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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】インシュレータ及びモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/34 20060101AFI20240110BHJP
   H02K 21/16 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H02K3/34 D
H02K3/34 C
H02K21/16 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019228250
(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公開番号】P2021097528
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】舘 洸史
(72)【発明者】
【氏名】平光 明
(72)【発明者】
【氏名】吉川 浩
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-149848(JP,A)
【文献】特開2002-281708(JP,A)
【文献】特開2016-111771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/34
H02K 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状部及び前記環状部から径方向に突出する複数のティースを有する磁性体であるステータコアと、前記複数のティースにそれぞれ巻回されることにより複数のコイルを形成し、前記複数のコイルのうち同じ相のコイルの間に架け渡される部分を含む渡り線を形成する絶縁電線とを備えるステータのインシュレータであって、
前記環状部の外面を覆うインシュレータ本体と、
前記インシュレータ本体の外面から突出するとともに、同じ相の前記渡り線のうち互いに異なるコイルから延びている部分同士が近接している近接部位で前記渡り線同士が接触しないように前記渡り線を係止する案内部とを備え
前記近接部位は、前記環状部の軸方向から見たときに同じ相の前記渡り線のなかで互いに異なるコイルから延びている部分同士が前記径方向に並んで配置されている第1近接部位であり、
前記第1近接部位では、前記径方向外側から見たときに前記同じ相の前記渡り線の異なる部位同士が重複しており、
前記案内部は、前記第1近接部位での前記同じ相の前記渡り線のうちいずれか一方をいずれか他方から前記径方向において離間させる第1案内部を有しており、
前記第1案内部は、前記環状部の周方向において、互いに隣接する前記ティースの間に対応する位置に設けられているインシュレータ。
【請求項2】
前記第1案内部は、前記径方向における端面において前記渡り線を係止する本体部と、
前記本体部の前記径方向における端面から前記径方向に突出する爪部とを有し、
前記爪部は、前記軸方向における前記コイルの端縁から前記渡り線が延びている側である軸方向一方側に前記渡り線が移動することを規制する請求項に記載のインシュレータ。
【請求項3】
環状部及び前記環状部から径方向に突出する複数のティースを有する磁性体であるステータコアと、前記複数のティースにそれぞれ巻回されることにより複数のコイルを形成し、前記複数のコイルのうち同じ相のコイルの間に架け渡される部分を含む渡り線を形成する絶縁電線とを備えるステータのインシュレータであって、
前記環状部の外面を覆うインシュレータ本体と、
前記インシュレータ本体の外面から突出するとともに、同じ相の前記渡り線のうち互いに異なるコイルから延びている部分同士が近接している近接部位で前記渡り線同士が接触しないように前記渡り線を係止する案内部とを備え、
前記案内部は、前記複数のコイルのうち同じ相の互いに異なるコイルから延びている前記渡り線の部分のうちいずれか一方を係止することで、前記環状部の軸方向から見たときに同じ相の前記渡り線のなかで互いに異なるコイルから延びている部分同士が互いに交差して配置されている前記近接部位である第2近接部位での前記渡り線のうちいずれか一方をいずれか他方から前記軸方向において離間させる第2案内部を有しているインシュレータ。
【請求項4】
記軸方向における前記コイルの端縁から前記渡り線が延びている側である軸方向一方側に向けて、前記インシュレータ本体の外面から突出する介在部を備えており、
前記介在部は、互いに異なる相の前記渡り線同士が接触しないように異なる相の前記渡り線の間に介在している請求項1~のいずれか一項に記載のインシュレータ。
【請求項5】
永久磁石を備えたロータと、前記ロータの外周を取り囲むステータとを備えたモータであって、
前記ステータは、前記ステータコアと、請求項1~のいずれか一項に記載のインシュレータと、前記絶縁電線とを有しているモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インシュレータ及びモータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ステータと、ステータの内周側に設けられたロータとを備えるモータが開示されている。ステータは、複数のティースを有するステータコアと、各ティースにそれぞれ巻回される絶縁電線と、ステータコアと絶縁電線との間に介在するインシュレータとを備えている。絶縁電線は、インシュレータを介して複数のティースにそれぞれ巻回されることにより複数のコイルを形成している。また、絶縁電線は、複数のコイルのうち同じ相のコイル同士を接続する渡り線を形成している。