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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】移載装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20240110BHJP
   B65G 59/04 20060101ALI20240110BHJP
   B65G 59/08 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B25J13/08 A
B65G59/04
B65G59/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019228585
(22)【出願日】2019-12-18
(65)【公開番号】P2021094664
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】押川 誠享
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-136828(JP,A)
【文献】特開平07-299782(JP,A)
【文献】特開2019-111615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 13/08
B65G 59/04
B65G 59/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着装置を有し、支持部に支持される荷物をデパレタイズするロボットアームと、
前記支持部に支持される荷物の第1水平方向を向いた第1面と、第1水平方向に対して直交する第2水平方向を向いた第2面と、天面とを撮像する撮像装置と、
前記撮像装置により撮像された撮像情報のうち、第1水平方向において前記支持部から前記撮像装置側に第1所定距離離れた位置に設定される第1画像処理範囲設定面と、第2水平方向において前記支持部から前記撮像装置側に第2所定距離離れた位置に設定される第2画像処理範囲設定面と、高さ方向において前記支持部から上方に第3所定距離離れた位置に設定される第3画像処理範囲設定面と、で囲まれる画像処理範囲に対して前記荷物の位置の把握を行う画像処理部と、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記画像処理部により把握された荷物から前記第1画像処理範囲設定面に面する荷物を吸着対象の荷物として特定し、前記第1画像処理範囲設定面の外側に前記吸着装置を位置させ、次に前記第1画像処理範囲設定面を通過して当該荷物に対して前記吸着装置を吸着させるように前記ロボットアームを制御し、
前記コントローラは、前記第2画像処理範囲設定面に面する荷物を吸着対象の荷物として特定し、吸着した荷物を上昇させる前に、当該荷物を前記第2画像処理範囲設定面側に移動させるように前記ロボットアームを制御する、移載装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記画像処理範囲の外側において前記吸着装置を移動させる際は、現在位置から目的位置まで最短距離で移動する、請求項1に記載の移載装置。
【請求項3】
吸着装置を有し、支持部に支持される荷物をデパレタイズするロボットアームと、
前記支持部に支持される荷物の第1水平方向を向いた第1面と、第1水平方向に対して直交する第2水平方向を向いた第2面と、天面とを撮像する撮像装置と、
前記撮像装置により撮像された撮像情報のうち、第1水平方向において前記支持部から前記撮像装置側に第1所定距離離れた位置に設定される第1画像処理範囲設定面と、第2水平方向において前記支持部から前記撮像装置側に第2所定距離離れた位置に設定される第2画像処理範囲設定面と、高さ方向において前記支持部から上方に第3所定距離離れた位置に設定される第3画像処理範囲設定面と、で囲まれる画像処理範囲に対して前記荷物の位置の把握を行う画像処理部と、
コントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記画像処理部により把握された荷物から前記第1画像処理範囲設定面に面する荷物を吸着対象の荷物として特定し、前記第1画像処理範囲設定面の外側に前記吸着装置を位置させ、次に前記第1画像処理範囲設定面を通過して当該荷物に対して前記吸着装置を吸着させるように前記ロボットアームを制御し、
前記コントローラは、前記第3画像処理範囲設定面に面する荷物を吸着対象の荷物として特定し、次に吸着した荷物を前記第3画像処理範囲設定面より上に上昇させ、当該荷物を前記第3画像処理範囲設定面の外側において水平移動させるように前記ロボットアームを制御する、移載装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記画像処理範囲の外側において前記吸着装置を移動させる際は、現在位置から目的位置まで最短距離で移動する、請求項3に記載の移載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移載装置、特に、段積みされた物品から一又は複数の物品を取り出すための移載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、物流業界での人手不足解消が求められており、その目的達成のためにロボット動作技術・画像認識技術が進歩してきており、重労働であるパレタイズ、デパレタイズの作業をロボットにさせる動きが広がっている。
パレタイズ、デパレタイズの動作は、荷物の上面をハンド(ロボットの先端に付けて、実際に荷物を把持する機構)でエア吸着して搬送することが一般的である。
例えば、段積みされた複数の物品からなる物品群に対し、ピッキングロボットにより最上段から物品を一つずつピッキングするピッキングシステムが存在している(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特解2019-5871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のピッキングロボットは、荷物の上面又は側面をエア吸着して移載を行う。
ピッキングロボットは、段ボール箱の上面又は側面を吸着する吸着ハンドを有している。
【0005】
