IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カシオ計算機株式会社の特許一覧

特許7415388拍間隔取得装置、拍間隔補正方法及びプログラム
<>
  • 特許-拍間隔取得装置、拍間隔補正方法及びプログラム 図1
  • 特許-拍間隔取得装置、拍間隔補正方法及びプログラム 図2
  • 特許-拍間隔取得装置、拍間隔補正方法及びプログラム 図3
  • 特許-拍間隔取得装置、拍間隔補正方法及びプログラム 図4
  • 特許-拍間隔取得装置、拍間隔補正方法及びプログラム 図5
  • 特許-拍間隔取得装置、拍間隔補正方法及びプログラム 図6
  • 特許-拍間隔取得装置、拍間隔補正方法及びプログラム 図7
  • 特許-拍間隔取得装置、拍間隔補正方法及びプログラム 図8
  • 特許-拍間隔取得装置、拍間隔補正方法及びプログラム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】拍間隔取得装置、拍間隔補正方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0245 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
A61B5/0245 F
A61B5/0245 100B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019169269
(22)【出願日】2019-09-18
(65)【公開番号】P2021045319
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】山谷 崇史
(72)【発明者】
【氏名】浜田 玲
(72)【発明者】
【氏名】中込 浩一
(72)【発明者】
【氏名】前野 泰士
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 光康
【審査官】山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-137038(JP,A)
【文献】特開平09-173306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/0245
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拍時刻とともに拍間隔を取得する拍間隔取得手段と、
前記拍間隔取得手段で取得された拍間隔から外れ値候補を抽出する外れ値抽出手段と、
前記外れ値抽出手段で抽出された外れ値候補の拍時刻を用いて前記拍間隔を補正する補正手段と、
を備え
前記補正手段は、前記外れ値候補が存在する区間である外れ値存在区間における拍間隔を、前記拍間隔取得手段で取得された拍間隔のうち前記外れ値抽出手段で抽出されなかった拍間隔である正常値を用いて推定し、
前記推定した拍間隔と前記正常値の拍時刻とから仮の拍時刻を算出し、
前記算出した仮の拍時刻と前記外れ値候補の拍時刻の時間差の絶対値が基準値以下なら、前記仮の拍時刻を前記外れ値候補の拍時刻に補正する補正処理を行い、
前記正常値の拍時刻及び前記補正処理を行った仮の拍時刻に基づいて前記推定した拍間隔を補正する拍間隔取得装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記正常値を補間することによって前記外れ値存在区間における拍間隔を推定する、
請求項に記載の拍間隔取得装置。
【請求項3】
前記補正手段は、
前記推定した拍間隔と前記補正処理を行った仮の拍時刻とから次の仮の拍時刻を算出し、
前記補正処理を、前記外れ値存在区間の全ての期間において繰り返し行い、
前記正常値の拍時刻及び前記補正処理を行った仮の拍時刻に基づいて前記推定した拍間隔を補正する、
請求項1又は2に記載の拍間隔取得装置。
【請求項4】
前記補正手段は、
前記推定した拍間隔と、前記外れ値存在区間の最初の正常値の拍時刻からの経過時間と、が釣り合う時刻として仮の拍時刻を算出し、
前記推定した拍間隔と、前記補正処理を行った仮の拍時刻からの経過時間と、が釣り合う時刻として次の仮の拍時刻を算出する、
請求項に記載の拍間隔取得装置。
【請求項5】
前記補正手段は、
前記推定した拍間隔と、前記外れ値存在区間の最後の正常値の拍時刻から遡った時間と、が釣り合う時刻として仮の拍時刻を算出し、
前記推定した拍間隔と、前記補正処理を行った仮の拍時刻から遡った時間と、が釣り合う時刻として次の仮の拍時刻を算出する、
請求項に記載の拍間隔取得装置。
【請求項6】
前記外れ値抽出手段は、前記拍間隔取得手段が取得した拍間隔のデータ列に含まれる全データもしくは近傍データから平均値及び標準偏差を求め、前記平均値と前記標準偏差から計算した正常範囲に含まれないデータを、外れ値候補として抽出する、
請求項1からのいずれか1項に記載の拍間隔取得装置。
【請求項7】
前記外れ値抽出手段は、前記拍間隔取得手段が取得した拍間隔のデータ列に含まれる全データもしくは近傍データから中間値及びMAD(Median Absolute Deviation)から推定した標準偏差を求め、前記中間値と前記標準偏差から計算した正常範囲に含まれないデータを、外れ値候補として抽出する、
請求項1からのいずれか1項に記載の拍間隔取得装置。
【請求項8】
前記外れ値抽出手段は、前記拍間隔取得手段が取得した拍間隔のデータ列に含まれる全データを値の大きさの順に並べたときに、第1四分位数と第3四分位数とから計算される正常範囲を求め、この正常範囲外を外れ値候補として抽出する、
