光の指向性が無い(若しくは、弱い)、ということである。これに対して、図4(a)は、光沢があるターゲット板に、レーザである入射光が照射された場合の、反射光の発生の様子を模式的に示す図である。光沢がある、ということは、図4(a)に示すように、反射光の指向性が強い、若しくは、所定の反射光指向性を備える、ということである。
【0023】
図5(a)は、光沢があるターゲット板2に、レーザ光である入射光が照射された場合の反射光の発生の様子を模式的に示す図である。図5(a)では、レーザの主たる光線の反射光の様子と、光源から漏れる光であってターゲット板2に垂直に入射し反射して光源に戻ってくる光の、反射光の様子を示している。図5(b)は、図5(a)の場合の受光強度画像8を示す図である。図5(b)に示す受光強度画像8では、光源から漏れる光であってターゲット板2に垂直に入射し反射して光源に戻ってくる光の、反射光が、映り込む。それ以外の方向に照射される光、即ち、ターゲット板2に垂直ではない角度で入射する光、例えば、図5(a)におけるレーザの主たる光線は、ターゲット板2の反射光指向性が強いものであることから光源にほぼ戻ってこないため、受光強度画像8には、映り込まない。
【0024】
図6(a-1)は、光沢があるターゲット板2にレーザ光である入射光が垂直に入射する様子と、その際の光源に戻ってくる反射光を映す受光強度画像8とを、示す図である。このとき、図6(a-2)に示すように、レーザレーダ(センサ)4の上下方向の取り付け角度を下げると、図5を用いて説明した事由により、受光強度画像8にて上方にずれて反射光が映ることになる。図6(a-1)(a-2)には示していないが、レーザレーダ(センサ)4の左右方向の取り付け角度を左又は右に変えると、同様に、受光強度画像8にて右に又は左にずれて反射光が映ることになる。
【0025】
図6(b-1)は、図6(a-1)と同様に、光沢があるターゲット板2にレーザ光である入射光が垂直に入射する様子と、その際の光源に戻ってくる反射光を映す受光強度画像8とを、示す図である。このとき、図6(b-2)に示すように、レーザレーダ(センサ)4の上下方向の取り付け位置を下げても、レーザの主たる光線である光軸10上の光が反射して光源に戻ってくることに変わりはないので、受光強度画像8にて映る反射光の位置も変わらない。図6(b-1)(b-2)には示していないが、レーザレーダ(センサ)4の左右方向の取り付け位置を左又は右に変えても、やはり同様に、受光強度画像8にて映る反射光の位置は変わらない。
【0026】
図6を用いて説明したことから、本実施の形態は、特に、レーザレーダの取り付け角度を適正に調整する方法として、有効であるということが言える。図14(b)に示すように、レーザレーダの取り付け角度に僅かでもずれが生じれば、レーザレーダ(センサ)4の検出範囲17は大きく変わってしまう。このように、レーザレーダ(センサ)4の車両6への取り付けに当たっては、取り付け角度を適正なものにすることが重要である。
【0027】
これに対して、本実施の形態は、レーザレーダの取り付けの、左右上下の位置を調整する方法としてはあまり有効ではない。しかしながら、レーザレーダの取り付け位置に多少のずれが生じても、レーザレーダ(センサ)4の検出範囲17は殆ど変わらない。レーザレーダ(センサ)4の車両6への取り付けに当たっては、取り付け位置よりも取り付け角度を、適正なものにすることが重要である。
【0028】
1.1.2.レーザレーダ取り付け角度の調整システム
図1は、本実施の形態に係る、レーザレーダ取り付け角度の調整システムの全体構成を説明するための図である。
【0029】
図1(a)は、光沢のあるターゲット板2を示す図である。光沢のあるターゲット板2は、反射光指向性が強い表面を持った平板であればよい。
【0030】
