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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ロボットの故障診断装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20240110BHJP
   B25J 19/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B25J19/06
B25J19/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019169356
(22)【出願日】2019-09-18
(65)【公開番号】P2021045820
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】片山 周
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-062792(JP,A)
【文献】特開2016-043438(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0279847(US,A1)
【文献】特開平04-128063(JP,A)
【文献】特開2003-249383(JP,A)
【文献】特開2017-170550(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194017(WO,A1)
【文献】独国実用新案第202007005495(DE,U1)
【文献】中国特許出願公開第106345129(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 13/08-19/06
A47L 9/28-11/40
B41J 2/44-29/46
G05B 19/042
G08B 19/00-29/16
G09F 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光色が異なる複数種類の発光ダイオードが個別に通電されて点灯することによりロボットの状態に応じた色の光を発光する発光部の故障を診断するロボットの故障診断装置であって、
前記発光ダイオードに対する通電を制御する通電制御部と、
前記発光ダイオードの端子電圧に応じて変化する診断電圧を検出する電圧検出部と、
前記通電制御部による通電の制御状況と前記電圧検出部による前記診断電圧の検出値とに基づいて前記発光部の故障を検出する故障検出部と、
を備え
前記通電制御部は、前記ロボットの状態が前記発光部の1つの前記発光ダイオードだけが通電されるような状態である期間において、他の1つの前記発光ダイオードに対する通電を行い、
前記故障検出部は、前記通電制御部により他の1つの前記発光ダイオードに対する通電が行われる期間における前記診断電圧の検出値に基づいて前記発光部の故障を検出するロボットの故障診断装置。
【請求項2】
発光色が異なる複数種類の発光ダイオードが個別に通電されて点灯することによりロボットの状態に応じた色の光を発光する発光部の故障を診断するロボットの故障診断装置であって、
前記発光ダイオードに対する通電を制御する通電制御部と、
前記発光ダイオードの端子電圧に応じて変化する診断電圧を検出する電圧検出部と、
前記通電制御部による通電の制御状況と前記電圧検出部による前記診断電圧の検出値とに基づいて前記発光部の故障を検出する故障検出部と、
を備え
前記通電制御部は、前記ロボットの状態が前記発光部の1つの前記発光ダイオードだけが通電されるような状態である期間において、他の複数の前記発光ダイオードに対する通電を行い、
前記故障検出部は、前記通電制御部により他の複数の前記発光ダイオードに対する通電が行われる期間における前記診断電圧の検出値に基づいて前記発光部の故障を検出するロボットの故障診断装置。
【請求項3】
前記通電制御部は、他の前記発光ダイオードに対する通電を行う際、その発光ダイオードの輝度が定常時よりも低くなるように通電を制御する請求項またはに記載のロボットの故障診断装置。
【請求項4】
さらに、前記故障検出部により前記発光部の故障が検出されると、前記発光ダイオードの点灯とは異なる方法により前記発光部に故障が生じたことを報知する報知部を備える請求項1からのいずれか一項に記載のロボットの故障診断装置。
【請求項5】
発光色が異なる複数種類の発光ダイオードが個別に通電されて点灯することによりロボットの状態に応じた色の光を発光する発光部の故障を診断するロボットの故障診断装置であって、
前記発光ダイオードに対する通電を制御する通電制御部と、
前記発光ダイオードの端子電圧に応じて変化する診断電圧を検出する電圧検出部と、
前記通電制御部による通電の制御状況と前記電圧検出部による前記診断電圧の検出値とに基づいて前記発光部の故障を検出する故障検出部と、
を備え
前記複数種類の発光ダイオードの各発光色は、前記通電制御部が前記ロボットの状態にかかわらず前記発光ダイオードに対する通電を行った場合でも、前記ロボットを使用するユーザが前記ロボットの状態を誤認し難くなるような色となっているロボットの故障診断装置。
【請求項6】
前記発光部は、
光の三原色に対応する3つの前記発光ダイオードである赤色発光ダイオード、緑色発光ダイオードおよび青色発光ダイオードを備え、
前記ロボットの状態が予め定められた所定の動作を自動的に実行する第1状態であるときには前記赤色発光ダイオード、前記緑色発光ダイオードおよび前記青色発光ダイオードに対する通電が行われることで白色に発光し、
前記ロボットの状態が、比較的重要度の高いエラーが生じている第2状態であるときには前記赤色発光ダイオードに対する通電が行われることで赤色に発光し、
前記ロボットの状態が、比較的重要度の低いエラーが生じている第3状態であるときには前記赤色発光ダイオードおよび前記緑色発光ダイオードに対する通電が行われることで黄色に発光し、
前記ロボットの状態が、初期化が行われる初期化中である第4状態であるときには前記緑色発光ダイオードに対する通電が行われることで緑色に発光し、
前記ロボットの状態が、前記ロボットを使用するユーザが前記ロボットを手動で動作させて教示を行うことができるダイレクトティーチモードである第5状態であるときには前記青色発光ダイオードに対する通電が行われることで青色に発光するようになっている請求項1からのいずれか一項に記載のロボットの故障診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの状態に応じた色の光を発光する発光部の故障を診断するロボットの故障診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されているように、動作状態などに応じた色の光を発光する発光部を備えたロボットがある。このような構成によれば、作業者は、発光部により発光される光の色に基づいて、ロボットの動作状態などを把握することが可能となる。このような発光部としては、光の三原色である赤色、緑色および青色に対応する3つの発光ダイオードを備え、それら各発光ダイオードが個別に通電されることによりロボットの状態に応じた色の光を発光するといった構成を挙げることができる。なお、本明細書では、発光ダイオードのことをLEDと称することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-43438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成において、発光部を構成する各LED、それらLEDを駆動するための構成などに故障が生じると、発光部がロボットの状態に応じた色とは異なる色を発光する可能性があり、そうすると、ロボットを用いて所定の作業を実施する作業者の安全性が低下するおそれがある。例えば、ロボットの状態が自動モードであるにもかかわらず、発光部による発光色がダイレクトティーチモードを表す色であった場合、次のような問題が生じる。なお、自動モードは、予め用意されたプログラムに従ってロボットが自動的に所定の動作を実行する状態であり、ダイレクトティーチモードは、作業者がロボットのアームを手動で動作させて教示を行うことができる状態である。
【0005】
すなわち、作業者は、発光部による発光色がダイレクトティーチモードを表す色であれば、ロボットがダイレクトティーチモードになっていると誤認する。そのため、作業者は、教示のためにロボットに接近してアームに触れようとする。しかし、このとき、ロボットは自動的に所定の動作を行う状態であるため、ロボットに近づいてきた作業者にアームなどが接触してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ロボットの状態を表す発光部の故障を精度良く検出することができるロボットの故障診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1、2および5に記載のロボットの故障診断装置は、発光色が異なる複数種類の発光ダイオードが個別に通電されて点灯することによりロボットの状態に応じた色の光を発光する発光部の故障を診断する装置である。故障診断装置は、発光ダイオードに対する通電を制御する通電制御部と、発光ダイオードの端子電圧に応じて変化する診断電圧を検出する電圧検出部と、故障検出部と、を備える。