ピッキングシステムは、段ボールを撮影するカメラを有している。ピッキングシステムのコントローラは、カメラからの画像信号に基づいて、段ボール箱の位置、形状、大きさ等を判断できる。なお、コントローラは、画像処理を行う画像処理範囲が定められていなければ、荷物の特定の精度が上がるのに対して、画像処理計算量が増えてしまう。
一方、従来では、ロボットアームが吸着ハンドを移動させる際に、特別な工夫をしていない。したがって、ロボットアームが吸着ハンドを移動させるときに、他の荷物や装置との干渉を考慮する必要があった。
【0006】
本発明の目的は、デパレタイズを行う際の計算処理を軽減しつつ、移載装置と荷物の干渉を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【0008】
本発明の一見地に係る移載装置は、ロボットアームと、撮像装置と、画像処理部と、コントローラとを備えている。
ロボットアームは、吸着装置を有し、支持部に支持される荷物をデパレタイズする。
撮像装置は、支持部に支持される荷物の第1水平方向を向いた第1面と、第1水平方向に対して水平方向において直交する第2水平方向を向いた第2面と、天面とを撮像する。
画像処理部は、画像処理範囲内での荷物の位置の把握を行う。画像処理範囲は、撮像装置により撮像された撮像情報のうち、第1水平方向において支持部から撮像装置側に第1所定距離離れた位置に設定される第1画像処理範囲設定面と、第2水平方向において支持部から撮像装置側に第2所定距離離れた位置に設定される第2画像処理範囲設定面と、高さ方向において支持部から上方に第3所定距離離れた位置に設定される第3画像処理範囲設定面と、で囲まれる。
コントローラは、画像処理部により把握された荷物から第1画像処理範囲設定面に面する荷物Wを吸着対象の荷物として特定し、第1画像処理範囲設定面の外側に吸着装置を位置させ、次に第1画像処理範囲設定面を通過して当該荷物に対して吸着装置を吸着させるようにロボットアームを制御する。
なお、「第1画像処理範囲設定面の外側に吸着装置を位置させ」とは、吸着装置の全てが当該面の外側に配置されている場合と、吸着装置の一部が当該面の外側に配置されている場合を含む。また、「第1画像処理範囲設定面を通過して」とは、吸着装置の少なくとも一部が第1画像処理範囲設定面を通過することを意味する。
この装置では、吸着装置を、画像処理を行う画像処理範囲の外側に位置させ、前進のみで荷物に対する吸着位置に位置させることができる。このように、画像処理範囲外の移動で荷物の正面に吸着装置を位置させるので、画像処理を行わなくても吸着装置を特定の位置に移動させることができる。この場合、吸着対象は第1画像処理範囲設定面側の荷物であるので、吸着装置が第1画像処理範囲設定面を通過する際にも追加で画像処理計算をしなくてもよく、ロボットアームの軌道計算も抑えられる。
【0009】
コントローラは、第2画像処理範囲設定面に面する荷物を吸着対象の荷物として特定し、吸着した荷物を上昇させる前に、当該荷物を第2画像処理範囲設定面側に移動させるようにロボットアームを制御してもよい。
この装置では、第2画像領域設定面に面する荷物を持ち上げる前に、荷物を第2画像処理範囲設定面側に移動させることで、隣の荷物が傾いている場合でも吸着した荷物との干渉を防止できる。
【0010】
コントローラは、第3画像処理範囲設定面に面する荷物を吸着対象の荷物として特定し、次に吸着した荷物を第3画像処理範囲設定面より上に上昇させ、当該荷物を第3画像処理範囲設定面の外側において水平移動させるようにロボットアームを制御してもよい。
この装置では、荷物を第3画像処理範囲設定面の上方を移動させることで、吸着した荷物と支持部に支持された荷物の干渉を防止できる。具体的には、荷物を第3画像処理範囲設定面の上方を移動させることで、画像処理を行わなくてもロボットアームを水平移動させることができるようになる。なお、「水平移動」とは、水平方向の移動や斜め方向移動を含む。
【0011】
コントローラは、画像処理範囲の外側において吸着装置を移動させる際は、現在位置から目的位置まで最短距離で移動してもよい。
この装置では、画像処理範囲の外側では、障害物検知を行わないことでコントローラの制御量を軽減できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る移載装置では、デパレタイズを行う際の計算処理を軽減しつつ、移載装置と荷物の干渉を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態のピッキングシステムの概略平面図。
図2】ハンドの斜め上からの斜視図。
図3】ハンドの斜め下からの斜視図。
図4】ハンドの平面図。
図5】ハンドの側面図。
図6】ハンドの模式的側面図。
図7】ハンドの模式的側面図。
図8】ハンドのハンドベースと上下駆動装置の関係を示す模式図。
図9】保持機構の模式図。
図10】保持機構の模式図。
図11】ハンドの制御構成を示すブロック図。
図12】デパレタイズ制御動作のフローチャート。
図13】デパレタイズ制御動作のフローチャート。
図14】ハンドによるデパレタイズ動作の一状態を示す模式図。
図15】ハンドによるデパレタイズ動作の一状態を示す模式図。
図16】ハンドによるデパレタイズ動作の一状態を示す模式図。
図17】ハンドによるデパレタイズ動作の一状態を示す模式図。
図18】ハンドによるデパレタイズ動作の一状態を示す模式図。
図19】ハンドによるデパレタイズ動作の一状態を示す模式図。
図20】ハンドによるデパレタイズ動作の一状態を示す模式図。
図21】ハンドによるデパレタイズ動作の一状態を示す模式図。
図22】ハンドによる荷物戻し動作の一状態を示す模式図。
図23】ハンドによる荷物戻し動作の一状態を示す模式図。
図24】ハンドによる荷物戻し動作の一状態を示す模式図。
図25】パレット上の荷物の画像処理範囲を示す模式図。
図26】第2実施形態におけるハンドによるデパレタイズ動作の一状態を示す模式的平面図。
図27】第2実施形態におけるハンドによるデパレタイズ動作の一状態を示す模式的平面図。
図28】第2実施形態におけるハンドによるデパレタイズ動作の一状態を示す模式的平面図。
図29】第3実施形態におけるハンドによるデパレタイズ動作の一状態を示す模式図。
図30】第3実施形態におけるハンドによるデパレタイズ動作の一状態を示す模式図。
図31】第3実施形態におけるハンドによるデパレタイズ動作の一状態を示す模式図。
