(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 9/12 20060101AFI20240110BHJP
B41J 11/42 20060101ALI20240110BHJP
B65H 7/14 20060101ALI20240110BHJP
B65H 9/00 20060101ALI20240110BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B65H9/12
B41J11/42
B65H7/14
B65H9/00 B
G03G21/14
(21)【出願番号】P 2019221152
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石堂 紘平
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-099380(JP,A)
【文献】特開2019-099377(JP,A)
【文献】特開2007-022806(JP,A)
【文献】特開平09-175694(JP,A)
【文献】特開2006-027859(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0262513(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109835743(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 9/00
B65H 9/12
G03G 21/14
B65H 7/14
B41J 11/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される用紙に画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部よりも用紙搬送方向上流側に設けられ、主走査方向で画素が並ぶように設けられたラインセンサーを含み、搬送される前記用紙を読み取る読取ユニットと、
前記画像形成部よりも用紙搬送方向上流側かつ前記読取ユニットよりも用紙搬送方向下流側に設けられるレジストレスユニットと、
前記ラインセンサーが出力するアナログ画像信号に基づき、前記ラインセンサーへの前記用紙の到達と、搬送される前記用紙の傾き角度とを認識し、用紙搬送速度を制御するエンジン制御部と、を備え、
前記レジストレスユニットは、
前記用紙を前記画像形成部に向けて送るレジストレスローラー対と、
前記レジストレスローラー対を回転させるレジストレスモーターと、
前記レジストレスローラー対を収容し、前記主走査方向の一端側に設けられた支点を有するケースと、
前記支点を中心に前記ケースの他端側を用紙搬送方向で移動させる移動機構を含み、
前記エンジン制御部は、
前記用紙が前記レジストレスローラー対のニップに進入すると、前記ケースの前記他端側を前記移動機構に移動させて、前記用紙の斜行を矯正し、
前記矯正に基づく前記用紙の位置のずれ量である第1ずれ量を求め、
前記用紙の用紙搬送方向の下流側の端辺が前記レジストレスユニットに到達した時点では、用紙搬送速度が第1速度となるように前記レジストレスローラー対を回転させ、
前記用紙の前記レジストレ
スローラー対のニップへの進入後、用紙搬送速度が第2速度となるように前記レジストレスローラー対を回転させ、
前記第1ずれ量に基づき、前記第1速度から前記第2速度に変更するタイミングを調整することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第2速度は、前記第1速度よりも速く、
前記エンジン制御部は、
前記ラインセンサーへの前記用紙の到達の認識から速度変更時間が経過したときに前記第1速度から前記第2速度への変更を行い、
前記用紙の斜行を矯正しないとき、予め定められた基準時間を、前記速度変更時間とし、
前記用紙を用紙搬送方向の下流側に移動させる矯正をしたとき、前記基準時間に加算時間を加えた時間を前記速度変更時間とし、
前記用紙を用紙搬送方向の上流側に移動させる矯正をしたとき、前記基準時間から減算時間を減じた時間を前記速度変更時間とすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記エンジン制御部は、
前記用紙を用紙搬送方向の下流側に移動させる矯正をしたとき、前記第1ずれ量が大きいほど、前記加算時間を大きくし、
前記用紙を用紙搬送方向の上流側に移動させる矯正をしたとき、前記第1ずれ量が大きいほど、前記減算時間を大きくすることを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記傾き角度をθとするとき、
前記エンジン制御部は、A×Bの演算により、前記第1ずれ量を求め、
Aは、前記用紙の中心から前記支点までの距離であり、
Bは、Tanθであり、
前記エンジン制御部は、前記第1ずれ量を前記第1速度で除して得られる時間を前記加算時間又は前記減算時間とすることを特徴とする請求項2又は3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記ラインセンサーは、複数のブロックを含み、
前記エンジン制御部は、
前記複数のブロックのうち、中央読取ブロックが出力する前記アナログ画像信号に基づき、前記ラインセンサーへの前記用紙の到達を認識し、
所定割合以上の前記中央読取ブロックの画素の前記アナログ画像信号のレベルが用紙を読み取ったときのレベルになったとき、前記用紙が前記ラインセンサーに到達したと認識し、
前記中央読取ブロックは、用紙搬送路の主走査方向の中央を読み取る中央読取画素を含むブロックであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第2速度は、前記第1速度よりも速く、
前記エンジン制御部は、
前記ラインセンサーへの前記用紙の到達の認識から速度変更時間が経過したときに前記第1速度から前記第2速度への変更を行い、
前記用紙の斜行を矯正しないとき、予め定められた基準時間を、前記速度変更時間とし、
前記用紙を用紙搬送方向の下流側に移動させる矯正をしたとき、前記基準時間に加算時間を加えた時間を前記速度変更時間とし、
前記用紙を用紙搬送方向の上流側に移動させる矯正をしたとき、前記基準時間から減算時間を減じた時間を前記速度変更時間とし、
前記ラインセンサーは、複数のブロックを含み、
前記エンジン制御部は、
前記複数のブロックのうち、中央読取ブロックが出力する前記アナログ画像信号に基づき、前記ラインセンサーへの前記用紙の到達を認識し、
所定割合以上の前記中央読取ブロックの画素の前記アナログ画像信号のレベルが用紙を読み取ったときのレベルになったとき、前記用紙が前記ラインセンサーに到達したと認識し、
前記中央読取ブロックは、用紙搬送路の主走査方向の中央を読み取る中央読取画素を含むブロックであり、
前記エンジン制御部は、
前記中央読取ブロックが出力する前記アナログ画像信号に基づき、斜行による前記用紙の到達の認識時点のずれに基づく第2ずれ量を求め、
前記第2ずれ量に基づき、補正時間を求め、
定めた前記速度変更時間に前記補正時間を加算して、前記速度変更時間を補正することを特徴とする請求項
1に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記用紙の前記主走査方向の一方側の隅が用紙搬送方向下流側に突出する方向に傾いている場合、
前記エンジン制御部は、C×Dの演算により、前記第2ずれ量を求め、
Cは、第1頂点画素から前記中央読取画素までの距離であり、
Dは、Tanθであり、
θは前記傾き角度であり、
前記第1頂点画素は、用紙の到達の認識時点において、前記アナログ画像信号のレベルが用紙を読み取っていないことを示すレベルの画素のうちで前記中央読取画素に最も近い画素であり、
前記用紙の前記主走査方向の他方側の隅が用紙搬送方向下流側に突出する方向に傾いている場合、
前記エンジン制御部は、E×Fの演算により、前記第2ずれ量を求め、
Eは、第2頂点画素から前記中央読取画素までの距離であり、
Fは、Tanθであり、
θは前記傾き角度であり、
前記第2頂点画素は、用紙の到達の認識時点において、前記アナログ画像信号のレベルが用紙を読み取っていることを示すレベルの画素のうちで前記中央読取画素に最も近い画素であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記中央読取ブロックが出力する各画素の前記アナログ画像信号を二値化する二値化回路と、
前記二値化回路の出力が入力され、前記中央読取ブロックのうちの予め定められた所定割合以上の画素が用紙を読み取ったときにHighレベルを出力するフィルター回路と、を含み、
