(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】音響デバイス及びスピーカ装置
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20240110BHJP
H04R 7/04 20060101ALI20240110BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20240110BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20240110BHJP
H10N 30/88 20230101ALI20240110BHJP
H10N 30/50 20230101ALI20240110BHJP
【FI】
H04R17/00
H04R7/04
H04R1/02 105Z
H10N30/20
H10N30/88
H10N30/50
(21)【出願番号】P 2019178576
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-06-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晃
(72)【発明者】
【氏名】木嶋 薫
【審査官】大石 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-080099(JP,A)
【文献】国際公開第2015/115608(WO,A1)
【文献】特開2019-149611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
H04R 7/04
H04R 1/02
H10N 30/20
H10N 30/88
H10N 30/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に支持される音響デバイスであって、
圧電素子と、
前記圧電素子の変位に伴って振動する振動板と、
前記振動板を前記基材に支持する支持部材と、を備え、
前記振動板は、互いに対向している第一主面と第二主面とを有していると共に、樹脂からなり、
前記圧電素子は、前記振動板の前記第一主面に設けられており、
前記支持部材は、前記振動板の前記第二主面に設けられていると共に、前記振動板の硬さより小さい硬さを有しており、
前記振動板と前記支持部材とが、音響空間を画成している、音響デバイス。
【請求項2】
前記音響空間を前記音響空間の外部と連通する連通路が、前記振動板及び前記支持部材の少なくとも一方に設けられている、請求項1に記載の音響デバイス。
【請求項3】
前記支持部材は、
前記振動板の前記第二主面と接すると共に、樹脂からなる第一層と、
前記基材と接すると共に、樹脂からなる第二層と、
前記第一層と前記第二層との間に位置する第三層と、を有しており、
前記第三層は、前記振動板の振動が前記支持部材を通して前記基材に伝わるのを抑制する、請求項1又は2に記載の音響デバイス。
【請求項4】
前記第三層は、不織布からなる、請求項
3に記載の音響デバイス。
【請求項5】
基材と、
請求項1~
4のいずれか一項に記載の音響デバイスと、を備えているスピーカ装置。
【請求項6】
前記音響空間を前記音響空間の外部と連通する連通路が、前記基材に設けられている、請求項
5に記載のスピーカ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響デバイスと、当該音響デバイスを備えているスピーカ装置と、に関する。
【背景技術】
【0002】
基材に支持される音響デバイスが知られている(たとえば、特許文献1参照)。この音響デバイスは、圧電素子と、圧電素子が接合されている樹脂製の板と、を備えている。樹脂製の板は、接着部材によって基材に接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧電素子が接合されている樹脂製の板が、接着部材によって基材に接合されている構成では、圧電素子の変位が、樹脂製の板から基材に伝わり、基材が振動する。基材が振動する場合、音響デバイスの音圧特性が低下するおそれがある。
【0005】
本発明の一つの態様は、音圧特性の低下が抑制されている音響デバイスを提供することを目的とする。本発明の別の一つの態様は、音圧特性の低下が抑制されているスピーカ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの態様に係る音響デバイスは、圧電素子と、圧電素子の変位に伴って振動する振動板と、振動板を基材に支持する支持部材と、を備えており、基材に支持される。振動板は、互いに対向している第一主面と第二主面とを有していると共に、樹脂からなる。圧電素子は、振動板の第一主面に設けられている。支持部材は、振動板の第二主面に設けられている。振動板と支持部材とが、音響空間を画成している。
【0007】
上記一つの態様では、振動板と支持部材とが、音響空間を画成している。したがって、振動板の振動、すなわち、圧電素子の変位は、基材に伝わりがたい。
振動板は、振動板とで音響空間を画成する支持部材によって基材に支持される。したがって、振動板の振動、すなわち、圧電素子の変位が、基材によって拘束されがたい。
これらの結果、上記一つの態様は、音圧特性の低下を抑制する。
【0008】
上記一つの態様では、音響空間を音響空間の外部と連通する連通路が、振動板及び支持部材の少なくとも一方に設けられていてもよい。
本構成は、所望の音圧周波数特性を実現し得る。
【0009】
上記一つの態様では、支持部材が、振動板の第二主面と接すると共に、樹脂からなる第一層と、基材と接すると共に、樹脂からなる第二層と、第一層と第二層との間に位置する第三層と、を有していてもよい。第三層が、振動板の振動が支持部材を通して基材に伝わるのを抑制してもよい。
本構成では、圧電素子の変位が、基材により一層伝わりがたく、かつ、基材によってより一層阻害されがたい。したがって、本構成は、音圧特性の低下をより一層抑制する。
【0010】
上記一つの態様では、第三層が、不織布からなっていてもよい。