図1(b)は、レーザレーダ取り付け角度の調整システムの、側面図及びブロック図である。レーザレーダ(センサ)4の前方数m辺りに、好ましくは路面に垂直に且つ車両の長手方向に垂直に、光沢のあるターゲット板2が設置される。レーザレーダ(センサ)4は、光源位置計測処理回路21と、及び、調整装置20と繋がる。光源位置計測処理回路21は、受光強度画像8上の光源の位置を計測して、付属のメモリ等に計測結果を記録する。また、光源位置計測処理回路21は、メモリ等に記録された、計測された光源の位置に関するデータを、新たに計測した光源の位置に関するデータと比較する比較処理も行う。調整装置20は、光源位置計測処理回路21の比較処理の結果に基づいて、レーザレーダ(センサ)4の光軸10の、上下(垂直)方向及び左右(水平)方向の微調整を行う機構である。この調整機構は人手によるものであってもよい。レーザレーダ(センサ)4は、図1(b)に示すように、光軸10、及び、垂直(上下)方向の検出範囲16を備える。
【0031】
図1(c)は、レーザレーダ(センサ)4の、水平(左右)方向の検出範囲18を示す平面図である。なお、ターゲット板2は、レーザレーダ(センサ)4の、水平(左右)方向及び垂直(上下)方向の検出範囲よりも、広い範囲をカバーするものが望ましい(図1(b)参照)。但し、そうでない場合には、ターゲット板2の背景空間には、レーザの反射率が高い物体を置かないことが要求される。
【0032】
1.2.本実施の形態の手順
1.2.1.レーザレーダ取り付け角度を調整する方法の手順
図2は、レーザレーダの取り付け角度を調整する方法の手順を示す流れ図である。
【0033】
図2(a)は、レーザレーダ(センサ)4の光軸10が適正位置にあるときの、受光強度画像8への光源の映り込み位置を予め把握するための、事前準備の手順を示す流れ図である。まず、レーザレーダ(センサ)4の取り付け角度を適正位置にする(ステップS04)。次に受光強度画像8上への光源の映り込み位置の水平垂直位置(若しくは、左右上下位置)を計測する(ステップS06)。
【0034】
受光強度画像8上での、取り付け角度が適正である光源(即ち、レーザレーダ(センサ)4)の位置は、レーザレーダ(センサ)4の設計情報から理論的に求められてもよいし、実測で求められてもよい。即ち、ステップS04及びステップS06は、レーザレーダ(センサ)4の設計情報に基づいて理論的に計算することにより実行されてもよいし、実測により行われてもよい。実測する場合には、図1(b)に示す光源位置計測処理回路21が動作する。
【0035】
次に、計測された水平垂直位置(若しくは、左右上下位置)がメモリに記録される(ステップS10)。メモリは、図1(b)に示す光源位置計測処理回路21に付属するものでも、受光強度画像8を表示するディスプレイ装置に付属するものでも、受光強度画像8を表示するディスプレイ装置と接続する所定のコンピュータに付属するものでも、車両のECU(electronic control unit)に付属するものでも、いずれであってもよい。人手により紙面に記録される、というようなものでもよい。
【0036】
図2(b)は、個々のレーザレーダ(センサ)4についての、受光強度画像8への光源の映り込み位置の計測、及び、取り付け角度調整の、手順を示す流れ図である。まず、受光強度画像8上への光源の映り込み位置の水平垂直位置(若しくは、左右上下位置)を計測する(ステップS24)。計測では光源位置計測処理回路21が動作する。
【0037】
計測された水平垂直位置(若しくは、左右上下位置)が、図2(a)のステップS08にてメモリに記録された適正位置時の水平垂直位置(若しくは、左右上下位置)と一致するか否か、光源位置計測処理回路21により判定される(ステップS26)。一致しないと判定されれば(ステップS26・NO)、調整装置20により、レーザレーダ(センサ)4の上下左右(垂直水平)方向に、取り付け角度が調整される(ステップS28)。前述のように調整装置20は、適正位置時の光源の位置データと計測した光源の位置データとの光源位置計測処理回路21による比較処理の結果に基づいて、レーザレーダ(センサ)4の光軸10の、上下(垂直)方向及び左右(水平)方向の取り付け角度の微調整を行う。調整後、計測(ステップS24)及び判定(ステップS26)が繰り返され、判定のステップ(ステップS26)にて一致すると判定されれば(ステップS26・YES)、手順が終了する(ステップS30)。
【0038】
1.2.2.光源位置計測処理回路及び調整装置の動作