【0008】
発光ダイオードの端子電圧は、その発光ダイオードに対する通電状態に応じて変化する。そのため、上記した診断電圧は、複数の発光ダイオードのそれぞれに対する通電状態に応じて変化する。すなわち、上記構成において、診断電圧は、複数の発光ダイオードに対する通電状態毎に固有の電圧値となる。そして、上記構成では、複数の発光ダイオードに対する通電状態は、発光ダイオードおよび発光ダイオードを駆動するための構成に故障が生じていない正常時には通電制御部による通電の制御状況と一致するが、発光ダイオードおよび発光ダイオードを駆動するための構成に故障が生じている異常時には通電制御部による通電の制御状況と一致しない。
【0009】
このようなことから、上記構成では、診断電圧は、正常時には、通電制御部による通電の制御状況から推測することができる複数の発光ダイオードに対する通電状態に対応する電圧値と概ね同一の電圧値となる一方で、異常時には、上記した通電状態に応じた電圧値とは異なる電圧値となる。このような点を考慮し、故障検出部は、通電制御部による通電の制御状況と電圧検出部による診断電圧の検出値とに基づいて発光部の故障を検出する。このような構成によれば、発光部の故障を精度良く検出することができる。
【0010】
一般に、発光ダイオードの端子電圧は、発光ダイオードが通電されていない状態である場合には概ねゼロとなり、発光ダイオードが通電されている状態である場合には順方向電圧に応じた電圧値となる。また、発光ダイオードの順方向電圧は、その発光色毎に互いに異なる電圧値となる。そのため、上記構成の故障検出部は、このような順方向電圧の違いをも考慮することで、複数種類の発光ダイオードおよびそれら発光ダイオードを駆動するための構成のいずれに故障が生じているかを特定することもできる。
【0011】
請求項1、2および5に記載の構成では、全ての発光ダイオードがいずれも非通電(非点灯)の状態において、いずれかの発光ダイオードを通電(点灯)して発光部の故障診断を行うといった手法を採用することができる。しかし、このような手法では、発光部が無発光である状態から、突然、発光部がロボットの状態とは無関係の色に発光することになる。この場合、発光部が無発光の状態から発光の状態へと遷移するため、そのような変化がロボットを使用するユーザ(作業者)に認識され易い。そのため、作業者は、発光部が自身の予期しないタイミングで急に発光したことに気づいてしまい、不安感を抱くおそれがある。
【0012】
そこで、請求項に記載のロボットの故障診断装置では、通電制御部は、ロボットの状態が発光部の1つの発光ダイオードだけが通電されるような状態である期間において、他の1つの発光ダイオードに対する通電を行うようになっている。そして、請求項に記載の故障検出部は、上記したように通電制御部により他の1つの発光ダイオードに対する通電が行われる期間における診断電圧の検出値に基づいて発光部の故障を検出する。
【0013】
このようにすれば、発光部が無発光の状態から急に発光の状態へと遷移することはない。そして、この場合、発光部による発光色は、元々通電されていた1つの発光ダイオードによる発光色から、その発光色に対して他の1つの発光ダイオードによる発光色が混合された混合色へと変化するだけとなり、そのような変化は作業者に認識され難い。そのため、上記構成によれば、作業者に対して不安感を与えることなく、発光部の診断を行うことができる。
【0014】
また、請求項に記載のロボットの故障診断装置では、通電制御部は、ロボットの状態が発光部の1つの発光ダイオードだけが通電されるような状態である期間において、他の複数の発光ダイオードに対する通電を行うようになっている。そして、請求項に記載の故障検出部は、上記したように通電制御部により他の複数の発光ダイオードに対する通電が行われる期間における診断電圧の検出値に基づいて発光部の故障を検出する。
【0015】
このようにすれば、発光部が無発光の状態から急に発光の状態へと遷移することはない。そして、この場合、発光部による発光色は、元々通電されていた1つの発光ダイオードによる発光色から、その発光色に対して他の複数の発光ダイオードによる発光色が混合された混合色へと変化するだけとなり、そのような変化は作業者に認識され難い。そのため、上記構成によれば、作業者に対して不安感を与えることなく、発光部の診断を行うことができる。
【0016】
請求項に記載のロボットの故障診断装置では、通電制御部は、他の発光ダイオードに対する通電を行う際、その発光ダイオードの輝度が定常時よりも低くなるように通電を制御するようになっている。このようにすれば、元々通電されていた1つの発光ダイオードによる発光色から混合色へと変化する際における色の変化の度合いを小さく抑えることが可能となり、そのような変化が作業者に一層認識され難くなる。したがって、上記構成によれば、作業者に対して不安感を与える可能性を一層低く抑えつつ、発光部の診断を行うことができる。
【0017】
請求項に記載のロボットの故障診断装置は、さらに、故障検出部により発光部の故障が検出されると、発光ダイオードの点灯とは異なる方法により発光部に故障が生じたことを報知する報知部を備える。発光部の故障が検出されたとき、発光ダイオードによる点灯が正常に行い得る状態ではない可能性が高いため、発光ダイオードによる点灯で発光部に故障が生じたことを報知する手法では、確実な報知が実現できないおそれがある。上記構成によれば、発光ダイオードの点灯とは異なる方法により発光部に故障が生じたことが報知されるため、確実な報知を実現することができる。
【0019】
請求項に記載のロボットの故障診断装置では、複数種類の発光ダイオードの各発光色は、通電制御部がロボットの状態にかかわらず発光ダイオードに対する通電を行った場合でも、ロボットを使用するユーザがロボットの状態を誤認し難くなるような色となっている。このようにすれば、通電制御部が発光部の故障診断のために通常とは異なるように発光ダイオードに対する通電を行った場合でも、ユーザは、発光部の発光色によりロボットの状態を誤認することはなく、そのため、ロボットに不用意に近づくことはなく、安全性に問題が生じることはない。
【0020】
請求項に記載のロボットの故障診断装置は、光の三原色に対応する3つの発光ダイオードである赤色発光ダイオード、緑色発光ダイオードおよび青色発光ダイオードを備えた発光部を診断の対象としている。発光部は、ロボットの状態が予め定められた所定の動作を自動的に実行する第1状態であるときには赤色発光ダイオード、緑色発光ダイオードおよび青色発光ダイオードに対する通電が行われることで白色に発光する。発光部は、ロボットの状態が、比較的重要度の高いエラーが生じている第2状態であるときには赤色発光ダイオードに対する通電が行われることで赤色に発光する。
【0021】
発光部は、ロボットの状態が、比較的重要度の低いエラーが生じている第3状態であるときには赤色発光ダイオードおよび緑色発光ダイオードに対する通電が行われることで黄色に発光する。発光部は、ロボットの状態が、初期化が行われる初期化中である第4状態であるときには緑色発光ダイオードに対する通電が行われることで緑色に発光する。発光部は、ロボットの状態が、ロボットを使用するユーザがロボットを手動で動作させて教示を行うことができるダイレクトティーチモードである第5状態であるときには青色発光ダイオードに対する通電が行われることで青色に発光するようになっている。
【0022】
このような発光部を故障診断の対象とすることで、次のような効果が得られる。すなわち、この場合、1つの発光ダイオードだけが通電されるロボットの状態は、第2状態、第4状態および第5状態となる。上記構成によれば、このような状態のとき、故障を診断するために他の1つの発光ダイオードに対する通電を行ったとしても、作業者の安全性が低下するような問題が生じることはない。以下、その理由について説明する。
【0023】
まず、ロボットが第2状態であるとき、青色発光ダイオードに対する通電を行ったとしても、発光部による発光色は、赤色と青色の混合色であるマゼンタになり、ロボットの他の状態を表す色とはならないため、作業者がロボットの状態を誤認して不用意に近づくことはなく、安全性に問題が生じることはない。また、ロボットが第2状態であるとき、緑色発光ダイオードに対する通電を行ったとしても、発光部による発光色は、赤色と緑色の混合色である黄色になる。この場合、黄色は第3状態に対応しており、元々の発光色である赤色と同様、ロボットの状態がエラーであることを表す色である。そのため、作業者は、発光色が赤色から黄色に変化したことに気づいたとしても、ロボットの状態がエラーであるとの認識に変化はなく、ロボットに不用意に近づくことはなく、安全性に問題が生じることはない。
【0024】
