(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】低吸着性積層体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/28 20060101AFI20240110BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20240110BHJP
B29C 48/15 20190101ALI20240110BHJP
B29C 48/16 20190101ALI20240110BHJP
【FI】
B32B27/28 101
B32B27/36
B29C48/15
B29C48/16
(21)【出願番号】P 2019185943
(22)【出願日】2019-10-09
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉永 雅信
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-068533(JP,A)
【文献】特開2009-274431(JP,A)
【文献】特開2015-030464(JP,A)
【文献】特開2006-305975(JP,A)
【文献】特開2013-095501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B29C 48/00-48/96
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層、ガスバリア層、接着性樹脂層、シーラント層をこの順に有する低吸着性積層体であって、
前記ガスバリア層は、プラスチックフィルム上に無機酸化物または金属の蒸着膜を有する蒸着フィルムであり、
前記蒸着フィルムの前記プラスチックフィルム側に前記接着性樹脂層が積層されており、
前記接着性樹脂層が、エチレンとカルボン酸エステルとの共重合体を含
み、
前記共重合体は、二元共重合体または三元共重合体であり、
前記共重合体が前記三元共重合体である場合、前記三元共重合体は、エチレン-アクリル酸-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸-アクリル酸エチル共重合体、またはエチレン-メタクリル酸-メタクリル酸イソブチル共重合体であり、
前記シーラント層は、融解点を有する結晶性のポリエステル樹脂からなることを特徴とする低吸着性積層体。
【請求項2】
前記二元共重合体は、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸ブチル共重合体、またはエチレン-メタクリル酸メチル共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の低吸着性積層体。
【請求項3】
前記ガスバリア層と前記接着性樹脂層間にアンカーコート剤が塗布されていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の低吸着性積層体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の低吸着性積層体の製造方法であって、前記ガスバリア層上に、前記シーラント層と、前記接着性樹脂層とを、共押出ラミネート法で積層する、低吸着性積層体の製造方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の低吸着性積層体の製造方法であって、前記ガスバリア層と、前記シーラント層とを、前記接着性樹脂層を介して、押出ラミネート法で積層する、低吸着性積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低吸着性積層体に関する。また、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、飲料、薬品、化粧品、医療器具などの包装材において、シーラントフィルムが広く用いられている。前記シーラントフィルムは、包装材の最内層に配置され、ヒートシールされることによって包装体を密閉することができる。このようなシーラントフィルムとして、高いシール強度を示すポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂や、アイオノマー、EMMAなどのコポリマー樹脂が用いられている。
【0003】
しかし、これらの樹脂からなるシーラントフィルムは、油脂や香料などの有機化合物からなる成分を吸着しやすいため、シーラントフィルムを内容物と接する最内層としている包装材は、内容物の味覚や香りを変化させやすいという欠点を持っている。また、内容物の浸透によってシーラントフィルムの層間接着強度が低下し、層間剥離を引き起こすこともある。
【0004】
この対策として、ポリエステル樹脂や、ポリアクリロニトリル共重合体(PAN)などが使用されている。しかしながら、ポリアクリロニトリル共重合体(PAN)は、低温シール性に劣ったり、シール強度が不足したりするという問題があった。
【0005】