図7(a)は、図1(b)に示す光源位置計測処理回路21が、受光強度画像8上への光源の映り込み位置の水平位置(若しくは、左右位置)を計測する様子を示す図である。図7(b)は、光源位置計測処理回路21の計測及び比較処理の結果に基づいて、調整装置20が、レーザレーダ(センサ)4の光軸10の左右(水平)方向の取り付け角度の微調整を行う様子を示す図である。光源位置計測処理回路21は、図7(a)に示す受光強度画像8の各列について、縦方向(列方向)に受光強度画像の画素値を積算する。図7(a)の下部のグラフは積算結果を表すグラフであり、横軸は列位置、縦軸は積算値を示す。各列の積算は、列の上から下まで行われる。図7(a)に示すグラフでは、受光強度画像8に映り込んだ光源の列位置に対応する、グラフ上の列位置にて、積算値が最大値を示している(ピーク位置)。光源位置計測処理回路21は、グラフ上のピーク位置を光源の列位置として計測し、図7(a)に示す場合には、レーザレーダ(センサ)4が適正な取り付け角度であった場合の光源の映り込み位置よりも、負の位置(左の位置)に、光源が位置することを判別する。
【0039】
光源位置計測処理回路21が、レーザレーダ(センサ)4が適正な取り付け角度であった場合の光源の映り込み位置よりも、負の位置(左の位置)に光源が位置することを判別したことに基づいて、調整装置20は、図7(b)に示すように、レーザレーダ(センサ)4の取り付け角度を左に回転する。
【0040】
図8(a)は、図1(b)に示す光源位置計測処理回路21が、受光強度画像8上への光源の映り込み位置の垂直位置(若しくは、上下位置)を計測する様子を示す図である。図8(b)は、光源位置計測処理回路21の計測及び比較処理の結果に基づいて、調整装置20が、レーザレーダ(センサ)4の光軸10の上下(垂直)方向の取り付け角度の微調整を行う様子を示す図である。光源位置計測処理回路21は、図8(a)に示す受光強度画像8の各行について、横方向(行方向)に受光強度画像の画素値を積算する。図8(a)の右部のグラフは積算結果を表すグラフであり、縦軸は行位置、横軸は積算値を示す。各行の積算は、行の左から右まで行われる。図8(a)に示すグラフでは、受光強度画像8に映り込んだ光源の行位置に対応する、グラフ上の行位置にて、積算値が最大値を示している(ピーク位置)。光源位置計測処理回路21は、グラフ上のピーク位置を光源の行位置として計測し、図8(a)に示す場合には、レーザレーダ(センサ)4が適正な取り付け角度であった場合の光源の映り込み位置よりも、正の位置(上の位置)に、光源が位置することを判別する。
【0041】
光源位置計測処理回路21が、レーザレーダ(センサ)4が適正な取り付け角度であった場合の光源の映り込み位置よりも、正の位置(上の位置)に光源が位置することを判別したことに基づいて、調整装置20は、図8(b)に示すように、レーザレーダ(センサ)4の取り付け角度を上に回転する。
【0042】
1.3.まとめ
以上のように、本実施の形態に係るレーザレーダの取り付け角度を調整する方法は、
レーザレーダ(センサ)4の車両6の前部への取り付け角度が適正位置にあるときの、レーザレーダ(センサ)4が照射するレーザ光の第1の受光強度画像8における光源の第1の位置を予め計測する工程と、所定の反射光指向性を備えるターゲット板2を車両6の前方に設置する工程と、個別のレーザレーダ(センサ)4を車両6の前部に取り付ける工程と、個別のレーザレーダ(センサ)4によりターゲット板2にレーザ光を照射して第2の受光強度画像8を取得する工程と、及び、第2の受光強度画像8におけるレーザ光の光源の第2の位置と、第1の受光強度画像8における光源の第1の位置とを比較し、比較結果に基づいて、レーザレーダ(センサ)4の水平方向及び垂直方向の取り付け角度を調整する工程とを含む。
【0043】
以上の、本実施の形態に係るレーザレーダの取り付け角度を調整する方法により、車両前部に取り付けられるレーザレーダの水平方向の取り付け角度、及び、垂直方向の取り付け角度を簡易に且つ適切に調整することができる。
【0044】
(実施の形態2)
2.1.本実施の形態の構成
2.1.1.レーザレーダ取り付け角度を調整する方法を実施するための構成
