(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】固体撮像素子用フィルターの製造方法、および、固体撮像素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20240110BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20240110BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G02B5/20 101
G02B5/22
H01L27/146 D
(21)【出願番号】P 2019214304
(22)【出願日】2019-11-27
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】明野 康剛
(72)【発明者】
【氏名】岩田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】平井 友梨
【審査官】中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-180048(JP,A)
【文献】国際公開第2018/211813(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/043654(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20-5/28
H01L 27/146
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーフィルターを半導体基板上に形成すること、
前記カラーフィルターを有した前記半導体基板にエッチングストッパー層を形成すること、
前記エッチングストッパー層上に、前記エッチングストッパー層とはドライエッチングにおけるエッチングレートが異なる赤外光カット前駆層を形成すること、
前記赤外光カット前駆層のうちで、前記カラーフィルター上に位置する部分を覆うレジストパターンを形成すること、および、
前記レジストパターンを用いて前記赤外光カット前駆層をドライエッチングすることによって、赤外光カットフィルターを形成すること、を含
み、
前記エッチングストッパー層を形成することは、前記カラーフィルター上、および、前記半導体基板のうちで前記カラーフィルターが位置しない部分の上に前記エッチングストッパー層を形成することを含み、
前記赤外光カットフィルターを形成することは、前記赤外光カット前駆層および前記エッチングストッパー層をドライエッチングすることによって、前記カラーフィルターの側面を覆い、かつ、入射光を反射する隔壁を形成する
固体撮像素子用フィルターの製造方法。
【請求項2】
前記赤外光カットフィルターを形成することは、前記赤外光カット前駆層および前記エッチングストッパー層をドライエッチングすることによって、前記赤外光カットフィルターの側面を覆うように前記隔壁を形成する
請求項
1に記載の固体撮像素子用フィルターの製造方法。
【請求項3】
カラーフィルターを半導体基板上に形成すること、
前記カラーフィルターを有した前記半導体基板にエッチングストッパー層を形成すること、
前記エッチングストッパー層上に、前記エッチングストッパー層とはドライエッチングにおけるエッチングレートが異なる赤外光カット前駆層を形成すること、
前記赤外光カット前駆層のうちで、前記カラーフィルター上に位置する部分を覆うレジストパターンを形成すること、および、
前記レジストパターンを用いて前記赤外光カット前駆層をドライエッチングすることによって、赤外光カットフィルターを形成すること、を含み、
前記エッチングストッパー層を形成する前に、前記半導体基板のうちで、前記カラーフィルターが位置しない部分に赤外光パスフィルターを形成することをさらに含み、
前記赤外光カット前駆層を形成することは、前記カラーフィルター上に位置する第1部分と、前記赤外光パスフィルター上に位置する第2部分とを形成し、かつ、前記第1部分の表面が、前記赤外光カット前駆層の厚さ方向において、前記第2部分の表面以上の高さに位置するように前記赤外光カット前駆層を形成し、
前記赤外光カットフィルターを形成することは、前記赤外光カット前駆層および前記エッチングストッパー層をドライエッチングすることによって、前記赤外光カットフィルターの側面を覆い、かつ、入射光を反射する隔壁を形成する
固体撮像素子用フィルターの製造方法。
【請求項4】
前記赤外光パスフィルターを形成することは、前記カラーフィルターの厚さ以下の厚さを有した前記赤外光パスフィルターを形成することを含む
請求項
3に記載の固体撮像素子用フィルターの製造方法。
【請求項5】
前記エッチングストッパー層を形成することは、ポリシロキサンによって前記エッチングストッパー層を形成することを含み、
前記赤外光カットフィルターを形成することは、前記ドライエッチングの後に、剥離液によって前記レジストパターンを前記赤外光カットフィルターから剥離することを含む
請求項
2または
3に記載の固体撮像素子用フィルターの製造方法。
【請求項6】
前記半導体基板が広がる平面と対向する視点から見て、前記赤外光カットフィルターの表面と前記赤外光パスフィルターの表面とを覆う酸素遮断層を形成することと、
前記酸素遮断層上に複数のマイクロレンズを形成することと、をさらに含む
請求項
3に記載の固体撮像素子用フィルターの製造方法。
【請求項7】
前記赤外光カットフィルターの表面と前記赤外光パスフィルターの表面とを含む面上に、複数のマイクロレンズを形成することと、
前記複数のマイクロレンズの表面を覆う酸素遮断層を形成することと、を含む
請求項
3に記載の固体撮像素子用フィルターの製造方法。
【請求項8】
半導体基板を準備することと、
請求項1から
7のいずれか一項に記載の固体撮像素子用フィルターの製造方法と、を含む
固体撮像素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像素子用フィルターの製造方法、および、固体撮像素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOSイメージセンサーおよびCCDイメージセンサーなどの固体撮像素子は、光の強度を電気信号に変換する光電変換素子を備える。固体撮像素子の一例は、複数の色に対応する光を検出することが可能である。固体撮像素子は、各色用のカラーフィルターと各色用の光電変換素子とを備え、各色用の光電変換素子によって各色用の光を検出する(例えば、特許文献1を参照)。固体撮像素子の他の例は、有機光電変換素子と無機光電変換素子とを備え、カラーフィルターを用いずに、各光電変換素子によって各色の光を検出する(例えば、特許文献2を参照)。
【0003】
固体撮像素子は、光電変換素子上に赤外光カットフィルターを備える。赤外光カットフィルターが有する赤外光吸収色素が赤外光を吸収することによって、各光電変換素子が検出し得る赤外光を光電変換素子に対してカットする。これによって、各光電変換素子での可視光の検出精度が高められる。赤外光カットフィルターは、例えば、赤外光吸収色素であるシアニン色素を含む(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-060176号公報
【文献】特開2018-060910号公報
【文献】特開2007-219114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、微細な画素を有した固体撮像素子の製造において、固体撮像素子を形成する各層の加工方法として、ドライエッチング法が提案されている。ドライエッチング法では、プラズマ中のエッチャントがエッチング対象に衝突することによって、エッチング対象の一部が除去される。ドライエッチング法では、通常、ドライエッチングによる加工の精度を高める目的で、エッチング対象の下層が露出してから一定の期間にわたって、エッチング対象に対するドライエッチング処理を継続する。この場合には、エッチング対象に対するエッチャントが、エッチング対象の下層にも衝突することによって、下層の表面における性状が変化する。これにより、固体撮像素子の機能が低下する場合がある。
【0006】
本発明は、エッチング対象の下層における表面性状の変化に起因する機能の低下を抑制可能とした固体撮像素子用フィルターの製造方法、および、固体撮像素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための固体撮像素子用フィルターの製造方法は、カラーフィルターを半導体基板上に形成すること、前記カラーフィルターを有した前記半導体基板にエッチングストッパー層を形成すること、前記エッチングストッパー層上に、前記エッチングストッパー層とはドライエッチングにおけるエッチングレートが異なる赤外光カット前駆層を形成すること、前記赤外光カット前駆層のうちで、前記カラーフィルター上に位置する部分を覆うレジストパターンを形成すること、および、前記レジストパターンを用いて前記赤外光カット前駆層をドライエッチングすることによって、赤外光カットフィルターを形成すること、を含む。
