(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】デジタル分注システム、スライドの染色方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/00 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
G01N1/00 101K
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019238047
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-09-22
(32)【優先日】2019-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】723005698
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】デボード・ブルース エー.
(72)【発明者】
【氏名】マーラ サード・マイケル エー.
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ・プラモド ケー.
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0033692(US,A1)
【文献】特表2018-517895(JP,A)
【文献】特開2010-107433(JP,A)
【文献】特開2010-107478(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0052082(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析のため試料を調製するためのデジタル分注システムであって、
分注される1以上の流体を含む流体液滴吐出ヘッド及び流体カートリッジと、
前記流体液滴吐出ヘッド及び流体カートリッジをx方向に試料ホルダ上で進退させるためのカートリッジ並進機構と、
前記試料ホルダを前記x方向と直交するy方向に前記流体液滴吐出ヘッド及び流体カートリッジの下で進退させるための試料ホルダ並進機構と
を含む、
コンパクト筐体ユニットに収容された流体液滴吐出システムと、
ユーザに、相対流体ボリューム、絶対流体ボリューム、及び相対流体ボリュームと絶対流体ボリュームとの組合せからなる群から選択される流体ボリューム情報を表示するため前記流体液滴吐出システムに取り付けられたデジタル表示装置と
を含み、
前記デジタル表示装置は、ウェルプレートの複数のウェル又はスライド上の複数のスライド位置にそれぞれ分注される複数の流体の各相対流体ボリュームをそれぞれ示す複数の相対ボリューム画像を、前記ウェルプレートの前記複数のウェル又は前記スライド上の前記複数のスライド位置にそれぞれ対応する配置で、前記流体ボリューム情報として一覧表示
し、
前記流体ボリューム情報は、前記ウェルプレートの前記複数のウェルのうち単一のウェル内又は前記スライド上の前記複数のスライド位置のうち単一のスライド位置内に分注された複数の流体の各相対ボリュームをそれぞれ示す複数のグラフを含む、
デジタル分注システム。
【請求項2】
前記流体ボリューム情報が、前記スライド上の特定位置又は前記ウェルプレートのウェル内の流体の棒グラフ表現により表示される、
請求項1に記載のデジタル分注システム。
【請求項3】
前記デジタル表示装置が、前記ウェルプレートのウェル又は前記スライド上のスライド位置に分注される各流体の絶対ボリューム画像と相対ボリューム画像とを含む、
請求項1に記載のデジタル分注システム。
【請求項4】
前記流体液滴吐出システムが、流体液滴情報を格納するため、そして前記デジタル表示
装置へ前記流体液滴情報を転送するための、プロセッサ及びメモリを更に含む、
請求項1に記載のデジタル分注システム。
【請求項5】
前記デジタル表示装置が、携帯式又はラップトップコンピュータを含む、
請求項1に記載のデジタル分注システム。
【請求項6】
染料にスライドを浸す又は浸漬させることなくスライドを染色するための方法であって、
分注される1以上の流体を含む流体液滴吐出ヘッド及び流体カートリッジと、
前記流体液滴吐出ヘッド及び流体カートリッジをx方向にスライドホルダ上で進退させるためのカートリッジ並進機構と、
1以上のスライドを前記x方向と直交するy方向に前記流体液滴吐出ヘッド及び流体カートリッジの下で進退させるためのスライドホルダ並進機構と
を含む、
コンパクト筐体ユニットに収容されたデジタル流体液滴吐出システムを提供することと、
前記デジタル流体液滴吐出システムにデジタル表示装置を取り付けることと、
前記流体液滴吐出ヘッド及び流体カートリッジから前記スライドの1以上の位置に流体を吐出することと、
相対流体ボリューム、絶対流体ボリューム、及び相対流体ボリュームと絶対流体ボリュームとの組合せからなる群から選択される流体ボリューム情報を前記デジタル表示装置上でユーザに表示することと
を含み、
前記デジタル表示装置は、ウェルプレートの複数のウェル又はスライド上の複数のスライド位置にそれぞれ分注される複数の流体の各相対流体ボリュームをそれぞれ示す複数の相対ボリューム画像を、前記ウェルプレートの前記複数のウェル又は前記スライド上の前記複数のスライド位置にそれぞれ対応する配置で、前記流体ボリューム情報として一覧表示
し、
前記流体ボリューム情報は、前記ウェルプレートの前記複数のウェルのうち単一のウェル内又は前記スライド上の前記複数のスライド位置のうち単一のスライド位置内に分注された複数の流体の各相対ボリュームをそれぞれ示す複数のグラフを含む、
方法。
【請求項7】
