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特許7415519タイヤ用モールドの離型剤の塗布方法及びタイヤの製造方法
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  • 特許-タイヤ用モールドの離型剤の塗布方法及びタイヤの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】タイヤ用モールドの離型剤の塗布方法及びタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/58 20060101AFI20240110BHJP
   B29C 33/72 20060101ALI20240110BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20240110BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
B29C33/58
B29C33/72
B29C35/02
B29L30:00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019224465
(22)【出願日】2019-12-12
(65)【公開番号】P2021091187
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】信近 英男
(72)【発明者】
【氏名】田畑 克矩
(72)【発明者】
【氏名】上ノ薗 久順
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-113624(JP,A)
【文献】特開2017-060974(JP,A)
【文献】特開2014-177561(JP,A)
【文献】特開2008-062633(JP,A)
【文献】特開2010-201885(JP,A)
【文献】特開2017-128013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 35/00-35/18
B29L 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)モールドのキャビティ面の形状を認識する工程、
(B)前記キャビティ面の形状に基づき、ノズルが離型剤を吹き付ける複数の吹き付け位置を決定する工程
及び
(C)前記ノズルが移動しつつそれぞれの吹き付け位置で前記離型剤を前記キャビティ面に吹き付ける工程
を含み、
前記モールドが内周面と前記内周面から突出する筋状突起とを備え、前記キャビティ面が前記内周面と前記筋状突起の斜面とを含み、
前記工程(B)において、
塗布装置が備える制御装置が、一の吹き付け位置で離型剤を直接吹き付けられない前記斜面に離型剤を塗布できる位置を他の吹き付け位置に決定する、タイヤ用モールドの離型剤の塗布方法。
【請求項2】
前記工程(C)において、前記離型剤の吹き付けを停止した状態で前記ノズルがそれぞれの吹き付け位置から他の吹き付け位置に移動する、請求項1に記載の離型剤の塗布方法。
【請求項3】
前記工程(A)において、前記ノズルの移動経路に沿って移動するセンサーが前記キャビティ面の形状を検出し、前記センサーの検出に基づいて前記キャビティ面の形状を認識する、請求項1又は2に記載の離型剤の塗布方法。
【請求項4】
前記工程(C)において、有機溶剤系離型剤を前記キャビティ面に吹き付ける、請求項1から3のいずれかに記載の離型剤の塗布方法。
【請求項5】
前記工程(C)に先立ち、
(D)前記モールドのキャビティ面をレーザーでクリーニングする工程を含む、請求項1から4のいずれかに記載の離型剤の塗布方法。
【請求項6】
(A)モールドのキャビティ面の形状を認識する工程、
(B)前記キャビティ面の形状に基づき、ノズルが離型剤を吹き付ける複数の吹き付け位置を決定する工程
(C)前記ノズルが移動しつつそれぞれの吹き付け位置で前記離型剤を前記キャビティ面に吹き付ける工程、
(D)ローカバーを準備する工程、
(E)前記ローカバーを前記モールドに投入する工程
(F)前記モールド内で前記ローカバーを加熱及び加圧し前記ローカバーからタイヤを得る工程
を含み、
前記モールドが内周面と前記内周面から突出する筋状突起とを備え、前記キャビティ面が前記内周面と前記筋状突起の斜面とを含み、
前記工程(B)において、
