(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】軸受装置
(51)【国際特許分類】
F16C 33/76 20060101AFI20240110BHJP
F16C 33/58 20060101ALI20240110BHJP
F16C 33/64 20060101ALI20240110BHJP
F16C 19/18 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F16C33/76 A
F16C33/58
F16C33/64
F16C19/18
(21)【出願番号】P 2019199508
(22)【出願日】2019-11-01
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西出 渉真
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-078512(JP,A)
【文献】特開2018-044651(JP,A)
【文献】特開2012-087858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/58
F16C 33/64
F16C 33/76
F16C 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同心状に設けられる内方部材及び外方部材と、前記内方部材と前記外方部材との間に設けられている複数の転動体と、前記外方部材の軸方向一方側の端部外周面に嵌合して取り付けられている有底円筒状のカバーと、を備え、
前記端部外周面の軸方向他方側に、当該端部外周面に対する機械加工用の逃げ溝が形成されていて、
前記逃げ溝から軸方向他方に向かって拡径している傾斜面が設けられていて、
前記カバーは、前記逃げ溝の径方向外方に位置する当該カバーの軸方向他方側の端部に、軸方向他方に向かって拡径
する部分を有しかつ軸方向寸法が前記逃げ溝の軸方向寸法よりも大きい拡径部を有し、
前記逃げ溝
及び前記傾斜面と前記拡径部との間に充填剤が設けられている、軸受装置。
【請求項2】
前記カバーは、円形の底部と、前記底部から軸方向他方に延びる円筒部と、を有し、
前記円筒部は、前記拡径部と、前記拡径部から軸方向一方に設けられている円筒形状の本体部と、を有し、
前記充填剤は、前記本体部の内周面と、前記外方部材の前記端部外周面との間にも設けられている、請求項1に記載の軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軸受装置は、同心状に設けられる内方部材(「内輪」ともいう。)及び外方部材(「外輪」ともいう。)と、これら内方部材と外方部材との間に設けられている複数の転動体とを備える。外方部材と内方部材との間であって転動体が設けられている軸受内部に異物が侵入するのを防止するために、外方部材にカバーが取り付けられている軸受装置が知られている。カバーは、外方部材の軸方向一方側の端部外周面に嵌合する有底円筒状の部材である。特許文献1には、前記のようなカバーを備える軸受装置の例として、自動車に用いられ車輪を支持する車輪用軸受装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、カバーと外方部材との間を通じて軸受内部に異物が侵入するのを防止するために、カバーと外方部材との間にOリングが用いられている。また、他の形式の軸受装置として、
図7に示すように、外方部材90の軸方向一方側の端部外周面91に溝92が形成されていて、その溝92とカバー95との間にシーラントのような充填剤99が設けられる軸受装置が存在する。
【0005】
端部外周面91の途中に溝92を設けるためには、旋削による溝加工が追加的に必要となる。また、端部外周面91にカバー95が嵌合して取り付けられるため、あるいは、外方部材90の内周面に設けられる軌道面を研磨加工するための基準面を得るため、端部外周面91に対して例えば研磨加工が行われる。その研磨加工の際、端部外周面91に溝92が形成されていると、砥石が偏摩耗する可能性があり、砥石の寿命が低下する。なお、端部外周面91の軸方向他方側には、砥石による研磨加工のための逃げ溝93も形成されている。
