(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20240110BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240110BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240110BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20240110BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01L29/78 652Q
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652T
H01L29/78 652N
H01L29/78 658E
H01L21/28 301B
H01L21/28 301S
H01L29/78 652D
H01L29/78 652M
H01L29/78 655A
(21)【出願番号】P 2019185510
(22)【出願日】2019-10-08
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】星 保幸
【審査官】石塚 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-229449(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047284(WO,A1)
【文献】特開2005-311284(JP,A)
【文献】特開2012-015282(JP,A)
【文献】特開2017-204570(JP,A)
【文献】国際公開第2018/131144(WO,A1)
【文献】特開2015-222743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 21/336
H01L 21/28
H01L 29/739
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体基板と、
前記半導体基板のおもて面に設けられた、前記半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面に選択的に設けられた第2導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた第1導電型の第1半導体領域と、
前記第2半導体層に接触するゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜の前記第2半導体層と接触する面と反対側の表面に設けられたゲート電極と、
前記第2半導体層および前記第1半導体領域の表面に設けられた第1電極と、
前記第1電極上に第1はんだを介して、前記第1電極の全面に設けられた金属板と、
前記金属板上に選択的に設けられた保護膜と、
前記金属板に第2はんだを介して接続されたピン状電極と、
前記半導体基板の裏面に設けられた第2電極と、
を備え
、
前記金属板の端部に対向する前記第2半導体層内には、前記第1半導体領域が設けられていないことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記金属板は銅膜であり、厚さが5μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記金属板は厚さが20μm以上5000μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1はんだは、前記第2はんだよりも融点が高いことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1半導体領域および前記第2半導体層を貫通し、前記第1半導体層に達するトレンチをさらに備え、
前記ゲート電極は、前記トレンチの内部に前記ゲート絶縁膜を介して設けられることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1電極上にはめっき膜が設けられており、前記金属板は前記めっき膜上に前記第1はんだを介して設けられることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高電圧や大電流を制御するパワー半導体装置の構成材料として、シリコン(Si)が用いられている。パワー半導体装置は、バイポーラトランジスタやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)など複数種類あり、これらは用途に合わせて使い分けられている。
【0003】
例えば、バイポーラトランジスタやIGBTは、MOSFETに比べて電流密度は高く大電流化が可能であるが、高速にスイッチングさせることができない。具体的には、バイポーラトランジスタは数kHz程度のスイッチング周波数での使用が限界であり、IGBTは数十kHz程度のスイッチング周波数での使用が限界である。一方、パワーMOSFETは、バイポーラトランジスタやIGBTに比べて電流密度が低く大電流化が難しいが、数MHz程度までの高速スイッチング動作が可能である。
【0004】
