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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】車両の電池冷却構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6563 20140101AFI20240110BHJP
   B60K 11/06 20060101ALI20240110BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240110BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240110BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20240110BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240110BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240110BHJP
【FI】
H01M10/6563
B60K11/06 ZHV
H01M10/613
H01M10/625
H01M50/20
H01M10/6556
B60K1/04 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019184377
(22)【出願日】2019-10-07
(65)【公開番号】P2021061159
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】堀居 直幸
(72)【発明者】
【氏名】種田 良司
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-033799(JP,A)
【文献】特開2006-324041(JP,A)
【文献】特開2010-123298(JP,A)
【文献】特開2017-054789(JP,A)
【文献】特開2014-086414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6563
B60K 11/06
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 50/20
H01M 10/6556
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池モジュールが一方向に並べられた電池モジュール列と、
前記電池モジュールに冷却流体を供給する冷却通路と、
前記電池モジュールに電気的に接続された電装機器と、
前記電池モジュールと前記冷却通路と前記電装機器とを収容するバッテリーケースとを備える車両の電池冷却構造であって、
前記電池モジュール列は、その長手方向と直交する方向に間隔をおいて少なくとも2つ設けられ、
前記冷却通路は、前記2つの電池モジュール列の間で前記2つの電池モジュール列のそれぞれに沿って延在する2つの延在部を備え、
前記電装機器は、前記2つの延在部の間に配置され、
前記冷却流体は、冷却風であって、
前記複数の電池モジュールを冷却した前記冷却風を吸引するファンと、
前記ファンから吐出される前記冷却風を冷却し前記冷却通路に導く冷却器と
を備え、
前記ファンは、前記2つの延在部の間で、かつ、前記バッテリーケースの中央または中央近傍の箇所に配置されている、
ことを特徴とする車両の電池冷却構造。
【請求項2】
前記電装機器は、前記電池モジュールを機能させるためのジャンクションボックスおよび前記電池モジュールの出力電圧を変換するDC/DCコンバータの少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項1記載の車両の電池冷却構造。
【請求項3】
前記冷却通路の少なくとも前記電装機器側に位置する箇所が絶縁性を有する材料で構成された、
ことを特徴とする請求項1または2記載の車両の電池冷却構造。
【請求項4】
前記冷却通路は金属製である、
ことを特徴とする請求項1または2記載の車両の電池冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の電池冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
モータを駆動源とした電気自動車やハイブリッド自動車などの電動車においてモータに電力を供給する車両用電源装置が使用されている。
車両用電源装置は、高圧の直流電力をモータに供給することから複数の電池セルを直列に接続した電池モジュールを複数接続して構成された組電池と、電池モジュールに電気的に接続された電装機器と、組電池および電装機器を収容するバッテリーケースとを備えている。
充電あるいは放電に伴い電池セルは熱を生じるため、電池モジュールの冷却を行なう必要がある。
