(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ショットキーバリアダイオード
(51)【国際特許分類】
H01L 29/872 20060101AFI20240110BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240110BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20240110BHJP
H01L 29/47 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01L29/86 301F
H01L29/86 301D
H01L29/86 301E
H01L29/06 301F
H01L29/06 301V
H01L29/06 301M
H01L29/86 301M
H01L29/86 301P
H01L29/48 F
H01L29/48 D
(21)【出願番号】P 2019228555
(22)【出願日】2019-12-18
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】藤田 実
(72)【発明者】
【氏名】有馬 潤
(72)【発明者】
【氏名】川崎 克己
(72)【発明者】
【氏名】平林 潤
【審査官】石塚 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/082580(WO,A1)
【文献】特表2015-507849(JP,A)
【文献】特開2015-153769(JP,A)
【文献】米国特許第10439075(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/872
H01L 29/06
H01L 21/329
H01L 29/47
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ガリウムからなる半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられた酸化ガリウムからなるドリフト層と、
前記ドリフト層とショットキー接触するアノード電極と、
前記半導体基板とオーミック接触するカソード電極と、
前記ドリフト層に設けられた
リング状の外周トレンチの内壁を覆う絶縁膜と、
前記絶縁膜を介して前記
外周トレンチの前記内壁を覆うとともに、前記アノード電極と電気的に接続された金属膜と、
フィールド絶縁層と、を備え、
前記フィールド絶縁層は、前記ドリフト層の上面と前記アノード電極の間に位置する第1の部分と、
前記アノード電極と電気的に接続された前記金属膜及び前記絶縁膜を介して
、前記
外周トレンチの前記内壁
のうち、外周に位置する部分及び底部の少なくとも一部を覆う第2の部分を含むことを特徴とするショットキーバリアダイオード。
【請求項2】
前記ドリフト層には、前記外周トレンチに囲まれた領域に形成された中心トレンチ
がさらに設けられ、
前記フィールド絶縁層の前記第1の部分は、前記外周トレンチを囲むようにリング状に設けら
れていることを特徴とする請求項1に記載のショットキーバリアダイオード。
【請求項3】
酸化ガリウムからなる半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられた酸化ガリウムからなるドリフト層と、
前記ドリフト層とショットキー接触するアノード電極と、
前記半導体基板とオーミック接触するカソード電極と、
前記ドリフト層に設けられたトレンチの内壁を覆う絶縁膜と、
前記絶縁膜を介して前記トレンチの前記内壁を覆うとともに、前記アノード電極と電気的に接続された金属膜と、
フィールド絶縁層と、を備え、
前記フィールド絶縁層は、前記ドリフト層の上面と前記アノード電極の間に位置する第1の部分と、前記金属膜及び前記絶縁膜を介して前記トレンチの前記内壁を覆う第2の部分を含み、
前記第1の部分と前記第2の部分が互いに異なる絶縁材料からなることを特徴とす
るショットキーバリアダイオード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はショットキーバリアダイオードに関し、特に、酸化ガリウムを用いたショットキーバリアダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
ショットキーバリアダイオードは、金属と半導体の接合によって生じるショットキー障壁を利用した整流素子であり、PN接合を有する通常のダイオードに比べて順方向電圧が低く、且つ、スイッチング速度が速いという特徴を有している。このため、ショットキーバリアダイオードはパワーデバイス用のスイッチング素子として利用されることがある。
