(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】充電装置、運転方法、充電システム、及び充放電制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20240110BHJP
B60L 53/51 20190101ALI20240110BHJP
B60L 53/53 20190101ALI20240110BHJP
B60L 53/63 20190101ALI20240110BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20240110BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240110BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240110BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20240110BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240110BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240110BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H02J3/38 110
B60L53/51
B60L53/53
B60L53/63
G06Q50/06
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H02J3/00 160
H02J3/32
H02J7/00 B
H02J7/00 P
H02J13/00 301A
H02J13/00 301J
(21)【出願番号】P 2019181665
(22)【出願日】2019-10-01
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】奥田 聡
(72)【発明者】
【氏名】横山 昌央
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-095397(JP,A)
【文献】特開2018-148679(JP,A)
【文献】特開2018-196295(JP,A)
【文献】特開2012-005168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
B60L 53/51
B60L 53/53
B60L 53/63
G06Q 50/06
H01M 10/44
H01M 10/48
H02J 3/00
H02J 3/32
H02J 7/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電素子と、
発電設備又は電力系統と前記蓄電素子との間、及び、前記蓄電素子と外部負荷との間で電力を充放電する充放電回路と、
前記充放電回路における充放電を制御する制御部と
を備え、
制御部は、
前記発電設
備から前記蓄電素子への受電電力量と、前記蓄電素子から前記外部負荷への放電電力量との差分
を算出し、
算出した差分に基づく発電料金を算出し、
前記電力系統からの受電電力量に基づく買電料金を算出し、
前記発電料金と前記買電料金との差額を算出し、
算出した発電料金、買電料金、及び前記差額を含む電気料金に関する情報を出力する充電装置。
【請求項2】
前記外部負荷は、電気自動車に搭載された蓄電素子である、請求項1に記載の充電装置。
【請求項3】
外部サーバ装置と通信接続する通信部を備え、
前記制御部は、前記差分に基づくレポートを所定の周期で作成し、
作成したレポートを、前記通信部を介して前記外部サーバ装置へ送信する、請求項1
又は2に記載の充電装置。
【請求項4】
前記制御部は、
外部からの指示に基づいて前記蓄電素子からの放電を許可する、請求項1から
3のいずれか一項に記載の充電装置。
【請求項5】
前記電力系統と、前記発電設備及び蓄電素子との間の電力を測定するセンサと、
該センサによって前記発電設備から前記電力系統への逆潮流を検知する検知部と
を備え、
前記制御部は、前記検知部によって逆潮流が検知される場合に、前記発電設備からの電力によって前記蓄電素子を充電する
請求項1から
4のいずれか一項に記載の充電装置。
【請求項6】
前記発電設備及び前記電力系統の間に介装させるスイッチと、
前記蓄電素子に接続される第1電力線と
を備え、
前記スイッチをオフとして前記発電設備及び前記電力系統の間を切断させてから前記第1電力線を、前記スイッチよりも前記発電設備側の第2電力線に接続させる、請求項1から
