(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】屋根ユニットの骨組構造及び屋根ユニットの地組方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20240110BHJP
E04B 1/19 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
E04B1/58 503H
E04B1/19 G
(21)【出願番号】P 2019222279
(22)【出願日】2019-12-09
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】尾方 武
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-116729(JP,A)
【文献】特開平07-102637(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00 - 1/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根ユニットの骨組構造であって、
管状の第1部材と、
前記第1部材内への挿入方向に対して直交する上下方向に隙間が形成されて少なくとも第1壁部が弾性変形可能とされ、前記第1壁部が弾性変形して当該第1部材内へ挿入され、前記第1部材内へ挿入されると前記第1壁部は復元し当該第1壁部の外面が当該第1部材の内面に接触する挿入部が設けられた管状の第2部材と、
を
備え、
前記第1部材及び前記第2部材が角筒状を成し、
前記隙間は、前記第1壁部の両側に配置され互いに対向する一対の第2壁部に形成された切欠き部によって前記第2壁部と前記第1壁部との間に設けられ、
前記第1部材及び前記第2部材は、水平面に対して所定の角度で傾斜した状態で配置され、
前記切欠き部は、前記第1壁部に対して前記所定の角度を有してテーパ状に切り落とされている屋根ユニットの骨組構造。
【請求項2】
前記第1部材
と前記挿入部の間で締結されるボルト同士が干渉しないように位置決めされたボルト締結部を有する請求項1に記載の屋根ユニットの骨組構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の前記第2部材の前記挿入部を弾性変形させて請求項1又は請求項2に記載の前記第1部材内へ挿入する挿入工程と、
前記第1部材内へ前記挿入部が挿入され当該挿入部が復元すると、前記第1壁部の外面が前記第1部材の内面に接触した状態で、ボルト締結部により前記第1部材と前記挿入部を締結する締結工程と、
を有する屋根ユニットの地組方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根ユニットの骨組構造及び屋根ユニットの地組方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、大型テントの骨組み等、トラス構造を構成する桁材同士を接続するにあたって、接続された桁材を水平に保持しうる接続具に関する技術が開示されている。
【0003】
簡単に説明すると、この先行技術では、接続具が、桁材としての上弦材を載置するための載置部材と、桁材としての下弦材を当該下弦材の上面に沿って案内するガイド部材と、を有しており、載置部材の上面は、水平面に対して傾斜して配置され、これにより、桁材を水平に保持するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この先行技術では、桁材(部材)としての下弦材が水平、上弦材が傾斜している場合、下弦材及び上弦材を接続具へ接続させる際、上弦材が接続具と干渉し、上弦材の接続具への接続が困難である。
【0006】
本発明は上記事実を考慮し、傾斜している部材同士であっても容易に接続させることが可能な屋根ユニットの骨組構造及び屋根ユニットの地組方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る屋根ユニットの骨組構造は、管状の第1部材と、前記第1部材内への挿入方向に対して直交する上下方向に隙間が形成されて少なくとも第1壁部が弾性変形可能とされ、前記第1壁部が弾性変形して当該第1部材内へ挿入され、前記第1部材内へ挿入されると前記第1壁部は復元し当該第1壁部の外面が当該第1部材の内面に接触する挿入部が設けられた管状の第2部材と、を有している。