図32】第4実施形態におけるハンドによるデパレタイズ動作の一状態を示す模式図。
図33】第4実施形態におけるハンドによるデパレタイズ動作の一状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.第1実施形態
(1)ピッキングシステムの全体構成
図1を用いて、本発明の第1実施形態として、ピッキングシステム1(移載装置の一例)を説明する。図1は、第1実施形態のピッキングシステムの概略平面図である。
【0015】
ピッキングシステム1は、要求された物品をピッキングする装置であり、具体的には、荷物WをパレットP上に段積みする(パレタイズ)動作と、段積みされた荷物Wから荷物Wを取り出す(デパレタイズ)動作とを行う。
ピッキングシステム1は、パレタイズ部3と、デパレタイズ部5とを有している。パレタイズ部3では、荷物Wが段積みされていく。デパレタイズ部5では、荷物Wが取られていく。荷物Wは、例えば、パレットP上に上下前後左右に整列状態で積み重なっている。
【0016】
ピッキングシステム1は、搬入コンベヤ装置7を有している。搬入コンベヤ装置7は、荷物Wをピッキング位置に搬入する装置である。
ピッキングシステム1は、搬出コンベヤ装置9を有している。搬出コンベヤ装置9は、荷物Wをピッキング位置から搬出する装置である。
搬入コンベヤ装置7と搬出コンベヤ装置9は、隣接して配置されており、一水平方向に延びて平行に並んでいる。
【0017】
ピッキングシステム1は、ピッキングロボット15(ロボットアームの一例)を有している。ピッキングロボット15は、パレタイズ動作とデパレタイズ動作をするための装置である。ピッキングロボット15は、パレタイズ部3と、デパレタイズ部5との間に配置されている。
【0018】
(2)ピッキングロボット
ピッキングロボット15は、ロボットアーム(ロボットアームの一例)を有している。ロボットアーム21は、公知の技術である。ロボットアーム21は、アーム駆動装置63を有している。アーム駆動装置63は、モータ等の公知技術である。
ピッキングロボット15は、ハンド23(吸着装置の一例)を有している。ハンド23は、荷物Wを前後方向(荷物Wに近づく側を前側とし、離れる側を後側とする方向)に移動させることで移載を行うための装置であり、ロボットアーム21の先端に装着されている。
【0019】
図2図5を用いて、ハンド23を説明する。図2は、ハンドの斜め上からの斜視図である。図3は、ハンドの斜め下からの斜視図である。図4は、ハンドの平面図である。図5は、ハンドの側面図である。
ハンド23は、ハンドベース25を有している。ハンドベース25は、ロボットアーム21のアームの先端下部に回転自在に連結されている。旋回装置26(図1)によって、ハンド23はロボットアーム21に対して旋回させられる。
ハンド23は、移載テーブル27を有している。移載テーブル27は、ハンドベース25の下面に前後方向に移動可能に設けられ、荷物Wの底面を支持可能である。具体的には、移載テーブル27は、ハンドベース25の下面にあるガイド部(図示せず)に対して移動自在に支持されている。移載テーブル27は、ハンドベース25に比べて前後方向に長く形成された矩形状であり、ハンドベース25の前後方向いずれの側に突出することができる。
【0020】
ハンド23は、図4及び図5に示すように、移載テーブル駆動装置29(前後駆動装置の一例)を有している。移載テーブル駆動装置29は、移載テーブル27をハンドベース25に対して前後方向に駆動する装置である。
移載テーブル駆動装置29は、ハンド23に設けられたモータ30、移載テーブル27に設けられた複数のプーリ(図示せず)、プーリに掛けられたベルト(図示せず)からなる。移載テーブル駆動装置は、チェーン機構、ラック&ピニオン機構、電動シリンダやエアシリンダでもよい。
なお、移載テーブル駆動装置29は、移載テーブル27を、前端が吸着装置31(後述)より前後方向前側にある第1位置(例えば、図7)と、前端が吸着装置31より前後方向後側にある第2位置(例えば、図2)との間で移動可能である。
【0021】
図6及び図7を用いて、移載テーブル27の構造を説明する。図6は、ハンドの模式的側面図である。図7は、ハンドの模式的側面図である。
移載テーブル27には、スライドベルト47が巻かれている。スライドベルト47は、両端がハンドベース25の下部に固定されており、移載テーブル27の両側上面及び下面を覆って巻回されている。移載テーブル27がハンドベース25に対して前後方向に移動すると、スライドベルト47が移載テーブルの移動位置に沿うように変形する。したがって、荷物Wが移載テーブル27に移載されるときは、荷物Wからスライドベルト47に前後方向の荷重が作用すると、スライドベルト47の荷物Wと接触する部分は、荷物と共に移載テーブル27に対して前後方向に移動する。つまり、スライドベルト47は移載テーブル27に対して摺動するが、荷物Wはスライドベルト47と摺動することなく移載テーブル27の上に引き込まれる。したがって、荷物Wが破損しにくい。
【0022】
ハンド23は、吸着装置31を有している。吸着装置31は、ハンドベース25に上下方向に移動可能に設けられ、荷物Wの側面を吸着可能である。吸着装置31は、吸引装置49(図11)によって吸引及び吸引解除が行われる。吸着装置31は、実際に荷物Wに当接する吸着パッド31a(図8)を有している。
【0023】
図8を用いて、ハンド23をさらに説明する。図8は、ハンドのハンドベースと上下駆動装置の関係を示す模式図である。
ハンド23は、上下駆動装置33を有している。上下駆動装置33は、吸着装置31をハンドベース25に対して上下方向に駆動する。
上下駆動装置33は、エアシリンダ35を有している。エアシリンダ35は、吸着装置31をハンドベース25に対して上昇方向へ駆動する。エアシリンダ35は、下降方向には吸着装置31から離脱可能である。エアシリンダ35はピストン35aを有しており、ピストン35aは吸着装置31の受け部31bに下方から当接して、吸着装置31を押し上げることが可能である。エアシリンダ35は、図4に示すように、ハンドベース25の吸着装置31寄りにおいて、幅方向中間に配置されている。
【0024】