請求項1からのいずれか1項に記載の拍間隔取得装置。
【請求項9】
拍時刻とともに拍間隔を取得する拍間隔取得ステップと、
前記拍間隔取得ステップで取得された拍間隔から外れ値候補を抽出する外れ値抽出ステップと、
前記外れ値抽出ステップで抽出された外れ値候補の拍時刻を用いて前記拍間隔を補正する補正ステップと、
を備え
前記補正ステップは、前記外れ値候補が存在する区間である外れ値存在区間における拍間隔を、前記拍間隔取得ステップで取得された拍間隔のうち前記外れ値抽出ステップで抽出されなかった拍間隔である正常値を用いて推定し、
前記推定した拍間隔と前記正常値の拍時刻とから仮の拍時刻を算出し、
前記算出した仮の拍時刻と前記外れ値候補の拍時刻の時間差の絶対値が基準値以下なら、前記仮の拍時刻を前記外れ値候補の拍時刻に補正する補正処理を行い、
前記正常値の拍時刻及び前記補正処理を行った仮の拍時刻に基づいて前記推定した拍間隔を補正する、拍間隔補正方法。
【請求項10】
コンピュータに、
拍時刻とともに拍間隔を取得する拍間隔取得ステップ、
前記拍間隔取得ステップで取得された拍間隔から外れ値候補を抽出する外れ値抽出ステップ、及び、
前記外れ値抽出ステップで抽出された外れ値候補の拍時刻を用いて前記拍間隔を補正する補正ステップ、
を実行させ、
前記補正ステップは、前記外れ値候補が存在する区間である外れ値存在区間における拍間隔を、前記拍間隔取得ステップで取得された拍間隔のうち前記外れ値抽出ステップで抽出されなかった拍間隔である正常値を用いて推定し、
前記推定した拍間隔と前記正常値の拍時刻とから仮の拍時刻を算出し、
前記算出した仮の拍時刻と前記外れ値候補の拍時刻の時間差の絶対値が基準値以下なら、前記仮の拍時刻を前記外れ値候補の拍時刻に補正する補正処理を行い、
前記正常値の拍時刻及び前記補正処理を行った仮の拍時刻に基づいて前記推定した拍間隔を補正するステップである、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、拍間隔取得装置、拍間隔補正方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
心拍間隔(RRI:R-R Interval)等の生体情報を取得して健康状態や睡眠状態を知るシステムが開発されてきている。心拍間隔を取得する際に心臓の拍動を誤検出したりすると、異常な値の心拍間隔が取得されてしまうが、このような異常な値は外れ値と呼ばれ、外れ値を除去するシステムも開発されている。例えば、特許文献1には、心拍間隔の時系列データ中の異常値(外れ値)を補間値に置き換える自律神経活動推定装置等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-123594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されているような従来技術では、外れ値が補間値に置き換えられることにより、本来の心拍間隔の揺れ等の情報が失われてしまい、健康状態や睡眠状態を判定する際に悪影響が生じることが懸念される。したがって、特許文献1に開示されているような従来の装置では、心拍間隔を適切に補正する技術において改良の余地がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、心拍間隔や脈拍間隔等の拍間隔を適切に補正することが可能な拍間隔取得装置、拍間隔補正方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る拍間隔取得装置は、
拍時刻とともに拍間隔を取得する拍間隔取得手段と、
前記拍間隔取得手段で取得された拍間隔から外れ値候補を抽出する外れ値抽出手段と、
前記外れ値抽出手段で抽出された外れ値候補の拍時刻を用いて前記拍間隔を補正する補正手段と、
を備え、前記補正手段は、前記外れ値候補が存在する区間である外れ値存在区間における拍間隔を、前記拍間隔取得手段で取得された拍間隔のうち前記外れ値抽出手段で抽出されなかった拍間隔である正常値を用いて推定し、
前記推定した拍間隔と前記正常値の拍時刻とから仮の拍時刻を算出し、
前記算出した仮の拍時刻と前記外れ値候補の拍時刻の時間差の絶対値が基準値以下なら、前記仮の拍時刻を前記外れ値候補の拍時刻に補正する補正処理を行い、
前記正常値の拍時刻及び前記補正処理を行った仮の拍時刻に基づいて前記推定した拍間隔を補正する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、心拍間隔や脈拍間隔等の拍間隔を適切に補正することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態に係る拍間隔取得装置の構成例を示す図である。
図2】脈波センサで検出した脈波の一例を示す図である。
図3】取得された拍間隔の一例を示す図である。
図4】取得された拍間隔の他の一例を示す図である。
図5】第1の実施形態に係る拍間隔取得処理のフローチャートである。
図6】第1の実施形態に係る拍間隔取得処理で補正後の拍間隔を得る処理の一例を説明する図である。
図7】第1の実施形態に係る拍間隔取得処理で補正後の拍間隔を得る処理の他の一例を説明する図である。
図8】変形例1に係る拍間隔取得処理で補正後の拍間隔を得る処理の一例を説明する図である。
図9】変形例2に係る拍間隔取得処理で補正後の拍間隔を得る処理の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付す。