【0008】
第1の態様に係る屋根ユニットの骨組構造では、管状の第1部材及び管状の第2部材が備わっている。第2部材には挿入部が設けられており、当該挿入部が第1部材内へ挿入される。
【0009】
ここで、第2部材に設けられた挿入部は、第1部材内への挿入方向に対して直交する上下方向に隙間が形成されており、この隙間によって、少なくとも挿入部の第1壁部が弾性変形可能とされている。このため、少なくとも挿入部の第1壁部を(当該挿入部の外形を小さくする方向へ)弾性変形させた状態で、当該挿入部を第1部材内へ挿入することができる。
【0010】
そして、当該挿入部が第1部材内へ挿入されると、挿入部の第1壁部は復元し、当該第1壁部の外面が当該第1部材の内面に接触する。この状態で、第1部材に挿入部を固定することによって、当該挿入部を介して第1部材と第2部材を接続させることが可能となる。
【0011】
つまり、本態様では、第1部材内へ第2部材の挿入部を挿入させるとき、少なくとも挿入部の第1壁部が弾性変形することによって、当該挿入部をスムーズに第1部材内へ挿入させることができる。また、第2部材の挿入部が第1部材内へ挿入されると、当該挿入部の第1壁部の外面が当該第1部材の内面に接触し、この状態で、第1部材に挿入部が固定される。
【0012】
このように、第1部材に挿入する第2部材の挿入部を弾性変形可能に形成することによって、第1部材及び第2部材が水平面に対して傾斜した状態で接続される場合であっても、第2部材の挿入部を弾性変形させることで、当該挿入部を第1部材内へ容易に挿入し接続することが可能となる。
【0013】
なお、ここでの「管状」には、第1部材及び第2部材において、内部が中空となっていればよい。このため、第1部材及び第2部材は、断面形状が多角形状となる角筒以外に、断面形状が円筒の場合も含まれる。また、ここでの「直交」について、必ずしも完全な直交に限るものではなく、いわゆる「略直交」を含む概念である。
【0014】
第2の態様に係る屋根ユニットの骨組構造は、第1の態様に係る屋根ユニットの骨組構造において、前記第1部材及び前記第2部材が角筒状を成し、前記隙間は、前記第1壁部の両側に配置され互いに対向する一対の第2壁部に形成された切欠き部によって前記第2壁部と前記第1壁部との間に設けられている。
【0015】
第2の態様に係る屋根ユニットの骨組構造では、第1部材及び第2部材が角筒状を成している。また、第2部材の挿入部には、第1壁部の両側に配置され互いに対向する一対の第2壁部に切欠き部が形成されている。このように、互いに対向する一対の第2壁部に切欠き部が形成されることによって、当該第2壁部と第1壁部との間に隙間が設けられる。
【0016】
第3の態様に係る屋根ユニットの骨組構造は、第2の態様に係る屋根ユニットの骨組構造において、前記第1部材及び前記第2部材は、水平面に対して所定の角度で傾斜した状態で配置され、前記切欠き部は、前記第1壁部に対して前記所定の角度を有してテーパ状に切り落とされている。
【0017】
第3の態様に係る屋根ユニットの骨組構造では、第1部材及び第2部材は、水平面に対して所定の角度で傾斜した状態で配置される。ここで、第2部材に設けられた挿入部の第2壁部において、切欠き部は、挿入部の第1壁部に対して所定の角度を有してテーパ状に切り落とされている。
【0018】
この切欠き部によって、第2部材に設けられた挿入部の第1壁部は第2壁部側へ向かって弾性変形することとなるが、水平面に対して所定の角度で傾斜した状態で配置された第1部材に対して、第2部材の挿入部を当該第1部材内へ挿入するとき、第1壁部が切欠き部に当接した状態で、第1壁部は略水平に配置される。
【0019】
このため、水平面に対して所定の角度で傾斜した状態で配置された第1部材に対して、第2部材の挿入部を当該第1部材内へ挿入し易くなる。
【0020】
なお、ここでの「水平面」について、必ずしも完全な水平面に限るものではなく、いわゆる「略水平面」を含む概念である。
【0021】
第4の態様に係る屋根ユニットの骨組構造は、第1の態様~第3の態様の何れか1の態様に係る屋根ユニットの骨組構造において、前記第1部材と前記挿入部の間で締結されるボルト同士が干渉しないように位置決めされたボルト締結部を有している。
【0022】