【0003】
ショットキーバリアダイオードをパワーデバイス用のスイッチング素子として用いる場合、十分な逆方向耐圧を確保する必要があることから、シリコン(Si)の代わりに、よりバンドギャップの大きい炭化シリコン(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)などが用いられることがある。中でも、酸化ガリウムは、バンドギャップが4.8~4.9eVと非常に大きく、絶縁破壊電界も約8MV/cmと大きいことから、酸化ガリウムを用いたショットキーバリアダイオードは、パワーデバイス用のスイッチング素子として非常に有望である。酸化ガリウムを用いたショットキーバリアダイオードの例は、特許文献1及び2に記載されている。
【0004】
特許文献1及び2に記載されたショットキーバリアダイオードは、酸化ガリウム層に複数のトレンチを設けるとともに、酸化ガリウム層とアノード電極の外周部との間にフィールド絶縁層を設けたフィールドプレート構造を有している。このように、酸化ガリウム層に複数のトレンチを設ければ、逆方向電圧が印加されるとトレンチ間に位置するメサ領域が空乏層となるため、ドリフト層のチャネル領域がピンチオフされる。これにより、逆方向電圧が印加された場合のリーク電流を大幅に抑制することができる。また、フィールドプレート構造を有していることから、アノード電極の端部における電界集中が緩和される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-199869号公報
【文献】特開2019-79984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、トレンチの形成とフィールド絶縁層のパターニングは、別工程で行われることから、両者の形成位置にはアライメントのずれが生じる。このため、フィールド絶縁層の端部とトレンチの端部を正確に一致させることは困難である。そして、フィールド絶縁層の端部がトレンチの端部よりも外側にずれた場合には、トレンチの外側領域においてアノード電極と半導体層が直接接してしまい、この部分において絶縁破壊が生じるおそれがある。一方、フィールド絶縁層の端部がトレンチの端部よりも内側にずれた場合には、フィールド絶縁層の一部がトレンチの内部に形成される。この場合、トレンチの内部に形成されたフィールド絶縁層のうち、トレンチの側壁を覆う部分とトレンチの底部を覆う部分の境界となる角部に電界が集中し、絶縁破壊が生じるおそれがある。
【0007】
したがって、本発明は、酸化ガリウムを用いたショットキーバリアダイオードにおいて、トレンチとフィールド絶縁層のアライメントずれに起因する絶縁破壊を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるショットキーバリアダイオードは、酸化ガリウムからなる半導体基板と、半導体基板上に設けられた酸化ガリウムからなるドリフト層と、ドリフト層とショットキー接触するアノード電極と、半導体基板とオーミック接触するカソード電極と、ドリフト層に設けられたトレンチの内壁を覆う絶縁膜と、絶縁膜を介してトレンチの内壁を覆うとともに、アノード電極と電気的に接続された金属膜と、フィールド絶縁層とを備え、フィールド絶縁層は、ドリフト層の上面とアノード電極の間に位置する第1の部分と、金属膜及び絶縁膜を介してトレンチの内壁を覆う第2の部分を含むことを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、フィールド絶縁層がトレンチの内部に入り込んでいるため、トレンチの外側領域においてアノード電極とドリフト層が直接接することがない。しかも、フィールド絶縁層の第2の部分と絶縁層の間には金属膜が存在し、この金属膜がアノード電極と同電位となることから、フィールド絶縁層の第2の部分に加わる電界が大幅に緩和される。これにより、トレンチとフィールド絶縁層のアライメントずれに起因する絶縁破壊を防止することが可能となる。
【0010】
本発明において、トレンチは、リング状に形成された外周トレンチと、外周トレンチに囲まれた領域に形成された中心トレンチとを含み、フィールド絶縁層の第1の部分は、外周トレンチを囲むようにリング状に設けられ、フィールド絶縁層の第2の部分は、外周トレンチの内部に設けられていても構わない。これによれば、逆方向電圧が印加されると中心トレンチによって区画されたメサ領域が空乏層となり、ドリフト層のチャネル領域がピンチオフされることから、逆方向電圧が印加された場合のリーク電流を大幅に抑制することができる。
【0011】