本構成は、振動板の振動が支持部材を通して基材に伝わるのを抑制する第三層を、適切かつ簡易に実現する。
【0011】
上記一つの態様では、支持部材が、振動板の硬さより小さい硬さを有していてもよい。
本構成では、圧電素子の変位が、基材により一層伝わりがたく、かつ、基材によってより一層阻害されがたい。したがって、本構成は、音圧特性の低下をより一層抑制する。
【0012】
別の一つの態様に係るスピーカ装置は、基材と、上記音響デバイスと、を備えている。
上記別の一つの態様では、振動板と支持部材とが、音響空間を画成している。したがって、振動板の振動、すなわち、圧電素子の変位は、基材に伝わりがたい。
振動板は、振動板とで音響空間を画成する支持部材によって基材に支持される。したがって、基材は、振動板の振動、すなわち、圧電素子の変位を拘束しがたい。
これらの結果、上記別の一つの態様は、音圧特性の低下を抑制する。
【0013】
上記別の一つの態様では、音響空間を音響空間の外部と連通する連通路が、基材に設けられていてもよい。
本構成は、所望の音圧周波数特性を実現し得る。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一つの態様によれば、音圧特性の低下が抑制されている音響デバイスが提供される。本発明の別の一つの態様によれば、音圧特性の低下が抑制されているスピーカ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態に係るスピーカ装置を示す平面図である。
【
図2】本実施形態に係るスピーカ装置の断面構成を示す図である。
【
図3】本実施形態に係るスピーカ装置の断面構成を示す図である。
【
図4】本実施形態に係るスピーカ装置の断面構成を示す図である。
【
図8】本実施形態の一変形例に係るスピーカ装置を示す平面図である。
【
図9】本実施形態の一変形例に係るスピーカ装置の断面構成を示す図である。
【
図10】本実施形態の別の一変形例に係るスピーカ装置の断面構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0017】
図1~
図4を参照して、本実施形態に係るスピーカ装置SDの構成を説明する。
図1は、本実施形態に係るスピーカ装置を示す平面図である。
図2、
図3、及び
図4は、一実施形態に係るスピーカ装置の断面構成を示す図である。
図2、
図3、及び
図4では、後述する複数の内部電極21,22,23,24,25,26,27の図示を省略している。
スピーカ装置SDは、
図1及び
図2に示されるように、基材1と、音響デバイスADと、配線部材WMと、複数のリード線LEと、を備えている。音響デバイスADは、基材1に支持されている。基材1は、主面1aを有している。音響デバイスADは、主面1aと対向するように、主面1a上に配置されている。基材1は、たとえば、電子機器の筐体、ディスプレイパネル、又はフィルム材である。ディスプレイパネルは、たとえば、フレキシブル有機ELディスプレイパネルを含む。本実施形態では、スピーカ装置SDは、一対のリード線LEを備えている。
【0018】
音響デバイスADは、
図2に示されるように、圧電素子10と、粘着層50と、振動板60と、支持部材90と、を備えている。圧電素子10は、バイモルフ型の圧電素子であり、圧電素体11と、複数の外部電極13,14,15と、を有している。本実施形態では、圧電素子10は、三つの外部電極13,14,15を有している。圧電素子10は、積層型圧電素子である。
【0019】
圧電素体11は、
図5にも示されるように、直方体形状を呈している。
図5は、圧電素子の斜視図である。本明細書での「直方体形状」は、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状を含む。
圧電素体11は、互いに対向している一対の主面11a,11b、互いに対向している一対の側面11c、及び、互いに対向している一対の側面11eを有している。一対の主面11a,11bが対向している方向は、第一方向D1である。第一方向D1は、各主面11a,11bに直交する方向でもある。一対の側面11eが対向している方向は、第二方向D2である。第二方向D2は、各側面11cに直交する方向でもある。一対の側面11cが対向している方向は、第三方向D3である。第三方向D3は、各側面11eに直交する方向でもある。
【0020】
各主面11a,11bは、四つの辺を有している。各主面11a,11bは、矩形状を呈している。本実施形態では、各主面11a,11bは、第三方向D3が長辺方向である長方形状を呈している。すなわち、各主面11a,11bは、一対の長辺と一対の短辺とを有している。この場合、圧電素子10(圧電素体11)は、平面視で、第三方向D3が長辺方向である長方形状を呈している。本明細書での「矩形状」は、たとえば、各角が面取りされている形状、及び、各角が丸められている形状を含む。各主面11a,11bは、正方形状を呈していてもよく、また、第三方向D3が短辺方向である長方形状を呈していてもよい。各主面11a,11bは、円形状を呈していてもよい。この場合、圧電素子10(圧電素体11)は、円板形状を呈する。
【0021】
一対の側面11cは、一対の主面11a,11bを連結するように第一方向D1に延在している。一対の側面11cは、第三方向D3にも延在している。一対の側面11eは、一対の主面11a,11bを連結するように第一方向D1に延在している。一対の側面11eは、第二方向D2にも延在している。圧電素体11の第二方向D2での長さは、たとえば、15mmである。圧電素体11の第三方向D3での長さは、たとえば、30mmである。圧電素体11の第一方向D1での長さ、すなわち、圧電素体11の厚みは、たとえば、0.49mmである。各主面11a,11bと各側面11c,11eとは、間接的に隣り合っていてもよい。この場合、各主面11a,11bと各側面11c,11eとの間には、稜部が位置する。
【0022】
圧電素体11では、
図6及び
図7に示されるように、複数の圧電体層17a,17b,17c,17d,18a,18b,18c,18dが第一方向D1に積層されている。
図6は、圧電素子の断面構成を示す図である。