しかしながら、市場では大電流と高速性とを兼ね備えたパワー半導体装置への要求が強く、IGBTやパワーMOSFETはその改良に力が注がれ、現在ではほぼ材料限界に近いところまで開発が進んでいる。パワー半導体装置の観点からシリコンに代わる半導体材料が検討されており、低オン電圧、高速特性、高温特性に優れた次世代のパワー半導体装置を作製(製造)可能な半導体材料として炭化珪素(SiC)が注目を集めている。
【0005】
炭化珪素は、化学的に非常に安定した半導体材料であり、バンドギャップが3eVと広く、高温でも半導体として極めて安定的に使用することができる。また、炭化珪素は、最大電界強度もシリコンより1桁以上大きいため、オン抵抗を十分に小さくすることができる半導体材料として期待される。このような炭化珪素の特長は、他のシリコンよりバンドギャップが広いワイドバンドギャップ半導体である、例えば窒化ガリウム(GaN)にもあてはまる。このため、ワイドバンドギャップ半導体を用いることにより、半導体装置の高耐圧化を図ることができる。
【0006】
トレンチゲート構造は、半導体基板(半導体チップ)のおもて面に形成したトレンチ内にMOSゲートを埋め込んだMOSゲート構造であり、トレンチの側壁に沿って半導体基板のおもて面と直交する方向にチャネル(反転層)が形成される。このため、半導体基板のおもて面に沿ってチャネルが形成されるプレーナゲート構造と比べて、単位面積当たりの単位セル(素子の構成単位)密度を増やすことができ、単位面積当たりの電流密度を増やすことができるため、コスト面で有利である。プレーナゲート構造は、半導体基板のおもて面上に平板状にMOSゲートを設けたMOSゲート構造である。
【0007】
また、デバイスの電流密度を増加させた分、単位セルの占有体積に応じた温度上昇率が高くなり、ボンディングワイヤが剥離する等の問題が生じるため、放電効率の向上と信頼性の安定化とを図るために両面冷却構造が必要になる。両面冷却構造とは、半導体基板で発生した熱を半導体基板の両面から外へ逃がすことで半導体基板全体の放熱性を向上させた構造である。両面冷却構造では、半導体基板で発生した熱は、半導体基板の裏面に金属ベース板を介して接触させた冷却フィンから放熱され、かつ半導体基板のおもて面に一方の端部を接合した端子ピンを介して当該端子ピンの他方の端部を接合した金属バーから放熱される。
【0008】
さらに信頼性を向上させるために、メイン半導体素子である縦型MOSFETと同一の半導体基板に、電流センス部、温度センス部および過電圧保護部等の高機能部を配置して高機能構造とした装置が提案されている。高機能構造とする場合、高機能部を安定して形成するために、活性領域に、メイン半導体素子の単位セルと離して、かつエッジ終端領域に隣接して、高機能部のみを配置した領域が設けられる。活性領域は、メイン半導体素子のオン時に主電流が流れる領域である。エッジ終端領域は、半導体基板のおもて面側の電界を緩和して耐圧(耐電圧)を保持するための領域である。耐圧とは、素子が誤動作や破壊を起こさない限界の電圧である。
【0009】
従来の炭化珪素半導体装置の構造について、トレンチ型MOSFETを例に説明する。
図12は、従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
図12に示すように、トレンチ型MOSFET150では、n
+型炭化珪素基板101のおもて面にn型炭化珪素エピタキシャル層102が堆積される。n型炭化珪素エピタキシャル層102のn
+型炭化珪素基板101側に対して反対側の表面側は、n型高濃度領域106が設けられている。また、n型高濃度領域106のn
+型炭化珪素基板101側に対して反対側の表面層には、第1p
+型ベース領域104が選択的に設けられている。n型高濃度領域106には、トレンチ118の底面全体を覆うように第2p
+型ベース領域105が選択的に設けられている。
【0010】
また、従来のトレンチ型MOSFET150には、さらにp型炭化珪素エピタキシャル層103、n+型ソース領域107、p++型コンタクト領域108、ゲート絶縁膜109、ゲート電極110、層間絶縁膜111、ソース電極113、裏面電極114、トレンチ118、ソース電極パッド115およびドレイン電極パッド(不図示)が設けられている。
【0011】
ソース電極113は、n+型ソース領域107、p++型コンタクト領域108上に設けられ、ソース電極113上にソース電極パッド115が設けられている。ソース電極パッド115は、順に第1TiN膜125、第1Ti膜126、第2TiN膜127、第2Ti膜128およびAl合金膜129が積層されている多層膜である。また、ソース電極パッド115上部には、第2めっき膜116、第2はんだ117、外部電極ピン119、第1保護膜121および第2保護膜123が設けられる。
【0012】
また、めっき膜と保護膜とソース電極がお互いに接する3重点部分の直下に、チャネルを形成しないことにより、応力が集中して掛かる部分に電流が流れることがなくなり、応力が集中して掛かる部分による特性劣化を抑制できる半導体装置が公知である(例えば、下記特許文献1参照)。
【0013】
また、電極の中にTa(タンタル)の硬度と同等又はそれ以上の硬度を有する保護層を少なくとも1層有し、ボンディングワイヤとしてCuボンディングワイヤを用いても、チップクラックが発生しないパワー半導体装置が公知である(例えば、下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】国際公開第2017/047283号公報