本発明において、第1の部分と第2の部分が異なる絶縁材料からなるものであっても構わない。これによれば、フィールド絶縁層の第1の部分と第2の部分の材料を最適化することができる。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明によれば、酸化ガリウムを用いたショットキーバリアダイオードにおいて、トレンチとフィールド絶縁層のアライメントずれに起因する絶縁破壊を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態によるショットキーバリアダイオード10の構成を示す模式的な平面図である。
【
図3】
図3は、ショットキーバリアダイオード10の製造方法を説明するための工程図である。
【
図4】
図4は、ショットキーバリアダイオード10の製造方法を説明するための工程図である。
【
図5】
図5は、ショットキーバリアダイオード10の製造方法を説明するための工程図である。
【
図6】
図6は、ショットキーバリアダイオード10の製造方法を説明するための工程図である。
【
図7】
図7は、ショットキーバリアダイオード10の製造方法を説明するための工程図である。
【
図8】
図8は、ショットキーバリアダイオード10の製造方法を説明するための工程図である。
【
図9】
図9は、ショットキーバリアダイオード10の製造方法を説明するための工程図である。
【
図10】
図10は、変形例によるショットキーバリアダイオード10Aの構造を説明するための略断面図である。
【
図11】
図11は、比較例によるショットキーバリアダイオードの構造を説明するための略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態によるショットキーバリアダイオード10の構成を示す模式的な平面図である。また、
図2は、
図1に示すA-A線に沿った略断面図である。
【0016】
図1及び
図2に示すように、本実施形態によるショットキーバリアダイオード10は、いずれも酸化ガリウム(β-Ga
2O
3)からなる半導体基板20及びドリフト層30を備える。半導体基板20及びドリフト層30には、n型ドーパントとしてシリコン(Si)又はスズ(Sn)が導入されている。ドーパントの濃度は、ドリフト層30よりも半導体基板20の方が高く、これにより半導体基板20はn
+層、ドリフト層30はn
-層として機能する。
【0017】
半導体基板20は、融液成長法などを用いて形成されたバルク結晶を切断加工したものであり、その厚みは250μm程度である。半導体基板20の平面サイズについては特に限定されないが、一般的に素子に流す電流量に応じて選択することになり、順方向の最大電流量が20A程度であれば、平面視で2.4mm×2.4mm程度とすればよい。
【0018】
半導体基板20は、実装時において上面側に位置する上面21と、上面21の反対側であって、実装時において下面側に位置する裏面22を有する。上面21の全面にはドリフト層30が形成されている。ドリフト層30は、半導体基板20の上面21に反応性スパッタリング、PLD法、MBE法、MOCVD法、HVPE法などを用いて酸化ガリウムをエピタキシャル成長させた薄膜である。ドリフト層30の膜厚については特に限定されないが、一般的に素子の逆方向耐電圧に応じて選択することになり、600V程度の耐圧を確保するためには、例えば7μm程度とすればよい。
【0019】
ドリフト層30の上面31には、ドリフト層30とショットキー接触するアノード電極40が形成されている。アノード電極40は、例えば白金(Pt)、パラジウム(Pd)、金(Au)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)等の金属からなる。アノード電極40は、異なる金属膜を積層した多層構造、例えば、Pt/Au、Pt/Al、Pd/Au、Pd/Al、Pt/Ti/AuまたはPd/Ti/Auであっても構わない。一方、半導体基板20の裏面22には、半導体基板20とオーミック接触するカソード電極50が設けられる。カソード電極50は、例えばチタン(Ti)等の金属からなる。カソード電極50は、異なる金属膜を積層した多層構造、例えば、Ti/AuまたはTi/Alであっても構わない。
【0020】
本実施形態においては、ドリフト層30にトレンチ61,62が設けられている。トレンチ61,62は、いずれも平面視でアノード電極40と重なる位置に設けられている。このうち、トレンチ61はリング状に形成された外周トレンチであり、トレンチ62は外周トレンチに囲まれた領域に形成された中心トレンチである。外周トレンチ61と中心トレンチ62が完全に分離されている必要はなく、
図1に示すように、外周トレンチ61と中心トレンチ62がつながっていても構わない。
【0021】
特に限定されるものではないが、外周トレンチ61の幅をW1とし、中心トレンチ62の幅をW2とした場合、本実施形態においては、
W1>W2
