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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】表示制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/23 20240101AFI20240110BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20240110BHJP
   G09G 5/37 20060101ALI20240110BHJP
   G09G 5/02 20060101ALI20240110BHJP
   G09G 5/10 20060101ALI20240110BHJP
   G09G 5/38 20060101ALI20240110BHJP
   G02B 27/01 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G09G5/00 510G
G09G5/37 320
G09G5/37 100
G09G5/02 B
G09G5/10 B
G09G5/38 100
G02B27/01
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019223935
(22)【出願日】2019-12-11
(65)【公開番号】P2021091334
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】坂井 誠
(72)【発明者】
【氏名】石川 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】早川 雄一郎
【審査官】角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/094427(WO,A1)
【文献】特開2019-012236(JP,A)
【文献】特開2019-059248(JP,A)
【文献】特開2016-060445(JP,A)
【文献】特開2015-101311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
G09G 5/00- 5/42
G02B 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)に用いられ、ヘッドアップディスプレイ(10)により車外の空中に結像される虚像(VRI)の表示を制御する表示制御装置であって、
前記虚像の表示可能領域(DPA)のうち、車外の物体(X)に埋没しているように認識される埋没領域(BA)を特定する埋没領域特定部(64)と、
前記表示可能領域に配置される表示コンテンツ(C1,C2,C3,C4,C5)の表示態様を決定する表示態様決定部(65)と、を備え、
前記表示コンテンツにおいて、特定の重畳対象との重畳関係を維持するように前記特定の重畳対象を追従する追従コンテンツと、前記追従コンテンツ以外の非追従コンテンツと、を定義すると、
前記表示態様決定部は、前記非追従コンテンツのうち少なくとも一部のコンテンツ(C1,C4,C5)を、前記表示可能領域のうち前記埋没領域を除いた非埋没領域(NBA)に限定して配置する配置処理を実施し、
前記表示コンテンツの表示態様であって、前記表示コンテンツの表示位置を含む表示態様を、前記埋没領域とは無関係に仮設定する表示態様仮設定部(63)をさらに備え、
前記表示態様決定部は、
前記非追従コンテンツのうち少なくとも一部分が前記埋没領域に位置する表示位置に仮設定されている場合であって、前記非追従コンテンツを認識可能な態様にて表示するスペースが前記非埋没領域に存在している場合に、前記非追従コンテンツを前記非埋没領域に退避させ、
前記非追従コンテンツのうち少なくとも一部分が前記埋没領域に位置する表示位置に仮設定されている場合であって、前記スペースが前記非埋没領域に存在していない場合に、前記非追従コンテンツを前記埋没領域に配置すると共に、表示態様を仮設定に対してトーンダウンさせる表示制御装置。
【請求項2】
前記表示態様決定部は、前記非追従コンテンツのうち全部が前記非埋没領域に位置する表示位置に仮設定されている場合に、仮設定された表示態様を最終的な表示態様として決定する請求項に記載の表示制御装置。
【請求項3】
前記表示態様決定部は、前記追従コンテンツ(C2)のうち少なくとも一部分が前記埋没領域に位置する表示位置に仮設定されている場合、前記追従コンテンツを、前記追従コンテンツの前記特定の重畳対象との重畳関係を維持する表示位置に配置すると共に、表示態様を仮設定に対してトーンダウンさせて配置する請求項1又は2に記載の表示制御装置。
【請求項4】
前記表示態様決定部は、前記追従コンテンツのトーンダウンによる視認性低下を補うように、前記特定の重畳対象の存在を示す重畳対象明示コンテンツ(C3)を、前記非埋没領域に追加配置する請求項に記載の表示制御装置。
【請求項5】
前記表示可能領域は、前記追従コンテンツが主に配置される追従コンテンツ用領域(DPA1)と、前記非追従コンテンツ(C4)が主に配置される非追従コンテンツ用領域(DPA2)と、を有する請求項に記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記表示態様決定部は、前記非追従コンテンツのうち少なくとも一部分が前記非追従コンテンツ用領域上の前記埋没領域に位置する表示位置に仮設定されている場合であって、前記非追従コンテンツを認識可能な態様にて表示するスペースが前記追従コンテンツ用領域上の前記非埋没領域に存在していない場合に、前記非追従コンテンツの複製(C4C)を、前記追従コンテンツ用領域上の前記非埋没領域に追加配置する請求項5に記載の表示制御装置。
【請求項7】
車両(1)に用いられ、ヘッドアップディスプレイ(10)により車外の空中に結像される虚像(VRI)の表示を制御する表示制御装置であって、
前記虚像の表示可能領域(DPA)のうち、車外の物体(X)に埋没しているように認識される埋没領域(BA)を特定する埋没領域特定部(64)と、
前記表示可能領域に配置される表示コンテンツ(C1,C2,C3,C4,C5)の表示態様を決定する表示態様決定部(65)と、を備え、
前記表示コンテンツにおいて、特定の重畳対象との重畳関係を維持するように前記特定の重畳対象を追従する追従コンテンツと、前記追従コンテンツ以外の非追従コンテンツと、を定義すると、
前記表示態様決定部は、前記非追従コンテンツのうち少なくとも一部のコンテンツ(C1,C4,C5)を、前記表示可能領域のうち前記埋没領域を除いた非埋没領域(NBA)に限定して配置する配置処理を実施し、
前記表示コンテンツの表示態様であって、前記表示コンテンツの表示位置を含む表示態様を、前記埋没領域とは無関係に仮設定する表示態様仮設定部(63)をさらに備え、
前記表示可能領域は、前記追従コンテンツが主に配置される追従コンテンツ用領域(DPA1)と、前記非追従コンテンツ(C4)が主に配置される非追従コンテンツ用領域(DPA2)と、を有し、
前記表示態様決定部は、前記非追従コンテンツのうち少なくとも一部分が前記非追従コンテンツ用領域上の前記埋没領域に位置する表示位置に仮設定されている場合であって、前記非追従コンテンツを認識可能な態様にて表示するスペースが前記追従コンテンツ用領域上の前記非埋没領域に存在していない場合に、前記非追従コンテンツの複製(C4C)を、前記追従コンテンツ用領域上の前記非埋没領域に追加配置する表示制御装置。
