(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】アシスト装置
(51)【国際特許分類】
B25J 11/00 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B25J11/00 Z
(21)【出願番号】P 2019191819
(22)【出願日】2019-10-21
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 浩充
(72)【発明者】
【氏名】大坪 和義
(72)【発明者】
【氏名】新井 智樹
(72)【発明者】
【氏名】吉見 孔孝
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-213543(JP,A)
【文献】特開2017-106533(JP,A)
【文献】特開2019-155116(JP,A)
【文献】特開2018-104111(JP,A)
【文献】特開2018-199205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の肩部及び胸部の少なくとも一方に装着される第一装着具と、
前記利用者の脚部又は腰部に装着される第二装着具と、
前記第一装着具と前記第二装着具とにわたって前記利用者の背面側に沿って設けられるベルト体と、
前記第一装着具又は前記第二装着具に設けられ前記ベルト体が巻き掛けられる駆動プーリと、
前記駆動プーリを駆動する複数のモータと、
前記ベルト体の一部の巻き取り及び送り出しが前記駆動プーリによって行われるように前記複数のモータを個別に制御する制御部と、を備え
、
前記制御部は、
前記複数のモータの中に動作を停止させるべき停止対象モータが有るか否かを判定する判定部を備え、
前記停止対象モータが有ると判定されると、前記停止対象モータに対して動作を停止させる停止制御を実行し、前記停止対象モータ以外のモータを用いてアシスト力を調整する
アシスト装置。
【請求項2】
前記複数のモータは、前記複数のモータそれぞれの回転状態を検出する複数の回転センサを備え、
前記制御部は、
前記複数のモータを制御するための電流指令値を生成し、前記複数のモータを制御するモータ制御部
を備え、
前記
判定部は、前記複数のモータそれぞれに流れる複数の電流検出値と前記電流指令値との電流差分値、及び、前記複数の回転センサの出力の少なくともいずれか一方に基づいて、前記複数のモータの中に動作を停止させるべき停止対象モータが有るか否かを判定
し、
前記モータ制御部は、前記停止対象モータが有ると判定されると、少なくとも前記停止対象モータに対して動作を停止させる停止制御を実行する
請求項1に記載のアシスト装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記複数のモータのうち前記電流差分値が所定の電流閾値よりも大きいモータを前記停止対象モータと判定する
請求項2に記載のアシスト装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記複数の回転センサの出力に基づいて前記複数のモータそれぞれの回転位置を示す複数の位置パラメータを求める位置パラメータ演算部をさらに備え、
前記判定部は、前記複数の位置パラメータに基づいて、前記複数のモータの中に動作を停止させるべき停止対象モータが有るか否かを判定する
請求項2又は請求項3に記載のアシスト装置。
【請求項5】
利用者の肩部及び胸部の少なくとも一方に装着される第一装着具と、
前記利用者の脚部又は腰部に装着される第二装着具と、
前記第一装着具と前記第二装着具とにわたって前記利用者の背面側に沿って設けられるベルト体と、
前記第一装着具又は前記第二装着具に設けられ前記ベルト体が巻き掛けられる駆動プーリと、
前記駆動プーリを駆動する複数のモータと、
前記ベルト体の一部の巻き取り及び送り出しが前記駆動プーリによって行われるように前記複数のモータを個別に制御する制御部と、を備え、
前記複数のモータは、前記複数のモータそれぞれの回転状態を検出する複数の回転センサを備え、
前記制御部は、
前記複数のモータを制御するための電流指令値を生成し、前記複数のモータを制御するモータ制御部と、
前記複数のモータそれぞれに流れる複数の電流検出値と前記電流指令値との電流差分値、及び、前記複数の回転センサの出力の少なくともいずれか一方に基づいて、前記複数のモータの中に動作を停止させるべき停止対象モータが有るか否かを判定する判定部と、
前記複数の回転センサの出力に基づいて前記複数のモータそれぞれの回転位置を示す複数の位置パラメータを求める位置パラメータ演算部と、を備え、
前記モータ制御部は、前記停止対象モータが有ると判定されると、少なくとも前記停止対象モータに対して動作を停止させる停止制御を実行し、
前記複数のモータの個数は、2個であり、
前記判定部は、前記2個のモータの位置パラメータ間の位置差分値が所定の位置閾値よりも大きい場合、前記2個のモータを前記停止対象モータと判定する
アシスト装置。
【請求項6】
利用者の肩部及び胸部の少なくとも一方に装着される第一装着具と、
前記利用者の脚部又は腰部に装着される第二装着具と、
前記第一装着具と前記第二装着具とにわたって前記利用者の背面側に沿って設けられるベルト体と、
前記第一装着具又は前記第二装着具に設けられ前記ベルト体が巻き掛けられる駆動プーリと、
前記駆動プーリを駆動する複数のモータと、
前記ベルト体の一部の巻き取り及び送り出しが前記駆動プーリによって行われるように前記複数のモータを個別に制御する制御部と、を備え、
前記複数のモータは、前記複数のモータそれぞれの回転状態を検出する複数の回転センサを備え、
前記制御部は、
前記複数のモータを制御するための電流指令値を生成し、前記複数のモータを制御するモータ制御部と、
前記複数のモータそれぞれに流れる複数の電流検出値と前記電流指令値との電流差分値、及び、前記複数の回転センサの出力の少なくともいずれか一方に基づいて、前記複数のモータの中に動作を停止させるべき停止対象モータが有るか否かを判定する判定部と、
前記複数の回転センサの出力に基づいて前記複数のモータそれぞれの回転位置を示す複数の位置パラメータを求める位置パラメータ演算部と、を備え、
前記モータ制御部は、前記停止対象モータが有ると判定されると、少なくとも前記停止対象モータに対して動作を停止させる停止制御を実行し、
前記判定部は、前記複数の位置パラメータのうちの所定の位置パラメータ値範囲に含まれることで相互に近似する位置パラメータの個数が、前記位置パラメータ値範囲外である位置パラメータの個数よりも多い場合、前記位置パラメータ値範囲外の位置パラメータに対応するモータを前記停止対象モータと判定する
アシスト装置。
【請求項7】
利用者の肩部及び胸部の少なくとも一方に装着される第一装着具と、
前記利用者の脚部又は腰部に装着される第二装着具と、
前記第一装着具と前記第二装着具とにわたって前記利用者の背面側に沿って設けられるベルト体と、
前記第一装着具又は前記第二装着具に設けられ前記ベルト体が巻き掛けられる駆動プーリと、
前記駆動プーリを駆動する複数のモータと、
前記ベルト体の一部の巻き取り及び送り出しが前記駆動プーリによって行われるように前記複数のモータを個別に制御する制御部と、
前記第一装着具に設けられ前記利用者の姿勢を検出するための姿勢センサと、
を備え、
前記複数のモータは、前記複数のモータそれぞれの回転状態を検出する複数の回転センサを備え、
前記制御部は、
前記複数のモータを制御するための電流指令値を生成し、前記複数のモータを制御するモータ制御部と、
前記複数のモータそれぞれに流れる複数の電流検出値と前記電流指令値との電流差分値、及び、前記複数の回転センサの出力の少なくともいずれか一方に基づいて、前記複数のモータの中に動作を停止させるべき停止対象モータが有るか否かを判定する判定部と、
