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  • 特許-化粧紙 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】化粧紙
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/10 20060101AFI20240110BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20240110BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240110BHJP
   D21H 19/82 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B32B27/10
B32B29/00
B32B27/00 E
D21H19/82
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019212641
(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公開番号】P2021084242
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】谷口 祐介
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 臣吾
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-111928(JP,A)
【文献】特開2010-082918(JP,A)
【文献】特開2001-115076(JP,A)
【文献】特開2001-341273(JP,A)
【文献】特開2002-119910(JP,A)
【文献】特開2019-181924(JP,A)
【文献】特開2004-262105(JP,A)
【文献】特開2005-042373(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0086678(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0167744(US,A1)
【文献】特開2001-047411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
B32B 27/10
B32B 29/00
B32B 27/00
D21H 19/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の一方の面側に、インキ層と、表面保護層とをこの順に有し、
前記インキ層は、ポリウレタン樹脂及びニトロセルロース樹脂の混合樹脂を含有し、
前記表面保護層は、アクリルポリオール及びイソシアネート化合物を含む熱硬化樹脂と、無機質粒子とを含有し、
前記表面保護層は、第1表面保護層と、前記第1表面保護層の前記インキ層に対向する面と反対の面側に設けられた第2表面保護層とを備え、
前記第1表面保護層が含有する前記無機質粒子である第1無機質粒子の平均粒径は、5μm以上30μm以下であり、
前記第2表面保護層が含有する前記無機質粒子である第2無機質粒子は、平均粒径が1μm以上10μm以下であり、
前記第2表面保護層における前記第2無機質粒子の含有量は、前記第2表面保護層の全質量に対して、10質量%以上50質量%以下であることを特徴とする化粧紙。
【請求項2】
前記第1表面保護層の厚さは、前記第1無機質粒子の平均粒径の0.5倍以上2倍以下である請求項1に記載の化粧紙。
【請求項3】
前記第2表面保護層の厚さは、前記第2無機質粒子の平均粒径の1倍以上3倍以下である請求項1又は2に記載の化粧紙。
【請求項4】
前記第1無機質粒子は、アルミナであり、
前記第2無機質粒子は、シリカであることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の化粧紙。
【請求項5】