【文献】特開2014-082367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、ピンタイプの両面冷却構造では、外部電極ピン119の端部をはんだ117で接合する際に、はんだ117とめっき116の部分の角度のコントロールが難しく、素子活性領域への応力が高くなる。さらに、半導体装置の高周波数化に伴い素子に発生する温度が上昇し、素子の並列数および素子を構成するモジュールの並列数が増えてくると素子への応力が局所的に集中するようになる。このように応力が集中することにより、半導体装置の諸特性が劣化し、信頼性が低下する。最悪の場合、層間絶縁膜111が割れてしまい、ゲート電極109とソース電極113とがショートし、半導体装置が不良になる。
【0016】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、高周波数動作での諸特性の変動を抑制し、破壊しにくく信頼性の高い半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置は、次の特徴を有する。半導体装置は、第1導電型の半導体基板のおもて面に、前記半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層が設けられる。前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面に選択的に第2導電型の第2半導体層が設けられる。前記第2半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に第1導電型の第1半導体領域が設けられる。前記第2半導体層に接触するゲート絶縁膜が設けられる。前記ゲート絶縁膜の前記第2半導体層と接触する面と反対側の表面にゲート電極が設けられる。前記第2半導体層および前記第1半導体領域の表面に第1電極が設けられる。前記第1電極上に第1はんだを介して、前記第1電極の全面に金属板が設けられる。前記金属板上に選択的に保護膜が設けられる。前記金属板に第2はんだを介して接続されたピン状電極と、前記半導体基板の裏面に第2電極が設けられる。前記金属板の端部に対向する前記第2半導体層内には、前記第1半導体領域が設けられていない。
【0018】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記金属板は銅板であり、厚さが5μm以上であることを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記金属板は厚さが20μm以上5000μm以下であることを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第1はんだは、前記第2はんだよりも融点が高いことを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第1半導体領域および前記第2半導体層を貫通し、前記第1半導体層に達するトレンチをさらに備え、前記ゲート電極は、前記トレンチの内部に前記ゲート絶縁膜を介して設けられることを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかる半導体装置は、上述した発明において、前記第1電極上にはめっき膜が設けられており、前記金属板は前記めっき膜上に前記第1はんだを介して設けられることを特徴とする。
【0024】
上述した発明によれば、ソース電極パッド上に、第1はんだを介して金属板が設けられる。これにより、外部電極ピンを固定する際に第2はんだにかかる応力を分散化させ均一にすることができ、炭化珪素半導体装置の特定の領域に応力が局所的に集中することを防止できる。このため、高周波数動作での高電流密度による諸特性の変動を大幅に改善することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明にかかる半導体装置によれば、高周波数動作での諸特性の変動を抑制し、破壊しにくく信頼性が高いという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図2】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その1)。
【
図3】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その2)。
【
図4】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その3)。
【
図5】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その4)。
【
図6】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その5)。
【
図7】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その6)。
【
図8】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置と従来の炭化珪素半導体装置のもれ電流の変化率を示すグラフである。
【
図9】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置と従来の炭化珪素半導体装置のオン電圧の変化率を示すグラフである。
【