上下駆動装置33は、吸着装置31を下方に付勢するバネ部材37を有している。具体的には、バネ部材37は一端がハンドベース25に固定され、他端が吸着装置31に固定され、ハンドベース25に対して吸着装置31を下方に引っ張っている。バネ部材37を利用することで、エアシリンダ35が吸着装置31から下方に離れた後でも、荷物Wを確実に下降させて移載テーブル27の上に載せることができる(後述)。バネ部材37は、例えば、ハンドベース25の吸着装置31寄りにおいて、幅方向の両外側の2箇所に配置されている。図8では、バネ部材37はエアシリンダ35の近傍に配置されているが、これは模式的に描いただけであり、実際の配置を限定しない。また、バネ部材37の固定先は特に限定されない。なお、より詳細には、エアシリンダ35のピストン35aが下方に下がるときに、吸着装置31は、自重及びバネ部材37に引っ張られることでピストン35aに追従し続け、荷物Wが下方の装置又は荷物に載ると下方への移動を停止する。これ以降、ピストン35aが吸着装置31から離れる。
上下駆動装置33は、吸着装置31を移載テーブル27と高さ方向に重複する位置まで下降可能である(図14を参照)。このとき、移載テーブル27は吸着装置31の前後方向位置よりも後側(前述の第2位置)にある。したがって、背の低い荷物Wもピッキング可能である。上記が可能となるのは、エアシリンダ35が最も縮んだ状態において吸着装置31はハンドベース25及び移載テーブル27に対して最下方位置にあるが、このとき吸着装置31の下面が移載テーブル27の上面より下方にあるからである。ただし、上記構造は必須ではない。
ハンド23は、図3に示すように、吸着装置31の下面に接触部材39をさらに有している。接触部材39は、吸着装置31の下面に部分的に形成されている。接触部材39は、ゴム等の弾性部材である。具体的には、接触部材39は、図3に示すように、吸着装置31の幅方向外側の両端付近に設けられており、前後方向に延びる帯状である。接触部材の形状、個数、位置、材料は特に限定されない。また、接触部材は省略されてもよい。
【0025】
ハンド23は、吸着装置保持機構43(以下、保持機構43という)を有している。保持機構43は、吸着装置31を下降位置で揺動不能に固定するとともに、上昇位置で揺動可能に保持する。
図9及び図10を用いて、保持機構43を具体的に説明する。図9及び図10は、保持機構の模式図である。
保持機構43は、カム部材53とローラ55とを有している。カム部材53は、ハンドベース25の本体に固定されている。カム部材53は、ローラ55を支持するためくり抜き部54を有している。くり抜き部54は、吸着装置31側の側面下部において、上下方向に直線状に延びる係止面54aを有する。くり抜き部54は、さらに、吸着装置31側の側面において、係止面54aから連続すると共に、滑らかに湾曲する湾曲面54bを有している。湾曲面54bは、係止面54aから前後方向の後側に凹んでいる。くり抜き部54は、係止面54a及び湾曲面54bに対向する第2係止面54cを有している。第2係止面54cは上下方向に延びている。カム部材53は、例えば、ハンドベース25の吸着装置31寄りにおいて、幅方向の両外側の2箇所に配置されている。
【0026】
ローラ55は、吸着装置31の下部のカム部材53側に回動自在に設けられている。ローラ55の回動軸はハンド23の幅方向に平行である。ローラ55は、カム部材53の係止面54a、湾曲面54bの近傍で当接又は近接している。
吸着装置31は、上部のカム部材53側に回動中心となる支点31cを有している。支点31cの回動軸は、ハンド23の幅方向に平行である。支点31cは、例えばピンであり、ピンはハンドベース25のプレート(図示せず)に形成された上下方向に延びる長穴(図示せず)内を移動自在にガイドされている。
吸着装置31は、ストッパ(図示せず)によって、図9の状態から時計回りには回動できないようになっている。つまり、吸着装置31は、図9の状態から反時計回りにのみハンドベース25に対して回動自在になっている。
【0027】
図9に示すように吸着装置31が下方にある場合は、ローラ55がカム部材53の係止面53aに当接しており、そのため吸着装置31は反時計回りに回動不能になっている。
図10に示すように吸着装置31が上昇すると、ローラ55がカム部材53の湾曲面53bに摺動していき、それにより吸着装置31が荷物Wの姿勢に合わせてハンドベース25に対して傾くことができる。この状態で吸着装置31が時計回りに回動しようとすると、ローラ55が第2係止面54cに当接することで吸着装置31の回動を制限する。
以上のように、カム部材53を用いることで、吸着装置31の揺動のロックと解除を行うことを、吸着装置31の昇降動作によって切り替えられる。
【0028】
ピッキングシステム1は、図18に示すように、隙間センサ36を有している。隙間センサ36は、例えばハンド23に設けられ、後述の荷物デパレタイズ動作中に荷物Wの下方の隙間を検出する(後述)。具体的には、隙間センサ36は、レーザ距離センサであり、物体までの距離を測定できる。
ピッキングシステム1は、図1に示すように、荷物Wを撮像するカメラ38(撮像装置の一例)をさらに備えている。カメラ38は、例えば、パレットPに載置された複数の荷物Wを撮影する。カメラ38の撮像データは、荷物Wの位置や形状を識別するために用いられる。
さらに具体的には、図25に示すように、カメラ38は、パレットPに支持される荷物Wの第1水平方向(矢印X)を向いた第1面101と、第1水平方向に対して水平方向において直交する第2水平方向(矢印Y)を向いた第2面102と、天面103(天面の一例)とを撮像する。図25は、パレット上の荷物の画像処理範囲を示す模式図である。
なお、カメラの数、位置、種類等は特に限定されない。
【0029】
(3)ハンドの制御構成
図11を用いて、ハンド23の制御構成を説明する。図11は、ハンドの制御構成を示すブロック図である。
ハンド23は、コントローラ51を有している。
コントローラ51は、プロセッサ(例えば、CPU)と、記憶装置(例えば、ROM、RAM、HDD、SSDなど)と、各種インターフェース(例えば、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、通信インターフェースなど)を有するコンピュータシステムである。コントローラ51は、記憶部(記憶装置の記憶領域の一部又は全部に対応)に保存されたプログラムを実行することで、各種制御動作を行う。
【0030】
コントローラ51は、単一のプロセッサで構成されていてもよいが、各制御のために独立した複数のプロセッサから構成されていてもよい。