ロボットが第4状態であるとき、赤色発光ダイオードに対する通電を行ったとしても、発光部による発光色は、緑色と赤色の混合色である黄色になる。黄色は、前述した通り、ロボットの状態がエラーであることを表す色である。そのため、作業者は、発光色が緑色から黄色に変化したことに気づいたとしても、ロボットの状態が初期化中からエラーに変化したと認識することになり、ロボットに不用意に近づくことはなく、安全性に問題が生じることはない。また、ロボットが第4状態であるとき、青色発光ダイオードに対する通電を行ったとしても、発光部による発光色は、緑色と青色の混合色であるシアンになり、ロボットの他の状態を表す色とはならないため、作業者がロボットの状態を誤認して不用意に近づくことはなく、安全性に問題が生じることはない。
【0025】
ロボットが第5状態であるとき、赤色発光ダイオードに対する通電を行ったとしても、発光部による発光色は、青色と赤色の混合色であるマゼンタになり、ロボットの他の状態を表す色とはならないため、作業者がロボットの状態を誤認して不用意に近づくことはなく、安全性に問題が生じることはない。また、ロボットが第5状態であるとき、緑色発光ダイオードに対する通電を行ったとしても、発光部による発光色は、青色と緑色の混合色であるシアンになり、ロボットの他の状態を表す色とはならないため、作業者がロボットの状態を誤認して不用意に近づくことはなく、安全性に問題が生じることはない。
【0026】
また、上記構成によれば、1つの発光ダイオードだけが通電される状態のときに故障を診断するために他の2つの発光ダイオードに対する通電を行った場合、または、2つの発光ダイオードが通電されるロボットの状態(第3状態)のときに故障を診断するための他の1つの発光ダイオードに対する通電を行った場合にも、作業者の安全性が低下するような問題が生じることはない。なぜなら、これらの場合、いずれも発光部による発光色は白色になり、白色はロボットが所定の動作を自動的に実行する第1状態を表す色である。そのため、作業者は、発光色が元々の色から白色に変化したことに気づいたとしても、ロボットの状態が元々の色が表す状態から第1状態に変化したと認識することになり、ロボットに不用意に近づくことはなく、安全性に問題が生じることはない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】第1実施形態に係るロボットシステムの構成を模式的に示す図
図2】第1実施形態に係るロボットシステムの電気的構成を模式的に示す図
図3】第1実施形態に係る第1診断手法における処理内容を模式的に示す図
図4】第1実施形態に係るロボットの状態が第2状態であるときにおける各部の信号を模式的に示すタイミングチャート
図5】第1実施形態に係る第2診断手法における処理内容を模式的に示す図
図6】第1実施形態に係る第3診断手法における処理内容を模式的に示す図
図7】第1実施形態に係る故障個所特定処理の内容を模式的に示す図
図8】第2実施形態に係る発光部の構成を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、複数の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について図1図7を参照して説明する。
【0029】
図1に示すように、ロボットシステム1は、垂直多関節型のロボット2、ロボット2を制御するコントローラ3をベース4の内部に備えている。なお、図1では、コントローラ3は、矩形箱状に描かれているが、実際はベース4の形状に合わせた形状をなしている。ロボットシステム1は、一般的な産業用に用いられている。ロボット2は、いわゆる6軸の垂直多関節型ロボットである。
【0030】
ベース4上に、z方向の軸心を持つ第1軸を介してショルダ5が水平方向に回転可能に連結されている。ショルダ5には、y方向の軸心を持つ第2軸を備え、y方向に伸びる第2オフセットアーム6を介して、上方に延びる第1アーム7の下端部が垂直方向に回転可能に連結されている。第1アーム7の先端部には、y方向の軸心を持つ第3軸を備え、-y方向に伸びる第3オフセットアーム8を介して、第2アーム9が垂直方向に回転可能に連結されている。第2アーム9は、基部9aおよび先端部9bからなる。
【0031】
第2アーム9は、x方向の軸心を持つ第4軸を備え、基部9aに対して先端部9bが捻り回転可能に連結されている。第2アーム9の先端部には、y方向の軸心を持つ第5軸を備え、-y方向に伸びる第5オフセットアーム10を介して、手首11が垂直方向に回転可能に連結されている。手首11には、x方向の軸心を持つ第6軸を介して、図示しないフランジおよびハンド12が捻り回転可能に連結されている。ロボット2に設けられている各軸には、それぞれに対応して駆動源となる図示しないモータが設けられている。
【0032】
コントローラ3は、ロボット2の制御装置であり、図示しないCPU、ROMおよびRAMなどで構成されたコンピュータからなる制御手段においてコンピュータプログラムを実行することで、ロボット2を制御している。具体的には、コントローラ3は、インバータ回路などから構成された駆動部を備えており、各モータに対応して設けられているエンコーダで検知したモータの回転位置に基づいて例えばフィードバック制御によりそれぞれのモータを駆動する。
【0033】
コントローラ3は、予め設定された動作プログラムを実行することにより、ロボット2の各アームが予め定められた所定の動作を自動的に実行するようにロボット2を制御する。以下、このような動作モードのことを自動モードと称する。また、コントローラ3は、ユーザがロボット2を手動で動作させてロボット2のアーム先端の位置姿勢を教示するダイレクトティーチングに対応している。以下、このようなダイレクトティーチングを行うための動作モードのことをダイレクトティーチングモードと称する。
【0034】
ロボット2のベース4の円柱状の部位には、透明性を有する樹脂材料により円環状に形成された窓部13が設けられている。また、図2に示すように、ロボット2には、ロボット2の状態に応じた色の光を発光する発光部14が設けられている。発光部14から発せられる光は、窓部13を介して(透過して)外部に放出される。発光部14は、発光色が異なる複数種類の発光ダイオードが個別に通電されて点灯することによりロボット2の状態に応じた色の光を発光する。
【0035】
本実施形態では、発光部14は、光の三原色に対応する3つの発光ダイオードである赤色発光ダイオード15、緑色発光ダイオード16および青色発光ダイオード17を備えている。以下、赤色発光ダイオード15、緑色発光ダイオード16および青色発光ダイオード17のことを、それぞれR-LED15、G-LED16およびB-LED17とも称するとともに、単にLED15、LED16およびLED17とも称する。この場合、LED15~17は、それぞれの間の距離が、発光部14として光の三原色を合成した合成色を発光できる程度に近い距離となるように配置されている。
【0036】
この場合、ロボット2の状態には、第1状態、第2状態、第3状態、第4状態および第5状態が含まれる。第1状態は、ロボット2が予め定められた所定の動作を自動的に実行する状態、つまり前述した自動モードとなっている状態である。第2状態は、ロボット2に比較的重要度の高いエラーが生じている状態である。比較的重要度の高いエラーとは、電源系に異常が生じるなどロボット2が動作不能となるような緊急度の高いエラーを表している。
【0037】
第3状態は、ロボット2に比較的重要度の低いエラーが生じている状態である。比較的重要度の低いエラーとは、ロボット2の温度が規定値よりも上昇しているとき、プログラミングに問題があるときなど、電源を遮断することなく復帰が可能な緊急度の低いエラーを表している。第4状態は、初期化が行われる初期化中である状態である。初期化は、ロボットシステム1に対して電源が投入された際に実行されるものであり、この初期化中、ロボット2は動作することができない。第5状態は、ロボットを使用するユーザ(作業者)がロボット2を手動で動作させて教示を行うことができる状態、つまり前述したダイレクトティーチモードとなっている状態である。
【0038】
発光部14は、これら5つの状態毎に応じて予め定められた色の光を発光するようになっている。すなわち、発光部14は、ロボット2が第1状態であるときにはR-LED15、G-LED16およびB-LED17に対する通電が行われることで白色に発光する。発光部14は、ロボット2が第2状態であるときにはR-LED15に対する通電が行われることで赤色に発光する。発光部14は、ロボット2が第3状態であるときにはR-LED15およびG-LED16に対する通電が行われることで黄色に発光する。発光部14は、ロボット2が第4状態であるときにはG-LED16に対する通電が行われることで緑色に発光する。発光部14は、ロボット2が第5状態であるときにはB-LED17に対する通電が行われることで青色に発光する。
【0039】
ロボットシステム1には、このような発光部14による発光を制御するための構成および発光部14の故障を検出するための構成が設けられている。以下、これらの構成について図2を参照して説明する。発光部14は、前述したLED15~17に加え、スイッチSWr、SWg、SWbおよび抵抗Rr、Rg、Rbを備えている。スイッチSWr、SWg、SWbは、例えばMOSFETなどの半導体スイッチング素子により構成されたものであり、それらのオンオフは、ケーブル18を介してコントローラ3から与えられる2値の信号である指令信号Sr、Sg、Sbによりそれぞれ制御される。具体的には、スイッチSWr、SWg、SWbは、それぞれ指令信号Sr、Sg、Sbがハイレベルのときにオンされるとともにロウレベルのときにオフされる。