図10】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置と従来の炭化珪素半導体装置のしきい値の変化率を示すグラフである。
【
図11】実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の金属板の他の構造を示す断面図である。
【
図12】従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。+および-を含めたnやpの表記が同じ場合は近い濃度であることを示し濃度が同等とは限らない。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本明細書では、ミラー指数の表記において、“-”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“-”を付けることで負の指数をあらわしている。
【0028】
(実施の形態)
実施の形態にかかる半導体装置は、シリコン(Si)よりもバンドギャップが広い半導体(ワイドバンドギャップ半導体とする)を用いて構成される。この実施の形態にかかる半導体装置の構造について、ワイドバンドギャップ半導体として例えば炭化珪素(SiC)を用いた場合を例に説明する。
図1は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
図1では、活性領域40がエッジ終端領域41と接続する部分の構造を示している。
【0029】
実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置は、半導体基板のおもて面(後述するp型炭化珪素エピタキシャル層3側の面)側にトレンチゲート構造のMOSゲートを備えたトレンチ型MOSFET50である。炭化珪素半導体基体は、炭化珪素からなるn+型炭化珪素基板(第1導電型の半導体基板)1上にn型炭化珪素エピタキシャル層(第1導電型の第1半導体層)2およびp型炭化珪素エピタキシャル層(第2導電型の第2半導体層)3を順にエピタキシャル成長させてなる。n型高濃度領域6をn型炭化珪素エピタキシャル層2上にエピタキシャル成長させてもよい。
【0030】
トレンチゲート構造のMOSゲートは、p型炭化珪素エピタキシャル層3、n+型ソース領域(第1導電型の第1半導体領域)7、p++型コンタクト領域8、トレンチ18、ゲート絶縁膜9およびゲート電極10で構成される。
【0031】
具体的には、トレンチ18は、半導体基板のおもて面から深さ方向zにp型炭化珪素エピタキシャル層3を貫通して、n型高濃度領域6(n型高濃度領域6が設けられていない場合は、n型炭化珪素エピタキシャル層2、以下(2)と称する)に達する。深さ方向zとは、半導体基板のおもて面から裏面へ向かう方向である。トレンチ18は、例えば、ストライプ状に配置されている。
【0032】
トレンチ18の内部には、トレンチ18の内壁に沿ってゲート絶縁膜9が設けられ、ゲート絶縁膜9上にトレンチ18の内部に埋め込むようにゲート電極10が設けられている。1つのトレンチ18内のゲート電極10と、当該ゲート電極10を挟んで隣り合うメサ領域(隣り合うトレンチ18間の領域)と、でメイン半導体素子の1つの単位セルが構成される。
図1では、2つのトレンチMOS構造のみを図示しているが、さらに多くのトレンチ構造のMOSゲート(金属-酸化膜-半導体からなる絶縁ゲート)構造が並列に配置されていてもよい。
【0033】
n型炭化珪素エピタキシャル層2のソース側(後述するソース電極13側)の表面層に、p型炭化珪素エピタキシャル層3に接するようにn型領域(以下、n型高濃度領域とする)6が設けられていてもよい。n型高濃度領域6は、キャリアの広がり抵抗を低減させる、いわゆる電流拡散層(Current Spreading Layer:CSL)である。このn型高濃度領域6は、例えば、トレンチ18の内壁を覆うように、基板おもて面(半導体基板のおもて面)に平行な方向に一様に設けられている。
【0034】
n型高濃度領域6は、p型炭化珪素エピタキシャル層3との界面から、トレンチ18の底面よりもドレイン側(後述する裏面電極14側)に深い位置に達している。n型高濃度領域6の内部には、第1,2p+型ベース領域4、5がそれぞれ選択的に設けられていてもよい。第1p+型ベース領域4は、隣り合うトレンチ18間(メサ領域)に、第2p+型ベース領域5およびトレンチ18と離して設けられ、かつp型炭化珪素エピタキシャル層3に接する。第2p+型ベース領域5は、トレンチ18の底面および底面コーナー部のうち少なくとも底面を覆う。トレンチ18の底面コーナー部とは、トレンチ18の底面と側壁との境界である。
【0035】
第1,2p+型ベース領域4、5とn型炭化珪素エピタキシャル層2とのpn接合は、トレンチ18の底面よりもドレイン側に深い位置に形成されている。n型高濃度領域6を設けずに、第1,2p+型ベース領域4、5がn型炭化珪素エピタキシャル層2の内部に設けられていてもよい。第1,2p+型ベース領域4、5のドレイン側端部の深さ位置は、第1,2p+型ベース領域4、5とn型炭化珪素エピタキシャル層2とのpn接合がトレンチ18の底面よりもドレイン側に深い位置にあればよく、設計条件に合わせて種々変更可能である。第1,2p+型ベース領域4、5により、トレンチ18の底面に沿った部分でゲート絶縁膜9に高電界が印加されることを防止することができる。
【0036】