前記インキ層は、ベタインキ層と、前記ベタインキ層の前記表面保護層に対向する面側に設けられた絵柄インキ層とを備えることを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の化粧紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙基材の一方の面上に、インキ層と、表面保護層とをこの順に有する化粧紙が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の化粧紙では、インキ層が、ニトロセルロースとアルキド樹脂との混合樹脂からなるバインダーを含み、表面保護層が、電離放射線硬化性樹脂を含むようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-36484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建材の収納用の棚等に用いられる化粧紙は、物が置かれるため、耐摩耗性が要求される。特許文献1に記載の化粧紙は、耐摩耗性に優れたものとなるが、Vカットやラッピング等の加工時に、カールや紙切れ、塗膜表面の割れが発生する可能性があった。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、加工適性及び耐摩耗性に優れた化粧紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、(a)紙基材の一方の面側に、インキ層と、表面保護層とをこの順に有し、(b)インキ層は、ポリウレタン樹脂及びニトロセルロース樹脂の混合樹脂を含有し、(c)表面保護層は、アクリルポリオール及びイソシアネート化合物を含む熱硬化樹脂と、無機質粒子とを含有する化粧紙であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、インキ層の混合樹脂によってインキ層の柔軟性を向上でき、加工時のインキ層の割れを防止できる。また、表面保護層が含有する無機質粒子によって耐摩耗性向上できる。そのため、加工適性及び耐摩耗性に優れた化粧紙を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る化粧紙を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
(構成)
図1に示すように、化粧紙1は、紙基材2の一方の面(以下、「上面2a」とも呼ぶ)側に、インキ層3と、表面保護層4とをこの順に有している。
(紙基材)
紙基材2は、化粧紙1のベースとなる基材である。紙基材2としては、例えば、薄葉紙、紙間強化紙、クラフト紙、上質紙、リンター紙、バライタ紙、硫酸紙、和紙等の紙が採用できる。特に紙間強化紙が好適である。紙基材2の坪量は、20g/m2~150g/m2 程度とする。また、紙基材2の厚みは、20μm~200μm程度とする。
【0010】
(インキ層)
インキ層3は、ベタインキ層5と、ベタインキ層5の表面保護層4に対向する面5a側に設けられた絵柄インキ層6とを備えている。
ベタインキ層5は、絵柄インキ層6の絵柄の意匠性を向上させるために、絵柄インキ層6の背景を形成する単色の層である。ベタインキ層5は、染料や顔料等の着色剤をバインダー樹脂とともに希釈溶媒中に溶解又は分散してなる印刷インキを用いて形成される。印刷インキの塗布には、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷等の各種印刷法、又はグラビアコート法、ロールコート法等の各種塗工法が用いられる。顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、酸化鉄、有機顔料、メタリック顔料等の公知の顔料を採用できる。また、バインダー樹脂としては、ポリウレタン樹脂及びニトロセルロース樹脂の混合樹脂が用いられる。即ち、ベタインキ層5を構成する樹脂は、ポリウレタン樹脂及びニトロセルロース樹脂の混合樹脂となっている。
【0011】
ベタインキ層5のポリウレタン樹脂及びニトロセルロース樹脂の比率は、ベタインキ層5の全質量に対して、ポリウレタン樹脂が60質量%以上80質量%以下、ニトロセルロース樹脂が20質量%以上40質量%以下とするのが好ましい。ポリウレタン樹脂が60質量%未満である場合には、ベタインキ層5が柔らかくなるため、鉛筆硬度などの凹み傷の性能(押し込まれる傷の表面性能)が低下する。また、ポリウレタン樹脂が80質量%より大きい場合には、Vカット加工時に割れが発生しやすくなる。一方、ニトロセルロース樹脂が20質量%未満である場合には、Vカット加工時に割れが発生しやすくなる。また、ニトロセルロース樹脂が40質量%より大きい場合には、ベタインキ層5が柔らかくなるため、鉛筆硬度などの凹み傷の性能(押し込まれる傷の表面性能)が低下する。
また、ベタインキ層5の厚みは、0.1μm以上0.2μm以下程度とする。
【0012】