5のいずれか一項に記載の充電装置。
【請求項7】
請求項
6に記載の充電装置の運転方法であって、
前記蓄電素子の充電率が第1所定値以下であることを確認する工程と、
前記スイッチをオフとして前記電力系統と前記発電設備との間に介装させる工程と、
前記第2電力線に前記第1電力線を接続する工程と、
前記制御部によって前記スイッチのオフを維持したまま前記発電設備からの電力を前記蓄電素子へ充電させる工程と、
前記蓄電素子の充電率が第1所定値よりも高い第2所定値以上であるか否かを判断する工程と、
前記充電率が前記第2所定値以上であると判断された場合に、前記スイッチをオンとする工程とを含む、充電装置の運転方法。
【請求項8】
蓄電素子と、
発電設備又は電力系統と前記蓄電素子との間、及び、前記蓄電素子と外部負荷との間で電力を充放電する充放電回路と、
前記発電設備及び前記電力系統の間に介装させるスイッチと、
前記蓄電素子に接続される第1電力線と、
前記充放電回路における充放電を制御する制御部と
を備える充電装置の運転方法であって、
前記蓄電素子の充電率が第1所定値以下であることを確認する工程と、
前記スイッチをオフとして前記発電設備及び前記電力系統の間を切断させてから前記第1電力線を、前記スイッチよりも前記発電設備側の第2電力線に接続させることによって、前記電力系統と前記発電設備との間に前記充電装置を介装させる工程と、
前記第2電力線に前記第1電力線を接続する工程と、
前記制御部によって前記スイッチのオフを維持したまま前記発電設備からの電力を前記蓄電素子へ充電させる工程と、
前記蓄電素子の充電率が第1所定値よりも高い第2所定値以上であるか否かを判断する工程と、
前記充電率が前記第2所定値以上であると判断された場合に、前記スイッチをオンとする工程とを含む、充電装置の運転方法。
【請求項9】
発電設備と、
発電設備
又は電力系統からの電力を受電し、蓄電する蓄電素子を含み、外部負荷へ充電可能な充電装置と、
前記充電装置と通信接続されるサーバ装置とを含み、
前記充電装置は、
前記発電設備からの
前記蓄電素子への受電電力量と、
前記蓄電素子から前記外部負荷への放電電力量との差分
を算出し、
算出した差分に基づく発電料金を算出し、
前記電力系統からの受電電力量に基づく買電料金を算出し、
前記発電料金と前記買電料金との差額を算出し、
算出した発電料金、買電料金、及び前記差額を含む電気料金に関する情報を、前記サーバ装置へ送信する、充電システム。
【請求項10】
蓄電素子と、
発電設備又は電力系統である外部電力源及び
前記蓄電素子の間、並びに、
前記蓄電素子及び外部負荷の間で電力の充放電する充放電回路とを備える充電装置が、
前記
発電設備から
前記蓄電素子への受電電力量を測定し、
前記蓄電素子から前記外部負荷への放電電力量を測定し、
前記受電電力量と、
前記放電電力量との差分を算出し、
算出した差分に基づく発電料金を算出し、
前記電力系統からの受電電力量に基づく買電料金を算出し、
前記発電料金と前記買電料金との差額を算出し、
算出した発電料金、買電料金、及び前記差額を含む電気料金に関する情報を出力する
充放電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電システムに接続される充電装置、運転方法、充電システム、及び充放電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電の売電価格の低下によって、家庭においても発電した電気を売電せずに自家消費したり、蓄電池に蓄電したりする電力の地産地消が消費者に選択されている。発電した電気の家庭又は施設内での消費及び蓄電池への蓄電の方法として、自家用の電気自動車への充電を実現する充電装置の制御方法が提案されている。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、電力系統からの電力の蓄電池への蓄電と、電力系統および蓄電池からの電力を併用した電気自動車への充電とをコントロールする充電管理の方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2013/024645号
【文献】特開2013-031304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
太陽光発電設備によって発電した電力を売電することから家庭、又は施設内での消費へ移行するために、特許文献1,2に開示されているような制御システムが有用である。しかしながら、家庭又は施設内の負荷の電力消費が少ない場合の有効利用については考慮されていない。
【0006】