p型炭化珪素エピタキシャル層3の内部には、n+型ソース領域7が選択的に設けられている。n+型ソース領域7と接するようにp++型コンタクト領域8が選択的に設けられていてもよい。n+型ソース領域7は、トレンチ18の側壁のゲート絶縁膜9に接し、トレンチ18の側壁のゲート絶縁膜9を介してゲート電極10に対向する。
【0037】
層間絶縁膜11は、ゲート電極10を覆うように、半導体基板のおもて面全面に設けられている。層間絶縁膜11には、層間絶縁膜11を深さ方向zに貫通して基板おもて面に達するコンタクトホールが開口されている。
【0038】
ソース電極(第1電極)13は、コンタクトホール内において半導体基板(n+型ソース領域7)にオーミック接触し、かつ層間絶縁膜11によりゲート電極10と電気的に絶縁されている。ソース電極13上に、ソース電極パッド15が設けられている。ソース電極パッド15は、第1TiN膜25、第1Ti膜26、第2TiN膜27、第2Ti膜28およびAl合金膜29が積層されている多層膜である。p++型コンタクト領域8が設けられている場合、ソース電極13はp++型コンタクト領域8とオーミック接触する。p++型コンタクト領域8が設けられていない場合、ソース電極13はp型炭化珪素エピタキシャル層3とオーミック接触する。
【0039】
ソース電極パッド15上に、第1めっき膜33が設けられ、第1めっき膜33上に第1はんだ32を介して金属板30が設けられる。具体的には、エッジ終端領域41の絶縁膜12が、活性領域40のソース電極パッド15を覆うように設けられ、絶縁膜12上に第3保護膜31が設けられており、第3保護膜31の開口部には、第1めっき膜33および第1はんだ32を介して金属板30が設けられている。
【0040】
金属板30は、平坦な膜で、例えば銅(Cu)等の金属で形成されている。金属板30は、活性領域40の全面を覆うように設けられる。また、金属板30は、エッジ終端領域41の一部を覆うように設けられていてもよい。金属板30により、後述する外部電極ピン19を第2はんだ17で接合する際の応力を緩和するため、さらに、炭化珪素半導体装置の熱冷却のため、金属板30は厚い方が好ましい。金属板30は、少なくとも、第1めっき膜33よりも厚く、具体的には5μm以上の厚さである。外部電極ピン19の応力を効率的に緩和するためには、金属板30は厚さ20μm以上5000μm以下であることが好ましい。
【0041】
上述したように、外部電極ピン119をめっき膜116上に第2はんだ117で接合すると、外部電極ピン119と、めっき膜116上に形成された第2はんだ117との角度によっては、接合で発生する応力により、炭化珪素半導体装置の特性が劣化する。例えば、炭化珪素半導体装置が高周波数で動作して、電流密度が高くなると諸特性の変動が発生しやすくなる。特に、低い電流でのしきい値によるドレインソース間のリーク電流が増加する。
【0042】
これに対して、実施の形態では、ソース電極パッド15上に、金属板30を設けることにより、外部電極ピン19とこれを固定する第2はんだ17にかかる応力を分散化させ均一にすることができる。これにより、炭化珪素半導体装置の特定の領域に応力が局所的に集中することを防止でき、高周波数動作での高電流密度による諸特性の変動を大幅に改善することができる。
【0043】
また、
図1のように、金属板30が活性領域40の全面を覆うように設けられる場合、金属板30の端部直下の活性領域40の構造はMOSとして機能しない領域とすることが好ましい。MOSとして機能しない領域は、
図1のように、p型炭化珪素エピタキシャル層3内部にn
+型ソース領域7を設けないことによるチャネルが形成されない領域である。金属板30の端部は、金属板30により分散された応力が集中する領域であり、この領域をMOSとして機能させないことより、炭化珪素半導体装置の諸特性が劣化し、信頼性が低下することを抑制できる。また、この応力により層間絶縁膜11が破損して、ゲート電極10とソース電極13とが短絡して、炭化珪素半導体装置が不良になることを抑制できる。
【0044】
金属板30上には、第2はんだ17を介して外部電極ピン19の一方の端部が接合されている。外部電極ピン19の他方の端部は、半導体基板のおもて面に対向するように配置された金属バー(不図示)に接合されている。また、外部電極ピン19の他方の端部は、半導体チップを実装したケース(不図示)の外側に露出し、外部装置(不図示)と電気的に接続される。
【0045】
金属板30の表面は、第2はんだ17が設けられる領域を除いて第1保護膜21で覆われている。具体的には、金属板30を覆うように第1保護膜21が設けられており、第1保護膜21の開口部に露出した金属板30に、第2はんだ17を介して外部電極ピン19が接合されている。第1保護膜21は、例えばポリイミド膜である。
【0046】
また、第1はんだ32は、第2はんだ17よりも融点が高い方が好ましい。この場合、第2はんだ17による接合時に、第1はんだ32で接合した部分が融解することがない。このため、第1はんだ32によりソース電極パッド15と金属板30とを接合するための加熱処理と、第2はんだ17により金属板30と外部電極ピン19とを接合するための加熱処理とを別のプロセスとして実施できる。
【0047】
半導体基板の裏面に、ドレイン電極となる裏面電極(第2電極)14が設けられている。裏面電極14上には、ドレイン電極パッド(不図示)が設けられている。
【0048】
(実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法について説明する。