第4の態様に係る屋根ユニットの骨組構造では、第1部材と挿入部の間で締結されるボルト締結部では、ボルト同士が干渉しないように位置決めされている。これにより、例えば、予め設定されたボルトよりも寸法の長いボルトを使用する場合でも、ボルト同士が干渉しないため、当該ボルトをそのまま使用することができる。
【0023】
第5の態様に係る屋根ユニットの地組方法は、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の前記第2部材の前記挿入部を弾性変形させて請求項1~請求項4の何れか1項に記載の前記第1部材内へ挿入する挿入工程と、前記第1部材内へ前記挿入部が挿入され当該挿入部が復元すると、前記挿入部の前記第1壁部の外面が前記第1部材の内面に接触した状態で、ボルト締結部により前記第1部材と前記挿入部を締結する締結工程と、を有している。
【0024】
第5の態様に係る屋根ユニットの地組方法では、挿入工程と、締結工程と、を有している。挿入工程は、第2部材の挿入部を弾性変形させて第1部材内へ挿入する工程であり、締結工程は、第1部材内へ第2部材の挿入部が挿入され当該挿入部が復元すると、挿入部の第1壁部の外面が第1部材の内面に接触した状態で、ボルト締結部により第1部材と挿入部を締結する。
【0025】
このように、本態様では、第1部材に挿入する第2部材の挿入部を弾性変形させることによって、第1部材及び第2部材が水平面に対して傾斜した状態で接続される場合であっても、当該挿入部を第1部材内へスムーズに挿入させることができる。
【0026】
また、ボルト締結部により第1部材と第2部材の挿入部を締結することによって、例えば、ビスによる固定(ビス打ち)と比較して、第1部材と第2部材との結合箇所を少なくすることができ、その分、作業性が向上する。また、ビス打ちよりもボルト締結の方が結合強度が高い。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本態様に係る屋根ユニットの骨組構造及び屋根ユニットの地組方法は、傾斜している部材同士であっても容易に接続させることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本実施の形態に係る屋根ユニットの骨組構造を構成する第2部材としての雄側上弦材の要部を示す分解斜視図である。
【
図2】本実施の形態に係る屋根ユニットの骨組構造を構成する第1部材としての雌側上弦材及び雄側上弦材の要部を示す斜視図である。
【
図3】本実施の形態に係る屋根ユニットの骨組構造を構成する雌側上弦材と雄側上弦材が接続された状態を示す斜視図である。
【
図4】本実施の形態に係る屋根ユニットの骨組構造を構成する雌側上弦材と雄側上弦材が接続された状態を示す側面図である。
【
図5】
図4で示すA-A線に沿って切断したときの断面図である。
【
図6】本実施形態に係る屋根ユニットの骨組構造におけるトラス構造の一部を示す、(A)は、雌側上弦材と雄側上弦材、及び雌側下弦材と雄側下弦材が接続される前の状態を示す側面図であり、(B)は、雌側上弦材と雄側上弦材、及び雌側下弦材と雄側下弦材が接続された後の状態を示す側面図である。
【
図7】
図6(A)に示すA部を拡大した要部を示す側面図である。
【
図8】
図6(B)に示すB部を拡大した要部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を用いて、本発明の一実施形態に係る建物について説明する。
(屋根ユニットの骨組構造の構成)
【0030】
まず、本発明の一実施の形態に係る屋根ユニットの骨組構造の構成について説明する。
図2には、本実施形態に係る屋根ユニットの骨組構造10における要部の構成を示す、雌側上弦材(第1部材)12及び雄側上弦材(第2部材)14の斜視図が示されている。
【0031】
図2に示されるように、屋根ユニットの骨組構造10では、トラス構造11(
図6参照)の一部を成す、雌側上弦材12と雄側上弦材14とが備わっている。雌側上弦材12及び雄側上弦材14には、それぞれ角鋼管が用いられており、雄側上弦材14は、角筒状の雄側上弦材本体18の長手方向の一端部19に挿入部16が設けられている。この挿入部16を介して、雌側上弦材12と雄側上弦材14とは、互いに接続されるようになっている。
【0032】
ここで、