渡り線は、ステータの軸方向端部においてステータの外周形状に沿って同じ相のコイル間に架け渡されている。異なる相の渡り線の間では、互いに電位が異なる。例えば、U相渡り線とV相渡り線との間では互いに電位が異なり、V相渡り線とW相渡り線との間では互いに電位が異なる。特許文献1に記載のモータでは、異なる相の渡り線同士が接触しないように、インシュレータに各相の渡り線を係止する突起が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-55741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同じ相の渡り線であっても、電位の異なる部分が存在する。例えば、同じ相の渡り線のうち、電源の入力側に接続される部分と電源の出力側に接続される部分との間では電位が異なる。このような同じ相の渡り線のなかで電位の異なる部分同士は、近接して配置されることがあり、これら電位の異なる部分同士を接触しないように配置することについては何ら考慮されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するインシュレータは、環状部及び前記環状部から径方向に突出する複数のティースを有する磁性体であるステータコアと、前記複数のティースにそれぞれ巻回されることにより複数のコイルを形成し、前記複数のコイルのうち同じ相のコイルの間に架け渡される部分を含む渡り線を形成する絶縁電線とを備えるステータのインシュレータであって、前記環状部の外面を覆うインシュレータ本体と、前記インシュレータ本体の外面から突出するとともに、同じ相の前記渡り線のうち互いに異なるコイルから延びている部分同士が近接している近接部位で前記渡り線同士が接触しないように前記渡り線を係止する案内部とを備えている。
【0006】
渡り線の配置では、複数のコイルのうち同じ相の互いに異なるコイルから延びている渡り線の部分同士が近接している近接部位が生じることがある。同じ相のコイルから延びている同じ相の渡り線であっても、互いに異なるコイルから延びている渡り線同士では電位が異なる。近接部位においては、同じ相の渡り線ではあるものの、電位の異なる部分同士が接触するおそれがある。上記構成によれば、渡り線を係止する案内部をインシュレータ本体の外面から突出させることにより、近接部位で電位の異なる渡り線の部分同士が接触しないようにしている。
【0007】
上記のインシュレータにおいて、前記案内部は、前記複数のコイルのうち同じ相の互いに異なるコイルから延びている前記渡り線の部分のうちいずれか一方を係止することで、前記環状部の軸方向から見たときに同じ相の前記渡り線のなかで互いに異なるコイルから延びている部分同士が前記環状部の径方向に並んで配置されている前記近接部位である第1近接部位での前記渡り線のうちいずれか一方をいずれか他方から前記径方向において離間させる第1案内部を有していることが好ましい。
【0008】
第1案内部によって、同じ相の渡り線のなかで互いに異なるコイルから延びている部分のうちいずれか一方を係止することで、第1近接部位において、同じ相の渡り線のなかで電位の異なる部分のうちいずれか一方といずれか他方とを径方向において離間させることができる。
【0009】
上記のインシュレータにおいて、前記第1案内部は、前記径方向における端面において前記渡り線を係止する本体部と、前記本体部の前記径方向における端面から前記径方向に突出する爪部とを有し、前記爪部は、前記軸方向における前記コイルの端縁から前記渡り線が延びている側である軸方向一方側に前記渡り線が移動することを規制することが好ましい。
【0010】
上記構成では、本体部から径方向において突出する爪部に渡り線が引っかかることによって、第1案内部から渡り線が軸方向一方側に移動することを規制している。
上記のインシュレータにおいて、前記案内部は、前記複数のコイルのうち同じ相の互いに異なるコイルから延びている前記渡り線の部分のうちいずれか一方を係止することで、前記環状部の軸方向から見たときに同じ相の前記渡り線のなかで互いに異なるコイルから延びている部分同士が互いに交差して配置されている前記近接部位である第2近接部位での前記渡り線のうちいずれか一方をいずれか他方から前記軸方向において離間させる第2案内部を有していることが好ましい。
【0011】
第2案内部によって、同じ相の渡り線のなかで互いに異なるコイルから延びている部分のうちいずれか一方を係止することで、第2近接部位において、同じ相の渡り線のなかで電位の異なる部分のうちいずれか一方といずれか他方とを軸方向において離間させることができる。
【0012】
上記のインシュレータにおいて、前記環状部の軸方向における前記コイルの端縁から前記渡り線が延びている側である軸方向一方側に向けて、前記インシュレータ本体の外面から突出する介在部を備えており、前記介在部は、互いに異なる相の前記渡り線同士が接触しないように異なる相の前記渡り線の間に介在していることが好ましい。
【0013】
上記構成では、介在部が異なる相の渡り線の間に介在することによって、異なる相の渡り線同士を離間させることができる。これにより、異なる相の渡り線同士が接触することを抑制している。
【0014】
上記課題を解決するモータは、永久磁石を備えたロータと、前記ロータの外周を取り囲むステータとを備えたモータであって、前記ステータは、前記ステータコアと、上記のインシュレータと、前記絶縁電線とを有している。
【0015】
上記構成では、上述の如く、渡り線を係止する案内部をインシュレータ本体の外面から突出させることにより、近接部位で電位の異なる渡り線の部分同士が接触しないようにしたモータを構築することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のインシュレータ及びモータによれば、同じ相の渡り線のなかで電位の異なる部分同士が接触することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】モータ装置の軸方向断面図。