図2~
図7は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【0049】
まず、n型の炭化珪素でできたn
+型炭化珪素基板1を用意する。そして、このn
+型炭化珪素基板1の第1主面上に、n型の不純物、例えば窒素原子(N)をドーピングしながら炭化珪素でできた第1n型炭化珪素エピタキシャル層2aを、例えば30μm程度の厚さまでエピタキシャル成長させる。ここまでの状態が
図2に示されている。
【0050】
次に、第1n型炭化珪素エピタキシャル層2aの表面上に、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを例えば酸化膜で形成する。そして、アルミニウム等のp型の不純物を、酸化膜の開口部に注入し、深さ0.5μm程度の下部第1p+型ベース領域4aおよび第2p+型ベース領域5を形成する。
【0051】
また、隣り合う下部第1p+型ベース領域4aと第2p+型ベース領域5との距離が1.5μm程度となるよう形成する。下部第1p+型ベース領域4aおよび第2p+型ベース領域5の不純物濃度を例えば5×1018/cm3程度に設定する。
【0052】
次に、イオン注入用マスクの一部を除去し、開口部に窒素等のn型の不純物をイオン注入し、第1n型炭化珪素エピタキシャル層2aの表面領域の一部に、例えば深さ0.5μm程度の下部n型高濃度領域6aを形成してもよい。下部n型高濃度領域6aの不純物濃度を例えば1×10
17/cm
3程度に設定する。ここまでの状態が
図3に示されている。
【0053】
次に、第1n型炭化珪素エピタキシャル層2aの表面上に、窒素等のn型の不純物をドーピングした第2n型炭化珪素エピタキシャル層2bを、0.5μm程度の厚さで形成する。第2n型炭化珪素エピタキシャル層2bの不純物濃度が3×1015/cm3程度となるように設定する。以降、第1n型炭化珪素エピタキシャル層2aと第2n型炭化珪素エピタキシャル層2bとを合わせてn型炭化珪素エピタキシャル層2となる。
【0054】
次に、第2n型炭化珪素エピタキシャル層2bの表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを例えば酸化膜で形成する。そして、アルミニウム等のp型の不純物を、酸化膜の開口部に注入し、深さ0.5μm程度の上部第1p+型ベース領域4bを、下部第1p+型ベース領域4aに重なるように形成する。下部第1p+型ベース領域4aと上部第1p+型ベース領域4bは連続した領域を形成し、第1p+型ベース領域4となる。上部第1p+型ベース領域4bの不純物濃度を例えば5×1018/cm3程度となるように設定する。
【0055】
次に、イオン注入用マスクの一部を除去し、開口部に窒素等のn型の不純物をイオン注入し、第2n型炭化珪素エピタキシャル層2bの表面領域の一部に、例えば深さ0.5μm程度の上部n型高濃度領域6bを形成してもよい。上部n型高濃度領域6bの不純物濃度を例えば1×10
17/cm
3程度に設定する。この上部n型高濃度領域6bと下部n型高濃度領域6aは少なくとも一部が接するように形成され、n型高濃度領域6を形成する。ただし、このn型高濃度領域6が基板全面に形成される場合と、形成されない場合がある。ここまでの状態が
図4に示されている。
【0056】
次にn型炭化珪素エピタキシャル層2の表面上に、エピタキシャル成長によりp型炭化珪素エピタキシャル層3を1.1μm程度の厚さで形成する。p型炭化珪素エピタキシャル層3の不純物濃度は4×1017/cm3程度に設定する。p型炭化珪素エピタキシャル層3をエピタキシャル成長により形成した後、p型炭化珪素エピタキシャル層3にさらにアルミニウム等のp型の不純物を、p型炭化珪素エピタキシャル層2のチャネル領域にイオン注入を行ってもよい。
【0057】
次に、p型炭化珪素エピタキシャル層3の表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを例えば酸化膜で形成する。この開口部に窒素(N)、リン(P)等のn型の不純物をイオン注入し、p型炭化珪素エピタキシャル層3の表面の一部にn
+型ソース領域7を形成する。次に、n
+型ソース領域7の形成に用いたイオン注入用マスクを除去し、同様の方法で、所定の開口部を有するイオン注入用マスクを形成し、p型炭化珪素エピタキシャル層3の表面の一部にリン等のp型の不純物をイオン注入し、p
++型コンタクト領域8を形成してもよい。p
++型コンタクト領域8の不純物濃度は、p型炭化珪素エピタキシャル層3の不純物濃度より高くなるように設定する。ここまでの状態が
図5に示されている。
【0058】
次に、1700℃程度の不活性ガス雰囲気で熱処理(アニール)を行い、第1p+型ベース領域4、第2p+型ベース領域5、n+型ソース領域7およびp++型コンタクト領域8の活性化処理を実施する。なお、上述したように1回の熱処理によって各イオン注入領域をまとめて活性化させてもよいし、イオン注入を行うたびに熱処理を行って活性化させてもよい。
【0059】
次に、p型炭化珪素エピタキシャル層3の表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するトレンチ形成用マスクを例えば酸化膜で形成する。次に、ドライエッチングによってp型炭化珪素エピタキシャル層3を貫通し、n型高濃度領域6(2)に達するトレンチ18を形成する。トレンチ18の底部はn型高濃度領域6(2)に形成された第2p