前記利用者の姿勢を示す姿勢パラメータを複数求める姿勢パラメータ演算部と、を備え、
前記モータ制御部は、前記停止対象モータが有ると判定されると、少なくとも前記停止対象モータに対して動作を停止させる停止制御を実行し、
前記複数の姿勢パラメータは、前記姿勢センサの出力に基づいて求められた姿勢パラメータと、前記複数の回転センサの出力に基づいて求められた姿勢パラメータと、を含み、
前記判定部は、前記複数の姿勢パラメータのうちの所定の姿勢パラメータ値範囲に含まれることで相互に近似する姿勢パラメータの個数が、前記姿勢パラメータ値範囲外である姿勢パラメータの個数よりも多い場合、前記姿勢パラメータ値範囲外の姿勢パラメータに対応するモータを前記停止対象モータと判定する
アシスト装置。
【請求項8】
前記モータ制御部は、前記停止対象モータがあると判定されると、複数のモータ全てに対して前記停止制御を実行する
請求項2から請求項7のいずれか一項に記載のアシスト装置。
【請求項9】
前記モータ制御部は、前記停止対象モータがあると判定されると、前記停止対象モータに対して前記停止制御を実行し、前記停止対象モータ以外のモータに対して駆動力を経時的に漸減させる制御を実行する
請求項2から請求項7のいずれか一項に記載のアシスト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アシスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
利用者(人)の身体に装着され、その利用者の作業を補助するアシスト装置が様々提案されている。アシスト装置を利用する利用者は、例えば重量物を持ち上げる場合であっても、小さな力(小さな負担)で作業を行うことが可能となる。このようなアシスト装置は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているアシスト装置は、利用者に装着される出力リンクを介してアクチュエータ(モータ)の出力を利用者の左右の大腿部に伝え、腰に対する左右の大腿部の動作をアシストするように構成されている。アシスト力を発生させるアクチュエータは、左右の大腿部それぞれに設けられている。
【0005】
例えば、一方の大腿部をアシストするためのアクチュエータに故障等の異常が生じた場合、一方の大腿部の動作に対して適切なアシスト力が発生できなくなったり、アシストそのものができなくなったりするおそれがあり、利用者に違和感や不快感を与える場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するためのアシスト装置は、利用者の肩部及び胸部の少なくとも一方に装着される第一装着具と、前記利用者の脚部又は腰部に装着される第二装着具と、前記第一装着具と前記第二装着具とにわたって前記利用者の背面側に沿って設けられるベルト体と、前記第一装着具又は前記第二装着具に設けられ前記ベルト体が巻き掛けられる駆動プーリと、前記駆動プーリを駆動する複数のモータと、前記ベルト体の一部の巻き取り及び送り出しが前記駆動プーリによって行われるように前記複数のモータを個別に制御する制御部と、を備える。
【0007】
上記構成のアシスト装置によれば、駆動プーリを駆動する複数のモータを個別に制御することができるので、複数のモータのうちの一部のモータが故障し正常な動作ができなくなったとしても、故障が生じたモータについては動作を停止させるように制御でき、他のモータについては故障したモータの状況に応じてアシスト力を適切に調整する等の制御を行うことができる。この結果、モータに故障等の異常が生じたとしても、利用者に与える違和感や不快感を緩和することができる。
【0008】
(2)また、上記アシスト装置において、前記複数のモータは、前記複数のモータそれぞれの回転状態を検出する複数の回転センサを備え、前記制御部は、前記複数のモータを制御するための電流指令値を生成し、前記複数のモータを制御するモータ制御部と、前記複数のモータそれぞれに流れる複数の電流検出値と前記電流指令値との電流差分値、及び、前記複数の回転センサの出力の少なくともいずれか一方に基づいて、前記複数のモータの中に動作を停止させるべき停止対象モータが有るか否かを判定する判定部と、を備えていてもよい。
この場合、前記モータ制御部は、前記停止対象モータが有ると判定されると、少なくとも前記停止対象モータに対して動作を停止させる停止制御を実行するように構成することができる。
これにより、複数のモータのうち異常が生じ、正常な動作ができない可能性があるモータについては、動作を停止させることができる。
【0009】
(3)上記アシスト装置において、前記判定部は、前記複数のモータのうち前記電流差分値が所定の電流閾値よりも大きいモータを前記停止対象モータと判定してもよい。
この場合、電流指令値に対する電流検出値が異常値となっているモータの動作を停止させることができる。
【0010】
(4)また、上記アシスト装置において、前記制御部は、前記複数の回転センサの出力に基づいて前記複数のモータそれぞれの回転位置を示す複数の位置パラメータを求める位置パラメータ演算部をさらに備え、前記判定部は、前記複数の位置パラメータに基づいて、前記複数のモータの中に動作を停止させるべき停止対象モータが有るか否かを判定するものであってもよい。
【0011】
(5)上記アシスト装置において、前記複数のモータの個数は、2個であり、前記判定部は、前記2個のモータの位置パラメータ間の位置差分値が所定の位置閾値よりも大きい場合、前記2個のモータを前記停止対象モータと判定するものであってもよい。
この場合、2個のモータのうちいずれかの回転センサに異常が生じていると判定することができる。両方のモータの動作を停止させることで、回転センサに異常が生じているモータの動作を確実に停止させることができる。
【0012】
(6)また、上記アシスト装置において、前記判定部は、前記複数の位置パラメータのうちの所定の位置パラメータ値範囲に含まれることで相互に近似する位置パラメータの個数が、前記位置パラメータ値範囲外である位置パラメータの個数よりも多い場合、前記位置パラメータ値範囲外の位置パラメータに対応するモータを前記停止対象モータと判定するものであってもよい。
この場合、位置パラメータが所定の位置パラメータ範囲外である回転センサに異常が生じていると判定することができ、回転センサに異常が生じていると判定されたモータの動作を停止させることができる。
【0013】
(7)上記アシスト装置において、前記第一装着具に設けられ前記利用者の姿勢を検出するための姿勢センサをさらに備え、前記制御部は、前記利用者の姿勢を示す姿勢パラメータを複数求める姿勢パラメータ演算部を備え、前記複数の姿勢パラメータは、前記姿勢センサの出力に基づいて求められた姿勢パラメータと、前記複数の回転センサの出力に基づいて求められた姿勢パラメータと、を含み、前記判定部は、前記複数の姿勢パラメータのうちの所定の姿勢パラメータ値範囲に含まれることで相互に近似する姿勢パラメータの個数が、前記姿勢パラメータ値範囲外である姿勢パラメータの個数よりも多い場合、前記姿勢パラメータ値範囲外の姿勢パラメータに対応するモータを前記停止対象モータと判定するものであってもよい。
第一装着具と第二装着具とにわたって利用者の背面側に沿って設けられるベルト体の送り出し量と、利用者の姿勢との間には相関がある。よって、回転センサの出力に基づいて利用者の姿勢を示す姿勢パラメータを求めることができる。
このため、姿勢パラメータを通じて、回転センサの出力と、姿勢センサの出力との比較が可能となり、回転センサの異常の有無を判定する際に、姿勢センサの出力を用いることができる。これにより、判定精度をより高めることができる。
【0014】