前記フィルター回路の出力信号がHighレベルになったとき、前記エンジン制御部は、前記ラインセンサーに前記用紙が到達したと認識することを特徴とする請求項5乃至7の何れか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は用紙を搬送し、搬送する用紙を読み取る画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複合機やプリンターのような画像形成装置はレジストローラーを含む。レジストローラー対を用いて、用紙の斜行(スキュー)の矯正が行われる。用紙到達時には、レジストローラー対を停止させ、用紙の下流側端部をレジストローラー対に突き当てる。レジストローラー対よりも上流側の搬送ローラー対は、用紙を送り続ける。これにより、用紙が撓む。用紙の弾性によって、用紙の下流側端部がレジストローラー対のニップに沿う。これにより、用紙の斜行を矯正することができる。用紙の種類によっては、レジストローラー対での斜行矯正を行わないほうが好ましい場合もある。特許文献1には、用紙をレジストローラー対に突き当てない選択が可能な画像形成装置が記載されている。
【0003】
具体的に、特許文献1には、用紙に画像を転写する転写部と、転写部の上流側に設けられたレジストローラーと、レジストローラーの動作を制御し、搬送方向の用紙先端をレジストローラーに突き当てる第1動作と、用紙先端をレジストローラーに突き当てない第2 動作と、のいずれかを実行させる制御部と、を含む画像形成装置が記載されている。レジストローラーで斜行を矯正しにくい用紙(例えば、封筒)への画像の転写位置の精度の向上を図ろうとする(特許文献1:請求項1、段落[0008]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
斜行状態の用紙に印刷すると、用紙に対して画像が傾く。そのため、従来、レジストローラー対を用いて、斜行の矯正が行われている。レジストローラー対を用いる場合、搬送途中で用紙が一時的に停止する。生産性(印刷速度)の観点からみれば、用紙搬送速度は落とさない方が好ましい。そこで、レジストローラー対に突き当てるのではなく、搬送される用紙をニップするローラーを動かして、用紙の角度を変えることが考えられる。特許文献1の画像形成装置では、主走査方向(幅方向)で用紙を揺れ動かして斜行を矯正しようとする(特許文献1:請求項4)。
【0006】
用紙を止めないで斜行を矯正する場合、用紙の位置が搬送途中で変化する。用紙先端を下流側に進めるように矯正することもあれば、用紙先端を下流側に戻すように矯正することもあり得る。しかし、用紙の位置が搬送途中で変わると、画像を用紙にのせる位置に用紙が到達するタイミング(時点)が変わる。なお、レジストローラー対を用いる場合、レジストローラー対の回転開始時点から画像を用紙にのせる位置に用紙が到達するまでの時間は、スリップしない限り、どの用紙でも同じとなる。
【0007】
傾いていない用紙は矯正されない。傾いていない用紙と、斜行を矯正した用紙では、あるセンサーで用紙の到達を検知してから、画像を用紙にのせる位置に到達するまでの時間がばらつく。また、傾きの程度によって、用紙の位置の変化の程度が変わる。その結果、用紙ごとに、画像を用紙にのせる位置への到達タイミング(時点)がばらつくおそれがある。到達タイミング(時点)がばらつくと、画像の印刷位置がばらつく場合があるという問題がある。画像の位置のずれが目立つおそれがある。
【0008】
特許文献1記載には、トナー像の転写タイミングの補正に関する記述はない。特許文献1記載の技術では、レジストローラー対を用いないで斜行を矯正したときに生ずる問題に対応することはできない。
【0009】
本発明は上記問題点を鑑み、レジストローラー対を用いずに斜行を矯正し、どの用紙でも画像を用紙にのせる位置への到達タイミングのずれないようにし、画像の印刷位置のばらつきを防ぐ。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る画像形成装置は画像形成部、読取ユニット、レジストレスユニット、エンジン制御部を含む。前記画像形成部は搬送される用紙に画像を形成する。前記読取ユニットは前記画像形成部よりも用紙搬送方向上流側に設けられる。前記読取ユニットは、主走査方向で画素が並ぶように設けられたラインセンサーを含む。前記読取ユニットは搬送される前記用紙を読み取る。前記レジストレスユニットは、前記画像形成部よりも用紙搬送方向上流側かつ前記読取ユニットよりも用紙搬送方向下流側に設けられる。前記ラインセンサーが出力するアナログ画像信号に基づき、前記エンジン制御部は、前記ラインセンサーへの前記用紙の到達と、搬送される前記用紙の傾き角度とを認識する。前記エンジン制御部は用紙搬送速度を制御する。前記レジストレスユニットは、レジストレスローラー対、レジストレスモーター、ケース、移動機構を含む。前記レジストレスローラー対は前記用紙を前記画像形成部に向けて送る。前記レジストレスモーターは前記レジストレスローラー対を回転させる。前記ケースは、前記レジストレスローラー対を収容し、前記主走査方向の一端側に設けられた支点を有する。前記移動機構は、前記支点を中心に前記ケースの他端側を用紙搬送方向で移動させる。前記用紙が前記レジストレスローラー対のニップに進入すると、前記エンジン制御部は、前記ケースの前記他端側を前記移動機構に移動させて、前記用紙の斜行を矯正する。前記エンジン制御部は前記矯正に基づく前記用紙の位置のずれ量である第1ずれ量を求める。前記エンジン制御部は、前記用紙の用紙搬送方向の下流側の端辺が前記レジストレスユニットに到達した時点では、用紙搬送速度が第1速度となるように前記レジストレスローラー対を回転させる。前記エンジン制御部は、前記用紙の前記レジストレスローラー対のニップへの進入後、用紙搬送速度が第2速度となるように前記レジストレスローラー対を回転させる。前記第1ずれ量に基づき、前記エンジン制御部は前記第1速度から前記第2速度に変更するタイミングを調整する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、レジストレスユニットを移動させて用紙の斜行を矯正しても、画像を用紙にのせる位置への用紙到達タイミングのずれを無くすことができる。画像の印刷位置のばらつきを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る複合機の一例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る複合機の一例を示す図である。
【
図3】実施形態に係る画像形成部の一例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る読取ユニットとレジストレスユニットの一例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る読取ユニットの一例を示す図である。
【
図6】実施形態に係るレジストレスユニットの一例を示す図である。
【
図7】実施形態に係る複合機の一例を示す図である。
【
図8】実施形態に係る複合機が含む回路の一例を示す図である。
【
図9】実施形態に係る二値化回路とフィルター回路の一例を示す図である。
【
図10】実施形態に係る読取ユニットが用紙を読み取ったときの各信号のタイミングチャートの一例を示す図である。
【
図11】実施形態に係る複合機での斜行矯正の一例を示す図である。
【
図12】実施形態に係るレジストレスユニットでの用紙搬送速度の変化の一例を示す図である。
【
図13】実施形態に係る速度変更時間の設定の一例を示す図である。
【
図14】実施形態に係る速度変更時間の設定の一例を示す図である。
【
図15】実施形態に係るラインセンサーの用紙の読み取りの一例を示す図である。
【
図16】実施形態に係るラインセンサーの用紙の読み取りの一例を示す図である。
【
図17】実施形態に係る速度変更時間の補正の一例を示す図である。
【
図18】実施形態に係る第2ずれ量の一例を示す図である。
【
図19】実施形態に係る第2ずれ量の一例を示す図である。
【
図20】実施形態に係るレジストレスローラー対の回転制御の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1~
図20を用い、実施形態に係る画像形成装置を説明する。画像形成装置として、複合機100を例に挙げて説明する。複合機100は画像データに基づく印刷や送信を行える。なお、プリンターのような複合機100以外の画像形成装置にも本発明は適用できる。本実施形態の説明に記載されている構成、配置等の各要素は発明の範囲を限定せず単なる説明例にすぎない。
【0014】
(複合機100)
図1~
図3を用いて、実施形態に係る複合機100を説明する。
図1、
図2は実施形態に係る複合機100の一例を示す図である。
図3は実施形態に係る画像形成部5cの一例を示す図である。
【0015】
図1に示すように、複合機100は制御部1、記憶部2、画像読取部3、操作パネル4、印刷部5を含む。
【0016】
制御部1は印刷や送信のようなジョブでの各部の動作を制御する。制御部1は制御回路11、画像データ生成回路12、画像処理回路13、通信回路14を含む。例えば、制御回路11はCPUである。制御回路11はジョブに関する処理、演算を行う。例えば、画像データ生成回路12はA/D変換回路を含む。画像データ生成回路12は、画像読取部3が原稿を読み取って出力したアナログの画像信号を処理して原稿画像データを生成する。画像処理回路13は画像処理用の集積回路(例えば、ASIC)である。画像処理回路13は原稿画像データの画像処理を行う。
【0017】