【0010】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る拍間隔取得装置100は、脈波を検出し、検出した脈波から生体情報として心拍間隔を取得する装置である。図1に示すように、拍間隔取得装置100は、機能構成として、制御部10と、記憶部20と、センサ部30と、入力部41と、出力部42と、通信部43と、を備える。
【0011】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)等で構成され、記憶部20に記憶されたプログラムを実行することにより、後述する各部(拍間隔取得部11、外れ値抽出部12、補正部13)の機能を実現する。
【0012】
記憶部20は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成される。ROMには制御部10のCPUが実行するプログラム及びプログラムを実行する上で予め必要なデータが記憶されている。RAMには、プログラム実行中に作成されたり変更されたりするデータが記憶される。
【0013】
センサ部30は、容積脈波を検出する脈波センサを備える。この脈波センサは被験者の腕や耳等に装着され、皮膚の表面から光を照射し、その反射光や透過光を観測することにより、血液内の酸化ヘモグロビンによる光の吸収量の変化を検出する。この光の吸収量の変化は血管の容積変化に対応するので、脈波センサにより、図2に示すように、血管の容積変化を波形としてとらえた脈波201が得られる。
【0014】
そして、血管の容積変化は心臓の拍動に同期していると考えられるので、脈波がピークとなる時刻を拍時刻(心臓の拍動の時刻)と推定することができ、また、脈波のピークの間隔を心拍間隔と推定することができる。したがって、制御部10は、センサ部30で検出した脈波に基づき、心拍間隔を推定することができる。
【0015】
入力部41は、例えばキーボード、マウス、タッチパネル等から構成される。入力部41は、例えば、心拍間隔の取得の開始/終了の指示等のユーザ操作を受け付けるためのインタフェースである。
【0016】
出力部42は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、EL(Electroluminescence)ディスプレイ等から構成される。出力部42は、例えば、拍間隔取得装置100が取得した心拍間隔を表示する。
【0017】
通信部43は、外部の他の装置とデータ等のやり取りを行う通信インタフェースである。この通信インタフェースは無線/有線を問わない。例えば、拍間隔取得装置100は、取得した心拍間隔を、通信部43を介して、外部のサーバ等に送信することができる。
【0018】
次に、拍間隔取得装置100の制御部10の機能的構成について説明する。制御部10は、拍間隔取得部11、外れ値抽出部12、補正部13、の機能を実現し、心拍間隔の取得及び補正を行う。
【0019】
拍間隔取得部11は、センサ部30が備える脈波センサによって検出される脈波から、拍間隔のデータ列を時系列で取得する。より詳細には、拍間隔取得部11は、センサ部30によって得られる検出値を100Hzでサンプリングし、図2に示すような脈波201を取得する。そして、この脈波201から局所最大値(ピーク値)を検出して、拍時刻(拍間隔を取得する際に基準とする拍の位置)を抽出し、隣接する拍時刻の時間間隔を心拍間隔として取得する。
【0020】
例えば、拍間隔取得部11は、図2に示す脈波201上でピーク値を検出することにより、拍時刻201t,202t,203tを抽出し、これらの拍時刻の間隔を算出することにより、拍間隔のデータ列として拍間隔202i,203iを取得する。図2では、拍間隔のデータ列として、拍間隔202i,203iしか示されていないが、拍間隔取得部11は、この後も脈波201のピーク値を検出していくことにより、拍間隔のデータ列を時系列で取得することができる。なお脈波センサのサンプリング周波数は100Hzに限定されるわけではなく、脈波が得られるなら任意の周波数でよい。通常は80Hz~100Hz程度のサンプリング周波数が用いられる。
【0021】
図2に示すように、着目している拍時刻とその直前の拍時刻との時間差が、当該着目している拍時刻における拍間隔となる。なお、拍間隔の定義としては、上記とは逆に、着目している拍時刻とその直後の拍時刻との時間差を、当該着目している拍時刻における拍間隔としてもよい。本実施形態では、上述のように、着目している拍時刻とその直前の拍時刻との時間差を当該着目している拍時刻における拍間隔としている。
【0022】
拍間隔取得部11が取得した拍間隔のデータ列を、縦軸に拍間隔、横軸に時刻をとってプロットすると、図3に示すようなグラフが得られる。拍間隔取得部11は拍間隔取得手段として機能する。
【0023】
外れ値抽出部12は、拍間隔取得部11で取得された拍間隔のデータ列の中から、外れ値である可能性が高いデータを外れ値候補として抽出する。ここで外れ値とは、拍が誤検出された場合等に取得されてしまう異常な値のことである。外れ値候補の抽出方法としては任意の方法を採用することができる。
【0024】
例えば、外れ値抽出部12は、拍間隔のデータ列に含まれる全データもしくは近傍データから平均値及び標準偏差を求め、平均値と標準偏差から計算した正常範囲に含まれないデータを外れ値候補として抽出することができる。また、より頑強性の高い抽出方法として、平均値の代わりに中間値を、標準偏差の代わりにMAD(Median Absolute Deviation)から推定した標準偏差を用いる方法や、IQR(Interquartile Range)を用いてもよい。IQRを用いる方法は、拍間隔のデータ列に含まれる全データもしくは近傍データを値の大きさの順に並べたときに、第1四分位数(1st quartile:Q1)と第3四分位数(3rd quartile:Q3)とから計算される正常範囲を求め、この正常範囲外を外れ値候補として抽出する方法である。