電気自動車の普及によって、充電スタンドの需要も増している。充電スタンドの数は都市部では充分であると言えるが、都市部以外における充電スタンドの設置密度は十分であるとは言えない。電気自動車の使用者は、何らかの理由で充電の機会を逃すことを考慮して、都市部から電気自動車で遠方へ走行することを控える可能性がある。
【0007】
本発明は、都市部から遠方の地域における余剰電力の有効利用と、充電スタンド不足とを解消する充電装置、運転方法、充電システム、及び充放電制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態の充電装置は、蓄電素子と、
発電設備又は電力系統と前記蓄電素子との間、及び、前記蓄電素子と外部負荷との間で電力を充放電する充放電回路と、
前記充放電回路における充放電を制御する制御部と
を備え、
制御部は、前記発電設備又は電力系統から前記蓄電素子への受電電力量と、前記蓄電素子から前記外部負荷への放電電力量との差分に基づく情報を出力する充電装置。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、都市部から遠方の地域における余剰電力の有効利用と、充電スタンド不足とを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態における充電システムの概要図である。
【
図3】充電装置の充電処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】充電装置の放電処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】充電装置の管理処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】変形例1における充電システムの概要図である。
【
図8】制御部による逆潮流防止の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】変形例2における受変電装置内における配線を模式的に示す図である。
【
図10】変形例2における充電装置の構成を示すブロック図である。
【
図11】充電システムの運転開始の工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
充電装置は、蓄電素子と、発電設備又は電力系統と前記蓄電素子との間、及び、前記蓄電素子と外部負荷との間で電力を充放電する充放電回路と、充放電回路における充放電を制御する制御部とを備える。制御部は、前記発電設備又は電力系統から前記蓄電素子への受電電力量と、前記蓄電素子から前記外部負荷への放電電力量との差分に基づく情報を出力する。
【0012】
上記構成により、充電装置は外部電力源に接続させることができ、外部電力源からの電力を蓄電素子に充電し、外部負荷への充電に利用することができる。既設の発電設備から、家庭又は施設内での自家消費できる分を超えた発電電力を、電力系統へ逆潮流させずに、外部負荷へ提供させることが可能になる。
【0013】
受電電力量と外部負荷への放電電力量との差分の情報を出力することができるので、どれほど発電し、どれほど放電したのかの情報に基づいた買電売電の差額の相当分を算出してサービス提供を可能にしたり、蓄電素子への蓄電量に相当する電気を算出したりできる。
【0014】
前記充電装置において前記外部負荷は、電気自動車に搭載された蓄電池でもよい。
【0015】
上記構成により、充電装置を既設の発電設備に接続することによって、家庭又は施設内での自家消費できる分を超えた発電電力を、電力系統へ逆潮流させずに、電気自動車の蓄電池の充電に利用させることが可能になる。放電電力量に応じて料金の徴収を可能とする。自家消費のみならず、公共の充電スタンドとしての利用が可能になり、都市部から遠方の地域における余剰電力の有効利用と、充電スタンド不足とを解消することができる。
【0016】
前記充電装置の制御部は、前記差分に基づく電気料金に関する情報を出力してもよい。
【0017】
上記構成により、電力会社への電気料金を出力して発電設備の所有者に知らせることができる。
【0018】
前記充電装置は、外部サーバ装置と通信接続する通信部を備え、前記制御部は、前記差分に基づくレポートを所定の周期で作成し、作成したレポートを、前記通信部を介して前記外部サーバ装置へ送信する。
【0019】
上記構成により、充電電力量と放電電力量との差分に関する情報に基づくレポートが外部サーバ装置される。外部サーバ装置から、電気自動車のユーザへ充電スタンドの案内を送信することが可能になり、既設の発電設備に接続された充電装置の公共の充電スタンドとしての利用を促進することができる。
【0020】