図1には、雄側上弦材14(雄側上弦材本体18及び挿入部16)の分解斜視図が示されている。
図1に示されるように、挿入部16は、雄側上弦材本体18の形状に合わせて各筒状を成すように形成されている。
【0033】
例えば、本実施形態では、長板状の4枚の鋼板によって、互いに上下に対向して配置される上壁部(第1壁部)16Aと下壁部16B、当該上壁部16A及び下壁部16Bの両側において互いに対向して配置される縦壁部(第2壁部)16C、16Dが形成されている。
【0034】
また、挿入部16の縦壁部16C、16Dの幅寸法は、雄側上弦材本体18の形状に合わせて、上壁部16A及び下壁部16Bの幅寸法よりも大きくなるように形成されている。なお、これらの幅寸法については、雄側上弦材本体18の形状に合わせて適宜変更可能とされる。
【0035】
また、本実施形態では、挿入部16は、板状の4枚の鋼板(上壁部16A、下壁部16B、縦壁部16C、16D)によって角筒状を成すように構成されているが、これに限るものではない。
【0036】
例えば、図示はしないが、鉛直方向に沿って切断したときの断面形状がL字状を成す2つのアングルを向かい合わせて配置することによって角筒状を成すように構成されてもよい。さらには、挿入部の形状は、必ずしも角筒状を成す必要はなく、2枚の鋼板で挿入部が構成されてもよい。
【0037】
一方、当該雄側上弦材本体18の長手方向の一端部19には、上壁部18A、下壁部18B及び縦壁部18C、18Dに、それぞれ複数の締結孔20が形成されている。この締結孔20に対応して、挿入部16の上壁部16A、下壁部16B及び縦壁部16C、16Dの長手方向の一端側には、それぞれ締結孔35(
図2参照)及びウェルドナット22が設けられている。
【0038】
これにより、当該挿入部16の上壁部16A、下壁部16B及び縦壁部16C、16Dの長手方向の一端側が、ボルト24、26、28、30及びウェルドナット22を介して、雄側上弦材本体18の上壁部18A、下壁部18B及び縦壁部18C、18Dにそれぞれ接触し締結されるようになっている。
【0039】
なお、各ボルト24、26、28、30は、その移動軌跡上において、ボルト24、26、28、30同士が互いに干渉しないように予め位置決めされている。例えば、雄側上弦材本体18の縦壁部18C、18Dでは、雄側上弦材本体18の長手方向に沿って締結孔20の位置をいわゆる千鳥状に位置し、側面視で締結孔20の位置が重ならないようにしている。
【0040】
そして、
図2に示されるように、挿入部16の上壁部16A、下壁部16B及び縦壁部16C、16Dの長手方向の一端側が、雄側上弦材本体18の上壁部18A、下壁部18B及び縦壁部18C、18Dに対して、それぞれボルト24、26、28、30及びウェルドナット22を介して締結されることによって、当該上壁部16A、下壁部16B及び縦壁部16C、16Dは、挿入部16として、雄側上弦材本体18と一体化されることとなる。
【0041】
このように、挿入部16が雄側上弦材本体18と一体化された状態で、当該挿入部16の上壁部16A、下壁部16B及び縦壁部16C、16Dは、それぞれ片持ち状態とされ、上壁部16A、下壁部16B及び縦壁部16C、16Dの長手方向の他端側は、それぞれ弾性変形可能とされる。
【0042】
ここで、挿入部16の縦壁部16C、16Dの長手方向の他端側では、挿入部16の縦壁部16C、16Dと挿入部16の上壁部16Aとの間に、挿入部16の略鉛直方向(雌側上弦材12内への挿入方向(矢印A方向)に対して直交する上下方向)に沿って隙間Sが設けられている。
【0043】
この隙間Sについて具体的に説明すると、本実施形態では、挿入部16の縦壁部16C、16Dの長手方向の他端側には、縦壁部16C、16Dの先端へ向かうにつれて下方側へ向かって傾斜するテーパ部(切欠き部)32がそれぞれ形成されている。
【0044】
このように、挿入部16の縦壁部16C、16Dの長手方向の他端側に、当該テーパ部32がそれぞれ形成されることによって、挿入部16の縦壁部16C、16Dと挿入部16の上壁部16Aとの間に隙間Sが設けられる。この隙間Sが設けられることによって、挿入部16の上壁部16Aは、縦壁部16C、16Dとの干渉により移動が規制されるまで、下壁部16B側へ向かって弾性変形が許容されることとなる。
【0045】
ところで、