通信回路14は通信制御回路と通信メモリーを含む。通信制御回路は通信を制御する。通信メモリーは通信用ソフトウェアを記憶する。通信回路14はコンピューター200と通信する。例えば、コンピューター200はPCやサーバーである。通信回路14はコンピューター200からの印刷用データを受信する。受信した印刷用データに基づき、制御部1は印刷部5に印刷させる(プリントジョブ)。また、操作パネル4で設定された宛先に向けて、制御部1は、画像データを通信回路14に送信させる(送信ジョブ)。
【0018】
記憶部2はRAM、ROM、ストレージを含む。例えば、ストレージはHDD又はSSDである。記憶部2のプログラムやデータに基づき、制御部1は各部を制御する。画像読取部3は光源、イメージセンサーを含む。画像読取部3は原稿を読み取る。
【0019】
操作パネル4は使用者の設定を受け付ける。操作パネル4は表示パネル41、タッチパネル42、ハードキー43を含む。制御部1はメッセージや、設定用画面を表示パネル41に表示させる。制御部1は操作用画像を表示パネル41に表示させる。例えば、操作用画像はボタン、キー、タブである。タッチパネル42の出力に基づき、制御部1は操作された操作用画像を認識する。ハードキー43はスタートキーやテンキーを含む。タッチパネル42、ハードキー43は使用者の設定操作(ジョブに関する操作)を受け付ける。操作パネル4の出力に基づき、制御部1は設定内容を認識する。
【0020】
印刷部5はエンジン制御部9、給紙部5a、用紙搬送部5b、画像形成部5c、定着部5dを含む。エンジン制御部9はエンジン制御回路91(エンジンCPU)、ユニット制御回路92、及び、エンジンメモリー93を含む(
図7参照)。エンジンメモリー93は印刷制御用のプログラムとデータを記憶する。制御部1の印刷指示に基づき、エンジン制御部9は給紙部5a、用紙搬送部5b、画像形成部5c、定着部5dの動作を制御する。エンジンメモリー93が記憶するプログラムとデータに基づき、エンジン制御回路91とユニット制御回路92が制御を行う。エンジン制御回路91は用紙搬送速度を制御する。
【0021】
給紙部5aは用紙を収容する用紙カセット、用紙を送り出す給紙ローラーを含む。印刷時、エンジン制御回路91は給紙部5aに用紙を供給させる。用紙搬送部5bはモーター、搬送ローラー対を含む。エンジン制御回路91は給紙部5aから送り出された用紙を用紙搬送部5bに搬送させる。用紙搬送部5bは機内で用紙を搬送する。
【0022】
画像形成部5cは画像(トナー像)を形成する。
図2、
図3に示すように、画像形成部5cは4色分の画像形成ユニット51、露光装置52、中間転写部を含む。複合機100はブラックの画像を形成する画像形成ユニット51Bkと、イエローの画像を形成する画像形成ユニット51Yと、シアンの画像を形成する画像形成ユニット51Cと、マゼンタの画像を形成する画像形成ユニット51Mを含む。形成するトナー像の色が異なるが、各画像形成ユニット51Bk~51Mの構成は基本的に同じである。以下の説明では、各画像形成ユニット51のBk、Y、C、Mの符号は、特に説明する場合を除き省略する。
【0023】
各画像形成ユニット51は、感光体ドラム53、帯電装置54、現像装置55を含む。印刷のとき、エンジン制御回路91はドラムモーター(不図示)を回転させ、感光体ドラム53を回転させる。また、エンジン制御回路91は感光体ドラム53を帯電装置54に帯電させる。また、画像データに基づき、エンジン制御回路91は感光体ドラム53を露光装置52に露光させる。現像装置55はトナーを含む現像剤を収容する。エンジン制御部9は感光体ドラム53の静電潜像のトナーによる現像を現像装置55に行わせる。
【0024】
中間転写部は中間転写ベルト56、2次転写ローラー57、駆動ローラー58、1次転写ローラー59Bk、59Y、59C、59M、従動ローラー510、511を含む。各ローラーの軸線方向は平行である。中間転写ベルト56は無端状である。中間転写ベルト56は各ローラーにかけ回される。中間転写ベルト56は感光体ドラム53からトナー像の1次転写を受ける。また、2次転写ローラー57は用紙にトナー像を2次転写する。2次転写ローラー57と中間転写ベルト56のニップ(2次転写ニップ5n)が画像を用紙にのせる位置である。
【0025】
定着部5dはヒーター、定着用ローラーを含む。エンジン制御部9はトナー像が転写された用紙を定着用ローラーに加熱・加圧させる。エンジン制御部9はトナー像の定着を定着部5dに行わせる。用紙搬送部5bは定着後の用紙を機外(排出トレイ)に排出する。
【0026】
(読取ユニット6とレジストレスユニット7)
次に、
図4~
図7を用いて、実施形態に係る読取ユニット6とレジストレスユニット7の一例を説明する。
図4は実施形態に係る読取ユニット6とレジストレスユニット7の一例を示す図である。
図5は実施形態に係る読取ユニット6の一例を示す図である。
図6は実施形態に係るレジストレスユニット7の一例を示す図である。
図7は実施形態に係る複合機100の一例を示す図である。
【0027】
複合機100は読取ユニット6とレジストレスユニット7を含む。読取ユニット6は用紙搬送経路上に設けられる。読取ユニット6は画像形成部5c(2次転写ニップ5n、2次転写ローラー57)よりも用紙搬送方向上流側に設けられる(
図2参照)。
図5に示すように、読取ユニット6は一面に透光板6bが取り付けられる。透光板6bはガラス板、又は、透光性樹脂板である。筐体6aと透光板6bによる密閉空間内にランプ6cとラインセンサー60が配置される。読取ユニット6はランプ6cと、レンズ6dと、ラインセンサー60を含む。ランプ6cと、レンズ6dと、ラインセンサー60の全て、又は、何れかは、読取ユニット6のケース内に内蔵されてもよい。読取ユニット6はCIS方式で搬送用紙を読み取る。
【0028】
図7に示すように、エンジン制御部9は、エンジン制御部9とユニット制御回路92を含む。例えば、エンジン制御回路91はCPUである。ユニット制御回路92は、CPU、又は、マイコンである。ユニット制御回路92は、エンジン制御回路91の指示を受けて、所定の処理を行う。以下では、ユニット制御回路92が読取ユニット6とレジストレスユニット7の動作を制御する例を説明する。なお、エンジン制御回路91が読取ユニット6とレジストレスユニット7の何れか一方、又は、両方の動作を制御してもよい。
【0029】
図5は、用紙搬送部5b(用紙搬送路)のうちの読取ユニット6の設置部分の一例を示す。
図5は用紙搬送路を用紙搬送方向に対して垂直な方向から見た図である。印刷ジョブのとき、ユニット制御回路92は、ランプ6cに電流を供給し、ランプ6cを点灯させる。
図5は読取ユニット6が2本のランプ6cを含む例を示す。ランプ6cは主走査方向に沿って光を照射する。例えば、ランプ6cはLEDランプである。
【0030】
ラインセンサー60は画素(受光素子)を複数含む。画素(受光素子)は主走査方向に並べられる。
図5に示すように、ランプ6cから放たれ、原稿で反射した光は、レンズ6dを経て、ラインセンサー60の各画素に入射する。用紙搬送時(印刷ジョブのとき)、ユニット制御回路92は、ラインセンサー60に読み取りを行わせる。用紙が到達したことを検知するセンサーとして、ラインセンサー60を用いることができる。
【0031】
ラインセンサー60は3ブロックに分割されている。各ブロックが画素(受光素子)を含む。便宜上、主走査方向の一方側(
図4の右側、支点側)から順に、第1ブロック61、第2ブロック62、第3ブロック63と称する。複合機100では、中央通紙方式で用紙が搬送される。給紙部5aでは、用紙搬送路の主走査方向の中央と、用紙の主走査方向の中央が一致するように、用紙の位置が規制される。用紙搬送路の主走査方向の中央と、用紙の主走査方向の中央が一致するように、用紙搬送部5bは用紙を搬送する。
図4の破線は主走査方向での用紙及び用紙搬送路の中央を示すラインである。
【0032】
第3ブロック63は、用紙の主走査方向の中央を読み取る位置に設けられる。第3ブロック63は中央読取ブロックである。中央読取ブロックは、搬送される用紙(用紙搬送路)の主走査方向の中央を読み取る中央読取画素を含むブロックである。第1ブロック61は印刷可能な用紙のうち、主走査方向幅が最大の用紙が用いられた場合に、主走査方向の一方側の端を読み取る位置に設けられる。
【0033】
ユニット制御回路92は、ラインセンサー60にトリガー信号TRと読取クロック信号CLKを入力する。ラインセンサー60は電荷転送回路(シフトレジスター、転送用CCD)を含む。例えば、トリガー信号TRにあわせて、各画素が蓄えた電荷が電荷転送回路に移される。電荷転送回路は電荷を電圧に変換しつつ、1つの読取クロック信号CLKにつき、1画素分のアナログ画像信号A1を出力する。
【0034】
従来の画像形成装置でのレジストローラー対の設置位置にレジストレスユニット7が設けられる。従来のレジストローラー対は、用紙の到達当初、停止している。停止しているレジストローラー対に用紙を突き当てることで、用紙の斜行が矯正される。しかし、レジストローラー対を用いると、用紙の搬送が一時停止する。レジストレスユニット7は、斜行は矯正するが、用紙を止めず、下流に向けて用紙を搬送する。
【0035】