【0040】
スイッチSWrの一方の端子は電源線L1に接続され、その他方の端子は抵抗RrおよびR-LED15を介してグランド線L2に接続されている。スイッチSWgの一方の端子は電源線L1に接続され、その他方の端子は抵抗RgおよびG-LED16を介してグランド線L2に接続されている。スイッチSWbの一方の端子は電源線L1に接続され、その他方の端子は抵抗RbおよびB-LED17を介してグランド線L2に接続されている。
【0041】
電源線L1およびグランド線L2は、ケーブル18を介してコントローラ3へと接続されており、これにより、LED15~17を駆動するための電源電圧Vaがコントローラ3から発光部14に供給される。上記構成では、スイッチSWrがオンされることによりR-LED15が通電されて点灯し、スイッチSWgがオンされることによりG-LED16が通電されて点灯し、スイッチSWbがオンされることによりB-LED17が通電されて点灯する。これらLED15~17が通電される際に流れる電流は、抵抗Rr、Rg、Rbにより制限される。つまり、抵抗Rr、Rg、Rbは、電流制限用の抵抗として機能する。
【0042】
コントローラ3は、発光部14による発光を制御するとともに発光部14の故障を診断する故障診断装置20を備えている。故障診断装置20は、マイクロコンピュータ21および抵抗22を備えている。本明細書では、マイクロコンピュータのことをマイコンとも称する。抵抗22は、電源電圧Vaが与えられる電源線L3と、電源電圧Vaを発光部14に供給するための電源線L1との間に直列に介在するように設けられている。抵抗22の電源線L1側の端子の電圧は、発光部14の故障を診断するための診断電圧Vdとしてマイコン21に与えられている。
【0043】
マイコン21は、通電制御部23、電圧検出部24、故障検出部25および報知部26などの機能ブロックを備えている。これら各機能ブロックは、マイコン21が備えるCPUがROMなどに格納されているコンピュータプログラムを実行してコンピュータプログラムに対応する処理を実行することにより実現されている、つまりソフトウェアにより実現されている。なお、各機能ブロックのうち少なくとも一部をハードウェアにより実現する構成としてもよい。
【0044】
通電制御部23は、発光部14のLED15~LED17に対する通電を制御するものであり、指令信号Sr、Sg、Sbを生成する。通電制御部23により生成された指令信号Sr、Sg、Sbは、ケーブル18を介して発光部14に与えられるとともに、故障検出部25に与えられている。通電制御部23は、指令信号Sr、Sg、Sbをパルス幅変調信号であるPWM信号とすることもできる。このようにすれば、通電制御部23は、指令信号Sr、Sg、Sbのデューティを制御することにより、LED15~LED17が発光する際における輝度を制御することができる。
【0045】
電圧検出部24は、診断電圧Vdを検出し、その検出値を故障検出部25に与える。故障検出部25は、指令信号Sr、Sg、Sbに基づいて通電制御部23によるLED15~LED17に対する通電の制御状況を把握する。故障検出部25は、通電制御部23による通電の制御状況と診断電圧Vdの検出値とに基づいて、次のようにして発光部14の故障を検出する。
【0046】
すなわち、LED15~17の端子電圧は、それらに対する通電状態に応じて変化する。そのため、上記した診断電圧Vdは、複数のLED15~17のそれぞれに対する通電状態に応じて変化する。つまり、上記構成において、診断電圧Vdは、複数のLED15~17に対する通電状態毎に固有の電圧値となる。具体的には、診断電圧Vdは、全てのLED15~17が通電されないとき、電源電圧Vaと同程度の電圧となる。
【0047】
そして、診断電圧Vdは、LED15~17のうち1つのLEDだけが通電されるとき、電源電圧Vaから上記1つのLEDの端子電圧(順方向電圧)などから定まる所定の電圧値だけ低い電圧となる。また、診断電圧Vdは、LED15~17のうち2つのLEDだけが通電されるとき、電源電圧Vaから上記2つのLEDの各端子電圧などから定まる所定の電圧値だけ低い電圧となる。
【0048】
さらに、診断電圧Vdは、全てのLED15~17が通電されるとき、電源電圧Vaから全てのLED15~17の各端子電圧などから定まる所定の電圧値だけ低い電圧となる。このように、診断電圧Vdは、LED15~17の端子電圧に応じて変化する。なお、診断電圧Vdは、1つのLEDだけが通電されるときよりも2つのLEDだけが通電されるときのほうが低い電圧となり、2つのLEDだけが通電されるときよりも全てのLEDが通電されるときのほうが低い電圧となる。
【0049】
そして、上記構成では、LED15~17に対する通電状態は、LED15~17およびLED15~17を駆動するための構成(スイッチSWr、SWg、SWb、LED15~17に対する通電経路に介在する配線など)に故障が生じていない正常時には通電制御部23による通電の制御状況と一致するが、それらのうち少なくともいずれかに故障が生じている異常時には通電制御部23による通電の制御状況と一致しない。
【0050】
このようなことから、上記構成では、診断電圧Vdは、正常時には、通電制御部23による通電の制御状況から推測することができる複数のLED15~17に対する通電状態に対応する電圧値(以下、期待値と称する)と概ね同一の電圧値となる一方で、異常時には、期待値とは異なる電圧値となる。このような点を考慮し、故障検出部25は、通電制御部23による通電の制御状況と電圧検出部24による診断電圧Vdの検出値とに基づいて発光部14の故障を検出する。
【0051】
故障検出部25が検出することができる故障モードは、以下の通りとなる。なお、以下では、LED15~17をLEDと総称するとともに、スイッチSWr、SWg、SWbをスイッチと総称する。
(a)LEDのオープン故障
(b)LEDのショート故障
(c)LEDに対する通電経路に介在する配線の断線
(d)スイッチのオープン故障
(e)スイッチのショート故障
【0052】
このように、発光部14の故障モードには、LED自体の故障だけでなく、LEDを駆動するための構成の故障も含まれる。上記各故障モードのうち、(a)、(c)および(d)は、いずれもLEDに対する通電経路がオープンとなる故障モードであるため、以下では、これら故障モードのことを単にオープン故障と称することとする。
【0053】
オープン故障が生じると、通電制御部23によりスイッチがオン制御されているにもかかわらず、そのスイッチに対応する通電経路に電流が流れないため、診断電圧Vdの検出値が期待値よりも高くなる。また、LEDのショート故障が生じると、通電制御部23によりスイッチがオン制御されているにもかかわらず、そのLEDにおいて電圧降下が生じることなく端子電圧がほぼ0Vとなり、それにより診断電圧Vdの検出値が期待値よりも低くなる。
【0054】
また、スイッチのショート故障が生じると、通電制御部23によりスイッチがオフ制御されているにもかかわらず、そのスイッチに対応する通電経路に電流が流れるため、診断電圧Vdの検出値が期待値よりも低くなる。故障検出部25は、このような診断電圧Vdの検出値と期待値との関係に基づいて、発光部14の故障を検出するとともに故障モードを特定することができる。
【0055】
報知部26は、故障検出部25により発光部14の故障が検出されると、LED15~17による点灯とは異なる方法により発光部14に故障が生じたことを作業者(ユーザ)に報知するための報知処理を行う。このような報知の具体的な手法としては、例えば、エラー音などの音を発生すること、エラーコマンドなどのコマンドを送信すること、ロボット2に対する動力の供給を遮断して緊急停止させることなどが挙げられる。
【0056】
次に、上記構成の故障診断装置20による故障診断の手法について説明する。
[1]第1診断手法
第1診断手法は、ロボット2の状態が第1状態~第5状態のいずれであっても発光部14の故障を診断することができる手法となる。また、第1診断手法は、発光部14のLED15~LED17に対する通電の制御を通常時とは変更することなく、発光部14の故障を診断する手法である。この場合、故障診断装置20は、図3に示すような内容の処理を所定の周期毎に繰り返し実行するようになっている。
【0057】
まず、ステップS101では、診断電圧Vdが検出される。続いて、ステップS102では、現在の通電制御部23による通電の制御状況に対応した診断電圧Vdの期待値が求められる。その後、ステップS103では、ステップS101で取得された診断電圧Vdの検出値と、ステップS102で取得された診断電圧Vdの期待値とが一致するか否かが判断される。なお、期待値には、各種の誤差を考慮したうえで所望する診断の精度を確保することなどを目的として所定の幅を持たせてもよい。その場合、ステップS103では、検出値が、所定の幅を持つ期待値の範囲内の値であるか否かが判断されることになる。