【0025】
図3及び図4は、拍間隔取得部11で取得された拍間隔のデータ列の一例であるが、例えば、図3に示される拍間隔205iや、図4に示される拍間隔215i及び拍間隔216iは、他の拍間隔の値と比較して大きすぎたり小さすぎたりしているので、外れ値抽出部12により、外れ値候補として抽出される。外れ値抽出部12は、外れ値抽出手段として機能する。
【0026】
補正部13は、外れ値抽出部12で抽出された外れ値候補の拍時刻と、拍間隔取得部11で取得された拍間隔のデータ列とに基づいて拍時刻を推定し、推定した拍時刻を用いて、拍間隔取得部11で取得された拍間隔のデータ列を補正する。補正部13による処理の詳細は、後述する拍間隔取得処理のところで説明する。補正部13は、補正手段として機能する。
【0027】
以上、拍間隔取得装置100の機能構成について説明した。次に、拍間隔取得装置100の拍間隔取得処理について、図5を参照して説明する。拍間隔取得装置100が起動すると、この拍間隔取得処理が開始される。または、拍間隔取得装置100は入力部41を介してユーザから指示を受けて拍間隔取得処理を開始してもよい。
【0028】
まず、拍間隔取得装置100の拍間隔取得部11は、センサ部30が検出した検出値(脈波のデータ)を取得する(ステップS101)。ステップS101は、通常、心拍間隔の取得対象となる被験者の就寝時から起床時まで等、被験者の心拍間隔を取得する一連の時間帯の中で連続して行われる。そして、拍間隔取得部11は、その間、センサ部30が検出する検出値を時系列に沿って記憶部20に格納する。ステップS101において、拍間隔取得部11は、拍間隔を取得する時間帯を正確に知る必要はなく、単純なタイマー設定(例えば23時から7時まで)により、その間の検出値を取得してもよい。また、入力部41からの指示(検出値の取得開始及び取得終了の指示)によって、その間の検出値を取得してもよい。
【0029】
次に、拍間隔取得部11は、記憶部20に格納されているセンサ部30の検出値(脈波のデータ)から拍時刻を抽出して拍間隔のデータ列を取得し、各拍間隔に対応する拍時刻とともに記憶部20に格納する(ステップS102)。このステップで、例えば図3図4に示すような拍間隔のデータ列が取得される。ステップS102は、拍間隔取得ステップとも呼ばれる。
【0030】
次に、外れ値抽出部12は、拍間隔のデータ列の中に含まれる外れ値候補を抽出する(ステップS103)。外れ値候補の抽出方法は上述したとおりである。なお、拍間隔のデータ列の中に含まれるデータのうち、ステップS103で外れ値候補として抽出されなかったデータは正常値として扱われる。ステップS103は外れ値抽出ステップとも呼ばれる。
【0031】
次に、補正部13は、全ての外れ値存在区間について、後述する補正処理を実行した(補正後の拍時刻を定めた)か否かを判定する(ステップS104)。ここで、「外れ値存在区間」とは、隣り合う正常値の拍間隔に挟まれた区間であって、抽出された外れ値候補が当該区間の内部に1つ以上の存在する区間をいう。例えば、図3の拍時刻204tから拍時刻206tの間の区間や、図4の拍時刻214tから拍時刻217tの間の区間は、外れ値存在区間である。全ての外れ値存在区間について、補正処理を実行した(又は抽出された外れ値候補がない)なら(ステップS104;Yes)、ステップS112に進む。
【0032】
まだ全ての外れ値存在区間について補正処理を実行していないなら(ステップS104;No)、補正部13は、まだ補正処理を実行していない外れ値存在区間の1つに着目し、当該着目した外れ値存在区間において、正常値の拍間隔(外れ値候補として抽出されなかった拍間隔)を用いた補間等により拍間隔を推定する(ステップS105)。なお、ステップS105において補正部13は、正常値の拍間隔だけでなく、補正処理が実行されて補正された拍時刻から算出される拍間隔も用いて、まだ補正処理を実行していない外れ値存在区間における拍間隔を推定してもよい。
【0033】
ここで、ステップS104及びステップS105の処理について、図3に示す拍間隔のデータ列を用いて具体例で説明する。図3では外れ値存在区間として(外れ値候補の拍間隔205iを含む)拍時刻204tから拍時刻206tまでの間の区間が存在するので、ステップS104での判定はNoとなる。そして、正常値のデータを直線補間すると、図6に示す点線210のように、拍間隔を推定することができる。図6では全ての期間(拍時刻202tから拍時刻207tまで)について拍間隔が推定されているが、補正部13は、着目している外れ値存在区間(拍時刻204tから拍時刻206tまで)の期間だけ拍間隔を推定してもよい。
【0034】
そして、補正部13は、推定した拍間隔と、外れ値存在区間の最初の正常値の拍時刻からの経過時間と、が釣り合う時刻を仮の拍時刻として算出する(ステップS106)。図6を参照して説明すると、補正部13は、着目している外れ値存在区間の最初の正常値の拍時刻(204t)から、拍間隔(縦軸)と時刻(横軸)とを同じだけ延ばした点線211a(縦軸と横軸の縮尺が同じなら45度方向の直線)と点線210との交点の時刻を仮の拍時刻208tとすればよい。
【0035】
次に、補正部13は、算出した仮の拍時刻の近傍に外れ値候補の拍時刻が存在するか否かを判定する(ステップS107)。ここで、「仮の拍時刻の近傍に外れ値候補が存在する」とは、仮の拍時刻と外れ値候補の拍時刻の時間差の絶対値が基準値(当該仮の拍時刻に対応する拍間隔に所定の係数(例えば0.3)をかけた値)以下であることをいう。