図2に示すように、レジストレスユニット7は、画像形成部5c(中間転写部、2次転写ニップ5n、2次転写ローラー57)よりも用紙搬送方向上流側に設けられる。レジストレスユニット7は、読取ユニット6よりも用紙搬送方向下流側に設けられる。
【0036】
図6に示すように、レジストレスユニット7はケース7aを含む。
図6の例では、ケース7aは箱型であり、主走査方向を長手方向とする。レジストレスユニット7(ケース7a)は、レジストレスローラー対7bとレジストレスモーター7cを含む。レジストレスローラー対7bは駆動ローラー7dと従動ローラー7eを含む。駆動ローラー7dと従動ローラー7eは、軸線方向が平行である。駆動ローラー7dの周面と従動ローラー7eの周面が接する。
【0037】
ギアが駆動ローラー7dの回転軸の一端に取り付けられる。このギアはレジストレスモーター7cのシャフトに設けられたギアと噛み合う。レジストレスモーター7cを回転させると、駆動ローラー7dと従動ローラー7eも回転する。
【0038】
支点軸7f(支点、回動軸)が主走査方向(用紙搬送方向と垂直な方向)での一方側の端部に設けられる。支点軸7fによって、他方側の端部を振るように、レジストレスユニット7を回動させることができる。
図4において、実線矢印で示すように、他方側の端部を、用紙搬送方向下流側、又は、上流側に振ることができる。
【0039】
複合機100は移動機構71を含む。用紙の斜行(斜行)を矯正するため、移動機構71はレジストレスユニット7の他方側(移動側)の端部を移動させる。移動機構71は他方側の端部を移動させる部材を含む。例えば、移動機構71は、移動モーター72、駆動プーリー73、従動プーリー74、ベルト75を含む。
【0040】
移動モーター72は正方向と逆方向の両方に回転可能である。ユニット制御回路92は移動モーター72の回転を制御する。ベルト75は駆動プーリー73と従動プーリー74にかけ回される。移動モーター72は駆動プーリー73を回転させる。ベルト75の一部とレジストレスユニット7(ケース7a)の他方側の端部が接続される。移動モーター72と駆動プーリー73を回転させることにより、支点(支点軸7f)を中心に、レジストレスユニット7が移動する。ベルト75の移動にあわせて、レジストレスユニット7(ケース7a)の他方側の端部を移動させることができる。例えば、斜行矯正でのレジストレスユニット7の移動量は数ミリ未満である。ベルト75を用いて他方側の端部を移動させることで、用紙搬送を続けつつ、用紙の斜行(傾き)を矯正することができる。
【0041】
読取ユニット6(ラインセンサー60)の各画素が出力するアナログ画像信号A1に基づき、搬送読取画像データ(二値化信号B1)が生成される(詳細は後述)。搬送読取画像データに基づき、ユニット制御回路92は用紙の傾き角度θを認識する。ユニット制御回路92は、傾き角度θに応じてレジストレスユニット7を移動させ、斜行を矯正する。
【0042】
(二値化回路8と斜行に関する演算)
次に、
図8~
図10を用いて、実施形態にかかる二値化回路8と斜行に関する演算の一例を説明する。
図8は実施形態に係る複合機100が含む回路の一例を示す図である。
図9は実施形態に係る二値化回路8とフィルター回路8aの一例を示す図である。
図10は実施形態に係る読取ユニット6が用紙を読み取ったときの各信号のタイミングチャートの一例を示す図である。
【0043】
二値化回路8は、ラインセンサー60が出力する各画素のアナログ画像信号A1を二値化する回路である。アナログ画像信号A1の電圧値が予め定められた閾値Vrefよりも大きいとき、二値化回路8はHighレベルを出力する。アナログ画像信号A1の電圧値が閾値Vref以下のとき、二値化回路8はLowレベルを出力する。二値化によりモノクロ(1画素1ビット)の搬送読取画像データ(二値化信号B1)を得ることができる。
【0044】
用紙がある部分では、ランプ6cの光が用紙で反射され、画素(受光素子)に入射する光の量が多くなる。用紙がない部分では、ランプ6cの光は用紙搬送路の壁面に向かう。画素に入射する光の量が少なくなる。搬送読取画像データのうち、Highレベルは用紙がある部分(用紙を読み取った画素)を示す。Lowレベルは用紙がない部分(用紙を読み取っていない画素)を示す。
【0045】
上述のように、ラインセンサー60は3つのブロックを含む(第1ブロック61、第2ブロック62、第3ブロック63)。二値化回路8がブロックごとに設けられる。第1ブロック61の各画素のアナログ画像信号A1が1つめの二値化回路8に入力される。第2ブロック62の各画素のアナログ画像信号A1が2つめの二値化回路8に入力される。第3ブロック63の各画素のアナログ画像信号A1が3つめの二値化回路8に入力される。
【0046】
それぞれの二値化回路8は同様の構成である。
図9は二値化回路8の一例を示す。二値化回路8はコンパレーター80と複数の抵抗を含む。ラインセンサー60の出力(アナログ画像信号A1)が、1画素ずつ順番にコンパレーター80の一方の入力端子に入力される。読取クロック信号CLKの周期で、各画素のアナログ画像信号A1が順番にコンパレーター80に入力される。コンパレーター80の他方の入力端子には、第1抵抗81と第2抵抗82の分圧で生成した参照電圧(閾値Vref)が入力される。
【0047】
用紙を読み取った画素の受光量は多くなり、画素が蓄える電荷が多くなる。用紙を読み取った画素のアナログ画像信号A1の電圧値は、用紙を読み取っていない画素のアナログ画像信号A1の電圧値よりも大きくなる。アナログ画像信号A1の電圧値が大きいほど、画素が読み取ったものが明るい(白い、色が薄い)ことを示す。コンパレーター80がアナログ画像信号A1の二値化を行う。アナログ画像信号A1の電圧値と閾値Vrefの比較の結果に応じて、コンパレーター80はHighレベル又はLowレベルを出力する。
【0048】
各二値化回路8の出力(二値化信号B1、搬送読取画像データ)は、ユニット制御回路92に入力される。ユニット制御回路92は、読取クロック信号CLKの周期で二値化回路8の出力レベルをラッチする。これにより、ユニット制御回路92は、二値化回路8が生成した二値の画像データ(搬送読取画像データ)を得る。ユニット制御回路92は、各ブロックの何番目の画素がHighレベルであり、各ブロックの何番目の画素がLowレベルであるかを認識できる。搬送読取画像データに基づき、ユニット制御回路92は、搬送用紙の傾きの方向と傾き角度θを認識する。
【0049】
図10は用紙のあるラインを読み取ったときの各二値化回路8が出力する信号の一例を示す。
図10のうち、最上段のチャートは読取クロック信号CLKを示す。例えば、読取クロック信号CLKの周波数は数MHz以上である。
図10のうち、上から2段目のチャートは、トリガー信号TRの一例を示す。
図10のうち、上から3段目のチャートは、第1ブロック61からのアナログ画像信号A1の二値化信号B1の波形の一例を示す。
図10のうち、上から4段目のチャートは第2ブロック62からのアナログ画像信号A1の二値化信号B1の波形の一例を示す。
図10のうち、上から5段目のチャートは第3ブロック63からのアナログ画像信号A1の二値化信号B1の波形の一例を示す。上から5段目のチャートの破線は、主走査方向での傾いていない用紙と用紙搬送路の中央を読み取る画素(中央読取画素)の位置を示す。
【0050】
例えば、ユニット制御回路92は、3段目のチャートのHighレベルの画素数(読取クロック信号CLKの数)と、4段目のチャートのHighレベルの画素数と、5段目のチャートの中央読取画素から主走査方向で外側の(一方側の)Highレベルの画素数の合計値を求める。ユニット制御回路92は、合計値に1画素のピッチを乗じた乗算値を求める。乗算値は用紙の主走査方向の長さの1/2を示す。ユニット制御回路92は、乗算値を2倍して、用紙の主走査方向のサイズを求め得る。
【0051】
また、ユニット制御回路92は、搬送用紙の傾き角度θを求めることもできる。例えば、傾きを求めるための2点の画素(基準点画素)が予め定められる。基準点画素は、仕様上、印刷に使用できる最小の用紙の読み取り範囲内に設けられる。例えば、基準点画素間の主走査方向の距離は、印刷に使用できる最小の用紙の主走査方向の幅の1/2よりも大きくしてもよい。
【0052】
2つの基準点画素が同じラインでHighレベルとなったとき、ユニット制御回路92は、傾き角度θがゼロ(傾いていない)と認識する。2点のうち、何れか一方が早くHighレベルとなったとき、ユニット制御回路92は、搬送用紙が傾いていると認識する。主走査方向で一方側の基準点画素の方が早くHighレベルとなったとき、ユニット制御回路92は、用紙の主走査方向の一方側の隅が下流側に突出する方向で傾いていると認識する。主走査方向で他方側の基準点画素の方が早くHighレベルとなったとき、ユニット制御回路92は、用紙の主走査方向の他方側の隅が下流側に突出する方向で傾いていると認識する。
【0053】
搬送用紙が傾いているとき、ユニット制御回路92は、アークタンジェント(tan-1)の演算を行って、傾き角度θを求める。具体的に、ユニット制御回路92は、以下の演算を行う。
傾き角度θ=tan-1(a/b)