【0008】
上記課題を解決するための固体撮像素子の製造方法は、半導体基板を準備することと、上記固体撮像素子用フィルターの製造方法と、を含む。
上記各構成によれば、赤外光カット前駆層のオーバーエッチングによって赤外光カット前駆層の一部を取り除くとしても、赤外光カット前駆層の下層にはエッチングストッパー層が位置するため、エッチングストッパー層の下層に対するエッチャントの衝突が抑えられる。これによって、エッチング対象である赤外光カット前駆層の下層における表面性状が変化することに起因する固体撮像素子の機能の低下が抑えられる。
【0009】
上記固体撮像素子用フィルターの製造方法において、前記エッチングストッパー層を形成することは、前記カラーフィルター上、および、前記半導体基板のうちで前記カラーフィルターが位置しない部分の上に前記エッチングストッパー層を形成することを含み、前記赤外光カットフィルターを形成することは、前記赤外光カット前駆層および前記エッチングストッパー層をドライエッチングすることによって、前記カラーフィルターの側面を覆い、かつ、入射光を反射する隔壁を形成してもよい。
【0010】
上記構成によれば、カラーフィルターに入射した光が、カラーフィルターの側面からカラーフィルターの外部に透過することが隔壁によって抑えられる。そのため、当該カラーフィルターに対応する光電変換素子に入射する光における光量の低下を抑えることができる。
【0011】
上記固体撮像素子用フィルターの製造方法において、前記赤外光カットフィルターを形成することは、前記赤外光カット前駆層および前記エッチングストッパー層をドライエッチングすることによって、前記赤外光カットフィルターの側面を覆うように前記隔壁を形成してもよい。
【0012】
上記構成によれば、赤外光カットフィルターに入射した光が、赤外光カットフィルターの側面から赤外光カットフィルターの外部に透過することも隔壁によって抑えられる。そのため、赤外光カットフィルターの下層であるカラーフィルターを介した光が入射する光電変換素子に入射する光における光量の低下をさらに抑えることができる。
【0013】
上記固体撮像素子用フィルターの製造方法において、前記エッチングストッパー層を形成する前に、前記半導体基板のうちで、前記カラーフィルターが位置しない部分に赤外光パスフィルターを形成することをさらに含み、前記赤外光カット前駆層を形成することは、前記カラーフィルター上に位置する第1部分と、前記赤外光パスフィルター上に位置する第2部分とを形成し、かつ、前記第1部分の表面が、前記赤外光カット前駆層の厚さ方向において、前記第2部分の表面以上の高さに位置するように前記赤外光カット前駆層を形成し、前記赤外光カットフィルターを形成することは、前記赤外光カット前駆層および前記エッチングストッパー層をドライエッチングすることによって、前記赤外光カットフィルターの側面を覆い、かつ、入射光を反射する隔壁を形成してもよい。
【0014】
上記構成によれば、第1部分の表面が、赤外光カット前駆層の厚さ方向において、第2部分の表面以上の高さに位置するため、赤外光カットフィルターの側面全体に隔壁が形成されやすくなる。これにより、赤外光カットフィルターに入射した光が、赤外光カットフィルターを透過して赤外光パスフィルターに入射することを抑える確実性が高まる。
【0015】
上記固体撮像素子用フィルターの製造方法において、前記赤外光パスフィルターを形成することは、前記カラーフィルターの厚さ以下の厚さを有した前記赤外光パスフィルターを形成することを含んでもよい。この構成によれば、赤外光カットフィルターの側面全体に隔壁を形成することが可能である。
【0016】
上記固体撮像素子用フィルターの製造方法において、前記エッチングストッパー層を形成することは、ポリシロキサンによって前記エッチングストッパー層を形成することを含み、前記赤外光カットフィルターを形成することは、前記ドライエッチングの後に、剥離液によって前記レジストパターンを前記赤外光カットフィルターから剥離することを含んでもよい。
【0017】
上記構成によれば、ポリシロキサン、および、ポリシロキサンとエッチャントとの反応生成物の少なくとも一方を含む隔壁が、剥離液が赤外光カットフィルターに接することを抑える。そのため、赤外光カットフィルターが含む赤外光吸収色素が剥離液に溶出することが、隔壁によって抑えられる。
【0018】
上記固体撮像素子用フィルターの製造方法において、前記半導体基板が広がる平面と対向する視点から見て、前記赤外光カットフィルターの表面と前記赤外光パスフィルターの表面とを覆う酸素遮断層を形成することと、前記酸素遮断層上に複数のマイクロレンズを形成することと、をさらに含んでもよい。
【0019】
上記固体撮像素子の製造方法において、前記赤外光カットフィルターの表面と前記赤外光パスフィルターの表面とを含む面上に、複数のマイクロレンズを形成することと、前記複数のマイクロレンズの表面を覆う酸素遮断層を形成することと、を含んでもよい。
【0020】
上記各構成によれば、酸素遮断層によって赤外光カットフィルターに酸化源が到達することが抑えられるため、赤外光カットフィルターが酸化されにくくなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、エッチング対象の下層における表面性状の変化に起因する機能の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1実施形態の固体撮像素子における構造を示す分解斜視図。
【
図2】第1実施形態における固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図。
【
図3】第1実施形態における固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図。
【
図4】第1実施形態における固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図。
【
図5】第1実施形態における固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図。
【
図6】第1実施形態における固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図。
【
図7】第1実施形態における固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図。
【
図8】第1実施形態における固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図。
【
図9】第1実施形態における固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図。
【
図10】第1実施形態における固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図。
【
図11】第1実施形態の変形例における固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図。
【
図12】第1実施形態の変形例における固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図。
【
図13】第2実施形態における固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図。
【
図14】第2実施形態における固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図。
【
図15】第2実施形態における固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図。
【
図16】第2実施形態における固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図。
【
図17】第2実施形態における固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図。
【
図18】第3実施形態における固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図。
【
図19】第3実施形態における固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図。
【
図20】第4実施形態における固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図。
【
図21】第4実施形態における固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図。
【
図22】第4実施形態における固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図。
【
図23】第4実施形態における固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図。
【