【0036】
仮の拍時刻の近傍に外れ値候補が存在するなら(ステップS107;Yes)、当該近傍の外れ値候補の拍時刻を補正後の拍時刻とする(ステップS108)。一方、仮の拍時刻の近傍に外れ値候補が存在しないなら(ステップS107;No)、当該仮の拍時刻を補正後の拍時刻とする(ステップS109)。
【0037】
いずれの場合も、次に補正部13は、補正後の拍時刻を起点として次の仮の拍時刻を算出する(ステップS110)。この処理はステップS106と同様であり、補正部13は、ステップS105で推定した拍間隔と、ステップS108又はステップS109での補正後の拍時刻からの経過時間が釣り合う時刻を仮の拍時刻として算出する。
【0038】
ここで、ステップS107からステップS110までの処理を、図6を参照して説明する。図6で、仮の拍時刻208tの近傍には外れ値候補(拍間隔205i)は存在しないのでステップS107での判定はNoとなる。そして、ステップS109で、拍時刻208tが補正後の拍時刻となる。そして、ステップS110で、補正後の拍時刻208tから延ばした点線211bと点線210との交点が次の仮の拍時刻209tとして算出される。
【0039】
次に、補正部13は、ステップS110で算出した次の仮の拍時刻が、正常値の拍時刻の近傍に達したか否かを判定する(ステップS111)。ここで、「次の仮の拍時刻が正常値の拍時刻の近傍に達した」とは、次の仮の拍時刻に最も近い正常値の拍時刻と当該次の仮の拍時刻との時間差の絶対値が、当該正常値の拍時刻に対応する拍間隔に所定の係数(例えば0.3)をかけた値以下であることをいう。
【0040】
ステップS110で算出した次の仮の拍時刻が正常値の拍時刻の近傍に達していれば(ステップS111;Yes)、ステップS104に戻る。一方、ステップS110で算出した次の仮の拍時刻が正常値の拍時刻の近傍に達していなければ(ステップS111;No)、ステップS107に戻る。図6を参照して説明すると、次の仮の拍時刻209tは、正常値の拍時刻206tの近傍に達していないので、ステップS111での判定はNoとなり、ステップS107に戻る。そして、今度は仮の拍時刻209tの近傍には外れ値候補(拍間隔205i)が存在するのでステップS107での判定はYesとなる。そして、ステップS108で、外れ値候補の拍時刻205tが補正後の拍時刻となる。そして、ステップS110で、補正後の拍時刻205tから延ばした点線211cと点線210との交点が次の仮の拍時刻210tとして算出される。拍時刻210tは、正常値の拍時刻206tの近傍に達しているのでステップS111での判定はYesとなり、ステップS104に戻る。
【0041】
なお、ステップS104からステップS111までの処理は、着目している外れ値存在区間において、算出された仮の拍時刻を補正する補正処理である。補正部13は、外れ値存在区間1つ1つについてこの補正処理を繰り返し、最終的に全ての外れ値存在区間について補正処理を実行し終えたらステップS104での判定がYesとなり、ステップS112に進む。
【0042】
そして、補正部13は、正常値の拍間隔の全ての拍時刻と、補正後の拍時刻の全てとから、補正後の拍間隔を算出し(ステップS112)、拍間隔取得処理を終了する。ステップS112は、補正ステップとも呼ばれる。図6を参照して説明すると、ステップS112では、補正部13は、補正後の拍時刻(拍時刻202t,203t,204t,208t,205t,206t,207t)に基づき、それらの隣り合う拍時刻の差分として、補正後の拍間隔202i,203i,204i,208i,209i,206i,207iを算出する。なお、補正部13は、ステップS112で補正後の拍間隔を算出した後、拍間隔取得処理を終了する前に、算出した補正後の拍間隔を出力部42に出力してもよいし、通信部43を介して外部の装置に送信してもよい。
【0043】
以上、拍間隔取得処理について説明した。なお、拍時刻206tと拍時刻205tの差分が拍間隔206iであるため、図6において、拍時刻206tと仮の拍時刻210tとは本当は一致する。しかし、拍時刻206tと仮の拍時刻210tとが重なってしまうと図が分かりにくくなるため、図6では敢えて値をずらしている。
【0044】
次に、上述の具体例とは別の具体例として、図4に示す拍間隔のデータ列を用いて説明する。図4では外れ値存在区間として(外れ値候補の拍間隔215i及び拍間隔216iを含む)拍時刻214tから拍時刻217tまでの間の区間が存在するので、ステップS104での判定はNoとなる。そして、正常値のデータを直線補間すると、図7に示す点線220のように、拍間隔を推定することができる。図7では全ての期間(拍時刻212tから拍時刻219tまで)について拍間隔が推定されているが、補正部13は、着目している外れ値存在区間(拍時刻214tから拍時刻217tまで)の期間だけ拍間隔を推定してもよい。
【0045】
そして、着目している外れ値存在区間の最初の拍時刻(214t)から、拍間隔(縦軸)と時刻(横軸)とを同じだけ延ばした点線221aと点線220との交点の時刻が仮の拍時刻220tとなる。仮の拍時刻220tの近傍には外れ値候補(拍間隔216i)が存在するのでステップS107での判定はYesとなる。そして、ステップS108で、外れ値候補の拍時刻216tが、仮の拍時刻220tの補正後の拍時刻となる。
【0046】
そして、ステップS110で、補正後の拍時刻216tから延ばした点線221bと点線220との交点が次の仮の拍時刻221tとして算出される。拍時刻221tは、正常値の拍時刻217tの近傍に達しているのでステップS111での判定はYesとなり、ステップS104に戻る。