図2】ステータコアの斜視図。
図3】ステータの斜視図。
図4】インシュレータの上面図。
図5】(a)は、U相コイル、U相ティース被覆部、U相渡り線を模式的に示す図、(b)は、V相コイル、V相ティース被覆部、V相渡り線を模式的に示す図、(c)は、W相コイル、W相ティース被覆部、W相渡り線を模式的に示す図。
図6】ターミナル部の周辺を拡大したステータの上面図。
図7】第1、第3~第12介在部の周辺を拡大したステータの斜視図。
図8】第2介在部の周辺を拡大したステータの斜視図。
図9】(a)は、第1案内部の周辺を拡大したステータの斜視図、(b)は、第1案内部の周辺を拡大したステータの上面図、(c)は、第1案内部の周辺を拡大するとともに第1案内部を側方から見たステータの斜視図。
図10】(a)は、第2案内部の周辺を拡大したステータの斜視図、(b)は、第2案内部の周辺を拡大したステータの上面図、(c)は、第2案内部の周辺を拡大するとともに第2案内部を側方から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
インシュレータを有するモータを備えたモータ装置の一実施形態について図面に従って説明する。
図1に示すように、モータ装置1は、モータ2と、基板3と、ハウジング4と、情報授受部5とを備えている。モータ装置1は、例えば車両に搭載される電動ポンプに内蔵されるものである。ハウジング4は、モータ2及び基板3を収容している。情報授受部5は、外部機器との間で情報を授受するために設けられている。なお、以下では、モータ2の回転軸2aの軸方向Xを基準として、モータ2側を第1軸方向、基板3側を第2軸方向という。軸方向Xは、モータ2の回転軸2aの延びる方向である。
【0019】
ハウジング4は、第2軸方向側が開口した有底筒状体をなしているハウジング本体6と、ハウジング本体6の開口端を閉塞するように設けられるカバー7とを備えている。ハウジング本体6の底部6aの中央には、軸方向Xに貫通した第1挿通孔6bが形成されている。ハウジング本体6に形成された第1挿通孔6bには、軸受23が設けられている。軸受23は、第1挿通孔6bの内周面と回転軸2aの外周面との間に設けられている。軸受23は、第1挿通孔6bに対して回転軸2aを回転可能に支持する。ハウジング本体6の筒状部6cは、第2軸方向側に向かう順に、小径部6dと大径部6eとを有している。軸方向Xから見たとき、大径部6eの外周形状とカバー7の外周形状とは、後述する接続部5aを除いて同じ形状をなしている。大径部6eとカバー7とは、図示しない締結部材によって固定されている。筒状部6cの大径部6eの開口を覆うように隔壁部6fが配置されている。筒状部6cの内部空間には、モータ2が収容されている。カバー7の内部空間には、基板3が収容されている。隔壁部6fには、第2軸方向側に、すなわちカバー7の内部空間に突出する柱状の支持部6gが複数設けられている。
【0020】
基板3には、モータ2へ供給する電流を制御する素子やモータ2の駆動を制御する素子が実装されている。基板3には、モータ2の駆動を制御する素子として、例えばマイコン3aが実装されている。また、基板3には、モータ2へ供給する電流を制御する素子として、例えばインバータを構成するスイッチング素子3bが実装されている。基板3は、隔壁部6fの支持部6gに対して、締結部材3cによって固定されている。
【0021】
情報授受部5は、大径部6eから径方向外側に突出する筒状の接続部5aを有している。接続部5aは、外部機器から延びる配線が接続部5a内から延びる接続端子5bと接続可能に形成されている。接続端子5bは、基板3における所定位置に接続されている。外部機器としては、例えば、モータ2及び基板3に対して電力を供給する車載電源が接続されている。
【0022】
モータ2は、ハウジング4内に固定されたステータ21と、ステータ21の内周に回転可能に配置されたロータ22とを有している。
ロータ22は、回転軸2aと一体回転可能に固定された円筒状のロータコア24と、ロータコア24の外周に固定された複数の永久磁石25とを有している。永久磁石25は、その磁極がロータコア24の周方向において、N極及びS極が交互に入れ替わるように配置されている。
【0023】
ステータ21は、磁性体で構成されたステータコア30と、表面に絶縁が施された絶縁電線40と、樹脂で構成されたインシュレータ50とを有している。ステータコア30は、後述するティース32を有している。インシュレータ50は、ステータコア30と、ステータコア30のティース32に巻回される絶縁電線との間に介在している。絶縁電線40は、バスバー26を介して基板3に接続されている。
【0024】
このように構成されたモータ装置1においては、基板3から駆動電流が絶縁電線40に供給されると、ステータ21に回転磁界が発生し、その回転磁界に基づいてロータ22が回転する。
【0025】
ステータ21について説明する。
図2に示すように、ステータコア30は、ハウジング本体6の筒状部6cの内周に固定された円環状の環状部31と、環状部31から径方向内側に向かって延びる複数のティース32とを有している。ティース32は、環状部31の内周において、周方向に等間隔に配置されている。本実施形態のステータコア30には、ティース32が12個形成されている。環状部31の軸方向Xにおける長さと、ティース32の軸方向Xにおける長さとは、互いに等しく設定されている。ティース32は、インシュレータ50を介在して絶縁電線40が巻回されるコイル巻回部32aと、コイル巻回部32aの径方向内側に配置されるとともにロータ22と対向する対向部32bとを有している。対向部32bの周方向における長さは、コイル巻回部32aの周方向における長さよりも長く設定されている。対向部32bの径方向内側の面は、周方向に湾曲した円弧面であって、回転軸2aを中心とした同心円を形成する円弧面をなしている。ここでは、12個のティース32を、第1~第12ティースT1~T12とする。第1~第12ティースT1~T12は、第2軸方向側からティース32を見たとき、反時計回り方向に番号が若い順に並んでいる。