図24】第4実施形態における固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図。
【
図25】第4実施形態における固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図。
【
図26】第4実施形態における固体撮像素子の製造方法を説明するための工程図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1実施形態]
図1から
図12を参照して、固体撮像素子用フィルターの製造方法、および、固体撮像素子の製造方法における第1実施形態を説明する。以下では、固体撮像素子、および、固体撮像素子の製造方法を順に説明する。なお、本実施形態において、赤外光は、0.7μm以上1mm以下の範囲に含まれる波長を有した光であり、近赤外光は、赤外光のなかで特に700nm以上1100nm以下の範囲に含まれる波長を有した光である。
【0024】
[固体撮像素子]
図1を参照して、固体撮像素子を説明する。
図1は、固体撮像素子の一部における各層を分離して示す概略構成図である。
【0025】
図1が示すように、固体撮像素子10は、固体撮像素子用フィルター10F、および、複数の光電変換素子11を備える。複数の光電変換素子11は、赤色用光電変換素子11R、緑色用光電変換素子11G、青色用光電変換素子11B、および、赤外光用光電変換素子11Pを備える。
【0026】
固体撮像素子10は、複数の赤色用光電変換素子11R、複数の緑色用光電変換素子11G、複数の青色用光電変換素子11B、および、複数の赤外光用光電変換素子11Pを備える。複数の赤外光用光電変換素子11Pは、赤外光の強度を測定する。なお、
図1では、図示の便宜上、固体撮像素子10における光電変換素子11の繰り返し単位が示されている。
【0027】
固体撮像素子用フィルター10Fは、複数の可視光用フィルター、赤外光パスフィルター12P、エッチングストッパー層13、赤外光カットフィルター14、酸素遮断層15、複数の可視光用マイクロレンズ、および、赤外光用マイクロレンズ16Pを備える。
【0028】
可視光用カラーフィルターは、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bから構成される。赤色用フィルター12Rは、赤色用光電変換素子11Rに対して光の入射側に位置する。緑色用フィルター12Gは、緑色用光電変換素子11Gに対して光の入射側に位置する。青色用フィルター12Bは、青色用光電変換素子11Bに対して光の入射側に位置する。
【0029】
赤外光パスフィルター12Pは、赤外光用光電変換素子11Pに対して光の入射側に位置する。赤外光パスフィルター12Pは、赤外光用光電変換素子11Pが検出し得る可視光を赤外光用光電変換素子11Pに対してカットする。これによって、赤外光用光電変換素子11Pによる赤外光の検出精度が高められる。赤外光用光電変換素子11Pが検出し得る赤外光は、例えば近赤外光である。
【0030】
エッチングストッパー層13は、各色用フィルター12R,12G,12Bに対して光の入射側に位置する。エッチングストッパー層13は、貫通孔13Hを備える。エッチングストッパー層13が広がる平面と対向する視点から見て、貫通孔13Hが区画する領域内には、赤外光パスフィルター12Pが位置する。一方で、エッチングストッパー層13が広がる平面と対向する視点から見て、エッチングストッパー層13は、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12B上に位置する。
【0031】
赤外光カットフィルター14は、エッチングストッパー層13に対して光の入射側に位置する。赤外光カットフィルター14は、貫通孔14Hを備える。赤外光カットフィルター14が広がる平面と対向する視点から見て、貫通孔14Hが区画する領域内には、赤外光パスフィルター12Pが位置する。一方で、赤外光カットフィルター14が広がる平面と対向する視点から見て、赤外光カットフィルター14は、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、青色用フィルター12B、および、エッチングストッパー層13上に位置する。
【0032】
酸素遮断層15は、赤外光カットフィルター14に対して光の入射側に位置する。酸素遮断層15は、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bに共通する層である。酸素遮断層15は、赤外光カットフィルター14に向けた酸化源の透過を抑える。酸化源は、例えば酸素および水などである。
【0033】
酸素遮断層15が有する酸素透過率は、例えば、5.0cc/m2/day/atom以下であることが好ましい。酸素透過率は、JIS K7126:2006に準拠した値である。酸素透過率が5.0cc/m2/day/atom以下に定められるから、酸素遮断層15によって赤外光カットフィルター14に酸化源が到達することが抑制される。そのため、赤外光カットフィルター14が酸化源によって酸化されにくくなる。これにより、赤外光カットフィルター14の耐光性を向上することが可能である。
【0034】
マイクロレンズは、赤色用マイクロレンズ16R、緑色用マイクロレンズ16G、青色用マイクロレンズ16B、および、赤外光用マイクロレンズ16Pから構成される。赤色用マイクロレンズ16Rは、赤色用フィルター12Rに対して光の入射側に位置する。緑色用マイクロレンズ16Gは、緑色用フィルター12Gに対して光の入射側に位置する。青色用マイクロレンズ16Bは、青色用フィルター12Bに対して光の入射側に位置する。赤外光用マイクロレンズ16Pは、赤外光パスフィルター12Pに対して光の入射側に位置する。
【0035】
各マイクロレンズ16R,16G,16B,16Pは、外表面である入射面16Sを備える。各マイクロレンズ16R,16G,16B,16Pは、入射面16Sに入る光を各光電変換素子11R,11G,11B,11Pに向けて集めるための屈折率差を外気との間において有する。各マイクロレンズ16R,16G,16B,16Pは、透明樹脂を含む。
【0036】
各色用フィルター12R,12G,12Bは、赤外光パスフィルター12Pよりも薄い。エッチングストッパー層13の厚さと赤外光カットフィルター14の厚さとの合計は、各色用フィルター12R,12G,12Bの厚さと、赤外光パスフィルター12Pの厚さとの差に相当する。赤外光パスフィルター12Pの厚さは、各色用フィルター12R,12G,12Bの厚さよりも大きい。一方で、赤外光パスフィルター12Pと、各色用フィルター12R,12G,12Bとの間での段差TPは、エッチングストッパー層13、および赤外光カットフィルター14によって埋められる。そのため、各色用マイクロレンズ16R,16G,16B、および、赤外光用マイクロレンズ16Pの下層における平坦性が得られやすい。
【0037】
[固体撮像素子の製造方法]
図2から
図10を参照して、固体撮像素子用フィルターを含む固体撮像素子の製造方法を説明する。
【0038】
固体撮像素子用フィルターの製造方法は、カラーフィルターを形成すること、エッチングストッパー層を形成すること、赤外光カット前駆層を形成すること、レジストパターンを形成すること、および、赤外光カットフィルターを形成することを含む。カラーフィルターを形成することでは、半導体基板上にカラーフィルターを形成する。エッチングストッパー層を形成することでは、カラーフィルターを有した半導体基板にエッチングストッパー層を形成する。赤外光カット前駆層を形成することでは、エッチングストッパー層上に、エッチングストッパー層とはドライエッチングにおけるエッチングレートが異なる赤外光カット前駆層を形成する。レジストパターンを形成することでは、赤外光カット前駆層のうちで、カラーフィルター上に位置する部分を覆うようにレジストパターンを形成する。赤外光カットフィルターを形成することでは、レジストパターンを用いて、赤外光カット前駆層をドライエッチングする。
【0039】
以下、図面を参照して、固体撮像素子用フィルターの製造方法、および、固体撮像素子の製造方法をより詳しく説明する。
図2から
図10は、固体撮像素子を構成する層が積層される方向に沿って固体撮像素子を切断したときの断面を模式的に示している。
【0040】
図2が示すように、固体撮像素子用フィルターの製造方法では、まず、半導体基板21を準備する。半導体基板21には、一つの画素に一つの光電変換素子が対応するように、複数の光電変換素子が二次元的に配置されている。なお、
図2から
図10では、2つの青色用光電変換素子と、3つの赤外光用光電変換素子の図示が省略されている。
図2から
図10において、青色用光電変換素子と赤外光用光電変換素子とが、1つの方向に沿って交互に並んでいる。半導体基板21を形成する材料は、例えば、Si、および、SiO
2などの酸化物、SiNなどの窒化物、および、これらの混合物などであってよい。
【0041】