【0058】
検出値が期待値に一致する場合、ステップS103で「YES」となり、本処理が終了となる。この場合、故障診断装置20による故障診断の結果として、発光部14には故障が生じていない、という結果が得られたことになる。これに対し、検出値が期待値に一致しない場合、ステップS103で「NO」となり、ステップS104に進む。ステップS104では、検出値と期待値との関係などに基づいて故障モードおよび故障個所が特定される。
【0059】
上記構成では、検出値が期待値よりも高い場合、オープン故障が生じていると特定することができる。上記構成では、通電制御部23によりスイッチがオン制御されており且つ検出値が期待値よりも低い場合、LEDのショート故障が生じていると特定することができる。上記構成では、通電制御部23によりスイッチがオフ制御されており且つ検出値が期待値よりも低い場合、スイッチのショート故障が生じていると特定することができる。
【0060】
また、上記構成では、次のような点を考慮することにより、故障が生じた箇所をより詳細に特定することができる。すなわち、一般に、LEDの順方向電圧は、その発光色毎に互いに異なる電圧値となる。そして、診断電圧Vdは、LEDの順方向電圧に応じた電圧値となっている。したがって、検出値と期待値との差分と、各LEDの順方向電圧と、に基づいて、どのLEDに対応するオープン故障が生じているのか、あるいは、どのLEDのショート故障が生じているのか、を特定することができる。
【0061】
ステップS104の実行後は、ステップS105に進む。ステップS105では、故障発生時処理が実行される。故障発生時処理は、発光部14に故障が生じたときに行われる処理である。故障発生時処理には、報知部26により実行される報知処理が含まれる。すなわち、故障発生時処理では、例えば音、コマンド送信、緊急停止など、発光部14による発光以外の方法でユーザに対して発光部14に故障が発生したことが報知される。ステップS105の実行後、本処理が終了となる。
【0062】
[2]第2診断手法
第2診断手法は、ロボット2の状態が第2状態、第4状態または第5状態のときに発光部14の故障を診断することができる手法となる。また、第2診断手法は、発光部14のLED15~LED17に対する通電の制御を通常時とは若干変更したうえで、発光部14の故障を診断する手法である。
【0063】
具体的には、この場合、通電制御部23は、ロボット2の状態が発光部14の1つのLEDだけが通電されるような状態である期間において、他の1つのLEDに対する通電を所定の診断期間行う。この診断期間は、例えば数m~数百m秒といった比較的短い時間となる。つまり、この場合、図4に示すように、通電制御部23は、他の1つのLEDに対して診断期間Taだけハイレベルとなるようなパルス状の指令信号を出力することになる。
【0064】
図4は、ロボット2の状態が第2状態であるときにおける各部の信号を示している。そのため、図4では、LED16に対応する指令信号SgおよびLED17に対応する指令信号Sbが診断期間Taだけハイレベルとなるようなパルス状の信号となっている。なお、図4では、指令信号Sr、Sg、Sbについて、ハイレベルを「H」と称しているともに、ロウレベルを「L」と称している。
【0065】
また、この場合、通電制御部23は、他のLEDに対する通電を行う際、そのLEDの輝度が定常時よりも低くなるように通電を制御する。通電制御部23によるLEDの輝度の制御は、前述したように指令信号をPWM信号としたうえで、そのデューティを制御することで実現可能である。そして、この場合、故障検出部25は、診断期間Taにおける診断電圧Vdの検出値に基づいて発光部14の故障を検出する。
【0066】
この場合、故障診断装置20は、図5に示すような内容の処理を所定の周期毎に繰り返し実行するようになっている。まず、ステップS201では、LED15~LED17のうち1つのLEDにだけ通電が行われている状態(第2状態、第4状態または第5状態)であるか否かが判断される。ここで、LED15~LED17のうち2つ以上のLEDに通電が行われている状態(第1状態または第3状態)である場合、ステップS201で「NO」となり、本処理が終了となる。つまり、第2診断手法では、ロボット2が第1状態または第3状態であるときには、発光部14の故障診断が行われない。
【0067】
これに対し、LED15~LED17のうち1つのLEDにだけ通電が行われている状態(第2状態、第4状態または第5状態)である場合、ステップS201で「YES」となり、ステップS202に進む。なお、以下の説明では、LED15にだけ通電が行われている状態(第2状態)である場合を例にして各処理を説明するが、LED16またはLED17にだけ通電が行われている状態(第4状態または第5状態)でも同様の処理となる。
【0068】
ステップS202では、診断電圧Vdが検出され、その検出値が第1検出値Vd1として取得される。続いて、ステップS203では、通電が行われていなかった2つのLED16、17のうち一方のLED17に対する通電が実行される。ステップS203におけるLED17に対する通電の期間は、前述した診断期間Taとなる。ステップS204では、LED17に対して通電が行われている診断期間Taにおける診断電圧Vdが検出され、その検出値が第2検出値Vd2として取得される。
【0069】
LED17に対応したオープン故障が生じていないときには、図4に実線で示すように診断期間Taにおける診断電圧Vdは、その他の期間における診断電圧Vdより低い電圧となる。一方、LED17に対応したオープン故障が生じているときには、図4に点線で示すように、診断期間Taにおける診断電圧Vdは、その他の期間における診断電圧Vdと同程度の電圧となる。そこで、ステップS205では、第2検出値Vd2が第1検出値Vd1より低いか否かが判断される。ここで、第2検出値Vd2が第1検出値Vd1より低くない場合、つまり第2検出値Vd2が第1検出値Vd1と同程度の値である場合、ステップS205で「NO」となり、ステップS206に進む。
【0070】
ステップS206では、故障個所が特定される。この場合、第2検出値Vdが第1検出値Vd1と同程度の値であることから、LED17に対応したオープン故障が生じていると特定することができる。ステップS206の実行後は、ステップS207に進む。ステップS207では、前述した第1診断手法におけるステップS105と同様の故障発生時処理が実行される。ステップS207の実行後、本処理が終了となる。
【0071】
一方、第2検出値Vd2が第1検出値Vd1より低い場合、ステップS205で「YES」となり、ステップS208に進む。ステップS208では、通電が行われていなかった2つのLED16、17のうち他方のLED16に対する通電が実行される。ステップS208におけるLED16に対する通電の期間は、前述した診断期間Taとなる。ステップS209では、LED16に対して通電が行われている診断期間Taにおける診断電圧Vdが検出され、その検出値が第3検出値Vd3として取得される。
【0072】
LED16に対応したオープン故障が生じていないときには、図4に実線で示すように診断期間Taにおける診断電圧Vdは、その他の期間における診断電圧Vdより低い電圧となる。一方、LED16に対応したオープン故障が生じているときには、図4に点線で示すように、診断期間Taにおける診断電圧Vdは、その他の期間における診断電圧Vdと同程度の電圧となる。そこで、ステップS210では、第3検出値Vd3が第1検出値Vd1より低いか否かが判断される。ここで、第3検出値Vd3が第1検出値Vd1より低くない場合、つまり第3検出値Vd3が第1検出値Vd1と同程度の値である場合、ステップS210で「NO」となり、ステップS206に進む。
【0073】
この場合、第3検出値Vdが第1検出値Vd1と同程度の値であることから、ステップS206において、LED16に対応したオープン故障が生じていると特定することができる。一方、第3検出値Vd3が第1検出値Vd1より低い場合、ステップS210で「YES」となり、本処理が終了となる。この場合、故障診断装置20による故障診断の結果として、発光部14には故障が生じていない、という結果が得られたことになる。
【0074】
[3]第3診断手法
第3診断手法は、ロボット2の状態が第2状態、第4状態または第5状態のときに発光部14の故障を診断することができる手法となる。また、第3診断手法は、発光部14のLED15~LED17に対する通電の制御を通常時とは若干変更したうえで、発光部14の故障を診断する手法である。
【0075】
具体的には、この場合、通電制御部23は、ロボット2の状態が発光部14の1つのLEDだけが通電されるような状態である期間において、他の複数の(2つの)LEDに対する通電を所定の診断期間行う。この診断期間は、第2診断手法における診断期間Taと同様に比較的短い時間となる。また、この場合も、第2診断手法と同様、通電制御部23は、他のLEDに対する通電を行う際、そのLEDの輝度が定常時よりも低くなるように通電を制御する。そして、この場合、故障検出部25は、診断期間における診断電圧Vdの検出値に基づいて発光部14の故障を検出する。