塗布装置が備える制御装置が、一の吹き付け位置で離型剤を直接吹き付けられない前記斜面に離型剤を塗布できる位置を他の吹き付け位置に決定する、タイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用モールドの離型剤の塗布方法と、この離型剤の塗布方法を用いたタイヤの製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造方法では、モールド内でローカバーが加熱及び加圧され、このローカバーからタイヤが得られる。このモールド内でローカバーが加熱及び加圧されることで、モールドのキャビティ面には生成物が付着する。このモールドが繰り返し使用され、タイヤが量産される。このモールドが繰り返し使用されることで、この生成物が成長する。成長した生成物は、タイヤの外観を損なう。モールドは、適宜クリーニングされ、この生成物が除去される。この様なモールドのクリーニング方法が特許文献1(特開2017-128013公報)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-128013公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このモールドのクリーニングでは、キャビティ面から、生成物と共に離型剤が除去される。離型剤が除去されたモール内でローカバーが加熱及び加圧されると、得られるタイヤがキャビティ面に密着する。この密着は、タイヤの離型性を損なう。この密着を抑制するため、クリーニングされたキャビティ面に離型剤が塗布される。この離型剤を塗布することで、キャビティ面にタイヤが密着することが抑制される。
【0005】
しかしながら、このキャビティ面の全面に、離型剤を塗布することは容易でない。離型剤が塗布されていない部分にタイヤが密着する恐れがある。多量の離型剤を塗布することで、キャビティ面の全面に離型剤を塗布することが考えられる。しかしながら、多量の離型剤の塗布は、長い塗布時間や長い乾燥時間を要する。また、多量の離型剤は、タイヤの品質を低下させ、作業環境を悪化させる。
【0006】
本発明の目的は、離型性に優れるタイヤ用モールドの離型剤の塗布方法、及びこの離型剤の塗布方法を用いたタイヤの製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るタイヤ用モールドの離型剤の塗布方法は、
(A)モールドのキャビティ面の形状を認識する工程、
(B)前記キャビティ面の形状に基づき、ノズルが離型剤を吹き付ける複数の吹き付け位置を決定する工程
及び
(C)前記ノズルが移動しつつそれぞれの吹き付け位置で前記離型剤を前記キャビティ面に吹き付ける工程
を含む。
【0008】
好ましくは、前記工程(C)において、前記離型剤の吹き付けを停止した状態で前記ノズルがそれぞれの吹き付け位置から他の吹き付け位置に移動する。
【0009】
好ましくは、前記工程(A)において、前記ノズルの移動経路に沿って移動するセンサーが前記キャビティ面の形状を検出し、前記センサーの検出に基づいて前記キャビティ面の形状を認識する。
【0010】
好ましくは、前記工程(C)において、有機溶剤系離型剤を前記キャビティ面に吹き付ける。
【0011】
好ましくは、この離型剤の塗布方法は、前記工程(C)に先立ち、
(D)前記モールドのキャビティ面をレーザーでクリーニングする工程
を含む。
【0012】
本発明に係るタイヤの製造方法は、
(A)モールドのキャビティ面の形状を認識する工程、
(B)前記キャビティ面の形状に基づき、ノズルが離型剤を吹き付ける複数の吹き付け位置を決定する工程
(C)前記ノズルが移動しつつそれぞれの吹き付け位置で前記離型剤を前記キャビティ面に吹き付ける工程、
(D)ローカバーを準備する工程、
(E)前記ローカバーを前記モールドに投入する工程
(F)前記モールド内で前記ローカバーを加熱及び加圧し前記ローカバーからタイヤを得る工程
を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るタイヤ用モールドの離型剤の塗布方法では、キャビティ面の形状に基づきノズルが離型剤を吹き付ける吹き付け位置が決定される。それぞれの吹き付け位置でノズルが離型剤をキャビティ面に吹き付ける。この塗布方法は、キャビティ面の全面に斑なく離型剤を塗布しうる。この離型剤の塗布方法は、タイヤの離型性に優れると共に、離型剤の塗布量を抑制しうる。この塗布方法を用いたタイヤの製造方法では、離型剤の塗布方法と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る離型剤の塗布方法のための塗布装置が示された概念図である。
図2図2は、図1の塗布装置の使用状態が示された説明図である。
図3図3は、図2の使用状態の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0016】