そして、半導体基板21が有する青色用光電変換素子に対応する青色用フィルター12Bを半導体基板21上に形成する。青色用フィルター12Bは、青色用感光性樹脂を含む塗膜の形成、および、フォトリソグラフィー法を用いた塗膜のパターニングによって形成される。例えば、青色用感光性樹脂を含む塗膜は、青色用感光性樹脂を含む塗布液の塗布、および、塗膜の乾燥によって形成される。青色用フィルター12Bは、青色用感光性樹脂を含む塗膜に対し、青色用フィルター12Bの領域に相当する露光、および、現像を経て形成される。なお、半導体基板21上には、緑色用フィルター12G、および、赤色用フィルター12Rが、青色用フィルター12Bと同様の方法によって形成される。
【0042】
図3が示すように、青色用フィルター12Bを有した半導体基板21にエッチングストッパー層23を形成する。エッチングストッパー層23を形成する際には、まず、ケイ素を含む樹脂を用いて塗布液を作成する。ケイ素を含む樹脂は、例えばポリシロキサンなどであってよい。ポリシロキサンは、シロキサン結合の繰り返し構造から形成される。ポリシロキサンは、シリコーンであってよい。シリコーンは、ポリシロキサンであり、かつ、アルキル基およびアリール基などの有機基を含む。
【0043】
次に、青色用フィルター12B上、および、半導体基板21のうちで半導体基板21の表面が露出している部分に塗布液を塗布し、塗膜を乾燥させる。そして、乾燥した塗膜を加熱によって硬化させる。これにより、各色用カラーフィルター上、および、半導体基板21の表面における各色用カラーフィルターが位置しない部分に、エッチングストッパー層23が形成される。
【0044】
図4が示すように、エッチングストッパー層23上に、赤外光カット前駆層24を形成する。赤外光カット前駆層24を形成する際には、まず、赤外光吸収色素、透明樹脂、および、有機溶剤を含む塗布液をエッチングストッパー層23上に塗布し、塗膜を乾燥させる。次いで、乾燥した塗膜を加熱によって硬化させる。これにより、エッチングストッパー層23上に赤外光カット前駆層24が形成される。
【0045】
赤外光カット前駆層24を形成するための赤外光吸収色素は、例えば、アントラキノン系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ジチオール系色素、ジイモニウム系色素、スクアリリウム系色素、および、クロコニウム系色素などであってよい。赤外光吸収色素は、これら色素のうち、シアニン系色素およびフタロシアニン系色素であることが好ましい。
【0046】
赤外光カット前駆層24を形成するための透明樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、および、ノルボルネン系樹脂であってよい。透明樹脂は、これら樹脂のうち、アクリル系樹脂であることが好ましい。
【0047】
図5が示すように、赤外光カット前駆層24のうちで、青色用フィルター12B上に位置する部分を覆うレジストパターンRPを形成する。レジストパターンRPを形成する際には、まず、各色用カラーフィルター上にフォトレジスト層を形成する。フォトレジスト層を形成する材料には、ポジ型レジストを用いてもよいし、ネガ型レジストを用いてもよい。そして、フォトマスクを用いてフォトレジスト層の一部を露光する。この際に、フォトレジスト層がポジ型レジストから形成される場合には、フォトレジスト層のうちで、半導体基板21を覆う部分のみを露光する。これに対して、フォトレジスト層がネガ型レジストから形成される場合には、フォトレジスト層のうちで、各色用カットフィルターを覆う部分のみを露光する。次いで、フォトレジスト層を現像する。これにより、赤外光カット前駆層24のうちで、カラーフィルター上に形成された部分のみを覆うレジストパターンRPが形成される。
【0048】
図6が示すように、レジストパターンRPを用いて赤外光カット前駆層24をドライエッチングすることによって、赤外光カットフィルター14を形成する。また、パターニングされたエッチングストッパー層13を形成する。ドライエッチングは、例えば、プラズマエッチングであってよい。ドライエッチングでは、エッチングガスとして、反応性ガスと希ガスとを用いることが可能である。反応性ガスは例えば酸素ガスであってよく、また、希ガスは例えばアルゴンガスであってよい。赤外光カット前駆層24のドライエッチングでは、赤外光カット前駆層24を含むエッチング対象物にバイアスを印加することが可能である。バイアスの印加により、レジストパターンRPを用いた異方性エッチングが可能である。これにより、赤外光カット前駆層24、および、エッチングストッパー層23の各々のうちで、半導体基板21の表面上に位置する部分を取り除く。
【0049】
エッチングストッパー層23のエッチングレートは、赤外光カット前駆層24のエッチングレートとは異なる。エッチングレートは、単位時間当たりにエッチングされる各層の厚さである。エッチングストッパー層23のエッチングレートは、赤外光カット前駆層24のエッチングレートよりも低くてもよいし、高くてもよい。エッチングストッパー層23のエッチングレートは、赤外光カット前駆層24のエッチングレートよりも低いことが好ましい。これにより、エッチングストッパー層23のエッチングレートが、赤外光カット前駆層24のエッチングレートよりも高い場合に比べて、エッチングストッパー層23において不要である部分をエッチングするために要する時間を長くすることが可能である。これにより、エッチングストッパー層23の下層に対してエッチャントを衝突しにくくするように、エッチングの時間を調整することが容易である。
【0050】
固体撮像素子用フィルターの製造では、赤外光カット前駆層24を除いた位置に赤外光パスフィルター12Pを形成するため、赤外光カット前駆層24のエッチングにおいてオーバーエッチングをすることによって、赤外光カット前駆層24の不要部分については、実質的に当該部分の全てを除去することが求められる。この点で、エッチングストッパー層23を備える構成によれば、赤外光カット前駆層24のオーバーエッチングによって赤外光カット前駆層24の一部を取り除くとしても、赤外光カット前駆層24の下層にはエッチングストッパー層23が位置するため、半導体基板21に対するエッチャントの衝突が抑えられる。これによって、半導体基板21の表面性状が変化することに起因する固体撮像素子10の機能の低下が抑えられる。
【0051】
なお、エッチングストッパー層23のうちで、半導体基板21の表面上に位置する部分を実質的に完全に除去する上では、エッチングストッパー層23のエッチングレートは、エッチングストッパー層23の下層のエッチングレートと互いに異なることが好ましい。本実施形態では、エッチングストッパー層23のエッチングレートは、エッチングストッパー層23の下層である半導体基板21のエッチングレートと互いに異なることが好ましい。
【0052】
図7が示すように、剥離液LMを用いてレジストパターンRPを赤外光カットフィルター14から剥離する。剥離液LMには、レジストパターンRPを形成する材料を溶解することができる液体を用いることができる。剥離液LMには、例えば、N‐メチルピロリドン、または、ジメチルスルホキシドを用いることができる。なお、
図7では、レジストパターンRPと剥離液LMとを接触させる方法としてディップ法を例示しているが、レジストパターンRPと剥離液LMとを接触させる方法には、スプレー式およびスピン式を用いることも可能である。
【0053】
図8が示すように、半導体基板21のうち、赤外光用光電変換素子が位置する部分の上に赤外光パスフィルター12Pを形成する。赤外光パスフィルター12Pは、着色感光性樹脂を含む塗膜の形成、および、フォトリソグラフィー法を用いた塗膜のパターニングによって形成される。着色感光性樹脂を含む塗膜は、例えば、赤外光用感光性樹脂を含む塗布液の塗布、および、塗膜の乾燥によって形成される。
【0054】
赤外光用感光性樹脂は、黒色色素または黒色染料と、感光性樹脂を含む。黒色色素は、単一で黒色を有する色素、あるいは、2種以上の色素によって黒色を有する混合物である。黒色染料は、例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、アジン系染料、キノリン系染料、ペリノン系染料、ペリレン系染料、および、メチン系染料などであってよい。透明樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、および、ノルボルネン系樹脂であってよい。
【0055】
赤外光パスフィルター12Pを形成する材料は、屈折率を調整するための無機酸化物の粒子を含有可能である。無機酸化物は、例えば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化チタンである。赤外光パスフィルター12Pは、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤などの他の機能を兼ね備えるための添加物を含有可能である。
【0056】
赤外光パスフィルター12Pは、赤外光用感光性樹脂を含む塗膜に対し、赤外光パスフィルター12Pの領域に相当する露光、および、現像を経て形成される。赤外光パスフィルター12Pは、青色用フィルター12B、エッチングストッパー層13、および、赤外光カットフィルター14から形成される積層体の厚さと等しい厚さを有することが好ましい。