絵柄インキ層6は、化粧紙1に絵柄による意匠性を付与するための層である。絵柄としては、例えば、木目模様、石目模様、布目模様、タイル調模様、煉瓦調模様、皮絞模様、文字を採用できる。絵柄インキ層6は、ベタインキ層5と同様に、染料や顔料等の着色剤をバインダー樹脂とともに希釈溶媒中に溶解又は分散してなる印刷インキを用いて形成される。印刷インキの塗布には、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷等の各種印刷法が用いられる。顔料及びバインダー樹脂としては、ベタインキ層5と同様に、公知の顔料、ポリウレタン樹脂及びニトロセルロース樹脂の混合樹脂が用いられる。絵柄インキ層6のポリウレタン樹脂及びニトロセルロース樹脂の比率は、ベタインキ層5と同様に、絵柄インキ層6の全質量に対して、ポリウレタン樹脂が60質量%以上80質量%以下、ニトロセルロース樹脂が20質量%以上40質量%以下とするのが好ましい。また、絵柄インキ層6の厚さは、0.1μm以上0.2μm以下程度とする。
【0013】
(表面保護層)
表面保護層4は、第1表面保護層7と、第1表面保護層7のインキ層3に対向する面と反対の面7a側に設けられた第2表面保護層8とを備えている。
第1表面保護層7は、インキ層3を被覆するための層である。第1表面保護層7は、アクリルポリオールとイソシアネート化合物(硬化剤)とを含む熱硬化樹脂を用いて形成される。アクリルポリオールとしては、分子中に水酸基を2個以上有するアクリルポリマー等を使用できる。具体的には、水酸基含有アクリレートと、水酸基含有アクリレートと共重合可能な共重合性ビニルモノマーとを、共重合させることによって得られる共重合体が好ましい。また、イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族系、脂肪族系の各種イソシアネート化合物等を使用できる。具体的には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)から選ばれる1種以上であることが好ましい。特に、TDIが最も好ましい。熱硬化樹脂の塗布には、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷等の各種印刷法、又はグラビアコート法、ロールコート法等の各種塗工法が用いられる。
【0014】
また、第1表面保護層7は、無機質粒子9を含有する。無機質粒子9としては、例えば、アルミナ(α-アルミナ等)、アルミノシリケート、シリカ、硝子、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ダイヤモンド等を採用できる。無機質粒子9を含有することにより、耐摩耗性を向上できる。特に、無機質粒子9としては、平均粒径が5μm以上30μm以下のアルミナが好ましい。ここで、平均粒径は、顕微鏡観察による平均粒径である。顕微鏡観察による平均粒径は、例えば、無機質粒子9(アルミナ)を顕微鏡観察して、画像処理ソフト等で、顕微鏡観察した無機質粒子9(アルミナ)の粒径を100個測定し、測定結果を個数平均することにより得られる。無機質粒子9(アルミナ)の粒径としては、無機質粒子9(アルミナ)の粒子の長軸径と短軸径との平均値を採用できる。無機質粒子9(アルミナ)の平均粒径が5μmよりも小さい場合には、鉛筆硬度などの凹み傷や耐摩耗性の性能が低下する。一方、30μmよりも大きい場合には、表面の平滑性が失われ、耐汚染性が低下する。また、無機質粒子9(アルミナ)の含有量は、第1表面保護層7の全質量に対して30質量%以上60質量%以下とする。30質量%未満である場合には、耐傷性や耐摩耗性などの表面性能が低下する。また60質量%より大きい場合には、塗膜形成が困難になるため、表面保護層自体(第1表面保護層7自体)の目的が失われる。
【0015】
また、第1表面保護層7の厚さは、無機質粒子9(アルミナ)の平均粒径の0.5倍以上2倍以下とすることが好ましい。0.5倍未満である場合には、無機質粒子9(アルミナ)が第1表面保護層7から突出する可能性があるため、Vカット加工時に塗膜の割れが発生しやすくなる。また、2倍より大きい場合には、塗膜厚が厚くなり、無機質粒子9(アルミナ)が第1表面保護層7に埋没するため、鉛筆硬度や耐摩耗性の性能が低下する。
なお、「第1表面保護層7は、無機質粒子9を含有する」とは、無機質粒子9の体積の半分以上が第1表面保護層1内に入ってることをいう。図1では、各無機質粒子9の一部が第2表面保護層8内に入っているが、第2表面保護層8内に入っている無機質粒子9の体積は半分よりも小さいため、第1表面保護層8は無機質粒子9にのみ含有されている。
【0016】
第2表面保護層8は、第1表面保護層7を被覆するための層である。第2表面保護層8も、第1表面保護層7と同様に、アクリルポリオールとイソシアネート化合物(硬化剤)とを含む熱硬化樹脂を用いて形成される。アクリルポリオール、イソシアネート化合物及び熱硬化樹脂の塗布方法としては、第1表面保護層7と同様のものを採用できる。