図1には、塗布装置2がモールドとしてのセグメント4と共に示されている。塗布装置2は、テーブル6、レール8、ノズル台10、ノズル12、センサー台14及びセンサー16を備える。図示されないが、この塗布装置2は、更に制御装置を備える。
【0017】
セグメント4は、円弧形状を備える。図1には、セグメント4の周方向に垂直な断面が示されている。セグメント4は、内周面18と内周面18から突出する複数の筋状突起20とを備える。それぞれの筋状突起20は、周方向に延びている。筋状突起20は、半径方向内向きの端面22と端面22から内周面18まで延びる一対の斜面24とを備える。このセグメント4では、内周面18と端面22と斜面24とから、キャビティ面26が形成されている。このキャビティ面26がタイヤの外周面を成形する。筋状突起20は、タイヤのトレッドに溝を成形する。
【0018】
図示されないが、このセグメント4は、キャビティ面26からその外面に貫通する多数のベントホールを備える。セグメント4は、ベントホールを開閉するベントピースを更に備える。一般にベントホールは、タイヤの表面にスピューを形成する。このベントピースを備えることで、セグメント4は、スピューの形成を抑制しうる。このセグメント4は、所謂スピューレスモールドである。
【0019】
テーブル6は、図示されないが、セグメント4を位置決めし固定する固定具を備える。図1では、セグメント4は、テーブル6に位置決め固定されている。
【0020】
レール8は、テーブル6の上方に配置されている。レール8は、図1の左右方向に延びている。ノズル台10は、レール8に取り付けられている。ノズル台10は、レール8に沿って移動可能である。ノズル12は、ノズル台10に取り付けられている。ノズル12は、離型剤を下方に向かって吹き付ける機能を備える。
【0021】
センサー台14は、レール8に取り付けられている。センサー台14は、レール8に沿って移動可能である。センサー16は、センサー台14に取り付けられている。センサー16は、セグメント4のキャビティ面26の形状を検出する機能を備える。このセンサー16は、ノズル12の吹き出し口の高さでキャビティ面26の形状を検出する様に配置されている。センサー16は、特に限定されないが、例えばレーザーセンサーである。
【0022】
この塗布装置2では、レール8にノズル台10とセンサー台14とが取り付けられたが、いずれか一方が他のレールに取り付けられてもよい。また、レール8及びノズル台10に代えてロボットアームが用いられてもよいし、レール8及びセンサー台14に代えてロボットアームが用いられてよい。
【0023】
図示されないが、制御装置は、記憶部、演算部及び入出力部を備えている。記憶部には、制御プログラム、各種既定データ等の情報が記憶されている。記憶部として、ROM、RAM等が例示される。演算部は、記憶部に記憶された制御プログラム、各種既定データ等の情報を読み出して演算を実行する。演算部は、入出力部から入力される各種データを基に演算を実行する。演算部として、CPUが例示される。入出力部は、センサー16等との間で信号の入出力をする。入出力部として、インターフェースボードが例示される。
【0024】
制御装置は、ノズル台10、ノズル12、センサー台14及びセンサー16を制御する。制御装置は、ノズル台10の位置を制御する。制御装置は、ノズル12による離型剤の吹き付けとその停止とを制御する。制御装置は、センサー台14の位置を制御する。制御装置は、センサー16による検出を制御する。更に、制御装置は、センサー16の検出信号を受信する機能と、この検出信号から検出対象の形状を認識する機能と、その形状情報を記憶する機能と、ノズル12の吹き付け位置を決定する機能とを備える。
【0025】
図2には、この塗布装置2の使用状態が示されている。図2では、キャビティ面26に離型剤を吹き付けるノズル12が示されている。実線で示されたノズル12は、吹き付け位置P1に位置する。二点鎖線で示されたノズル12は、吹き付け位置P2からP6に位置する。この吹き付け位置P1からP6で、キャビティ面26に離型剤を吹き付けるノズル12が示されている。
【0026】
図3には、図2の一部が示されている。図3には吹き付け位置P1のノズル12と、吹き付け位置P2のノズル12とが示されている。吹き付け位置P1のノズル12では、符号24Aが付された斜面24(以下、斜面24Aともいう)と符号24Bが付された斜面24(以下、斜面24Bともいう)に、直接に離型剤が吹き付けられない。吹き付け位置P2のノズル12では、斜面24Aと斜面24Bとに、直接に離型剤が吹き付けられている。
【0027】
図1から図3を参照しつつ、塗布装置2を用いて、タイヤの製造方法が説明される。
【0028】