ここで、aは一方の基準点画素がHighレベルとなってから他方の基準点画素がHighレベルとなるまでの用紙の搬送距離である。例えば、ユニット制御回路92は、一方の基準点画素がHighレベルとなってから他方の基準点画素がHighレベルとなるまでのライン数と、1ラインの周期と、単位時間あたりの用紙搬送速度を乗じて、Aを求める。bは2つの基準点画素の距離である。一方の基準点画素から他方の基準点画素までの画素数に1画素のピッチを乗ずることにより、bを求めることができる。aを高さとし、bを底辺とする直角三角形に基づき、傾き角度θを求める。
【0054】
(ラインセンサー60への用紙到達の認識)
次に、
図9を用いて、実施形態に係る複合機100でのラインセンサー60への用紙到達の認識の一例を説明する。
【0055】
ラインセンサー60が出力するアナログ画像信号A1に基づき、ユニット制御回路92は、搬送される用紙の下流端のラインセンサー60への到達を認識する。下流端とは、用紙搬送方向の下流側の用紙の端辺である。第3ブロック63は、用紙の主走査方向の中央を読み取る。つまり、印刷に用いる用紙のサイズがどのサイズでも、第3ブロック63は用紙も読み取る。そこで、ラインセンサー60のうち、第3ブロック63から出力されるアナログ画像信号A1に基づいて、ユニット制御回路92はラインセンサー60への用紙の到達を認識する。
【0056】
具体的に、フィルター回路8aの出力信号C1に基づき、ユニット制御回路92は、ラインセンサー60に用紙が到達した時点を認識する。例えば、フィルター回路8aの出力信号C1は、ユニット制御回路92の割込端子に入力される。フィルター回路8aは、第1フィルター抵抗83、コンデンサーC1、シュミットトリガーバッファ84、第2フィルター抵抗85を含む。
【0057】
第1フィルター抵抗83の一端は、コンパレーター80の出力端子と接続される。つまり、第1フィルター抵抗83には、二値化信号B1(搬送読取画像データ)が入力される。第1フィルター抵抗83の他端は、コンデンサーC1の一端、及び、シュミットトリガーバッファ84の入力端子と接続される。シュミットトリガーバッファ84の出力端子は、第2フィルター抵抗85の一端と接続される。第2フィルター抵抗85の他端は、ユニット制御回路92の入力端子(割込端子)と接続される。
【0058】
フィルター回路8aへの入力信号のレベル変化が高速な場合、フィルター回路8aの出力信号C1は、Lowレベルで維持される。高速にHighとLowのレベルが変化する信号が割込端子に入力されることを防ぐことができる。第3ブロック63の画素のうち、予め定められた所定割合以上の画素が用紙を読み取ったとき、フィルター回路8aはHighレベルを出力する。言い換えると、第3ブロック63の画素のうち、所定割合以上の画素の二値化信号B1がHighレベルになると、フィルター回路8aはHighレベルを出力する。フィルター回路8aの出力信号C1がHighレベルになったとき、ユニット制御回路92はラインセンサー60(読取ユニット6)に用紙が到達したと認識する。
【0059】
用紙が傾く場合を考慮し、所定割合の画素が用紙を読み取ったときに、フィルター回路8aはHighレベルを出力する。傾いた用紙のわずかな一部を読み取っただけでは、ユニット制御回路92は用紙が到達したと認識しない。所定割合は適宜定められる。所定割合は、例えば、30~70%の範囲内で定められる。複合機100では、所定割合は50%とされる。以下の説明では、所定割合が50%である例を説明する。用紙を読み取った画素の数が所定割合以上であると出力信号C1がHighレベルとなるように、第1フィルター抵抗83の抵抗値と、コンデンサーC1の静電容量が定められる。
【0060】
(斜行矯正)
次に、
図11を用いて、実施形態に係る複合機100での斜行矯正の一例を説明する。
図11は、実施形態に係る複合機100での斜行矯正の一例を示す図である。
【0061】
図11のスタートは、印刷ジョブの開始時点である。印刷ジョブ中、ユニット制御回路92は、各用紙を読取ユニット6に読み取らせる。例えば、1枚目の用紙の給紙が開始されると(給紙ローラーの回転が開始すると)、ユニット制御回路92は、ランプ6cの点灯を開始する(ステップ♯11)。例えば、ユニット制御回路92は、ランプ6cへの電流供給を開始する。また、ユニット制御回路92は、読み取りをラインセンサー60に開始させる(ステップ♯12)。ユニット制御回路92は、ラインセンサー60へのトリガー信号TRと読取クロック信号CLKの入力を開始する。
【0062】
ユニット制御回路92は、二値化回路8が出力する搬送読取画像データ(二値化信号B1)に基づき、読み取っている用紙が傾いているか否かを認識する(ステップ♯13)。例えば、ユニット制御回路92は、2つの基準点画素が同時にHighレベルになったかを監視する。傾いていないと認識したとき(ステップ♯13のNo)、ユニット制御回路92は、用紙が傾いていないことをエンジン制御回路91に通知する(ステップ♯14)。傾いていると認識したとき(ステップ♯13のYes)、ユニット制御回路92は、読み取り中の用紙の傾き方向と傾き角度θを認識する(ステップ♯15)。
【0063】
そして、ユニット制御回路92は、レジストレスユニット7(ケース7a)を基準位置から矯正位置に移動させる(ステップ♯16)。基準位置は、レジストレスローラー対7bの回転軸の軸線方向が主走査方向(用紙搬送方向と垂直な方向)と平行な位置である。ユニット制御回路92は、用紙がレジストレスユニット7に進入する前に矯正位置への移動を完了させる。例えば、ユニット制御回路92は、ラインセンサー60への用紙到達の認識後、第1時間が経過する前に、レジストレスユニット7(ケース7a)の矯正位置への移動を完了させる。第1時間は、ラインセンサー60の読み取り位置(読取ユニット6)からレジストレスローラー対7bのニップまでの距離を第1速度で除して得られる時間である。第1速度は、給紙ローラーからレジストレスローラー対7bまでの仕様上(設計上)の用紙搬送速度である(詳細は後述)。
【0064】
(1)用紙の主走査方向の一方側(支点側)の隅が用紙搬送方向下流側に突出する方向で用紙が斜行している場合
ユニット制御回路92は、用紙の到達前に、レジストレスユニット7の主走査方向の他方側(移動側)の端部を用紙搬送方向上流側に移動させる。基準位置から傾き角度θと同じ角度だけレジストレスユニット7を移動(回動)させた位置が矯正位置である。
【0065】
(2)主走査方向の他方側(移動側)の隅が用紙搬送方向下流側に突出する方向で用紙が斜行している場合
ユニット制御回路92は、用紙の到達前に、レジストレスユニット7の主走査方向の他方側端部を用紙搬送方向下流側に移動させる。この場合も、基準位置から傾き角度θと同じ角度だけレジストレスユニット7を移動(回動)させた位置が矯正位置である。
【0066】
続いて、ユニット制御回路92は、レジストレスユニット7(ケース7a)を矯正位置から基準位置に移動させる(ステップ♯17)。ユニット制御回路92は、用紙の斜行を矯正する位置にレジストレスユニット7を戻す。基準位置への復帰によって、用紙搬送を続けつつ、用紙の斜行を矯正することができる。
【0067】
ユニット制御回路92は、用紙のレジストレスユニット7への進入後、用紙が2次転写ニップ5nに到達する前に、基準位置への移動を開始させる。例えば、ユニット制御回路92は、ラインセンサー60への用紙到達の認識後、第2時間が経過した時点に、レジストレスユニット7(ケース7a)の基準位置への移動を行う。第2時間は、ラインセンサー60の読み取り位置(読取ユニット6)からレジストレスローラー対7bのニップまでの距離を第1速度で除して得られる時間にマージン時間を加算した時間である。第2時間は第1時間よりも長い。用紙がレジストレスローラー対7bのニップに進入してから基準位置に戻るように、マージン時間が予め定められる。
【0068】
ステップ♯14、又は、ステップ♯17の後、ユニット制御回路92は、印刷ジョブの最後の用紙を読み取ったか否かを確認する(ステップ♯18)。言い換えると、ユニット制御回路92は、最後の用紙が読取ユニット6を通過したか否かを確認する。
【0069】
最後の用紙ではない場合(ステップ♯18のNo)、ユニット制御回路92は、次の用紙について、ステップ♯13を行う(ステップ♯13に戻る)。搬送される用紙と用紙の間には、紙間が設けられる。紙間では、フィルター回路8aの出力信号C1のレベルはLowレベルとなる。フィルター回路8aの出力信号C1のレベルはLowレベルになった後、ユニット制御回路92は、2つの基準点画素がHighレベルになったかどうかを再び監視する。
【0070】
最後の用紙の場合(ステップ♯18のNo)、ユニット制御回路92は、本フローチャートの処理を終了する(エンド)。フローチャートを終了するとき、ユニット制御回路92は、ランプ6cを消灯し、ラインセンサー60の読み取りを終了させる。
【0071】
(搬送速度の変化)
次に、
図12を用いて、実施形態に係るレジストレスユニット7での用紙搬送速度の変化の一例を説明する。
図12は、実施形態に係るレジストレスユニット7での用紙搬送速度の変化の一例を示す図である。
【0072】
エンジン制御回路91(エンジン制御部9)は、レジストレスローラー対7bが用紙をニップしている間に、用紙搬送速度を変化させる。