実施の形態2に係る、レーザレーダの取り付け角度を調整する方法を実施するに当たっても、実施の形態1と同様に、光沢のあるターゲット板2を用いる。光沢のあるターゲット板2は、車両6の前方数m辺りに、路面に垂直に且つ車両の長手方向に垂直に、設置されるのが好ましい。
【0045】
更に、実施の形態2に係る、レーザレーダの取り付け角度を調整する方法を実施するに当たって用いられるターゲット板2には、図9(a)に示すように、高さの揃った2本の線12が左部と右部とに設置される。この2本の線12は、再帰性反射テープなどのレーザ光を反射する素材で、即ち、高反射率の素材で、構成されるのが好ましい。
【0046】
本実施の形態において、ターゲット板2に高さの揃った2本の線12が設置される理由を述べる。図15(a)は、実施の形態1に係るレーザレーダ取り付け角度を調整する方法と同様に、レーザレーダ(センサ)4の光軸10が、路面方向に平行であり且つ車両6の長手方向に平行であるように、車両6に対してレーザレーダ(センサ)4が取り付けられている様子を示す図である。このような状況において、レーザレーダ(センサ)4がターゲット板2の面と平行な方向(ロール方向)にも傾いている場合には、光源の映り込みだけからではレーザレーダ(センサ)4のロール方向の傾きを検知できない。なぜならば、図15(b)の受光強度画像8に示すように、映り込む光源の形状は円形であるためである。なお、レーザレーダ(センサ)4のロール方向への傾きとは、ターゲット板2の面に平行な、レーザレーダ(センサ)4の回転を指す。
【0047】
レーザレーダ(センサ)4のロール方向への傾きを検知し、その検知に基づいて、レーザレーダ(センサ)4のロール方向への傾き角だけレーザレーダ(センサ)4を調整するために、ターゲット板2の右部と左部に高さの揃った2本の線12が設置される。図9(b-1)に示すように、車両の前部にレーザレーダ(センサ)4がロール方向に傾いて取り付けられると、図9(b-2)に示すように、受光強度画像8において2本の線12も傾いて映ることになる。本実施の形態では、受光強度画像8におけるこれらの2本の線12の傾きを無くすように、レーザレーダ(センサ)4が調整装置20(図10参照)により調整される。
【0048】
2.1.2.レーザレーダ取り付け角度の調整システム
図10は、本実施の形態に係る、レーザレーダ取り付け角度の調整システムの全体構成を説明するための図である。
【0049】
図10(a)は、高さの揃った2本の線12が右部と左部に設置される光沢のあるターゲット板2’を示す図である。光沢のあるターゲット板2’は、反射光指向性が強い表面を持った平板であればよく、更にそこに設置される2本の線12は、再帰性反射テープなどのレーザを反射する素材で構成されるのが好ましい。
【0050】
図10(b)は、レーザレーダ取り付け角度の調整システムの、側面図及びブロック図である。レーザレーダ(センサ)4の前方数m辺りに、路面に垂直に且つ車両の長手方向に垂直に、高さの揃った2本の線12が右部と左部に設置される光沢のあるターゲット板2’が、設置される。レーザレーダ(センサ)4は、光源映り込み位置算出・ロール方向傾き検知回路22と、及び、調整装置20と繋がる。光源映り込み位置算出・ロール方向傾き検知回路22は、受光強度画像8上の光源の映り込み位置を算出して、付属のメモリ24に算出結果を記録する。また、光源映り込み位置算出・ロール方向傾き検知回路22は、メモリ24に記録された、算出された光源の映り込み位置に関するデータを、新たに算出した光源の映り込み位置に関するデータと比較する比較処理も行う。更に、光源映り込み位置算出・ロール方向傾き検知回路22は、受光強度画像8上の、ターゲット板2に設置される高さの揃った2本の線12から、レーザレーダ(センサ)4のロール方向の傾き角を検知する。調整装置20は、光源映り込み位置算出・ロール方向傾き検知回路22の比較処理の結果、及び、ロール方向の傾き角の検知に基づいて、レーザレーダ(センサ)4の光軸10の、上下(垂直)方向、左右(水平)方向、及びロール方向の、微調整を行う機構である。この調整機構は人手によるものであってもよい。レーザレーダ(センサ)4は、図1(b)に示すように、光軸10、及び、垂直(上下)方向の検出範囲16を備える。