【0026】
図3に示すように、インシュレータ50は、軸方向Xに2分割された上側インシュレータ51及び下側インシュレータ52により構成されている。上側インシュレータ51は、第2軸方向側に設けられ、下側インシュレータ52は、第1軸方向側に設けられている。
【0027】
図4に示すように、上側インシュレータ51は、環状部31の第2軸方向側の端面及び環状部31の内周面のうち第2軸方向側の半分を被覆する上側環状部被覆部53と、ティース32の第2軸方向側の半分を被覆する上側ティース被覆部54と、上側環状部被覆部53から第2軸方向側に突出する介在部55とを有している。上側ティース被覆部54は、第1~第12ティースT1~T12に対応して12個形成されている。ここでは、12個の上側ティース被覆部54を第1~第12上側ティース被覆部Itu1~Itu12とする。また、介在部55は、第1~第12上側ティース被覆部Itu1~Itu12に対応して12個形成されている。12個の介在部55を第1~第12介在部M1~M12とする。また、上側インシュレータ51は、上側環状部被覆部53から径方向外側に突出するターミナル部58を有している。ターミナル部58は、後述の第2ティース被覆部It2の径方向外側に位置している。なお、特許請求の範囲で記載したインシュレータ本体は、本実施形態では上側環状部被覆部53に対応している。
【0028】
下側インシュレータ52は、環状部31の内周面のうち第1軸方向側の半分を被覆する下側環状部被覆部56と、ティース32の第1軸方向側の半分を被覆する下側ティース被覆部57とを有している。下側ティース被覆部57は、第1~第12ティースT1~T12に対応して12個形成されている。12個の下側ティース被覆部57を第1~第12下側ティース被覆部Itl1~Itl12とする。第1~第12上側ティース被覆部Itu1~Itu12及び第1~第12下側ティース被覆部Itl1~Itl12により、第1~第12ティースT1~T12を被覆する第1~第12ティース被覆部It1~It12が構成されている。
【0029】
絶縁電線40には、例えば銅線をエナメルの被膜で覆ったエナメル線が採用される。絶縁電線40は、インシュレータ50を介在してティース32に巻回されることによりコイルを形成している。絶縁電線40は、U相のコイルに用いられるU相の絶縁電線40と、V相のコイルに用いられるV相の絶縁電線40と、W相のコイルに用いられるW相の絶縁電線40とを有している。
【0030】
図2図3、及び図4に示すように、第1~第12ティースT1~T12のコイル巻回部32aには、第1~第12ティース被覆部It1~It12を介在して絶縁電線40が巻回されることによって、各U相コイルU1~U4、各V相コイルV1~V4、各W相コイルW1~W4が形成されている。第1ティースT1には第1ティース被覆部It1を介在してU相コイルU1が形成されている。第2ティースT2には第2ティース被覆部It2を介在してV相コイルV1が形成されている。第3ティースT3には第3ティース被覆部It3を介在してW相コイルW1が形成されている。第4ティースT4には第4ティース被覆部It4を介在してU相コイルU2が形成されている。第5ティースT5には第5ティース被覆部It5を介在してV相コイルV2が形成されている。第6ティースT6には第6ティース被覆部It6を介在してW相コイルW2が形成されている。第7ティースT7には第7ティース被覆部It7を介在してU相コイルU3が形成されている。第8ティースT8には第8ティース被覆部It8を介在してV相コイルV3が形成されている。第9ティースT9には第9ティース被覆部It9を介在してW相コイルW3が形成されている。第10ティースT10には第10ティース被覆部It10を介在してU相コイルU4が形成されている。第11ティースT11には第11ティース被覆部It11を介在してV相コイルV4が形成されている。第12ティースT12には第12ティース被覆部It12を介在してW相コイルW4が形成されている。このようにすることで、第2軸方向側からステータ21を見たとき、反時計回り方向に、U相コイルU1、V相コイルV1、W相コイルW1、U相コイルU2、V相コイルV2、W相コイルW2、U相コイルU3、V相コイルV3、W相コイルW3、U相コイルU4、V相コイルV4、W相コイルW4が順番に配置されている。
【0031】
図3及び図5(a)に示すように、各U相コイルU1~U4は、各ティース被覆部で被覆された各ティースに1つのU相の絶縁電線40を連続して巻回していくことにより、U相コイルU1、U相コイルU2、U相コイルU3、及びU相コイルU4の順に形成されている。1つのU相の絶縁電線40におけるU相コイルU1~U4でない部分、すなわちU相コイルU1~U4から延びている部分は、U相渡り線Luを形成している。U相渡り線Luは、U相始端部Lu1、U相コイル間渡り線Lu2、U相コイル間渡り線Lu3、U相コイル間渡り線Lu4、及びU相終端部Lu5を有している。
【0032】