【請求項8】
前記表示態様決定部は、前記非追従コンテンツのうち少なくとも一部分が前記非追従コンテンツ用領域上の前記埋没領域に位置する表示位置に仮設定されている場合であって、前記非追従コンテンツを認識可能な態様にて表示するスペースが前記非追従コンテンツ用領域上の前記非埋没領域に存在している場合に、前記非追従コンテンツを前記非追従コンテンツ用領域上の前記非埋没領域に退避させる請求項5から7のいずれか1項に記載の表示制御装置。
【請求項9】
前記虚像の像面(IP)は、上方及び下方のうち一方から他方へ向かうに従って前記車両に対して遠距離となるように傾斜し、
前記表示態様決定部が決定する前記非追従コンテンツ(C5)の表示態様は、前記車両よりも前方に位置する前方他車両との車間距離(IVD)に応じて、変化する構成である請求項1からのいずれか1項に記載の表示制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書による開示は、虚像の表示に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のように、ヘッドアップディスプレイが車外の空中に結像される虚像を表示することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-60445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、虚像が車外の物体と重畳し、当該物体の内部又は当該物体よりも遠方に位置することがある。こうした状況下、虚像の表示可能領域に配置される表示コンテンツは、車外の物体に埋没しているように認識されることがある。埋没しているように認識される表示コンテンツは、その表示態様によっては、視認者に多大な違和感を与えることがある。
【0005】
この明細書の開示による目的のひとつは、虚像の視認における違和感を低減する表示制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された態様のひとつは、車両(1)に用いられ、ヘッドアップディスプレイ(10)により車外の空中に結像される虚像(VRI)の表示を制御する表示制御装置であって、
虚像の表示可能領域(DPA)のうち、車外の物体(X)に埋没しているように認識される埋没領域(BA)を特定する埋没領域特定部(64)と、
表示可能領域に配置される表示コンテンツ(C1,C2,C3,C4,C5)の表示態様を決定する表示態様決定部(65)と、を備え、
表示コンテンツにおいて、特定の重畳対象との重畳関係を維持するように特定の重畳対象を追従する追従コンテンツと、追従コンテンツ以外の非追従コンテンツと、を定義すると、
表示態様決定部は、非追従コンテンツのうち少なくとも一部のコンテンツ(C1,C4,C5)を、表示可能領域のうち埋没領域を除いた非埋没領域(NBA)に限定して配置する配置処理を実施し、
表示コンテンツの表示態様であって、表示コンテンツの表示位置を含む表示態様を、埋没領域とは無関係に仮設定する表示態様仮設定部(63)をさらに備え、
表示態様決定部は、
非追従コンテンツのうち少なくとも一部分が埋没領域に位置する表示位置に仮設定されている場合であって、非追従コンテンツを認識可能な態様にて表示するスペースが非埋没領域に存在している場合に、非追従コンテンツを非埋没領域に退避させ、
非追従コンテンツのうち少なくとも一部分が埋没領域に位置する表示位置に仮設定されている場合であって、スペースが非埋没領域に存在していない場合に、非追従コンテンツを埋没領域に配置すると共に、表示態様を仮設定に対してトーンダウンさせる。
また、開示された態様の他のひとつは、車両(1)に用いられ、ヘッドアップディスプレイ(10)により車外の空中に結像される虚像(VRI)の表示を制御する表示制御装置であって、
虚像の表示可能領域(DPA)のうち、車外の物体(X)に埋没しているように認識される埋没領域(BA)を特定する埋没領域特定部(64)と、
表示可能領域に配置される表示コンテンツ(C1,C2,C3,C4,C5)の表示態様を決定する表示態様決定部(65)と、を備え、
表示コンテンツにおいて、特定の重畳対象との重畳関係を維持するように特定の重畳対象を追従する追従コンテンツと、追従コンテンツ以外の非追従コンテンツと、を定義すると、
表示態様決定部は、非追従コンテンツのうち少なくとも一部のコンテンツ(C1,C4,C5)を、表示可能領域のうち埋没領域を除いた非埋没領域(NBA)に限定して配置する配置処理を実施し、
表示コンテンツの表示態様であって、表示コンテンツの表示位置を含む表示態様を、埋没領域とは無関係に仮設定する表示態様仮設定部(63)をさらに備え、
表示可能領域は、追従コンテンツが主に配置される追従コンテンツ用領域(DPA1)と、非追従コンテンツ(C4)が主に配置される非追従コンテンツ用領域(DPA2)と、を有し、
表示態様決定部は、非追従コンテンツのうち少なくとも一部分が非追従コンテンツ用領域上の埋没領域に位置する表示位置に仮設定されている場合であって、非追従コンテンツを認識可能な態様にて表示するスペースが追従コンテンツ用領域上の非埋没領域に存在していない場合に、非追従コンテンツの複製(C4C)を、追従コンテンツ用領域上の非埋没領域に追加配置する。
これらの態様によると、非追従コンテンツのうち少なくとも一部のコンテンツは、非埋没領域に限定して配置される。表示コンテンツのうち、重畳対象との重畳条件が課されないため、比較的配置の自由度が高い非追従コンテンツが、車外の物体との干渉を避けた位置に表示されることとなる。したがって、虚像による表示情報を極力維持した状態で、当該虚像の視認における違和感を低減することができる。
【0007】
なお、括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】HMIシステムの全体像を示すブロック図である。
図2】HUD及びDSMの車両への搭載状態を示す図である。
図3】HCUの概略的な構成を示す図である。
図4】HUDが搭載された車両、HUDによる虚像の表示可能範囲、及び前方他車両の関係を側方から見た図である。
図5】HUDによる虚像の表示可能範囲と前方他車両との関係をアイポイントから見た図である。
図6】車速コンテンツの非埋没領域への配置を示す図である。
図7】HCUによる表示制御処理のフローチャートである。
図8】第2実施形態における走行区画線コンテンツ及び箱庭コンテンツを示す図である。
図9】第2実施形態における図7に対応する図である。
図10】第3実施形態における車速コンテンツの一例を示す図である。
図11】第3実施形態における車速コンテンツの他の一例を示す図である。
図12】第3実施形態における車速コンテンツの他の一例を示す図である。
図13】第3実施形態における車速コンテンツの他の一例を示す図である。
図14】第4実施形態における車間距離と車速コンテンツの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0010】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態による表示制御装置は、HCU(Human Machine Interface)50となっている。HCU50は、車両1に用いられるHMI(Human Machine Interface)システム9を、ヘッドアップディスプレイ(Head Up Display、以下HUD)10と共に構成している。HCU50は、HUD10により車外の空中に結像される虚像VRIの表示を、制御する。