コントローラ51の各要素の機能は、一部又は全てが、コントローラ51を構成するコンピュータシステムにて実行可能なプログラムとして実現されてもよい。その他、コントローラ51の各要素の機能の一部は、カスタムICにより構成されていてもよい。
【0031】
コントローラ51は、旋回装置26、移載テーブル駆動装置29、吸引装置49、エアシリンダ35を制御する。
コントローラ51、ロボットアーム21のアーム駆動装置63も制御する。
コントローラ51には、隙間センサ36からの検出信号が送信される。
【0032】
コントローラ51には、カメラ38からの撮像データとしての画像信号が送信される。コントローラ51は、上記画像信号に基づいて、荷物Wの位置、形状、大きさ等を判断できる。
【0033】
コントローラ51は、画像処理部61を有している。画像処理部61は、画像処理範囲Q内での荷物Wの位置の把握を行う。画像処理範囲Qは、図25に示すように、カメラ38により撮像された撮像情報のうち、第1水平方向においてパレットPから(例えば、パレットPの第1水平方向縁)カメラ38側に第1所定距離離れた位置に設定される第1画像処理範囲設定面111と、第2水平方向においてパレットPから(例えば、パレットPの第2水平方向縁)カメラ38側に第2所定距離離れた位置に設定される第2画像処理範囲設定面112と、高さ方向においてパレットPから(例えば、パレットPの上面から)上方に第3所定距離離れた位置に設定される第3画像処理範囲設定面113と、で囲まれる。
第1画像処理範囲設定面111、第2画像処理範囲設定面112、及び第3画像処理範囲設定面113の各所定距離がカメラ38側とされているので、それぞれの場合において荷物Wの把握がしやすくなる。また、上記の所定距離をカメラ38側として、荷物Wの特定をカメラ38側の荷物Wから行う(つまり、カメラ38側の荷物が、優先的に特定される)ことで、最終的には全ての荷物Wを特定できる。
なお、上述のように、画像処理を行う処理範囲が画像処理範囲Qとして定められている。これは、画像処理計算量を減らすためである。画像処理範囲Qの領域は、パレットP及びパレットP上の荷物Wの領域に比べて、わずかに大きい。
【0034】
コントローラ51には、図示しないが、荷物Wの大きさ、形状及び位置を検出するセンサ、各装置の状態を検出するためのセンサ及びスイッチ、並びに情報入力装置が接続されている。
【0035】
(4)デパレタイズ動作
(4-1)基本動作
図12図21を用いて、段積みされた荷物Wのうち一又は複数を取り出す動作を(デパレタイズ動作)説明する。図12及び図13はデパレタイズ制御動作のフローチャートである。図14図21は、ハンドによるデパレタイズ動作の一状態を示す模式図である。
以下に説明する制御フローチャートは例示であって、各ステップは必要に応じて省略及び入れ替え可能である。また、複数のステップが同時に実行されたり、一部又は全てが重なって実行されたりしてもよい。
さらに、制御フローチャートの各ブロックは、単一の制御動作とは限らず、複数のブロックで表現される複数の制御動作に置き換えることができる。
なお、以下の制御動作は、コントローラ51が各装置に制御信号を送信することで行われる。
【0036】
図12のステップS1では、カメラ38からの画像信号に基づいて画像処理が行われ、対象の荷物Wの位置や形状が認識される。具体的には、コントローラ51の画像処理部が上記動作を実行する。
図12のステップS2では、図14に示すように、ロボットアーム21がハンド23を目的とする荷物Wに対応する位置(荷物Wの正面後側位置)に移動させる。このとき、移載テーブル27は水平状態である。
ステップS3では、図15に示すように、ロボットアーム21がハンド23を前進させる。
【0037】
ステップS4では、図15に示すように、吸着装置31を荷物Wの下基準で荷物Wの側面に当て、吸着する(吸着装置に荷物の側面を吸着させるステップの一例)。具体的には、吸着装置31が荷物Wに接触する直前に、吸引装置49によって吸引を開始し、ロボットアーム21がハンド23全体を移動することで吸着装置31を荷物W側に押し付ける。
ステップS5では、図16に示すように、ロボットアーム21がハンド23全体を後側に移動させる。このとき、吸着装置31がハンドベース25に対して上昇することで、荷物Wを持ち上げる。具体的には、エアシリンダ35が吸着装置31をハンドベース25に対して上昇させる。したがって、荷物Wは、吸着装置31で持ち上げられて、吸着装置31と共に傾いた状態になる。この結果、対象荷物Wが奥にある荷物Wに干渉しにくい。
上記のように、吸着装置31は上昇位置で保持機構43によって揺動可能になるので、吸着装置31に大きな負荷が作用しない。
【0038】
ステップS6では、図17に示すように、ロボットアーム21がハンド23の姿勢を傾ける。これにより、移載テーブル27は、前側端が後側端に対して下側になる傾斜姿勢となる。
ステップS7では、図18に示すように、荷物Wの上昇後に隙間センサ36によって隙間検出を行う。具体的には、隙間センサ36からレーザ光が発射され、その先にある物体までの距離が測定される。なお、レーザ光は荷物Wの下方に出射される。
ステップS8では、対象荷物Wとその下側の荷物Wとの間に移載テーブル27を入れるスペースができているか否かが判断される。スペースがあればプロセスはステップS9に移行し、スペースがなければプロセスはステップS13に移行する。ステップS13の後は、プロセスはステップS1に戻る。
【0039】
ステップS9では、図19に示すように、移載テーブル駆動装置29が傾斜姿勢の移載テーブル27を前方に移動させ、荷物Wの下にある隙間に差し込む。移載テーブル27はさらに前進することで、荷物Wの底面に少し接触する。上記の動作中に、ロボットアーム21がハンドベース25を吸着位置から移載テーブル27の傾斜方向に沿って後側へ移動させる(このとき、移載テーブル27の前後方向位置は変わらない)。それにより、吸着装置31及び荷物Wが移載テーブル27の上に引き込まれる。なお、移載テーブル27の差し込み量は、荷物の大きさによって適宜変更される。
上記の動作中においてハンドベース25が吸着位置から上側に移動させられているので、移載テーブル27とハンドベース25が完全同期していなくても、移載テーブル27が下側の荷物Wを引っかけにくい。
上記動作では、ハンドベースの25の移動傾斜角度は、傾斜姿勢の支持板の傾斜角度より大きくしてもよい。その場合は、上記効果がさらに高くなる。
【0040】