図12に示すように、給紙開始後、用紙がレジストレスユニット7に進入するまで、エンジン制御回路91は、第1速度で用紙を搬送する。レジストレスローラー対7bよりも上流側では、第1速度で用紙が搬送される。具体的に、レジストレスユニット7よりも用紙搬送方向の上流側の用紙搬送用の回転体については、エンジン制御回路91は、周速度が第1速度となるように、各回転体を回転させる。レジストレスユニット7よりも用紙搬送方向の上流側の用紙搬送用の回転体には、例えば、給紙ローラーや用紙搬送部5bに設けられた搬送ローラー対がある。
【0073】
用紙がレジストレスユニット7を通過している間に(進入中に)、エンジン制御回路91は、用紙搬送速度を第1速度から第2速度に切り替える。第2速度は第1速度よりも速い。例えば、第1速度は第2速度よりも10~20%ほど遅くされる。例えば、第1速度が400mm/sのとき、第2速度は360mm/sである。
【0074】
レジストレスユニット7よりも用紙搬送方向の下流側の用紙搬送用やトナー像形成用の回転体については、エンジン制御回路91は、周速度が第2速度となるように、各回転体を回転させる。レジストレスユニット7よりも下流側の回転体には、感光体ドラム53、中間転写ベルト56、定着用回転体、排出ローラー対などがある。
【0075】
用紙がレジストレスローラー対7bのニップに到達した進入した時点では、エンジン制御回路91は、第1速度で用紙が搬送されるように、レジストレスモーター7cを回転させる。レジストレスローラー対7bの用紙搬送中に、エンジン制御回路91は、第2速度で用紙が搬送されるように、レジストレスモーター7cの回転速度を上げる。
【0076】
エンジン制御回路91は、ラインセンサー60への用紙の到達の認識から速度変更時間が経過したときに、レジストレスローラー対7bの回転速度を第1速度から第2速度に変更する。用紙が傾いていないとき、エンジン制御回路91は、予め定められた基準時間T1を速度変更時間とする。
【0077】
基準時間T1は適宜定めることができる。用紙の下流端がレジストレスローラー対7bのニップよりも下流側に位置し、かつ、用紙の下流端が2次転写ニップ5nに進入する前の時間帯の中から基準時間T1が定められる。例えば、ラインセンサー60からレジストレスローラー対7bのニップまでの搬送距離と、レジストレスローラー対7bから2次転写ニップ5nまでの搬送距離の1/2とを加算した距離を、第1速度で除して得られる時間を基準時間T1と定めるとする。この場合、用紙の下流端がレジストレスローラー対7bから2次転写ニップ5nまでの中間地点のあたりにいる時点で、第2速度への変更がなされる。
【0078】
(速度変更時間の設定)
次に、
図13、
図14を用いて、実施形態に係る速度変更時間の設定の一例を説明する。
図13、
図14は、実施形態に係る速度変更時間の設定の一例を示す図である。
【0079】
レジストレスユニット7の他端側を移動させることにより、用紙を止めることなく、斜行を矯正することができる。矯正するとき、用紙搬送方向において、用紙が用紙搬送方向において、引き上げられたり、引き下げられたりする。レジストレスユニット7を通過中に、用紙の位置が変わる。
【0080】
斜行の有無、及び、傾き角度θの大小によって、画像を用紙にのせる位置(2次転写ニップ5n)に用紙が到達するタイミング(時点)がばらつく。速度変更時間(ラインセンサー60の到達認識から第2速度に変更するまでの時間)が固定値であると、用紙の位置変化の影響によって、用紙ごとに画像の描画位置(1ライン目の位置)がばらつく可能性がある。
【0081】
レジストレスユニット7の移動に起因するずれをレジストレスユニット7で調整する。具体的には、斜行矯正による用紙の位置の移動量に応じて、エンジン制御回路91は長さを調整した速度変更時間を設定する。エンジン制御回路91は、用紙の位置の移動量に応じた速度変更時間を設定する。
【0082】
まず、速度変更時間について、基準時間T1が予め定められる。記憶部2は基準時間T1を不揮発的に記憶する(
図1参照)。基準時間T1は、用紙が傾いていないとき(斜行を矯正しないとき)の速度変更時間である。用紙の斜行を矯正しないとき、エンジン制御回路91は、基準時間T1を速度変更時間として用いる。
【0083】
図13のスタートは、ユニット制御回路92が、読取ユニット6が読み取っている用紙が傾いていると認識した時点である(
図11のステップ♯13のYes)。なお、傾いていないと認識したとき、ユニット制御回路92は、傾いていないことをエンジン制御回路91に通知する。斜行していなければ、斜行矯正による用紙の位置の変化はない。傾いていないことの通知を受けたとき、エンジン制御回路91は、基準時間T1を速度変更時間に設定する。
【0084】
傾いていると認識したとき、ユニット制御回路92は第1ずれ量D1を求める(ステップ♯21)。第1ずれ量D1は、斜行矯正に基づく用紙の位置(下流端の位置)のずれ量である。求めた傾き角度θに基づき、ユニット制御回路92は第1ずれ量D1を求める。
【0085】
図14を用いて、第1ずれ量D1の求め方について説明する。
図14では、用紙搬送路と用紙の主走査方向での中央を破線で示している。基準位置にあるレジストレスユニット7とレジストレスローラー対7bの軸線を実線で示している。矯正位置にあるレジストレスユニット7とレジストレスローラー対7bの軸線を2点鎖線で示している。
図4では、傾き角度θも示している。
【0086】
ユニット制御回路92は、以下の式1に基づき、第1ずれ量D1を求める。
(式1)第1ずれ量D1=A×B
Aは、用紙の中心から支点までの距離である。言い換えると、Aは、支点軸7fの中心と用紙の中心をつなぐ主走査方向の直線の長さである。
BはTanθである。
図14にAと第1ずれ量D1を示す。支点軸7fの中心と用紙の中心をつなぐ主走査方向の直線を隣辺(底辺)とする角度θの直角三角形において、その対辺の長さ(高さ)が第1ずれ量D1となる。
【0087】
ユニット制御回路92は、求めた第1ずれ量D1と傾き方向をエンジン制御回路91に通知する(ステップ♯22)。なお、エンジン制御回路91が第1ずれ量D1を求めてもよい。この場合、ユニット制御回路92は、傾き角度θと傾き方向をエンジン制御回路91に通知する。
【0088】
通知された第1ずれ量D1に基づき、エンジン制御回路91は、第1ずれ量D1を第1速度で除して、第1除算値を求める(ステップ♯23)。第1除算値に基づき、エンジン制御回路91は、加算時間又は減算時間を定める(ステップ♯21)。そして、エンジン制御回路91は、定めた加算時間又は減算時間に基づき、速度変更時間を定める(ステップ♯22)。ステップ♯22によって、本フローチャートの処理は終了する(エンド)。
【0089】
(1)用紙の主走査方向の一方側(支点側)の隅が用紙搬送方向下流側に突出する方向で用紙が斜行しているとき
この場合、エンジン制御回路91は、第1除算値を加算時間とする。そして、エンジン制御回路91は、基準時間T1に加算時間を加えた時間を速度変更時間と定める。
【0090】
一方側(支点側)の隅が下流側に突出する用紙を矯正すると、用紙は下流側に移動する。矯正によって用紙の他方側の隅が引き上げられるためである。なお、用紙の位置の移動方向は、支点軸7fの位置と傾き方向による。用紙が進む方向に移動するので、第2速度への変更時点は、基準よりも遅らせることが好ましい。遅らせれば、斜行のない用紙との2次転写ニップ5nへの到達時点との差を減らすことができる。
【0091】
そこで、エンジン制御回路91は、基準時間T1に加算時間を加え、基準よりも速度変更時間を長くする。しかも、第1ずれ量D1の絶対値が大きいほど、加算時間は大きくなる。第1ずれ量D1が大きいほど、速度変更時間が長くなる。エンジン制御回路91は、第1ずれ量D1に応じた速度変更時間を定める。
【0092】
(2)用紙の主走査方向の他方側(レジストレスユニット7の移動端側)の隅が用紙搬送方向下流側に突出する方向で用紙が斜行しているとき
この場合、エンジン制御回路91は、第1除算値を減算時間とする。そして、エンジン制御回路91は、基準時間T1から減算時間を減じた時間を速度変更時間と定める。
【0093】
他方側(レジストレスユニット7の移動端側)の隅が下流側に突出する用紙を矯正すると、用紙は上流側に移動する。矯正によって他方側の隅が引き戻されるためである。用紙を戻す方向に移動するので、第2速度への変更時点は、基準よりも早めることが好ましい。早めることで、斜行のない用紙との2次転写ニップ5nへの到達時点との差を減らすことができる。
【0094】
エンジン制御回路91は、基準時間T1から減算時間を減じて、基準よりも速度変更時間を短くする。しかも、第1ずれ量D1の絶対値が大きいほど、減算時間は大きくなる。第1ずれ量D1が大きいほど、速度変更時間が短くなる。エンジン制御回路91は、第1ずれ量D1に応じた速度変更時間を定める。
【0095】
(速度変更時間の補正)
次に、
図15~
図19を用いて、実施形態に係る速度変更時間の補正の一例を説明する。
図15、
図16は、実施形態に係るラインセンサー60の用紙の読み取りの一例を示す図である。
図17は、実施形態に係る速度変更時間の補正の一例を示す図である。
図18、
図19は、実施形態に係る第2ずれ量D2の一例を示す図である。