また、第2表面保護層8は、無機質粒子10を含有する。無機質粒子10としては、例えば、アルミナ(α-アルミナ等)、アルミノシリケート、シリカ、硝子、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ダイヤモンド等を採用できる。無機質粒子10を含有することにより、耐摩耗性を向上できる。特に、無機質粒子10としては、平均粒径が1μm以上10μm以下のシリカが好ましい。無機質粒子10(シリカ)の平均粒径が1μmよりも小さい場合には、鉛筆硬度や耐摩耗性などの性能が低下する。一方、10μmよりも大きい場合には、第2表面保護層8より無機質粒子10(シリカ)が突出する可能性があるため、Vカット加工時に塗膜の割れが発生しやすくなる。無機質粒子10(シリカ)の含有量は、第2表面保護層8の全質量に対して、10質量%以上50質量%以下である。10質量%未満である場合には、耐傷性や耐摩耗性などの表面性能が低下する。また、50質量%より大きい場合には、塗膜形成が困難になるため、第2表面保護層8自体の目的が失われる。
【0017】
また、第2表面保護層8の厚さは、無機質粒子10(シリカ)の平均粒径の1倍以上3倍以下とすることが好ましい。1倍未満である場合には、第1表面保護層7の無機質粒子9(アルミナ)が第2表面保護層8から突出するため、Vカット加工時に塗膜の割れが発生しやすくなる。また3倍より大きい場合には、塗膜厚が厚くなり、無機質粒子10や無機質粒子9(アルミナ)が埋没してしまうため、鉛筆硬度や耐摩耗性の性能が低下する。
なお、第1表面保護層7及び第2表面保護層8の熱硬化樹脂には、更に必要に応じて、各種添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、セルロース系樹脂等の熱可塑性樹脂、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の微粉末からなる体質顔料(充填剤)、シリコーン樹脂、ワックス等の滑剤、染料、顔料等の着色剤を採用できる。
【0018】
以上説明したように、本実施形態に係る化粧紙1は、紙基材2の一方の面(上面2a)側に、インキ層3と、表面保護層4とをこの順に有するようにした。また、インキ層3が、ポリウレタン樹脂及びニトロセルロース樹脂の混合樹脂を含有するようにした。また、表面保護層4が、アクリルポリオール及びイソシアネート化合物を含む熱硬化樹脂と、無機質粒子(無機質粒子9及び無機質粒子10の少なくとも一方)とを含有するようにした。それゆえ、インキ層3の混合樹脂によってインキ層3の柔軟性を向上でき、加工時のインキ層3の割れを防止できる。また、表面保護層4が含有する無機質粒子によって耐摩耗性向上できる。そのため、加工適性及び耐摩耗性に優れた化粧紙1を提供できる。
【0019】
また、本実施形態に係る化粧紙1は、表面保護層4が、第1表面保護層7と、第1表面保護層7のインキ層3に対向する面と反対の面7a側に設けられた第2表面保護層8とを備えるようにした。また、第1表面保護層7が含有する無機質粒子9を、平均粒径が5μm以上30μm以下のアルミナとした。それゆえ、耐傷性を向上できる。また、粒径の大きい無機質粒子9(アルミナ)を、第1表面保護層7、つまり、最表層よりも内側の層に含有するようにしたため、無機質粒子9(アルミナ)が化粧紙1表面上に突出する可能性を低減でき、Vカット加工の際この部分から割れが発生する可能性を低減できる。
【0020】
また、本実施形態に係る化粧紙1は、第2表面保護層8が含有する無機質粒子10を、平均粒径が1μm以上10μm以下のシリカとした。即ち、粒径の小さい無機質粒子10(シリカ)を、第2表面保護層8、つまり、最表層に含有するようにした。そのため、無機質粒子9(アルミナ)が突出しないことによる、耐傷性の低下を補完できます。
また、本実施形態に係る化粧紙1は、インキ層3が、ベタインキ層5と、ベタインキ層5の表面保護層4に対向する面5a側に設けられた絵柄インキ層6とを備えるようにした。それゆえ、化粧紙1の意匠性をより向上することができる。
【0021】
(実施例)
以下に、上記実施形態に係る化粧紙1の実施例及び比較例について説明する。
(実施例1)
まず紙基材2として、坪量30g/m2の紙間強化紙を用意した。続いて、紙基材2の一方の面2a上に、グラビア印刷法により、ポリウレタン樹脂及びニトロセルロース樹脂の混合樹脂をバインダー樹脂とし、二酸化チタンを顔料とする印刷インキを塗布して、ベタインキ層5を形成した。続いて、ベタインキ層5上に、グラビア印刷法により、ポリウレタン樹脂及びニトロセルロース樹脂の混合樹脂をバインダー樹脂とする印刷インキを塗布して、絵柄インキ層6を形成した。ベタインキ層5及び絵柄インキ層6の印刷インキのバインダー樹脂は、各層の全質量に対して、ポリウレタン樹脂80質量%、ニトロセルロース樹脂20質量%とした。続いて、絵柄インキ層6上に、グラビア印刷により、無機質粒子9を含有した第1表面保護層7形成用樹脂を塗布して第1表面保護層7を形成した。
【0022】