【0011】
HMIシステム9には、ドライバステータスモニタ(Driver Status Monitor、DSM)40等がさらに含まれている。HMIシステム9は、車両1の乗員(例えばドライバ)によるユーザ操作を受け付ける入力インターフェース機能と、ドライバへ向けて情報を提示する出力インターフェース機能とを、備えている。
【0012】
HUD10は、図2に示すように、車両1に搭載されるように構成され、当該車両1のインストルメントパネル2内に収容されている。HUD10は、車両1のウインドシールド3に設けられた投影部3aへ向けて表示光を投影する。HUD10は、表示光を投影部3aにて反射させることで、表示光を視認領域EBに到達させる。これにより、視認領域EB内にアイポイントEPを位置させた視認者としてのドライバは、表示光を虚像VRIとして知覚する。
【0013】
以下において、特に断り書きがない限り、前、後、上、下、右、左の方向は、水平面HPに沿った路面上の車両1を基準として記載される。
【0014】
車両1のウインドシールド3は、例えばガラスないし合成樹脂により透光性の板状に形成された透過部材である。ウインドシールド3は、インストルメントパネル2よりも上方に配置されている。ウインドシールド3は、表示光が投影される投影部3aを、滑らかな凹面状又は平面状に形成している。こうした投影部3aは、表示光を表面反射するように構成されている。
【0015】
なお、投影部3aは、ウインドシールド3に反射型のホログラフィック光学素子が設けられることによって、表面反射に代えて、干渉縞による回折反射で表示光を視認領域EBへ向けて反射するように構成されていてもよい。また、投影部3aは、ウインドシールド3に設けられていなくてもよい。例えば車両1と別体になっているコンバイナを車内に設置して、当該コンバイナに投影部3aが設けられていてもよい。
【0016】
視認領域EBは、HUD10により表示される虚像VRIが所定の規格を満たすように視認可能となる空間領域(例えば虚像全体が所定の輝度以上で視認可能となる空間領域)であり、一般的にはアイボックスとも称される。視認領域EBは、典型的には、車両1に設定されたアイリプスと重なるように設定される。アイリプスは、ドライバの眼の位置の空間分布を統計的に表したアイレンジに基づいて、楕円体状の仮想的な空間として設定されている。視認領域EBは、例えばドライバが着座する座席のヘッドレスト部より前方に設定される。
【0017】
以下、HMIシステム9において、HUD10、DSM40、HCU50の具体的構成を順に説明する。HUD10は、ハウジング11、画像形成部21及び導光部31を含む構成である。ハウジング11は、例えば合成樹脂ないし金属により、画像形成部21等を収容する中空形状を呈しており、インストルメントパネル2内に設置されている。ハウジング11は、投影部3aと上下方向に対向する上面部に、光学的に開口する窓部12を有している。窓部12は、例えば表示光を透過可能な防塵シート13で覆われている。
【0018】
画像形成部21は、最終的に虚像VRIとして結像されることとなる虚像の元画像を、導光部31へ向けて表示光を射出することにより形成するプロジェクションデバイスである。画像形成部21には、表示画面に元画像を表示する方式、スクリーンに元画像を描画する方式等が存在する。具体的に画像形成部21には、透過型又は反射型の液晶パネルを用いた液晶表示器、自発光するマイクロLEDを配列したマイクロLED式の表示器、レーザスキャナ方式の表示器、DMD(Digital Micromirror Device)を用いたDLP(Digital Light Processing;登録商標)方式の表示器等を採用することができる。画像形成部21は、HCU50からの映像信号に基づき、形成する元画像を逐次書き換えて映像形成可能となっている。
【0019】
導光部31は、画像形成部21から射出された表示光を、ウインドシールド3の投影部3aへ向けて導光する。導光部31としては、1つの凹面鏡からなる構成、1つの平面鏡と1つの凹面鏡とを組み合わせた構成、1つの凸面鏡と1つの凹面鏡とを組み合わせた構成等、各種の構成を採用することができる。ここで導光部31は、画像形成部21にて形成される元画像に対して、ドライバに視認される虚像VRIを、拡大する機能を有していることが好ましい。
【0020】
導光部31に導光された表示光は、窓部12を透過することでHUD10の外部へ射出され、投影部3aに入射する。投影部3aに反射された表示光がドライバのアイポイントEPに到達すると、ドライバからは、投影部3aを挟んだ視認領域EBとは反対側の車外の空間に結像された虚像VRIを視認可能となる。
【0021】
画像形成部21及び導光部31の配置の向きを適切に設定することで、虚像VRIの像面IPの路面に対する角度を所望の角度に設定することができる。例えば本実施形態では、像面IPが路面に対して起立するように、像面IPの路面に対する角度は略直角に設定される。虚像VRIの像面IPに沿った例えば矩形状の領域が、表示コンテンツを配置可能な虚像VRIの表示可能領域DPAとなる。HUD10が表示する表示コンテンツは、通常、表示可能領域DPAのうち一部に配置され、表示コンテンツが配置されない他部は、前景を透過するような非表示部分となる。
【0022】
DSM40は、視認領域EBを含む撮影範囲を撮影し、その撮影画像を解析することで、ドライバのアイポイントEPを検出し、さらにはドライバの居眠りやわき見を監視する。DSM40は、近赤外光源及び近赤外カメラと、これらを制御する制御ユニット等を含む構成である。
【0023】
DSM40は、運転席のヘッドレスト部に近赤外カメラを向けた姿勢にて、例えばステアリングコラム部の上面又はインストルメントパネル2の上面等に設置されている。DSM40は、近赤外光源によって近赤外光を照射されたドライバの頭部を、近赤外カメラによって撮影する。近赤外カメラによる撮影画像は、画像解析されずにHCU50へ出力されてもよく、制御ユニットにより画像解析されてもよい。画像解析される場合、制御ユニットは、ドライバのアイポイントEPを撮影画像から抽出し、抽出した情報をHCU50へ逐次提供可能である。
【0024】
HCU50は、図3に示すように、HUD10を含む車載表示デバイスによる表示を、統合的に制御する電子制御装置である。HCU50は、処理部51、RAM(Random Access Memory)52、記憶部53、入出力インターフェース54、及びこれらを接続するバス等を備えたコンピュータを主体として含む構成である。処理部51は、RAM52と結合された演算処理のためのハードウェアである。処理部51は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)及びRISC(Reduced Instruction Set Computer)等の演算コアを少なくとも1つ含む構成である。処理部51は、FPGA(Field Programmable Gate Array)及び他の専用機能を備えたIPコア等をさらに含む構成であってもよい。RAM52は、映像生成のためのビデオRAMを含む構成であってもよい。処理部51は、RAM52へのアクセスにより、後述する各機能部の機能を実現するための種々の処理を実行する。