(8)また、上記アシスト装置において、前記モータ制御部は、前記停止対象モータがあると判定されると、複数のモータ全てに対して前記停止制御を実行してもよい。
この場合、停止対象モータ以外のモータについても動作を停止させることで、停止対象モータに生じた異常による影響が他の部分に及ぶのを抑制することができる。
【0015】
(9)また、上記アシスト装置において、前記モータ制御部は、前記停止対象モータがあると判定されると、前記停止対象モータに対して前記停止制御を実行し、前記停止対象モータ以外のモータに対して駆動力を経時的に漸減させる制御を実行してもよい。
この場合、停止対象モータ以外のモータによって、一時的にアシスト力を補完しつつ、アシスト力を徐々に低下させることができる。これにより、急激にアシスト力が低下することによる利用者への違和感や不快感を緩和することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、モータに故障等の異常が生じたとしても、利用者に与える違和感や不快感を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、アシスト装置の一例を示す背面図である。
【
図2】
図2は、利用者の身体に取り付けられたアシスト装置の背面図である。
【
図3】
図3は、利用者の身体に取り付けられたアシスト装置の側面図である。
【
図4】
図4は、アシスト装置が装着された利用者が前傾姿勢(前屈姿勢)となった状態を示す説明図である。
【
図5】
図5は、コントロールボックス及びベルト体の説明図である。
【
図6】
図6は、アシスト装置におけるモータの動作制御の構成例を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、制御装置の機能的な構成例を示したブロック図である。
【
図8】
図8は、利用者が上半身の姿勢を変化させたときの状態を示した図である。
【
図9】
図9は、処理部が行う判定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、処理部が行うモータ制御処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、他の実施形態に係る判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
〔アシスト装置の全体構成〕
図1は、アシスト装置の一例を示す背面図である。
図2は、利用者の身体に取り付けられたアシスト装置の背面図である。
図3は、利用者の身体に取り付けられたアシスト装置の側面図である。
図4は、アシスト装置が装着された利用者が前傾姿勢(前屈姿勢)となった状態を示す説明図である。
図1に示すアシスト装置10は、利用者(人)の身体の一部である左右の肩部BSに装着される一つの第一装着具11と、その利用者の身体の他部である左右の脚部BLに装着される二つの第二装着具12とを備える。第一装着具11は、利用者の肩部BS及び胸部BBの少なくとも一方に装着されればよく、また、図示する形態以外であってもよい。本開示では、第二装着具12は、脚部BLの内の膝部BNに装着される。第二装着具12も、図示する形態以外であってもよい。
【0019】
本実施形態のアシスト装置10は、例えば、介護施設において用いられる。アシスト装置10を利用する利用者Rは、例えば、介護士である。
【0020】
アシスト装置10において、左右は、アシスト装置10を装着した直立姿勢にある利用者にとっての左右であり、前後は、その利用者にとっての前後であり、上下はその利用者にとっての上下である。上が利用者の頭側であり、下が利用者の足側である。
【0021】
アシスト装置10は、第一装着具11、及び左右の第二装着具12の他に、ベルト体13、アクチュエータ14、制御装置15、バッテリ37、加速度センサ38、通信装置41等を備える。
【0022】
第一装着具11は、利用者の肩部BSに装着される。一方の第二装着具12は、利用者の左の膝部BNに装着される。他方の第二装着具12は、利用者の右の膝部BNに装着される。左側の第二装着具12と右側の第二装着具12とは左右対称であるが、構成は同じである。第一装着具11と二つの第二装着具12とは、利用者の関節である腰部BWを挟んで離れる二箇所、つまり肩部BS及び脚部BLに装着される。
【0023】
第一装着具11は、柔軟性を有する布地等によって構成されている。第一装着具11は、利用者の背中に装着される背本体部21と、背本体部21と繋がる肩ベルト22及び腋ベルト23とを有する。肩ベルト22及び腋ベルト23により、背本体部21が利用者に背負われた状態となる。腋ベルト23は背本体部21と肩ベルト22とを繋いでいて、その長さが調整可能である。腋ベルト23の長さ調整により、背本体部21が利用者の背中に密着した状態となる。第一装着具11は肩部BSに対して前後、左右、及び上下方向に移動不能となって装着される。第一装着具11には、例えば、肩部BSに掛ける部分として、硬質の部材が含まれていてもよい。
【0024】
第二装着具12は、柔軟性を有する布地等によって構成されている。第二装着具12は、利用者の膝部BNの後面側に装着される膝本体部24と、膝本体部24から延びて設けられている膝ベルト25とを有する。膝ベルト25は、膝部BNの上下位置それぞれにおいて膝部BNを周回し、その先端側が膝本体部24に固定される。膝ベルト25は、ベルトとバックル、又は、面ファスナー等の係止部材により、膝部BNに対する巻き付き長さの調整が可能である。この調整により、膝本体部24が膝部BNの後面側に密着した状態となる。第二装着具12は膝部BNに対して前後、左右、及び上下方向に移動不能となって装着される。
【0025】
ベルト体13は、第一装着具11と第二装着具12とを結ぶようにして、利用者の背面側に沿って設けられている。ベルト体13は、上半身側に設けられている第一ベルト16と、下半身に設けられている第二ベルト17と、第一ベルト16と第二ベルト17とを連結している連結部材18とを有する。第一ベルト16及び第二ベルト17それぞれは、長尺であり、可撓性を有する。連結部材18は、金属製であり、「平カン」と称される矩形の環状体により構成されている。
【0026】
第一ベルト16及び第二ベルト17それぞれは、布製又は革製の帯状の部材であり、身体の形状に沿って湾曲可能である。なお、第一ベルト16及び第二ベルト17それぞれは、紐状のベルト(ワイヤーのような部材)であってもよい。本開示の第一ベルト16及び第二ベルト17それぞれは、非伸縮性の部材である、つまり、その長手方向に伸縮し難い特性又は伸縮しない特性を有する。
【0027】
本開示のアシスト装置10は、コントロールボックス30を備える。コントロールボックス30は、第一装着具11の背本体部21に設けられている。
図5は、コントロールボックス30及びベルト体13の説明図である。コントロールボックス30は、板状であるベース31と、ベース31を覆うカバー32とを有する。コントロールボックス30の内部構造を説明するために、
図5ではカバー32が仮想線(二点鎖線)で示されている。ベース31が、第一装着具11の背本体部21であってもよい。
【0028】
ベース31とカバー32との間に形成される空間に、アクチュエータ14、制御装置15、バッテリ37、加速度センサ38、通信装置41、及び駆動回路42A,42B等が設けられている。カバー32には、開口(切り欠き)32aが形成されていて、この開口32aを第一ベルト16が通過している。
バッテリ37は、アクチュエータ14や、制御装置15等、動作電力を必要とする機器に電力を供給する。
【0029】
アクチュエータ14は、コントロールボックス30内に設けられている。つまり、アクチュエータ14は第一装着具11に設けられている。アクチュエータ14はベルト体13の一部の巻き取り及び送り出しを可能とする。