図3及び図5(b)に示すように、各V相コイルV1~V4は、各ティース被覆部で被覆された各ティースに1つのV相の絶縁電線40を連続して巻回していくことにより、V相コイルV1、V相コイルV2、V相コイルV3、及びV相コイルV4の順で形成されている。1つのV相の絶縁電線40におけるV相コイルV1~V4でない部分、すなわちV相コイルV1~V4から延びている部分は、V相渡り線Lvを形成している。V相渡り線Lvは、V相始端部Lv1、V相コイル間渡り線Lv2、V相コイル間渡り線Lv3、V相コイル間渡り線Lv4、及びV相終端部Lv5を有している。
【0033】
図3及び図5(c)に示すように、各W相コイルW1~W4は、各ティース被覆部で被覆された各ティース部に1つのW相の絶縁電線40を連続して巻回していくことにより、W相コイルW1、W相コイルW2、W相コイルW3、及びW相コイルW4の順で形成されている。1つのW相の絶縁電線40におけるW相コイルW1~W4でない部分、すなわちW相コイルW1~W4から延びている部分は、W相渡り線Lwを形成している。W相渡り線Lwは、W相始端部Lw1、W相コイル間渡り線Lw2、W相コイル間渡り線Lw3、W相コイル間渡り線Lw4、及びW相終端部Lw5を有している。
【0034】
図3及び図5(a)に示すように、U相始端部Lu1は、一端部がU相コイルU1の巻き始めの端部に接続されるとともに、他端部がU相動力線のプラス側に接続されるようにU相コイルU1から径方向外側に引き出されている。U相コイル間渡り線Lu2は、U相コイルU1とU相コイルU2との間に架け渡されることで形成されており、U相コイルU1とU相コイルU2とを接続している。U相コイル間渡り線Lu3は、U相コイルU2とU相コイルU3との間に架け渡されることで形成されており、U相コイルU2とU相コイルU3とを接続している。U相コイル間渡り線Lu4は、U相コイルU3とU相コイルU4との間に架け渡されることで形成されており、U相コイルU3とU相コイルU4とを接続している。U相終端部Lu5は、一端部がU相コイルU4の巻き終わりの端部に接続されるとともに、他端部がU相動力線のマイナス側に接続されるようにU相コイルU4から径方向外側に引き出されている。U相始端部Lu1がU相動力線のプラス側に接続され、U相終端部Lu5がU相動力線のマイナス側に接続されることで、U相コイルU1~U4に駆動電力が供給されるようになる。V相渡り線Lv及びW相渡り線Lwについても、U相渡り線Luと同様である。
【0035】
図3図6、及び図7に示すように、第1介在部M1は、上側環状部被覆部53における第2軸方向側の端面から第2軸方向側に突出するとともに、軸方向Xから見たとき、第1ティースT1に第1ティース被覆部It1を介在して絶縁電線40が巻回されることによって形成されたU相コイルU1の径方向外側に位置している。第1介在部M1は、上側環状部被覆部53から第2軸方向側に突出する本体部60と、本体部60から径方向外側に突出する3つの突起70とを有している。本体部60は、径方向外側から見たとき、反時計回り方向から順に、第1段差61、第2段差62、及び第3段差63の3つの段差を有する階段形状を有している。また、第2段差62は第1段差61よりも第2軸方向側に突出しており、第3段差63は第2段差62よりも第2軸方向側に突出している。突起70は、第1段差61から径方向外側に突出する第1突起71と、第2段差62から径方向外側に突出する第2突起72と、第3段差63から径方向外側に突出する第3突起73とを有している。第2突起72は第1突起71よりも第2軸方向側に位置しており、第3突起73は第2突起72よりも第2軸方向側に位置している。
【0036】
図3図6、及び図8に示すように、第2介在部M2は、上側環状部被覆部53における第2軸方向側の端面から第2軸方向側に突出するとともに、軸方向Xから見たとき、第2ティースT2に第2ティース被覆部It2を介在して絶縁電線40が巻回されることによって形成されたV相コイルV1の径方向外側に位置している。第2介在部M2は、上側環状部被覆部53から第2軸方向側に突出する本体部60aと、本体部60aから径方向外側に突出する2つの突起70aとを有している。本体部60aは、径方向外側から見たとき、反時計回り方向から順に、第1段差61a及び第2段差62aを有する階段形状を有している。第2段差62aは第1段差61aよりも第2軸方向側に突出している。突起70aは、第1段差61aから径方向外側に突出する第1突起71aと、第2段差62aから径方向外側に突出する第2突起72aとを有している。第2突起72aは第1突起71aよりも第2軸方向側に位置している。また、第2突起72aは第2突起72と第2軸方向において同じ高さに位置しており、第1突起71aは第1突起71と第2軸方向において同じ高さに位置している。
【0037】
図3に示すように、第3~第12介在部M3~M12は、上側環状部被覆部53における第2軸方向側の端面から第2軸方向側に突出している。第3~第12介在部M3~M12の配置は、第1介在部M1の配置と同様に、対応する各相コイルの径方向外側に位置している。第3~第12介在部M3~M12は、第1介在部M1と同様の形状を有しているため、その説明を割愛する。すなわち、第3~第12介在部M3~M12には、それぞれ第1段差61から径方向外側に突出する第1突起71と、第2段差62から径方向外側に突出する第2突起72と、第3段差63から径方向外側に突出する第3突起73とが設けられている。
【0038】
図3及び図6に示すように、ターミナル部58には、U相始端部Lu1、U相終端部Lu5、V相始端部Lv1、V相終端部Lv5、W相始端部Lw1、及びW相終端部Lw5が集まっている。U相始端部Lu1、U相終端部Lu5、V相始端部Lv1、V相終端部Lv5、W相始端部Lw1、及びW相終端部Lw5は、ターミナル部58の第2軸方向側の端面上で固定されている。本実施形態の各U相コイルU1~U4、各V相コイルV1~V4、及び各W相コイルW1~W4は、デルタ結線により接続されている。このため、U相始端部Lu1とW相終端部Lw5とが1つにまとめられており、U相終端部Lu5とV相始端部Lv1とが1つにまとめられており、V相終端部Lv5とW相始端部Lw1とが1つにまとめられている。第2軸方向側から見たとき、ターミナル部58における周方向反時計回り方向から順に、U相始端部Lu1とW相終端部Lw5とが配置され、U相終端部Lu5とV相始端部Lv1とが配置され、V相終端部Lv5とW相始端部Lw1とが配置されている。
