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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】タイヤ加硫金型及びタイヤ製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20240110BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20240110BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
B29C33/02
B29C35/02
B29L30:00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019223075
(22)【出願日】2019-12-10
(65)【公開番号】P2021091149
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】伊田 真悟
(72)【発明者】
【氏名】吉井 優聡久
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-231126(JP,A)
【文献】特開2015-223755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/02
B29C 35/02
B29L 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の熱源から熱を受ける第1の金型部と、
第2の熱源から熱を受ける第2の金型部と、
前記第1の金型部及び前記第2の金型部よりも熱伝導率が小であり、かつ前記第1の金型部と前記第2の金型部との間に配される断熱部材とを含み、
前記第1の金型部は、タイヤのトレッド部を成形するためのトレッドモールドであり、
前記第2の金型部は、タイヤのサイド部を成形するためのサイドモールドであり、
前記トレッドモールドは、トレッド成形面を有するセグメントと、前記セグメントをタイヤ半径方向外側から保持するセクターシュウとを含み、
前記断熱部材は、前記セグメントと前記サイドモールドとの間に配される第1の断熱部材を含み、
前記第1の断熱部材は、前記セグメントの内周面側の端面に固定される
タイヤ加硫金型。
【請求項2】
前記第1の熱源の温度は、前記第2の熱源の温度よりも高温である、請求項1に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項3】
前記サイドモールドの内部に、前記サイドモールドよりも熱伝導率が低い内部断熱部材が配される、請求項1又は2に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項4】
記断熱部材は、前記セクターシュウと前記サイドモールドとの間に配される第2の断熱部材を含む、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ加硫金型。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のタイヤ加硫金型を用いた加硫工程を有するタイヤ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの各部における加硫量の均一化及び加硫時間の短縮化に貢献しうるタイヤ加硫金型及びタイヤ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ加硫金型は、タイヤのサイド部を成形する上下のサイドモールドと、タイヤのトレッド部を成形するトレッドモールドとを含む。
【0003】
前記上下のサイドモールドは、このサイドモールドを支持する上下のプラテン板によって加熱される。前記トレッドモールドは、このトレッドモールドを拡縮径させるアクチェータリングによって加熱される。なお前記上下のプラテン板及びアクチェータリングには、それぞれスチームジャケットである熱源が内蔵されている。
【0004】