図7は、圧電素子の分解斜視図である。
本実施形態では、圧電素体11は、8層の圧電体層17a,17b,17c,17d,18a,18b,18c,18dを有している。圧電体層17aは、主面11aを有している。圧電体層18dは、主面11bを有している。圧電体層17b,17c,17d,18a,18b,18cは、圧電体層17aと圧電体層18dとの間に位置している。圧電体層17b,17d,18a,18cの分極の向きは、圧電体層17c,18bの分極の向きと反対である。本実施形態では、圧電体層17a,17b,17c,17d,18a,18b,18c,18dの厚みは同等である。本明細書での「同等」は、必ずしも、値が一致していることだけを意味するのではない。予め設定した範囲での微差、製造誤差、又は測定誤差が含まれている場合でも、形状が同等であるとしてもよい。
【0023】
各圧電体層17a,17b,17c,17d,18a,18b,18c,18dは、圧電材料からなる。本実施形態では、各圧電体層17a,17b,17c,17d,18a,18b,18c,18dは、圧電セラミック材料からなる。圧電セラミック材料は、たとえば、PZT[Pb(Zr、Ti)O3]、PT(PbTiO3)、PLZT[(Pb,La)(Zr、Ti)O3]、又はチタン酸バリウム(BaTiO3)を含む。各圧電体層17a,17b,17c,17d,18a,18b,18c,18dは、たとえば、上述した圧電セラミック材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。実際の圧電素体11では、各圧電体層17a,17b,17c,17d,18a,18b,18c,18dは、各圧電体層17a,17b,17c,17d,18a,18b,18c,18dの間の境界が認識できない程度に一体化されている。
【0024】
各外部電極13,14,15は、主面11a上に配置されている。外部電極13,14,15は、外部電極13、外部電極14、外部電極15の順で第二方向D2に並んでいる。外部電極13と外部電極14とは、第二方向D2で隣り合っている。外部電極14と外部電極15とは、第二方向D2で隣り合っている。第二方向D2において、外部電極14と外部電極15との最短距離は、外部電極13と外部電極14との最短距離よりも長い。各外部電極13,14,15は、第一方向D1から見て、主面11aの全ての縁(四辺)から離間している。
【0025】
各外部電極13,14,15は、第一方向D1から見て、矩形状を呈している。各外部電極13,14は、第一方向D1から見て、長方形状を呈している。本実施形態では、各外部電極13,14は、長方形状の各角が丸められている形状を呈している。外部電極15は、第一方向D1から見て、正方形状を呈している。本実施形態では、外部電極15は、正方形状の各角が丸められている形状を呈している。各外部電極13,14,15は、導電性材料からなる。導電性材料には、たとえば、Ag、Pd、Pt、又はAg-Pd合金が用いられる。各外部電極13,14,15は、たとえば、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。
【0026】
圧電素子10は、
図6及び
図7に示されるように、圧電素体11内に配置されている複数の内部電極21,22,23,24,25,26,27を備えている。本実施形態では、圧電素子10は、7層の内部電極21,22,23,24,25,26,27を有している。各内部電極21,22,23,24,25,26,27は、導電性材料からなる。導電性材料には、たとえば、Ag、Pd、Pt、又はAg-Pd合金が用いられる。各内部電極21,22,23,24,25,26,27は、たとえば、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。本実施形態では、各内部電極21,22,23,24,25,26,27の外形形状は、矩形状を呈している。具体的には、各内部電極21,22,23,24,25,26,27の外形形状は、長方形状を呈している。
【0027】
各内部電極21,22,23,24,25,26,27は、第一方向D1において異なる位置(層)に配置されている。内部電極21,22,23,24,25,26,27の各々は、互いに、第一方向D1に間隔を有して対向している。各内部電極21,22,23,24,25,26,27は、圧電素体11の表面には露出していない。すなわち、各内部電極21,22,23,24,25,26,27は、各側面11c,11eには露出していない。各内部電極21,22,23,24,25,26,27は、第一方向D1から見て、主面11a,11bの全ての縁(四辺)から離間している。
【0028】
内部電極21は、圧電体層17aと圧電体層17bとの間に位置している。内部電極22は、圧電体層17bと圧電体層17cとの間に位置している。内部電極23は、圧電体層17cと圧電体層17dとの間に位置している。内部電極24は、圧電体層17dと圧電体層18aとの間に位置している。内部電極25は、圧電体層18aと圧電体層18bとの間に位置している。内部電極26は、圧電体層18bと圧電体層18cとの間に位置している。内部電極27は、圧電体層18cと圧電体層18dとの間に位置している。
【0029】
外部電極13は、内部電極21と内部電極23と複数の接続導体33とに複数のビア導体43を通して電気的に接続されている。複数の接続導体33は、それぞれ、内部電極22,24,25,26,27と同じ層に位置している。各接続導体33は、各内部電極22,24,25,26,27に形成された開口内に位置している。各開口は、第一方向D1から見て、外部電極13に対応する位置に形成されている。各接続導体33は、第一方向D1から見て、各内部電極22,24,25,26,27に囲まれている。各接続導体33は、各内部電極22,24,25,26,27と離間している。
【0030】