【0025】
記憶部53は、不揮発性の記憶媒体を含む構成である。記憶部53には、処理部51によって実行される種々のプログラム(表示制御プログラム等)が格納されている。また、HCU50は、入出力インターフェース54を介して、車両システム4、DSM40、HUD10等と通信可能に接続されている。
【0026】
車両システム4には、例えば車両1の自動運転又は高度運転支援を統括して制御する車載の運転支援ECU、車両1の前景を含む外界(周辺)を監視する周辺監視センサ、路上に固定されて車両1の運転に必要な情報を提供する又は車両1を遠隔制御する交通情報センタ、及びこれらの組み合わせ等、車両1に適した種々の構成が採用され得る。
【0027】
HCU50は、記憶部53に記憶された表示制御プログラムを処理部51によって実行することで、HUD10による表示を制御するための複数の機能部を有する。具体的に図4に示すように、アイポイント特定部61、前景情報取得部62、コンテンツ生成部63、埋没領域特定部64、表示態様決定部65、及び映像信号出力部66等の機能部が構築されている。
【0028】
アイポイント特定部61は、DSM40から取得する情報に基づき、ドライバのアイポイントEPを特定する。アイポイント特定部61は、車両1を基準とした座標系又は視認領域EBを基準とした座標系にて、ドライバのアイポイントEPの座標を規定する。アイポイント特定部61は、規定されたアイポイントEPの座標情報を、コンテンツ生成部63等に逐次提供する。
【0029】
前景情報取得部62は、車両システム4等から、前景情報を取得する。前景情報には、車外の前景における物体の位置情報が含まれる。ここでいう物体には、他車両、歩行者、サイクリスト、人間以外の動物等の移動物体、さらに建物、路上の落下物、ガードレール、縁石、道路標識等が含まれる。物体の位置情報は、単に物体の中心座標だけでなく、物体の形状、サイズ等、物体が占有する空間領域を示す情報を含むことがより好適である。前景情報取得部62は、取得した前景情報を、コンテンツ生成部63及び埋没領域特定部64に逐次出力する。
【0030】
コンテンツ生成部63は、コンテンツ情報取得機能、コンテンツ選定機能、及び表示態様仮設定機能等を有し、これらの機能を用いて表示コンテンツを生成する。コンテンツ情報取得機能は、車両システム4等からコンテンツ情報を取得する機能である。車両システム4等から取得するコンテンツ情報には、所定の表示コンテンツの表示命令に関する情報(例えば、車速を表示する命令)、当該表示コンテンツが表示する表示内容の情報(例えば車速が60km/hであるという情報)等が含まれる。
【0031】
コンテンツ選定機能は、コンテンツ情報に基づき、表示対象となる表示コンテンツを選定する機能である。選定する表示コンテンツは、1つでもよく、2つ以上でもよく、場合によってはなくてもよい。本実施形態では、表示対象に選定された表示コンテンツが、後に詳述する表示態様決定部65により非表示対象に変更されることがある。このため、コンテンツ生成部63は、表示対象に選定された各表示コンテンツに対して、後で非表示対象に変更されることを許容するか否かを示す変更可否属性を、付与する。
【0032】
なお、HUD10にて表示される表示コンテンツには、追従コンテンツ及び非追従コンテンツが存在する。特に本実施形態にて選定される表示コンテンツは、追従コンテンツ及び非追従コンテンツのうち、非追従コンテンツのみとなっている。
【0033】
追従コンテンツは、拡張現実(Augmented Reality、AR)表示に用いられるAR表示物である。AR表示物の表示位置は、例えば路面、他車両、歩行者及び道路標識等、車両1の前景に存在する特定の重畳対象に関連付けられている。重畳対象は、ドライバから視認可能であっても、死角に隠れて視認不能であってもよい。AR表示物は、特定の重畳対象に重畳表示され、当該重畳対象に相対的に固定されているように、重畳対象を追従して、ドライバのアイポイントEPからの見た目上の表示位置を表示可能領域DPA内にて移動可能である。すなわち、車両1の移動又は重畳対象の移動に伴って、AR表示物の表示可能領域DPAに対する相対位置が移動し、AR表示物と重畳対象との重畳状態が、継続的に維持される。
【0034】
非追従コンテンツは、車両1の前景に重畳される表示物のうちで、AR表示物を除いた非AR表示物である。非AR表示物は、AR表示物とは異なり、特定の重畳対象には非重畳の状態で、車両1の前景に重畳表示される。非AR表示物は、特定の重畳対象を追従することなく、ウインドシールド3等の車両構成ないし表示可能領域DPAに相対的に固定されているように表示される。なお、車両1と重畳対象との位置関係により、非AR表示物であっても、偶発的ないし一時的に、歩行者等と重畳されることがある。
【0035】
表示態様仮設定機能は、表示対象として選定された表示コンテンツについて、表示態様を仮設定する機能である。ここでいう表示態様には、表示可能領域DPA上の表示位置が含まれる。表示態様には、さらに表示サイズ、表示色、及び表示輝度の少なくとも1つが含まれてもよい。
【0036】
本実施形態において、表示可能領域DPA上の表示位置は、表示コンテンツの表示内容に基づいて予め定められた位置に、仮設定される。コンテンツ生成部63は、表示コンテンツの表示態様の仮設定結果を、表示態様決定部65に提供する。
【0037】
埋没領域特定部64は、表示可能領域DPAにおいて、埋没領域BA及び非埋没領域NBAを特定する。埋没領域BAは、表示可能領域DPAのうちで、前景における車外の物体に埋没する領域である。すなわち、埋没領域BAに表示コンテンツを配置して表示を実施した場合、アイポイントEPからの見た目上、物体よりも遠方に表示コンテンツが浮かぶ結果、当該表示コンテンツが物体に埋没しているように認識される。
【0038】
例えば本実施形態では、埋没領域BA及び非埋没領域NBAは、例えば仮想の3次元空間(以下、仮想空間)のシミュレーションを用いて特定される。埋没領域特定部64は、前景情報取得部62が取得した前景情報等に基づき、現在の車両1の前景を中心とした周辺環境を仮想空間中に再現する。埋没領域特定部64は、アイポイント特定部61が特定したアイポイントEPの座標に対応した仮想カメラ位置を、仮想空間中に設定する。さらに埋没領域特定部64は、HUD10による虚像VRIの像面IP、詳細には表示可能領域DPAに対応した仮想表示可能面を、仮想空間中に設定する。なお、仮想空間の情報は、例えば、RAM52又は記憶部53における記憶媒体又は記憶媒体中のメモリ領域として設けられた仮想空間メモリVSMに記憶され、埋没領域特定部64が仮想空間メモリVSMにアクセスすることで、最新の周辺環境を再現すべく更新される。
【0039】
例えば図5,6に示す場面では、車両1よりも前方に前方他車両Xが存在している。車両1のHUDによる表示可能領域DPAのうち、左側が埋没領域BAであり、右側が非埋没領域NBAとなっている。
【0040】
埋没領域特定部64は、仮想表示可能面のうち、仮想空間上の物体が占有する空間領域に埋没する埋没部分を抽出する。こうして埋没領域特定部64は、可動表示可能面にて抽出された埋没部分に対応する表示可能領域DPA上の領域を、埋没領域BAとして特定可能である。さらに埋没領域特定部64は、表示可能領域DPAのうち、埋没領域BAを除いた領域を、非埋没領域NBAとして特定する。埋没領域特定部64は、埋没領域BA及び非埋没領域NBAの特定結果を、表示態様決定部65に提供する。