【0096】
上述のように、ユニット制御回路92は、ラインセンサー60への用紙の到達を認識する。具体的に、第3ブロック63の所定割合の画素が用紙を読み取ったとき(出力信号C1がHighレベルになったとき)、ユニット制御回路92はラインセンサー60に用紙が到達したと認識する。
【0097】
用紙が傾いていなければ、ラインセンサー60まで来た用紙の読み取りを開始した直後に、所定割合以上の画素が用紙を読み取る。
図15は、傾いていない用紙の読み取りの一例を示す。
図15の太線はラインセンサー60を示す。
図15での破線は、用紙の主走査方向の中央及び中央読取画素の位置を示す。
図15の2点鎖線は、第3ブロック63の主走査方向の中央を示す。
【0098】
図15に示すように、用紙が傾いていない場合、下流端が到達すると、第3ブロック63の全画素のアナログ画像信号A1(二値化信号B1)は、LowレベルからHighレベルに変化する。第3ブロック63の全画素が搬送される用紙を同時に読み取る。
【0099】
図16は、傾いた用紙の読み取りの一例を示す。
図16の太線はラインセンサー60を示す。
図16でも、破線は用紙の主走査方向の中央及び中央読取画素の位置を示す。
図16の2点鎖線は、第3ブロック63の主走査方向の中央を示す。なお、
図16以降の図では、わかりやすさのため、実際よりも用紙の傾きを大きくしている。
【0100】
搬送される用紙が傾いているとき、
図16の上側の図に示すように、最初は、第3ブロック63の一部の画素のみが用紙を読み取る。
図16の下側の図に示すように、搬送されるにつれて用紙を読み取る画素が増える。用紙の読み取り開始後、用紙を読み取った画素が所定割合を超えた時点で、ユニット制御回路92が用紙到達を認識する。用紙が傾いている場合、用紙が傾いていないときに比べて、ユニット制御回路92が用紙到達を認識する時点がずれる(遅れる)。
【0101】
基準時間T1は、傾いていない用紙の印刷位置が適切となるように設定される。傾きの有無によって、ラインセンサー60への用紙到達の認識時点がずれることを考慮して、エンジン制御部9(エンジン制御回路91)は速度変更時間を補正する。
【0102】
次に、
図17を用いて、速度変更時間の補正の一例を説明する。
図13のフローチャートに示すように、エンジン制御回路91は速度変更時間を定める。さらに、エンジン制御回路91は、定めた速度変更時間を補正する。
図17のスタートも、ユニット制御回路92が、読取ユニット6が読み取る用紙が傾いていると認識した時点である(
図11のステップ♯13のYes)。なお、傾いていないと認識したとき、ユニット制御回路92は、用紙が傾いていないことをエンジン制御回路91に通知する。この通知を受けたときは、エンジン制御回路91は、速度変更時間を補正しない。
【0103】
傾いていると認識したとき、ユニット制御回路92は、第2ずれ量D2を求める(ステップ♯31)。ユニット制御回路92は、求めた傾き角度θ、傾き方向、及び、中央読取ブロックが出力するアナログ画像信号A1に基づき、第2ずれ量D2を求める。
【0104】
(1)用紙の主走査方向の一方側(支点側)の隅が用紙搬送方向下流側に突出する方向に傾いている場合
図18を用いて、この傾き方向での第2ずれ量D2の求め方の1例を説明する。
図18の破線は、用紙搬送路の主走査方向の中央及び中央読取画素の位置を示す。中央読取画素は、傾いていない用紙及び用紙搬送路の主走査方向の中央を読み取る画素である。
図18の2点鎖線は、第3ブロック63のラインセンサー60の中央を示す。本説明では、所定割合が50%である。本説明では、2点鎖線の右側の画素の全て、又は、左側の画素の全てが用紙を読み取ると、ユニット制御回路92が用紙到達を認識する。
【0105】
用紙の一方側(支点側)の隅が下流側に突出するように傾いているとき、ユニット制御回路92は、以下の式2に基づき、第2ずれ量D2を求める。
(式2)第2ずれ量D2=C×D
Cは、第1頂点画素から中央読取画素までの距離である。第1頂点画素は、用紙の到達の認識時点において、アナログ画像信号A1(二値化信号B1)のレベルが用紙を読み取っていないことを示すレベルの画素のうちで中央読取画素に最も近い画素である。搬送読取画像データを参照して、ユニット制御回路はこの距離を認識する。Dは、Tanθである。
図18にCと第2ずれ量D2を示す。第1頂点画素と中央読取画素をつなぐ主走査方向の直線を隣辺(底辺)とする角度θの直角三角形において、その対辺の長さ(高さ)が第2ずれ量D2となる。
【0106】
(2)用紙の主走査方向の他方側(移動側)の隅が用紙搬送方向下流側に突出する方向に傾いている場合
図19を用いて、この傾き方向のときの第2ずれ量D2の求め方の1例を説明する。
図19の破線は、用紙搬送路の主走査方向の中央の位置及び中央読取画素の位置を示す。
図19の2点鎖線は、第3ブロック63のラインセンサー60の中央を示す。
【0107】
用紙の移動端側の隅が下流側に突出するように傾いているとき、ユニット制御回路92は、以下の式2に基づき、第2ずれ量D2を求める。
(式2)第2ずれ量D2=E×F
Eは、第2頂点画素から中央読取画素までの距離である。第2頂点画素は、用紙の到達の認識時点において、アナログ画像信号A1(二値化信号B1)のレベルが用紙を読み取っていることを示すレベルの画素のうち、中央読取画素に最も近い画素である。搬送読取画像データを参照して、ユニット制御回路はこの距離を認識する。Dは、Tanθである。
図19にEと第2ずれ量D2を示す。第2頂点画素と中央読取画素をつなぐ主走査方向の直線を隣辺(底辺)とする角度θの直角三角形において、その対辺の長さ(高さ)が第2ずれ量D2となる。
【0108】
ユニット制御回路92は、求めた第2ずれ量D2をエンジン制御回路91に通知する(ステップ♯32)。なお、エンジン制御回路91が第2ずれ量D2を求めてもよい。エンジン制御回路91は、通知された第2ずれ量D2を第1速度で除して、補正時間を求める(ステップ♯33)。補正時間に基づき、エンジン制御回路91は、速度変更時間を補正する(ステップ♯34)。ステップ♯34によって、本フローチャートの処理は終了する(エンド)。
【0109】
用紙が傾いている場合、用紙が傾いていないときよりも、到達の認識時点が遅れる。用紙が傾いている場合、ラインセンサー60をある程度用紙が通過してから、ユニット制御回路92がラインセンサー60の用紙到達を認識する。つまり、用紙が傾いている場合、用紙が傾いていないときよりも用紙が進んでから、ユニット制御回路92がラインセンサー60の用紙到達を認識する。
【0110】
そのため、用紙が傾いているときに補正しない速度変更時間を用いた場合、第2速度への変更時点での用紙の下流端の位置は、傾いていない用紙よりも下流に進んでいる場合がある。つまり、補正しない速度変更時間を用いた場合、ラインセンサー60への到達認識から2次転写ニップ5nに到達するまでの時間は、傾きが矯正された用紙の方が、傾いていない用紙よりも短くなる場合がある。
【0111】
傾いた用紙については、2次転写ニップ5nへの到達を遅らせる方向に速度変更時間を補正することが考えられる。言い換えると、傾いた用紙については、補正時間分、2次転写ニップ5nへの用紙の到達を遅らせる調整を行うことが考えられる。そこで、例えば、エンジン制御回路91は、速度変更時間に補正時間を加算する補正を行ってもよい。
【0112】
(レジストレスローラー対7bの回転制御)
次に、
図20を用いて、実施形態に係るレジストレスローラー対7bの回転制御の一例を説明する。
図20は、実施形態に係るレジストレスローラー対7bの回転制御の一例を示す図である。
【0113】
図20のスタートは、ユニット制御回路92がラインセンサー60への用紙の到達を認識した時点である。なお、用紙ごとに、エンジン制御部9(ユニット制御回路92とエンジン制御回路91)は、
図20のフローチャートを実行する。
図20のスタート時点では、エンジン制御回路91は、レジストレスローラー対7bを第1速度で回転させている。
【0114】
ユニット制御回路92からのラインセンサー60への用紙到達の通知に基づき、エンジン制御回路91は、計時を開始する(ステップ♯41)。エンジン制御回路91は、計時開始後、速度変更時間を定め、場合により補正する。そして、エンジン制御回路91は計時開始から速度変更時間が経過したことを認識する(ステップ♯42)。そして、エンジン制御回路91は、レジストレスローラー対7bの用紙搬送速度(レジストレスローラー対7bの周速度)を、第1速度から第2速度に変更する(ステップ♯43)。これにより、レジストレスローラー対7bの用紙搬送速度を高める処理は終了する(エンド)。
【0115】
なお、搬送した用紙が印刷ジョブの最後の用紙ではない場合、エンジン制御回路91は、レジストレスローラー対7bの用紙搬送速度を、第2速度から第1速度に戻す。次の用紙に備える。ユニット制御回路92は、フィルター回路8aの出力信号C1のレベルがLowレベルになったとき、用紙が通過したと認識する。ユニット制御回路92は、ラインセンサー60からの用紙通過をエンジン制御回路91に通知する。この通知を受けたとき、エンジン制御回路91は、第2速度から第1速度に戻してもよい。一方、搬送した用紙が印刷ジョブの最後の用紙である場合、エンジン制御回路91は、レジストレスローラー対7b(レジストレスモーター7c)を停止させる。