に設定されている。これは、電界が特に集中する外周トレンチ61の底部における絶縁破壊を防止するためである。つまり、外周トレンチ61の幅W1を拡大すると、底部の曲率半径が拡大するか、或いは、外周トレンチ61を断面で見た場合に底部によって構成されるエッジ部分が2つに分離するからである。その結果、外周トレンチ61の底部近傍における絶縁破壊が生じにくくなる。一方、外周トレンチ61の深さと中心トレンチ62の深さにおいては、互いに同じである。
【0022】
トレンチ61,62の内壁はHfO2などからなる絶縁膜63で覆われ、絶縁膜63の表面は金属膜64で覆われている。つまり、トレンチ61,62の内壁は、絶縁膜63と金属膜64の積層膜によって覆われている。絶縁膜63の材料としては、HfO2以外にAl2O3などの絶縁材料を用いても構わない。金属膜64の材料については特に限定されず、アノード電極40と同じ材料を用いても構わないし、密着性に優れたCrを用いても構わないし、Pt,Au,Wなど半導体プロセスで使用されるウェットエッチング耐性に優れた金属材料を用いても構わない。
【0023】
トレンチ61,62の内部は、アノード電極40と同じ材料で埋め込まれている。本実施形態においては、ドリフト層30に複数のトレンチ61,62が設けられているため、アノード電極40の材料としては、モリブデン(Mo)や銅(Cu)などの仕事関数が低い材料であっても構わない。また、ドリフト層30に複数のトレンチ61,62が設けられていることから、ドリフト層30のドーパント濃度を5×1016cm-3程度に高めることができる。
【0024】
ドリフト層30のうちトレンチ61,62によって区画される部分はメサ領域Mを構成する。メサ領域Mは、アノード電極40とカソード電極50との間に逆方向電圧が印加されると空乏層となるため、ドリフト層30のチャネル領域がピンチオフされる。これにより、逆方向電圧が印加された場合のリーク電流が大幅に抑制される。
【0025】
さらに、ドリフト層30の上面31のうち、平面視で外周トレンチ61の外側に位置する部分には、フィールド絶縁層70が設けられている。フィールド絶縁層70の材料としては、エポキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、フッ素樹脂、ポリオレフィン等の各種樹脂を用いても構わないし、酸化珪素、酸化アルミニウム、窒化珪素等、無機酸化物や無機窒化物を用いても構わない。フィールド絶縁層70の材料として樹脂を用いる場合、樹脂溶液を塗布後、乾燥させて樹脂膜とする方法、樹脂モノマーを塗布あるいは蒸着したのち重合する方法、成膜後に架橋処理する方法などを用いて形成することができる。また、フィールド絶縁層70の材料として無機物を用いる場合、スパッタリング法や蒸着法等の真空プロセス、或いは、ゾルゲル法等の溶液プロセスなどを用いて形成することができる。
【0026】
図2に示すように、フィールド絶縁層70の一部は外周トレンチ61の内部に入り込んでおり、これにより、外周トレンチ61の内壁のうち、外周に位置する部分及び底部の一部は、金属膜64及び絶縁膜63を介してフィールド絶縁層70で覆われる。フィールド絶縁層70の材料としては、酸化シリコンなどの絶縁材料を用いることができる。ここで、フィールド絶縁層70のうち、外周トレンチ61を囲むようドリフト層30の上面31にリング状に設けられた部分は第1の部分71を構成し、外周トレンチ61の内部に形成された部分は第2の部分72を構成する。第1の部分71と第2の部分72は、互いに同じ絶縁材料からなるものであっても構わないし、互いに異なる絶縁材料からなるものであっても構わない。一例として、第1の部分71の材料としてAl
2O
3を用い、第2の部分72の材料としてSiO
2を用いても構わない。
【0027】
かかる構成により、アノード電極40の外周部は、フィールド絶縁層70の第1の部分71の上に形成される。また、アノード電極40のうちメサ領域Mと重なる部分は、ドリフト層30とショットキー接触している。これにより、いわゆるフィールドプレート構造が得られることから、外周トレンチ61の底部に印加される電界がより緩和される。さらに、フィールド絶縁層70の第2の部分72は、絶縁膜63の表面に直接形成されるのではなく、アノード電極40と同電位となる金属膜64を介して絶縁膜63を覆っていることから、フィールド絶縁層70の第2の部分72には強い電界が加わらない。
【0028】
次に、本実施形態によるショットキーバリアダイオード10の製造方法について説明する。
【0029】
図3~
図9は、本実施形態によるショットキーバリアダイオード10の製造方法を説明するための工程図であり、いずれも
図2に示す断面に対応している。
【0030】
まず、
図3に示すように、酸化ガリウムからなる半導体基板20を用意し、その上面21に酸化ガリウムからなるドリフト層30を形成する。上述の通り、ドリフト層30は、半導体基板20の上面21に反応性スパッタリング,PLD法,MBE法,MOCVD法,HVPE法などを用いて酸化ガリウムをエピタキシャル成長させることにより形成することができる。