しかしタイヤでは、トレッド部、サイドウォール部などの各部によって厚さが相違する。そのため、プラテン板及びアクチェータリングに内蔵される熱源の温度が同じ場合、厚さが大なトレッド部において多くの加熱時間が必要となり、タイヤ全体としての加硫時間を長くするという問題点がある。このとき、厚さが小なサイドウォール部では過加硫となり、加硫量の不均一化を招く。
【0005】
そこで、下記の特許文献1には、その段落0032に記載されるように、プラテン板の熱源温度をアクチェータリングの熱源温度よりも低く設定することで、タイヤの加硫量を全体に亘り一様とすることが記載されている。
【0006】
又下記の特許文献2の第1実施例には、サイドウォール部に対応する金型の外側面に、中空状の環状凹部を設け、熱源からサイドウォール部へ熱量の伝達を抑えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-172624号公報
【文献】特開昭58-49232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、加硫金型では、金型閉時、例えばサイドモールドとトレッドモールドとが互いに接し、熱的に導通している。
【0009】
従って、特許文献1に記載のように、プラテン板の熱源温度をアクチェータリングの熱源温度よりも低く設定した場合にも、図7に概念的に示されるように、アクチェータリングaに内臓された熱源Aから高温の熱が、サイドモールドbにも回り込む。そのため、タイヤのサイドウォール部Tdに供給される熱量が増し、加硫量の不均一化を充分に抑えることは難しい。
【0010】
又特許文献2に記載のように、サイドウォール部Tdに対応する金型の外側面に、中空状の環状凹部(図示省略)を設けた場合にも、熱源Aから高温の熱が、サイドモールドbにも回り込む。従って、プラテン板cに内臓された熱源Bからの熱は抑えられるものの、熱源Aから回り込む高温の熱が、サイドウォール部Tdに供給されるため、加硫量の不均一化を充分に抑えることは難しい。
【0011】
本発明は、タイヤの加硫量の均一化及び加硫時間の短縮化にさらに貢献しうるタイヤ加硫金型及びタイヤ製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、第1の熱源から熱を受ける第1の金型部と、第2の熱源から熱を受ける第2の金型部と、前記第1の金型部及び前記第2の金型部よりも熱伝導率が小であり、かつ前記第1の金型部と前記第2の金型部との間に配される断熱部材とを含む。
【0013】
本発明に係るタイヤ加硫金型において、前記第1の金型部は、タイヤのトレッド部を成形するためのトレッドモールドであり、前記第2の金型部は、タイヤのサイド部を成形するためのサイドモールドであるのが好ましい。
【0014】
本発明に係るタイヤ加硫金型において、前記第1の熱源の温度は、前記第2の熱源の温度よりも高温であるのが好ましい。
【0015】
本発明に係るタイヤ加硫金型において、前記サイドモールドの内部に、前記サイドモールドよりも熱伝導率が低い内部断熱部材が配されるのが好ましい。
【0016】
本発明に係るタイヤ加硫金型において、前記トレッドモールドは、トレッド成形面を有するセグメントと、前記セグメントをタイヤ半径方向外側から保持するセクターシュウとを含み、前記断熱部材は、前記セグメントと前記サイドモールドとの間に配される第1の断熱部材を含むのが好ましい。
【0017】
本発明に係るタイヤ加硫金型において、前記トレッドモールドは、トレッド成形面を有するセグメントと、前記セグメントをタイヤ半径方向外側から保持するセクターシュウとを含み、前記断熱部材は、前記セクターシュウと前記サイドモールドとの間に配される第2の断熱部材を含むのが好ましい。
【0018】
本発明は、タイヤ製造方法であって、上記タイヤ加硫金型を用いた加硫工程を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明は叙上の如く、第1の金型部と第2の金型部との間に、熱伝導率が小な断熱部材が配される。これにより、第1の金型部の、第2の熱源からの熱の影響、及び第2の金型部の、第1の熱源からの熱の影響をそれぞれ抑えることができる。