【0006】
このように、カバー95を備える軸受装置において、外部からの異物の侵入を防止するためには、従来、溝92の追加的な加工が必要であり、製造コストが高くなってしまう。製造コストの低減のためにシーラントのような充填剤99及び溝92を省略すると、異物の侵入を防止する機能が低下してしまう。このような課題は、Oリング用の溝を外方部材に形成する必要のある、特許文献1に開示の従来技術においても生じる。
【0007】
そこで、本開示の目的は、軸受装置において、泥水等の異物がカバーと外方部材との間を通じて軸受内部に侵入するのを防ぐ機能を高めることが可能であると供に、製造コストを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の軸受装置は、同心状に設けられる内方部材及び外方部材と、前記内方部材と前記外方部材との間に設けられている複数の転動体と、前記外方部材の軸方向一方側の端部外周面に嵌合して取り付けられている有底円筒状のカバーと、を備え、前記端部外周面の軸方向他方側に、当該端部外周面に対する機械加工用の逃げ溝が形成されていて、前記カバーは、前記逃げ溝の径方向外方に位置する当該カバーの軸方向他方側の端部に、軸方向他方に向かって拡径する拡径部を有し、前記逃げ溝と前記拡径部との間に充填剤が設けられている。
【0009】
前記構成を備える軸受装置では、拡径部により、充填剤が、カバーの軸方向他方側の端部と外方部材の端部外周面との間に確実に充填される。このため、泥水等の異物がカバーと外方部材との間を通じて軸受内部に侵入するのを防ぐ機能が高まる。しかも、外方部材の端部外周面に対する機械加工用の逃げ溝が、充填剤の充填用溝として用いられる。このため、製造コストが低減される。
【0010】
また、好ましくは、前記カバーは、円形の底部と、前記底部から軸方向他方に延びる円筒部と、を有し、前記円筒部は、前記拡径部と、前記拡径部から軸方向一方に設けられている円筒形状の本体部と、を有し、前記充填剤は、前記本体部の内周面と、前記外方部材の前記端部外周面との間にも設けられている。
前記構成によれば、泥水等の異物が、カバーと外方部材との間を通じて軸受内部に侵入するのを防ぐ機能が高まる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の軸受装置によれば、泥水等の異物がカバーと外方部材との間を通じて軸受内部に侵入するのを防ぐ機能を高めることが可能であると供に、製造コストの低減が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】軸受装置の軸方向一方側を拡大して示す断面図である。
【
図3】カバーと外輪部材との間に充填剤を設けるための方法の説明図である。
【
図4】カバーと外輪部材との間に充填剤を設けるための方法の説明図である。
【
図5】カバーと外輪部材との間に充填剤を設けるための方法の説明図である。
【
図6】充填剤が充填されている小空間の変形例を説明するための断面図である。
【
図7】従来の軸受装置の一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔軸受装置について〕
図1は、軸受装置の一例を示す断面図である。
図1に示す軸受装置10は、車両(自動車)の車体に設けられている懸架装置(「ナックル」ともいう。)に取り付けられ、車輪7を回転可能に支持する。軸受装置10はハブユニット又は車輪用軸受装置とも称される。軸受装置10が車体側(懸架装置)に取り付けられた状態で、
図1の左側が、車輪7側であり、車両アウタ側と称される。
図1の右側が、車体中央側であり、車両インナ側と称される。
【0014】
本開示の軸受装置10において、軸受装置10の中心線Cに沿った方向が「軸方向」と定義される。この軸方向には、軸受装置10の中心線Cに平行な方向も含まれる。軸受装置10の中心線Cを「軸受中心線C」と称する。軸受中心線Cに直交する方向が「径方向」と定義される。本開示の軸受装置10では、車両インナ側が軸方向一方側となり、車両アウタ側が軸方向他方側となる。
【0015】
軸受装置10は、外輪部材(「外方部材」ともいう。)12と、内軸部材(「内方部材」ともいう。)14と、外輪部材12と内軸部材14との間に設けられている複数の転動体16とを備える。本開示の転動体16は、玉である。