各接続導体33は、第一方向D1において外部電極13と対向しており、第一方向D1から見て外部電極13と重なる位置に配置されている。各接続導体33は、第一方向D1において内部電極21,23と対向しており、第一方向D1から見て内部電極21,23と重なる位置に配置されている。複数のビア導体43は、それぞれ、外部電極13と内部電極21と内部電極23と複数の接続導体33との間に位置しており、第一方向D1から見て外部電極13と重なる位置に配置されている。複数のビア導体43は、それぞれ、第一方向D1において、対応する圧電体層17a,17b,17c,17d,18a,18b,18cを貫通している。
【0031】
外部電極14は、内部電極25と内部電極27と複数の接続導体34とに複数のビア導体44を通して電気的に接続されている。複数の接続導体34は、それぞれ、内部電極21,22,23,24,26と同じ層に位置している。各接続導体34は、各内部電極21,22,23,24,26に形成された開口内に位置している。各開口は、第一方向D1から見て、外部電極14に対応する位置に形成されている。すなわち、各接続導体34は、第一方向D1から見て、各内部電極21,22,23,24,26に囲まれている。各接続導体34は、各内部電極21,22,23,24,26と離間している。各接続導体34は、各接続導体33と離間している。
【0032】
内部電極22と同じ層に位置している接続導体33と接続導体34は、同じ開口内に隣り合って位置している。内部電極24と同じ層に位置している接続導体33と接続導体34は、同じ開口内に隣り合って位置している。内部電極26と同じ層に位置している接続導体33と接続導体34は、同じ開口内で隣り合って位置している。
【0033】
各接続導体34は、第一方向D1において外部電極14と対向しており、第一方向D1から見て外部電極14と重なる位置に配置されている。各接続導体34は、第一方向D1において内部電極25,27と対向しており、第一方向D1から見て内部電極25,27と重なる位置に配置されている。複数のビア導体44は、それぞれ、外部電極14と内部電極25と内部電極27と複数の接続導体34との間に位置しており、第一方向D1から見て外部電極14と重なる位置に配置されている。複数のビア導体44は、それぞれ、第一方向D1において、対応する圧電体層17a,17b,17c,17d,18a,18b,18cを貫通している。
【0034】
外部電極15は、内部電極22と内部電極24と内部電極26と複数の接続導体35とに複数のビア導体45を通して電気的に接続されている。複数の接続導体35は、それぞれ、内部電極21,23,25,27と同じ層に位置している。各接続導体35は、各内部電極21,23,25,27に形成された開口内に位置している。各開口は、第一方向D1から見て、外部電極15に対応する位置に形成されている。すなわち、各接続導体35の全縁は、第一方向D1から見て、各内部電極21,23,25,27に囲まれている。各開口は、第一方向D1から見て、外部電極15に対応する位置に形成されている。
【0035】
各接続導体35は、第一方向D1において外部電極15と対向しており、第一方向D1から見て外部電極15と重なる位置に配置されている。各接続導体35は、第一方向D1において内部電極22,24,26と対向しており、第一方向D1から見て内部電極22,24,26と重なる位置に配置されている。複数のビア導体45は、それぞれ、外部電極15と内部電極22と内部電極24と内部電極26と複数の接続導体35との間に位置しており、第一方向D1から見て外部電極15と重なる位置に配置されている。複数のビア導体45は、それぞれ、第一方向D1において、対応する圧電体層17a,17b,17c,17d,18a,18b,18cを貫通している。
【0036】
各接続導体33,34,35は、第一方向D1から見て、矩形状を呈している。各接続導体33,34は、第一方向D1から見て、長方形状を呈している。本実施形態では、各接続導体33,34は、第一方向D1から見て、長方形状の各角が丸められている形状を呈している。各接続導体35は、第一方向D1から見て、正方形状を呈している。本実施形態では、各接続導体35は、第一方向D1から見て、正方形状の各角が丸められている形状を呈している。
【0037】
接続導体33,34,35及びビア導体43,44,45は、導電性材料からなる。導電性材料には、たとえば、Ag、Pd、Pt、又はAg-Pd合金が用いられる。接続導体33,34,35及びビア導体43,44,45は、たとえば、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。ビア導体43,44,45は、対応する圧電体層17a,17b,17c,17d,18a,18b,18cを形成するためのセラミックグリーンシートに形成された貫通孔に充填された導電性ペーストが焼結することにより形成される。
【0038】
圧電素体11の主面11bには、内部電極21,23と電気的に接続されている導体と、内部電極25,27と電気的に接続されている導体と、内部電極22,24,26と電気的に接続されている導体は、配置されていない。本実施形態では、主面11bを第一方向D1から見たとき、主面11bの全体が露出している。主面11a,11bは、自然面である。自然面とは、焼成により成長した結晶粒の表面により構成される面である。
【0039】
圧電素体11の各側面11c,11eにも、内部電極21,23と電気的に接続されている導体と、内部電極25,27と電気的に接続されている導体と、内部電極22,24,26と電気的に接続されている導体は、配置されていない。本実施形態では、各側面11cを第三方向D3から見たとき、各側面11cの全体が露出している。各側面11eを第二方向D2から見たとき、各側面11eの全体が露出している。本実施形態では、各側面11c,11eも、自然面である。
【0040】
複数の圧電体層17b,17c,17dにおいて、外部電極13に接続されている内部電極21,23と外部電極15に接続されている内部電極22,24とに挟まれている領域は、圧電的に活性な第一活性領域19を構成する。複数の圧電体層18a,18b,18cにおいて、外部電極14に接続されている内部電極25,27と外部電極15に接続されている内部電極24,26とに挟まれている領域は、圧電的に活性な第二活性領域20を構成する。第一活性領域19と第二活性領域20は、主面11aと主面11bとの間に配置されている。第二活性領域20は、第一活性領域19よりも主面11b寄りに配置されている。第一活性領域19及び第二活性領域20は、少なくとも1つの圧電体層によって構成される。