【0020】
そのため、例えば第1の熱源の温度を、第2の熱源の温度よりも高く設定した場合、第1の金型部では、第2の金型部への熱の流出がブロックされる。そのため、第1の金型部にて加硫されるタイヤ部位(加硫律速部となる部位)の加硫量を高めることができ、タイヤ全体としての加硫時間を短縮しうる。又第2の金型部では、第1の金型部からの熱の流入がブロックされる。そのため、第2の金型部にて加硫されるタイヤ部位の加硫温度及び加硫量を低く抑えることができ、前述の加硫時間の短縮と相俟って、過加硫を抑制しうる。
【0021】
又第1の熱源の温度と、第2の熱源の温度とを同じとした場合にも、第1の金型部と第2の金型部との間での熱の流出入がブロックされ、他の熱源からの熱の影響が受けにくくなる。そのため、例えば第2の金型部内に、内部断熱部材を設けた場合、内部断熱部材による効果、すなわち第2の金型部にて加硫されるタイヤ部位での加硫温度の低減効果、及び加硫量の低減効果を有効に発揮でき、過加硫を抑制しうる。又第1の金型部では、第1の金型部にて加硫されるタイヤ部位(加硫律速部となる部位)の加硫量を高めることができ、加硫時間の短縮化を図りうる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のタイヤ加硫金型の一実施例を示す部分断面図である。
図2】その主要部を断熱部材とともに示す部分断面図である。
図3】断熱部材の他の実施例を示す部分断面図である。
図4】断熱部材のさらに他の実施例を示す部分断面図である。
図5】断熱部材のさらに他の実施例を示す部分断面図である。
図6】本発明のタイヤ加硫金型による効果を示す部分断面図である。
図7】従来のタイヤ加硫金型における熱の流れを概念的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ加硫金型1は、第1の熱源2から熱を受ける第1の金型部3と、第2の熱源4から熱を受ける第2の金型部5と、第1の金型部3と第2の金型部5との間に配される断熱部材6とを含む。タイヤ加硫金型1は、第1の熱源2及び第2の熱源4を有するコンテナ7によって保持される。
【0024】
本例では、タイヤTが、横倒し状態(タイヤ軸心iが垂直に向く状態)にて加硫成形される場合が示される。
【0025】
タイヤ加硫金型1は、タイヤTのトレッド部Taを成形するためのトレッドモールド10と、タイヤTのサイド部Tbを成形するための上下のサイドモールド11U、11Lと、タイヤTのビード部Tcを成形するための上下のビードリング12U、12Lとを含む。
【0026】
本例では、トレッドモールド10が第1の金型部3を構成し、各サイドモールド11U、11Lが、それぞれ第2の金型部5を構成している。そして、トレッドモールド10と各サイドモールド11U、11Lとが互いに突き合わされた金型閉状態Yにて、タイヤTの加硫成形が行われる。
【0027】
トレッドモールド10は、タイヤ周方向に分割された複数のセグメント14と、各セグメント14をタイヤ半径方向外側から保持する複数のセクターシュウ15とを含む。セグメント14の内周面には、トレッド部Taを成形するためのトレッド成形面Saが配される。
【0028】
セグメント14は、セクターシュウ15に、交換可能に取り付けられる。セグメント14とセクターシュウ15とが、タイヤ半径方向内外に一体移動することにより、トレッドモールド10が拡縮径する。
【0029】
上下のサイドモールド11U、11Lは、タイヤTのサイド部Tbを成形するためのサイド成形面Sbを有する。サイド部Tbは、サイドウォール部Tdを含み、本例では、ビード部Tcのタイヤ半径方向外側の領域Tc1をさらに含んで構成される。なお前記外側の領域Tc1よりもタイヤ半径方向内側の領域Tc2(ビード底面を含む。)は、ビードリング12によって成形される。
【0030】
コンテナ7は、上のプラテン板16と、下のプラテン板17と、アクチェータリング18とを含む。
【0031】
上のプラテン板16の下面に、上のサイドモールド11Uが固定される。上のプラテン板16は、例えば金型装置の昇降台(図示省略)に取り付き、上のサイドモールド11Uとともに上下移動しうる。また上のプラテン板16には、各セクターシュウ15が、ガイド手段(図示省略)を介して、タイヤ半径方向内外に移動可能に例えば吊り下げ状態で保持される。