そこで、複数の電池モジュールを一方向に並べて電池モジュール列を構成すると共に、電池モジュール列に沿って延在する冷却風ダクトを設け、冷却風ダクトから電池モジュールに冷却風を供給する電池冷却構造が提供されている(特許文献1、2参照)。
また、上記特許文献1、2には開示されていないが、通常、電装機器は、電池モジュールに隣接して配置されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-324041号公報
【文献】特開2010-123298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような場合、車両衝突時に、衝撃荷重がバッテリーケースに入力して内側に変形し、この変形により電池モジュールが変位して電装機器に接触、干渉するおそれがある。
本発明は、冷却風ダクトに着目してなされたものであり、車両衝突時の衝撃荷重から電装機器の保護を図る上で有利な車両の電池冷却構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の電池モジュールが一方向に並べられた電池モジュール列と、前記電池モジュール列に沿って延在し前記電池モジュールに冷却流体を供給する冷却通路と、前記電池モジュールに電気的に接続された電装機器と、前記電池モジュールと前記冷却通路と前記電装機器とを収容するバッテリーケースとを備える車両の電池冷却構造であって、前記電池モジュール列は、その長手方向と直交する方向に間隔をおいて少なくとも2つ設けられ、前記冷却風ダクトは、前記2つの電池モジュール列の間で前記2つの電池モジュール列のそれぞれに沿って延在する2つの延在部を備え、前記電装機器は、前記2つの延在部の間に配置されていることを特徴とする。
本発明によれば、車両衝突時の衝撃荷重がバッテリーケースに入力して内側に変形し、さらに電池モジュールが内側に変位しても、電装機器の外側に冷却通路の延在部が位置しているので、延在部により衝撃荷重を受け止め、電装機器の保護を図る上で有利となる。
また、本発明は、前記電装機器は、前記電池モジュールを機能させるためのジャンクションボックスおよび前記電池モジュールの出力電圧を変換するDC/DCコンバータの少なくとも1つを含むことを特徴とする。
上記発明によれば、高電圧が印加される電装機器の保護を図る上で有利となる。
また、本発明は、前記冷却風ダクトの少なくとも前記電装機器側に位置する箇所が絶縁性を有する材料で構成されたことを特徴とする。
上記発明によれば、絶縁性を有する材料で構成された冷却通路部分により電池モジュールと電装機器との電気的な接触を抑制して電装機器の保護を図る上で有利となる。
また、本発明は、前記冷却通路は金属製であることを特徴とする。
上記発明によれば、車両衝突時の衝撃荷重を金属製の冷却通路で受け止め、電池モジュールが電装機器側に接近することを抑制して電装機器の保護を図る上で有利となる。
また、本発明は、前記冷却流体は冷却風であって、前記複数の電池モジュールを冷却した前記冷却風を吸引するファンと、前記ファンから吐出される前記冷却風を冷却し前記冷却通路に導く冷却器とを備え、前記ファンは、前記2つの延在部の間で、かつ、前記バッテリーケースの中央または中央近傍の箇所に配置されていることを特徴とする。
上記発明によれば、バッテリーケース内の各部からファンに向かって流れる冷却風が受ける圧力損失を均一にできるため、バッテリーケース内部での冷却風の循環を円滑に行なえ、冷却効率を高める上で有利となる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車両衝突時の衝撃荷重がバッテリーケースに入力して内側に変形し、さらに電池モジュールが内側に変位しても、電装機器の外側に冷却通路の延在部が位置しているので、延在部により衝撃荷重を受け止め、電装機器の保護を図る上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態に係る車両の電池冷却構造が適用された車両用電源装置の斜視図であり、バッテリーケースのカバーを取り外した状態を示す。
図2】車両用電源装置の平面図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4図2のB1-B1線断面図である。
図5図2のB2-B2線断面図である。
図6図2のC-C線断面図である。
図7図2のD-D線断面図である。
図8図2のE-E線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
本実施の形態の車両の電池冷却構造は車両用電源装置に適用されている。
車両用電源装置は、モータのみを駆動源とする電気自動車、あるいは、ハイブリッド車、あるいは、プラグインハイブリッド車などのモータを駆動源とした電動車に搭載される。
なお、以下の図面において符号UPは車両上方を示し、符号FRは車両前方を示し、符号INは車幅方向内側を示し、符号OUTは車幅方向外側を示す。
図1図2に示すように、車両用電源装置10は、バッテリーケース12と、バッテリーケース12に収容された組電池14、冷却風ダクト(冷却通路)16、ファン18、冷却器20、接続ダクト22、ジャンクションボックス24、DC/DCコンバータ26とを含んで構成されている。