前記充電装置において前記制御部は、外部からの指示に基づいて前記蓄電素子からの放電を許可してもよい。
【0021】
上記構成により、非災害時は、所有者及び料金を支払うことができるユーザ等の特定のユーザのみが充電装置を使用できるように制御することを可能としつつ、災害時は外部サーバ装置から蓄電素子からの放電を、特定のユーザ以外にも許可して有効利用される。充電装置の蓄電素子からの放電と充電との差分に基づく情報を出力できるので、災害時における提供量を発電設備毎に特定することもできる。
【0022】
前記充電装置は、前記電力系統と、前記発電設備及び蓄電素子との間の電力を測定するセンサと、該センサによって前記発電設備から前記電力系統への逆潮流を検知する検知部とを備えてもよい。前記制御部は、前記検知部によって逆潮流が検知される場合に、前記発電設備からの電力によって前記蓄電素子を充電する。
【0023】
上記構成により、発電設備から電力系統への逆潮流を実際に検知した場合にこれを有効利用させるように充電を実行して逆潮流を抑止することができる。
【0024】
前記充電装置は、前記発電設備及び前記電力系統の間に介装させるスイッチと、前記蓄電素子に接続される第1電力線とを備える。前記スイッチは、制御部に制御される。制御部は、前記スイッチをオフとして前記発電設備及び前記電力系統の間を切断させてから前記第1電力線を、前記スイッチよりも前記発電設備側の第2電力線に接続させる。
【0025】
前記充電装置を、既設の発電設備に接続させるための運転方法は、前記蓄電素子の充電率が第1所定値以下であることを確認する工程と、前記スイッチをオフとして前記電力系統と前記発電設備との間に介装させる工程とを含む。運転方法は、前記第2電力線に前記第1電力線を接続する工程と、前記制御部によって前記スイッチのオフを維持したまま前記発電設備からの電力を前記蓄電素子へ充電させる工程とを含む。運転方法は、前記蓄電素子の充電率が第1所定値よりも高い第2所定値以上であるか否かを判断する工程と、前記充電率が前記第2所定値以上であると判断された場合に、前記スイッチをオンとする工程とを含む。
【0026】
上記構成により、充電装置を既設の発電設備に接続することが容易になる。充電装置の輸送時には蓄電素子の充電率を、空と判断される第1所定値以下であることを確認してから輸送するから、安全に輸送することが可能である。充電装置、電力系統と発電設備との間を切断して電力が相互に流れないようにしてから発電設備へ接続される。
【0027】
充電装置の蓄電素子は、空と判断される程の充電率であるから、電力系統と発電設備との間に接続された場合、電力系統からの充電が開始されようとする。電力系統から蓄電素子への充電に電力を使用する場合、買電量が大きくなるので回避されることが好ましい。上記構成により、前記充電装置を接続する際に、電力系統から蓄電素子へ電力が供給されることをスイッチのオフで抑止することができる。充電率が、発電設備で発生した電力で満充電に近いと判断される第2の所定値に近まると接続されてから初めて、スイッチがオンに切り替えられる。上記構成により、安全且つ円滑に、充電装置を既設の発電設備に対し接続させることができる。
【0028】
充電システムは、発電設備と、発電設備からの電力を受電し、蓄電する蓄電素子を含み、外部負荷へ充電可能な充電装置と、前記充電装置と通信接続されるサーバ装置とを含み、前記充電装置は、前記発電設備からの受電電力量と、前記外部負荷への放電電力量との差分に基づく情報を、前記サーバ装置へ送信する。
【0029】
充放電制御方法では、蓄電素子と、外部電力源及び蓄電素子の間、並びに、蓄電素子及び外部負荷の間で電力の充放電する充放電回路とを備える充電装置が、前記外部電力源からの受電電力量を測定し、前記外部負荷への放電電力量を測定し、前記外部電力源からの受電電力量と、前記外部負荷への放電電力量との差分を算出し、算出した差分に基づく情報を出力する。
【0030】
本開示をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。
【0031】
図1は、本実施形態における充電システム100の概要図であり、
図2は充電装置1の構成を示すブロック図である。
【0032】
充電システム100は、発電設備2、パワーコンディショナ3、充電装置1、及び受変電装置4を含む。発電設備2は、太陽光パネルを用いて発生した電力を出力する。パワーコンディショナ3は、発電設備2から出力された直流電力を交流電力へ変換して出力する装置である。パワーコンディショナ3は、受変電装置4に電力線を介して接続されている。受変電装置4は、発電設備2から出力された電力を受け、充電システム100が設置された家庭若しくは設備内の負荷群へ電力を出力するか、電力系統Eからの電力を負荷群へ出力するかを切り替える。受変電装置4は、電力の出力先に応じて変圧する変圧装置として機能する。