また、特許文献1には、ポリエステル系の樹脂からなる低吸着性シーラントフィルムが記載されている。ポリエステル樹脂をインフレーション法やTダイキャスト法で製膜し、それらを接着剤などでラミネートさせたり、接着性樹脂を用いポリエチレンと溶融多層共押出ラミネート法で、各種基材とラミネートさせている。しかし、前者は接着剤を硬化させるため長時間の養生(例えば40℃で数日間)を要するため短時間での製造が困難である。また、後者は接着性樹脂が無水マレイン酸変性ポリエチレンのような特殊なものになり、高価なことが問題である。
【0006】
また、特許文献2には、ベース樹脂層、接着剤層およびシール層を有する低吸着性シーラントフィルムであって、前記シール層が、ガラス転移点が70~90℃である非晶性の共重合ポリエステルからなる低吸着性シーラントフィルムが記載されている。しかし、非晶性のシーラントフィルムは低吸着性が劣り、やはり内容物の吸着が問題になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-94975号公報
【文献】特開2015-66802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、低吸着性に優れ、かつ十分な低温シール性と高い層間接着強度を有する低吸着性積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、少なくとも、基材層、ガスバリア層、接着性樹脂層、シーラント層をこの順に有する低吸着性積層体であって、
前記接着性樹脂層が、エチレンとカルボン酸エステルとの共重合体を含むことを特徴とする低吸着性積層体である。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、前記シーラント層は、融解点を有する結晶性のポリエステル樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の低吸着性積層体である。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、前記ガスバリア層と前記接着性樹脂層間にアンカーコート剤が塗布されていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の低吸着性積層体である。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれかに記載の低吸着性積層体の製造方法であって、前記ガスバリア層上に、前記シーラント層と、前記接着性樹脂層とを、共押出ラミネート法で積層する、低吸着性積層体の製造方法である。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1~3のいずれかに記載の低吸着性積層体の製造方法であって、前記ガスバリア層と、前記シーラント層とを、前記接着性樹脂層を介して、押出ラミネート法で積層する、低吸着性積層体の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低吸着性に優れ、かつ十分な低温シール性と高い層間接着強度を有する低吸着性積層体を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る低吸着性積層体の実施形態1を示す概略断面図。
【
図2】本発明に係る低吸着性積層体の実施形態2を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を、図を用いて以下に詳しく説明する。
図1および
図2は、本発明に係る低吸着性積層体(1)の実施形態を示す概略断面図である。
【0017】
[実施形態1]
図1に示すように、本発明に係る低吸着性積層体(1)は、基材層(11)、接着層(12)、ガスバリア層(13)、接着性樹脂層(14)およびシーラント層(15)をこの順に積層したものを基本の構成とする。
【0018】
<基材層>
基材層(11)としては、通常の包装材料を構成するプラスチックフィルムを適宜使用することができるが、機械的強度や寸法安定性を有するものが良い。プラスチックフィルムの構成材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、6-ナイロンなどのポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリイミドなどが挙げられる。プラスチックフィルムは、延伸、未延伸のどちらでも良いが、好ましくは二軸延伸されたフィルムである。なお、本実施形態において、基材層(11)は、PETフィルムである。
【0019】
<接着層>
接着層(12)を構成する接着剤としては、特に限定されないが、ドライラミネート用接着剤を好適に用いることができる。ドライラミネート用接着剤としては、二液硬化型ウレタン系接着剤、ポリエステルウレタン系接着剤、ポリエーテルウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙
げられる。このような接着剤を用いて基材層(11)とガスバリア層(13)とを貼り合わせる方法としては、ドライラミネート法が挙げられる。
【0020】