+型ベース領域5に達してもよい。次に、トレンチ形成用マスクを除去する。ここまでの状態が
図6に示されている。
【0060】
次に、n+型ソース領域7の表面と、トレンチ18の底部および側壁と、に沿ってゲート絶縁膜9を形成する。このゲート絶縁膜9は、酸素雰囲気中において1000℃程度の温度の熱酸化によって形成してもよい。また、このゲート絶縁膜9は高温酸化(High Temperature Oxide:HTO)等のような化学反応によって堆積する方法で形成してもよい。
【0061】
次に、ゲート絶縁膜9上に、例えばリン原子がドーピングされた多結晶シリコン層を設ける。この多結晶シリコン層はトレンチ18内を埋めるように形成してもよい。この多結晶シリコン層をフォトリソグラフィによりパターニングし、トレンチ18内部に残すことによって、ゲート電極10を形成する。
【0062】
次に、ゲート絶縁膜9およびゲート電極10を覆うように、例えばリンガラスを1μm程度の厚さで成膜し、層間絶縁膜11を形成する。次に、層間絶縁膜11を覆うように、チタン(Ti)または窒化チタン(TiN)またはチタンと窒化チタンの積層からなるバリアメタルを形成してもよい。層間絶縁膜11およびゲート絶縁膜9をフォトリソグラフィによりパターニングしn
+型ソース領域7およびp
++型コンタクト領域8を露出させたコンタクトホールを形成する。p
++型コンタクト領域8を形成しない場合、n
+型ソース領域7およびp型炭化珪素エピタキシャル層3を露出させたコンタクトホールを形成する。その後、熱処理(リフロー)を行って層間絶縁膜11を平坦化する。ここまでの状態が
図7に示されている。また、層間絶縁膜11にコンタクトホールを形成した後に、チタン(Ti)または窒化チタン(TiN)またはチタンと窒化チタンの積層からなるバリアメタルを形成してもよい。この場合、バリアメタルにもn
+型ソース領域7およびp
++型コンタクト領域8を露出させるコンタクトホールが設けられる。
【0063】
次に、層間絶縁膜11に設けられたコンタクトホール内および層間絶縁膜11上にソース電極13となる導電性の膜を形成する。導電性の膜は、例えばニッケル(Ni)膜である。また、n+型炭化珪素基板1の第2主面上にも、同様にニッケル(Ni)膜を形成する。その後、例えば970℃程度の温度で熱処理を行って、コンタクトホール内部のニッケル膜をシリサイド化してソース電極13とする。同時に、第2主面に形成したニッケル膜は、n+型炭化珪素基板1とオーミック接合を形成する裏面電極14となる。その後、未反応のニッケル膜を選択的に除去して、例えばコンタクトホール内にのみソース電極13を残す。
【0064】
次に、例えばスパッタ法によって、炭化珪素半導体基体のおもて面のソース電極13および層間絶縁膜11を覆うように、第1TiN膜25、第1Ti膜26、第2TiN膜27、第2Ti膜28を順に積層し、さらにAl合金膜29を、厚さが例えば、5μm程度になるように形成する。Al合金膜29はAl膜であってもよい。Al合金膜29は、例えば、Al-Si膜またはAl-Si-Cu膜である。この導電性の膜をフォトリソグラフィによりパターニングし、素子全体の活性領域に残すことによってソース電極パッド15を形成する。
【0065】
次に、Al合金膜29上にポリイミド膜を形成した後、フォトリソグラフィおよびエッチングにより当該ポリイミド膜を選択的に除去して、第3保護膜31を形成するとともに、第3保護膜31に開口部を形成する。次に、第3保護膜31の開口部に露出したAl合金膜29上に第1めっき膜33を形成する。次に、第1はんだ32により、第1めっき膜33上に金属板30を接合する。金属板30は、Al合金膜29上にめっき法等により形成しても構わない。
【0066】
次に、金属板30上にポリイミド膜を形成した後、フォトリソグラフィおよびエッチングにより当該ポリイミド膜を選択的に除去して、第1保護膜21を形成するとともに、第1保護膜21に開口部を形成する。
【0067】
その後、第1保護膜21の開口部に露出した金属板30に第2はんだ17を介して外部電極ピン19を形成する。以上のようにして、
図1に示す炭化珪素半導体装置が完成する。
【0068】
図8は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置と従来の炭化珪素半導体装置のもれ電流の変化率を示すグラフである。
図8において、横軸は、炭化珪素半導体装置の動作周波数を示し、単位はkHzである。縦軸は、横軸の周波数で動作させる前と動作させた後でのドレインソース間のもれ電流(リーク電流)の変化率を示し、単位は%である。
図8では、Bで示す線が従来の炭化珪素半導体装置の特性を示し、Aで示す線が実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の特性を示す。
【0069】
図8に示すように、従来の炭化珪素半導体装置では、動作周波数が増加して、高電流密度になるほど、もれ電流が増加して特性が悪化している。一方、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置では、動作周波数が増加して、高電流密度になっても、もれ電流は増加せず、もれ電流の悪化を大幅に改善している。
【0070】
図9は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置と従来の炭化珪素半導体装置のオン電圧の変化率を示すグラフである。