【0047】
すると、図7に存在する全ての外れ値存在区間について拍時刻を補正したことになるのでステップS104での判定がYesとなり、ステップS112に進む。ステップS112では、補正部13は、補正後の拍時刻(拍時刻212t,213t,214t,216t,217t,218t,219t)に基づき、それらの隣り合う拍時刻の差分として、拍間隔212i,213i,214i,220i,217i,218i,219iを算出する。図6の例では、補正後の拍間隔のうち拍間隔208iは推定した拍時刻に基づく値のため、あまり信頼できない値となる可能性がある。これに対し、図7の例では補正後の拍間隔(拍間隔220i)は外れ値候補の拍時刻に基づいて補正された値なので、本来の拍間隔である可能性が高い。
【0048】
以上の拍間隔取得処理を行うことにより、単純に外れ値を削除すると失われてしまっていた拍時刻の情報を生かすことができるので、拍間隔取得装置100は、心拍間隔等の拍間隔を適切に補正することが可能になる。
【0049】
(変形例1)
上述の実施形態では、仮の拍時刻を算出する際に時間を進める方向(順方向)で算出したが、時間を遡る方向(逆方向)で算出してもよい。仮の拍時刻を時間を遡る方向で算出する変形例1について説明する。
【0050】
変形例1に係る拍間隔取得処理のフローチャートは基本的には第1の実施形態の拍間隔取得処理のフローチャート(図5)と同じであるが、ステップS106及びステップS110において、拍間隔の推定を時間を遡る方向で行う。つまり、ステップS106においては、補正部13は、推定した拍間隔と、外れ値存在区間の最後の正常値の拍時刻から遡った時間と、が釣り合う時刻を仮の拍時刻として算出する。この点以外は、変形例1に係る拍間隔取得装置100は、第1の実施形態に係る拍間隔取得装置100と同一である。変形例1に係る拍間隔取得処理について、図3に示す拍間隔のデータ列を用いて説明する。
【0051】
図3では外れ値存在区間として(外れ値候補の拍間隔205iを含む)拍時刻204tから拍時刻206tまでの間の区間が存在するので、ステップS104での判定はNoとなる。そして、正常値のデータを直線補間すると、図8に示す点線210のように、拍間隔を推定することができる。図8では全ての期間(拍時刻202tから拍時刻207tまで)について拍間隔が推定されているが、補正部13は、着目している外れ値存在区間(拍時刻204tから拍時刻206tまで)の期間だけ拍間隔を推定してもよい。
【0052】
そして、着目している外れ値存在区間の最後の正常値の拍時刻206tから、拍間隔(縦軸)と時刻(横軸)とを同じだけ延ばした点線231aと点線210との交点の時刻が仮の拍時刻232tとなる。仮の拍時刻232tの近傍には外れ値候補(拍間隔205i)が存在するのでステップS107での判定はYesとなる。そして、ステップS108で、外れ値候補の拍時刻205tが、仮の拍時刻232tの補正後の拍時刻となる。
【0053】
そして、ステップS110で、補正後の拍時刻205tから延ばした点線231bと点線210との交点が仮の拍時刻233tとして算出される。仮の拍時刻233tは、正常値の拍時刻204tの近傍に達していないのでステップS111での判定はNoとなり、ステップS107に戻る。
【0054】
そして、仮の拍時刻233tの近傍には外れ値候補は存在していないので、ステップS107での判定はNoとなり、拍時刻233tが補正後の拍時刻となる。そして、ステップS110で、補正後の拍時刻233tから延ばした点線231cと点線210との交点が次の仮の拍時刻234tとして算出される。仮の拍時刻234tは、正常値の拍時刻204tの近傍に達しているのでステップS111での判定はYesとなり、ステップS104に戻る。
【0055】
すると、図8に存在する全ての外れ値存在区間について拍時刻を補正したことになるのでステップS104での判定がYesとなり、ステップS112に進む。ステップS112では、補正部13は、補正後の拍時刻(拍時刻202t,203t,204t,233t,205t,206t,207t)に基づき、それらの隣り合う拍時刻の差分として、補正後の拍間隔202i,203i,204i,233i,232i,206i,207iを算出する。
【0056】
図8の例では、拍間隔233iは、推定した拍時刻233tとその直前の拍時刻204tとの差分であるため、拍時刻204tから45度の角度で延ばした点線233の拍時刻233tにおける値が拍間隔233iであることを示している。同様に、拍間隔232iは、拍時刻205tとその直前の拍時刻233tとの差分であるため、拍時刻233tから45度の角度で延ばした点線232の拍時刻205tにおける値が拍間隔232iであることを示している。
【0057】
以上、変形例1でも、第1の実施形態と同様に、単純に外れ値を削除すると失われてしまっていた拍時刻の情報を生かすことができるので、変形例1に係る拍間隔取得装置100は、心拍間隔等の拍間隔を適切に補正することが可能になる。
【0058】
(変形例2)
上述の第1の実施形態では、仮の拍時刻を算出する際に時間を進める方向(順方向)で算出し、変形例1では、仮の拍時刻を時間を遡る方向で算出したが、この両方で算出して、補正後の拍時刻が一致しない部分について、両者の平均をとることにより補間してもよい。このような変形例2について説明する。
【0059】