【0016】
外輪部材12は、円筒形状である外輪本体部22と、外輪本体部22から径方向外方に向かって延びて設けられている固定用のフランジ部24とを有する。外輪本体部22の内周の軸方向一方側及び他方側それぞれに、外輪軌道面26が形成されている。フランジ部24が車体側部材であるナックル(図示せず)に取り付けられる。これにより、外輪部材12を含む軸受装置10が車体に固定される。
【0017】
内軸部材14は、軸状のハブ軸32(内軸)と、ハブ軸32の軸方向一方側に固定されている内輪34とを有する。ハブ軸32は、外輪部材12の径方向内方に設けられている軸本体部36と、フランジ部38とを有する。軸本体部36は、軸方向に長い部分である。フランジ部38は、軸本体部36の軸方向他方側から径方向外方に向かって延びて設けられている部分である。フランジ部38に、ボルト穴39が形成されている。このボルト穴39に取り付けられるボルト8によって車輪7がフランジ部38に固定される。内輪34は、環状の部材であり、軸本体部36の軸方向一方側の一部40に外嵌して固定されている。
【0018】
軸本体部36の外周側に軸軌道面42が形成され、内輪34の外周面に内輪軌道面44が形成されている。軸方向一方側の外輪軌道面26と内輪軌道面44との間に複数の転動体16が設けられている。軸方向他方側の外輪軌道面26と軸軌道面42との間に複数の転動体16が設けられている。各列において、複数の転動体16は保持器18によって保持されている。以上より、外輪部材12と内軸部材14とは同心状に設けられていて、外輪部材12に対して内軸部材14が軸受中心線Cを中心として回転する。
【0019】
外輪部材12と、ハブ軸32及び内輪34との間に、転動体16が存在する環状空間が形成されている。この環状空間を軸受内部20と称する。軸受装置10は、カバー60を軸方向一方側に備える。カバー60は、軸受装置10の軸方向一方側の外部から軸受内部20に泥水等の異物の侵入を防止することが可能である。軸受装置10は、密封装置70を軸方向他方側に備える。密封装置70は、外輪部材12とハブ軸32との間に設けられていて、軸受装置10の軸方向他方側の外部から軸受内部20に泥水等の異物が侵入するのを防止することが可能である。
【0020】
図2は、軸受装置10の軸方向一方側を拡大して示す断面図である。外輪部材12は、外輪本体部22から軸方向一方に延びて設けられている円筒状の端部45を有する。端部45の外周面46は、外輪部材12の中心線を中心とする円筒形状を有する。外輪部材12の中心線は軸受中心線C(
図1参照)と一致する。端部45の外周面46を「端部外周面46」と称する。端部外周面46は、砥石によって研磨された研磨面である。この端部外周面46にカバー60が嵌合して取り付けられる。
【0021】
外輪本体部22の軸方向一方側の外周面23は、端部外周面46から軸方向他方に向かって拡径している傾斜面47と、傾斜面47から軸方向他方に向かって延びて設けられている大径の円筒面48とを有する。端部外周面46のうちの軸方向他方側に逃げ溝49が形成されている。つまり、端部外周面46のうちの傾斜面47側に逃げ溝49が形成されている。逃げ溝49は環状の溝であり、端部外周面46を研磨加工する際に、砥石と非接触となる溝である。この逃げ溝49により、端部外周面46が全体にわたって砥石により研磨される。逃げ溝49は、端部外周面46に対する機械加工用(つまり、研磨加工用)の溝である。
【0022】
カバー60について説明する。カバー60は、有底円筒状である。つまり、カバー60は、円形の底部61と、底部61から軸方向他方に延びる円筒部62とを有する。
図2に開示の底部61は、内軸部材14(内輪34等)と非接触となるように、段付き形状を有する。底部61の外周縁部61aが、端部45の軸方向一方の側面45aに接触することで、カバー60は、端部45に取り付けられる際、位置決めされる。
【0023】
カバー60の円筒部62は、円筒形状の本体部63と拡径部64とを有する。
図2に示す形態では、拡径部64は、円筒形状の本体部63から軸方向他方に向かって拡径する連結筒部64bと、連結筒部64bから軸方向他方に延びて設けられている円筒形状の端部筒部64aとを有する。端部筒部64aと本体部63とは同軸状であり、供に円筒形状を有する。