【0051】
図10(c)は、図1(c)と同様に、レーザレーダ(センサ)4の、水平(左右)方向の検出範囲18を示す平面図である。ターゲット板2’は、レーザレーダ(センサ)4の、水平(左右)方向及び垂直(上下)方向の検出範囲よりも、広い範囲をカバーするものが望ましい(図10(b)参照)。但し、そうでない場合には、ターゲット板2の背景空間には、レーザの反射率が高い物体を置かないことが要求される。
【0052】
2.2.本実施の形態の手順
2.2.1.レーザレーダ取り付け角度を調整する方法の手順
図11は、レーザレーダの取り付け角度を調整する方法の手順を示す流れ図である。
【0053】
図11(a)は、レーザレーダ(センサ)4の光軸10が適正位置にあるときの、受光強度画像8への光源の映り込み位置の水平垂直位置(若しくは、左右上下位置)を予め把握するための、事前準備の手順を示す流れ図である。図11(a)の流れ図は、図2(a)の流れ図と同じものであるので、説明を省略する。
【0054】
図11(b)は、個々のレーザレーダ(センサ)4についての、受光強度画像8への光源の映り込み位置の水平垂直位置(若しくは、左右上下位置)の算出(計測)、上下(垂直)方向及び左右(水平)方向の取り付け角度の調整、ロール方向の傾き角の検知(計測)、並びに、ロール方向の取り付け角度の調整の、手順を示す流れ図である。まず、受光強度画像8上への光源の映り込み位置の水平垂直位置(若しくは、左右上下位置)を計測(算出)する(ステップS24)。計測(算出)では光源映り込み位置算出・ロール方向傾き検知回路22が動作する。
【0055】
計測(算出)された水平垂直位置(若しくは、左右上下位置)が、図11(a)のステップS08にてメモリ24に記録された適正位置時の水平垂直位置(若しくは、左右上下位置)と一致するか否か、光源映り込み位置算出・ロール方向傾き検知回路22により判定される(ステップS26)。一致しないと判定されれば(ステップS26・NO)、調整装置20により、レーザレーダ(センサ)4の上下左右(垂直水平)方向に、取り付け角度が調整される(ステップS28)。前述のように調整装置20は、適正位置時の光源の位置データと計測(算出)した光源の位置データとの、光源映り込み位置算出・ロール方向傾き検知回路22による比較処理の結果に基づいて、レーザレーダ(センサ)4の光軸10の、上下(垂直)方向及び左右(水平)方向の取り付け角度の微調整を行う。調整後、計測(算出)(ステップS24)及び判定(ステップS26)が繰り返され、判定のステップ(ステップS26)にて一致すると判定されれば(ステップS26・YES)、ステップS32に進む。
【0056】
ステップS32では、光源映り込み位置算出・ロール方向傾き検知回路22により、受光強度画像8上の2本の線12の映り込み像により、レーザレーダ(センサ)4のロール方向の傾き角が計測(検知)される。
【0057】
計測(検知)されたロール方向の傾き角が、ゼロであるか否か、光源映り込み位置算出・ロール方向傾き検知回路22により判定される(ステップS34)。ゼロでないと判定されれば(ステップS34・NO)、調整装置20により、レーザレーダ(センサ)4のロール方向の取り付け角度が調整される(ステップS36)。調整後、計測(検知)(ステップS32)及び判定(ステップS34)が繰り返され、判定のステップ(ステップS34)にて傾き角がゼロであると判定されれば(ステップS34・YES)、手順が終了する(ステップS38)。
【0058】
2.2.2.光源映り込み位置算出・ロール方向傾き検知回路及び調整装置の、ロール方向の傾き角の調整の動作