【0009】
バッテリーケース12は金属製であり、トレー28と、カバー30(図3参照)とを備えている。
バッテリーケース12は、すなわちトレー28とカバー30は、高さと、高さよりも大きい寸法の幅と、幅よりも大きい寸法の長さとを有している。
トレー28は、平面視長方形の板状の底壁2802と、底壁2802の周囲から起立する側壁2804と、側壁2804の上端外周に設けられた環状のトレー側フランジ2806とを備えている。
トレー28は、長手方向を車両前後方向に合致させ、幅方向を車幅方向に合致させて車両の車幅方向の中央に配置され、取り付け部材32を介して左右のサイドメンバに取着されている。
図3に示すように、カバー30は、トレー28の底壁2802に対向する上壁3002と、上壁3002の周囲から垂設された側壁3004と、側壁3004の下端外周に設けられた環状のカバー側フランジ3006とを備えている。
トレー28とカバー30は、トレー側フランジ2806とカバー側フランジ3006とを重ね合わせた状態で不図示の複数のボルトにより締結されている。
【0010】
図1図2に示すように、組電池14は、互いに電気的に接続された複数の電池モジュール34で構成され、本実施の形態では、平面視した状態で、3つの電池モジュール34が一方向に並べられた電池モジュール列36が電池モジュール列36の長手方向と直交する方向に間隔をおいて2つ設けられている。
本実施の形態では、2つの電池モジュール列36は、その長手方向をトレー28の長手方向に合致させ、トレー28の幅方向の両端寄りの箇所に配置されている。
【0011】
図2に示すように、各電池モジュール34は複数の電池セル38がトレー28の長手方向に並べられて構成され、それら電池セル38は不図示のバスバーを介して相互に電気的に接続されている。
電池セル38は、二次電池で構成されており、二次電池としてリチウムイオン二次電池など従来公知の様々な二次電池が使用可能である。
電池セル38は、電極体と、該電極体を収容するケースとを備え、薄い矩形板状を呈し、電池セル38の上端面には端子部が設けられている。
【0012】
電池モジュール34は、複数の電池セル38が高さ方向を上下方向に向け、厚さ方向をトレー28の長手方向に向けて等間隔をおいて並べられ、位置決めされて不図示のモジュールハウジングに収容され、モジュールハウジングはトレー28の底壁2802に取り付けられている。
モジュールハウジングは枠状を呈し、内部に収容される複数の電池セル38の縁部を覆うように設けられている。
したがって、複数の電池セル38の高さ方向の両端に位置する端面と、厚さ方向の両端に位置する側面と、幅方向の両端に位置する端面はバッテリーケース12の内部に開放され、各電池モジュール34を構成する電池セル38の側面間の隙間に冷却風(冷却流体)が流通できるように図られている。
【0013】
冷却風ダクト16は、電池モジュール34に冷却風を供給するものである。
図1図2図4から図8に示すように、冷却風ダクト16は、2つの電池モジュール列36の間で2つの電池モジュール列36のそれぞれに沿って直線状に延在する2つの延在部40を備えている。
2つの電池モジュール列36は、その長手方向をトレー28の長手方向に合致させ、トレー28の幅方向の両端寄りの箇所に配置されていることから、2つの延在部40の間に、トレー28の幅方向の中央でトレー28の長手方向に延在する空間S1が位置している。
この空間S1に、ジャンクションボックス24、ファン18、DC/DCコンバータ26が配置され、空間S1の延長上でDC/DCコンバータ26に間隔をおいて冷却器20が配置されている。
すなわち、2つの延在部40の間でトレー28の長手方向に沿ってジャンクションボックス24、ファン18、DC/DCコンバータ26が配置され、詳細にはトレー28の長手方向の一端にジャンクションボックス24が配置され、トレー28の長手方向の他端にDC/DCコンバータ26と冷却器20が配置され、トレー28の中央または中央近傍にファン18が配置されている。
【0014】
ジャンクションボックス24とDC/DCコンバータ26は、電池モジュール34に電気的に接続されて機能するものであり、本実施の形態では、電装機器は、ジャンクションボックス24とDC/DCコンバータ26とを含んで構成されている。
ジャンクションボックス24は、電池モジュール34に接続されることで電池モジュール34を機能させるものであり高電圧が印加されている。
DC/DCコンバータ26は、電池モジュール34からの出力電圧を変換し、変換後の電圧をインバーターや補機類に供給するものであり高電圧が印加されている。
図3図7に示すように、DC/DCコンバータ26は、動作に伴い発熱する矩形板状の本体部2602を備え、本体部2602の下面には、下方に突出する複数の放熱フィン2604が設けられている。
本実施の形態では、ジャンクションボックス24およびDC/DCコンバータ26は、2列の電池モジュール列36の間で電池モジュール列36の延在方向に間隔をおいて配置され、トレー28の底壁2802に取り付けられている。