【0041】
表示態様決定部65は、コンテンツ生成部63が生成した表示コンテンツの表示態様の仮設定結果を、埋没領域特定部64による特定結果に基づき修正し、表示可能領域DPAに配置される表示コンテンツの表示態様を最終的に決定する。
【0042】
表示態様決定部65は、仮設定結果において、埋没領域BAに非AR表示物が配置されているか否かに応じて、当該非AR表示物の表示態様を修正するか否かを決定する。具体的に、表示態様決定部65は、仮設定された各非AR表示物に対して、当該非AR表示物の少なくとも一部が埋没領域BAに位置しているか否かを判定する。表示態様決定部65は、判定対象の非AR表示物の少なくとも一部が埋没領域BAに位置している場合に、当該非AR表示物の表示態様を修正する。表示態様決定部65は、判定対象の非AR表示物の全部が非埋没領域NBAに位置している場合に、当該非AR表示物の表示態様の仮設定結果を、そのまま最終的な表示態様に決定する。
【0043】
表示態様決定部65は、非AR表示物の表示態様を修正するにあたって、修正対象の非AR表示物を、非埋没領域NBAに配置できるか否かを判定する。非AR表示物が非埋没領域NBAに配置できるか否かの判定にあたっては、修正後の非AR表示物の内容をドライバから容易に認識可能な表示態様で配置できるか否かが考慮される。例えば、非埋没領域NBAが極小のサイズである場合、非AR表示物の表示サイズを認識限界よりも小さな極小のサイズにまで縮小すれば、物理的には当該非AR表示物を非埋没領域NBAに配置することができる。しかしながら、非AR表示物の表示サイズが認識限界よりも小さければ、ドライバが当該非AR表示物を認識不能となる。したがってこの例示では、表示態様決定部65は、この非AR表示物を、非埋没領域NBAに配置できないと判定する。
【0044】
非AR表示物を非埋没領域NBAに配置できる場合には、表示態様決定部65は、当該非AR表示物の全体の表示位置を、非埋没領域上に変更する。表示態様決定部65は、変更後の表示位置にて、仮設定された表示サイズで非AR表示物を表示するための十分な面積が存在する場合には、仮設定の表示サイズを維持する。十分な面積が存在しない場合には、表示態様決定部65は、視認限界よりも大きな範囲にて、非AR表示物の表示サイズを縮小する。こうして表示態様決定部65は、非AR表示物のうち少なくとも一部のコンテンツを、表示可能領域DPAのうち非埋没領域NBAに限定して配置する配置処理を実施する。
【0045】
図6に示す場面では、非AR表示物としての車速コンテンツC1が、仮設定による埋没領域BA上の表示位置P0から非埋没領域NBA上の表示位置P1へと修正されている。
【0046】
非AR表示物を非埋没領域NBAに配置できない場合には、表示態様決定部65は、当該非AR表示物の表示位置を、埋没領域BA上とする。非AR表示物の表示位置は、仮設定の表示位置に維持されてもよく、埋没領域BA上のうちより目立ち難い位置に変更されてもよい。
【0047】
そして、表示態様決定部65は、非AR表示物の表示態様をトーンダウンする。ここでいうトーンダウンとは、仮設定結果に対して、表示サイズを縮小すること、彩度がより低い表示色に変更すること、表示輝度を低下させること、文字のフォントを太字から細字に変更することのうち、少なくとも1つを実施することである。非AR表示物が非表示対象への変更を許容する表示可否属性を有する場合、表示輝度を低下させることには、表示輝度を0とする、すなわち非AR表示物自体を消去することが含まれる。表示態様決定部65は、非AR表示物の表示態様の最終的な決定結果を、映像信号出力部66へ提供する。
【0048】
映像信号出力部66は、表示態様決定部65が決定した非AR表示物の表示態様に基づき、HUD10の画像形成部21が形成する元画像、すなわち映像データの1フレームを構成する映像を、電気的な映像信号の形態に生成する。映像信号出力部66は、生成した映像信号を、HUD10の画像形成部21へ向けて逐次出力する。
【0049】
次に、表示制御プログラムに基づき、表示コンテンツの表示態様を制御する表示制御方法の詳細を、図7のフローチャートを用いて説明する。図7のフローチャートの各ステップに基づく一連の表示制御処理は、例えば車両1の電源がオン状態であり、HCU50への給電が実施されている状態において、適宜の開始タイミングにて、繰返し実施される。この繰返しは、例えば映像データのフレームレート周期に合わせて(同期して)実施されることが好ましい。
【0050】
まず、S11では、コンテンツ生成部63は、表示コンテンツ(非AR表示物)の表示態様を仮設定する。S11の処理後、S12へ移る。
【0051】
S12では、埋没領域特定部64は、埋没領域BAを特定する。S12の処理後、S13へ移る。
【0052】
S13では、表示態様決定部65は、仮設定における表示コンテンツの配置において、埋没領域BAに判定対象の非AR表示物が配置されているか否かを判定する。S13にて肯定判定が下されると、S14へ移る。S13にて否定判定が下されると、表示態様決定部65は、仮設定の表示態様を最終的な表示態様に決定し、一連の処理を終了する。
【0053】
S14では、表示態様決定部65は、非埋没領域NBAに判定対象の非AR表示物が配置できるか否かを判定する。S14にて肯定判定が下されると、S15へ移る。S14にて否定判定が下されると、S16へ移る。
【0054】
S15では、表示態様決定部65は、判定対象の非AR表示物の表示位置を変更する。表示位置の変更に伴って表示サイズが変更される場合もある。S15を以って一連の処理を終了する。
【0055】
S16では、表示態様決定部65は、仮設定の表示位置を維持しつつ、非AR表示物の表示態様をトーンダウンする。S16を以って一連の処理を終了する。
【0056】
なお、上述のフローチャートでは、表示対象として選定された非AR表示物が1つである場合を示したが、表示対象として選定された非AR表示物が複数存在する場合には、各非AR表示物に対して1周ずつ、S13~S16の処理がループ処理される。こうして1フレームを構成する映像が生成されることになる。
【0057】
なお、第1実施形態では、コンテンツ生成部63が、表示コンテンツの表示態様であって、表示コンテンツの表示位置を含む表示態様を、埋没領域BAとは無関係に仮設定する「表示態様仮設定部」に相当する。また、AR表示物が「追従コンテンツ」に、非AR表示物が「非追従コンテンツ」に、それぞれ相当する。
【0058】
(作用効果)
以上説明した第1実施形態の作用効果を以下に改めて説明する。
【0059】
第1実施形態によると、非AR表示物のうち少なくとも一部のコンテンツは、非埋没領域NBAに限定して配置される。表示コンテンツのうち、重畳対象との重畳条件が課されないため、比較的配置の自由度が高い非AR表示物が、車外の物体との干渉を避けた位置に表示されることとなる。したがって、虚像VRIによる表示情報を極力維持した状態で、当該虚像VRIの視認における違和感を低減することができる。
【0060】
また、第1実施形態によると、表示コンテンツの表示態様であって、表示コンテンツの表示位置を含む表示態様を、埋没領域BAとは無関係に仮設定するコンテンツ生成部63が、さらに設けられている。表示態様の仮設定により、表示態様決定部65による表示態様の決定における配置処理の煩雑化を抑制しつつ、虚像VRIの視認における違和感を低減することができる。
【0061】