アクチュエータ14は、ベルト体13が巻き掛けられる駆動プーリ35と、駆動プーリを駆動する複数のモータ33(第1モータ33A及び第2モータ33B)とを備えている。また、アクチュエータ14は、複数のモータ33それぞれの駆動力を駆動プーリ35に伝達するために、第1モータ33A及び第2モータ33Bに対応して複数の減速機部(減速機部34A,34B)を備えている。
【0030】
減速機部34Aは、第1モータ33Aの駆動力を駆動プーリ35へ伝達する。減速機部34Aは、複数の歯車により構成されていて、第1モータ33Aの回転数を減速して、駆動軸36を回転させる。駆動軸36はベース31等に回転可能に保持されている。駆動軸36には、駆動プーリ35が一体回転可能に設けられている。
減速機部34Aに含まれる歯車のうち、駆動軸36を回転させる駆動歯車34A1は、駆動軸36の一端に一体回転可能に設けられている。減速機部34Aは、駆動歯車34A1及び駆動軸36を通じて第1モータ33Aの駆動力を駆動プーリ35へ伝達する。
【0031】
減速機部34Bは、第2モータ33Bの駆動力を駆動プーリ35へ伝達する。減速機部34Bも、減速機部34Aと同様の構成であり、複数の歯車により構成されていて、第2モータ33Bの回転数を減速して、駆動軸36を回転させる。
減速機部34Bに含まれる歯車のうち、駆動軸36を回転させる駆動歯車34B1は、駆動軸36の他端に一体回転可能に設けられている。減速機部34Bは、駆動歯車34B1及び駆動軸36を通じて第2モータ33Bの駆動力を駆動プーリ35へ伝達する。
このように、駆動軸36に設けられた駆動プーリ35は、複数のモータ33(第1モータ33A及び第2モータ33B)によって駆動される。
【0032】
第1モータ33A及び第2モータ33Bの動作は制御装置15によって制御される。第1モータ33A及び第2モータ33Bは、制御装置15から出力される電流指令値を含む制御命令に基づいて、所定のトルク、所定の回転速度で回転制御される。第1モータ33A及び第2モータ33Bは、電流指令値に基づいて、正逆回転可能である。
【0033】
駆動プーリ35には、第一ベルト16の一端部16a側が取り付けられている。モータ33A,33Bの正回転により、駆動プーリ35が一方向に回転すると、第一ベルト16が駆動プーリ35に巻き取られる。モータ33A,33Bの逆回転により、駆動プーリ35が他方向に回転すると、駆動プーリ35から第一ベルト16が送り出される。
このように、アクチュエータ14のモータ33A,33Bは、駆動プーリ35によってベルト体13の巻き取り動作又は送り出し動作を行う。
【0034】
アクチュエータ14によって第一ベルト16が駆動プーリ35に巻き取られると、連結部材18は第二ベルト17をアクチュエータ14(第一装着具11)側、つまり、上側に引き上げる。第二ベルト17は、その両端部17a,17dが左右の第二装着具12に取り付けられている。第二装着具12は膝部BNに固定されている。このため、第一ベルト16が駆動プーリ35に巻き取られると、第一ベルト16及び第二ベルト17に張力が作用する。この張力が、利用者に対するアシスト力(補助力)として作用する。
このように、アクチュエータ14は、第一装着具11と、第二装着具12との間でアシスト力を発生させる。
【0035】
通信装置41は、アシスト装置10が利用者端末との間で通信を行うための装置である。利用者端末とは、利用者がアシスト装置10を外部から制御するために用いる端末装置である。
加速度センサ38は、互いに直交する3軸それぞれの方向の加速度を検出する3軸加速度センサであり、検出結果を示す出力を制御装置15へ与える。
制御装置15は、加速度センサ38、及び後述する回転検出器45A,45Bからの出力に基づいて、アクチュエータ14(のモータ33)を制御する機能を有する。
駆動回路42A,42Bは、モータ33A,33Bを駆動するための回路である。
【0036】
〔モータの動作制御の構成〕
図6は、アシスト装置10におけるモータ33A,33Bの動作制御の構成例を示すブロック図である。
図6中、駆動回路42A,42Bは、バッテリ37及びモータ33A,33Bに接続されている。駆動回路42A,42Bは、バッテリ37からの電流をモータ33A,33Bへ与えてモータ33A,33Bを駆動するインバータや、インバータを制御するための回路等を含む。
モータ33A,33Bは、ブラシレスDCモータであり、ロータやステータ等を含むモータ本体44A,44Bと、モータ33A,33Bの回転状態を検出する回転検出器45(45A,45B)とを備える。
【0037】
回転検出器(回転センサ)45A,45Bは、例えば、ホールセンサである。回転検出器45A,45Bは、駆動回路42A,42B及び制御装置15に接続されている。回転検出器45A,45Bの出力は駆動回路42A,42B及び制御装置15へ与えられる。
また、駆動回路42A,42Bと、モータ33A,33Bとの間には、電流センサ46A,46Bが設けられている。電流センサ46A,46Bは、制御装置15に接続されている。電流センサ46A,46Bの出力は制御装置15へ与えられる。
さらに、制御装置15には、加速度センサ38が接続されており、加速度センサ38の出力も与えられる。
なお、回転検出器45A,45Bは、エンコーダやレゾルバ等であってもよい。
【0038】
制御装置15は、回転検出器45A,45Bの出力や、電流センサ46A,46Bの出力、加速度センサ38の出力等に基づいて、モータ33A,33Bを制御するための電流指令値を含む制御命令を生成する。制御装置15は、電流指令値を含む制御命令を駆動回路42A,42Bへ与える。制御命令が与えられた駆動回路42A,42Bは、電流指令値と、回転検出器45A,45Bからの出力とに基づいてモータ33A,33Bを回転させる。
【0039】
このように、制御装置15は、駆動回路42A,42Bを介してモータ33A,33Bの回転を制御する。
制御装置15は、モータ33A,33Bに対する電流指令値を含む制御命令を個別に生成し、駆動回路42A,42Bへ与える。よって、制御装置15は、第1モータ33Aと、第2モータ33Bとを個別に制御する。
【0040】
〔制御装置の機能について〕
図7は、制御装置15の機能的な構成例を示したブロック図である。
図7中、制御装置15は、マイクロコンピュータ等により構成されている。制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)等からなる処理部50と、メモリやハードディスク等からなる記憶部51とを備えている。
記憶部51には、処理部50に実行させるためのプログラムや、必要な情報等が記憶されている。
【0041】
処理部50は、記憶部51に記憶されたプログラムを実行することで、通信装置41を用いた通信処理や、処理部50が有する後述の各種処理機能を実現する。前記プログラムは、例えば、フラッシュメモリ、ROM、CD-ROMなどの記録媒体に記録させることができる。
【0042】
図7に示すように、処理部50は、モータ制御処理50aと、パラメータ演算処理50bと、判定処理50cとを実行する機能を有しており、これら機能により、アシスト装置10のアシスト力の制御を行うとともに、アシスト装置10に生じる故障等の異常の有無を判定する。
【0043】
処理部50は、パラメータ演算処理50bにおいて、加速度センサ38及び回転検出器45A,45Bそれぞれの出力に基づいて、利用者の姿勢を示す姿勢パラメータを求める。
また、処理部50は、パラメータ演算処理50bにおいて、回転検出器45A,45Bそれぞれの出力に基づいて、モータ33A,33Bの回転位置を示す位置パラメータを求める。
【0044】
図8は、利用者Rが上半身の姿勢を変化させたときの状態を示した図である。