ステップS10では、図20に示すように、上下駆動装置33が吸着装置31を下方に下げる。具体的には、ピストン35aが下降していく。そして、エアシリンダ35のピストン35aが吸着装置31から下方に離れると、吸着装置31も荷物Wと共に下降していく。このとき、吸着装置31及び荷物Wの自重に加えてバネ部材37の付勢力によって、吸着装置31は確実に下降する。以上の結果、荷物Wが移載テーブル27の上に載る。
また、吸着装置31は保持機構43によって下降位置で揺動不能になるので、荷物Wを安定的に保持できる。その結果、荷物Wが移載テーブル27に安定的に載置され、その後も安定的に搬送される。
【0041】
ステップS11では、図21に示すように、ロボットアーム21がハンド23を水平姿勢にする。これにより、移載テーブル27も水平姿勢になる。このようにして、荷物Wが移載テーブル27に安定的に載置され、その後も安定的に搬送される。
ステップS12では、ロボットアーム21が荷物Wを搬出コンベヤ装置9に搬出する。その後、プロセスはステップS1に戻る。
【0042】
(4-2)吸着動作の詳細説明
図12のステップS2では、前述のように、ロボットアーム21がハンド23を目的とする荷物Wに対応する位置に移動させる。具体的には、図14に示すように、吸着装置31は、画像処理部61により把握された荷物Wに対して、第1画像処理範囲設定面111の外側で荷物Wの正面後側に配置される。次にハンド23は、図15に示すように、第1画像処理範囲設定面111を通過して当該荷物Wに対して吸着装置31が当接させられ、その後吸着させられる。以上の動作は、コントローラ51がピッキングロボット15のアーム駆動装置63を制御することで実行される。
このようにハンド23を画像処理範囲Qの外側に位置させ、前進のみで荷物Wに対する吸着位置に位置させることができる。このように、画像処理範囲Q外の移動でハンド23を荷物W1の正面に位置させるので、画像処理を行わなくてもハンド23を特定の位置に移動させることができる。この場合、第1画像処理範囲設定面111側の荷物Wを吸着対象荷物W1として特定しているので、ハンド23第1画像処理範囲設定面111を通過させる際にも追加で画像処理計算をしなくてもよく、ロボットアーム21の軌道計算も抑えられる。
また、特定対象は第1画像処理範囲設定面111側の荷物Wであるので、特定した荷物W1とハンド23との間には障害物等がない。したがって、ハンド23を前進移動させる際に、他の荷物Wや装置との干渉を考慮しなくてよい。
【0043】
(4-3)荷物戻し動作
ステップS12では、荷物戻し動作が行われる。図13図22図24を用いて、荷物戻し動作を詳細に説明する。図22図24は、ハンドによる荷物戻し動作の一状態を示す模式図である。荷物戻し動作とは、移載に失敗した荷物をリトライのために元の位置に戻すものである。
図13のステップS21では、ロボットアーム21がハンド23全体を水平姿勢に戻す。これにより、図22に示すように、移載テーブル27も水平姿勢になる。
ステップS22では、図23に示すように、ロボットアーム21がハンドベース25を前進することで、荷物Wを前側に移動する。このときのハンドベース25の移動量は、ステップS5でのハンドベース25の後退の移動量と同じ又はそれとわずかに異なることが好ましい。なお、ハンドベースの25の移動量は、ハンドベース25の後退の移動量より少し大きくなることがより好ましい。これは、荷物Wを画像処理範囲Q(後述)より前側に移動させる必要があるからである。
【0044】
ステップS23では、図24に示すように、上下駆動装置33が吸着装置31を下降させる。
ステップS24では、吸引装置49が吸着装置31の吸着を解除する。
ステップS25では、ロボットアーム21がハンド23を後側に移動する。
【0045】
以上の結果、荷物Wが元の位置に戻る。荷物Wは、前側の荷物Wと当接してもよいし、離れていてもよい。
以上から明らかなように、荷物Wを元の位置に戻すステップでは、上下駆動装置33に吸着装置31を下降させつつ、ハンドベース25を前側に移動させる。したがって、吸着に伴い荷物Wが後側に移動していても、荷物Wを元の位置に戻すことができる。
このハンド23では、干渉がある場合に荷物Wを元の位置に戻すことで、ピッキング不可の場所に荷物Wを載置することが生じにくい。この結果、荷物移載のリトライを確実に行えるようになる。
【0046】
ここで、「元の位置」の一例は、図24の画像処理範囲Q内に荷物Wの吸着面である後側の側面が位置する位置であることが好ましい。例えば、本実施形態とは異なり、ステップS22(図13)の動作を行わなかった場合は、荷物Wの位置は元の位置より後側にずれた位置になり、荷物Wの後側の側面が画像処理範囲Qから外に出ていることがある。その場合は、コントローラ51による画像処理が適切に行われず、そのため、画像認識によるロボットアーム21のデパレタイズのリトライ動作が実行不可能になることがあった。また、画像処理範囲Q内に荷物Wの吸着面が存在するときにロボットアーム21の移動の安全が確保されるように設計されている場合、荷物Wの後側の側面が画像処理範囲Qから外に出ていると、ロボットアーム21が動作時に他の装置等に衝突する可能性が出てくる。
なお、画像処理範囲Qは、ハンド23が画像処理範囲Q内にある荷物Wにアクセスする場合は、ロボットアーム21とロボット架台が干渉しないように設定されていてもよい。また、画像処理範囲Qは、上記の場合に、ロボットアーム21が通過してはいけない箇所(他の装置と干渉する位置)や、ロボットアーム21の構成から通過できない箇所を基に定められている。
なお、上記例では、コントローラ51が画像処理可能な範囲はカメラ視野範囲と一致しているが、上記範囲はカメラ視野範囲より狭くてもよい。
このハンド23では、荷物Wを元の位置に戻すステップの前に、図21に示すように、ハンドベース25を移動させることで、移載テーブル27を水平姿勢に戻している。したがって、荷物Wを元の位置に確実に戻すことができる。
【0047】
2.第2実施形態
第1実施形態では、荷物を吸着した後にハンド23は荷物Wの第2水平方向位置を変更することなく搬送していたが、第2画像処理範囲設定面112に面する荷物W(つまり、第2水平方向に移動スペースがある荷物)の場合は第2水平方向位置を変更してもよい。
図26図28を用いて、そのような実施例を、第2実施形態として説明する。図26図28は、第2実施形態のハンドによるデパレタイズ動作の一状態を示す模式的平面図ある。なお、基本的な構成及び動作は第1実施形態と同じであるので、以下は異なる点を中心に説明する。