第1表面保護層7形成用樹脂としては、アクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネート(イソシアネート化合物)とを含む熱硬化樹脂を用いた。無機質粒子9としては、平均粒径25μmのアルミナを用いた。アルミナは、第1表面保護層7を構成する樹脂100質量部に対して、20質量部添加した。第1表面保護層7形成用樹脂には、ヘキサメチレンジイソシアネート系の硬化剤を樹脂(第1表面保護層7形成用樹脂)100質量部に対して20質量部、シリコーンアクリレート系添加剤を樹脂(第1表面保護層7形成用樹脂)100質量部に対して、2質量部添加した。塗布量は、7g/m2とした。
【0023】
続いて、第1表面保護層7上に、グラビア印刷により、無機質粒子10を含有した第2表面保護層8形成用樹脂を塗布して、第2表面保護層8を形成した。第2表面保護層8形成用樹脂としては、アクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネート(イソシアネート化合物)とを含む熱硬化樹脂を用いた。無機質粒子10としては、平均粒径3μmのシリカを用いた。シリカは、第2表面保護層8を構成する樹脂100質量部に対して、15質量部添加した。塗布量は、3g/m2とした。第1表面保護層7形成用樹脂及び第2表面保護層8形成用樹脂には、ヘキサメチレンジイソシアネート系の硬化剤を樹脂(第2表面保護層8形成用樹脂)100質量部に対して20質量部、シリコーンアクリレート系添加剤を樹脂(第2表面保護層8形成用樹脂)100質量部に対して2質量部添加した。
【0024】
(実施例2)
実施例2では、ベタインキ層5及び絵柄インキ層6の印刷インキのバインダー樹脂を、各層5、6の全質量に対して、ポリウレタン樹脂を60質量%とし、ニトロセルロース樹脂を40質量%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧紙1を作製した。
(実施例3)
実施例3では、第1表面保護層7の無機質粒子9(アルミナ)を省略した。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧紙1を作製した。
【0025】
(実施例4)
実施例4では、第2表面保護層8の無機質粒子10(シリカ)を省略した。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧紙1を作製した。
(実施例5)
実施例5では、第1表面保護層7の無機質粒子9(アルミナ)の平均粒径を5μmとした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧紙1を作製した。
【0026】
(実施例6)
実施例6では、第1表面保護層7の無機質粒子9(アルミナ)の平均粒径を30μmとした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧紙1を作製した。
(実施例7)
実施例7では、第1表面保護層7の無機質粒子9(アルミナ)の平均粒径を3μmとした。それ以外は実施例1と同じ材料・手順で化粧紙1を作製した。
【0027】
(実施例8)
実施例8では、第1表面保護層7の無機質粒子9(アルミナ)の平均粒径を32μmとした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧紙1を作製した。
(実施例9)
実施例9では、第2表面保護層8の無機質粒子10(シリカ)の平均粒径を1μmとした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧紙1を作製した。
【0028】
(実施例10)
実施例10では、第2表面保護層8の無機質粒子10(シリカ)の平均粒径を10μmとした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧紙1を作製した。
(実施例11)
実施例11では、第2表面保護層8の無機質粒子10(シリカ)の平均粒径を0.5μmとした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧紙1を作製した。
(実施例12)
実施例12では、第2表面保護層8の無機質粒子10(シリカ)の平均粒径を12μmとした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧紙1を作製した。
【0029】
(比較例1)
比較例1では、第1表面保護層7の無機質粒子9(アルミナ)と、第2表面保護層8の無機質粒子10(シリカ)との両方を省略した。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧紙1を作製した。
(比較例2)