図7に示されるように、雌側上弦材12及び雄側上弦材14は、屋根ユニットの骨組構造10の一部であり、水平面Pに対して所定の角度θで傾斜した状態で配置される。このため、テーパ部32は、水平面Pに対して当該所定の角度θを有するように切り落とされている。
【0046】
なお、本実施形態では、
図2に示されるように、挿入部16の縦壁部16C、16Dの長手方向の他端側に、テーパ部32がそれぞれ形成されているが、挿入部16の縦壁部16C、16Dと上壁部16Aの間に、当該上壁部16Aの弾性変形を許容する隙間Sを設けることができればよい。このため、切欠き部は必ずしもテーパである必要はない。
【0047】
一方、本実施形態では、雌側上弦材12の長手方向の一端部13には、上壁部12A、下壁部12B及び縦壁部12C、12Dに複数の締結孔34が形成されている。この締結孔34に対応して、
図1、
図2に示されるように、挿入部16の上壁部16A、下壁部16B及び縦壁部16C、16Dの長手方向の他端側には、それぞれ締結孔35及びウェルドナット36が設けられている。
【0048】
ここで、
図3には、雌側上弦材12と雄側上弦材14が接続された状態を示す斜視図が示されている。
図3に示されるように、雌側上弦材12内へ挿入部16が挿入された状態で、
図2、
図3に示されるように、雌側上弦材12の上壁部12A、下壁部12B及び縦壁部12C、12Dに対して、挿入部16の上壁部16A、下壁部16B及び縦壁部16C、16Dがそれぞれ接触し、ボルト38、40、42、44及びウェルドナット36を介して、それぞれ締結されるようになっている(ボルト締結部45)。
【0049】
このように、挿入部16の上壁部16A、下壁部16B及び縦壁部16C、16Dが、雌側上弦材12の上壁部12A、下壁部12B及び縦壁部12C、12Dに対して、それぞれ締結されることによって、当該挿入部16を介して、雌側上弦材12と雄側上弦材14が接続されることとなる。
【0050】
なお、
図4、
図5に示されるように、各ボルト38、40、42、44は、その移動軌跡上において、互いに干渉しないように予め位置決めされている。つまり、雄側上弦材本体18の縦壁部18C、18Dと同様に、雌側上弦材12の縦壁部12C、12Dでは、雌側上弦材12の長手方向に沿って締結孔34の位置をいわゆる千鳥状に位置し、側面視で締結孔34の位置が重ならないようにしている。ここで、
図4は、雌側上弦材12と雄側上弦材14とが接続された状態を示す側面図であり、
図5は、
図4で示すA-A線に沿って切断したときの断面図である。
【0051】
(屋根ユニットの骨組構造の作用及び効果)
次に、本発明の一実施の形態に係る屋根ユニットの骨組構造の作用及び効果について説明する。
【0052】
図6(A)、(B)には、本実施形態に係る屋根ユニットの骨組構造10におけるトラス構造11の一部を成す、雌側上弦材12と雄側上弦材14、及び雌側下弦材46と雄側下弦材48を示す側面図が示されている。
【0053】
図6(A)には、雌側上弦材12と雄側上弦材14、及び雌側下弦材46と雄側下弦材48が接続される前の状態が示されており、
図6(B)には、雌側上弦材12と雄側上弦材14、及び雌側下弦材46と雄側下弦材48が接続された後の状態が示されている。
【0054】
そして、
図6(A)に示すA部を拡大した要部が
図7に示されており、
図6(B)に示すB部を拡大した要部が
図8に示されている。なお、
図8では、
図6(B)に示す雌側上弦材12と雄側下弦材48を架け渡す斜材50の図示を省略している。
【0055】
また、
図6(A)、(B)では、雄側上弦材14及び雄側下弦材48側に対して、雌側上弦材12及び雌側下弦材46側が移動するようになっている。本実施形態では、雌側上弦材12及び雌側下弦材46と雄側上弦材14及び雄側下弦材48とが相対移動可能である。
【0056】
このため、作業方法に合わせて、雌側上弦材12及び雌側下弦材46側に対して、雄側上弦材14及び雄側下弦材48側を移動させてもよいし、雄側上弦材14及び雄側下弦材48側に対して、雌側上弦材12及び雌側下弦材46側を移動させてもよい。
【0057】
なお、以下の説明では、
図7に示されるように、雌側上弦材12及び雌側下弦材46側に対して、雄側上弦材14及び雄側下弦材48側を移動させて説明を行う。
【0058】