【0048】
最初に、図26に示すように、ハンド23は、第2画像処理範囲設定面112に面する荷物Wを吸着対象として所定位置に配置される。荷物Wのうち色が濃いものは、白いもの上に載っている。つまり、濃い色の荷物Wは最上段の荷物である。
なお、吸着対象の荷物W1は最上段の荷物であり、それの第2水平方向の片側(図26の下側)には、最上段の荷物は載置されていない。
【0049】
次に、図27に示すように、ハンド23は前進して対象の荷物W1に当接する。その後、ハンド23は荷物W1を吸着する。
次に、図28に示すように、ハンド23は、当該荷物W1を第2画像処理範囲設定面112側に移動させる。
なお、この実施形態では、第2画像処理範囲設定面112に面する荷物Wから順に、吸着対象の荷物Wを特定している。したがって、当該荷物W1の第2画像処理範囲設定面112側に同じ高さ位置の他の荷物Wが存在しない。
【0050】
その後、ハンド23は、吸着した荷物W1を上昇させる。
以上の動作は、コントローラ51がロボットアーム21を制御することで行われる。
以上に述べたように、この実施形態では、第2画像処理範囲設定面112に面する荷物W1を持ち上げる前に、荷物Wを第2画像処理範囲設定面112側に移動させる。したがって、荷物W1の第2画像処理範囲設定面112と反対側に位置する隣の荷物Wが第2画像処理範囲設定面112側に傾いている場合でも、荷物W1はその荷物Wから離れた後に上昇させられるので、荷物同士の干渉を防止できる。
上記とは異なり荷物Wを第2画像処理範囲設定面112側に移動させなければ、隣の荷物Wが第2画像処理範囲設定面112側に傾いている場合には、荷物W1が隣の荷物Wと干渉するおそれがあった。しかし、本実施形態では、隣の荷物Wが傾いている場合であっても、荷物W1を離れさせてから上昇させることによって、隣の荷物Wとの干渉を防ぐことができる。
また、荷物W1を第2画像処理範囲設定面112側に移動させる動作を必ずさせることで、隣の荷物Wの傾きの有無や傾きの方向を画像処理による識別をしなくてもよくなる。
【0051】
なお、第2実施形態は第1実施形態と組合せ可能である。その場合、例えば、第1実施形態の図14に示すように、吸着装置31は、画像処理部61により把握された荷物Wに対して、第1画像処理範囲設定面111の外側に配置される。次にハンド23は、図15に示すように、第1画像処理範囲設定面111を通過して当該荷物Wに対して吸着装置31が当接させられ、その後吸着させられる。
そして、図28に示すように、ハンド23は、当該荷物W1を第2画像処理範囲設定面112側に移動させ、その後、吸着した荷物W1を上昇させる。
【0052】
3.第3実施形態
第1実施形態及び第2実施形態では、ハンドによって荷物を吸着した後の移動経路を特に限定していなかったが、それに制限を設定することで安全性を向上することができる。
図29図31を用いて、そのような実施例を第3実施形態として説明する。図29図31は、第3実施形態におけるハンドによるデパレタイズ動作の一状態を示す模式図である。なお、基本的な構成及び動作は第1実施形態と同じであるので、以下は異なる点を中心に説明する。
【0053】
最初に、図29に示すように、ハンド23は荷物Wを吸着する。
次に、図30に示すように、ハンド23は、吸着した荷物Wを第3画像処理範囲設定面113より上に上昇させる。
【0054】
次に、図31に示すように、ハンド23は、当該荷物Wを第3画像処理範囲設定面113の外側を移動させる。具体的には、図31に示すように、ハンド23は、荷物W1を第3画像処理範囲設定面113の上方に移動させる。その後は、ハンド23は、荷物W1を水平移動(水平方向移動、斜め方向移動を含む)させる。このように第3画像処理範囲設定面113より上方にいったん移動させてから、荷物W1を水平移動させるので、他の荷物Wの位置を特定しなくてもよい。
なお、以上の動作は、コントローラ51がロボットアーム21を制御することで行われる。
以上に述べたように、この実施形態では、荷物Wを第3画像処理範囲設定面113の上方を移動させる。したがって、吸着した荷物WとパレットPに支持された荷物Wとの干渉を防止できる。
【0055】
第3実施形態は、第1実施形態及び第2実施形態のいずれとも組合せ可能である。
第1実施形態と第3実施形態の組み合わせの場合は、例えば、第1実施形態の図14に示すように、吸着装置31は、画像処理部61により把握された荷物Wに対して、第1画像処理範囲設定面111の外側に配置される。次にハンド23は、図15に示すように、第1画像処理範囲設定面111を通過して当該荷物Wに対して吸着装置31が当接させられ、その後吸着させられる。
そして、図30に示すように、ハンド23は、吸着した荷物Wを第3画像処理範囲設定面113より上に上昇させ、さらに、当該荷物Wを第3画像処理範囲設定面113の外側を移動させる。
【0056】
第2実施形態と第3実施形態の組み合わせの場合は、例えば、図28に示すように、ハンド23は、当該荷物W1を第2画像処理範囲設定面112側に移動させる。
そして、図30に示すように、ハンド23は、吸着した荷物Wを第3画像処理範囲設定面113より上に上昇させ、さらに、当該荷物Wを第3画像処理範囲設定面113の外側を移動させる。
【0057】
4.第4実施形態
第1~第3実施形態ではハンドが吸着前の所定位置に移動するまでの範囲を特に限定していなかったが、それを限定することでコントローラの計算量を低減してもよい。
図32図33を用いて、第4実施形態を説明する。図29図30は、第4実施形態におけるハンドによるデパレタイズ動作の一状態を示す模式図である。なお、基本的な構成及び動作は第1実施形態及び第3実施形態と同じであるので、以下は異なる点を中心に説明する。
【0058】
最初に、図32に示すように、ハンド23は、画像処理範囲Qの外側において所定位置に配置されている。
次に、図33に示すように、ハンド23は、画像処理範囲Qの外側において、現在位置から目的位置(吸着直前位置)まで最短距離で移動する。
本実施形態の他の例として、ハンド23が単に最短距離で移動させようとすると画像処理範囲Qを通過する場合には、ハンド23は、画像処理範囲Qを迂回して最短距離を移動する。
以上に述べたように、この実施形態では、画像処理範囲Qの外側では、障害物検知を行わずに、つまりあらかじめ設定された又は任意に設定された移動経路を通って、ハンド23を移動できる。したがって、コントローラ51の計算量を軽減できる。