図1に示される様に、塗布装置2にセグメント4が位置決め固定される(STEP1)。制御装置がセンサー16をセグメント4の軸方向(左右方向)に移動させる。センサー16は、移動しつつセグメント4のキャビティ面26の形状を検出する。制御装置は、センサー16の検出信号からキャビティ面26の形状を認識する(STEP2)。この工程(STEP2)において、制御装置は、セグメント4のキャビティ面26の形状情報を記憶する。制御装置は、キャビティ面26の形状に基づいて、吹き付け位置P1からP6を決定する(STEP3)。
【0029】
図2に示される様に、制御装置がノズル12を吹き付け位置P1に移動させる。吹き付け位置P1でノズル12が離型剤をキャビティ面26に吹き付ける。ノズル12は、所定時間吹き付けた後に、離型剤の吹きつけを停止する。制御装置がノズル12を吹き付け位置P2に移動させる。吹き付け位置P2でノズル12が離型剤をキャビティ面26に吹き付ける。ノズル12は、所定時間吹き付けた後に、離型剤の吹き付けを停止する。同様にして、吹き付け位置P3からP6で、ノズル12が離型剤をキャビティ面26に吹き付ける。この様にして、セグメント4のキャビティ面26に離型剤が吹き付けられる(STEP4)。このセグメント4が加硫装置に取り付けられる(STEP5)。
【0030】
ローカバーが準備される(STEP6)。このローカバーがこのセグメント4を含むモールドに投入される(STEP7)。モールド内で、ローカバーが加熱及び加圧される。このローカバーからタイヤが得られる(STEP8)。
【0031】
タイヤが得られた後に、セグメント4は加硫装置から取り外される(STEP9)。セグメント4のキャビティ面26は、レーザーでクリーニングされる(STEP10)。クリーニングされたセグメント4は、工程(STEP1)に送られる。このタイヤの製造方法では、工程(STEP1)から工程(STEP10)が繰り返される。
【0032】
このタイヤの製造方法では、工程(STEP9)から工程(STEP5)は毎回実行されなくてもよい。工程(STEP6)から工程(STEP8)が所定回数繰り返された後に、工程(STEP9)から工程(STEP5)が実行されてもよい。
【0033】
また、工程(STEP2)において、センサー16による検出は毎回実行されなくてもよい。制御装置は、既にキャビティ面26の形状情報を記憶しているセグメント4について、セグメント4を特定する情報と記憶した形状情報に基づいて、キャビティ面26の形状を認識してもよい。
【0034】
図3に示される様に、吹き付け位置P1のノズル12は、斜面24A及び斜面24Bに離型剤を直接に吹き付けられない。この工程(STEP3)では、吹き付け位置P2は、斜面24A及び斜面24Bに離型剤を塗布できる位置として決定される。更に、この吹き付け位置P2は、その位置でのノズル12が離型剤を塗布する領域と吹き付け位置P1のノズル12が離型剤を塗布する領域との重複が小さくなる様に決定される。この吹き付け位置P2は、その位置でのノズル12が離型剤を塗布する領域と吹き付け位置P1のノズル12が離型剤を塗布する領域との重複が最小となる様に決定されることが好ましい。
【0035】
この工程(STEP3)では、この様にして、キャビティ面26の全面に直接に離型剤が吹き付けられる様に、吹き付け位置P1からP6が決定される。この塗布方法は、キャビティ面26の全面に直接に離型剤を塗布しうる。
【0036】
この工程(STEP4)では、吹き付け位置P1からP6までの移動中は、ノズル12は離型剤の吹き付けを停止する。それぞれの吹き付け位置P1からP6で、ノズル12は離型剤のキャビティ面26に吹き付ける。この塗布方法は、キャビティ面26全面に離型剤を塗布しつつ、離型剤の塗布量を抑制しうる。
【0037】
なお、この製造方法では、吹き付け位置P1からP6までの移動中は、ノズル12は離型剤の吹き付けを停止したが、これに限られない。吹き付け位置P1からP6までの移動中に、ノズル12から少量の離型剤が塗布されてもよいし、移動中にノズル12が間欠で離型剤を塗布してもよい。
【0038】
また、工程(STEP3)では、決定される吹き付け位置数は、6に限られない。この吹き付け位置数は、キャビティ面26の全面に離型剤を塗布できる様に決定されればよい。この吹き付け位置数は、6より少なくてもよいし、多くてもよい。離型剤の塗布量を抑制する観点から、この吹き付け位置P1からP6は、吹き付け位置数が最小となる様に、決定されることが好ましい。
【0039】
この塗布方法では、離型剤の塗布量が抑制されるので、水系離型剤であっても乾燥時間が短縮できる。加硫装置から取り外されて、比較的に低温のセグメント4に、水系離型剤を塗布しても、乾燥時間を短縮できる。従来の様に、加硫装置に取り付けられた高温のセグメント4に、水系離型剤を塗布する必要がない。