また、第1実施形態によると、非AR表示物のうち少なくとも一部分が埋没領域BAに位置する表示位置に仮設定されている場合であって、非AR表示物を認識可能な態様にて表示するスペースが非埋没領域NBAに存在している場合に、非AR表示物は、非埋没領域NBAに退避させられる。したがって、虚像VRIによる表示情報を極力維持した状態で、当該虚像VRIの視認における違和感を低減することができる。
【0062】
また、第1実施形態によると、非AR表示物のうち少なくとも一部分が埋没領域BAに位置する表示位置に仮設定されている場合であって、非AR表示物を認識可能な態様にて表示するスペースが非埋没領域NBAに存在していない場合に、非AR表示物は、埋没領域BAに配置されると共に、表示態様を仮設定に対してトーンダウンされる。したがって、非AR表示物は、認識可能な態様に保たれると共に、表示態様のトーンダウンにより虚像VRIの視認における違和感を和らげることができる。
【0063】
また、第1実施形態によると、非AR表示物のうち全部が非埋没領域NBAに位置する表示位置に仮設定されている場合に、仮設定された表示態様は、最終的な表示態様として決定される。故に、表示態様決定部65による表示態様の決定における配置処理の煩雑化を抑制しつつ、虚像VRIの視認における違和感を低減することができる。
【0064】
(第2実施形態)
図8,9に示すように、第2実施形態は第1実施形態の変形例である。第2実施形態について、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0065】
第2実施形態のコンテンツ生成部63は、表示対象となる表示コンテンツを選定すると共に、表示対象に選定された各表示コンテンツに対して、追従属性を付与する。表示コンテンツの追従属性は、当該表示コンテンツを、追従コンテンツ(AR表示物)として表示するか、非追従コンテンツ(非AR表示物)として表示するか、すなわち表示コンテンツの追従態様を表す属性である。すなわち、第2実施形態では、AR表示物及び非AR表示物の両方が虚像表示され得る。
【0066】
コンテンツ生成部63が仮設定する表示可能領域DPA上の表示位置は、第1実施形態に説明した仮想空間のシミュレーションを用いて設定される。コンテンツ生成部63は、仮想空間メモリVSMにアクセスし、仮想空間中において、仮想カメラ位置と特定の重畳対象とを結ぶ線分と、仮想表示可能面との交差位置を算出し、当該交差位置に対応する表示可能領域上の位置に、AR表示物の表示位置を仮設定する。コンテンツ生成部63は、非AR表示物の表示位置を、表示可能領域DPA上に予め定められた位置、又は表示可能領域上においてAR表示物との干渉を避けた位置に仮設定する。
【0067】
第2実施形態の表示態様決定部65は、表示コンテンツの表示態様を修正するにあたって、修正対象の表示コンテンツの追従属性を参照する。表示態様決定部65は、修正対象の表示コンテンツがAR表示物である場合、当該AR表示物の表示位置を、特定の重畳対象との重畳状態を保つように、仮設定の表示位置に維持する。その代わり、表示態様決定部65は、AR表示物の表示態様をトーンダウンする。
【0068】
加えて表示態様決定部65は、トーンダウンされたAR表示物の視認性低下を補うように、AR表示物に対応する特定の重畳対象を明示する重畳対象明示コンテンツを追加してもよい。本実施形態では、重畳対象明示コンテンツとして箱庭コンテンツが採用されている。箱庭コンテンツは、例えば非AR表示物に属する表示コンテンツである。箱庭コンテンツは、非埋没領域NBAに配置される。箱庭コンテンツは、前景に対して特定の重畳対象が認識可能に加工(画像処理)された表示を、矩形状の枠内に縮小表示する非AR表示物である。箱庭コンテンツが表示されることにより、ドライバは、埋没の原因物体の死角に隠れているAR表示物の重畳対象を、より明確に認識することができる。
【0069】
ここで、図8に具体的な表示例を一例として示す。コンテンツ生成部63は、走行区画線コンテンツC2を表示対象に選択している。走行区画線コンテンツC2は、走行区画線TLを強調する表示コンテンツであって、特定の重畳対象とするAR表示物である。走行区画線TLは、車両1が走行する路面を車線毎に区画する線状に設けられている。コンテンツ生成部63は、走行区画線TLと重畳する表示可能領域DPA上の位置に、走行区画線コンテンツC2の表示位置を仮設定する。
【0070】
ところが、アイポイントEPと走行区画線TLの間には前方他車両Xが存在しており、走行区画線コンテンツC2の大半は、埋没領域BAに位置している。対して表示態様決定部65は、走行区画線コンテンツC2の仮設定された表示位置を維持すると共に、走行区画線コンテンツC2の表示態様をトーンダウンする。具体的に、表示態様決定部65は、仮設定された表示態様に対して、走行区画線コンテンツC2の表示色を彩度の低い色に変更すると共に、表示輝度を低下させる。この結果、走行区画線コンテンツC2は、走行区画線TLとの重畳状態を維持したまま、埋没の違和感が生じ難い、目立たない態様で表示される。
【0071】
こうした走行区画線コンテンツC2の視認性低下を補完するべく、箱庭コンテンツC3が非埋没領域NBAに配置される。箱庭コンテンツC3は、例えば仮想空間において仮想カメラ位置から見た前景を描画することにより形成される。この箱庭コンテンツC3の形成では、例えば埋没の原因となっている前方他車両Xの表示が走行区画線TLの表示よりも相対的に規制された状態で描画が実施される。ここで相対的な規制とは、例えば仮想空間中において前方他車両Xのオブジェクトに透明の属性を与え、外周輪郭以外はシースルーの形態で描画されるようにする部分的表示規制でもよく、また例えば仮想空間中において前方他車両Xのオブジェクトを除去する全体的表示規制でもよい。
【0072】
次に、表示制御プログラムに基づき、表示コンテンツの表示態様を制御する表示制御方法の詳細を、図9のフローチャートを用いて説明する。
【0073】
S21~S22は、第1実施形態のS11~S12と同様である。S22の処理後、S23へ移る。
【0074】
S23では、表示態様決定部65は、仮設定における表示コンテンツの配置において、埋没領域BAに判定対象の表示コンテンツが配置されているか否かを判定する。S23にて肯定判定が下されると、S24へ移る。S23にて否定判定が下されると、表示態様決定部65は、仮設定の表示態様を最終的な表示態様に決定し、一連の処理を終了する。
【0075】
S24では、表示態様決定部65は、埋没領域BAに配置されている表示コンテンツが非AR表示物であるか否かを判定する。S24にて肯定判定が下されると、S25へ移る。S24にて否定判定が下されると、S28へ移る。
【0076】
S25~S27は、第1実施形態のS14~S16と同様である。S26又はS27を以って一連の処理を終了する。
【0077】
また、埋没領域BAに配置されている表示コンテンツがAR表示物である場合のS28では、表示態様決定部65は、仮設定の表示位置を維持しつつ、非AR表示物の表示態様をトーンダウンする。これと共に、表示態様決定部65は、箱庭コンテンツC3を表示対象として追加する。S28を以って一連の処理を終了する。
【0078】
なお、上述のフローチャートでは、表示対象として選定された表示コンテンツが1つである場合を示したが、表示対象として選定された表示コンテンツが複数存在する場合には、各表示コンテンツに対して、S23~S28の処理がループ処理される。こうして1フレームを構成する映像が生成されることになる。