【0015】
図1から図3に示すように、ファン18は、複数の電池モジュール34を冷却した冷却風を吸引し、接続ダクト22を介して冷却器20に送給するものである。
ファン18は、トレー28の底壁2802に取り付けられ、2つの延在部40の間でバッテリーケース12の中央または中央近傍の箇所に配置されている。
冷却器20(エバポレータ)は、ファン18から吐出される冷却風を冷却し冷却風ダクト16に導くものである。
冷却器20は、その大部分が金属材料で構成され、冷却器本体2002と、流入口2004と、一対の流出口2006とを備えている。
冷却器本体2002は、冷却風の冷却を行なう箇所である。
流入口2004は、冷却器本体2002の上部に設けられ、ファン18から吐出される冷却風が接続ダクト22を介して流入する箇所である。
一対の流出口2006は、冷却器本体2002の下部の両側に設けられ冷却器本体2002で冷却された冷却風が流出する箇所であり、冷却風ダクト16に接続されている。
【0016】
接続ダクト22は、ファン18と冷却器20とを接続する箇所であり、図6に示すように、断面がトレー28の幅方向に横長の矩形状を呈し、図3に示すように、トレー28の長手方向に延在する横延在部2202と上下方向に延在する縦延在部2204とを含んで構成されている。
横延在部2202の一端はファン18の吐出口1802に接続され、横延在部2202は吐出口1802からトレー28の長手方向でDC/DCコンバータ26の下方で冷却器20に向かって延在し、横延在部2202の上面の一部はDC/DCコンバータ26の下面および放熱フィン2604を含んで構成されている。
したがって、DC/DCコンバータ26は、その下面が横延在部2202を通過する冷却風により冷却される。
縦延在部2204の一端は横延在部2202の他端に接続され、冷却器20とDC/DCコンバータ26との間で上方に延在し、冷却器20の流入口2004に接続され、縦延在部2204は絶縁性を有する合成樹脂材料で構成されている。
【0017】
図1図2に示すように、冷却風ダクト16は、延在部40と、延在部40の上流端に接続する湾曲部42とを含んで構成され、冷却器20の一対の流出口2006に一対の延在部40が湾曲部42を介してそれぞれ接続されている。
図1図7図8に示すように、各延在部40は、断面が上下方向に細長の矩形状を呈しており、延在部40を構成する壁部のうちトレー幅方向外側に位置する外側壁4002に、冷却風を吹き出す矩形状の吹き出し開口4004が延在部40の延在方向に間隔をおいて複数設けられている。
それら吹き出し開口4004は、各列を構成する複数の電池モジュール34のトレー幅方向内側の箇所に対向しており、各モジュールハウジングで支持された複数の電池セル38のトレー幅方向内側の端面に対向している。
また、図1図2図5に示すように、吹き出し開口4004の周囲の外側壁4002の箇所には、吹き出し開口4004の周囲を囲む矩形枠状の発泡ゴムからなるシール材44が接着されており、このシール材44は、外側壁4002と、枠状のモジュールハウジングとの間で押しつぶされることで、吹き出し開口4004から吹き出される冷却風がモジュールハウジングで支持された隣り合う電池セル38の厚さT方向の両端に位置する側面間の隙間に確実に供給されるように図られている。
【0018】
本実施の形態では、冷却風ダクト16は絶縁性を有する合成樹脂材料と、金属材料とで構成されている。
詳細に説明すると、図1に示すように、湾曲部42と、湾曲部42に続く延在部40の一部40Aは、合成樹脂材料とを組み合わせて形成され、延在部40の一部40Aを除いた残りの部分40Bは、金属材料で形成されている。
すなわち、湾曲部42は合成樹脂材料からなる壁部で形成されている。
また、湾曲部42に続く延在部40の一部40Aのトレー幅方向外側の部分40A1は金属板を塑性加工した板金製で、トレー幅方向内側の部分40A2は合成樹脂材料で形成されている。
すなわち、冷却風ダクト16の少なくともDC/DCコンバータ26側に位置する箇所は絶縁性を有する合成樹脂材料で構成されている
また、延在部40の残りの部分40Bは、板金で構成されている。
これは湾曲部42はその形状からして合成樹脂材料を用いて型成形で形成することがコスト上有利であるためであり、残りの部分40Bは平面を組み合わせた単純な形状であるため、板金を用いて形成することがコスト上有利であるためである。
【0019】
なお、湾曲部42および延在部40を全て合成樹脂材料で構成しても、あるいは、全て板金で構成しても良いことは無論である。
延在部40を合成樹脂材料で構成すると、あるいは、延在部40の少なくとも電装機器側に位置する箇所を合成樹脂材料で構成すると、車両衝突時、バッテリーケース12が車幅方向内側に変形するような衝撃荷重を受けた場合、電池モジュール34が車幅方向内側へ変位し、これにより延在部40が変形して電装機器に接近した場合に、電装機器と冷却風ダクト16との電気的な接触を回避でき、電装機器の保護を図る上で有利となる。