【0041】
本実施形態では、第一活性領域19及び第二活性領域20は、第一方向D1から見て、複数の外部電極13,14,15を囲むように位置している。第一活性領域19及び第二活性領域20は、第一方向D1から見て外部電極14と外部電極15との間に位置している領域、及び、第一方向D1から見て外部電極13,14,15が位置している領域の外側の領域を含んでいる。
【0042】
圧電素体11における、第一方向D1から見て外部電極13,14(接続導体33,34)と重なる領域は、圧電的に非活性である。圧電素体11における、第一方向D1から見て外部電極15(接続導体35)と重なる領域も、圧電的に非活性である。以下、圧電的に非活性な領域を、「非活性領域」と称する。圧電素子10では、第一方向D1から見て、非活性領域は、第一活性領域19及び第二活性領域20に囲まれている。第一方向D1から見て、非活性領域は、圧電素体11(主面11a,11b)の中央からずれて位置している。
【0043】
粘着層50は、主面11b上に配置されている。粘着層50は、互いに対向している一対の主面50a,50bを有している。主面50aは、主面11bと接している。すなわち、粘着層50は、主面11bと接している。粘着層50は、粘着層50が有している粘着性により、主面11bに粘着している。粘着層50は、導電性のフィラーを含んでおらず、電気絶縁性を有している。粘着層50は、たとえば、ゴム系粘着剤からなる。粘着層50は、粘着性を有していない基材を含んでいない。粘着層50の厚みは、たとえば、50~2000μmである。本実施形態では、粘着層50の厚みは、200μmである。
【0044】
主面50a,50bは、たとえば、矩形状を呈している。主面50a,50bは、たとえば、円形状又は枠状を呈していてもよい。すなわち、粘着層50は、平面視で、円形状又は枠状を呈していてもよい。主面50a,50bは、主面11bと同等の形状及び同等の面積を有していてもよい。この場合、第一方向D1から見て、主面11bの全体が粘着層50で覆われていてもよい。主面50a,50bは、主面11bと異なる形状及び異なる面積を有していてもよい。この場合、第一方向D1から見て、主面11bの一部が粘着層50から露出していてもよい。本実施形態では、主面50a,50bは、主面11bと同等の形状及び同等の面積を有しており、第一方向D1から見て、主面11bの全体が粘着層50で覆われている。粘着層50が、平面視で、枠状を呈している場合、粘着層50は、たとえば、主面11bの各辺に沿った部分を有する。
【0045】
振動板60は、互いに対向している一対の主面60a,60bを有している。圧電素子10は、主面60a上に配置されている。粘着層50は、圧電素子10と振動板60との間に位置している。主面50bは、主面60aと接している。すなわち、粘着層50は、主面60aと接している。粘着層50は、粘着層50が有している粘着性により、主面60aに粘着している。粘着層50が有している粘着性により、圧電素子10が振動板60に取り付けられている。圧電素子10は、主面60aに設けられている。粘着層50は、主面11b及び主面60aから剥離可能である。すなわち、粘着層50は、圧電素子10(圧電素体11)と、振動板60とから剥離可能である。たとえぱ、主面60aが第一主面を構成する場合、主面60bは第二主面を構成する。
【0046】
振動板60(主面60a,60b)は、たとえば、第一方向D1から見て、矩形状を呈している。各主面60a,60bは、四辺を有している。圧電素子10は、第一方向D1から見て、主面60aの四辺から離間している。主面60aは、圧電素子10で覆われている第一領域と、圧電素子10から露出している第二領域と、を含んでいる。振動板60の厚みは、たとえば、0.01~50mmである。本実施形態では、振動板60の厚みは、1mmであり、圧電素体11の厚みより大きい。振動板60は、樹脂からなる。振動板60は、たとえば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体樹脂)、塩化ビニル系樹脂、又は、PET樹脂(ポリエチレンテレフタラート樹脂)を含む。
【0047】
図2及び
図3に示されるように、配線部材WMは、圧電素子10に接続されている。配線部材WMは、ベース71、複数の導体73,75、カバー77、及び補強部材79を有している。本実施形態では、配線部材WMは、二つの導体73,75を備えている。配線部材WMは、たとえば、フレキシブルプリント基板(FPC)又はフレキシブルフラットケーブル(FFC)である。配線部材WMは、第三方向D3に延在している。配線部材WMは、圧電素子10と電気的かつ物理的に接続されている一端部と、リード線LEと電気的かつ物理的に接続される他端部とを有している。
【0048】
ベース71は、帯状を呈し、互いに対向している一対の主面71a,71bを有している。ベース71は、電気絶縁性を有している。ベース71は、たとえば、樹脂からなる層である。ベース71は、たとえば、ポリイミド樹脂からなる。ベース71の厚みは、たとえば、25μmである。
【0049】
各導体73,75は、主面71a上に配置されている。各導体73,75は、接着層(不図示)によって、主面71aに接合されている。各導体73,75は、たとえば、Cuからなる。各導体73,75は、たとえば、Cu層上にNiメッキ層及びAuメッキ層がこの順に設けられた構成であってもよい。導体73と導体75とは、互いに離間して配置されている。各導体73,75の厚みは、たとえば、20μmである。
【0050】
カバー77は、主面71a上に配置されている。カバー77は、導体73の一部と、導体75の一部と、主面71aの一部とを覆っている。各導体73,75は、配線部材WMの一端部及び他端部で、カバー77から露出している。各導体73,75の両端が、カバー77から露出している。ベース71は、配線部材WMの一端部及び他端部で、カバー77から露出している。カバー77は、接着層(不図示)によって、導体73の上記一部と、導体75の上記一部と、主面71aの上記一部とに接合されている。