上記接着剤の中では、優れた接着力と内容物の化学成分で接着力が低下し難い二液硬化型接着剤を好適に用いることができる。二液硬化型接着剤は、主剤と硬化剤からなるものであり、例えば、ポリエステルポリオールと多官能ポリイソシアネートからなる二液硬化型接着剤が挙げられる。
【0021】
<ガスバリア層>
本発明の低吸着性積層体(1)において、基材層(11)およびドライラミネート用接着層(12)上に、ガスバリア層(13)を設けることができる。これにより、外部への内容物のにおい漏れや、外部からの酸素及び水蒸気ガスの浸入を抑え、内容物の変質を防ぐことができる。このようなガスバリア層(13)としては、適用する包装材の用途に応じて任意のガスバリア性フィルムを使用することができる。
【0022】
ガスバリア性フィルムとして、アルミニウム箔等の金属箔、または金属箔とプラスチックフィルムとの積層フィルムを用いることができ、この場合には、優れたガスバリア性が得られ、また遮光性を有することとなる。
【0023】
また、ガスバリア性フィルムとして、プラスチックフィルム上に無機酸化物や金属の蒸着層を有する蒸着フィルムを用いてもよい。この場合、基材層(11)とドライラミネート用接着層(12)に対し、蒸着膜の側が接するように積層してもよいし、プラスチックフィルム側が接するように積層してもよい。
【0024】
さらに、ガスバリア性フィルムとして、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂又はポリアクリロニトリル系樹脂の少なくともいずれか一種からなるガスバリア性フィルムを用いることもできる。また、ガスバリア層(13)は、上記の各種ガスバリア性フィルムの中から2種以上を選択して用いてもよい。そして、ガスバリア層は、その少なくともいずれかの表面に、コロナ処理、オゾン処理、フレーム処理などの濡れ性を高める表面処理を行ってもよい。特に、優れたガスバリア性および層間接着強度を発揮することから、本発明においては、アルミニウム箔、プラスチックフィルム上に金属酸化物の蒸着膜を設けてなる蒸着フィルムが好適に使用される。
【0025】
蒸着フィルムについて、さらに詳細に説明する。ガスバリア層を構成するプラスチックフィルムは、化学的または物理的強度に優れ、金属酸化物の蒸着膜を形成する条件に耐え、それら金属酸化物の蒸着膜の特性を損なうことなく良好に保持し得ることができる樹脂のフィルムである。
【0026】
このようなプラスチックフィルムは、例えば、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂等のポリオレフイン系樹脂、環状ポリオレフイン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等の各種の樹脂のフィルムが挙げられる。
【0027】
本発明においては、上記プラスチックフィルムの中でも、特に、ポリエステル系樹脂、ポリオレフイン系樹脂、またはポリアミド系樹脂のフィルムまたはシートを使用することが好ましい。
【0028】
本発明において、上記プラスチックフィルムは、樹脂1種もしくはそれ以上を使用し、押出ラミネート法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の製膜化法を用いて単独で製膜化する方法、2種以上の樹脂を使用し、多層共押出ラミネート法等の製膜化する方法、または2種以上の樹脂を使用し、製膜化する前に混合して製膜化する方法等により製造できる。さらに、テンター方式やチューブラマ方式等を利用して1軸または2軸方向に延伸したフィルムとすることができる。
【0029】
本発明において、ガスバリア層(13)を構成するプラスチックフィルム上の金属酸化物の蒸着膜は、以下のように、金属酸化物を用いて形成することができる。本発明において、ガスバリア層(13)は、蒸着膜を2層以上有してもよい。蒸着膜を2層以上有する場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0030】
本発明において、蒸着膜としては、例えば、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、スズ(Sn)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)の酸化物からなる蒸着膜を挙げることができ、好ましくはアルミニウム(Al)またはケイ素(Si)の酸化物からなる蒸着膜、特に好ましくはアルミニウム(Al)の酸化物からなる蒸着膜である。
【0031】
本発明において、蒸着膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、およびイオンプレ-ティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、または、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、および光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。
【0032】