図9において、横軸は、炭化珪素半導体装置の動作周波数を示し、単位はkHzである。縦軸は、横軸の周波数で動作させる前と動作させた後でのオン電圧(Von)の変化率を示し、単位は%である。
図9では、Bで示す線が従来の炭化珪素半導体装置の特性を示し、Aで示す線が実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の特性を示す。
【0071】
図9に示すように、従来の炭化珪素半導体装置では、動作周波数が増加して、高電流密度になるほど、オン電圧が増加して特性が悪化している。一方、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置では、動作周波数が増加して、高電流密度になっても、オン電圧は増加せず、オン電圧の悪化を大幅に改善している。
【0072】
図10は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置と従来の炭化珪素半導体装置のしきい値の変化率を示すグラフである。
図10において、横軸は、炭化珪素半導体装置の動作周波数を示し、単位はkHzである。縦軸は、横軸の周波数で動作させる前と動作させた後でのしきい値の変化率を示し、単位は%である。
図10では、Bで示す線が従来の炭化珪素半導体装置の特性を示し、Aで示す線が実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の特性を示す。
【0073】
図10に示すように、従来の炭化珪素半導体装置では、動作周波数が増加して、高電流密度になるほど、しきい値が増加し特性が悪化している。一方、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置では、動作周波数が増加して、高電流密度になっても、しきい値は増加せず、しきい値の悪化を大幅に改善している。
【0074】
図11は、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置の金属板の他の構造を示す断面図である。金属板30は、平坦な膜ではなく、
図11のように突起部34を有していてもよい、突起部34を外部電極ピン19が接合される箇所に設けることにより、外部電極ピン19を接合する際の応力をさらに軽減することができる。
図11の突起部34を長い棒状の形状にすることで、突起部34を外部電極ピン19とすることも可能である。この場合、外部電極ピン19を接合する必要がないため、接合時の応力を解消することができる。また、
図11では、突起部34は1箇所のみであるが、突起部34を、外部電極ピン19を接続する数分設けてもよい。
【0075】
以上、説明したように、実施の形態にかかる炭化珪素半導体装置によれば、ソース電極パッド上に、第1はんだを介して金属板が設けられる。これにより、外部電極ピンを固定する際に第2はんだにかかる応力を分散化させ均一にすることができ、炭化珪素半導体装置の特定の領域に応力が局所的に集中することを防止できる。このため、高周波数動作での高電流密度による諸特性の変動を大幅に改善することができる。
【0076】
以上において本発明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であり、上述した各実施の形態において、例えば各部の寸法や不純物濃度等は要求される仕様等に応じて種々設定される。また、上述した各実施の形態では、ワイドバンドギャップ半導体として炭化珪素を用いた場合を例に説明しているが、炭化珪素以外の例えば窒化ガリウム(GaN)などのワイドバンドギャップ半導体にも適用可能である。また、各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明にかかる半導体装置は、インバータなどの電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置や自動車のイグナイタなどに使用されるパワー半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0078】
1、101 n+型炭化珪素基板
2、102 n型炭化珪素エピタキシャル層
2a 第1n型炭化珪素エピタキシャル層
2b 第2n型炭化珪素エピタキシャル層
3、103 p型炭化珪素エピタキシャル層
4、104 第1p+型ベース領域
4a 下部第1p+型ベース領域
4b 上部第1p+型ベース領域
5、105 第2p+型ベース領域
6、106 n型高濃度領域
6a 下部n型高濃度領域
6b 上部n型高濃度領域
7、107 n+型ソース領域
8、108 p++型コンタクト領域
9、109 ゲート絶縁膜
10、110 ゲート電極
11、111 層間絶縁膜
12 絶縁膜
13、113 ソース電極
14、114 裏面電極
15、115 ソース電極パッド
16、116 第2めっき膜
17、117 第2はんだ
18、118 トレンチ
19、119 外部電極ピン
21、121 第1保護膜
23、123 第2保護膜
25、125 第1TiN膜
26、126 第1Ti膜
27、127 第2TiN膜
28、128 第2Ti膜
29、129 Al合金膜
30 金属板
31 第3保護膜
32 第1はんだ
33 第1めっき膜
34 突起部
40 活性領域
41 エッジ終端領域
50、150 トレンチ型MOSFET