【0039】
図3に示すように、同じ相の渡り線であっても、互いに異なるコイルから延びている部分同士が近接している近接部位として、第1近接部位P1及び第2近接部位P2が形成されている。
【0040】
図3及び図9(a)に示すように、第1近接部位P1は、U相コイル間渡り線Lu2とU相終端部Lu5とが近接している部位である。第1近接部位P1は、軸方向Xから見たとき、U相コイルU1から延びているU相コイル間渡り線Lu2とU相コイルU4から延びているU相終端部Lu5とが径方向において近接している部位のことである。すなわち、第1近接部位P1は、軸方向Xから見たとき、同じ相の渡り線のなかで互いに異なるコイルから延びている部分同士が径方向に並んで配置されている部位のことである。第1近接部位P1では、径方向外側から見たときに、U相コイル間渡り線Lu2とU相終端部Lu5とが重複していて、U相終端部Lu5が手前、U相コイル間渡り線Lu2が奥に位置している。そこで、本実施形態のインシュレータ50には、近接部位で複数のコイルのうち同じ相の互いに異なるコイルから延びている渡り線の部分同士が接触しないように渡り線を係止する案内部が設けられている。
【0041】
図9(a)~(c)に示すように、インシュレータ50の上側インシュレータ51は、案内部として、第1案内部100を有している。第1案内部100は、上側環状部被覆部53に形成されている。第1案内部100は、第1近接部位P1におけるU相コイル間渡り線Lu2とU相終端部Lu5とが接触しないようにする案内部である。第1案内部100は、上側環状部被覆部53から径方向外側に四角柱状に突出している。第1案内部100は、周方向において、上側環状部被覆部53における第1ティース被覆部It1と第12ティース被覆部It12との間に位置している。第1案内部100は、U相終端部Lu5におけるU相コイルU4と第1近接部位P1との間の部分を係止している。第1案内部100は、U相終端部Lu5を第1案内部100が設けられていない場合の位置よりも径方向外側に延出させた状態で係止することにより、U相コイル間渡り線Lu2とU相終端部Lu5とを径方向において離間させている。すなわち、図9(b)に破線で示すように、軸方向Xから見た場合、U相コイル間渡り線Lu2とU相終端部Lu5との間には隙間が空いている。第1案内部100は、径方向における端面においてU相終端部Lu5を係止する本体部101と、本体部の径方向における端面から径方向外側に突出する爪部102を有している。爪部102は、本体部101の径方向における端面において、軸方向における中間位置よりも第2軸方向側の部分に形成されている。爪部102は、本体部101で係止されたU相終端部Lu5が第2軸方向側に移動することを規制している。
【0042】
図3図6、及び図10(a)に示すように、第2近接部位P2は、V相始端部Lv1とV相終端部Lv5とが近接している部位である。第2近接部位P2は、軸方向から見たとき、V相コイルV1から延びているV相始端部Lv1とV相コイルV4から延びているV相終端部Lv5とが軸方向において近接している部位である。V相始端部Lv1は、ターミナル部58から第2ティース被覆部It2を介在して第2ティースT2に巻回されたV相コイルV1へ向けて径方向に延びている。V相終端部Lv5は、第11ティース被覆部It11を介在して第11ティースT11に巻回されたV相コイルV4からターミナル部58へ向けて上側環状部被覆部53に沿うように延びている。第2近接部位P2は、軸方向から見たとき、V相始端部Lv1とV相終端部Lv5とが互いに交差して配置されている部位である。すなわち、第2近接部位P2は、軸方向Xから見たとき、同じ相の渡り線のなかで互いに異なるコイルから延びている部分同士が互いに交差して配置されている部位のことである。第2近接部位P2では、第2軸方向側から見たときに、V相始端部Lv1とV相終端部Lv5とが重複していて、V相終端部Lv5が手前、V相始端部Lv1が奥に位置している。第2近接部位P2は、第2ティース被覆部It2を介在して第2ティースT2に巻回されたV相コイルV1の径方向外側、詳しくはV相コイルV1の巻き始めの位置の径方向外側に位置している。
【0043】
図10(a)~(c)に示すように、インシュレータ50の上側インシュレータ51は、案内部として、第2案内部110を有している。第2案内部110は、上側環状部被覆部53に形成されている。第2案内部110は、第2近接部位P2におけるV相始端部Lv1とV相終端部Lv5とが接触しないようにする案内部である。第2案内部110は、上側環状部被覆部53に設けられたターミナル部58から第2軸方向側に突出している。第2案内部110は、周方向において、ターミナル部58における第2ティース被覆部It2と第3ティース被覆部It3との間に位置している。第2案内部110は、V相終端部Lv5を第2案内部110が設けられていない場合の位置よりも第2軸方向側に延出させた状態で係止することにより、V相始端部Lv1とV相終端部Lv5とを軸方向Xにおいて離間させている。第2案内部110は、V相終端部Lv5における、第2近接部位P2と、V相終端部Lv5及びW相始端部Lw1が1つにまとめられている部位との間の部分を係止している。W相始端部Lw1は、ターミナル部58から第3ティース被覆部It3を介在して第3ティースT3に巻回されたW相コイルW1へと向けて延びている。ターミナル部58には、第2軸方向側に突出する突出部58aが形成されている。突出部58aは、W相始端部Lw1が折り曲げられて延びている方向が変更されている位置に設けられている。W相始端部Lw1は、突出部58aに沿って折り曲げられていることにより、延びている方向が変更されている。第2案内部110は、軸方向Xから見たとき、ターミナル部58におけるV相始端部Lv1と突出部58aとの間に位置している。