上記の要件を満たす、プラスチックフィルム上に金属酸化物を蒸着させたガスバリア層(13)は、商業的にも入手可能であり、本発明において好適に用いられるものとしては、例えば、PVD法によりシリカやアルミナを片面に蒸着した透明蒸着PETフィルムである。
【0033】
また、本発明においては、ガスバリア層(13)上に、コロナ処理を施すことで、より層間接着強度を向上させることができる。またより強固な接着強度を求めるならば、アンカーコート層(16)を設けることもできる。アンカーコート剤は、有機チタン系、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系が例示できる。
【0034】
<接着性樹脂層>
ガスバリア層(13)とシーラント層(15)との間に位置する接着性樹脂層(14)は、エチレン-カルボン酸エステル、または、エチレン-カルボン酸-カルボン酸エステルの二元ないし三元共重合体を含む接着性樹脂組成物からなる。具体的には、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-アクリル酸-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸-メタクリル酸イソブチル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体が例示できる。
【0035】
ガスバリア層(13)上に、接着性樹脂層(14)とシーラント層(15)であるポリエステル樹脂(A)とを、共押出ラミネート法で積層することによって、接着性樹脂層(14)は、シーラント層(15)と、高い層間接着性及び良好な製膜安定性が得られ、低吸着性および層間接着性が一層向上される。
【0036】
本発明において、低吸着性を得るために、接着性樹脂層(14)の全質量に対して、コモノマー成分であるカルボン酸エステル成分の質量比が6~25%であることが好ましく、また、カルボン酸成分の質量比は2~10%であることが好ましい。残りがエチレン成分となっているものである。
【0037】
<シーラント層およびその積層方法>
本発明のシーラント層(15)は、結晶性のポリエステル樹脂(A)で、テレフタル酸およびイソフタル酸とエチレングリコールからなり、必要に応じてジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールやシクロヘキサンジメタノールも使用されるが、結晶性を有することが特徴であり、DSC法で測定した場合、融点は170~240℃、ガラス転移温度は、50~80℃が好ましい。非晶性のポリエステル樹脂は、低吸着性に劣るため本発明の目的を果たさない。
【0038】
また、前記結晶性のポリエステル樹脂(A)は、低温シール性を付与する目的で、ガラス転移温度が80℃以下の飽和共重合ポリエステル樹脂を添加することもできる。添加量は、20%以下が好ましく、ガラス転移温度がこの範囲を外れると、低温シール性が損なわれるので好ましくない。
【0039】
実施形態1は、ガスバリア層(13)上に、前記接着性樹脂層(14)と前記結晶性のポリエステル樹脂(A)を積層することにより、本発明の積層体が得られる。積層方法としては、ガスバリア層(13)上に、前記接着性樹脂層(14)と、前記結晶性のポリエステル樹脂(A)を共押出ラミネート法により積層される。また、本発明の積層体の層構成において、任意の位置に、例えば、基材層(11)とガスバリア層(13)との間に、印刷層を設けてもよい。
【0040】
上記の方法で、ガスバリア層(13)上に、前記接着性樹脂層(14)と前記結晶性のポリエステル樹脂(A)を積層することによって、吸着性に優れ、かつ十分な低温シール性と高い層間接着強度を有する低吸着性積層体が得られる。
【0041】
[実施形態2]
本発明の実施形態2の概略断面図を
図2に示す。実施形態2のシーラント層(15)は、前記結晶性のポリエステル樹脂(A)を任意の方法により、例えばTダイ法やインフレーション法などにより成膜化されたポリエステルフィルム(B)である。その後、ポリエステルフィルム(B)は、接着性樹脂層(14)を介して押出ラミネート法により、ガスバリア層(13)とラミネートされる。実施形態1と異なる点は、このシーラント層(15)の積層方法だけで、他は実施形態1と同様である。また、接着強度を高めるために、ガスバリア層(13)上に、押出ラミネートの前にコロナ処理を施したり、アンカーコート層(16)を設けてよいことも実施形態1と同様である。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
<実施例1~7、比較例1~7>
基材層(11)と、コロナ処理を施したガスバリア層(13)と、を2液硬化型ポリエステル-ポリウレタン接着剤(12)を介して積層し、ガスバリア層(13)の上に実施形態1のシーラント層と接着性樹脂層(14)とを、共押出ラミネート法で積層し、実施例1~7および比較例1~7の積層体を得た。
【0044】
基材層(11)は、ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる。PETの厚みは
12μmである。
【0045】
