(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】納豆様食品
(51)【国際特許分類】
A23J 3/16 20060101AFI20240110BHJP
A23L 11/50 20210101ALI20240110BHJP
A23L 33/16 20160101ALI20240110BHJP
A23L 33/21 20160101ALI20240110BHJP
【FI】
A23J3/16 501
A23L11/50 209Z
A23L33/16
A23L33/21
(21)【出願番号】P 2019230555
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野々山 悠花
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友則
(72)【発明者】
【氏名】米元 博子
【審査官】川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-082927(JP,A)
【文献】特開昭62-244363(JP,A)
【文献】特開2006-129703(JP,A)
【文献】特開昭50-160452(JP,A)
【文献】特開2011-182676(JP,A)
【文献】特開2013-009617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23J 1/00- 7/00
A23L 11/00-11/70
A23L 31/00-33/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織状大豆たん白組成物を含む納豆様食品。ただし、組織状大豆たん白組成物は、乾燥重量あたりの蛋白質含有量が50重量%以上であって、かつ下記(a)及び/又は(b)の条件を満たす。
(a)
硫酸カルシウムを0.01~5重量%含有する
(b)たん白質含量/食物繊維含量比が重量基準で4以上である
【請求項2】
組織状大豆たん白組成物がさらに以下(c)の条件を満たす請求項1に記載の納豆様食品。
(c)オート麦ファイバーを5~45重量%含有する
【請求項3】
納豆菌接種前に、水分含量40~80重量%である組織状大豆たん白組成物を、100℃~140℃、1分以上加熱する工程を含む、請求項1又は2に記載の納豆様食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織状大豆たん白組成物を原料とした納豆様食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
納豆は、日常的に食される食品であり、その風味だけでなく、粒状の食感が重要なものとされる。納豆は、一般的に、原料大豆に洗浄、浸漬、加圧蒸煮を施して得られた蒸煮大豆に、納豆菌を接種し発酵させることで製造される。納豆の原料には通常丸大豆やひきわり大豆が用いられるが、大豆の洗浄工程が必要であること、さらに、大豆を長時間浸漬する必要があり、製造に時間がかかる等の問題点がある。よって、丸大豆又はひきわり大豆を使用しない、大豆たん白系素材を用いた納豆様食品の開発がなされてきた。大豆たん白系素材の代表例として、組織状大豆たん白組成物が挙げられる。
【0003】
組織状大豆たん白組成物を原料とした納豆様食品の製造方法に関連する出願としては、例えば特許文献1が存在する。ここでは、丸大豆或いは脱脂大豆より得られる熱変性を受けた粉末状或いは組織状大豆蛋白組成物を温水を用いて湯戻しする際或いは湯戻しした後、納豆菌を接種し、発酵せしめることによる納豆の製造方法に関して記載されている。
また、特許文献2には、組織状大豆たん白を30℃以下の水で水戻しする際、または水もどしした後に、必要に応じてアミノ酸、グルタミン酸ソーダ、核酸類または糖類を添加し、納豆菌を接種して発酵させる、納豆の製造方法に関して記載されている。特許文献3には、大豆蛋白を主成分とし、糖質を5~40重量%および水分を50~80重量%含有する原料を二軸エクストルーダーで処理して蒸煮し、得られた蒸煮済原料に納豆菌を接種して発酵させる、納豆様食品の製造方法に関して記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭50-160452号公報
【文献】特開昭61-242554号公報