【0033】
充電装置1は、蓄電素子10と、電気自動車EVへの充電を可能とする充放電回路とを備え、受変電装置4と接続されている。充電装置1は、発電設備2から出力された電力を蓄えたり、電力系統Eからの電力を蓄えたり、蓄えた電力で電気自動車Vを充電したりする。
【0034】
実施の形態1における受変電装置4は、発電設備2からの電力を負荷群へ出力するか、充電装置1へ出力するか、電力系統Eからの電力を負荷群へ出力するか、充電装置1へ出力するかを切り替える分電盤である。切替は、図示しないHEMS(Home Energy Management System )又はパワーコンディショナ3によって制御される。
【0035】
充電装置1は、ネットワークNを介して管理サーバ5と通信接続が可能である。管理サーバ5は例えば、充電装置1のメーカが管理し、充電装置1から電気自動車への充電サービスを提供するためのデータを充電装置1との間で送受信する。管理サーバ5は、電力系統Eの管理会社が管理してもよい。ネットワークNは、公衆通信網、キャリアネットワーク又は専用線を含む。
【0036】
充電装置1は、蓄電素子10と、制御部11、記憶部12、充放電回路13、操作部14、通信部15とを備える。
【0037】
蓄電素子10は、鉛蓄電池及びリチウムイオン電池のような二次電池や、キャパシタのような、再充電可能なものであることが好ましい。蓄電素子10の一部が、再充電不可能な一次電池であってもよい。本実施の形態における蓄電素子10は、リチウムイオン電池の蓄電セルを複数接続した蓄電モジュールを含む。蓄電素子10は他の例では鉛蓄電池である。
【0038】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)を用いたプロセッサであり、内蔵するROM及びRAM等のメモリを用い、各構成部を制御して処理を実行する。制御部11は、内蔵するタイマー機能によって任意のタイミングの時刻を取得できる。制御部11は、記憶部12に記憶されている制御プログラム1Pに基づく処理を実行する。
【0039】
記憶部12は、例えばハードディスク又はSSD(Solid State Drive )等の不揮発性メモリを用いる。記憶部12には、上述した制御プログラム1Pが記憶されている。記憶部12に記憶される制御プログラム1Pは、記録媒体6に記憶してある制御プログラム6Pを制御部11が読み出して記憶部12に複製したものであってもよい。記憶部12は、制御部11の処理によって作成されるデータが記憶される。
【0040】
充放電回路13は、インバータ、コンバータ、各種リレー等の多様な回路素子を含み、蓄電素子10又は受変電装置4を介して発電設備2又は電力系統Eから電気自動車に搭載されている蓄電池への急速充電を実現する。充放電回路13は、電力線104で受変電装置4に接続される。充放電回路13は、電気自動車の充電コネクタに対応するコネクタと電力線105を介して接続されている。
【0041】
操作部14は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイと、ディスプレイに内蔵されるタッチパネルとを含むユーザインタフェースである。操作部14は、制御プログラム1Pに基づいて操作画面を表示し、操作画面上で操作を受け付ける。操作部14は、ディスプレイと、物理ボタンとであってもよい。
【0042】
通信部15は、ネットワークNを介した通信接続及びデータの送受信を実現する通信デバイスである。具体的には通信部15はネットワークNに対応したネットワークカードである。通信部15は、図示しないルータ機器を介して管理サーバ5との通信接続を実現してもよい。
【0043】
このように構成される充電装置1の制御部11は、以下に示すような処理を実行する。充電装置1の制御部11は、
図3から
図5のフローチャートに示す処理手順を夫々、継続的に繰り返し実行する。
【0044】
図3は、充電装置1の充電処理手順の一例を示すフローチャートである。制御部11は、蓄電素子10における充電率(SOC:State Of Charge)を取得し(ステップS101)、充電率を受変電装置4へ通知する(ステップS102)。ステップS101における充電率は、制御部11自身によって算出してもよいし、蓄電素子10が含む電池管理装置(BMU:Battery Management Unit )によって算出された充電率を取得してもよい。充電率に応じて、受変電装置4は充電装置1へ電力を出力するか否か、出力する場合の電力量をどうするかを決定することができる。充電装置1側にて充電率又は電気自動車が接続されているか否かによって受変電装置4側へ電力供給を要求する構成としてもよい。