図12は、図10(b)に示す光源映り込み位置算出・ロール方向傾き検知回路22が、受光強度画像8上の2本の線12の映り込み像により、レーザレーダ(センサ)4のロール方向の傾き角を計測する様子を示す図である。光源映り込み位置算出・ロール方向傾き検知回路22は、受光強度画像8の右半分及び左半分について、且つ、光源の映り込み位置と被らない(即ち、重ならない)範囲にて、各行について横方向(行方向)に各行の受光強度画像の画素値を積算する。図12の右部のグラフは、右半分の、且つ、光源の映り込み位置と被らない範囲の、積算結果を表すグラフであり、縦軸は行位置、横軸は積算値を示す。図12の左部のグラフは、左半分の、且つ、光源の映り込み位置と被らない範囲の、積算結果を表すグラフであり、同様に縦軸は行位置、横軸は積算値を示す。図12の右部に示すグラフでは、受光強度画像8に映り込んだ右の線の像14の中心の行位置に対応する、グラフ上の行位置(図12では“a”)にて、積算値が最大値を示している(ピーク位置)。一方、図12の左部に示すグラフでは、受光強度画像8に映り込んだ左の線の像14の中心の行位置に対応する、グラフ上の行位置(図12では“b”)にて、積算値が最大値を示している(ピーク位置)。光源映り込み位置算出・ロール方向傾き検知回路22は、左右のグラフの二つのピーク位置(“a”と“b”)を、ターゲット板2’の左右の2本の線12の位置として計測する。
【0059】
そして、“a”と“b”の差が閾値(例えば、微小値ε)未満でなければ、光源映り込み位置算出・ロール方向傾き検知回路22は、ロール方向の傾き角がゼロでないと判別する。“a”と“b”の差が閾値(例えば、微小値ε)未満であれば、光源映り込み位置算出・ロール方向傾き検知回路22は、ロール方向の傾き角がゼロであると判別する。調整装置20は、ロール方向の傾き角がゼロとなるように、レーザレーダ(センサ)4のロール方向の傾き角を微調整する。
【0060】
1.3.まとめ
以上のように、本実施の形態に係るレーザレーダの取り付け角度を調整する方法は、 レーザレーダ(センサ)4の車両6の前部への取り付け角度が適正位置にあるときの、レーザレーダ(センサ)4が照射するレーザ光の第1の受光強度画像8における光源の第1の位置を予め計測する工程と、所定の反射光指向性を備え、且つ、高さの揃った2本の高反射率の線12が左部と右部とに設置されるターゲット板2’を、車両6の前方に設置する工程と、個別のレーザレーダ(センサ)4を車両6の前部に取り付ける工程と、個別のレーザレーダ(センサ)4によりターゲット板2’にレーザ光を照射して第2の受光強度画像8を取得する工程と、第2の受光強度画像8におけるレーザ光の光源の第2の位置と、第1の受光強度画像8における光源の第1の位置とを比較し、比較結果に基づいて、個別のレーザレーダ(センサ)4の水平方向及び垂直方向の取り付け角度を調整する工程と、及び、第2の受光強度画像8におけるターゲット板2’の2本の線12の像14により、個別のレーザレーダ(センサ)4のロール方向の傾き角を検知し、該傾き角に基づいて、個別のレーザレーダ(センサ)4のロール方向の取り付け角度を調整する工程とを含む。
【0061】
以上の、本実施の形態に係るレーザレーダの取り付け角度を調整する方法により、車両前部に取り付けられるレーザレーダの水平方向の取り付け角度、垂直方向の取り付け角度、及びロール方向の取り付け角度を簡易に且つ適切に調整することができる。
【0062】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1及び2を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【0063】
また、実施の形態を説明するために、添付図面および詳細な説明を提供した。したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0064】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【符号の説明】
【0065】
2、2’・・・ターゲット板、4・・・レーザレーダ(センサ)、6・・・車両、8・・・受光強度画像、9a・・・路面方向、9b・・・長手方向、10・・・光軸、12・・・線、14・・・線の像、16・・・垂直方向の検出範囲、17・・・検出範囲、18・・・水平方向の検出範囲、20・・・調整装置、21・・・光源位置計測処理回路、22・・・光源映り込み位置算出・ロール方向傾き検知回路、24・・・メモリ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15