変形例2に係る拍間隔取得処理のフローチャートは基本的には第1の実施形態の拍間隔取得処理のフローチャート(図5)と同じであるが、ステップS106及びステップS110において、拍間隔の推定を時間を進める方向と時間を遡る方向の2つの方向で行う。つまり、変形例2に係る補正部13は、仮の拍時刻について、時間を進める方向で第1の仮の拍時刻を算出し、時間を遡る方向で第2の仮の拍時刻を算出する。
【0060】
そして、変形例2に係る補正部13は、この2つの方向のそれぞれで算出した補正後の拍時刻のうち、近傍に存在する(両者の時間差の絶対値が基準値(当該補正後の拍時刻に対応する拍間隔に所定の係数(例えば0.3)をかけた値)以下)にも関わらず一致しないものがあったら、両者の平均をとったものを補正後の拍時刻とする。この点以外は、変形例2に係る拍間隔取得装置100は、第1の実施形態に係る拍間隔取得装置100と同一である。変形例2に係る拍間隔取得処理について、図3に示す拍間隔のデータ列を用いて説明する。
【0061】
図3に示す拍間隔のデータ列に対して、変形例2に係る拍間隔取得処理を適用すると、時間を進める方向での処理では図6に示すように補正後の拍時刻(拍時刻202t,203t,204t,208t,205t,206t,207t)が定まる。また、時間を遡る方向での処理では図8に示すように補正後の拍時刻(拍時刻202t,203t,204t,233t,205t,206t,207t)が定まる。つまり、補正後の拍時刻のうち値が近傍に存在するにも関わらず一致しないのは、拍時刻208tと拍時刻233tである。この場合、補正部13は、図9に示すように、拍時刻208tと拍時刻233tを平均した拍時刻235tを補正後の拍時刻とする。
【0062】
そして、補正部13は、最終的には、補正後の拍時刻(拍時刻202t,203t,204t,235t,205t,206t,207t)に基づき、それらの隣り合う拍時刻の差分として、補正後の拍間隔202i,203i,204i,235i,236i,206i,207iを算出する。
【0063】
図9の例では、拍間隔235iは、推定した拍時刻235tとその直前の拍時刻204tとの差分であるため、拍時刻204tから45度の角度で延ばした点線235の拍時刻235tにおける値が拍間隔235iであることを示している。同様に、拍間隔236iは、拍時刻205tとその直前の拍時刻235tとの差分であるため、拍時刻235tから45度の角度で延ばした点線236の拍時刻205tにおける値が拍間隔236iであることを示している。
【0064】
以上、変形例2でも、第1の実施形態や変形例1と同様に、単純に外れ値を削除すると失われてしまっていた拍時刻の情報を生かすことができる。また、外れ値の拍時間が存在しない部分については、順方向と逆方向の両方で補正した拍時刻を用いて補間するので、より適切な拍時刻が推定できる可能性が高いと考えられる。したがって、変形例2に係る拍間隔取得装置100は、心拍間隔等の拍間隔を適切に補正することが可能になる。
【0065】
(その他の変形例)
上述の実施形態では、拍間隔の情報として心拍間隔を取得するための検出値(脈波)を検出する脈波センサをセンサ部30に備えていたが、取得する拍間隔の情報は心拍間隔に限定されない。拍間隔取得装置100は、外れ値候補を削除して正常値から補間するような拍間隔の情報であれば、心拍間隔に限らず、脈拍間隔等、様々な拍間隔の情報を扱うことが可能である。また、例えば通信部43を介して外部の装置等から拍間隔の情報又は拍間隔を取得するための検出値を受信できる場合は、拍間隔取得装置100は、センサ部30を備える必要はない。
【0066】
また、上述の実施形態では、センサ部30として、脈波センサを備え、脈波センサが検出した脈波から心拍間隔を取得していた。しかし、心拍間隔を取得するためのセンサとしては、脈波センサに限られない。拍間隔取得装置100は、センサ部30として例えば心電計を備え、心電計を用いて心拍間隔を取得してもよい。また、拍間隔取得装置100は、センサ部30として、例えば加速度センサや圧力センサを備え、心弾動図波形を検出して、心拍間隔を取得してもよい。
【0067】
また、上述の実施形態では、拍間隔を推定する際に正常値を直線で結ぶ直線補間を用いていた。しかし、拍間隔の推定に用いる方法は直線補間に限定されない。補正部13は、拍間隔を推定する際に、正常値のデータを用いてスプライン補間、キュービック補間、PCHIP(Piecewise Cubic Hermite Interpolating Polynomial:区分的3次エルミート内挿多項式)補間等の任意の補間方法を用いることができる。さらに言えば、推定方法は補間に限定されない。補正部13は、例えば過去の多数の正常値のデータを用いて機械学習を行ったニューラルネットワークと今回の正常値のデータとを用いて拍間隔を推定してもよい。
【0068】
なお、上述の実施形態では、拍間隔取得装置100は入力部41、出力部42及び通信部43を備えていたが、これらは必須の構成要素ではなく、拍間隔取得装置100は、これらを備えなくてもよい。
【0069】
また、拍間隔取得装置100の各機能は、通常のPC(Personal Computer)等のコンピュータによっても実施することができる。具体的には、上記実施形態では、拍間隔取得装置100が行う拍間隔取得処理等のプログラムが、記憶部20のROMに予め記憶されているものとして説明した。しかし、プログラムを、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto-Optical Disc)、メモリカード、USB(Universal Serial Bus)メモリ等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、そのプログラムをコンピュータに読み込んでインストールすることにより、上述の各機能を実現することができるコンピュータを構成してもよい。