処理部50は、パラメータ演算処理50bにおいて、
図8中に示す利用者Rの上半身の鉛直方向に対する傾斜角度θLを姿勢パラメータとして求める。以下、この傾斜角度θLは姿勢角θLともいう。なお、姿勢パラメータは他のパラメータであってもよく、姿勢角θLの他に、姿勢角θLが変化する方向の角速度であってもよい。その角速度は、姿勢角θLを時間微分することで求められる。また、姿勢パラメータとして、姿勢角θLと前記角速度との双方が用いられてもよい。
【0045】
加速度センサ38の出力からは、鉛直方向(重力加速度の方向)に対する加速度センサ38の傾斜角度を3次元的に求めることができる。加速度センサ38は利用者Rの上半身に設けられる。よって、処理部50は、加速度センサ38の出力から、利用者Rの上半身の傾斜角度、すなわち姿勢角θLを求めることができる。つまり、加速度センサ38は、利用者Rの姿勢を検出する姿勢センサを構成する。
【0046】
また、回転検出器45A,45Bの出力からは、モータ33A,33Bの回転状態として、回転位置(回転角度)や回転速度等を求めることができる。モータ33A,33Bの回転位置は、駆動プーリ35の位置を示しており、ベルト体13の送り出し量を示している。
【0047】
さらに、ベルト体13の送り出し量は、利用者Rの姿勢角θLに対応している。
モータ33は、アシスト装置10が利用者Rに装着された状態で、ベルト体13を巻き取る方向に動作しており(トルクを発生させており)、ベルト体13に張力を生じさせている。これにより、ベルト体13は緩まない。
【0048】
利用者Rが姿勢を変化させると、例えば、
図8に示すように、直立姿勢から前傾姿勢になると、ベルト体13にはその姿勢の変化に起因して張力が生じる。そこで、この場合、前傾姿勢となるように姿勢変化を開始すると、アクチュエータ14の動力によらず、ベルト体13の張力によりモータ33を強制的に回転させて(モータ33A,33Bは空転して)、ベルト体13は巻き出される。又は、前傾姿勢となるように姿勢変化を開始すると、アクチュエータ14は動作して、つまり、モータ33A,33Bを回転駆動して、ベルト体13を送り出す。
【0049】
反対に、利用者が前傾姿勢から直立姿勢になると、ベルト体13はその姿勢の変化に起因して緩もうとする。そこで、この場合、直立姿勢となるように姿勢変化を開始すると、ベルト体13に作用する張力を維持するため、又はアシスト力を発生させるために、アクチュエータ14は動作して、つまり、モータ33A,33Bを回転駆動して、ベルト体13を巻き取る。
【0050】
このように、利用者の姿勢変化により、ベルト体13の巻き取り又は送り出しがなされ、ベルト体13の送り出し量が変化する。この巻き取り又は送り出しでは、能動的に又は受動的にモータ33が所定の回転角について回転する。この際の回転角(回転位置)が、回転検出器45A,45Bによって検出される。このように、回転検出器45A,45Bの出力から求められるベルト体13の送り出し量は、利用者Rの姿勢変化、すなわち、姿勢角θLに対応している。
なお、ここでベルト体13の送り出し量とは、アシスト装置10を装着した利用者Rが直立姿勢の状態のときの駆動プーリ35(アクチュエータ14)から延びるベルト体13の長さを基準長さとしたときに、この基準長さに対してベルト体13が駆動プーリ35から送り出されて延ばされた長さを指す。
【0051】
例えば、
図8に示すように、利用者Rが直立姿勢から前傾姿勢となると、アシスト装置10のベルト体13は、上半身と下半身との屈曲に応じて送り出される。上半身と下半身との屈曲が深くなり姿勢角θLが大きくなるほど、ベルト体13の送り出し量は増加する。このように、ベルト体13の送り出し量と、姿勢角θLとの間には相関がある。
よって、処理部50は、回転検出器45A,45Bの出力から、姿勢角θLを求めることができる。
【0052】
以上のように、加速度センサ38及び回転検出器45A,45Bの出力は、利用者Rの姿勢角θLを示している。記憶部51には、加速度センサ38及び回転検出器45A,45Bの出力と、姿勢角θLとが対応付けられた姿勢演算用テーブルが記憶されている。
処理部50は、前記姿勢演算用テーブルを参照し、加速度センサ38及び回転検出器45A,45Bの出力に基づいて、利用者Rの姿勢角θLを求める。つまり、パラメータ演算処理50bを実行することで複数の姿勢パラメータ(加速度センサ38の出力に基づく姿勢角θL、及び回転検出器45A,45Bの出力に基づく姿勢角θL)を求める処理部50は、姿勢パラメータ演算部を構成する。
【0053】
また、逆に、姿勢角θLは、モータ33A,33Bの回転位置を示していると言える。つまり、姿勢角θLは、モータ33A,33Bの回転位置を示す位置パラメータでもある。
【0054】
このように、処理部50は、パラメータ演算処理50bにおいて、モータ33A,33Bの回転位置を示す位置パラメータとして姿勢角θLを求めることができる。つまり、パラメータ演算処理50bを実行することで位置パラメータとして姿勢角θLを求める処理部50は、位置パラメータ演算部を構成する。
なお、処理部50は、位置パラメータとして、モータ33A,33Bの回転位置(回転角度)を求めてもよい。
【0055】
処理部50は、モータ制御処理50aにおいて、モータ33A,33Bを制御するための電流指令値を含む制御命令を生成し、駆動回路42A,42Bへそれぞれ制御命令を与えることでモータ33A,33Bを個別に制御し、アシスト装置10によるアシスト力を制御する。
処理部50は、加速度センサ38の出力及び回転検出器45A,45Bの出力の少なくともいずれかに基づいてアシスト力を発生させる。つまり、処理部50は、利用者Rの姿勢に応じて適切なアシスト力を発生させる。
処理部50は、原則として、姿勢角θLが大きくなればなるほど、アシスト力が大きくなるように制御する。これにより、利用者Rが荷物等を持った上で前傾姿勢から直立姿勢に移行しようとするときに、その負荷を軽減でき、荷物等の持ち上げ動作を補助することができる。
【0056】
記憶部51には、加速度センサ38及び回転検出器45A,45Bの出力と、アクチュエータ14(モータ33A,33B)において発生させるべき出力とが対応付けられた出力演算用テーブルが記憶されている。この出力演算用テーブルには、利用者Rの姿勢に対して適切なアシスト力を発生させ得るアクチュエータ14の出力が登録されている。
処理部50は、前記出力演算用テーブルを参照し、加速度センサ38の出力及び回転検出器45A,45Bの出力の少なくともいずれかに基づいて、アクチュエータ14に発生させるべき出力を決定し、アクチュエータ14の出力に応じたモータ33A,33Bに対する電流指令値を含む制御命令を生成する。
【0057】
処理部50は、生成した制御命令を駆動回路42A,42Bへ与える。これにより、処理部50は、利用者Rの姿勢に応じて適切なアシスト力に制御することができる。
なお、出力演算用テーブルには、パラメータ演算処理50bによって求められた姿勢角θL(姿勢パラメータ)と、アクチュエータ14(モータ33A,33B)において発生させるべき出力とが対応付けられていてもよい。
【0058】
また、処理部50は、モータ制御処理50aにおいて、停止対象モータ(停止対象モータ)が有ると判定すると、少なくとも停止対象モータに対して動作を停止させる停止制御を実行する。なお、ここで停止制御とは、モータ33に対して電流の供給を停止して動作を停止させ、モータ33の出力軸が自由に回転可能な状態にすることをいう。
以上のように、モータ制御処理50aを実行する処理部50は、モータ制御部を構成する。
【0059】
処理部50は、判定処理50cにおいて、モータ33A,33Bの中に停止対象モータが有るか否かを判定する。停止対象モータとは、故障等の異常が生じている可能性が高いことから動作を停止させる必要があると判断されるモータ33をいう。