ガスバリア層(13)は、アルミニウム箔、PETに金属酸化物の蒸着膜を積層した透明蒸着PET、およびナイロン(Ny)に金属酸化物の蒸着膜を積層した透明蒸着Nyの3種類を使用した。また、透明蒸着PETは、接着性樹脂を蒸着面に積層した場合とPET面に積層した場合の2種類を作製した。透明蒸着Nyは接着性樹脂をNy面に積層した。ガスバリア層(13)の厚みはアルミニウム箔が7μm、透明蒸着PETが12μm、透明蒸着Nyが15μmである。
【0046】
実施形態1のシーラント層(15)は、結晶性のポリエステル樹脂(A)である。
【0047】
接着性樹脂(14)は、表1の二元ないし三元共重合体を含む樹脂からなり、コモノマーの質量%を示す。
【0048】
実施例1~7および比較例1~7は、実施形態1でアンカーコート剤を含まない例である。
【0049】
<実施例8~14、比較例8~14>
基材層(11)と、コロナ処理を施したガスバリア層(13)と、を2液硬化型ポリエステル-ポリウレタン接着剤を介して積層し、その後、アンカーコート剤(16)をガスバリア層(13)上に塗布し、その上に実施形態1のシーラント層(15)と接着性樹脂層(14)とを、共押出ラミネート法で積層し、実施例8~14および比較例8~14の積層体を得た。アンカーコート剤(16)を塗布した点以外は、実施例1~7および比較例1~7と同様である。アンカーコート剤(16)は、イソシアネート系2液反応タイプである。
【0050】
<実施例15~21、比較例15~21>
基材層(11)と、コロナ処理を施したガスバリア層(13)と、を2液硬化型ポリエステル-ポリウレタン接着剤を介して積層し、ガスバリア層(13)の上に、実施形態2のシーラント層(15)を、接着性樹脂層(14)を介して押出ラミネート法で積層し、実施例15~22および比較例15~22の積層体を得た。実施形態2のシーラント層(15)を用いた点以外は、実施例1~7および比較例1~7と同様である。
【0051】
実施形態2のシーラント層(15)は、結晶性のポリエステルフィルム(B)である。
【0052】
実施例15~21および比較例15~21は、実施形態2でアンカーコート剤を含まない例である。
【0053】
<実施例22~28、比較例22~28>
基材層(11)と、コロナ処理を施したガスバリア層(13)と、を2液硬化型ポリエステル-ポリウレタン接着剤を介して積層し、その後、アンカーコート剤(16)をガスバリア層(13)上に塗布し、その上に、実施形態2のシーラント層(15)を、接着性樹脂層(14)を介して押出ラミネート法で積層し、実施例22~28および比較例22~28の積層体を得た。実施形態2のシーラント層(15)を用いた点以外は、実施例8~14および比較例8~14と同様である。アンカーコート剤はイソシアネート系2液反応タイプである。
【0054】
<層間接着強度測定結果>
上記の実施例1~28および比較例1~28について、接着性樹脂層(14)とシーラント層(15)間の層間接着強度およびガスバリア層(13)と接着性樹脂層(14)間
の層間接着強度の評価を行った。層間接着強度の指標は、×;1N/15mm幅未満、△;1N以上~3N/15mm幅未満、〇;3N以上~5N/15mm幅未満、◎;5N/15mm幅以上、とする。
【0055】
実施例1~7および比較例1~7の結果は表1に、実施例8~14および比較例8~14の結果は表2に、実施例15~21および比較例15~21の結果は表3に、実施例22~28および比較例22~28の結果は表4に示す。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
表1に示されるように、実施形態1の実施例1~7においては、比較例1~14と比較すると強度が付与されていることが分かる。特に、シーラント層(15)との接着強度が高い。また、表2に示されるように、アンカーコート剤(16)をガスバリア層(13)上に塗布すると、実施例8~14においては、ガスバリア層(13)がアルミ箔と透明蒸着PETが蒸着面の場合に、接着性樹脂層(16)とガスバリア層(13)間の接着強度が高くなる。
【0061】
実施形態2の実施例でも同様な結果が得られた。表3に示されるように、実施形態2の実施例15~28においては、比較例15~28と比較すると強度が付与されていることが分かる。特に、シーラント層(15)との接着強度が高い。また、表4に示されるように、アンカーコート剤(16)をガスバリア層(13)上に塗布すると、実施例22~28においては、ガスバリア層(13)がアルミ箔と透明蒸着PETが蒸着面の場合に、接着性樹脂層(16)とガスバリア層(13)間の接着強度が高くなる。
【0062】
以上の結果から、本発明の低吸着性積層体およびその製造方法を用いることによって、低吸着性に優れ、かつ十分な低温シール性と高い層間接着強度を有することがわかった。したがって、本発明の低吸着性積層体は、食品、飲料、薬品、化粧品、医療器具などの包装材を構成する積層体として用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
1、2・・・低吸着性積層体
11・・・基材層
12・・・接着層
13・・・ガスバリア層
14・・・接着性樹脂層
15・・・シーラント層
16・・・アンカーコート剤