カバー77は、たとえば、樹脂からなる層である。カバー77は、たとえば、ポリイミド樹脂からなる。カバー77の厚みは、たとえば、25μmである。カバー77は、接合部材81によって、主面11aに接合されている。接合部材81は、たとえば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、又は、光及び熱併用硬化性樹脂からなる。接合部材81は、たとえば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、又はウレタン樹脂からなる。
【0051】
配線部材WMは、接合部材82によって、圧電素子10に接合されている。具体的には、配線部材WMの一端部が、接合部材82によって、外部電極13,14,15及び主面11aに接合されている。接合部材82は、複数の導電性粒子(不図示)を含む樹脂層であり、導電性を有している。導電性粒子は、たとえば、金属粒子又は金めっき粒子である。接合部材82は、たとえば、熱硬化性エラストマーを含んでいる。接合部材82は、たとえば、異方性導電ペースト又は異方性導電性膜が硬化することにより形成される。
【0052】
導体73の一端と外部電極13,14との間には、接合部材82が存在している。導体73と外部電極13,14とは、接合部材82に含まれる導電性粒子を通じて電気的に接続されている。導体75の一端と外部電極15との間には、接合部材82が存在している。導体75と外部電極15とは、接合部材82に含まれる導電性粒子を通じて電気的に接続されている。外部電極13,14と導体75とは、電気的に接続されておらず、外部電極15と導体73とは、電気的に接続されていない。
【0053】
各導体73,75の他端は、
図2及び
図4に示されるように、はんだSFによって、一対のリード線LEのうち対応するリード線LEと接続されている。一方のリード線LEは、導体73と接合部材82(導電性粒子)とを通して、外部電極13,14と電気的に接続されている。他方のリード線LEは、導体75と接合部材82(導電性粒子)とを通して、外部電極15と電気的に接続されている。
【0054】
補強部材79は、配線部材WMの他端部に配置されている。補強部材79は、主面71b上に配置されている。補強部材79は、接着層(不図示)によって、主面71b上に接合されている。主面71bは、補強部材79で覆われている第一領域と、補強部材79から露出している第二領域と、を含んでいる。補強部材79は、たとえば、ポリイミド樹脂からなる。補強部材79の厚みは、たとえば、300μmである。
【0055】
補強部材79の表面(露出面)が、緩衝材83で覆われている。本実施形態では、補強部材79の表面だけでなく、ベース71の主面71bと、圧電素体11の主面11aと、振動板60の主面60aとが、緩衝材83で覆われている。緩衝材83は、補強部材79の表面全体、主面71bの上記第二領域全体、主面11aの一部、及び、主面60aの一部を覆っている。緩衝材83は、粘着層84によって、各主面11a,60a,71bと、補強部材79の表面と、に接合されている。粘着層84が、圧電素子10、振動板60、及び配線部材WMと、緩衝材83との間に位置している状態で、緩衝材83は、各主面11a,60a,71bと、補強部材79の表面とを間接的に覆っている。緩衝材83は、シート状の部材である。緩衝材83は、たとえば、合成ゴム又は合成樹脂からなる。緩衝材83の厚みは、たとえば、500~2000μmである。本実施形態では、緩衝材83の厚みは、1000μmである。粘着層84は、たとえば、アクリル系粘着剤からなる。
【0056】
振動板60の主面60aと、はんだSFとの間には、緩衝材85が配置されている。緩衝材85は、粘着層86によって、主面60aに接合されている。本実施形態では、緩衝材85は、はんだSFと当接している。緩衝材85は、シート状の部材である。緩衝材85は、たとえば、合成ゴム又は合成樹脂からなる。緩衝材85の厚みは、たとえば、500~2000μmである。本実施形態では、緩衝材85の厚みは、1000μmである。粘着層86は、たとえば、アクリル系粘着剤からなる。
【0057】
外部電極13と外部電極14には、一方のリード線LE及び導体73を通して、同じ電圧が印加される。外部電極15は、他方のリード線LE及び導体75を通して、グラウンドに接続されている。したがって、圧電体層17b,17c,17dに、圧電体層17b,17c,17dでの分極方向に沿う方向に電界が発生する場合、圧電体層18a,18b,18cには、圧電体層18a,18b,18cでの分極方向と逆の方向に電界が発生する。また、圧電体層17b,17c,17dに、圧電体層17b,17c,17dでの分極方向と逆の方向に電界が発生する場合、圧電体層18a,18b,18cには、圧電体層18a,18b,18cでの分極方向に沿う方向に電界が発生する。この結果、第一活性領域19と第二活性領域20とは、互いに逆方向に伸縮して、圧電素子10が変位する。圧電素子10は、屈曲振動する。圧電素子10は、上述したように、粘着層50によって振動板60に取り付けられているので、粘着層50は、圧電素子10の変位に伴って振動する。
【0058】
支持部材90は、
図2~
図4に示されるように、振動板60を基材1に支持している。支持部材90は、主面60bに設けられている。支持部材90は、振動板60と基材1との間に配置されている。支持部材90は、振動板60と基材1との間に音響空間ASを形成する。音響空間ASは、振動板60と、支持部材90と、基材1とによって画成される。音響空間ASは、振動板60と基材1との間に位置している。支持部材90は、主面60bに直交する方向、すなわち、第一方向D1から振動板60を透視したときに、圧電素体11を囲むように圧電素体11の外側に位置している。支持部材90は、第一方向D1から振動板60を透視したときに、圧電素体11と重なっていない。
音響空間ASは、振動板60の振動空間を構成する。音響空間ASの厚み、すなわち、音響空間ASの第一方向D1での長さは、支持部材90の厚みで規定される。音響空間ASの厚みは、振動板60の変位より大きい。振動板60の変位は、振動板60の振動の片振幅、すなわち、振動板60の振動の全振幅の1/2である。