【0040】
この工程(STEP4)では、キャビティ面26の全面に直接に離型剤が塗布されうる。これにより、速乾性を有する離型剤であっても、キャビティ面26の全面に斑なく離型剤が塗布されうる。例えば有機溶剤系離型剤であっても、キャビティ面26の全面に斑なく塗布される。この有機溶剤として、例えば、ベンゼン、アセトン、エタノール、ヘキサン等が例示される。
【0041】
この工程(STEP2)では、センサー16は、工程(STEP4)のノズル12の移動経路に沿ってキャビティ面26の形状を検出する。センサー16は、ノズル12が離型剤を吹き付ける位置で、キャビティ面26の形状を検出する。それぞれの吹き付け位置P1からP6で、離型剤を塗布できない領域が高精度で検出できる。これにより、このノズル12は、キャビティ面26の全面に斑なく離型剤を塗布しうる。この観点から、センサー16は、ノズル12の噴出口の位置から見たキャビティ面26の形状が検出できる様に配置されることが好ましい。
【0042】
この工程(STEP10)では、レーザークリーニングが採用されている。レーザークリーニングは、例えばショットブラストの様にショット材を使用しない。レーザークリーニングは、セグメント4のベントホールとベントピースとの間にショット材が詰まることがない。また、レーザークリーニングは、キャビティ面26の磨滅を軽減する。レーザークリーニングは、キャビティ面26から削り取られた金属粉によって、タイヤ表面に変色が発生することを抑制しうる。
【0043】
一方で、レーザーでクリーニングされたキャビティ面26は、ショットブラストでクリーニングされたそれに比べて、タイヤが密着し易い。離型剤が塗布されないキャビティ面26では、タイヤの密着が発生し易い。この離型剤の塗布方法は、レーザーでクリーニングがされるキャビティ面26の離型剤塗布に適している。
【実施例
【0044】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0045】
[実施例1]
図1の塗布装置を用いて、本発明のタイヤの製造方法で、100本のタイヤが得られた。この製造方法では、スピューレスモールド(モールドA)が用いられた。キャビティ面は、レーザーでクリーニングされた。離型剤として、有機溶媒系離型剤が用いられた。
【0046】
[比較例1]
キャビティ面は、ショットブラストでクリーニングされた。作業者が手作業で、キャビティ面の全面に離型剤を塗布した。離型剤として、従来の水溶性離型剤が用いられた。その他は実施例1と同様にして100本のタイヤが得られた。
【0047】
[実施例2]
比較例1の水溶性離型剤が用いられた他は、実施例1と同様にして100本のタイヤが得られた。
【0048】
[実施例3]
ベントホールを開閉するベントピースを備えないモールド(モールドB)が準備された。このモールドは、常に開口する多数の細かいベントホールを備える。このモールドが用いられた他は、実施例1と同様にして100本のタイヤが得られた。得られたタイヤの表面には、ベントホールによって、多数のスピューが形成されていた。
【0049】
[比較例2]
キャビティ面は、ショットブラストでクリーニングされた。作業者が手作業で、キャビティ面の全面に離型剤を塗布した。離型剤として、比較例1の水溶性離型剤が用いられた。その他は実施例3と同様にして100本のタイヤが得られた。
【0050】
[実施例4]
比較例1の水溶性離型剤が用いられた他は、実施例3と同様にして100本のタイヤが得られた。
【0051】
[タイヤ外観評価]
タイヤの外観が検査された。金属粉によるタイヤ表面の変色の有無が検査された。また、ベントホールの詰まりによるベアの発生の有無が検査された。その検査結果が比較例1を100とする指数で、表1に示されている。これらの指数は、小さいほど、発生率が小さい。これらの指数は、小さいほど、好ましい。
【0052】
[生産性評価]
モールドからタイヤを取り出す際の離型性が評価された。その結果が比較例1を100とする指数で、表1に示されている。これらの指数は、小さいほど、離型不良の発生率が小さい。これらの指数は、小さいほど、好ましい。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示されるように、実施例の製造方法では、比較例の製造方法に比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上説明された方法は、モールドを用いタイヤの製造に広く適用されうる。
【符号の説明】
【0056】
2・・・塗布装置
4・・・セグメント(モールド)
12・・・ノズル
16・・・センサー
26・・・キャビティ面
図1
図2
図3