【0044】
図3及び図6に示すように、周方向において、W相始端部Lw1とW相終端部Lw5とは、ターミナル部58において離れた位置に位置している。W相始端部Lw1は、ターミナル部58の周方向一方側でU相始端部Lu1とともにまとめられており、W相始端部Lw1は、ターミナル部58の周方向他方側でV相終端部Lv5とともにまとめられている。このため、W相渡り線Lwには、同じ相の渡り線のなかで互いに異なるコイルから延びている部分同士が近接している部位はなく、W相に対応した案内部は設けられていない。なお、図6に示すように、ターミナル部58には、第2軸方向側に突出する突出部58bが形成されている。突出部58bは、W相終端部Lw5が折り曲げられて延びている方向が変更されている位置に設けられている。W相終端部Lw5は、突出部58bに沿って折り曲げられていることにより、延びている方向が変更されている。
【0045】
本実施形態の作用を説明する。
U相渡り線Lu、V相渡り線Lv、W相渡り線Lwの配置では、同じ相の異なるコイルから延びている渡り線の部分同士が近接している近接部位が生じることがある。具体的には、U相渡り線Luには、U相コイル間渡り線Lu2とU相終端部Lu5とが近接している部位である第1近接部位P1が生じ、V相渡り線Lvには、V相始端部Lv1とV相終端部Lv5とが近接している部位である第2近接部位P2が生じている。U相コイル間渡り線Lu2とU相終端部Lu5とは同じ相のU相渡り線Luの一部であるが、これらの間にはU相コイルU2~U4が介在しており、電位が異なる。また、V相始端部Lv1とV相終端部Lv5とは同じ相のV相渡り線Lvの一部であるが、これらの間にはV相コイルV1~V4が介在しており、電位が異なる。このような第1近接部位P1及び第2近接部位P2においては、同じ相の渡り線ではあるものの、電位の異なる部分同士が接触するおそれがある。特に、絶縁電線40の被覆がはがれる等した場合には、これらの電位の異なる部分同士が接触することで、これらの部分同士が短絡してしまう。
【0046】
本実施形態によれば、渡り線を係止する第1案内部100及び第2案内部110を上側環状部被覆部53の外面から突出させることにより、第1近接部位P1及び第2近接部位P2で同じ相の電位の異なる渡り線の部分同士が接触しないようにしている。具体的には、第1案内部100は、U相終端部Lu5を第1案内部100が設けられていない場合の位置よりも径方向外側に延出させた状態で係止することにより、第1近接部位P1において、U相コイル間渡り線Lu2とU相終端部Lu5とを径方向において離間させている。また、第2案内部110は、V相終端部Lv5を第2案内部110が設けられていない場合の位置よりも第2軸方向側に延出させた状態で係止することにより、V相始端部Lv1とV相終端部Lv5とを軸方向Xにおいて離間させている。
【0047】
本実施形態の効果を説明する。
(1)第1案内部100によって、U相コイル間渡り線Lu2とU相終端部Lu5、すなわちU相渡り線Luのなかで電位の異なる部分同士が接触することを抑制している。また、第2案内部110によって、V相始端部Lv1とV相終端部Lv5、すなわちV相渡り線Lvのなかで電位の異なる部分同士が接触することを抑制している。このように、同じ相の渡り線のなかで電位の異なる部分同士が接触することを抑制することができる。
【0048】
(2)第1案内部100によって、U相終端部Lu5を係止することで、第1近接部位P1において、U相コイル間渡り線Lu2とU相終端部Lu5とを径方向において離間させることができる。
【0049】
(3)U相渡り線LuのU相終端部Lu5が径方向において突出する爪部102に引っかかることによって、第1案内部100からU相終端部Lu5が第2軸方向側に外れることを抑制している。
【0050】
(4)第2案内部110によって、V相終端部Lv5を係止することで、第2近接部位P2において、V相始端部Lv1とV相終端部Lv5とを軸方向Xにおいて離間させることができる。
【0051】
(5)介在部55が異なる相の渡り線の間に介在することによって、異なる相の渡り線同士を離間させることができる。すなわち、介在部55の第1突起71や第1突起71aがU相渡り線LuとV相渡り線Lvとの間に介在することによってU相渡り線LuとV相渡り線Lvとを離間させることができる。また、介在部55の第2突起72がV相渡り線LvとW相渡り線Lwとの間に介在することによってV相渡り線LvとW相渡り線Lwとを離間させることができる。これにより、異なる相の渡り線同士が接触することを抑制することができる。
【0052】
(6)渡り線を係止する第1案内部100及び第2案内部110を上側環状部被覆部53の外面から突出させることにより、第1近接部位P1及び第2近接部位P2で電位の異なる渡り線の部分同士が接触しないようにしたモータ2を構築することができる。
【0053】
上記各実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
・介在部55の形状は、異なる相の渡り線同士が接触しないように異なる相の渡り線の間に介在するものであれば、その形状は適宜変更可能である。
【0054】
・上記実施形態では、上側環状部被覆部53から第2軸方向側に突出する介在部55が設けられたが、介在部55は設けなくてもよい。