本実施形態では、雌側下弦材46は雌側上弦材12と略同じ構成とされ、雄側下弦材48は雄側上弦材14と略同じ構成である。但し、本実施形態では、雌側下弦材46及び雄側下弦材48は、略水平面Pに沿って配置され、雌側上弦材12及び雄側上弦材14は、略水平面Pに対して所定の角度θで傾斜した状態で配置される。
【0059】
また、本実施形態では、雄側上弦材14、雄側下弦材48には、挿入部16がそれぞれ設けられており、当該挿入部16が雌側上弦材12、雌側下弦材46内へそれぞれ挿入される(挿入工程)。
【0060】
そして、
図8に示されるように、雄側上弦材14、雄側下弦材48の挿入部16が、雌側上弦材12、雌側下弦材46内へそれぞれ挿入された状態で、当該挿入部16が雌側上弦材12、雌側下弦材46にそれぞれ固定される。これにより、雌側上弦材12と雄側上弦材14、雌側下弦材46と雄側下弦材48がそれぞれ接続される。
【0061】
ここで、
図7に示されるように、本実施形態では、雄側上弦材14、雄側下弦材48の挿入部16は、縦壁部16C、16Dにテーパ部32がそれぞれ形成されており、上壁部16Aと縦壁部16C、16Dとの間には、上下方向に沿って隙間Sが設けられている。この隙間Sによって、挿入部16の上壁部16Aは、縦壁部16C、16Dと干渉するまで、下壁部16B側へ向かって二点鎖線で示されるように弾性変形可能とされる。
【0062】
このため、本実施形態では、挿入部16の上壁部16Aを弾性変形させた状態で、挿入部16をスムーズに雌側上弦材12、雌側下弦材46内へそれぞれ挿入することができる。そして、
図8に示されるように、当該挿入部16が雌側上弦材12、雌側下弦材46内へそれぞれ挿入されると、上壁部16Aは復元し、当該上壁部16Aの外面16A1が当該雌側上弦材12の上壁部12Aの内面12A1、雌側上弦材46の上壁部46Aの内面46A1にそれぞれ接触する。
【0063】
この状態で、
図4、
図8に示されるように、ボルト38、40、42、44及びウェルドナット36(
図1参照)を介して、雌側上弦材12、雌側下弦材46と挿入部16が締結(固定)される(締結工程)。これにより、当該挿入部16を介して雌側上弦材12と雄側上弦材14、雌側上弦材46と雄側上弦材48がそれぞれ接続される。
【0064】
つまり、本実施形態では、
図7に示されるように、略水平面Pに対して所定の角度θで傾斜した状態で配置された雌側上弦材12内へ雄側上弦材14の挿入部16を挿入させるとき、挿入部16の上壁部16Aが弾性変形することによって、当該挿入部16をスムーズに雌側上弦材12内へ挿入させることができる。
【0065】
言い換えると、本実施形態では、雌側上弦材12に挿入する雄側上弦材14の挿入部16を弾性変形可能に形成することによって、特に、雌側上弦材12及び雄側上弦材14が略水平面Pに対して傾斜した状態で接続される場合であっても、雄側上弦材14の挿入部16を弾性変形させることで、当該挿入部16を雌側上弦材12内へスムーズに挿入することができる。
【0066】
したがって、本実施形態では、雌側下弦材46及び雄側下弦材48が略水平面Pに沿って配置されると共に、雌側上弦材12及び雄側上弦材14が略水平面Pに対して所定の角度θで傾斜した状態で配置されるトラス構造11の地組であっても、雌側上弦材12及び雄側上弦材14を容易に接続させることが可能となる。
【0067】
なお、本実施形態では、雄側上弦材14、雄側下弦材48には、弾性変形可能な挿入部16の一部が雄側上弦材14内、雄側下弦材48内に挿入された状態で当該雄側上弦材14、雄側下弦材48にそれぞれ固定されている。しかしながら、雄側下弦材48は、雄側上弦材14と異なり、略水平面Pに沿って配置された雌側下弦材46に対して接続される。このため、雄側下弦材48側では、必ずしも当該挿入部16が弾性変形可能である必要はない。したがって、雄側下弦材48側では、当該挿入部16に代えて、図示はしないが、切欠き部が形成されていない角筒部材が雄側下弦材48と雌側下弦材46を接続させる接続部材として用いられてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、
図7、
図8に示されるように、雄側上弦材14の挿入部16が雌側上弦材12内へ挿入されると、当該挿入部16の上壁部16Aの外面16A1が当該雌側上弦材12の上壁部12Aの内面12A1に接触し、この状態で、雌側上弦材12に挿入部16が固定される。
【0069】