【0045】
制御部11は、受変電装置4を介したパワーコンディショナ3からの受電電力量を取得し(ステップS103)、記憶部12に記憶する(ステップS104)。ステップS103における受電電力量は、
図3のフローチャートの繰り返し単位時間当たりの電力量でもよいし、その他、設定された時間当たりの電力量を測定又は電池管理装置から取得されたものである。
【0046】
制御部11は、受変電装置4を介した電力系統Eからの受電電力量を取得し(ステップS105)、記憶部12に記憶し(ステップS106)、処理を終了する。
【0047】
制御部11は
図3のフローチャートに示した処理手順を、繰り返し実行する。タイミングによって、パワーコンディショナ3からの受電電力量および電力系統Eからの受電電力量は、両方若しくはいずれか一方がゼロであってよい。ゼロの場合は受電電力量がゼロとして記憶部12に記憶される。
【0048】
図4は、充電装置1の放電処理手順の一例を示すフローチャートである。制御部11は、操作部14にて電気自動車への充電要求の操作がされると以下の処理を開始する。
【0049】
制御部11は、充電要求者の認証を実行する(ステップS201)。
【0050】
ステップS201において例えば制御部11は、充電要求者が、充電装置1の管理者、すなわち発電設備2の所有者から許可を得ているか否かを、パスワードを要求して認証する。パスワードは、充電要求者から管理者へ料金の支払いがあった場合に管理者から付与されるものであってもよい。
【0051】
他の例で制御部11は、ステップS201において、予め管理サーバ5にて充電要求者が所持する情報端末装置から要求を受け付けて、充電要求者を確認するために一時的に作成し、管理サーバ5が充電装置1及び充電要求者の情報端末装置へ通知した認証情報を用いて認証してもよい。管理サーバ5は、予めサービス提供を受ける一般ユーザである充電要求者のユーザ登録を受け付けておき、登録されたユーザに対して充電可能な充電スタンドを案内すると共に、事前に充電を可能とするパスワードの発行を受け付け、充電装置1へ充電予約としてユーザのユーザID及びパスワードを送信してもよい。
【0052】
制御部11は、ステップS201で認証された場合に、充放電回路13のコネクタの電気自動車への接続を許可し(ステップS202)、充電開始時刻を取得し(ステップS203)、電気自動車への充電制御を開始する(ステップS204)。
【0053】
制御部11は、放電量を計測し(ステップS205)、充電が完了したか否かを判断する(ステップS206)。充電が未完であると判断された場合(S206:NO)、制御部11は処理をステップS205へ戻す。充電が完了したと判断された場合(S206:YES)、制御部11は、充電終了時刻を取得する(ステップS207)。
【0054】
制御部11は、充電開始から充電終了までの放電電力量を算出し(ステップS208)、記憶部12に記憶する(ステップS209)。ステップS208において制御部11は、ステップS205で計測した放電量の累積として算出してよい。
【0055】
放電電力量、充電開始時刻、及び充電終了時刻に基づいて電気自動車への充電に係る料金を算出する(ステップS210)。制御部11は、算出した料金を出力し(ステップS211)、記憶部12に記憶し(ステップS212)、処理を終了する。
【0056】
ステップS210において制御部11は、放電電力量のみで料金を算出してもよい。
【0057】
ステップS211における出力先は、管理サーバ5か、充電装置1の管理者である。出力の方法は、通信部15を介した管理サーバ5への出力であってよい。この場合、制御部11は、充電要求者の認証情報に対応付けて料金及び時刻を出力する。出力の方法は、受変電装置4を介して管理者が確認可能なモニタへの通知であってもよいし、プリンタを用いた印刷出力であってもよいし、記憶部12へのログ出力であってもよい。
【0058】
図4のフローチャートに示した処理手順の開始及び終了時に制御部11は、管理サーバ5又は充電装置1の管理者に向けて電気自動車への充電があったことを通知してもよい。
【0059】
図5は、充電装置1の管理処理手順の一例を示すフローチャートである。制御部11は、以下に示す処理手順を例えば1日に1回等の設定された周期で実行する。
【0060】
制御部11は、記憶部12に記憶してあるパワーコンディショナ3を介した発電設備2からの受電電力量を読み出す(ステップS301)。制御部11は、電力系統Eからの受電電力量を読み出す(ステップS302)。
【0061】
制御部11は、放電電力量を記憶部12から読み出す(ステップS303)。
【0062】