【0032】
下のプラテン板17の上面には、下のサイドモールド11Lが固定される。下のプラテン板17は、例えば金型装置のテーブル台(図示省略)に支持される。
【0033】
アクチェータリング18は、他の昇降台(図示省略)を介して、トレッドモールド10とは相対的に上下移動可能に支持される。アクチェータリング18の内周面には、コーン面18Sが配される。アクチェータリング18の下移動により、コーン面18Sが、各セクターシュウ15の傾斜面15Sと摺動し、各セクターシュウ15を金型閉状態Yとなるまでタイヤ半径方向内側に押進する。
【0034】
そして、アクチェータリング18には、第1の熱源2が内蔵される。又上下のプラテン板16、17には、それぞれ第2の熱源4が内蔵される。
【0035】
第1の熱源2及び第2の熱源4として、本例では、例えばスチーム等の高温度の熱流体の供給により加熱するジャケットが採用される。各ジャケットには、ボイラーなどの熱流体供給手段(図示省略)からの熱流体が循環しながら供給される。本例では、第1の熱源2と第2の熱源4とには、別々の熱流体供給手段が接続され、第1の熱源2の温度が、第2の熱源4の温度よりも高温に設定される。
【0036】
これにより、アクチェータリング18に内蔵される第1の熱源2からの熱は、セクターシュウ15、セグメント14をへてトレッド成形面Saに伝達される。同様に、上のプラテン板16に内蔵される第2の熱源4からの熱は、上のサイドモールド11Uをへてサイド成形面Sbに伝達され、下のプラテン板17に内蔵される第2の熱源4からの熱は、下のサイドモールド11Lをへてサイド成形面Sbに伝達される。
【0037】
本実施形態のタイヤ加硫金型1では、トレッドモールド10(第1の金型部3)と、サイドモールド11U、11L(第2の金型部5)との間に、断熱部材6が配される。断熱部材6は、トレッドモールド10(第1の金型部3)及びサイドモールド(第2の金型部5)よりも熱伝導率が小な部材で形成される。
【0038】
これにより、図6に示されるように、トレッドモールド10の、第2の熱源4からの熱の影響、及びサイドモールド11U、11Lの、第1の熱源2からの熱の影響をそれぞれ減じることができる。第1、第2の熱源2、4からの熱流が、矢印で示される。
【0039】
従って、本例の如く第1の熱源2の温度を、第2の熱源4の温度よりも高く設定した場合、トレッドモールド10では、サイドモールド11U、11Lへの熱の流出が抑えられる。そのため、トレッドモールド10にて加硫されるトレッド部Taの加硫量を高めることができ、タイヤ全体としての加硫時間を短縮しうる。
【0040】
サイドモールド11U、11Lでは、トレッドモールド10からの熱の流入が抑えられる。そのため、サイドモールド11U、11Lにて加硫されるサイド部Tbの加硫温度及び加硫量を低く抑えることができ、加硫時間の短縮と相俟って、サイド部Tbにおける過加硫を抑制しうる。
【0041】
図2に、タイヤ加硫金型1の下側部分が代表して示されように、本例では、断熱部材6は、第1の断熱部材20と第2の断熱部材21とを含んで構成される。
【0042】
第1の断熱部材20は、セグメント14とサイドモールド11U、11Lとの間に配される。この第1の断熱部材20の熱伝導率は、セグメント14の熱伝導率よりも小、かつサイドモールド11U、11Lの熱伝導率よりも小な部材で形成される。
【0043】
本例では、セグメント14は、トレッド成形面Saの加工性を考慮し、従来と同様のアルミ系材料(アルミニウム、アルミニウム合金など)にて形成される。これに対して、セクターシュウ15、サイドモールド11U、11L、及びビードリング12U、12Lは、強度及びコストを考慮し、従来と同様の鉄系材料(鉄、鋼など)にて形成される。アルミ系材料の熱伝導率は100~200(W/m・K)程度であり、鉄系材料の熱伝導率は50~60(W/m・K)程度である。従って、第1の断熱部材20には、例えば熱伝導率が10~20(W/m・K)程度のステンレス系材料、及び熱伝導率がステンレス系材料より小なセラミックス材料(例えばジルコニア)などが好適に採用しうる。