このように、挿入部16の上壁部16Aの外面16A1を雌側上弦材12の上壁部12Aの内面12A1に接触させた状態で、両者を固定することによって、雄側上弦材14の挿入部16と雌側上弦材12との間で、接触強度を向上させることが可能となる。なお、雌側下弦材46及び雄側下弦材48側でも雌側上弦材12及び雄側上弦材14側と略同じ効果を得ることができる。
【0070】
また、本実施形態では、雌側上弦材12及び雄側上弦材14は、略水平面Pに対して所定の角度θで傾斜した状態で配置される。ここで、雄側上弦材14に設けられた挿入部16の縦壁部16C、16Dにおいて、テーパ部32は、挿入部16の上壁部16Aに対して所定の角度θを有してテーパ状に切り落とされている。
【0071】
このテーパ部32によって、雄側上弦材14に設けられた挿入部16の上壁部16Aは縦壁部16C、16D側へ向かって弾性変形することとなるが、水平面Pに対して所定の角度θで傾斜した状態で配置された雌側上弦材12に対して、雄側上弦材14の挿入部16を当該雌側上弦材12内へ挿入するとき、上壁部16Aがテーパ部32に当接した状態で、上壁部16Aは略水平に配置される。
【0072】
このように、水平面Pに対して所定の角度θで傾斜した状態で配置された雌側上弦材12に対して、雄側上弦材14の挿入部16を挿入するとき、挿入部16の上壁部16Aが略水平に配置されるようにすることによって、雄側上弦材14の挿入部16をさらに雌側上弦材12内へ挿入し易くすることができる。
【0073】
そして、
図3、
図4に示されるように、雌側上弦材12内へ挿入部16が挿入された状態で、雌側上弦材12の上壁部12A、下壁部12B及び縦壁部12C、12Dに対して、雄側上弦材14の挿入部16の上壁部16A、下壁部16B及び縦壁部16C、16Dがそれぞれ接触し、ボルト38、40、42、44及びウェルドナット36を介して、雌側上弦材12と雄側上弦材14(挿入部16)とがそれぞれ締結されるようになっている。
【0074】
このように、本実施形態では、例えば、ボルト締結部45によりボルト38、40、42、44及びウェルドナット36を介して、雌側上弦材12と雄側上弦材14を締結することによって、例えば、図示はしないが、ビスによる固定(ビス打ち)と比較して、雌側上弦材12と雄側上弦材14との結合(締結)箇所を少なくすることができ、その分、作業性が向上する。また、ビス打ちよりもボルト締結の方が結合強度が高くなる。なお、雌側下弦材46及び雄側下弦材48側でも雌側上弦材12及び雄側上弦材14側と略同じ効果を得ることができる。
【0075】
また、本実施形態では、各ボルト38、40、42、44は、その移動軌跡上において、
図5に示されるように、互いに干渉しないように予め位置決めされている。これにより、例えば、作業者が、予め設定されたボルトよりも寸法の長いボルトを使用する場合でも、ボルト同士が干渉しないため、当該ボルトをそのまま使用することができる。
【0076】
一方、本実施形態では、
図1に示されるように、挿入部16は、長板状の4枚の鋼板によって、上壁部16Aと下壁部16B、及び縦壁部16C、16Dが形成されている。このように、4枚の鋼板によって挿入部16を構成することによって、異なるサイズの雄側上弦材本体18において対応可能である。このため、雄側上弦材本体18のサイズ毎に挿入部が設けられる場合と比較して、本実施形態では、コストダウンを図ることができる。
【0077】
以上、本発明を実施するための一形態として一実施例を用いて説明したが、本発明はこうした一実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、上述した一実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0078】
10 屋根ユニットの骨組構造
12 雌側上弦材(第1部材)
12A1 内面(第1部材の内面)
14 雄側上弦材(第2部材)
16 挿入部
16A1 外面(第1壁部の外面)
16A 上壁部(第1壁部)
16C 縦壁部(第2壁部)
16D 縦壁部(第2壁部)
18 雄側上弦材本体(第2部材)
32 テーパ部(切欠き部)
38 ボルト
40 ボルト
42 ボルト
44 ボルト
45 ボルト締結部
46 雌側下弦材(第1部材)
48 雄側下弦材(第2部材)
θ 角度(所定の角度)
P 水平面
S 隙間