【文献】特開昭62-244363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、丸大豆又はひきわり大豆不使用であっても、丸大豆或いはひきわり大豆を原料とした納豆と遜色ない食感を有する、組織状大豆たん白組成物を用いた納豆様食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従来から、組織状大豆たん白組成物を用いた納豆様食品に関する技術は知られていた(特許文献1~3)。しかしながら、昨今、無数の組織状大豆たん白組成物が存在しているが、出願人が複数の組織状大豆たん白組成物を使用して検討したところ、出来上がった納豆様食品が、必ずしも良好な粒状の食感を有するとは限らないことが明らかとなった。
【0007】
そこで、本発明において、丸大豆又はひきわり大豆不使用であっても、丸大豆或いはひきわり大豆を原料とした納豆と遜色ない食感を有する、組織状大豆たん白組成物を用いた納豆様食品について、鋭意検討を行った。そうした中、数多く存在する組織状大豆たん白組成物の中から、納豆様食品に最適な組織状大豆たん白組成物を見出すことができ、意外なことに、特定の組成を有する組織状大豆たん白組成物を用いることで、従来にないような、丸大豆或いはひきわり大豆を原料とした納豆と遜色ない食感を有する、組織状大豆たん白組成物を用いた納豆様食品を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち本発明は、
(1)組織状大豆たん白組成物を含む納豆様食品、ただし、組織状大豆たん白組成物は、乾燥重量あたりの蛋白質含有量が50重量%以上であって、かつ下記(a)及び/又は(b)の条件を満たす、
(a)2価金属を0.01~5重量%含有する、
(b)たん白質含量/食物繊維含量比が重量基準で4以上である、
(2)組織状大豆たん白組成物がさらに以下(c)の条件を満たす(1)に記載の納豆様食品、
(c)オート麦ファイバーを5~45重量%含有する
(3)納豆菌接種前に、水分含量40~80重量%である組織状大豆たん白組成物を、100℃~140℃、1分以上加熱する工程を含む、(1)又は(2)に記載の納豆様食品の製造方法、
に関するものである。
【0009】
なお、特許文献1では、「加熱変性を受けた粉末状或は組織状大豆蛋白組成物を用いて納豆を製造する方法」に関して記載されているが、使用した組織状大豆たん白組成物の組成については開示がなく、また、最終の納豆の食感については開示されていない。特許文献2では、脱脂大豆或いは脱脂大豆粉を原料とした組織状大豆蛋白を原料とした納豆の製造方法に関して記載されているが、使用した組織状大豆たん白組成物の組成については開示がなく、また、脱脂大豆を原料とした組織状大豆蛋白で得られる納豆様食品は、必ずしも丸大豆又はひきわり大豆使用の納豆と遜色ない粒状の食感となるわけではない。
また、特許文献3では、使用した組織状大豆たん白組成物は、「大豆蛋白を主成分とし、糖質を5~40重量%および水分を50~80重量%含有する原料を二軸エクストルーダーで処理」した旨記載があるが、本発明のような、2価金属の含有が必要である旨や、たん白質含量/食物繊維含量比などの、納豆様食品に適した組織状大豆たん白組成物の条件の開示はなく、本発明を完成させる上で引用文献3は参考とはならなかった。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、丸大豆又はひきわり大豆不使用であっても、丸大豆或いはひきわり大豆を原料とした納豆と遜色ない食感を有する納豆様食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(納豆様食品)
一般に、納豆は、丸大豆やひき割大豆をそのままの形状で蒸煮し、納豆菌を接種した後、発酵させたものである。本発明において納豆様食品とは、組織状大豆たん白組成物に納豆菌を接種し、発酵させて得られるものであり、納豆と遜色ない粒状の食感を得ることができる、大豆蛋白発酵食品のことを意味する。
【0012】
(組織状大豆たん白組成物)
本発明における組織状大豆たん白組成物は、大豆たん白質原料を主な原料とし、エクストルーダーのような押出し成型機により調製されるものである。使用する押出し成型機は限定されないが、2軸エクストルーダーを使用することで、より安定的に製造することができ、望ましい。なお、エクストルーダーによる製造条件は、適宜設定することができる。すなわち、求める膨化度とするために、シリンダーの回転数や温度、水の量を適宜調整することで、設定することが可能である。
使用する大豆たん白質原料としては脱脂大豆、分離大豆たん白、濃縮大豆たん白、脱脂豆乳粉末、含脂豆乳粉末、大豆粉を挙げることができ、より望ましくは脱脂大豆、分離大豆たん白であり、さらに望ましくは脱脂大豆である。これら大豆たん白質原料から、1以上を適宜選択して用いることができる。