【0024】
拡径部64(特に、端部筒部64a)の径方向内方に逃げ溝49が位置している。拡径部64の軸方向寸法は、逃げ溝49の軸方向寸法よりも大きい。逃げ溝49と、端部筒部64aの軸方向他方側の一部との間に、環状の小空間(第一小空間e1)が形成されている。端部筒部64aの残りの部分及び連結筒部64bと、端部外周面46の軸方向他方側の一部との間にも、環状の小空間(第二小空間e2)が形成されている。第一小空間e1と第二小空間e2とは繋がっていて、これらによって一つの小空間Eが形成されている。この小空間Eに、充填剤65としてシーラント(シーリング材)が設けられている(充填されている)。
【0025】
充填剤65は逃げ溝49を埋めるようにして設けられている。更に、充填剤65は、端部筒部64aの軸方向他方の端64cと、外輪部材12(傾斜面47)との間を塞ぐようにして、小空間Eに充填された状態にある。
【0026】
ここで、充填剤65を、カバー60と外輪部材12との間に設けるための方法について説明する。外輪部材12には、内軸部材14及び転動体16が組み付けられている。その外輪部材12の端部45に対して、カバー60が圧入して取り付けられる。
図3に示すように、カバー60が端部45に取り付けられる前に、端部外周面46の軸方向一方側の領域46aに硬化前の充填剤65を塗布する。なお、本開示の充填剤65は、嫌気性シーラントであり、塗布の際、流動性を有するペースト状であるが、カバー60が外輪部材12の端部45に取り付けられ、空気が遮断されると固化する特性を有する。
なお、本開示では、充填剤65として、嫌気性シーラントが用いられるが、これに限定されない。充填剤65は、空気に触れ時間経過により固化(固着)するシーラントでもよく、又は、接着剤であってもよい。
【0027】
軸方向一方側の領域46aに充填剤65が塗布された状態で、
図4に示すように、カバー60を端部45の軸方向一方側から嵌合させる。端部45に対してカバー60を軸方向他方へ移動させるにしたがって、充填剤65の多くの部分は、カバー60の軸方向他方側の端部によって、軸方向他方に押される。充填剤65の一部は、カバー60が有する円筒状の本体部63と端部外周面46との間に薄い状態で残留する。カバー60が軸方向他方に移動する際、拡径部64により、端部外周面46との間に小空間e0が形成される。このため、充填剤65は拡径部64の内周側(小空間e0)から逃げにくく、拡径部64の内周側に充填剤65が維持される、
【0028】
カバー60が所定の取り付け位置に取り付けられた状態(
図5に示す状態)で、充填剤65の多くの部分が、拡径部64と、逃げ溝49及び端部外周面46の一部との間に充填された状態となる。また、充填剤65の残りの部分が、カバー60の円筒状の本体部63と端部外周面46との間に薄い状態で存在する。その薄い状態で存在する充填剤の参照符号を
図5(及び
図2)では、「65a」としている。
【0029】
このようなカバー60の取り付け方法により、
図5に示すように、充填剤65は、カバー60の円筒形状である本体部63の内周面63aと、端部外周面46との間にも設けられた状態となる。なお、
図5(及び
図4)では、本体部63の内周面63aと、端部外周面46との間に存在する薄膜状の充填剤65aを説明するために、その充填剤65aを実際よりも厚く示している。
【0030】
図6は、充填剤65が充填されている小空間Eの変形例を説明するための断面図である。
図6に示すカバー60は、
図2に示すカバー60と同様、底部61と円筒部62とを有していて、円筒部62は、円筒形状の本体部63と拡径部64とを有する。
図2に示す形態では、拡径部64の端部筒部64aと、本体部63とによって、半径が段階的に拡大する段付き形状を有する。これに対して、
図6に示す形態は、拡径部64により、半径が直線的に拡大する形状を有する。つまり、拡径部64は、円筒形状の本体部63から軸方向他方に向かって直線的に拡径する形状を有する。
【0031】