制御部11は、ステップS301で読み出した発電設備2からの受電電力量と放電電力量との差分を算出し(ステップS304)、差分と、設定されている発電に係る単位電力当たりの料金とに基づいて発電料金を算出する(ステップS305)。
【0063】
制御部11は、ステップS302で読み出した電力系統Eからの受電電力量と、設定されている受電に係る単位電力当たりの料金とに基づく買電料金を算出し(ステップS306)、電気自動車への充電について算出した料金との差額を算出する(ステップS307)。
【0064】
制御部11は、ステップS305-S307で算出した料金、差額を含むレポートを作成し(ステップS308)、作成したレポートを記憶部12に記憶する(ステップS309)。制御部11は、作成したレポートを管理サーバ5へ送信し(ステップS310)、処理を終了する。
【0065】
発電設備2からの受電電力量と電力系統Eからの受電電力量とが区別できない場合、制御部11は、ステップS304-S307において、受電電力量と放電電力量との差分に基づく電気料金を算出してもよい。
【0066】
管理サーバ5では、充電装置1のメーカが管理している場合、電気自動車への充電の料金の一部を充電装置1のメンテナンス費用から差し引いてもよいし、発電設備2の管理者が直接的に充電要求者から徴収している場合、メンテナンス費用に一部上乗せした請求額を算出するといった運用をしてもよい。
【0067】
管理サーバ5が電力系統Eの管理会社によって管理されている場合、充電要求者から充電装置1の利用料として管理会社が徴収し、発電設備2の所有者へは、買電料金と、充電について算出された料金との差額分を、電力系統Eから要求するように運用する。その他、予め管理会社によって設計される料金の差し引きを行なうために、充電装置1から送信されるレポートが使用されるとよい。
【0068】
上述した処理を実行する充電装置1を既存の発電設備2に接続させることによって、発電した電力を、発電設備2の所有者自身の電気自動車への充電等、家庭又は施設内での自家消費にとどまらず、スポット的な充電サービスを提供することが可能となる。都市部でない地域で使用されている発電設備2に充電装置1を接続させ、充電スタンド不足を解消し、電気自動車の使用を促進することができる。既設の発電設備2に充電装置1を接続することにより、電力系統Eへ逆潮流させないように制御し、電力系統Eにおける周波数の影響を低減させることも可能になる。
【0069】
充電装置1は、充電するために蓄電素子10を内部に備えるから、災害時のバックアップ電源としての機能を果たすことも可能である。この場合、
図4のフローチャートのステップS201において、管理サーバ5からの指示によって、又は、管理者向けに非常用の際に設定されている認証情報によって電気自動車及び電気自動車以外への放電を可能とする。
【0070】
実施の形態1では、充電装置1は、既存の発電設備2、パワーコンディショナ3及び受変電装置4に接続される構成として説明した。しかしながら充電装置1は、蓄電素子を内蔵するパワーコンディショナ3の一部として実現されてもよい。
【0071】
(変形例1)
上述したように、充電装置1を既設の発電設備2に接続することによって、発電設備2からの電力を電力系統Eへ逆潮流させることなく、有効利用することができる。逆潮流をより確実に抑止するために、充電装置1は以下のような構成を有しているとよい。
【0072】
図6は、変形例1における充電システム100の概要図であり、
図7は、充電装置1の構成を示すブロック図である。変形例1では、受変電装置4と電力系統Eとの間に電流センサ16が設けられている。電流センサ16によって、電力系統Eと、発電設備2及び充電装置1との間の電力の流れを測定することができる。変形例2の充電装置1は、電流センサ16からの信号を入力する入力部17を備える。入力部17は、制御部11はCPU又はGPUの入出力ポートであってよい。
【0073】
制御部11は、起動している間、電気自動車Vへ蓄電素子10から充電させている期間を除いて以下の処理を継続して繰り返し実行する。
図8は、制御部11による逆潮流防止の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0074】
制御部11は、入力部17を介して電流センサ16によって出力される信号から、電流値を読み取る(ステップS401)。制御部11は、読み取った電流値によって、前記検知部によって逆潮流が検知されるか否かを判断する(ステップS402)。制御部11は、逆潮流が検知されないと判断された場合(S402:NO)、処理を終了する。この場合、制御部11は、所定の待機時間経過後再度ステップS401から処理を実行する。
【0075】
ステップS402における判断では、電流値、他の負荷群の動作を考慮して逆潮流の予兆があるか否かを判断し、予兆がある場合に逆潮流を検知してもよい。