【0057】
図9が示すように、半導体基板21が広がる平面と対向する視点から見て、赤外光カットフィルター14の表面と赤外光パスフィルター12Pの表面とを覆う酸素遮断層15を形成する。酸素遮断層15は、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法などの気相成膜法、あるいは、塗布法などの液相成膜法を用いた成膜によって形成される。例えば、酸化珪素から形成される酸素遮断層15は、酸化珪素からなるターゲットを用いたスパッタリング法による成膜を経て形成される。例えば、酸化珪素から形成される酸素遮断層15は、シランと酸素とを用いたCVD法による成膜を経て形成される。例えば、酸化珪素から構成される酸素遮断層15は、ポリシラザンを含む塗布液の塗布、改質、および、塗膜の乾燥によって形成される。
【0058】
図10が示すように、酸素遮断層15上に複数のマイクロレンズ16を形成する。これにより、固体撮像素子用フィルターを備える固体撮像素子を得ることができる。複数のマイクロレンズ16は、酸素遮断層15が広がる平面と対向する視点から見て、カラーフィルター、および、赤外光パスフィルター12Pと重なる位置に形成される。各マイクロレンズ16は、例えばエッチバック法を用いて形成される。エッチバック法では、まず、マイクロレンズ16を形成するための透明樹脂層を形成する。次いで、透明樹脂層上に複数の半球が並ぶ形状を有したレジストパターンを形成する。そして、レジストパターンを用いた透明樹脂層のドライエッチングによって、レジストパターンが有する形状を透明樹脂層に転写することによって、複数のマイクロレンズ16を形成する。
【0059】
これにより、
図1を参照して先に説明した固体撮像素子10を、1つの半導体基板21に対して複数形成することが可能である。
以上説明したように、第1実施形態の固体撮像素子用フィルターの製造方法、および、固体撮像素子の製造方法によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
【0060】
(1)赤外光カット前駆層24のオーバーエッチングによって赤外光カット前駆層24の一部を取り除くとしても、赤外光カット前駆層24の下層にはエッチングストッパー層23が位置するため、エッチングストッパー層23の下層に対するエッチャントの衝突が抑えられる。これによって、エッチング対象である赤外光カット前駆層24の下層における表面性状が変化することに起因する固体撮像素子10の機能の低下が抑えられる。
【0061】
(2)酸素遮断層15によって赤外光カットフィルター14に酸化源が到達することが抑えられるため、赤外光パスフィルター12Pが酸化されにくくなる。
【0062】
[第1実施形態の変更例]
なお、上述した第1実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[酸素遮断層]
・酸素遮断層15は、赤外光カットフィルター14、および、赤外光パスフィルター12Pと、各マイクロレンズ16との間に限らず、各マイクロレンズ16の外表面に位置してもよい。
【0063】
この場合には、
図11が示すように、赤外光カットフィルター14の表面と赤外光パスフィルター12Pの表面とを含む面上に、複数のマイクロレンズ26を形成する。各マイクロレンズ26は、各色用カラーフィルター、および、赤外光パスフィルター12Pのうちのいずれか1つを覆う。
図12が示すように、複数のマイクロレンズ26の表面を覆う酸素遮断層25を形成する。酸素遮断層25は、反射防止層としての機能を有していてもよい。
【0064】
・固体撮像素子用フィルター10Fは酸素遮断層15を備えていなくてもよい。この場合であっても、半導体基板21の表面を覆うエッチングストッパー層23上に赤外光カット前駆層24を形成することによって、上述した(1)に準じた効果を得ることは可能である。
【0065】
・酸素遮断層25の層構造は、単一の化合物からなる単層構造でもよいし、単一の化合物からなる層の積層構造であってもよいし、互いに異なる化合物からなる層の積層構造でもよい。
【0066】
・赤外光カットフィルター14の表面と、赤外光パスフィルター12Pの表面とは、半導体基板21の厚さ方向において、段差を有してもよい。この場合には、酸素遮断層15は、赤外光カットフィルター14の表面と赤外光パスフィルター12Pの表面が形成する段差を埋める平坦化層として機能してもよい。なお、酸素遮断層15は、赤外光カットフィルター14の表面と赤外光パスフィルター12Pの間の段差を埋めることが可能な厚さを有することによって、平坦化層として機能することが可能である。
【0067】
[赤外光パスフィルター]
・赤外光パスフィルター12Pの厚さは、各色用フィルターの厚さと互いに等しくてもよい。この場合には、固体撮像素子において、酸素遮断層15が、赤外光パスフィルター12Pの表面と、赤外光カットフィルター14の表面との間の段差を埋めてもよい。あるいは、固体撮像素子は、赤外光パスフィルター12Pの表面と、赤外光カットフィルター14の表面との間の段差を埋める平坦化層を酸素遮断層15とは別に備えてもよい。
【0068】
[エッチングストッパー層]
・エッチングストッパー層23のうちで、半導体基板21の表面上に形成された部分は、完全に除去されなくてもよい。この場合であっても、エッチングストッパー層23が透明樹脂から形成されることによって、固体撮像素子に入射した光はエッチングストッパー層23を介して光電変換素子に入射することが可能である。
【0069】
[第2実施形態]
図13から
図17を参照して、固体撮像素子用フィルターの製造方法、および、固体撮像素子の製造方法の第2実施形態を説明する。第2実施形態において、エッチングストッパー層を形成する前に、半導体基板のうちで、カラーフィルターが位置しない部分に赤外光パスフィルターを形成する点が、第1実施形態とは異なる。そのため以下では、こうした相違点を詳しく説明し、第2実施形態において第1実施形態と共通する工程の詳しい説明を省略する。なお、第2実施形態において第1実施形態と共通する構成には、第1実施形態において用いた符号と同一の符号を付す。
【0070】
図13が示すように、半導体基板21のうちで、半導体基板21が有する青色用光電変換素子に対応する位置に青色用フィルター12Bを形成し、赤外光用光電変換素子に対応する位置に、赤外光パスフィルター12Pを形成する。このとき、赤外光パスフィルター12Pの厚さが青色用フィルター12Bの厚さよりも厚くなるように、各フィルターを形成する。
【0071】
なお、青色用フィルター12Bを含む各色用カラーフィルターを赤外光パスフィルター12Pよりも先に形成してもよいし、赤外光パスフィルター12Pを各色用カラーフィルターよりも先に形成してもよい。また、各色用カラーフィルターおよび赤外光パスフィルター12Pの各々は、上述した第1実施形態の各色用フィルターおよび赤外光パスフィルター12Pと同様の方法によって形成される。
【0072】
図14が示すように、青色用フィルター12B、および、赤外光パスフィルター12Pを有した半導体基板21にエッチングストッパー層33を形成する。これにより、各色用カラーフィルター上、および、赤外光パスフィルター12P上にエッチングストッパー層33が形成される。エッチングストッパー層33は、上述した第1実施形態のエッチングストッパー層23と同様の方法によって形成される。
【0073】
図15が示すように、エッチングストッパー層33上に赤外光カット前駆層34を形成する。これにより、エッチングストッパー層33において、青色用フィルター12B上、および、赤外光パスフィルター12P上に位置する部分の両方に赤外光カット前駆層34が形成される。赤外光カット前駆層34は、上述した第1実施形態の赤外光カット前駆層24と同様の方法によって形成される。
【0074】
図16が示すように、赤外光カット前駆層34のうちで、各色用カラーフィルター上に位置する部分を覆うレジストパターンRPを形成する。レジストパターンRPを形成する際には、まず、赤外光カット前駆層34上にフォトレジスト層を形成する。フォトレジスト層を形成する材料には、第1実施形態と同様、ポジ型レジストを用いてもよいし、ネガ型レジストを用いてもよい。そして、フォトマスクを用いてフォトレジスト層の一部を露光する。この際に、フォトレジスト層がポジ型レジストから形成される場合には、赤外光カット前駆層34のうちで、赤外光パスフィルター12Pを覆う部分のみを露光する。これに対して、フォトレジスト層がネガ型レジストから形成される場合には、フォトレジスト層のうちで、各色用カラーフィルターを覆う部分のみを露光する。次いで、フォトレジスト層を現像する。これにより、赤外光カット前駆層34のうちで、各色用カラーフィルター上に形成された部分のみを覆うレジストパターンRPが形成される。
【0075】
図17が示すように、レジストパターンRPを用いて赤外光カット前駆層34をドライエッチングすることによって、赤外光カットフィルター14を形成する。また、パターニングされたエッチングストッパー層13を形成する。レジストパターンRPをエッチングマスクとして用いたエッチングによって、赤外光カット前駆層34、および、エッチングストッパー層33の各々について、赤外光パスフィルター12P上に位置する部分を各層から取り除く。