【0079】
以上説明した第2実施形態によると、AR表示物のうち少なくとも一部分が埋没領域BAに位置する表示位置に仮設定されている場合、AR表示物は、特定の重畳対象との重畳関係を維持する表示位置に配置されると共に、表示態様を仮設定に対してトーンダウンさせて配置される。したがって、AR表示物が特定の重畳対象との重畳状態を維持することによって実現される表示情報が保たれると共に、表示態様のトーンダウンにより虚像VRIの視認における違和感を和らげることができる。
【0080】
(第3実施形態)
図10~13に示すように、第3実施形態は第2実施形態の変形例である。第3実施形態について、第2実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0081】
第3実施形態では、HUD10は、表示する虚像VRIに2つの表示可能領域DPAを有していることで、2画面の構成となっている。2つの表示可能領域DPAは、画像形成部21に2つの表示器が設けられることにより実現されてもよく、画像形成部21の1つの表示器による画像が光学的又は仮想的に2分割されることにより実現されてもよい。
【0082】
2つの表示可能領域DPAは、AR用表示可能領域DPA1及び非AR用表示可能領域DPA2である。AR用表示可能領域DPA1は、非AR用表示可能領域DPA2よりも上方に配置され、非AR用表示可能領域DPA2よりもサイズの大きな矩形状を呈している。非AR用表示可能領域DPA2は、AR用表示可能領域DPA1よりも下方に配置され、AR用表示可能領域DPA1よりもサイズの小さな矩形状を呈している。
【0083】
第3実施形態のコンテンツ生成部63は、AR表示物の表示位置を、AR用表示可能領域DPA1上に仮設定する。コンテンツ生成部63は、非AR表示物(例えば図10の車速コンテンツC4)の表示位置を、非AR用表示可能領域DPA2上に仮設定する。第3実施形態の埋没領域特定部64は、AR用表示可能領域DPA1及び非AR用表示可能領域DPA2のそれぞれに対して、埋没領域BA及び非埋没領域NBAを特定する。
【0084】
第3実施形態の表示態様決定部65は、非AR用表示可能領域DPA2上に仮設定された各非AR表示物に対して、当該非AR表示物の少なくとも一部が埋没領域BAに位置しているか否かを判定する。表示態様決定部65は、図10に示すように、判定対象の非AR表示物の全部が非埋没領域NBAに位置している場合に、当該非AR表示物の表示態様の仮設定結果を、そのまま最終的な表示態様に決定する。
【0085】
表示態様決定部65は、判定対象の非AR表示物の少なくとも一部が埋没領域BAに位置している場合に、当該非AR表示物の表示態様を修正する。表示態様決定部65は、非AR表示物の表示態様を修正するにあたって、修正対象の非AR表示物を、非埋没領域NBAに配置できるか否かを判定する。
【0086】
ここで表示態様決定部65は、非AR用表示可能領域DPA2における非埋没領域NBAに、非AR表示物を配置できるか否かを判定する。非AR表示物を非AR用表示可能領域DPA2における非埋没領域NBAに配置できる場合には、表示態様決定部65は、当該非AR表示物の表示位置を、当該非埋没領域NBA上に変更する。表示態様決定部65は、図11のように、仮設定の表示サイズを維持しつつ、非AR表示物の表示位置を大きく移動させてもよい。表示態様決定部65は、図12のように、仮設定からの表示位置の移動量を最小限にしつつ、非AR表示物の表示サイズを縮小してもよい。
【0087】
非AR表示物を非AR用表示可能領域DPA2における非埋没領域NBAに配置できない場合には、図13のように、表示態様決定部65は、当該非AR表示物の表示位置を、非AR用表示可能領域DPA2における埋没領域BA上とする。非AR表示物の表示位置は、仮設定の表示位置に維持されてもよく、非AR用表示可能領域DPA2における埋没領域BA上のうちより目立ち難い位置に変更されてもよい。そして、表示態様決定部65は、非AR表示物の表示態様をトーンダウンする。
【0088】
さらに表示態様決定部65は、第2段階として、AR用表示可能領域DPA1における非埋没領域NBAに、非AR表示物を配置できるか否かを判定する。非AR表示物をAR用表示可能領域DPA1における非埋没領域NBAに配置できる場合には、表示態様決定部65は、当該非AR表示物の複製C4Cを、AR用表示可能領域DPA1における非埋没領域NBAに配置する。非AR表示物の複製C4Cの表示態様は、複製元の非AR表示物の表示態様と異なっていてもよい。
【0089】
なお、第3実施形態では、AR用表示可能領域DPA1は、追従コンテンツとしてのAR表示物が主に配置される「追従コンテンツ用領域」に相当する。非AR用表示可能領域DPA2は、非追従コンテンツとしての非AR表示物が主に配置される「非追従コンテンツ用領域」に相当する。
【0090】
以上説明した第3実施形態によると、非AR表示物のうち少なくとも一部分が非AR用表示可能領域DPA2上の埋没領域BAに位置する表示位置に仮設定されている場合であって、非AR表示物を認識可能な態様にて表示するスペースが非AR用表示可能領域DPA2上の非埋没領域NBAに存在している場合に、非AR表示物を非AR用表示可能領域DPA2上の非埋没領域NBAに退避させる。非AR表示物が非AR用表示可能領域DPA2上の表示位置を維持することで、ドライバが当該非AR表示物を見失い難くなる。こうして虚像VRIの視認性の低下を抑制しつつ、虚像VRIの視認における違和感を低減することができる。
【0091】
また、第3実施形態によると、非AR表示物のうち少なくとも一部分がAR用表示可能領域DPA1上の埋没領域BAに位置する表示位置に仮設定されている場合であって、非AR表示物を認識可能な態様にて表示するスペースが非AR用表示可能領域DPA2上の非埋没領域NBAに存在していない場合に、非AR表示物の複製が、AR用表示可能領域DPA1上の非埋没領域NBAに追加配置される。ドライバは非埋没領域NBAに配置された非AR表示物の複製を視認することで、虚像VRIの視認における違和感を低減可能となる。
【0092】
(第4実施形態)
図14に示すように、第4実施形態は第1実施形態の変形例である。第4実施形態について、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0093】
第4実施形態のHUD10による虚像VRIの像面IPは、路面に対して傾斜するように、像面IPの路面に対する角度は非直角に設定される。像面IPは、下方から上方へ向かうに従って、アイポイントEPが位置する視認領域EBに対してより遠距離となるように傾斜している。
【0094】
こうした像面IPに沿った表示可能領域DPAでは、車両1が埋没の原因となる前方他車両Xに追走すると、その車間距離IVDに応じて埋没領域BAの範囲が変動する。例えば車両1が前方他車両Xに対して徐々に接近し、前方他車両Xに対する車間距離IVDが徐々に小さくなる場面では、表示可能領域DPAは、全域が非埋没領域NBAである状態(図14(a)参照)から、当該表示可能領域DPAのうち上方部分が埋没領域BAである状態(図14(b)(c)参照)を経て、全域が埋没領域BAである状態に至る。
【0095】
第4実施形態のコンテンツ生成部63は、所定の非AR表示物(例えば車速コンテンツC5)を、恒常的な表示対象として選択している。
【0096】