図6に示す形態においても、拡径部64の径方向内方に逃げ溝49が位置している。逃げ溝49と拡径部64との間に環状の小空間Eが形成されている。この小空間Eに、充填剤65としてシーラントが設けられている(充填されている)。充填剤65は逃げ溝49を埋めるようにして設けられている。更に、充填剤65は、拡径部64の軸方向他方の端64cと、外輪部材12(傾斜面47)との間を塞ぐようにして、小空間Eに充填された状態にある。充填剤65を、カバー60と外輪部材12との間に充填する方法は、
図3~
図5により説明した方法と同じであり、ここでは説明を省略する。
【0032】
以上のように、前記各形態の軸受装置10は、外輪部材12の軸方向一方側の端部外周面46に嵌合して取り付けられている有底円筒状のカバー60を備える。端部外周面46のうちの軸方向他方側に、その端部外周面46に対する研磨加工用の逃げ溝49が形成されている。カバー60は、軸方向他方側の端部に拡径部64を有する。拡径部64は、軸方向他方に向かって拡径している。カバー60が外輪部材12に取り付けられた状態で、拡径部64は、逃げ溝49の径方向外方に位置する。そして、逃げ溝49と拡径部64との間に充填剤65が設けられている。
【0033】
この構成を備える軸受装置10では、拡径部64により、充填剤65が、カバー60の軸方向他方側の端部と、外輪部材12の端部外周面46との間に確実に充填される。このため、泥水等の異物がカバー60と外輪部材12(端部45)との間を通じて軸受内部20に侵入するのを防ぐ機能が高まる。
特に、前記各形態では、充填剤65は、拡径部64の軸方向他方の端64cと、外輪部材12(傾斜面47)との間を塞ぐようにして、小空間Eに充填された状態にある。このため、充填剤65が、外部から侵入しようとする異物に対して壁として機能する。よって、カバー60と外輪部材12(端部45)との間に、異物が侵入し難い。
【0034】
本開示の充填剤65は、小空間64を充填して異物の侵入を防止する機能の他に、カバー60(円筒部62の本体部63)と端部外周面46とを接着する機能も有する。これにより、カバー60は強固に端部45に固定される。
【0035】
しかも、外輪部材12の端部外周面46に対して設けられている研磨加工用の逃げ溝49が、充填剤65の充填用溝として用いられる。つまり、本開示の軸受装置10によれば、従来のように(
図7参照)、端部外周面91に対して、研磨加工のための逃げ溝93の他に、充填剤99用の溝92を別途設ける必要がなくなる。また、本開示の軸受装置10によれば、研磨面(端部外周面46)の途中に溝が存在しないため、砥石が偏摩耗するのを防ぐことが可能となる。以上より、軸受装置10の製造コストが低減される。
【0036】
また、
図5に示すように、カバー60の円筒部62は、拡径部64と、拡径部64から軸方向一方に設けられている円筒形状の本体部63とを有する。充填剤65は、本体部63の内周面63aと、外輪部材12の端部外周面46との間にも設けられている(充填剤65a)。この充填剤65aにより、泥水等の異物が、カバー60と外輪部材12(端部45)との間を通じて、軸受内部20に侵入するのを防ぐ機能が高まる。本体部63の内周面63aと端部外周面46との間に設けられている充填剤65aは、拡径部64と逃げ溝49との間に設けられている充填剤65と繋がっている。
【0037】
なお、拡径部64と逃げ溝49との間に設けられている充填剤65は、周方向に沿って連続的に設けられている。本体部63の内周面63aと端部外周面46との間に設けられている充填剤65aについては、周方向に沿って連続的に設けられているのが好ましいが、部分的に欠損していてもよい。
【0038】
本開示では、軸受装置10は、車輪用軸受装置である場合について説明した。しかし、本開示の発明は、他の軸受装置10にも適用可能である。
【0039】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は前述の実施形態に限定されるものではなく、この技術的範囲には特許請求の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0040】
10:軸受装置 12:外輪部材(外方部材) 14:内軸部材(内方部材)
16:転動体 46:端部外周面 49:逃げ溝
60:カバー 61:底部 62:円筒部
63:本体部 63a:内周面 64:拡径部
65:充填剤 65a:充填剤