【0076】
本実施形態では、赤外光パスフィルター12P上に赤外光カット前駆層34の一部が位置するため、赤外光パスフィルター12Pの機能を十分に発現させるためには、赤外光パスフィルター12P上に位置する赤外光カット前駆層34の一部を、実質的に完全に除去することが必要とされる。この点で、赤外光パスフィルター12Pと赤外光カット前駆層34との間にはエッチングストッパー層33が位置する。これにより、赤外光カット前駆層34を取り除くために赤外光カット前駆層34をオーバーエッチングしたとしても、エッチングストッパー層33が、赤外光パスフィルター12Pの表面性状の変化を抑え、結果として、赤外光パスフィルター12Pの表面性状の変化に起因する固体撮像素子の機能の低下が抑えられる。
【0077】
なお、エッチングストッパー層33のうちで、赤外光パスフィルター12P上に位置する部分を実質的に完全に除去する上では、エッチングストッパー層33のエッチングレートは、赤外光パスフィルター12Pのエッチングレートと互いに異なることが好ましい。
【0078】
赤外光カットフィルター14を形成した後には、上述した第1実施形態において
図7から
図10を参照して説明した工程と同様の工程を経ることによって、固体撮像素子が製造される。
【0079】
以上説明したように、第2実施形態の固体撮像素子用フィルターの製造方法、および、固体撮像素子の製造方法によれば、上述した(1)および(2)と同等の効果を得ることができる。
【0080】
[第2実施形態の変更例]
なお、上述した第2実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
・第2実施形態によって開示された構成は、第1実施形態における酸素遮断層の各変更例、および、エッチングストッパー層の変更例によって開示された構成と組み合わせて実施することが可能である。
【0081】
[第3実施形態]
図18および
図19を参照して、固体撮像素子用フィルターの製造方法、および、固体撮像素子の製造方法の第3実施形態を説明する。第3実施形態において、カラーフィルターおよび赤外光カットフィルターを覆う隔壁を形成する点が、第1実施形態とは異なる。そのため以下では、こうした相違点を詳しく説明し、第3実施形態において第1実施形態と共通する工程の詳しい説明を省略する。なお、第3実施形態において第1実施形態と共通する構成には、第1実施形態において用いた符号と同一の符号を付す。
【0082】
本実施形態の固体撮像素子の製造方法では、まず、上述した第1実施形態において、
図2から
図5を参照して説明された工程によって、半導体基板21上に、青色用フィルター12B、エッチングストッパー層23、赤外光カット前駆層24、および、レジストパターンRPを形成する。
【0083】
次いで、
図18が示すように、半導体基板21の表面のうちで、青色用フィルター12Bが位置しない部分の上に形成されたエッチングストッパー層23、および、赤外光カット前駆層24をドライエッチングによって取り除く。第1実施形態と同様、赤外光カット前駆層24のドライエッチングでは、エッチングガスからプラズマを生成する。これにより、プラズマ中のエッチャントEが、まずは、赤外光カット前駆層24に衝突し、次いで、赤外光カット前駆層24の下層であるエッチングストッパー層23に衝突する。これによって、少なくともエッチングストッパー層23がエッチャントEによってスパッタされて、エッチングストッパー層23から粒子が放出される。エッチングストッパー層23から放出された粒子の少なくとも一部は、青色用フィルター12Bの側面、青色用フィルター12B上に位置するエッチングストッパー層23の側面、および、赤外光カット前駆層24のうちで、青色用フィルター12B上に位置する部分の側面に付着する。
【0084】
これにより、
図19が示すように、青色用フィルター12Bの側面、エッチングストッパー層13の側面、および、赤外光カットフィルター14の側面を覆う隔壁47が形成される。隔壁47は、隔壁47に隣り合う層との界面において入射光を反射する。すなわち、隔壁47は、青色用フィルター12Bの側面と隔壁47の一部との界面において、屈折率の差によって、隔壁47に入射した光を反射する。また、隔壁47は、エッチングストッパー層13の側面と隔壁47の一部との界面において、屈折率の差によって、隔壁47に入射した光を反射する。また、隔壁47は、赤外光カットフィルター14の側面と隔壁47の一部との界面において、屈折率の差によって、隔壁47に入射した光を反射する。
【0085】
これにより、赤外光カットフィルター14に対して斜め上方から入射した光が、赤外光カットフィルター14の外部に透過することが、隔壁47によって抑えられる。そのため、赤外光カットフィルター14の下層に位置する青色用光電変換素子に入射する光における光量の低下が抑えられる。また、青色用フィルター12Bに対して斜め上方から入射した光が、青色用フィルター12Bの外部に透過することが、隔壁47によって抑えられる。そのため、青色用フィルター12Bの下層に位置する青色用光電変換素子に入射する光における光量の低下が抑えられる。さらには、青色用フィルター12Bに入射した光が、他のフィルターに対応する光電変換素子に受光されることが抑えられる。
【0086】
隔壁47は、赤外光カット前駆層24の形成材料、エッチングストッパー層23の形成材料、赤外光カット前駆層24の形成材料とエッチャントEとの反応生成物、および、エッチングストッパー層23の形成材料とエッチャントEとの反応生成物における少なくとも1つを含むことができる。
【0087】
本実施形態の固体撮像素子の製造方法では、隔壁47が形成された後に、上述した第1実施形態において、
図7から
図10を参照して先に説明された工程を経ることによって、固体撮像素子が製造される。なお、
図7を参照して先に説明した工程では、剥離液LMが赤外光カットフィルター14に接することによって、赤外光カットフィルター14が含む赤外光吸収色素が、剥離液LMに溶出することがある。この点で、本実施形態の固体撮像素子の製造方法では、剥離液LMを用いてレジストパターンRPを剥離する際に、赤外光カットフィルター14の側面が隔壁47の一部によって覆われているため、赤外光カットフィルター14のうちで、剥離液LMに接する面積を小さくすることが可能である。これにより、赤外光カットフィルター14が含む赤外光吸収色素が、剥離液LMに溶出することが抑えられる。
【0088】
なお、エッチングストッパー層23がポリシロキサンから形成される場合には、隔壁47がポリシロキサン、および、ポリシロキサンとエッチャントEとの反応生成物の少なくとも一方を含むことによって、赤外光吸収色素の溶出をさらに生じにくくすることが可能である。
【0089】
隔壁47の厚さは、赤外光カット前駆層24およびエッチングストッパー層23のエッチングにおける各種の条件を調整することによって変更が可能である。隔壁47の厚さは、例えば、赤外光カット前駆層24およびエッチングストッパー層23を含むエッチング対象物に印加するバイアスの大きさによって調整することが可能である。エッチング対象物に印加されるバイアスが大きいほど、隔壁47の厚さは厚くなる傾向を有する。エッチング対象物に印加するバイアスが大きいほど、エッチング対象物に衝突するエッチャントのエネルギーが高いため、赤外光カット前駆層24およびエッチングストッパー層23から、隔壁47を形成するための粒子が放出されやすくなる。
【0090】
また、隔壁47の厚さは、例えばドライエッチングが行われる雰囲気の圧力の大きさによって調整することが可能である。圧力の大きさが変わることによって、エッチング対象物に衝突可能なエッチャントの量が変わる。また、圧力の大きさが変わることによって、赤外光カット前駆層24およびエッチングストッパー層23から放出された粒子が、雰囲気中に存在する粒子と衝突する状態が変わる。ドライエッチングが行われる雰囲気の圧力は、例えば、0.1Pa以上3.0Pa以下であってよい。これにより、赤外光カットフィルター14の側面、および、各色用カラーフィルターの側面に隔壁47が形成されやすい。
【0091】
また、隔壁47の厚さは、赤外光カット前駆層24の厚さ、および、エッチングストッパー層23の厚さによって調整することが可能である。赤外光カット前駆層24の厚さ、および、エッチングストッパー層23の厚さの各々が厚くなるほど、隔壁47の厚さは厚くなる傾向を有する。
【0092】
以上説明したように、第3実施形態の固体撮像素子用フィルターの製造方法、および、固体撮像素子の製造方法によれば、上述した(1)および(2)の効果に加えて、以下に列挙する効果を得ることができる。
【0093】
(3)カラーフィルターに入射した光が、カラーフィルターの側面からカラーフィルターの外部に透過することが隔壁47によって抑えられる。そのため、当該カラーフィルターに対応する光電変換素子に入射する光における光量の低下を抑えることができる。
【0094】