【0076】
この場合、故障診断装置20は、図6に示すような内容の処理を所定の周期毎に繰り返し実行するようになっている。まず、ステップS301では、LED15~LED17のうち1つのLEDにだけ通電が行われている状態(第2状態、第4状態または第5状態)であるか否かが判断される。ここで、LED15~LED17のうち2つ以上のLEDに通電が行われている状態(第1状態または第3状態)である場合、ステップS301で「NO」となり、本処理が終了となる。つまり、第3診断手法では、ロボット2が第1状態または第3状態であるときには、発光部14の故障診断が行われない。
【0077】
これに対し、LED15~LED17のうち1つのLEDにだけ通電が行われている状態(第2状態、第4状態または第5状態)である場合、ステップS301で「YES」となり、ステップS302に進む。なお、以下の説明では、LED15にだけ通電が行われている状態(第2状態)である場合を例にして各処理を説明するが、LED16またはLED17にだけ通電が行われている状態(第4状態または第5状態)でも同様の処理となる。
【0078】
ステップS302では、診断電圧Vdが検出され、その検出値が第1検出値Vd1として取得される。続いて、ステップS303では、通電が行われていなかった2つのLED16、17に対する通電が実行される。ステップS303におけるLED16、17に対する通電の期間は、前述した診断期間となる。ステップS304では、LED16、17に対して通電が行われている診断期間における診断電圧Vdが検出され、その検出値が第2検出値Vd2として取得される。
【0079】
LED16、17の双方に対応したオープン故障が生じていないときには、診断期間における診断電圧Vdは、その他の期間における診断電圧Vdに対し、2つのLEDが通電される分だけ低い電圧となる。一方、LED16、17の一方に対応したオープン故障が生じているときには、診断期間における診断電圧Vdは、その他の期間における診断電圧Vdに対し、1つのLEDが通電される分だけ低い電圧となる。また、LED16、17の双方に対応したオープン故障が生じているときには、診断期間における診断電圧Vdは、その他の期間における診断電圧Vdと同程度の電圧となる。
【0080】
このような点を踏まえ、ステップS305では、第1検出値Vd1から第2検出値Vd2を減算した値が閾値Vt2以上であるか否かが判断される。閾値Vt2は、2つのLEDが通電されることに伴う診断電圧Vdの低下量に対応している。ここで、第1検出値Vd1から第2検出値Vd2を減算した値が閾値Vt2以上である場合、ステップS305で「YES」となり、本処理が終了となる。この場合、故障診断装置20による故障診断の結果として、発光部14には故障が生じていない、という結果が得られたことになる。
【0081】
一方、第1検出値Vd1から第2検出値Vd2を減算した値が閾値Vt2未満である場合、ステップS305で「NO」となり、ステップS306に進む。ステップS306では、第1検出値Vd1から第2検出値Vd2を減算した値が閾値Vt1以上であるか否かが判断される。閾値Vt1は、1つのLEDが通電されることに伴う診断電圧Vdの低下量に対応している。ここで、第1検出値Vd1から第2検出値Vd2を減算した値が閾値Vt1未満である場合、ステップS306で「NO」となり、ステップS307に進む。
【0082】
ステップS307では、故障個所が特定される。この場合、第2検出値Vd2が第1検出値Vd1と同程度の値であると考えられるため、LED16、17の双方に対応したオープン故障が生じていると特定することができる。ステップS307の実行後は、ステップS308に進む。一方、第1検出値Vd1から第2検出値Vd2を減算した値が閾値Vt1以上である場合、ステップS306で「YES」となり、ステップS309に進む。
【0083】
この場合、LED16、17の一方に対応したオープン故障が生じていると特定することはできるものの、LED16、17のどちらに対応したオープン故障が生じているかを特定することはできない。そこで、ステップS309では、故障個所を特定するための故障個所特定処理が実行される。故障個所特定処理の具体的な内容は、例えば図7に示すようなものとなる。
【0084】
まず、ステップS401では、他のLED16、17のうち一方、例えばLED16に対する通電が実行される。ステップS401におけるLED16に対する通電の期間は、前述した診断期間となる。続いて、ステップS402では、LED16に対して通電が行われている診断期間における診断電圧Vdが検出され、その検出値が第3検出値Vd3として取得される。
【0085】
発生しているオープン故障がLED17に対応したものであるとき、LED16に対応したオープン故障が生じていないことから、この診断期間における診断電圧Vdは、その他の期間における診断電圧Vdより低い電圧となる。一方、発生しているオープン故障がLED16に対応したものであるときには、この診断期間における診断電圧Vdは、その他の期間における診断電圧Vdと同程度の電圧となる。
【0086】
そこで、ステップS403では、第3検出値Vd3が第1検出値Vd1より低いか否かが判断される。ここで、第3検出値Vd3が第1検出値Vd1より低い場合、ステップS403で「YES」となり、ステップS404に進む。ステップS404では、他のLED16、17のうち他方のLEDであるLED17に対応したオープン故障が生じていると特定される。
【0087】
一方、第3検出値Vd3が第1検出値Vd1より低くない場合、つまり第3検出値Vd3が第1検出値Vd1と同程度の値である場合、ステップS403で「NO」となり、ステップS405に進む。ステップS405では、他のLED16、17のうち一方のLEDであるLED16に対応したオープン故障が生じていると特定される。ステップS404またはS405の実行後、故障個所特定処理が終了となり、ステップS308に進む。ステップS308では、前述した第1診断手法におけるステップS105などと同様の故障発生時処理が実行される。ステップS308の実行後、本処理が終了となる。
【0088】
以上説明したように、本実施形態によれば次のような効果が得られる。
本実施形態のロボットシステム1は、発光部14の故障を診断する故障診断装置20を備えている。故障診断装置20は、LED15~17に対する通電を制御する通電制御部23と、LED15~17の端子電圧に応じて変化する診断電圧Vdを検出する電圧検出部24と、故障検出部25と、を備える。故障検出部25は、通電制御部23による通電の制御状況と電圧検出部24による診断電圧Vdの検出値とに基づいて発光部14の故障を検出する。
【0089】
具体的には、故障検出部25は、そのときの通電の制御状況から推測することができるLED15~17に対する通電状態に対応した診断電圧Vdの期待値と、診断電圧Vdの検出値と、が一致するか否かに基づいて、発光部14の故障を診断する。このような構成によれば、発光部14の故障を精度良く検出することができる。また、故障検出部25は、互いに発光色の異なるLED15~17の順方向電圧の違いをも考慮して故障個所を特定するようになっている。このようにすれば、LED15~17およびそれらLED15~17を駆動するための構成のいずれに故障が生じているかを特定することもできる。
【0090】
上記構成のロボットシステム1では、全てのLED15~17がいずれも非通電(非点灯)の状態において、いずれかのLEDを通電(点灯)して発光部14の故障診断を行うといった手法を採用することもできる。しかし、このような手法では、発光部14が無発光である状態から、突然、発光部14がロボット2の状態とは無関係の色に発光することになる。この場合、発光部14が無発光の状態から発光の状態へと遷移するため、そのような変化が作業者(ユーザ)に認識され易い。そのため、作業者は、発光部14が自身の予期しないタイミングで急に発光したことに気づいてしまい、不安感を抱くおそれがある。
【0091】
これに対し、本実施形態における第1診断手法では、発光部14のLED15~LED17に対する通電の制御を通常時とは変更することなく、発光部14の故障を診断するようになっている。このような第1診断手法によれば、発光部14の動作は通常時と同様のものとなることから、作業者に対して不安感を与えることなく、発光部14の診断を行うことができる。
【0092】
また、本実施形態における第2診断手法では、通電制御部23は、ロボット2の状態が発光部14の1つのLEDだけが通電されるような状態である期間において、他の1つのLEDに対する通電を所定の診断期間Ta行うようになっている。そして、本実施形態における第3診断手法では、通電制御部23は、ロボット2の状態が発光部14の1つのLEDだけが通電されるような状態である期間において、他の2つのLEDに対する通電を所定の診断期間Ta行うようになっている。そして、第2、第3診断手法では、故障検出部25は、診断期間Taにおける診断電圧Vdの検出値に基づいて発光部14の故障を検出する。
【0093】