【0031】
次に、
図4に示すように、BCl
3などを用いたドライエッチングにより、ドリフト層30に外周トレンチ61及び中心トレンチ62を形成する。次に、
図5に示すように、ドリフト層30の表面に絶縁膜63を形成する。絶縁膜63は、ALD法など一般的な成膜方法により成膜することが可能である。その後、ウェットエッチング、ドライエッチング、CMPなど一般的な加工方法によって、メサ領域M上の絶縁膜63を除去する。これにより、メサ領域M上のドリフト層30が露出するとともに、トレンチ61,62の内壁が絶縁膜63によって覆われた状態となる。この時、メサ領域M上のドリフト層30の一部が除去されても構わない。
【0032】
次に、
図6に示すように、全面に金属膜64を形成する。金属膜64は、スパッタリング法、蒸着法など一般的な成膜方法により成膜することが可能である。その後、ウェットエッチング、ドライエッチング、CMPなど一般的な加工方法によって、メサ領域M上の金属膜64を除去する。これにより、メサ領域M上のドリフト層30が露出するとともに、トレンチ61,62の内壁が絶縁膜63を介して金属膜64によって覆われる。この時、メサ領域M上のドリフト層30の一部が除去されても構わない。また、メサ領域M上に形成された絶縁膜63の除去と、メサ領域M上に形成された金属膜64の除去は、同時に行っても構わない。
【0033】
次に、
図7に示すように、全面にフィールド絶縁層70を形成した後、フィールド絶縁層70の外周部分を覆うレジストRを形成する。フィールド絶縁層70は、CVD法など一般的な成膜方法により成膜することが可能である。レジストRのパターニングは、フォトリソグラフィ法により行うことができる。ここで、レジストRの内側エッジE0は、外周トレンチ61の外側エッジE1と外周トレンチ61の内側エッジE2の間に位置するよう設計する。つまり、レジストRの内側エッジE0が外周トレンチ61の内部に位置するよう、レジストRの開口径を外周トレンチ61の外径よりも小さく、且つ、外周トレンチ61の内径よりも大きく設計する。これにより、多少のアライメントずれが生じたとしても、ドリフト層30の上面31のうち外周トレンチ61の外側に位置する部分は、レジストRによって確実に覆われることになる。
【0034】
この状態でエッチングを行うことにより、
図8に示すように、レジストRで覆われていない部分のフィールド絶縁層70を除去する。これにより、フィールド絶縁層70のうち、メサ領域M上に形成された部分、中心トレンチ62内に形成された部分、並びに、外周トレンチ61内に形成された部分の一部が除去され、ドリフト層30の上面31のうち外周トレンチ61の外側に位置する第1の部分71と、外周トレンチ61の外周壁及び底部を覆う第2の部分72が残存する。このように、本実施形態においては、外周トレンチ61の外径よりも小さな開口部を有するレジストRを用いていることから、ドリフト層30の上面31のうち外周トレンチ61の外側に位置する部分は、フィールド絶縁層70の第1の部分71によって確実に覆われることになる。
【0035】
次に、
図9に示すように、全面にアノード電極40を形成した後、アノード電極40の外周部分を除去する。この時、アノード電極40の外周エッジE3は、外周トレンチ61の外側エッジE1よりも外側となるよう設計することにより、フィールドプレート構造を形成する。エッジE1とエッジE3の距離、つまりフィールドプレート長は、10μm以上であることが好ましい。
【0036】
尚、トレンチ61,62の内部に充填する金属材料はアノード電極40の材料と異なっていても構わない。この場合、アノード電極40を先に形成した後、別の金属材料をトレンチ61,62の内部に充填しても構わないし、メサ領域M上にアノード電極40とは異なる金属材料が残らない限り、先にトレンチ61,62の内部にアノード電極40とは異なる金属材料を充填しても構わない。但し、少なくとも外周トレンチ61の内部に位置する金属膜64については、アノード電極40と接するか、或いは、外周トレンチ61に埋め込まれた金属材料を介してアノード電極40と電気的に接続されている必要がある。これにより、少なくとも外周トレンチ61の内部に位置する金属膜64については、アノード電極40と同電位となる。
【0037】
そして、半導体基板20の裏面22にカソード電極50を形成すれば、本実施形態によるショットキーバリアダイオード10が完成する。
【0038】