(4)赤外光カットフィルター14に入射した光が、赤外光カットフィルター14の側面から赤外光カットフィルター14の外部に透過することも隔壁47によって抑えられる。そのため、赤外光カットフィルター14の下層であるカラーフィルターを介した光が入射する光電変換素子に入射する光における光量の低下をさらに抑えることができる。
【0095】
(5)ポリシロキサン、および、ポリシロキサンとエッチャントとの反応生成物の少なくとも一方を含む隔47壁が、剥離液が赤外光カットフィルター14に接することを抑える。そのため、赤外光カットフィルター14が含む赤外光吸収色素が剥離液に溶出することが、隔壁47によって抑えられる。
【0096】
[第3実施形態の変更例]
なお、上述した第3実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[隔壁]
・隔壁47は、カラーフィルターの側面を覆う一方で、赤外光カットフィルター14の側面を覆わなくてもよい。この場合であっても、上述した(3)に準じた効果を得ることは可能である。
【0097】
[その他の変更例]
・第3実施形態において開示された構成は、第1実施形態における酸素遮断層の各変更例、および、エッチングストッパー層の変更例によって開示された構成と組み合わせて実施することが可能である。
【0098】
[第4実施形態]
図20から
図26を参照して、固体撮像素子用フィルターの製造方法、および、固体撮像素子の製造方法の第4実施形態を説明する。第4実施形態において、エッチングストッパー層を形成する前に、半導体基板のうちで、カラーフィルターが位置しない部分に赤外光パスフィルターを形成し、かつ、赤外光カットフィルターの側面を覆う隔壁を形成する点が、第1実施形態とは異なる。そのため以下では、こうした相違点を詳しく説明し、第4実施形態において第1実施形態と共通する工程の詳しい説明を省略する。なお、第4実施形態において第1実施形態と共通する構成には、第1実施形態において用いた符号と同一の符号を付す。
【0099】
図20が示すように、半導体基板21における青色用光電変換素子が位置する部分に青色用フィルター12Bを形成する。また、半導体基板21における赤外光用光電変換素子が位置する部分に赤外光パスフィルター12Pを形成する。このとき、本実施形態では、赤外光パスフィルター12Pの厚さが青色用フィルター12Bの厚さと等しくなるように、赤外光パスフィルター12Pおよび青色用フィルター12Bを形成する。青色用フィルター12Bおよび赤外光パスフィルター12Pは、上述した第1実施形態における青色用フィルター12Bおよび赤外光パスフィルター12Pと同様の方法によって形成される。
【0100】
図21が示すように、青色用フィルター12B、および、赤外光パスフィルター12Pを有した半導体基板21にエッチングストッパー層53を形成する。これにより、青色用フィルター12B上、および、赤外光パスフィルター12P上にエッチングストッパー層53が形成される。エッチングストッパー層53は、上述した第1実施形態におけるエッチングストッパー層23と同様の方法によって形成される。
【0101】
図22が示すように、エッチングストッパー層53上に赤外光カット前駆層54を形成する。赤外光カット前駆層54のうちで、青色用フィルター12B上に位置する部分が第1部分54aであり、赤外光パスフィルター12P上に位置する部分が第2部分54bである。本実施形態において、赤外光パスフィルター12Pの厚さが青色用フィルター12Bの厚さと等しいため、第1部分54aの表面が、赤外光カット前駆層54の厚さ方向において、第2部分54bの表面と等しい高さに位置するように赤外光カット前駆層54が形成される。赤外光カット前駆層54は、第1実施形態における赤外光カット前駆層24と同様の方法によって形成される。
【0102】
図23が示すように、赤外光カット前駆層54のうちで、第1部分54aのみを覆うレジストパターンを形成する。レジストパターンRPを形成する際には、まず、赤外光カット前駆層54上にフォトレジスト層を形成する。フォトレジスト層を形成する材料には、ポジ型レジストを用いてもよいし、ネガ型レジストを用いてもよい。そして、フォトマスクを用いてフォトレジスト層の一部を露光する。この際に、フォトレジスト層がポジ型レジストから形成される場合には、フォトレジスト層のうちで第2部分54b上に位置する部分のみを露光する。これに対して、フォトレジスト層がネガ型レジストから形成される場合には、フォトレジスト層のうちで第1部分54a上に位置する部分のみを露光する。次いで、フォトレジスト層を現像する。これにより、第1部分54aのみを覆うレジストパターンRPが形成される。
【0103】
図24が示すように、レジストパターンRPを用いて赤外光カット前駆層54をドライエッチングすることによって、赤外光カットフィルター14を形成する。レジストパターンRPを用いたドライエッチングによって、赤外光パスフィルター12P上から赤外光カット前駆層54の第2部分54b、および、エッチングストッパー層53のうちで第2部分54bに覆われた部分を取り除く。上述した第3実施形態と同様、ドライエッチングでは、プラズマ中に含まれるエッチャントEがエッチングストッパー層53、および、赤外光カット前駆層54に衝突する。これにより、第2部分54b、および、エッチングストッパー層53のうちで第2部分54bに覆われた部分が取り除かれる。
【0104】
この際に、第3実施形態と同様、少なくともエッチングストッパー層53がエッチャントEによってスパッタされて、エッチングストッパー層53から粒子が放出される。エッチングストッパー層53から放出された粒子の少なくとも一部は、赤外光カット前駆層54の第1部分54aにおける側面に付着する。
【0105】
これにより、
図25が示すように、赤外光カットフィルター14の側面を覆う隔壁57が形成される。隔壁57は、隔壁57に隣り合う層との界面において入射光を反射する。すなわち、隔壁57は、赤外光カットフィルター14の側面と隔壁57の一部との界面において、屈折率の差によって、隔壁57に入射した光を反射する。これにより、赤外光カットフィルター14に対して斜め上方から入射した光が、赤外光カットフィルター14の外部に透過することが、隔壁57によって抑えられる。そのため、赤外光カットフィルター14の下層に位置する青色用光電変換素子に入射する光における光量の低下が抑えられる。
【0106】
隔壁57は、第3実施形態と同様、赤外光カット前駆層54の形成材料、エッチングストッパー層53の形成材料、赤外光カット前駆層54の形成材料とエッチャントEとの反応生成物、および、エッチングストッパー層53の形成材料とエッチャントEとの反応生成物における少なくとも1つを含むことができる。本実施形態の隔壁57によっても、第3実施形態の隔壁47と同様、赤外光カットフィルター14が含む赤外光吸収色素が、剥離液LMに溶出することが抑えられる。
【0107】
図26が示すように、赤外光カットフィルター14からレジストパターンRPを剥離した後に、半導体基板21が広がる平面と対向する視点から見て、赤外光パスフィルター12Pの表面、赤外光カットフィルター14の表面、および、隔壁57を覆う平坦化層58を形成する。平坦化層58は、赤外光パスフィルター12Pの表面と赤外光カットフィルター14の表面との間の段差を埋めることが可能な厚さを有している。平坦化層58は、例えば、透明樹脂を含む塗膜の形成、および、熱処理によるリフローによって形成される。
【0108】
次いで、第1実施形態において
図9および
図10を参照して先に説明した工程を経ることによって、固体撮像素子を得ることができる。
以上説明したように、第4実施形態における固体撮像素子用フィルターの製造方法、および、固体撮像素子の製造方法によれば、上述した(1)、(2)、(4)、および、(5)の効果に加えて、以下に記載の効果を得ることができる。
【0109】
(6)第1部分54aの表面が、赤外光カット前駆層54の厚さ方向において、第2部分54bの表面と等しい高さに位置するため、赤外光カットフィルター14の側面全体に隔壁57が形成されやすくなる。これにより、隔壁57によって赤外光カットフィルター14に入射した光が、赤外光カットフィルター14を透過して赤外光パスフィルター12Pに入射することを抑える確実性が高まる。
【0110】
(7)カラーフィルターの厚さ以下の厚さを有した赤外光パスフィルター12Pを形成することによって、赤外光カットフィルター14の側面全体に隔壁57を形成することが可能である。
【0111】
[第4実施形態の変更例]
なお、上述した第4実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[赤外光パスフィルター]
・赤外光パスフィルター12Pの厚さは、各色用カラーフィルターの厚さよりも薄くてもよい。これにより、赤外光カット前駆層54において、第1部分54aの表面が、第2部分54bの表面よりも高くなる。結果として、赤外光カットフィルター14の側面全体に隔壁57が形成される確実性を高めることが可能である。
【0112】