処理部50は、モータ33A,33Bそれぞれに流れる電流検出値と、制御命令に含まれる電流指令値との電流差分値、及び、回転検出器45A,45Bの出力のいずれか一方に基づいて、モータ33A,33Bの中に停止対象モータが有るか否かを判定する。つまり、判定処理50cを実行する処理部50は判定部を構成する。
なお、電流差分値、及び回転検出器45A,45Bの出力については後に説明する。
【0060】
記憶部51には、停止対象モータと判定されたモータ33の識別情報を登録するための停止対象テーブルが記憶されている。
処理部50は、停止対象モータが有ると判定した場合において、停止対象モータがどのモータ33であるかを特定できるときは、停止対象テーブルに停止対象モータと判定したモータ33の識別情報を登録する。
また、停止対象モータがどのモータ33であるか特定できないときは、処理部50は、全てのモータ(モータ33A,33B)の識別情報を停止対象テーブルに登録する。
【0061】
〔判定処理について〕
図9は、処理部50が行う判定処理の一例を示すフローチャートである。
処理部50は、アシスト装置10が利用者Rに対してアシスト力を発生させるようにアクチュエータ14を制御するモータ制御処理の間、判定処理を行う。
判定処理において、処理部50は、各モータ33の電流差分値を求め、電流差分値が予め設定された電流閾値よりも大きいモータ33があるか否かを判定する(ステップS1)。
処理部50は、電流センサ46A,46Bの出力からモータ33A,33Bそれぞれに流れる電流検出値を求める。さらに、処理部50は、モータ33A,33Bの制御命令に含まれる電流指令値と、電流検出値との差を求め、これを電流差分値とする。
【0062】
処理部50は、モータ33A,33Bの中に電流差分値が電流閾値よりも大きいモータ33があると判定すると(ステップS1)、ステップS2へ進み、その電流差分値が電流閾値よりも大きいモータ33の識別情報を停止対象テーブルに登録し、停止対象モータとする(ステップS2)。
例えば、第1モータ33Aの電流差分値が電流閾値を超えた場合、処理部50は、第1モータ33Aを停止対象モータと判定し、第1モータ33Aの識別情報を停止対象テーブルに登録する。これにより、第1モータ33Aは、停止対象モータとされる。
【0063】
電流閾値は、例えば、モータ33の巻き線に断線が生じた場合や、焼き付きによってモータ33に流れる電流が過度になった場合等、モータ33に何らかの異常が生じていると判断することが可能な値に設定される。よって、電流差分値が電流閾値よりも大きいモータ33は、故障等の異常が生じている可能性が高い。
処理部50は、このような異常が生じている可能性が高いモータ33を停止対象モータと判定する。
【0064】
ステップS2の後、処理部50は、ステップS3へ進み、モータ33に異常が生じていることを示す警告を利用者Rへ向けて出力し(ステップS3)、処理を終える。
アシスト装置10がスピーカや警告灯等を備えている場合、処理部50は、スピーカや警告灯によって警告を利用者Rへ向けて出力することができる。また、処理部50は、利用者端末を介して利用者Rへ警告を出力することができる。
【0065】
ステップS1において、モータ33のうち、電流差分値が電流閾値よりも大きいモータがないと判定すると、処理部50は、位置差分値を求め、位置差分値と、予め設定された位置閾値とを比較し、位置差分値が位置閾値よりも大きいか否かを判定する(ステップS4)。
位置差分値とは、モータ33A,33Bそれぞれの位置パラメータ(姿勢角θL)同士の差であり、回転検出器45Aの出力と、回転検出器45Bとの出力の比較結果を示す値である。
ステップS4において、位置差分値が位置閾値よりも大きいと判定する場合、処理部50は、ステップS5へ進み、両モータ33A,33Bを停止対象モータと判定し、両モータ33A,33Bの識別情報を停止対象テーブルに登録する。これにより、両モータ33A,33Bは、停止対象モータとされる(ステップS5)。
【0066】
位置閾値は、回転検出器45A,45Bの出力から求められる姿勢角θLにおいて生じ得る誤差の範囲を表す値となるように設定される。
両モータ33A,33Bは、同じ駆動プーリ35を駆動しているため、回転検出器45A,45Bが正常であれば、回転検出器45A,45Bの出力に基づく姿勢角θLは、ほぼ同じ値になる。
よって、位置差分値が位置閾値よりも大きく、両モータ33A,33Bの姿勢角θLが互いに誤差の範囲以上に異なる場合、両モータ33A,33Bの回転検出器45A,45Bのいずれか一方、又は両方に故障等の異常が生じている可能性がある。
この場合、どの回転検出器45に異常が生じているか特定できないので、処理部50は、両モータ33A,33Bを停止対象モータと判定する(ステップS5)。
【0067】
ステップS5の後、処理部50は、ステップS3へ進み、利用者Rへ向けて警告を出力し(ステップS3)、処理を終える。
また、ステップS4において、位置差分値が位置閾値以下と判定する場合、処理部50は、ステップS1へ戻り、処理を継続する。
【0068】
以上のように、処理部50は、電流差分値、及び、回転検出器45A,45Bの出力の比較結果である位置差分値のいずれかに基づいて、モータ33A,33Bの中に停止対象モータが有るか否かを判定する。
【0069】
なお、ここでは、位置パラメータとして姿勢角θLを用いた場合を例示したが、位置パラメータとして、モータ33A,33Bの回転位置(回転角度)を求める場合、処理部50は、モータ33A,33Bの回転位置を用いて、
図9に示す判定処理を行ってもよい。
【0070】
〔モータ制御処理について〕
図10は、処理部50が行うモータ制御処理の一例を示すフローチャートである。
例えば、アシスト装置10が利用者Rに装着され、アシスト装置10を起動するためのスイッチが投入されると、処理部50は、モータ制御処理を開始する。
モータ制御処理において、処理部50は、アシスト装置10が利用者Rの姿勢に応じてアシスト力を発生させるようにアクチュエータ14の制御(通常制御)を実行する(ステップS11)。
【0071】
次いで、処理部50は、停止対象テーブルを参照し、停止対象モータが有るか否かを判定する(ステップS12)。
停止対象モータが無い場合、処理部50は、ステップS12を繰り返す。よって、処理部50は、停止対象モータが有ると判定するまで、通常制御を継続する(ステップS11)。
【0072】
ステップS12において停止対象モータがあると判定すると、処理部50は、停止対象モータに対して停止制御を実行し(ステップS13)、停止対象モータの動作を停止させる。
次いで、処理部50は、停止対象モータ以外のモータが有るか否を判定し(ステップS14)、停止対象モータ以外のモータがないと判定すれば、処理を終える。これにより、アシスト装置10は、利用者Rに対するアシスト力の発生を停止する。
【0073】
一方、ステップS14において、停止対象モータ以外のモータが有ると判定すると、処理部50は、まず、停止対象モータ以外のモータの駆動力を増加させる(ステップS15)。例えば、両モータ33A,33Bのうちの一方が停止対象モータとすると、他方が停止対象モータ以外のモータである。処理部50は、両モータ33A,33Bで出力する駆動力と同等の駆動力を発生させるように他方のモータ33を制御する。これによって、処理部50は、他方のモータ33によって一時的にアシスト力を補完する。
【0074】
次いで、処理部50は、停止対象モータ以外のモータの駆動力を経時的に漸減させるように制御する(ステップS16)。つまり、処理部50は、停止対象モータ以外のモータの駆動力を増加させた後、増加させた駆動力を経時的に漸減させる。これにより、処理部50は、アシスト力を大きく変動させることなく、徐々に低下させることができる。