このような第2、第3診断手法によれば、発光部14が無発光の状態から急に発光の状態へと遷移することはない。そして、この場合、発光部14による発光色は、元々通電されていた1つのLEDによる発光色から、その発光色に対して他のLEDによる発光色が混合された混合色へと変化するだけとなり、そのような変化は作業者に認識され難い。そのため、第2、第3診断手法によっても、作業者に対して不安感を与えることなく、発光部14の診断を行うことができる。
【0094】
第1~第3診断手法には、それぞれメリットがある。まず、第1診断手法は、LED15~LED17に対する通電の制御を通常時と変更する必要がないことから、発光部14の発光状態が通常時から全く変化することなく発光部14の診断を実施することができるというメリットがある。ただし、第1診断手法では、3つのLED15~17における順方向電圧の差異が小さい場合、故障個所の特定が難しくなるおそれがある。
【0095】
これに対し、第2、第3診断手法では、元々通電されていたLEDとは別のLEDに対する通電を行い、その通電が行われる診断期間Taにおける診断電圧Vdが他の期間における診断電圧Vdより低くなったか否かに基づいて、その別のLEDに関連する故障が発生しているか否かを検出することができる。したがって、第2、第3診断手法によれば、3つのLED15~17における順方向電圧の差異が小さい場合であっても、故障個所を特定することができるというメリットがある。
【0096】
また、第2、第3診断手法では、通電制御部23は、他のLEDに対する通電を行う際、そのLEDの輝度が定常時よりも低くなるように通電を制御するようになっている。このようにすれば、元々通電されていた1つのLEDによる発光色から混合色へと変化する際における色の変化の度合いを小さく抑えることが可能となり、そのような変化が作業者に一層認識され難くなる。したがって、第2、第3診断手法によれば、作業者に対して不安感を与える可能性を一層低く抑えつつ、発光部14の診断を行うことができる。
【0097】
第2診断手法および第3診断手法は、それぞれ単独でも成立するが、それらを組み合わせることもできる。例えば、まず第3診断手法による発光部14の故障検出を行い、それにより発光部14に故障が発生している可能性があるという診断結果が得られた場合に、第2診断手法による発光部14の故障検出を行うといったように各診断手法を組み合わせるとよい。または、まず第2診断手法による発光部14の故障検出を行い、それにより発光部14に故障が発生している可能性があるという診断結果が得られた場合に、第3診断手法による発光部14の故障検出を行うといったように各診断手法を組み合わせるとよい。このようにすれば、LED15~18について1つずつの点灯では問題が生じないものの複数の点灯の際に過電流などが原因で点灯しなくなるといったような故障を検出することが可能となる。
【0098】
本実施形態の故障診断装置20では、通電制御部23は、ロボット2の状態にかかわらずLED15~18に対する通電を行っても、ロボット2を使用するユーザの安全性を大きく損なわないように制御可能に構成されている。このような構成によれば、通電制御部23が発光部14の故障診断のために通常とは異なるようにLED15~18に対する通電を行った場合でも、ユーザの安全性に問題が生じることはない。
【0099】
本実施形態の故障診断装置20では、LED15~18の各発光色は、通電制御部23がロボット2の状態にかかわらずLED15~18に対する通電を行った場合でも、ロボット2を使用するユーザがロボット2の状態を誤認し難くなるような色となっている。このようにすれば、通電制御部23が発光部14の故障診断のために通常とは異なるようにLED15~18に対する通電を行った場合でも、ユーザは、発光部14の発光色によりロボット2の状態を誤認することはなく、そのため、ロボット2に不用意に近づくことはなく、安全性に問題が生じることはない。
【0100】
より具体的には、本実施形態の故障診断装置20は、光の三原色に対応する3つのLEDであるR-LED15、G-LED16およびB-LED17を備えた発光部14を診断の対象としている。発光部14は、前述したようにLED15~17に対する通電が行われることにより、ロボット2の状態に応じた色に発光する。このような発光部14を故障診断の対象とすることで、次のような効果が得られる。
【0101】
すなわち、この場合、1つのLEDだけが通電されるロボット2の状態は、第2状態、第4状態および第5状態となる。上記構成によれば、このような状態のとき、故障を診断するために他の1つのLEDに対する通電を行ったとしても、つまり、第2診断手法による発光部14の診断を行ったとしても、作業者の安全性が低下するような問題が生じることはない。以下、その理由について説明する。
【0102】
まず、ロボット2が第2状態であるとき、B-LED17に対する通電を行ったとしても、発光部14による発光色は、赤色と青色の混合色であるマゼンタになり、ロボット2の他の状態を表す色とはならないため、作業者がロボット2の状態を誤認して不用意に近づくことはなく、安全性に問題が生じることはない。また、ロボット2が第2状態であるとき、G-LED16に対する通電を行ったとしても、発光部14による発光色は、赤色と緑色の混合色である黄色になる。この場合、黄色は第3状態に対応しており、元々の発光色である赤色と同様、ロボット2の状態がエラーであることを表す色である。そのため、作業者は、発光色が赤色から黄色に変化したことに気づいたとしても、ロボット2の状態がエラーであるとの認識に変化はなく、ロボット2に不用意に近づくことはなく、安全性に問題が生じることはない。
【0103】
ロボット2が第4状態であるとき、R-LED15に対する通電を行ったとしても、発光部14による発光色は、緑色と赤色の混合色である黄色になる。黄色は、前述した通り、ロボット2の状態がエラーであることを表す色である。そのため、作業者は、発光色が緑色から黄色に変化したことに気づいたとしても、ロボット2の状態が初期化中からエラーに変化したと認識することになり、ロボット2に不用意に近づくことはなく、安全性に問題が生じることはない。また、ロボット2が第4状態であるとき、B-LED17に対する通電を行ったとしても、発光部14による発光色は、緑色と青色の混合色であるシアンになり、ロボット2の他の状態を表す色とはならないため、作業者がロボット2の状態を誤認して不用意に近づくことはなく、安全性に問題が生じることはない。
【0104】
ロボット2が第5状態であるとき、R-LED15に対する通電を行ったとしても、発光部14による発光色は、青色と赤色の混合色であるマゼンタになり、ロボット2の他の状態を表す色とはならないため、作業者がロボット2の状態を誤認して不用意に近づくことはなく、安全性に問題が生じることはない。また、ロボット2が第5状態であるとき、G-LED16に対する通電を行ったとしても、発光部14による発光色は、青色と緑色の混合色であるシアンになり、ロボット2の他の状態を表す色とはならないため、作業者がロボット2の状態を誤認して不用意に近づくことはなく、安全性に問題が生じることはない。
【0105】
また、上記構成によれば、1つのLEDだけが通電される状態(第2状態、第4状態および第5状態)のとき、故障を診断するために他の2つのLEDに対する通電を行ったとしても、つまり、第3診断手法による発光部14の診断を行ったとしても、作業者の安全性が低下するような問題が生じることはない。さらに、上記構成によれば、2つのLEDが通電される状態(第3状態)のとき、故障を診断するために他の1つのLEDに対する通電を行ったとしても、作業者の安全性が低下するような問題が生じることはない。以下、その理由について説明する。
【0106】
すなわち、これらの場合、いずれも発光部14による発光色は白色になる。本実施形態において、白色はロボット2が所定の動作を自動的に実行する第1状態を表す色である。そのため、作業者は、発光部14の発光色が元々の色から白色に変化したことに気づいたとしても、ロボット2の状態が元々の色が表す状態から第1状態に変化したと認識することになり、結果的にロボット2に不用意に近づくことはなく、安全性に問題が生じることはない。
【0107】
このように、上記構成によれば、作業者が誤ってロボット2に近づくと安全性に問題が生じるおそれがある状態(特に、第1状態)であるにもかかわらず、作業者が、発光部14の発光色によりロボット2の状態がロボット2に近づいても問題が無い状態(特に、第5状態)であると誤認してロボット2に不用意に近づいてしまう、といった事態が発生することを確実に防止できる。
【0108】
本実施形態の第2診断手法によれば、次のような効果も得られる。まず、R-LED15にだけ通電される第2状態のときに診断が実施されることにより次のような効果が得られる。すなわち、第2状態は比較的重要度の高いエラーが生じている状態であることから、そもそも作業者は不用意にロボット2に近づくことはない。そのため、この第2状態において他のLEDが短時間点灯することで発光色が一瞬変化したとしても、作業者がロボット2に近づく可能性は極めて低い。したがって、第2状態のときに診断が実施されることにより、安全性を良好に維持しつつ、発光部14の故障診断を行うことができる。