・上記実施形態では、第1案内部100に爪部102が設けられたが、爪部102は設けなくてもよい。
【0055】
・上記実施形態では、第1案内部100及び第2案内部110の形状は適宜変更可能である。例えば、第1案内部100は、四角柱状に突出するものに限らず、円柱状に突出するものであってもよい。これは、第2案内部110についても同様である。
【0056】
・上記実施形態では、第1案内部100は、第1近接部位P1におけるU相コイル間渡り線Lu2とU相終端部Lu5とが接触しないように、U相終端部Lu5を第1案内部100が設けられていない場合の位置よりも径方向外側に延出させた状態で係止したが、これに限らない。例えば、第1案内部100は、U相コイル間渡り線Lu2を軸方向Xにおいてずらすとともに第1案内部100が設けられていない場合の位置よりも径方向外側に延出させた状態で係止するようにしてもよい。
【0057】
・上記実施形態では、第2案内部110は、第2近接部位P2におけるV相始端部Lv1とV相終端部Lv5とが接触しないように、V相終端部Lv5を第2案内部110が設けられていない場合の位置よりも第2軸方向側に延出させた状態で係止したが、これに限らない。例えば、第2案内部110は、V相始端部Lv1を第2案内部110が設けられていない場合の位置よりも第2軸方向側に延出させた状態で係止するようにしてもよい。
【0058】
・上記実施形態では、第1案内部100は、第1近接部位P1とは異なる位置でU相渡り線Luを係止したが、第1近接部位P1に相当する位置でU相渡り線Luを係止するようにしてもよい。また、第2案内部110は、第2近接部位P2とは異なる位置でV相渡り線Lvを係止したが、第2近接部位P2に相当する位置でV相渡り線Lvを係止するようにしてもよい。
【0059】
・上記実施形態では、第1案内部100は、U相渡り線Luのなかで電位の異なる部分同士が接触することを抑制するために設けられたが、V相渡り線Lvのなかで電位の異なる部分同士が接触することを抑制するために設けてもよいし、W相渡り線Lwのなかで電位の異なる部分同士が接触することを抑制するために設けてもよい。すなわち、第1案内部100を設けて係止する対象となる渡り線は適宜変更可能である。
【0060】
・上記実施形態では、第2案内部110は、V相渡り線Lvのなかで電位の異なる部分同士が接触することを抑制するために設けられたが、U相渡り線Luのなかで電位の異なる部分同士が接触することを抑制するために設けてもよいし、W相渡り線Lwのなかで電位の異なる部分同士が接触することを抑制するために設けてもよい。すなわち、第2案内部110を設けて係止する対象となる渡り線は適宜変更可能である。
【0061】
・上記実施形態では、第1案内部100及び第2案内部110の両方が設けられたが、いずれか一方を設けないようにしてもよい。
・ターミナル部58は、第2ティース被覆部It2の径方向外側に位置していたが、上側環状部被覆部53の径方向外側であればどこに位置していてもよい。
【0062】
・ステータコア30の環状部31は、円環状に設けられたが、これに限らない。例えば、環状部31は、周方向に等間隔に分割した複数の分割コアによって構成されてもよい。この場合、径方向内側に1つのティース32が設けられた分割コアが例えば12個組み合わされることでステータコア30が構成されている。
【0063】
・上記実施形態では、各U相コイルU1~U4、各V相コイルV1~V4、及び各W相コイルW1~W4は、デルタ結線に限らず、スター結線等の他の結線により接続されてもよい。
【0064】
・ティース32の数は12個に限らず、11個以下であってもよいし、13個以上であってもよい。また、ティース被覆部の数も12個に限らず、11個以下であってもよいし、13個以上であってもよい。また、介在部55の数も12個に限らず、11個以下であってもよいし、13個以上であってもよい。また、各U相コイルU1~U4、各V相コイルV1~V4、及び各W相コイルW1~W4の合計数も、12個に限らず、11個以下であってもよいし、13個以上であってもよい。
【0065】
・インシュレータ50は、上側インシュレータ51と下側インシュレータ52の2つにより構成されていたが、3つ以上のインシュレータ片によって構成されていてもよいし、1つのインシュレータで構成されていてもよい。また、インシュレータ50は、環状部31を被覆するインシュレータ片とティース32を被覆するインシュレータ片とが別部材として構成されたものであってもよい。
【0066】
・モータ2は、U相、V相、W相のモータに具体化したが、例えば2相のモータに具体化してもよい。
・モータ装置1は、基板3を備えていなくてもよい。すなわち、モータ2を制御する基板3については、モータ装置1の外部に設けてもよい。
【0067】
・モータ装置1は、例えば車両に搭載される電動ポンプに内蔵されるものであったが、車両の電動パワーステアリング装置に搭載されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0068】
2…モータ
21…ステータ
22…ロータ
25…永久磁石
30…ステータコア
31…環状部
32…ティース
40…絶縁電線
50…インシュレータ
53…上側環状部被覆部
55…介在部
58…ターミナル部
100…第1案内部
101…本体部
102…爪部
110…第2案内部
It1~It12…第1~第12ティース被覆部
Lu、Lv、Lw…U相渡り線、V相渡り線、W相渡り線
M1~M12…第1~第12介在部
P1、P2…第1、第2近接部位
T1~T12…第1~第12ティース
U1~U12、V1~V12、W1~W12…U相コイル、V相コイル、W相コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10