また、延在部40を板金で構成した場合は、延在部40の剛性が高められるので、バッテリーケース12が車幅方向内側に変形するような衝撃荷重を受けた場合、延在部40が衝撃荷重を受け止めることで、電池モジュール34の車幅方向内側への変位を抑制し、電装機器の保護を図る上で有利となる。
【0020】
次に作用効果について説明する。
車両用電源装置10が稼働し、各電池モジュール34から出力される電力が車両の駆動用モータに供給され、また、DC/DCコンバータ26を介して補機類に供給されると、各電池セル38およびDC/DCコンバータ26は発熱する。
あるいは、車両外部の充電装置から各電池モジュール34の電池セル38に充電が行われると各電池セル38が発熱する。
この場合、ファン18が動作することによりバッテリーケース12内の空気が吸引され接続ダクト22を介して冷却器20に至り、冷却器20で冷却された空気は、冷却風として冷却風ダクト16に供給される。
冷却風ダクト16の一対の延在部40に供給された冷却風は、延在部40の吹き出し開口4004から各電池セル38の間の隙間に供給される。
冷却風が各電池セル38の間の隙間を通ることで電池セル38が冷却される。
電池セル38を通り抜けた冷却風は、一対の延在部40の間の空間S1に至り、やがてファン18によって吸入され接続ダクト22を介して冷却器20に供給される。
この際、接続ダクト22を流れる冷却風が放熱フィン2604に供給されることによってDC/DCコンバータ26が冷却される。
接続ダクト22を流れる冷却風は、電池セル38を冷却した後の冷却風であるため、冷却器20で冷却された冷却風よりも温度が上昇しているが、電池セル38の温度よりもDC/DCコンバータ26の温度の方が高温であるため、このように電池セル38を冷却した後の冷却風でDC/DCコンバータ26を冷却することで、冷却効率の向上が図られている。
このように冷却風がバッテリーケース12内部で循環されることにより電池セル38およびDC/DCコンバータ26の冷却がなされる。
【0021】
本実施の形態によれば、冷却風ダクト16に2つの電池モジュール列36の間で2つの電池モジュール列36のそれぞれに沿って延在する2つの延在部40を設け、電装機器を、2つの延在部40の間に配置した。
したがって、衝突時の衝撃荷重がバッテリーケース12に入力して車幅方向内側に変形し、さらに電池モジュール34が車幅方向内側に変位しても、電装機器の車幅方向外側に延在部40が位置しているので、延在部40により衝撃荷重を受け止め、電装機器の保護を図る上で有利となる。
【0022】
また、本実施の形態では、電装機器は、電池モジュール34を機能させるためのジャンクションボックス24および電池モジュール34の出力電圧を変換するDC/DCコンバータ26であるため、高電圧が印加される電装機器の保護を図る上で有利となる。
【0023】
また、本実施の形態では、複数の電池モジュール34を冷却した冷却風を吸引するファン18が、平面視した状態で、2つの延在部40の間で、かつ、バッテリーケース12の中央または中央近傍の箇所に配置されている。
そのため、ファン18がバッテリーケース12の中央から離れた端部に配置されている場合に比較して、バッテリーケース12内の各部からファン18に向かって流れる冷却風が受ける圧力損失を均一にできるため、バッテリーケース12内部での冷却風の循環を円滑に行なえ、冷却効率を高める上で有利となる。
【0024】
なお、本実施の形態では、平面視した状態で、長手方向と直交する方向に間隔をおいて設けられた2つの電池モジュール列36の間に延在部40を設ける構成を説明したが、2つの電池モジュール列36の間に延在部40が2つの電池モジュール列36のそれぞれに沿って設けられていればよく、例えば、バッテリーケース12上下方向に間隔をおいて設けた2つの電池モジュール列36の間に延在部40を設ける構成としてもよい。
また、電池モジュール列36が2列並べられている場合について説明したが、電池モジュール列36が3列以上並べられていてもよく、要するに2つの電池モジュール列36の間で2つの電池モジュール列36のそれぞれに沿って延在する2つの延在部40を設け、電装機器を、2つの延在部40の間に配置すればよい。
また、本実施の形態では、冷却流体が冷却風の場合を説明したが、冷却流体が冷却水の場合にも適用できる。この場合は、冷却通路16は冷却風ダクトではなく、冷却水路となりファンはポンプとなる。
また、本実施の形態では、電装機器をジャンクションボックス24とDC/DCコンバータ26として説明しているが、これに限らず、電池パック内に設置される電装機器であればよく、電流センサ、漏電センサ、BMS(バッテリマネージメントシステム)であってもよい。
【符号の説明】
【0025】
10 車両用電源装置
12 バッテリーケース
16 冷却風ダクト(冷却通路)
18 ファン
20 冷却器
24 ジャンクションボックス(電装機器)
26 DC/DCコンバータ(電装機器)
34 電池モジュール
36 電池モジュール列
38 電池セル
40 延在部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8