【0044】
第1の断熱部材20は、セグメント14の内周面側、かつトレッド成形面Saよりもタイヤ軸方向外側の端面14Sに固定される。本例では、第1の断熱部材20は、端面14Sに設ける凹部30に取り付く。このとき、第1の断熱部材20のタイヤ半径方向の内面20Sは、端面14Sよりも突出し、金型閉時、第1の断熱部材20が、サイドモールド11U、11Lのタイヤ半径方向の外周面11Sと当接する。これにより、セグメント14とサイドモールド11U、11Lとの間の熱の流出入がブロックされる。なお端面14Sのうち、第1の断熱部材20以外の位置では、端面14Sと外周面11Sとが離間し、空気層22が形成される。この空気層22により、熱の流出入がさらに効果的にブロックされる。空気層22は、加硫時の熱膨張でも維持されるように形成される。なお空気層22が形成されない場合にも、第1の断熱部材20により、端面14Sと外周面11Sとの接触面積が減じるため、熱の流出入は抑制されうる。
【0045】
なお第1の断熱部材20がサイドモールド11U、11Lに固定される場合には、金型閉毎に、第1の断熱部材20が、アルミ系材料からなる軟質のセグメント14に当接する。そのため、セグメント14が早期に損傷するという不利を招く。
【0046】
第2の断熱部材21は、セクターシュウ15とサイドモールド11U、11Lとの間に配される。本例では、第2の断熱部材21は円盤状をなし、サイドモールド11U、11Lのタイヤ半径方向の外周面11Sに設ける凹部31に取り付く。第2の断熱部材21は、外周面11Sよりもタイヤ半径方向外側に突出し、金型閉時、セクターシュウ15のタイヤ半径方向の内端面15ESに当接する。これにより、セクターシュウ15とサイドモールド11U、11Lとの間の熱の流出入がブロックされる。
【0047】
本例では、サイドモールド11U、11Lの内部に、内部断熱部材25が配される。具体的には、サイドモールド11U、11L内に、中空部26が設けられ、この中空部26内に、内部断熱部材25が充填される。内部断熱部材25としては、サイドモールド11U、11Lよりも熱伝導率が低いものであれば、気体、流体、固体が適宜採用しうる。例えば、固体としては、各種の合成樹脂が採用でき、特には耐熱性を有するゴム材料が好適に採用される。なお、ステンレスなどの金属材料も使用可能である、気体として、例えば空気が採用でき、又流体として油などが採用しうる。
【0048】
この内部断熱部材25は、タイヤTのサイド部Tbにおいて相対的にゴム厚さが薄い部分K(通常、サイド部Tbにおけるタイヤ最大幅位置を中心とした部分)と対向する位置に配される。
【0049】
内部断熱部材25は、第2の熱源4からの熱が、ゴム厚さの薄い部分Kに伝わるのを抑える。これにより、薄い部分Kにおける加硫温度の低減効果及び加硫量の低減効果を有効に発揮でき、薄い部分Kでの過加硫を抑制しうる。
【0050】
本実施形態のタイヤ加硫金型1は、第1の熱源2の温度と、第2の熱源4の温度とを同温度に設定した場合、以下のような効果を発揮しうる。
【0051】
断熱部材6により、トレッドモールド10とサイドモールド11U、11Lとの間での熱の流出入がブロックされる。そのため、サイドモールド11U、11L内に、内部断熱部材25を設けた場合、サイド部Tbのうちでゴム厚さの薄い部分Kにおいて、加硫温度の低減、及び加硫量の低減が有効に発揮され、過加硫が抑制される。しかもトレッドモールド10では、第1の熱源2からの熱が外部に逃げにくいため、加硫律速部となるトレッド部Taの加硫量を高めることができ、加硫時間の短縮化を図りうる。
【0052】
図3に、断熱部材6の他の実施例が示される。本例では、断熱部材6が第1の断熱部材20から構成される。この場合にも、セグメント14とサイドモールド11U、11Lとの間での熱の流出入がブロックされるため、上記効果を達成することができる。別途
【0053】
図4に、断熱部材6のさらに他の実施例が示される。本例では、断熱部材6が第2の断熱部材21から構成され、セクターシュウ15とサイドモールド11U、11Lとの間で、熱の流出入がブロックされる。この場合、端面14Sと外周面11Sとが離間することによる空気層28を形成することが好ましい。空気層28は、加硫時の熱膨張でも維持されるように形成する。