【0070】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0071】
(付記1)
拍時刻とともに拍間隔を取得する拍間隔取得手段と、
前記拍間隔取得手段で取得された拍間隔から外れ値候補を抽出する外れ値抽出手段と、
前記外れ値抽出手段で抽出された外れ値候補の拍時刻を用いて前記拍間隔を補正する補正手段と、
を備える拍間隔取得装置。
【0072】
(付記2)
前記補正手段は、前記外れ値候補が存在する区間である外れ値存在区間における拍間隔を、前記拍間隔取得手段で取得された拍間隔のうち前記外れ値抽出手段で抽出されなかった拍間隔である正常値を用いて推定し、前記推定した拍間隔を前記外れ値候補の拍時刻を用いて補正する、
付記1に記載の拍間隔取得装置。
【0073】
(付記3)
前記補正手段は、前記正常値を補間することによって前記外れ値存在区間における拍間隔を推定する、
付記2に記載の拍間隔取得装置。
【0074】
(付記4)
前記補正手段は、
前記外れ値存在区間において、
前記推定した拍間隔と前記正常値の拍時刻とから仮の拍時刻を算出し、
前記算出した仮の拍時刻と前記外れ値候補の拍時刻の時間差の絶対値が基準値以下なら、前記仮の拍時刻を前記外れ値候補の拍時刻に補正する補正処理を行い、
前記正常値の拍時刻及び前記補正処理を行った仮の拍時刻に基づいて前記推定した拍間隔を補正する、
付記2又は3に記載の拍間隔取得装置。
【0075】
(付記5)
前記補正手段は、
前記推定した拍間隔と前記補正処理を行った仮の拍時刻とから次の仮の拍時刻を算出し、
前記補正処理を、前記外れ値存在区間の全ての期間において繰り返し行い、
前記正常値の拍時刻及び前記補正処理を行った仮の拍時刻に基づいて前記推定した拍間隔を補正する、
付記4に記載の拍間隔取得装置。
【0076】
(付記6)
前記補正手段は、
前記推定した拍間隔と、前記外れ値存在区間の最初の正常値の拍時刻からの経過時間と、が釣り合う時刻として仮の拍時刻を算出し、
前記推定した拍間隔と、前記補正処理を行った仮の拍時刻からの経過時間と、が釣り合う時刻として次の仮の拍時刻を算出する、
付記4又は5に記載の拍間隔取得装置。
【0077】
(付記7)
前記補正手段は、
前記推定した拍間隔と、前記外れ値存在区間の最後の正常値の拍時刻から遡った時間と、が釣り合う時刻として仮の拍時刻を算出し、
前記推定した拍間隔と、前記補正処理を行った仮の拍時刻から遡った時間と、が釣り合う時刻として次の仮の拍時刻を算出する、
付記4又は5に記載の拍間隔取得装置。
【0078】
(付記8)
前記外れ値抽出手段は、前記拍間隔取得手段が取得した拍間隔のデータ列に含まれる全データもしくは近傍データから平均値及び標準偏差を求め、前記平均値と前記標準偏差から計算した正常範囲に含まれないデータを、外れ値候補として抽出する、
付記1から7のいずれか1つに記載の拍間隔取得装置。
【0079】
(付記9)
前記外れ値抽出手段は、前記拍間隔取得手段が取得した拍間隔のデータ列に含まれる全データもしくは近傍データから中間値及びMAD(Median Absolute Deviation)から推定した標準偏差を求め、前記中間値と前記標準偏差から計算した正常範囲に含まれないデータを、外れ値候補として抽出する、
付記1から7のいずれか1つに記載の拍間隔取得装置。
【0080】
(付記10)
前記外れ値抽出手段は、前記拍間隔取得手段が取得した拍間隔のデータ列に含まれる全データを値の大きさの順に並べたときに、第1四分位数と第3四分位数とから計算される正常範囲を求め、この正常範囲外を外れ値候補として抽出する、
付記1から7のいずれか1つに記載の拍間隔取得装置。
【0081】
(付記11)
拍時刻とともに拍間隔を取得する拍間隔取得ステップと、
前記拍間隔取得ステップで取得された拍間隔から外れ値候補を抽出する外れ値抽出ステップと、
前記外れ値抽出ステップで抽出された外れ値候補の拍時刻を用いて前記拍間隔を補正する補正ステップと、
を備える拍間隔補正方法。
【0082】
(付記12)
コンピュータに、
拍時刻とともに拍間隔を取得する拍間隔取得ステップ、
前記拍間隔取得ステップで取得された拍間隔から外れ値候補を抽出する外れ値抽出ステップ、及び、
前記外れ値抽出ステップで抽出された外れ値候補の拍時刻を用いて前記拍間隔を補正する補正ステップ、
を実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0083】
10…制御部、11…拍間隔取得部、12…外れ値抽出部、13…補正部、20…記憶部、30…センサ部、41…入力部、42…出力部、43…通信部、100…拍間隔取得装置、201…脈波、201t,202t,203t,204t,205t,206t,207t,208t,209t,210t,212t,213t,214t,215t,216t,217t,218t,219t,220t,221t,232t,233t,234t,235t…拍時刻、202i,203i,204i,205i,206i,207i,208i,209i,212i,213i,214i,215i,216i,217i,218i,219i,220i,232i,233i,235i,236i…拍間隔、210,211a,211b,211c,220,221a,221b,231a,231b,231c,232,233,235,236…点線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9