【0059】
第4実施形態は、第1~第3実施形態のいずれとも組合せ可能である。
第1実施形態と第4実施形態の組み合わせの場合は、例えば、図33に示すように、ハンド23は、画像処理範囲Qの外側において、現在位置から目的位置(吸着直前位置)まで最短距離で移動する。
このとき、第1実施形態の図14に示すように、吸着装置31は、画像処理部61により把握された荷物Wに対して、第1画像処理範囲設定面111の外側に配置される。次にハンド23は、図15に示すように、第1画像処理範囲設定面111を通過して当該荷物Wに対して吸着装置31が当接させられ、その後吸着させられる。
なお、その他の実施形態の組み合わせ例は説明を省略する。
【0060】
5.実施形態の共通事項
上記第1~第4実施形態は、下記の構成及び機能を共通に有している。
本発明の一見地に係る移載装置(例えば、ピッキングシステム1)は、ロボットアームと、撮像装置と、画像処理部と、コントローラとを備えている。
ロボットアーム(例えば、ロボットアーム21)は、吸着装置(例えば、ハンド23)を有し、支持部(例えば、パレットP)に支持される荷物(例えば、荷物W)をデパレタイズする。
撮像装置(例えば、カメラ38)は、支持部に支持される荷物の第1水平方向を向いた第1面(例えば、第1面101)と、第1水平方向に対して水平方向において直交する第2水平方向を向いた第2面(例えば、第2面102)と、天面(例えば、天面103)とを撮像する。
画像処理部(例えば、画像処理部61)は、画像処理範囲内での荷物の位置の把握を行う。画像処理範囲(例えば、画像処理範囲Q)は、撮像装置により撮像された撮像情報のうち、第1水平方向において支持部から撮像装置側に第1所定距離離れた位置に設定される第1画像処理範囲設定面と、第2水平方向において支持部から撮像装置側に第2所定距離離れた位置に設定される第2画像処理範囲設定面と、高さ方向において支持部から上方に第3所定距離離れた位置に設定される第3画像処理範囲設定面と、で囲まれる。
コントローラ(例えば、コントローラ51)は、画像処理部により把握された荷物に対して、第1画像処理範囲設定面の外側に吸着装置を位置させ、次に第1画像処理範囲設定面に面する荷物を吸着対象の荷物として特定し、次に第1画像処理範囲設定面を通過して当該荷物に対して吸着装置を吸着させるようにロボットアームを制御する。
この装置では、吸着装置を、画像処理を行う画像処理範囲の外側に位置させ(例えば、図14)、前進のみで荷物に対する吸着位置に位置させることができる(例えば、図15)。このため、画像処理範囲内にロボットアームを移動させるときに、他の荷物や装置との干渉を考慮しなくてよい。
【0061】
6.実施形態の効果の一例
本実施形態では、一回のピッキングに対して最初に荷物Wの特定のために撮像及び画像処理が行われ、それ以降は撮像及び画像処理が行われない。そして、ピッキングロボット15が設置されているエリアはロボット専用であって、障害物情報がピッキングロボット15に前もって登録されている。そのため、荷物をピックする前に撮像した情報のみに基づいて、ピッキングロボット15は、ピックからプレースまでの一連の動作を行うことができる。
ピッキングロボット15のロボットアーム21の軌道計算も、特定された荷物W1に対して決まった動作をすることで、計算処理を抑えている。
また、ハンド23が画像処理範囲Qの外側において現在位置から目的位置まで最短距離で移動する場合も、画像処理範囲Qを除いた外側の領域を通るようにしており、現在位置から目的位置までを画像処理なしでロボットアーム21の軌道計算を行い、それにしたがって移動させる。
以上のように本実施形態では、最初に荷物特定のために画像処理が行われるが、それ以降は画像処理が行われない。
【0062】
従来のピッキングロボットは、吸着前に画像処理により荷物の位置を特定し、他の荷物や障害物を考慮しながら、アームの軌道計算が行われる。そのため、ロボットが動作するエリア全体を撮像及び監視するシステムが必要になる。さらに従来では、荷物を吸着後も画像処理が再度行われ、他の荷物や障害物を考慮しながら、搬送先までのアームの軌道計算が行われる。つまり、従来であれば複数回の画像処理、軌道計算、全体の撮像・監視システムが必要になる。
【0063】
7.他の実施形態
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
第1~第4実施形態では荷物の側面を吸着するハンドが説明されたが、荷物の上面を吸着するハンドでもよい。
移載装置の具体的な構造、動作、制御方法は特に限定されない。
第1実施形態では隙間検出の前にロボットアーム21がハンド23の姿勢を傾けて移載テーブル27を傾斜姿勢にしていたが、移載テーブル27は水平姿勢を維持されたままでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、段積みされた物品から一又は複数の物品を取り出すための移載装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0065】
1 :ピッキングシステム
3 :パレタイズ部
5 :デパレタイズ部
7 :搬入コンベヤ装置
9 :搬出コンベヤ装置
15 :ピッキングロボット
21 :ロボットアーム
23 :ハンド
25 :ハンドベース
26 :旋回装置
27 :移載テーブル
29 :移載テーブル駆動装置
30 :モータ
31 :吸着装置
31a :吸着パッド
31b :受け部
31c :支点
33 :上下駆動装置
35 :エアシリンダ
35a :ピストン
36 :隙間センサ
37 :バネ部材
38 :カメラ
39 :接触部材
43 :吸着装置保持機構
47 :スライドベルト
49 :吸引装置
51 :コントローラ
53 :カム部材
53a :係止面
53b :湾曲面
54 :くり抜き部
54a :係止面
54b :湾曲面
54c :第2係止面
55 :ローラ
61 :画像処理部
63 :アーム駆動装置
101 :第1面
102 :第2面
103 :天面
111 :第1画像処理範囲設定面
112 :第2画像処理範囲設定面
113 :第3画像処理範囲設定面
P :パレット
Q :画像処理範囲
W :荷物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33