以上説明したように、本実施形態によるショットキーバリアダイオード10によれば、アライメントずれが生じた場合であっても、ドリフト層30の上面31のうち外周トレンチ61の外側に位置する部分がフィールド絶縁層70の第1の部分71によって確実に覆われる。しかも、フィールド絶縁層70の第2の部分72と絶縁膜63の間には金属膜64が存在し、この金属膜64がアノード電極40と同電位となることから、フィールド絶縁層70の第2の部分72に加わる電界が大幅に緩和される。これにより、外周トレンチ61とフィールド絶縁層70のアライメントずれに起因する絶縁破壊を防止することが可能となる。
【0039】
図10は、変形例によるショットキーバリアダイオード10Aの構造を説明するための略断面図である。
【0040】
図10に示すショットキーバリアダイオード10Aは、外周トレンチ61がフィールド絶縁層70で埋め込まれている点において、上述したショットキーバリアダイオード10と相違している。
図10に示すショットキーバリアダイオード10Aが例示するように、金属膜64がアノード電極40と同電位となる限り、外周トレンチ61の内部がフィールド絶縁層70で埋め込まれていても構わない。
【0041】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【実施例】
【0042】
<実施例1>
図1及び
図2に示したショットキーバリアダイオード10と同じ構造を有する実施例1のシミュレーションモデルを想定し、アノード電極40とカソード電極50の間に800Vの逆方向電圧を印加した場合の電界強度をシミュレーションした。半導体基板20のドーパント濃度については1×10
18cm
-3とし、ドリフト層30のドーパント濃度としては1×10
16cm
-3とした。ドリフト層30の厚みは7μmとした。また、外周トレンチ61の幅W1は10μm、中心トレンチ62の幅は2μmとし、深さはいずれも3μmとした。また、アノード電極40と接する部分におけるドリフト層30の幅、つまりメサ領域Mの幅は2μmとした。絶縁膜63は厚さ50nmのHfO
2膜とし、金属膜64は厚さ100nmのCr膜とした。フィールド絶縁層70は厚さ320nmのSiO
2膜とし、フィールドプレート長は10μmとした。
【0043】
シミュレーションの結果、
図2に示す領域A、つまり、フィールド絶縁層70の第2の部分72のうち、外周トレンチ61の側壁を覆う部分との底部を覆う部分の境界となる角部における電界は1.2MV/cmであった。また、
図2に示す領域B、つまり、フィールド絶縁層70の第1の部分71のうちアノード電極40の外周端と接する部分における電界は9.8MV/cmであった。フィールド絶縁層70を構成するSiO
2の絶縁破壊電界強度は10MV/cmであるため、領域A,Bともに絶縁破壊電界強度未満であった。
【0044】
<実施例2>
図10に示したショットキーバリアダイオード10Aと同じ構造を有する実施例2のシミュレーションモデルを想定し、アノード電極40とカソード電極50の間に800Vの逆方向電圧を印加した場合の電界強度をシミュレーションした。実施例2のシミュレーションモデルは、外周トレンチ61がフィールド絶縁層70で埋め込まれている以外、実施例1と同じパラメータを有している。シミュレーションの結果、フィールド絶縁層70の第2の部分72に加わる最大電界は1.2MV/cm、
図10に示す領域Bにおける電界は9.8MV/cmであった。
【0045】
<実施例3>
フィールド絶縁層70の第1の部分71の材料としてAl2O3を用い、フィールド絶縁層70の第2の部分72の材料としてSiO2を用いた他は、実施例1と同じパラメータを有する実施例3のシミュレーションモデルを想定し、アノード電極40とカソード電極50の間に800Vの逆方向電圧を印加した場合の電界強度をシミュレーションした。シミュレーションの結果、領域Aにおける電界は0.4MV/cm、領域Bにおける電界は6.7MV/cmであった。
【0046】
<比較例>
図11に示す比較例のシミュレーションモデルを想定し、アノード電極40とカソード電極50の間に800Vの逆方向電圧を印加した場合の電界強度をシミュレーションした。比較例のシミュレーションモデルは、金属膜64が省略されている他は、実施例1のシミュレーションモデルと同じパラメータを有している。シミュレーションの結果、
図11に示す領域Aに加わる最大電界は11.2MV/cm、
図11に示す領域Bにおける電界は10.2MV/cmであり、いずれもSiO
2の絶縁破壊電界強度である10MV/cmを超えていた。
【符号の説明】
【0047】
10,10A ショットキーバリアダイオード
20 半導体基板
21 半導体基板の上面
22 半導体基板の裏面
30 ドリフト層
31 ドリフト層の上面
40 アノード電極
50 カソード電極
61 外周トレンチ
62 中心トレンチ
63 絶縁膜
64 金属膜
70 フィールド絶縁層
71 フィールド絶縁層の第1の部分
72 フィールド絶縁層の第2の部分
E0~E3 エッジ
M メサ領域
R レジスト