【0013】
本発明で用いる組織状大豆たん白組成物は、たん白質含有率が、乾燥重量あたり50重量%以上である必要がある。好ましくは52重量%以上、53重量%以上、54重量%以上、又は55重量%以上などとすることができる。また、上限としては、85重量%以下、83重量%以下、80重量%以下、78重量%以下又は76重量%以下などとすることができる。所定の蛋白質含有率であることで、丸大豆又はひきわり大豆不使用であっても、良好な食感を有する、組織状大豆たん白組成物を用いた納豆様食品を得ることができる。
【0014】
また、本発明で使用する組織状大豆たん白組成物は、下記(a)及び/又は(b)を満たすことが必要である。
(a)2価金属を0.01~5重量%含有する
(b)たん白質含量/食物繊維含量比が重量基準で4以上である
【0015】
(2価金属)
本発明においては、組織状大豆たん白組成物中に、2価金属塩を原料として含有させることで、より良好な食感を示す納豆様食品を得ることができる。ここで2価金属塩としては、カルシウム塩、マグネシウム塩を挙げることができ、風味の点ではカルシウム塩を使用することが望ましい。
カルシウム塩としては、硫酸カルシウム、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウムを挙げることができ、より望ましくは、硫酸カルシウム、乳酸カルシウム、塩化カルシウムであり、さらに望ましくは硫酸カルシウムである。
マグネシウム塩としては、塩化マグネシウムを挙げることができる。なお、カルシウム塩を2種以上併用したり、また1種以上のカルシウム塩とマグネシウム塩を併用することも妨げない。
より好ましいとされる2価金属塩を組織状大豆たん白組成物に使用することで、良好な粒状の食感を有する納豆様食品を得ることができる。
【0016】
2価金属塩の組織状大豆たん白組成物中の量は、原料として別添で配合する量が、2価金属として0.01~5重量%相当の塩が必要であり、より好ましくは0.1~4重量%相当量の塩であり、さらに好ましくは0.15~3重量%の塩である。
2価金属塩の量を好ましい量とすることで、2価金属塩に由来する異味を感じることもなく、好ましい風味及び食感の納豆様食品を得ることができる。
【0017】
(たん白質含量/食物繊維含量比)
本発明で使用する組織状大豆たん白組成物は、たん白質含量/食物繊維含量比が重量基準で下限が4以上であり、より好ましくは、4.1以上、4.2以上又は4.5以上であることが好ましい。また上限は、20以下、18以下、17以下又は15以下であることが好ましい。
【0018】
(オート麦ファイバー)
また本発明においては、組織状大豆たん白組成物中に、オート麦ファイバーを含有させることが好ましい。本発明でいうオート麦は、別名オーツ麦、カラスムギないしエンバクと呼ばれるものである。本発明でいうオート麦ファイバーとは、いわゆるオート麦のフスマ部分、すなわちオート麦の外皮部分から、水溶性繊維等の水溶性成分を除去した、不溶性の繊維部分のことである。本発明におけるオート麦ファイバーは、組織状大豆たん白組成物中、乾燥重量あたり5~45重量%含有していることが好ましく、この量は、より好ましくは7.5~40重量%であり、さらに好ましくは10~35重量%であり、最も好ましくは12.5~30重量%である。
【0019】
また、組織状大豆たん白組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、他の原料を添加することができる。具体的には、油脂、でん粉、重曹、有機酸、糖類、カラメル、風味材、アミノ酸、核酸、香料、金属(2価金属を除く)、pH調整剤、グルテン、卵白、カゼイン等のその他の蛋白、その他の公知の添加物等を添加することができる。
【0020】
以下に、本発明に係る納豆様食品の製造方法について記載する。
【0021】
(納豆様食品の製造態様例)
本発明では、好ましい態様として、所定範囲の水分含量を有する組織状大豆たん白組成物を加熱し、その後、納豆菌を接種し、発酵することで、丸大豆又はひきわり大豆不使用であっても、丸大豆やひきわり大豆を用いた一般的な納豆と遜色ない良好な粒状の食感を有する納豆様食品を得ることができるものである。
【0022】
(組織状大豆たん白組成物の水分含量)
用いる組織状大豆たん白組成物は、水分含量が40~80重量%であるものを使用することが好ましい。より好ましくは45~78.5重量%であり、さらに好ましくは50~77重量%の水分含量を有する組織状大豆たん白組成物を用いることが好ましい。これは、前記範囲の水分含量を有する湿潤状態の組織状大豆たん白組成物を使用してもよく、または、乾燥状態の組織状大豆たん白組成物に加水し、前記範囲の水分含量にしたものを使用することもできる。水分含量が適当な範囲であることで、粒状の食感が良好である納豆様食品を得ることができる。