【0059】
支持部材90は、粘着層91、粘着層93、及び中間層95を有している。本実施形態では、支持部材90は、三層の構造体である。粘着層91は、振動板60の主面60bと接している。粘着層91は、粘着層91が有している粘着性により、主面60bに粘着している。粘着層93は、基材1の主面1aと接している。粘着層93は、粘着層93が有している粘着性により、主面1aに粘着している。各粘着層91,93は、樹脂からなる。各粘着層91,93は、たとえば、アクリル系粘着剤又はウレタン系粘着剤からなる。中間層95は、粘着層91と粘着層93との間に位置している。中間層95は、粘着層91と粘着層93とに接している。各粘着層91,93は、各粘着層91,93が有している粘着性により、中間層95にも粘着している。中間層95は、たとえば、不織布又は発泡ブチルゴムからなる。本実施形態では、中間層95は、発泡ブチルゴムからなる。不織布は、たとえば、セルロース繊維からなる。中間層95は、振動板60の振動が支持部材90を通して基材1に伝わるのを抑制する。たとえば、粘着層91が第一層を構成する場合、粘着層93が第二層を構成すると共に、中間層95が第三層を構成する。
【0060】
支持部材90の硬さは、振動板60の硬さより小さい。本実施形態では、支持部材90は層構造体であるため、支持部材90の硬さは、積層方向での硬さで規定する。振動板60及び支持部材90の各硬さは、たとえば、ビッカース試験(ISO6507)により規定される。振動板60の硬さは、たとえば、70~200(HV)である。本実施形態では、振動板60の硬さは、約100(HV)である。支持部材90の硬さは、たとえば、10~60(HV)である。本実施形態では、支持部材90の硬さは、約30(HV)である。
【0061】
支持部材90は、
図1にも示されるように、複数の部分90a,90b,90c,90dを含んでいる。本実施形態では、支持部材90は、四つの部分90a,90b,90c,90dを含んでいる。各部分90a,90b,90c,90dは、主面60bの四辺のうち対応する辺に沿って配置されている。第一方向D1から見て、各部分90a,90b,90c,90dは、対応する辺から離間している。
【0062】
各部分90a,90b,90c,90dは、互いに離間している。したがって、部分90aと部分90bとの間、部分90bと部分90cとの間、部分90cと部分90dとの間、及び、部分90dと部分90aとの間には、間隙GPがそれぞれ形成されている。支持部材90は、第一方向D1から振動板60を透視したときに、圧電素体11を囲むように断続的に形成されている。間隙GPは、音響空間ASを音響空間ASの外部と連通する。音響空間ASは、間隙GPを通して外部空間と連通する。各間隙GPは、連通路を構成する。すなわち、支持部材90には、音響空間ASを外部空間と連通する連通路が設けられている。
【0063】
以上のように、本実施形態では、振動板60と支持部材90とが、音響空間ASを画成している。したがって、振動板60の振動、すなわち、圧電素子10の変位は、基材1に伝わりがたい。
振動板60は、振動板60とで音響空間ASを画成する支持部材90によって基材1に支持される。したがって、振動板60の振動、すなわち、圧電素子10の変位が、基材1によって拘束されがたい。
これらの結果、スピーカ装置SD(音響デバイスAD)は、音圧特性の低下を抑制する。
振動板60の振動が、基材1に伝わりがたいので、基材1は、発音箇所となりがたい。
【0064】
本実施形態では、間隙GPが、支持部材90に設けられている。したがって、スピーカ装置SD(音響デバイスAD)は、所望の音圧周波数特性を実現し得る。
【0065】
本実施形態では、支持部材90が、粘着層91、粘着層93、及び中間層95を有しており、中間層95が、振動板60の振動が支持部材90を通して基材に伝わるのを抑制する。したがって、圧電素子10の変位が、基材1により一層伝わりがたく、かつ、基材1によってより一層阻害されがたい。この結果、スピーカ装置SD(音響デバイスAD)は、音圧特性の低下をより一層抑制する。
【0066】
本実施形態では、中間層95が、不織布からなる。中間層95が不織布からなる構成は、振動板60の振動が支持部材90を通して基材1に伝わるのを抑制する層を、適切かつ簡易に実現する。
【0067】
本実施形態では、支持部材90が、振動板60の硬さより小さい硬さを有している。したがって、圧電素子10の変位が、基材1により一層伝わりがたく、かつ、基材1によってより一層阻害されがたい。したがって、支持部材90の硬さが振動板60の硬さより小さい構成は、音圧特性の低下をより一層抑制する。
【0068】
本実施形態は、少なくとも補強部材79の表面が、緩衝材83で覆われている。電子機器の、スピーカ装置SD以外の構成部位が、補強部材79に直接当接することがない。したがって、緩衝材83が、スピーカ装置SD以外の上記構成部位と当接している場合でも、音響デバイスAD(圧電素子10及び振動板60)の振動は、スピーカ装置SD以外の上記構成部位に伝わりがたい。この結果、スピーカ装置SD(音響デバイスAD)は、音圧特性の低下をより一層抑制する。
本実施形態では、補強部材79の表面だけでなく、ベース71の主面71bと、圧電素体11の主面11aと、振動板60の主面60aとが、緩衝材83で覆われている。したがって、音響デバイスAD(圧電素子10及び振動板60)の振動が、スピーカ装置SD以外の上記構成部位により一層伝わりがたい。この結果、スピーカ装置SD(音響デバイスAD)は、音圧特性の低下を確実に抑制する。
音響デバイスAD(圧電素子10及び振動板60)の振動が、スピーカ装置SD以外の上記構成部位に伝わりがたいので、当該構成部位が発音箇所となりがたい。
【0069】
振動板60とはんだSFとが直接当接する場合、可聴域でのノイズ(たとえば、びびり音など)が生じるおそれがある。本実施形態では、緩衝材85が、振動板60とはんだSFとの間に配置されているので、振動板60とはんだSFとが直接当接することはない。したがって、スピーカ装置SD(音響デバイスAD)は、可聴域でのノイズの発生を抑制する。
【0070】