処理部50は、停止対象モータ以外のモータの駆動力を増加又は減少させるために、例えば、一方のモータ33に発生させるべき出力に対して係数を乗算することで、モータの駆動力が減少するように制御する。また、処理部50は、前記係数を調整することで、モータの駆動力を経時的に漸減させる。
停止対象モータ以外のモータの駆動力が所定値にまで減少すると、処理部50は、停止対象モータ以外のモータに対して停止制御を実行し、動作を停止させて処理を終える(ステップS17)。
【0075】
例えば、両モータ33A,33Bのうち、モータ33Aが停止対象モータと判定されると、処理部50は、モータ33Aについては、停止制御を実行し(ステップS13)、モータ33Bについては、駆動力を増加させた上で経時的に漸減させるように制御し(ステップS15,S16)、その後、停止制御を実行して動作を停止させる(ステップS17)。
【0076】
上記構成によれば、駆動プーリ35を駆動するモータ33A,33Bを個別に制御することができるので、両モータ33A,33Bのうちの一方のモータ33が故障し正常な動作ができなくなったとしても、故障が生じたモータ33については動作を停止させるように制御でき、他のモータ33については故障したモータ33の状況に応じてアシスト力を適切に調整する等の制御を行うことができる。この結果、モータ33に故障等の異常が生じたとしても、利用者に与える違和感や不快感を緩和することができる。
【0077】
すなわち、本実施形態では、停止対象モータ以外のモータによって、一時的にアシスト力を補完しつつ、アシスト力を徐々に低下させ、最終的に複数のモータ33の全ての動作を停止させることができる。これにより、両モータ33A,33Bを停止させることで急激にアシスト力が低下することによる利用者Rへの違和感や不快感を緩和することができる。
【0078】
なお、本実施形態では、
図10中のステップS14において、停止対象モータ以外のモータ33の駆動力を一時的に増加させた場合を示したが、増加させずに駆動力を維持するように制御してもよい。
また、本実施形態では、停止対象モータ以外のモータ33の駆動力を経時的に漸減させるように制御した後(
図10中、ステップS16)、停止制御を実行し動作を停止させるように構成した場合を例示したが(
図10中、ステップS17)、停止対象モータ以外のモータ33の駆動力を増加させた後(
図10中、ステップS15)、一定時間その状態を維持し、その後、停止対象モータ以外のモータ33の動作を停止させてもよい。
また、停止対象モータ以外のモータ33について停止制御を行わず、駆動力を維持してもよい。
【0079】
また、本実施形態では、処理部50が、モータ33A,33Bそれぞれの電流差分値、及び、回転検出器45A,45Bの出力の比較結果である位置差分値のいずれか一方に基づいて、モータ33A,33Bの中に停止対象モータが有るか否かを判定し、両モータ33A,33Bに対して停止制御を実行するので、異常が生じ、正常な動作ができない可能性があるモータ33については、動作を停止させることができる。
【0080】
さらに、本実施形態では、
図10中のステップS14からS17に示すように、停止対象モータが有ると判定されると、全てのモータである両モータ33A,33Bに対して停止制御を実行し、停止対象モータ以外のモータについても動作を停止させるので、停止対象モータに生じた異常による影響が他の部分に及ぶのを抑制することができる。
【0081】
また、本実施形態では、両モータ33A,33Bの位置差分値が位置閾値よりも大きい場合、全てのモータである両モータ33A,33Bを停止対象モータと判定する。
両モータ33A,33Bの位置差分値が位置閾値よりも大きい場合、両モータ33A,33Bのうち、いずれか一方、又は両方の回転検出器45に異常が生じている可能性がある。よって、両モータ33A,33Bを停止対象モータと判定することで、回転検出器45に異常が生じているモータの動作を確実に停止させることができる。
【0082】
〔他の実施形態について〕
図11は、他の実施形態に係る判定処理を示すフローチャートである。
図11中、ステップS1,S2,S3については、
図9のステップS1,S2,S3と同様である。
本実施形態は、
図11中のステップS6,S7,S8,S9,S10において上記実施形態と相違している。それ以外の点においては、上記実施形態と同様である。よって、ここでは、
図11中のステップS6,S7,S8,S9,S10について説明する。
【0083】
図11中、ステップS1において、モータ33A,33Bの中に電流差分値が電流閾値よりも大きいモータがないと判定すると、処理部50は、ステップS6に進み、3つの姿勢角θLを求め、3つの姿勢角θLの全てが所定の姿勢パラメータ値範囲に含まれているか否かについて判定する(ステップS6)。
ステップS6において、3つの姿勢角θLの全てが姿勢パラメータ値範囲に含まれていると判定すると、処理部50は、ステップS1へ戻り、処理を継続する。
【0084】
3つの姿勢角θLとは、加速度センサ38の出力、及び回転検出器45A,45Bの出力それぞれに基づいて求められた利用者Rの姿勢角θLである。
3つの姿勢角θLは、それぞれ異なるセンサの出力に基づいて得た同じ利用者Rに関する同じパラメータである。
また、所定の姿勢パラメータ値範囲とは、加速度センサ38及び回転検出器45A,45Bの出力から求められる姿勢角θLにおいて生じ得る誤差範囲となる一定の数値幅を有する数値範囲であり、処理部50によって設定される。処理部50は、3つの姿勢角θLを求めると、求めた3つの姿勢角θLに基づいて姿勢パラメータ値範囲を設定する。
処理部50は、3つの姿勢角θLのうちできるだけ多くの姿勢角θLが姿勢パラメータ値範囲に含まれるように、姿勢パラメータ値範囲を設定する。
【0085】
加速度センサ38、及び回転検出器45A,45Bが正常であれば、3つの姿勢角θLは、姿勢パラメータ値範囲に含まれる。また、姿勢パラメータ値範囲に含まれる3つの姿勢角θLは、相互に近似する。
よって、ステップS6において、3つの姿勢角θLの全てが姿勢パラメータ値範囲に含まれると判定する場合、3つの姿勢角θLは、互いに誤差の範囲内の数値となっており、加速度センサ38及び回転検出器45A,45Bが正常な出力を行っていると判断できる。このため、処理部50は、ステップS1へ戻り、処理を継続する。
【0086】
ステップS6において、3つの姿勢角θLの全てが姿勢パラメータ値範囲に含まれないと判定すると、処理部50は、ステップS7へ進み、3つの姿勢角θLのうち、姿勢パラメータ値範囲に2つの姿勢角θLが含まれ、残りの姿勢角θLが姿勢パラメータ値範囲外であるか否かを判定する(ステップS7)。
言い換えると、処理部50は、3つの姿勢角θLのうち、姿勢パラメータ値範囲に含まれることで相互に近似する姿勢角θLの個数が、姿勢パラメータ値範囲外である姿勢角θLの個数よりも多いか否かを判定する。
【0087】
ステップS7において、3つの姿勢角θLのうち、姿勢パラメータ値範囲に2つの姿勢角θLが含まれ、残りの姿勢角θLが姿勢パラメータ値範囲外であると判定すると、処理部50は、ステップS8へ進み、加速度センサ38の出力に基づく姿勢角θLが、姿勢パラメータ値範囲外であるか否かを判定する(ステップS8)。
ステップS8において、加速度センサ38の出力に基づく姿勢角θLが、姿勢パラメータ値範囲外であると判定すると、処理部50は、ステップS1へ戻り、処理を継続する。この場合、回転検出器45A,45Bの出力それぞれに基づく姿勢角θLは、互いに誤差の範囲内の数値となっており、回転検出器45A,45Bが正常な出力を行っていると判断できる。一方、加速度センサ38には、異常が生じていると判断できる。