比較例2では、ベタインキ層5及び絵柄インキ層6の印刷インキのバインダー樹脂を、ポリウレタン樹脂とアルキッド樹脂と含む混合樹脂とした。バインダー樹脂は、各層5、6の全質量に対して、ポリウレタン樹脂を80質量%とし、アルキッド樹脂を20質量%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧紙1を作製した。
【0030】
(比較例3)
比較例3では、第1表面保護層7及び第2表面保護層8を構成する樹脂を、紫外線硬化樹脂とした。それ以外は、比較例2と同じ材料・手順で化粧紙1を作製した。
(比較例4)
比較例4では、第1表面保護層7及び第2表面保護層8を構成する樹脂を、電子線硬化樹脂とした。それ以外は、比較例2と同じ材料・手順で化粧紙1を作製した。
【0031】
(性能評価)
実施例1~12、比較例1~4の化粧紙1に対して以下の性能評価を行なった。
(加工適性評価)
加工適性評価では、Vカット試験を行った。Vカット試験では、まず、接着剤(ジャパンコーティング製、BA-10、BA-11B、塗布量7g/尺角)を用いて、厚さ3mmのMDF(medium density fiberboard)に化粧紙1をラミネートして化粧板を形成した後、形成した化粧板を24時間静置した。尺角とは、縦303mm×横303mmの面積である。続いて、化粧板のMDFにV溝部を形成し、V溝部を形成した化粧板を環境温度5℃で4時間静置した。続いて、手曲げによってV溝部で化粧板を折り曲げ、折り曲げ箇所の90°部(角部)を目視によって観察した。また、目視によって割れが観察された場合、割れ部分がどこまであるのかを詳細に確認するために、割れが観察された場所(化粧紙1表面、断面)を電子顕微鏡によって観察した。そして、著しい割れが無いと判断した場合を合格「○」とし、角部の一部に割れがあると判断した場合を不合格「△」とし、角部の全体に割れがあると判断した場合を不合格「×」とした。
【0032】
(耐摩耗性評価)
耐摩耗性評価では、JAS合板摩耗C試験に準拠して、試験用装置に軟質摩耗輪2個を取り付けて化粧紙1上で500回転させた。そして、絵柄インキ層6の柄取れがない場合を合格「○」とし、絵柄インキ層6の柄取れがある場合を不合格「×」とした。
(耐傷性評価)
耐傷性評価では、鉛筆硬度試験を行った。鉛筆硬度試験では、JIS K 5600に準拠して、試験装置に種々の鉛筆を取り付けて化粧紙1上で750g荷重・45°角度で2回引っ掻いた。そして、化粧紙1が傷ついた場合の鉛筆の硬度を調査した。
【0033】
(評価結果)
評価結果を、以下の表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
(評価結果)
表1に示すように、実施例1~12の化粧紙1は「加工適性」及び「耐摩耗性」が合格「○」となった。
これに対し、比較例1~4の化粧紙1は、「加工適性」及び「耐摩耗性」の何れかが不合格「△」又は「×」となった。具体的には、比較例1では、第1表面保護層7及び第2表面保護層8が無機質粒子9、10を含まないため、「耐摩耗性」が不合格「×」となった。また、比較例2では、ベタインキ層5及び絵柄インキ層6を構成する樹脂を、ポリウレタン樹脂とニトロセルロース樹脂と含む混合樹脂よりも硬い樹脂としたため、「加工適性」が「△」の不合格となった。また、比較例3及び4では、第1表面保護層7及び第2表面保護層8を構成する樹脂を、アクリルポリオール及びイソシアネート化合物を含む熱硬化樹脂よりも硬い樹脂としたため、「加工適性」が「×」の不合格となった。
【0036】
したがって、実施例1~12の化粧紙1、つまりインキ層3がポリウレタン樹脂及びニトロセルロース樹脂の混合樹脂を含み、表面保護層4がアクリルポリオール及びイソシアネート化合物を含む熱硬化樹脂と、無機質粒子(9及び10の少なくとも一方)とを含むという条件を満たす化粧紙1によれば、条件を満たさない化粧紙1(比較例1~4の化粧紙1)と異なり、加工適性及び耐摩耗性に優れた化粧紙1が得られることが確認された。
また、実施例3、7の化粧紙1、つまり、第1表面保護層7が平均粒径が5μm以上30μm以下のアルミナを含有するという条件を満たさない化粧紙1によれば、耐傷性が「3H」よりも低くなることが確認された。
【0037】
また、実施例1、5、6、9、10の化粧紙1、つまり、第1表面保護層7が平均粒径が5μm以上30μm以下のアルミナを含有するという条件を満たすとともに、第2表面保護層8が平均粒径が1μm以上10μm以下のシリカを含有するという条件を満たす化粧紙1によれば、条件を満たさない化粧紙1(実施例3、4、7、8、11、12の化粧紙1)と異なり、耐傷性が「3H」以上となる化粧紙1が得られることが確認された。
【符号の説明】
【0038】
1…化粧紙、2…紙基材、3…インキ層、4…表面保護層、5…ベタインキ層、6…絵柄インキ層、7…第1表面保護層、8…第2表面保護層、9…無機質粒子、10…無機質粒子
図1