【0023】
(加熱条件)
本発明では、前記の所定範囲の水分含量を有する組織状大豆たん白組成物を、納豆菌を接種する前に、100℃~140℃の温度帯で1分以上加熱することが好ましい。温度条件は、より好ましくは、下限は105℃以上、110℃以上、115℃以上又は120℃以上などとすることができ、更に上限は、135℃以下、又は130℃以下などとすることができる。加熱時間は、2分以上であることがより好ましく、更に好ましくは5分以上である。
加熱の際には、組織状大豆たん白組成物の水分含量が前記の所定範囲から変わらないよう、袋又は容器に該組織状大豆たん白組成物を入れ、密封した状態で加熱することが望ましい。なお、加熱には、コンベクションオーブン、鍋、加圧加熱容器(レトルト殺菌装置、圧力釜等)等、いずれも使用することが可能である。
【0024】
(納豆菌)
前記の所定範囲の水分含量を有する組織状大豆たん白組成物を加熱後、納豆菌を接種する。本発明で用いる納豆菌は、日本で納豆の生産に一般的に使用される菌をいずれも使用することができる。ここで納豆菌は、枯草菌バチルス・サチリス(Bacillus subtilis)の変種(B. subtilis var.natto、B. subtilis(natto))として、又は、枯草菌の近縁種バチルス・ナットウ(B. natto)として、分類されている細菌である。代表例としてはバチルス サブチルス バリエイタス ナットー(Bacillus subtilis var. natto)であるが、大豆を発酵した際に納豆の風味を醸す菌であれば、本発明に使用することができる。また、市販の納豆を用い、納豆の粒を原料中に混合することで、納豆菌を接種することもできる。
【0025】
(発酵)
納豆菌を接種した後、発酵する。納豆様食品の発酵は、実質的に37~53℃である通常の納豆発酵温度帯に維持することで行うことが可能であり、好ましくは40~50℃の温度帯で行うことが好ましい。また、発酵温度帯に維持する所定時間(発酵時間)としては、特に制限はないが、10~24時間、好ましくは14~20時間を挙げることができる。
【0026】
以下に本発明の実施例を記載する。本発明は、実施例によって限定されるものではない。なお、以下「%」は特に断りのない限り「重量%」を、「部」は特に断りのない限り「重量部」を意味する。
【実施例】
【0027】
表1に記載の配合により、各種の原料を用い、後述の調製法に従い組織状大豆たん白組成物を調製した。
得られた各種組織状大豆たん白組成物は、以下に記載する「納豆様食品の調製1」に従い納豆様食品を調製し、その後「納豆様食品の官能評価法」に従い評価した。評価結果を表1に記載した。
【0028】
(組織状大豆たん白組成物の調製法)
1. 表1の配合の原料組成に従い、原材料を粉体混合した。
2. 幸和工業株式会社製二軸エクストルーダーを用いて組織化した。水の添加量はダイから押し出される組織化物が膨化するようにバルブを調整し、原料中の水分を約20~60重量%の間で調整した。
スクリュー回転数は200rpmとした。
先端バレル温度は160~180℃であった。先端バレルの圧力は5~50kg/cm2の間で変化させた。
3. 得られた膨化物は、長さ5~10mm程度となるようダイス出口直後にカッターで切断したものを、乾燥機(タバイ株式会社製ESPEC PV-221乾燥機)にて水分7%程度となるように乾燥したものを組織状大豆たん白組成物とした。
【0029】
検討1 納豆様食品の調製1(組織状大豆たん白組成物の配合条件検討)
表1に示した各種組織状大豆たん白組成物20gに25℃の水40gを加えて水戻しを行った。水戻し後の各種組織状大豆たん白組成物を袋に入れ、密封し、レトルト装置(日阪製作所社製、「RCS-4CRTGN」)を用いて121℃、20分間の条件で加熱した。加熱後の各種組織状大豆たん白組成物に、宮城野納豆製作所の宮城野納豆菌を25℃の水で4倍希釈し、上記組織状大豆たん白の水戻し品60gに0.6gずつ接種し、薬さじで混合した。この混合物を恒温装置を用いて40℃で16時間発酵させ、納豆様食品を得た。このとき、納豆菌を接種する前の各種組織状大豆たん白組成物の水分含量は、各種組織状大豆たん白組成物に加水した分も含めた水分含量として、組成物A~Fの全てにおいて69重量%であった。
【0030】
(納豆様食品の官能評価法)