【0054】
図5に、断熱部材6のさらに他の実施例が示される。本例では、サイドモールド11U、11Lが、それぞれ、サイド部Tbのうちのサイドウォール部Tdを成形する第1部分35と、ビード部Tcにおける外側の領域Tc1を成形する第2部分36とに区分される。そして、第1部分35が、セグメント14、セクターシュウ15、及び第2部分36の熱伝導率よりも小な熱伝導率を有する部材で形成される。
【0055】
本例では、セグメント14及び第2部分36がアルミ系材料にて形成され、セクターシュウ15が鉄系材料にて形成される。又第1部分35が、セグメント14、セクターシュウ15、及び第2部分36よりも熱伝導率が小な部材、例えばステンレス材料にて形成される。
【0056】
このとき、セグメント14及びセクターシュウ15を、第1の熱源2から熱を受ける第1の金型部3とみなすことができ、第2部分36を、第2の熱源4から熱を受ける第2の金型部5とみなすことができる。また第1部分35を、第1の金型部3及び第2の金型部5よりも熱伝導率が小であり、かつ第1の金型部3と第2の金型部5との間に配される断熱部材6と見なすことができる。
【0057】
この場合、第1の熱源2からの熱がトレッドモールド10から流出するのが抑えられ、加硫律速部となるトレッド部Taの加硫量を高めて、加硫時間の短縮化を図ることができる。また第2の熱源4からの熱が、断熱部材6(第1部分35)によりゴム厚さの薄い部分Kであるサイドウォール部Tdに伝わり難くなるため、ゴム厚さの薄い部分Kにおける過加硫を抑制しうる。
【0058】
第2の熱源4からの熱は、熱伝導率が高い第2部分36を介して、ビード部Tcにおける外側の領域Tc1に効果的に伝達される。また第2の熱源4からの熱は、第2部分36及びビードリング12L、12Uをへてビード部Tcにおける内側の領域Tc2にも伝達される。即ち、相対的にゴム厚さの厚い部分であるビード部Tcの加硫不足を抑制しうる。
【0059】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。なおタイヤTは、上記タイヤ加硫金型1を用いた加硫工程を有するタイヤ製造方法によって形成される。
【実施例
【0060】
図1に示す構造を有するタイヤ加硫金型が、表1の仕様に基づいて試作された。そして、試作のタイヤ加硫金型を用いて空気入りタイヤ(205/55R16)を加硫する際の加硫時間、及び加硫量比が評価された。テスト方法は、以下のとおりである。
【0061】
(1)加硫時間:
タイヤの各部の加硫量が必要加硫量に達するまでの時間を、コンピュータシミュレーション(特開2018-122527号公報に記載の「金型と生タイヤとの間の伝熱計算方法」に基づくシミュレーション)を用いて算出した。
・比較例A1の加硫時間を100とする指数にて実施例A1、A2を評価した。
・比較例B1の加硫時間を100とする指数にて実施例B1を評価した。
数値が小さいほど加硫時間が短く、生産性に優れている。
【0062】
(2)加硫量比:
トレッド部のショルダー部分における加硫量Q1と、サイドウォール部の中央部分(タイヤ最大幅位置を含む部分)における加硫量Q2とを、上記のコンピュータシミュレーションの計算結果から算出し、その比Q2/Q1にて比較した。加硫量比(Q2/Q1)が1に近いほど、加硫の均一性に優れている。
【0063】
【表1】
【0064】
表に示されるように、実施例品はタイヤの加硫量の均一化及び加硫時間の短縮化を図りうるのが確認できる。
【符号の説明】
【0065】
1 タイヤ加硫金型
2 第1の熱源
3 第1の金型部
4 第2の熱源
5 第2の金型部
6 断熱部材
10 トレッドモールド
10S トレッド成形面
11U、11L サイドモールド
14 セグメント
15 セクターシュウ
20 第1の断熱部材
21 第2の断熱部材
25 内部断熱部材
T タイヤ
Ta トレッド部
Tb サイド部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7