【0076】
制御部11は、ステップS402にて逆潮流が検知されると判断された場合(S402:YES)、発電設備2からの電力によって蓄電素子10を充電する(ステップS403)。制御部11は、蓄電素子10の充電率、又は発電設備2からの電力量に基づく充電停止条件を満たすか否かを判断し(ステップS404)、充電停止条件を満たすと判断されるまで(S404:YES)、充電を継続する。
【0077】
制御部11は、充電停止条件を満たさないと判断された場合(S404:NO)、処理をステップS403へ戻す。
【0078】
制御部11は、充電停止条件を満たすと判断された場合(S404:YES)、処理を終了する。この場合も制御部11は、所定の待機時間経過後再度ステップS401から処理を実行する。
【0079】
上述したように、充電装置1を既設の発電設備2に接続することによって、発電設備2から電力系統Eへの逆潮流を防いで有効利用することが可能になる。
【0080】
(変形例2)
上述した充電装置1を既設の発電設備2及び受変電装置4に加えて充電システム100を以下のような工程で構築するように、充電装置1が構成されていてもよい。
図9は、変形例2における受変電装置4内における配線を模式的に示す図であり、
図10は、変形例2における充電装置1の構成を示すブロック図である。
【0081】
受変電装置4には、発電設備2と接続される電力線22に手動式のブレーカー41が設けられている。ブレーカー41は発電設備2及びパワーコンディショナ3と共に既設であり、基本的にオン状態のままで充電システム100が稼働する。受変電装置4では、電力系統Eと負荷群との間の電力線が接続されている。負荷群におけるブレーカーは、負荷群側が設置されている家庭又は施設内に設けられていることが好ましい。
【0082】
変形例2における受変電装置4では、負荷群と電力系統Eとの間の接続点と、発電設備2及びパワーコンディショナ3側のブレーカー41の電力系統E側端子との間に、充電装置1の充放電回路13を介して蓄電素子10に接続されている電力線101が接続される。
【0083】
変形例2における充電装置1は、発電設備2及び電力系統Eの間に介装させるスイッチ19を備える。スイッチ19は、制御部11と出力部18及び信号線を介して接続されており、制御部11からの制御信号に応じてオン・オフが切り替わる。スイッチ19は、例えば、マグネットスイッチを用いる。スイッチ19は、マグネットスイッチに限らず、他のリレースイッチでもよい。
【0084】
図11は、充電システム100の運転開始の工程を示す図である。発電設備2へ向けて出荷される直前の充電装置1に対し、蓄電素子10の充電率が第1所定値(例えば10%)以下であることが確認される(工程1)。次に、充電装置1に接続されているスイッチ19をオフとして電力系統Eと発電設備2との間に介装させる(工程2)。即ち、
図10におけるブレーカー41と、電力系統Eから負荷群への分岐点との間にスイッチ19を設ける。工程2の段階で、電流センサ16も電力系統Eと上記分岐点との間に設けるとよい。
【0085】
次に、充電装置1の蓄電素子10と接続されている電力線104をブレーカー41の電力系統E側の端子とスイッチ19との間に接続する(工程3)。
【0086】
充電装置1の制御部11は、スイッチ19のオフを維持したまま発電設備2からの電力を蓄電素子10へ充電させるように充放電回路13を制御する(工程4)。工程4では初回設置時であるから、発電設備2によって発電中でない場合であっても、スイッチ19をオフとしたままとする。
【0087】
次に充電装置1の制御部11は、蓄電素子10の充電率が第2所定値(例えば80%)以上であるか否かを、継続して判断する(工程5)。
【0088】
その後、制御部11は、蓄電素子10の充電率が第2所定値以上となったことを確認すると(工程6)、スイッチ19をオンとするように制御する(工程7)。以後、充電装置1の制御部11による制御は、
図3-
図5、及び
図8のフローチャートに示した処理を実行する。このように、充電装置1の初回設置直後は、発電設備2によって発電中でない場合であっても、スイッチ19をオフとしたままとする。これにより、安全輸送のために空状態となっている蓄電素子10へ、電力系統Eから大量の電力が充電のために使用されることを回避できる。
【0089】
上述のように開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1 充電装置
10 蓄電素子
11 制御部
12 記憶部
13 充放電回路
15 通信部
1P 制御プログラム
2 発電設備
3 パワーコンディショナ
4 受変電装置
5 管理サーバ
E 電力系統