よって、この判定処理においては、判定処理を継続する。なお、処理部50は、ステップS8において、加速度センサ38の出力に基づく姿勢角θLが、姿勢パラメータ値範囲外であると判定すると、アシスト力の制御に、加速度センサ38の出力を用いるのを中止することができる。
【0088】
ステップS8において、加速度センサ38の出力に基づく姿勢角θLが、姿勢パラメータ値範囲外でないと判定すると、処理部50は、姿勢パラメータ値範囲外の姿勢角θLに対応するモータを停止対象モータと判定し、このモータの識別情報を停止対象テーブルに登録する(ステップS9)。
この場合、姿勢パラメータ値範囲外の姿勢角θLに対応するモータ33の回転検出器45に異常が生じていると判断できる。よって、処理部50は、姿勢パラメータ値範囲外の姿勢角θLに対応するモータ33を停止対象モータと判定する。
【0089】
例えば、加速度センサ38の出力に基づく姿勢角θLと、回転検出器45Aの出力に基づく姿勢角θLとが姿勢パラメータ値範囲に含まれ、回転検出器45Bの出力に基づく姿勢角θLが姿勢パラメータ値範囲外である場合、加速度センサ38の出力と、回転検出器45Aの出力とは正常と判断され、回転検出器45Bの出力は異常と判断され、第2モータ33Bが停止対象モータと判定される。
このように、処理部50は、3つの姿勢角θLにおいて、姿勢パラメータ値範囲に含まれることで相互に近似する姿勢角θLの個数が、姿勢パラメータ値範囲外である姿勢角θLの個数よりも多い場合、姿勢パラメータ値範囲外の姿勢角θLに対応するモータ33を停止対象モータと判定する(ステップS7,S9)。
【0090】
ステップS9の後、処理部50は、ステップS3へ進み、利用者Rへ向けて警告を出力し(ステップS3)、処理を終える。
また、ステップS7において、3つの姿勢角θLのうち、姿勢パラメータ値範囲に2つの姿勢角θLが含まれないと判定すると、処理部50は、ステップS10へ進み、両モータ33A,33Bを停止対象モータと判定し、両モータ33A,33Bの識別情報を停止対象テーブルに登録する。これにより、両モータ33A,33Bは、停止対象モータとされる(ステップS10)。
この場合、3つの姿勢角θLのうち、相互に近似する姿勢角θLが存在せず、3つの姿勢角θLのそれぞれが誤差範囲以上に異なる値を示している。よって、加速度センサ38、及び回転検出器45A,45Bのいずれか、又は全部に異常が生じている可能性がある。
この場合、どのセンサに異常が生じているか特定できないので、処理部50は、両モータ33A,33Bを停止対象モータと判定する(ステップS10)。
【0091】
ステップS10の後、処理部50は、ステップS3へ進み、利用者Rへ向けて警告を出力し(ステップS3)、処理を終える。
【0092】
以上のように、本実施形態では、処理部50が、モータ33A,33Bそれぞれの電流差分値、及び、加速度センサ38の出力及び回転検出器45A,45Bの出力に基づく姿勢角θLのいずれか一方に基づいて、モータ33A,33Bの中に停止対象モータが有るか否かを判定する。
上述したように、ベルト体13の送り出し量と、利用者Rの姿勢との間には相関があるため、回転検出器45の出力に基づいて利用者Rの姿勢角θL(姿勢パラメータ)を求めることができる。
このため、姿勢角θLを通じて、回転検出器45の出力と、加速度センサ38の出力との比較が可能となり、モータ33A,33Bの回転検出器45A,45Bの異常の有無を判定する際に、加速度センサ38の出力を用いることができる。これにより、判定処理の判定精度をより高めることができる。
【0093】
本実施形態では、複数(3つ)の姿勢角θLが、加速度センサ38の出力に基づいて求められた姿勢角θLと、回転検出器45A,45Bの出力に基づいて求められた姿勢角θLとを含む場合を例示したが、例えば、モータ33を3つ設け、3つの回転検出器45の出力に基づいて求められた3つの姿勢角θLのみを用いて、判定処理を行ってもよい。
この場合も、処理部50は、3つの姿勢角θLにおいて、姿勢パラメータ値範囲に含まれることで相互に近似する姿勢角θLの個数が、姿勢パラメータ値範囲外である姿勢角θLの個数よりも多い場合、姿勢パラメータ値範囲外の姿勢角θLに対応するモータを停止対象モータと判定することができる(ステップS7,S9)。
【0094】
さらに、3つの回転検出器45の出力に基づいて求められた3つの姿勢角θLのみを用いて判定処理を行う場合、姿勢角θLは、姿勢パラメータとして捉えることもできるし、位置パラメータとして捉えることもできる。
処理部50は、姿勢パラメータとしての姿勢角θLに代えて、位置パラメータであるモータ33の回転位置を用いて、同様の処理を行うことができる。
この場合、処理部50は、位置パラメータとしての3つのモータ33それぞれの回転位置のうち、所定の位置パラメータ値範囲に含まれることで相互に近似する回転位置の個数が、位置パラメータ値範囲外である回転位置の個数よりも多い場合、位置パラメータ値範囲外の回転位置に対応するモータ33を停止対象モータと判定する。
これにより、回転検出器に異常が生じていると判定されたモータの動作を停止させることができる。
【0095】
なお、所定の位置パラメータ値範囲とは、各回転検出器45の出力から求められる回転位置において生じ得る誤差範囲となる数値幅を有する数値範囲であり、処理部50によって設定される。処理部50は、3つの回転位置を求めると、求めた3つの回転位置に対して姿勢パラメータ値範囲を設定する。
処理部50は、3つの回転位置のうちできるだけ多くの回転位置が位置パラメータ値範囲に含まれるように、位置パラメータ値範囲を設定する。
【0096】
〔その他〕
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることはない。
上記各実施形態では、停止対象モータが有ると判定すると、全てのモータに対して停止制御を実行する場合を示したが、停止対象モータ以外のモータについては、そのまま動作を継続させ、アシスト力を発生させるように制御してもよい。
また、モータ33A,33Bに対して、エンコーダやレゾルバ等といったモータ33の回転状態を検出するためのセンサを回転検出器45に加えて設け、これらセンサの出力を用いて、位置パラメータ、及び姿勢パラメータを求め、上述の判定処理を行ってもよい。
この場合、各パラメータの個数を増やすことができ、判定精度をより高めることができる。
【0097】
また、上記各実施形態では、判定処理において、モータ33A,33Bそれぞれの電流差分値、及び、回転検出器45A,45Bの出力のいずれか一方に基づいて、モータ33A,33Bの中に停止対象モータが有るか否かを判定する場合を例示したが、モータ33A,33Bそれぞれの電流差分値のみに基づいて停止対象モータの有無の判定を行ってもよいし、回転検出器45A,45Bの出力のみに基づいて停止対象モータの有無の判定を行ってもよい。
【0098】
また、上記各実施形態では、第二装着具12を利用者Rの脚部に装着した場合を例示したが、第二装着具12は利用者Rの腰部に装着する構成とすることもできる。
【0099】
また、アシスト装置10は、通信装置41によって通信可能な利用者端末を構成として含んでいてもよい。この場合、処理部50が行う上述の処理の一部又は全部を利用者端末の演算部等に行わせてもよい。
【0100】
本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0101】
10 アシスト装置 11 第一装着具 12 第二装着具
13 ベルト体 14 アクチュエータ 15 制御装置
33 モータ 33A 第1モータ 33B 第2モータ
35 駆動プーリ 38 加速度センサ
45,45A,45B 回転検出器 50 処理部
50a モータ制御処理 50b パラメータ演算処理 50c 判定処理
BB 胸部 BL 脚部 BS 肩部
BW 腰部 R 利用者