【0109】
また、G-LED16にだけ通電される第4状態のときに診断が実施されることにより次のような効果が得られる。すなわち、第4状態はロボット2が初期化中である状態であることから、そのような初期化中に発光部14の故障診断ができる。そのため、第4状態のときに診断が実施されることにより、発光部14が故障している状態でロボット2が通常の動作状態へと遷移する事態の発生を防止することができ、その結果、安全性が向上する。
【0110】
さらに、B-LED17にだけ通電される第5状態のときに診断が実施されることにより次のような効果が得られる。すなわち、第5状態は、ロボット2がダイレクトティーチモードとなっている状態である。通常、ダイレクトティーチには比較的長い時間を要することになる。そのため、第5状態のときに診断が実施されることにより、発光部14の故障診断を行う時間として比較的長い時間を確保することが可能となり、発光部14の故障を早期発見することが可能となり、その結果、安全性が向上する。
【0111】
第2診断手法において、通電が行われていなかった2つのLED16、17のうち一方のLED17に対する通電を実行する診断期間と、他方のLED16に対する通電を実行する診断期間との間隔は、言い換えるとLED17に対する通電を実行してからLED16に対する通電を実行するまでの間隔は、次のような考え方に基づいて設定するとよい。すなわち、LED17に対する通電が実行された後、比較的短い時間が経過した後にLED16に対する通電が実行されるように上記間隔を設定すると、作業者は、LED17に対する通電による1回目の発光色の変化により発光色の変化に対する警戒心を持った状態で、LED16に対する通電による2回目の発光色の変化が起こるおそれがあり、そうすると、その2回目の発光色の変化に明確に気づいてしまう可能性がある。
【0112】
そこで、LED17に対する通電が実行された後、その直後にLED16に対する通電が実行されるように、上記間隔を設定するとよい。このようにすれば、発光部14の発光色が連続して変化することになるため、作業者は、変化した発光色を明確に認識することが難しくなり、また、そもそも発光色が変化したかどうかに気づく可能性も低くなる。または、LED17に対する通電が実行された後、比較的長い時間が経過した後にLED16に対する通電が実行されるように、上記間隔を設定するとよい。
【0113】
このようにすれば、LED17に対する通電が行われたことにより発光色が変化した後、比較的長い時間が経過してからLED16に対する通電が行われて発光色が再び変化する。そのため、作業者は、1回目の発光色の変化に多少気づいたとしても、その後比較的長い時間が経過することで、その変化に対する警戒心が薄れ、発光色の変化に過敏に反応することがなくなり、2回目の発光色の変化に明確に気づく可能性が低くなる。
【0114】
故障診断装置20は、故障診断を行った結果として、発光部14に故障が生じているという結果が得られると、LED15~18の点灯とは異なる方法により発光部14に故障が生じたことを作業者(ユーザ)に報知する報知処理を行う報知部26を備えている。発光部14の故障が検出されたとき、LED15~18による点灯が正常に行い得る状態ではない可能性が高いため、LED15~18による点灯で発光部14に故障が生じたことを報知する手法では、確実な報知が実現できないおそれがある。上記構成によれば、LED15~18の点灯とは異なる方法により発光部14に故障が生じたことが報知されるため、確実な報知を実現することができる。
【0115】
本実施形態では、上記した報知の具体的な手法として、ロボット2に対する動力の供給を遮断してロボット2を緊急停止させる、といった手法を採用することができる。このようにすれば、発光部14に故障が生じたことにより仮に作業者が発光部14の発光色を誤認したとしても、ロボット2の動作が強制的に停止されることから、その誤認に伴い作業者の安全性が低下するといった問題が生じることがない。
【0116】
本実施形態の構成において、LED15~17の端子電圧に応じて変化する診断電圧Vdを生じさせるための抵抗22は、コントローラ3に設けられており、電圧検出部24は、その抵抗22の端子の電圧を診断電圧Vdとして検出するようになっている。このような抵抗22は、コントローラ3側ではなく、ロボット2側に設けるように変形することも可能である。しかし、本実施形態の構成によれば、このような変形例の構成に比べ、次のようなメリットがある。
【0117】
変形例の構成では、コントローラ3とロボット2との間を接続するケーブル18の本数(配線の数)が増えることになる。すなわち、本実施形態の構成では、電源電圧Vaを発光部14に供給するための配線(電源線L1)だけでよかったものが、変形例の構成では、これに加え、ロボット2からコントローラ3へと診断電圧Vdを導くための配線が必要となる。つまり、本実施形態の構成によれば、変形例の構成に比べ、ケーブル18の配線数を1つ減らすことができる。
【0118】
変形例の構成では、コントローラ3に設けられた電圧検出部24は、ロボット2に設けられた抵抗22の端子電圧をケーブル18の配線を介して検出することから、配線でのノイズの影響、配線での電圧降下の影響などにより診断電圧Vdの検出精度が低下するおそれがある。これに対し、本実施形態の構成では、コントローラ3に設けられた電圧検出部24は、同じくコントローラ3に設けられた抵抗22の端子電圧を診断電圧Vdとして検出することから、配線でのノイズの影響、配線での電圧降下の影響などにより診断電圧Vdの検出精度が低下することはなく、変形例の構成に比べて診断電圧Vdの検出精度を向上することができる。
【0119】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態に対して発光部の構成が変更された第2実施形態について図8を参照して説明する。
図8に示すように、本実施形態の発光部31は、第1実施形態の発光部14に対し、R-LED15、G-LED16およびB-LED17を4つずつ備えている点などが異なっている。
【0120】
この場合、スイッチSWrの他方の端子は、抵抗Rrと、4つのR-LED15のそれぞれを介してグランド線L2に接続されている。また、この場合、スイッチSWgの他方の端子は、抵抗Rgと、4つのG-LED16のそれぞれを介してグランド線L2に接続されている。また、この場合、スイッチSWbの他方の端子は、抵抗Rbと、4つのB-LED17のそれぞれを介してグランド線L2に接続されている。
【0121】
上記構成によれば、4つのR-LED15に対する通電は指令信号Srにより制御され、4つのG-LED16に対する通電は指令信号Sgにより制御され、4つのB-LED17に対する通電は指令信号Sbにより制御される。したがって、上記構成では、スイッチSWrがオンされることにより4つのR-LED15が通電されて点灯し、スイッチSWgがオンされることにより4つのG-LED16が通電されて点灯し、スイッチSWbがオンされることにより4つのB-LED17が通電されて点灯する。
【0122】
以上説明した本実施形態の構成の発光部31についても、第1実施形態において説明した故障診断装置20により同様の手法を用いて故障診断を行うことができる。ただし、この場合、故障個所の特定としては、4つのR-LED15のうちどのLEDが故障しているのか、といった点まで特定することはできない。言い換えると、この場合、4つのR-LED15のうちいずれかが故障しているという特定は可能となる。なお、これは、G-LED16およびB-LED17についても同様である。
【0123】
(その他の実施形態)
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で任意に変形、組み合わせ、あるいは拡張することができる。
上記実施形態で示した数値などは例示であり、それに限定されるものではない。
【0124】
本発明のロボットの故障診断装置は、一般的な産業用ロボットシステムであるロボットシステム1に用いられるものに限らず、発光色が異なる複数種類のLEDが個別に通電されて点灯することによりロボットの状態に応じた色の光を発光する発光部を備えたロボットシステム全般に適用することができる。
【0125】
上記各実施形態では、診断電圧Vdを生じさせるための抵抗22は、LED15~17に対する通電経路の上流側(電源線L3側)に設けられており、電圧検出部24は、抵抗22の下流側の端子電圧を診断電圧Vdとして検出するようになっている。ただし、このような抵抗22は、LED15~17に対する通電経路の下流側(グランド線L2側)に設けることができる。この場合、電圧検出部24は、下流側に設けられた抵抗22の上流側の端子電圧を診断電圧Vdとして検出することになる。
【符号の説明】
【0126】
2…ロボット、14、31…発光部、15…赤色発光ダイオード、16…緑色発光ダイオード、17…青色発光ダイオード、20…故障診断装置、23…通電制御部、24…電圧検出部、25…故障検出部、26…報知部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8