図14(a)に示すように、第4実施形態の表示態様決定部65は、表示可能領域DPAの全域が非埋没領域NBAである状態では、コンテンツ生成部63による仮設定結果を、そのまま最終的な表示態様に決定する。例えば非AR表示物が表示可能領域DPAのうち上側部分USに配置される。
【0097】
図14(b)に示すように、表示態様決定部65は、表示可能領域DPAのうち上側部分USが埋没領域BAである状態になると、埋没領域BAの下方への拡大に伴って、非AR表示物の表示位置を下方へと移動させる。例えば非AR表示物が表示可能領域DPAのうち下側部分DSに移動する。非AR表示物は、埋没領域BAの下方への拡大に合わせて、徐々に(より詳細には滑らかに)移動してもよく、所定のタイミングでジャンプするように一度に移動してもよい。表示位置が下方に移動している間は、表示サイズの縮小処理は実施されず、仮設定された表示サイズが維持される。
【0098】
図14(c)に示すように、表示態様決定部65は、表示可能領域DPAのうち下側部分DSの一部まで埋没領域BAである状態になると、下側部分DSに位置する非AR表示物の表示サイズを縮小する。非AR表示物は、埋没領域BAの下方への拡大に合わせて、徐々に(より詳細には滑らかに)縮小されてもよく、所定のタイミングで一度に縮小されてもよい。この際に、非AR表示物の表示位置の下方への移動が伴っていてもよく、伴っていなくてもよい。
【0099】
図14(d)に示すように、表示態様決定部65は、表示可能領域DPAの全域が埋没領域BAである状態になると、非AR表示物の表示態様をトーンダウンする。
【0100】
以上のように、車両1の前方他車両Xとの車間距離IVDに応じて、非AR表示物の表示態様が変化している。したがって、車間距離IVDの変動に対しても、虚像VRIの視認における違和感を低減することができる。
【0101】
(他の実施形態)
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0102】
具体的に変形例1としては、表示態様決定部65は、コンテンツ生成部63が一度仮設定した非AR表示物の表示位置を修正する構成でなくてもよい。例えば、表示態様決定部65は、非AR表示物の表示態様が設定されていない状態から、埋没領域特定部64が特定した埋没領域BAを参照して、当該非AR表示物を非埋没領域NBAに限定して配置してもよい。
【0103】
変形例2としては、埋没領域特定部64は、仮想空間のシミュレーションを用いる代わりに、車両システム4(例えば周辺監視センサとしてのカメラ)により撮影された前景の撮影画像を解析することにより、埋没領域BAを特定してもよい。
【0104】
変形例3としては、埋没領域BAは、表示可能領域DPAのうち、物体に占有された空間領域に埋没する埋没部分としての狭義の埋没領域であってもよく、当該埋没部分に、表示可能領域DPAが物体に占有された空間領域の死角となる死角部分を加えた広義の埋没領域であってもよい。
【0105】
さて、前景における物体が短時間の間に細かく移動する等した場合では、埋没領域BA及び非埋没領域NBAが小刻みに変動し得る。そこで変形例4において表示態様決定部65は、非AR表示物の表示位置が一度変更された場合に、変更後の一定時間、当該非AR表示物の表示位置を埋没領域BA及び非埋没領域NBAとの関係に関わらず、固定してもよい。そうすることで、非AR表示物の表示位置変更頻度が低下し、虚像VRIの視認性を向上させることができる。
【0106】
第2実施形態に関する変形例5としては、重畳対象明示コンテンツは、AR表示物に対応する特定の重畳対象を明示するものであれば、箱庭コンテンツに限られず、文字により特定の重畳対象を明示するコンテンツであってもよい。また、HCU50は、重畳対象明示コンテンツを、HUD10による非埋没領域NBAに配置する代わりに、HCU50が制御する他の車載表示デバイスに表示されるようにしてもよい。
【0107】
第4実施形態に関する変形例6としては、HCU50は、表示を制御するための機能部として、埋没領域特定部64の代わりに、車両1と前方他車両Xとの車間距離IVDを特定する車間距離特定部を備えていてもよい。車間距離特定部は、例えば車両システム4に含まれる測距センサの計測情報を取得して、前方他車両Xとの車間距離IVDを特定する。表示態様決定部65は、非AR表示物が前方他車両Xに埋没しないように、車間距離IVDに応じて、非AR表示物の表示態様を変更するものであってもよい。
【0108】
変形例7としては、HCU50によって提供されていた各機能は、ソフトウェア及びそれを実行するハードウェア、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの複合的な組み合わせによっても提供可能である。さらに、こうした機能がハードウェアとしての電子回路によって提供される場合、各機能は、多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によっても提供可能である。
【0109】
変形例8としては、上述の表示制御方法を実現可能なプログラム等を記憶する記憶媒体の形態も、適宜変更されてよい、例えば記憶媒体は、回路基板上に設けられた構成に限定されず、メモリカード等の形態で提供され、スロット部に挿入されて、HCU50の制御回路に電気的に接続される構成であってもよい。さらに、記憶媒体は、HCU50へのプログラムのコピー基となる光学ディスク及びハードディスクであってもよい。
【0110】
変形例9としては、HCU50と車両システム4の他の機能を備える電子制御装置とが統合され、表示制御装置として機能する1つの電子制御装置が構成されていてもよい。
【0111】
変形例10としては、表示制御装置は、HUD10のハウジング11の内部に設けられ、HUD10の制御に特化した電子制御装置であってもよい。
【0112】
変形例11としては、表示制御装置は、表示制御対象となるHUD10が搭載された車両1に搭載されていなくてもよい。表示制御装置が車両1に搭載されず、車両1の外に固定配置されている場合又は他車両に搭載されている場合には、無線通信によって、HUD10が遠隔制御されてもよい。
【0113】
変形例12としては、表示制御装置を用いる車両1は、一般的な自家用の乗用車に限定されず、レンタカー用の車両、有人タクシー用の車両、ライドシェア用の車両、貨物車両及びバス等であってもよい。さらに、車両は、モビリティサービスに用いられる無人運転用の車両であってもよい。
【0114】
変形例13としては、表示制御装置を用いる車両1は、それぞれの国及び地域の道路交通法に応じて最適化されてよい。
【0115】
本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置及びその手法は、専用ハードウエア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置及びその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと一つ以上のハードウエア論理回路との組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1:車両、10:HUD、50:HCU、64:埋没領域特定部、65:表示態様決定部、BA:埋没領域、C1~C5:表示コンテンツ、DPA:表示可能領域、NBA:非埋没領域、X:前方他車両(物体)
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