【0116】
このようにして、実施形態に係る画像形成装置(複合機100)は、画像形成部5c、読取ユニット6、レジストレスユニット7、エンジン制御部9(エンジン制御回路91とユニット制御回路92)を含む。画像形成部5cは搬送される用紙に画像を形成する。読取ユニット6は画像形成部5cよりも用紙搬送方向上流側に設けられる。読取ユニット6は、主走査方向で画素が並ぶように設けられたラインセンサー60を含む。読取ユニット6は搬送される用紙を読み取る。レジストレスユニット7は、画像形成部5cよりも用紙搬送方向上流側かつ読取ユニット6よりも用紙搬送方向下流側に設けられる。ラインセンサー60が出力するアナログ画像信号A1に基づき、エンジン制御部9は、ラインセンサー60への用紙の到達と、搬送される用紙の傾き角度θとを認識する。エンジン制御部9は用紙搬送速度を制御する。レジストレスユニット7は、レジストレスローラー対7b、レジストレスモーター7c、ケース7a、移動機構を含む。レジストレスローラー対7bは用紙を画像形成部5cに向けて送る。レジストレスモーター7cはレジストレスローラー対7bを回転させる。ケース7aは、レジストレスローラー対7bを収容し、主走査方向の一端側に設けられた支点を有する。移動機構は、支点を中心にケース7aの他端側を用紙搬送方向で移動させる。エンジン制御部9は、用紙がレジストレスローラー対7bのニップに進入すると、ケース7aの他端側を移動機構に移動させて、用紙の斜行を矯正する。エンジン制御部9は、矯正に基づく用紙の位置のずれ量である第1ずれ量D1を求める。エンジン制御部9は、用紙の用紙搬送方向の下流側の端辺がレジストレスユニット7に到達した時点では、用紙搬送速度が第1速度となるようにレジストレスローラー対7bを回転させる。エンジン制御部9は、用紙のレジストレスローラー対7bのニップへの進入後、用紙搬送速度が第2速度となるようにレジストレスローラー対7bを回転させる。第1ずれ量D1に基づき、エンジン制御部9は、第1速度から第2速度に変更するタイミングを調整する。
【0117】
用紙の主走査方向の一端を振って(動かして)斜行を矯正することができる。搬送速度を変える時点を調整するので、ラインセンサー60で用紙到達を認識してから用紙に画像をのせる位置(2次転写ニップ5n)に到達するまでの時間を一定にすることができる。用紙の下流端が画像形成位置に到達するタイミングを一定にすることができる。どの用紙でも、1ライン目の描画位置が同じ位置となる。画像の印刷位置のばらつきを防ぐことができる。
【0118】
第2速度は第1速度よりも速い。ラインセンサー60への用紙の到達の認識から速度変更時間が経過したとき、エンジン制御部9は第1速度から第2速度への変更を行う。用紙の斜行を矯正しないとき、エンジン制御部9は、予め定められた基準時間T1を速度変更時間とする。用紙を用紙搬送方向の下流側に移動させる矯正をしたとき、エンジン制御部9は、基準時間T1に加算時間を加えた時間を速度変更時間とする。用紙を用紙搬送方向の上流側に移動させる矯正をしたとき、エンジン制御部9は、基準時間T1から減算時間を減じた時間を速度変更時間とする。画像の形成位置(2次転写ニップ5n)に用紙が到達するタイミングが一定となるように、レジストレスローラー対7bの用紙搬送速度を変えるタイミングを調整することができる。レジストレスユニット7による斜行の矯正で生じたずれを、用紙がレジストレスユニット7を通過している間に解消することができる。
【0119】
用紙を用紙搬送方向の下流側に移動させる矯正をしたとき、エンジン制御部9は、第1ずれ量D1が大きいほど、加算時間を大きくする。用紙を用紙搬送方向の上流側に移動させる矯正をしたとき、エンジン制御部9は、第1ずれ量D1が大きいほど、減算時間を大きくする。搬送方向に進むように斜行を矯正したとき、第2速度での搬送開始を遅らせることができる。搬送方向で用紙が戻るように斜行を矯正したとき、第2速度での搬送開始を早めることができる。
【0120】
エンジン制御部9は、A×Bの演算により、第1ずれ量D1を求める。Aは用紙の中心から支点までの距離である。BはTanθである。エンジン制御部9は、第1ずれ量D1を第1速度で除して得られる時間を加算時間又は減算時間とする。用紙中心を基準として、第1ずれ量D1を定めることができる。斜行の有無を問わず、ラインセンサー60に基づき用紙到達を認識してから画像形成位置(2次転写ニップ5n)に到達するまでの時間が全ての用紙で同じとなるように、加算時間と減算時間を定めることができる。
【0121】
ラインセンサー60は、複数のブロックを含む。複数のブロックのうち、中央読取ブロックが出力するアナログ画像信号A1に基づき、エンジン制御部9は、ラインセンサー60への用紙の到達を認識する。所定割合以上の中央読取ブロックの画素のアナログ画像信号A1のレベルが用紙を読み取ったときのレベルになったとき、エンジン制御部9は、用紙がラインセンサー60に到達したと認識する。中央読取ブロックは、用紙搬送路の主走査方向の中央を読み取る中央読取画素を含むブロックである。所定割合以上の画素が用紙を読み取った時点を、ラインセンサー60への用紙到達時点とすることができる。
【0122】
中央読取ブロックが出力するアナログ画像信号A1に基づき、エンジン制御部9は、斜行による用紙の到達の認識時点のずれに基づく第2ずれ量D2を求める。エンジン制御部9は、第2ずれ量D2に基づき、補正時間を求める。エンジン制御部9は、定めた速度変更時間に補正時間を加算して、速度変更時間を補正する。ラインセンサー60の各画素は主走査方向(用紙搬送方向と垂直な方向)で並ぶ。用紙が傾いていない場合、用紙が到達したとき、全ての画素が同時に用紙を読み取る。用紙が傾いているとき、最初は一部の画素が用紙を読み取り、用紙搬送が進むに従って、用紙を読み取る画素が増えていく。その結果、用紙が傾いているとき、傾いていないときに比べ、用紙が進んでからラインセンサー60に用紙が到達したと認識することがある。認識時点のずれが画像の印刷位置のずれとして現れる可能性がある。認識時点のずれがあっても、センサーで用紙到達を認識してから画像を用紙にのせる位置に到達するまでの時間を一定にするように、用紙搬送速度を変える時点を補正することができる。傾きの有無によらず、画像を用紙にのせる位置に用紙が到達するタイミングを一定にすることができる。用紙内での画像の印刷位置のばらつきを防ぐことができる。
【0123】
用紙の主走査方向の一方側の隅が用紙搬送方向下流側に突出する方向に傾いている場合、エンジン制御部9は、C×Dの演算により第2ずれ量D2を求める。Cは第1頂点画素から中央読取画素までの距離である。DはTanθである。第1頂点画素は、用紙の到達の認識時点において、アナログ画像信号A1のレベルが用紙を読み取っていないことを示すレベルの画素のうちで中央読取画素に最も近い画素である。用紙の主走査方向の他方側の隅が用紙搬送方向下流側に突出する方向に傾いている場合、エンジン制御部9は、E×Fの演算により、第2ずれ量D2を求める。Eは第2頂点画素から中央読取画素までの距離である。FはTanθである。第2頂点画素は、用紙の到達の認識時点において、アナログ画像信号A1のレベルが用紙を読み取っていることを示すレベルの画素のうちで中央読取画素に最も近い画素である。用紙の傾きの方向に応じて、第2ずれ量D2を正確に求めることができる。用紙の傾き方向に応じて、速度変更時間を補正することができる。
【0124】
画像形成装置(複合機100)は、二値化回路8とフィルター回路8aと、を含む。二値化回路8は、中央読取ブロックが出力する各画素のアナログ画像信号A1を二値化する。フィルター回路8aは、二値化回路8の出力が入力され、中央読取ブロックのうちの予め定められた所定割合以上の画素が用紙を読み取ったときにHighレベルを出力する。フィルター回路8aの出力信号C1がHighレベルになったとき、エンジン制御部9は、ラインセンサー60に用紙が到達したと認識する。斜行した用紙を一定以上の画素が読み取ったとき、用紙が到達したと判定(認識)することができる。
【0125】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。例えば、第2ずれ量D2に基づく補正を行わないようにしてもよい。この場合、エンジン制御部9は、
図17のフローチャートを実行しない。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は搬送用紙を読み取る読取ユニットを含む画像形成装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0127】
100 複合機(画像形成装置) 5c 画像形成部
6 読取ユニット 60 ラインセンサー
63 第3ブロック(中央読取ブロック) 7 レジストレスユニット
7b レジストレスローラー対 7c レジストレスモーター
7a ケース 71 移動機構
7f 支点軸 8 二値化回路
8a フィルター回路 9 エンジン制御部
91 エンジン制御回路 92 ユニット制御回路
A1 アナログ画像信号 D1 第1ずれ量
D2 第2ずれ量 T1 基準時間
θ 傾き角度