実施例及び比較例の納豆様食品について、丸大豆を原料とした市販の納豆と比較し、粒状の食感を官能評価で評価した。官能評価は、パネラー10名にて盲検にて試食を行い、以下の基準に従って評価した。
なお、本評価におけるパネラーは、従前から食品の研究に従事し、熟練したパネラー10名であった。
粒状の食感:納豆様食品を食した際、丸大豆の納豆と遜色なく、やわらかすぎず、粒状の食感が感じられる場合を良好な食感として評価した。
【0031】
<粒状の食感>
5点:非常に良好(粒状の食感が強く感じられる)
4点:良好(良好な粒状の食感である)
3点:許容できる
2点:やや不良(やややわらかい)
1点:不良(やわらかすぎる又はペースト状であり、粒状とは異なる)
【0032】
食感について、各パネラーの評点の平均値を求めた。そして平均値より、
A:4.5点以上
B:3.5点以上4.5点未満
C:2.5点以上3.5点未満
D:1.5点以上2.5点未満
E:1.5点未満
の5段階で評価付けを行い、食感評価がC評価以上であるものを合格品質とした。
【0033】
表1.配合及び評価結果
・脱脂大豆には、不二製油株式会社製の製品を使用した。
・粉末状大豆蛋白には、不二製油株式会社製の分離大豆たん白「フジプロR」を使用した。
・オート麦ファイバーには、J.RETTENMAIER&SoHNE GMBH+CO. KG.社(以下JRS社)製「VITACEL HF200」を使用した。
・植物油脂には、不二製油株式会社製「パームエース 10」を使用した。
・カラメルには、池田糖化工業株式会社製「カラメル BF-200」を使用した。
・でん粉には、三和澱粉工業株式会社製「NON-GMOコーンスターチY」を使用した。
【0034】
表1の結果より、乾燥重量あたりの蛋白質含有量が50重量%以上であって、かつ(a)2価金属を0.01~5重量%含有する、及び/又は(b)たん白質含量/食物繊維含量比が重量基準で4以上である、の条件を満たす組織状大豆たん白組成物A~Dを用いている実施例1~4は、評価がB以上であり、合格であった。また、オート麦ファイバーを20重量%含有する実施例1では、A評価であり、より良好な食感の納豆様食品であった。
【0035】
検討2 納豆様食品の調製2(加熱温度条件の検討)
検討1で得られた組織状大豆たん白組成物A20gに、25℃の水40gを加えて水戻しを行った。水戻し後の各種組織状大豆たん白組成物を袋に入れ、密封し、表2に示した条件でそれぞれ加熱した。加熱後の各種組織状大豆たん白組成物に、検討1と同様の方法で、納豆菌を接種し、混合した。この混合物を恒温装置を用いて40℃で16時間発酵させ、納豆様食品を得た。なお、条件1についてはコンビオーブン(RATIONAL社製、「Clima Plus Combi」)を用いて蒸し加熱し、条件2~3についてはレトルト装置(日阪製作所社製、「RCS-4CRTGN」)を用いて加熱した。このとき、加水後の組織状大豆たん白組成物Aの水分含量は、69重量%であった。
また、得られた納豆様食品を、検討1と同様の方法で、官能評価を行い、評価した結果を表2に示した。
【0036】
表2.加熱条件と評価結果
100℃、1分以上の加熱条件である条件1~3(実施例1,5,6)では、評価結果がC以上であり、合格であった。また、加熱温度がより高い条件3(実施例1)では、評価結果がAであり、より良好な粒状の食感を有する納豆様食品を得ることができた。
【0037】
考察
表1の結果より、乾燥重量あたりの蛋白質含有量が50重量%以上であって、かつ(a)2価金属を0.01~5重量%含有する、及び/又は(b)たん白質含量/食物繊維含量比が重量基準で4以上である、の条件を満たす組織状大豆たん白組成物を用いることで、丸大豆又はひきわり大豆不使用であっても、丸大豆或いはひきわり大豆を原料とした納豆と遜色ない良好な粒状の食感を有する納豆様食品を得ることができた。さらに、該組織状大豆たん白組成物が、(c)オート麦ファイバーを5~45重量%含有するという条件を満たすことで、より良好な食感を有する納豆様食品を得ることができた。
また、表2の結果より、納豆菌接種前に、水分含量40~80重量%である組織状大豆たん白組成物を、100℃~140℃、1分以上加熱する工程を含むことで、良好な食感を有する納豆様食品を製造することができた。
以上の結果より、本発明において、乾燥重量あたりの蛋白質含有量が50重量%以上であって、かつ(a)2価金属を0.01~5重量%含有する、及び/又は(b)たん白質含量/食物繊維含量比が重量基準で4以上である、の条件を満たす組織状大豆たん白組成物を用いることで、丸大豆又はひきわり大豆不使用であっても、丸大豆或いはひきわり大豆を原料とした納豆と遜色ない食感を有する納豆様食品を提供できることを見出した。