支持部材90が、振動板60の振動のノードに設けられた構成では、振動板60の振動が、基材1により一層伝わりがたい。したがって、本構成が採用されたスピーカ装置SD(音響デバイスAD)は、音圧特性の低下をより一層抑制する。
【0071】
本実施形態では、振動板60の厚みが、圧電素体11の厚みより大きい。この場合、振動板60が、圧電素子10の変位に伴って適切に振動する。
【0072】
上述した実施形態及の記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す態様の開示を含んでいる。
(付記1)
基材に支持される音響デバイスであって、
圧電素子と、
樹脂からなり、前記圧電素子が設けられている振動板と、
前記振動板を前記基材に支持する支持部材と、を備え、
前記振動板と前記支持部材とが、音響空間を画成しており、
前記振動板は、前記圧電素子の変位に伴って振動する、音響デバイス。
(付記2)
前記音響空間を前記音響空間の外部と連通する連通路が、前記振動板及び前記支持部材の少なくとも一方に設けられている、付記1に記載の音響デバイス。
(付記3)
前記支持部材は、
前記振動板と接すると共に、樹脂からなる第一層と、
前記基材と接すると共に、樹脂からなる第二層と、
前記第一層と前記第二層との間に位置する第三層と、を有しており、
前記第三層は、前記振動板の振動が前記支持部材を通して前記基材に伝わるのを抑制する、付記1又は2に記載の音響デバイス。
(付記4)
前記第三層は、不織布からなる、付記3に記載の音響デバイス。
(付記5)
前記支持部材は、前記振動板の硬さより小さい硬さを有している、付記1~4のいずれか一項に記載の音響デバイス。
(付記6)
基材と、
請求項1~5のいずれか一項に記載の音響デバイスと、を備えているスピーカ装置。
(付記7)
前記音響空間を前記音響空間の外部と連通する連通路が、前記基材に設けられている、付記6に記載のスピーカ装置。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0074】
圧電素子10が備える内部電極の数、圧電体層の数、外部電極の数は、上述された実施形態で開示した数に限られない。
支持部材90には、間隙GPが形成されていなくてもよい。間隙GPが支持部材90に形成されている構成は、上述したように、所望の音圧周波数特性を実現し得る。
支持部材90は、四層以上の構造体であってもよい。支持部材90は、一層の構造体であってもよい。支持部材90が一層の構造体である場合、支持部材90は、粘着層であってもよい。
支持部材90の硬さは、振動板60の硬さ以上であってもよい。支持部材90の硬さが、振動板60の硬さより小さい場合、上述したように、スピーカ装置SD(音響デバイスAD)は、音圧特性の低下をより一層抑制する。
【0075】
支持部材90は、たとえば、主面11bの三つの辺に沿って連続して設けられていてもよい。この場合、支持部材90は、互いに離間している一対の端部を有する。音響空間ASは、支持部材90の一対の端部の間を通して、外部空間と連通する。一対の端部の間に形成される間隙が、連通路を構成する。支持部材90は、たとえば、第一方向D1から見て、略「C」字状を呈していてもよい。
支持部材90は、たとえば、第一方向D1から見て、枠状を呈していてもよい。すなわち、支持部材90は、第一方向D1から振動板60を透視したときに、圧電素体11を囲むように連続的に形成されていてもよい。支持部材90は、第一方向D1から見て、多角形枠状又は円形枠状を呈していてもよい。この場合、支持部材90に少なくとも一つのスリットが形成されていてもよい。スリットは、間隙GPと同様に、連通路を構成する。
支持部材90が、四つの部分90a,90b,90c,90dのうち二つの部分のみ、たとえば、部分90a及び部分90cのみ、又は、部分90b及び部分90dのみを含んでいる構成では、音響空間ASが画成されがたい。すなわち、振動板60と基材1との間の空間は、音響空間として機能しがたい。
【0076】
図8及び
図9に示されるように、振動板60に少なくとも一つの貫通孔61が形成されていてもよい。貫通孔61の数は、複数であってもよい。
図8は、本実施形態の一変形例に係るスピーカ装置を示す平面図である。
図9は、本実施形態の一変形例に係るスピーカ装置の断面構成を示す図である。
図9では、
図2~
図4と同様に、複数の内部電極21,22,23,24,25,26,27の図示を省略している。
貫通孔61は、音響空間ASを音響空間ASの外部と連通する。貫通孔61は、連通路を構成する。貫通孔61が振動板60に形成されている構成では、支持部材90には、間隙GPが形成されていなくてもよい。この場合、支持部材90は、連続した枠状を呈する。もちろん、貫通孔61が振動板60に形成されている構成でも、支持部材90に間隙GPが形成されていてもよい。
貫通孔61が、振動板60に設けられているので、スピーカ装置SD(音響デバイスAD)は、所望の音圧周波数特性を実現し得る。
【0077】
図10に示されるように、基材1に少なくとも一つの貫通孔3が形成されていてもよい。貫通孔3の数は、
図10に示されるように、複数であってもよい。
図10は、本実施形態の一変形例に係るスピーカ装置の断面構成を示す図である。
図10では、
図2~
図4と同様に、複数の内部電極21,22,23,24,25,26,27の図示を省略している。
貫通孔3は、音響空間ASを音響空間ASの外部と連通する。貫通孔3は、連通路を構成する。貫通孔3が基材1に形成されている構成では、支持部材90に間隙GPが形成されていなくてもよく、振動板60に貫通孔61が形成されていなくてもよい。もちろん、貫通孔3が基材1に形成されている構成でも、支持部材90に間隙GPが形成されていてもよく、振動板60に貫通孔61が形成されていてもよい。
貫通孔3が、基材1に設けられているので、スピーカ装置SD(音響デバイスAD)は、所望の音圧周波数特性を実現し得る。
【符号の説明】
【0078】
1…基材、3…貫通孔、10…圧電素子、60…振動板、60a,60b…主面、61…貫通孔、90…支持部材、91,93…粘着層、95…中間層、AD…音響デバイス、AS…音響空間、GP…間隙、SD…スピーカ装置。