・赤外光パスフィルター12Pの厚さは、各色用カラーフィルターの厚さよりも厚くてもよい。この場合であっても、各色用カラーフィルターの厚さ、エッチングストッパー層53の厚さ、および、赤外光カット前駆層54の厚さを加算した総厚が、赤外光パスフィルター12Pの厚さよりも厚ければよい。これにより、赤外光カットフィルター14の側面のうちで、赤外光パスフィルター12Pよりも突き出た部分には、隔壁57を形成することが可能である。
【0113】
[その他の変更例]
・第4実施形態において開示された構成は、第1実施形態における酸素遮断層の各変更例、および、エッチングストッパー層の変更例によって開示された構成と組み合わせて実施することが可能である。
【0114】
[実施例]
以下、第4実施形態に対応する固体撮像素子の製造例を説明する。なお、以下に説明する製造例では、赤外光パスフィルターの厚さが、各色用カラーフィルターの厚さよりも厚い場合における固体撮像素子の製造例を説明する。
【0115】
複数の光電変換素子が二次元的に配置された半導体基板上に、緑色顔料、感光性硬化樹脂、および、熱硬化性樹脂を含む緑色用レジストを1000rpmの回転数でスピンコートした緑色用レジスト層を形成した。緑色顔料には、カラーインデックスにおけるC.I.PG58を用いた。緑色用レジストにおいて、緑色顔料の濃度を70質量%に設定した。次に、緑色用マスクを用いて緑色用レジスト層を選択的に露光した後に、露光後の緑色用レジスト層を現像することによって、緑色用フィルターパターンを形成した。そして、緑色用フィルターパターンを、ホットプレートを用いて230℃において6分間加熱することによって硬化させた。これにより、600nmの厚さを有した緑色用フィルターを形成した。
【0116】
次に、緑色用フィルター、および、半導体基板のうちで緑色用フィルターによって覆われていない部分に、顔料、感光性硬化樹脂、および、熱硬化性樹脂を含む青色用レジストを1000rpmの回転数でスピンコートした青色用レジスト層を形成した。顔料には、カラーインデックスにおけるC.I.PB156、および、C.I.PV23を用いた。青色用レジストにおいて、青色顔料の濃度を50質量%に設定した。次に、青色用マスクを用いたフォトリソグラフィーにより青色用レジスト層を選択的に露光した後に、露光後の青色用レジスト層を現像することによって、青色用フィルターパターンを形成した。そして、青色用フィルターパターンを、ホットプレートを用いて230℃において6分間加熱することによって硬化させた。これにより、600nmの厚さを有した青色用カラーフィルターを形成した。この際に、青色用フィルターを半導体基板の表面のうちで、緑色用フィルターが形成されている位置とは異なる位置に形成した。
【0117】
そして、緑色用フィルター上、青色用フィルター上、および、半導体基板のうちでこれらフィルターに覆われていない部分に、顔料、感光性硬化樹脂、および、熱硬化性樹脂を含む赤色用レジストを1000rpmの回転数でスピンコートした赤色用レジスト層を形成した。顔料には、カラーインデックスにおけるC.I.PR254、および、C.I.PY139を用いた。赤色用レジストにおいて、顔料の濃度を60質量%に設定した。次に、赤色用マスクを用いて赤色用レジスト層を選択的に露光した後に、露光後の赤色用レジスト層を現像することによって、赤色用フィルターパターンを形成した。そして、赤色用フィルターパターンを、ホットプレートを用いて230℃において6分間加熱することによって硬化させた。これにより、600nmの厚さを有した赤色用フィルターを形成した。この際に、赤色用フィルターを半導体基板の表面のうちで、青色用フィルター、および、緑色用フィルターが形成されている位置とは異なる位置に形成した。
【0118】
次に、各色用カラーフィルター上、および、半導体基板のうちでカラーフィルターによって覆われていない部分に、青色顔料、紫色顔料、および、黄色顔料を含む感光性を有した赤外光パス用レジストを塗布した。これにより、赤外光パス用レジスト層を形成した。青色顔料にはカラーインデックスにおけるC.I.PB15:6を用い、紫色顔料にはカラーインデックスにおけるC.I.PV23を用い、黄色顔料にはカラーインデックスにおけるC.I.PY139を用いた。赤外光パス用レジストにおいて、顔料の濃度を78質量%に設定した。
【0119】
次に、赤外光パス用マスクを用いて赤外光パス用レジスト層を選択的に露光した後に、露光後の赤外光パス用レジスト層を現像することによって、赤外光パスフィルターパターンを形成した。そして、赤外光パスフィルターパターンを、ホットプレートを用いて230℃において6分間加熱することによって硬化させた。これにより、1500nmの厚さを有した赤外光パスフィルターを形成した。この際に、赤外光パスフィルターを、半導体基板の表面のうちで、上述した各色用フィルターが形成されている位置とは異なる位置に形成した。なお、赤外光パスフィルターにおいて、400nm以上650nm以下の波長を有する光に対する透過率の最大値は4.8%であり、650nm以上730nm以下の波長を有する光に対する透過率の最大値は8.6%であった。また、赤外光パスフィルターにおいて、800nm以上1000nm以下の波長を有する光に対する透過率の最小値は、92.1%であった。
【0120】
各色用フィルター、および、赤外光パスフィルター上に、シロキサンを含む分散液を2000rpmの回転数でスピンコートすることによって塗膜を形成した。そして、塗膜を、ホットプレートを用いて200℃において20分間加熱することによって硬化させた。これにより、各色用フィルター上、および、赤外光パスフィルター上に、50nmの厚さを有したエッチングストッパー層を形成した。エッチングストッパー層において、可視光に対する透過率は91%であり、屈折率は1.40であった。
【0121】
次に、エッチングストッパー層上に、赤外光吸収色素、および、熱硬化性樹脂を含む塗布液を1000rpmの回転数でスピンコートすることによって塗膜を形成した。そして、塗膜を、ホットプレートを用いて200℃において20分間加熱することによって硬化させた。これにより、1600nmの厚さを有した赤外光カット前駆層をエッチングストッパー層上に形成した。赤外光カット前駆層において、940nm付近の波長を有する光に対する透過率は8%であった。
【0122】
ポジ型レジスト(OFPR‐800、東京応化工業(株)製)を含む塗液を、スピンコーターを用いて1000rpmの回転数で赤外光カット前駆層上にスピンコートし、これによってレジスト層を形成した。その後、レジスト層を90℃において1分間プリベークした。これにより、1.5μmの厚さを有したレジスト層を形成した。次いで、フォトマスクを用いてレジスト層を選択的に露光した。レジスト層の露光には、i線を用いた。そして、2.38質量%のTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドライド)を用いて露光後のレジスト層を現像した。これによって、赤外光カット前駆層が広がる平面と対向する視点から見て、赤外光カット前駆層のうちで、赤外光パスフィルターを覆う部分を露出させる開口を有したレジストパターンを形成した。この際に、開口の縁において、縦の長さが1.1μmであり横の長さが1.1μmであるように、正方形状を有した開口を形成した。
【0123】
次に、レジストパターンを用いて、赤外光カット前駆層をドライエッチングした。この際に、ドライエッチング装置には、ICP方式のドライエッチング装置を用いた。エッチングガスには、アルゴンガス、および、酸素ガスを含む混合ガスを用い、かつ、エッチング対象物にバイアスを印加することによって、赤外光カット前駆層に対して異方性エッチングを行った。これにより、赤外光カットフィルターを形成した。また、赤外光カット前駆層の形成材料、エッチングストッパー層の形成材料、赤外光カット前駆層とエッチャントとの反応生成物、および、エッチングストッパー層の形成材料とエッチャントとの反応生成物における少なくとも1つを含む隔壁が形成された。なお、隔壁の厚さは25nmであり、また、隔壁は、赤外光カットフィルターの側面のうちで、赤外光パスフィルターから突き出た部分に形成された。
【0124】
そして、エッチングマスクとして用いたポジ型レジストを除去した。剥離液(104、東京応化工業(株)製)を用い、スプレー洗浄装置によってポジ型レジストの除去を行った。
【0125】
次いで、赤外光カットフィルター上、および、赤外光パスフィルター上に、エッチバック法を用いて、500nmの高さを有した複数のマイクロレンズを形成した。そして、マイクロレンズの表面に、プラズマCVD法を用いてSiO2から形成され、かつ、100nmの厚さを有した酸素遮断層を形成した。これにより、固体撮像素子が得られた。
【符号の説明】
【0126】
10…固体撮像素子
10F…固体撮像素子用フィルター
11…光電変換素子
12B…青色用フィルター
12G…緑色用フィルター
12P…赤外光パスフィルター
12R…赤色用フィルター
13,23,33,53…エッチングストッパー層
14…赤外光カットフィルター
15,25…酸素遮断層
16,26…マイクロレンズ
21…半導体基板
24,34,54…赤外光カット前駆層
47,57…隔壁
54a…第1部分
54b…第2部分
58…平坦化層
RP…レジストパターン