前記スライド上に2以上の流体を同時に吐出することを更に含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記スライド上に2以上の流体を順次に吐出することを更に含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記流体ボリューム情報が、前記スライド上の特定の位置又は前記ウェルプレートのウェルの流体を表す棒グラフにより表示される、
請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記デジタル表示装置が、前記ウェルプレートのウェル又は前記スライドのスライド位置へ分注される各流体の絶対ボリューム画像と相対ボリューム画像とを含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記流体液滴吐出システムがプロセッサ及びメモリを含み、
前記メモリに流体液滴情報を格納することと、
前記流体液滴情報を前記プロセッサを介し前記デジタル表示装置へ転送することと
を更に含む、
請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記デジタル表示装置が、携帯式又はラップトップコンピュータを含む、
請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本願は、現在係属中である、2019年1月4日付で出願された米国仮出願番号62/788,290に関連する。
【0002】
本開示は分析機器、特に分析目的のため流体を分注するために用いられる機器に関する。
【背景技術】
【0003】
特に、医療分野において、自動化された試料調製と分析の必要性がある。分析は、比色分析、又は顕微鏡下で試料をより好ましく観察するため、試料の着色を要する可能性がある。そのような分析は、薬剤試料分析、血液試料分析、等を含む。例えば、血液の分析において、血液は個人の健康を判定するために用いられるいくつかの異なる要因を提供するため分析される。血液試料分析を要する多くの患者がいる場合、手順は非常に時間がかかるものとなる。また、結果が信頼できるものであるよう、試料の正確な調製の必要がある。複数の試料の微量滴定といった、正確で再現可能な結果を提供する分析機器の使用の恩恵を受けることのできる医療分野やその他の分野において、試料分析を要するその他の多くの状況がある。
【0004】
多くの実験と検査手順にて、典型的にウェルプレート、スライドおよび他の基材が使用される。ウェルを充填する手順またはスポッティングの手順は、手作業又は高価な検査機器を用いて行われることが多い。場合によっては、ウェルは手動ピペットで充填される。その他の場合では、ウェルプレートの充填はピペット技術に基づいた高性能自動装置が使用される。そのような自動装置は開放式ウェル分注ヘッドを収容するのみである。開放式ウェル分注ヘッドは、使用前に分注ヘッドの開口内に少量の流体が堆積されなければならない分注ヘッドである。流体は、典型的にピペット又は類似の手段で手動で堆積される。分注ヘッドは、マイクロプレートをXとY方向両方に動かす間、静止して保持される。これら高性能装置は非常に高価である。従って、試料の分析及びデジタル滴定のための多種多様な分析状況で使用できる、はるかに安価なデジタル分注システムの必要性がある。また、ウェルトレイの各ウェルの流体のボリューム又はスライドの所定の領域に適用される流体の量を容易に視覚化する必要性もある。
【発明の概要】
【0005】
上記を鑑み、本開示の1つの実施形態は、分析のため試料を調製するためのデジタル分注システムと方法を提供する。システムは、コンパクト筐体ユニットに収容された流体液滴吐出システムを含む。流体液滴吐出システムは、分注される1以上の流体を含む流体液滴吐出ヘッド及び流体カートリッジと、流体液滴吐出ヘッド及び流体カートリッジをx方向に試料ホルダ上で進退させるためのカートリッジ並進機構と、試料ホルダをx方向と直交するy方向に流体液滴吐出ヘッド及び流体カートリッジの下で進退させるための試料ホルダ並進機構とを含む。ユーザに流体ボリューム情報を表示するため、デジタル表示装置が流体液滴吐出システムに取り付けられる。流体ボリューム情報は、相対流体ボリューム、絶対流体ボリューム、相対及び絶対流体ボリュームの組合せから選択される。
【0006】
別の実施形態において、染料にスライドを浸す又は浸漬することなくスライドを染色するための方法が提供される。方法は、筐体ユニットに収容されたデジタル流体液滴吐出システムを提供することを含む。デジタル流体液滴吐出システムは、吐出される1以上の流体を含む流体液滴吐出ヘッド及び流体カートリッジと、流体液滴吐出ヘッド及び流体カートリッジをx方向に試料ホルダ上を進退させるためのカートリッジ並進機構と、1以上のスライドをx方向と直交するy方向に流体液滴吐出ヘッド及び流体カートリッジの下で進退させるための試料ホルダ並進機構とを含む。デジタル表示装置がデジタル流体液滴吐出システムに取り付けられる。流体は、流体液滴吐出ヘッド及び流体カートリッジからスライド上の1以上の位置に吐出される。流体ボリューム情報が、デジタル表示装置上にてユーザに表示される。流体ボリューム情報は、相対流体ボリューム、絶対流体ボリューム、相対及び絶対流体ボリュームの組合せから選択される。
【0007】
いくつかの実施形態において、ボリューム情報は、スライド上の特定の位置の流体又はウェルプレートのウェルの流体を表す棒グラフである。別の実施形態において、デジタル表示は、ウェルプレートのウェル又はスライド上のスライド位置へ分注される各流体の、相対ボリューム画像を有する。他の実施形態において、デジタル表示は、ウェルプレートのウェル又はスライド上のスライド位置へ分注される各流体の、分注される流体の絶対ボリューム画像と相対ボリューム画像の両方を有する。
【0008】
いくつかの実施形態において、流体液滴吐出システムは、流体液滴情報を格納し、流体液滴情報をデジタル表示装置へ転送するための、プロセッサ及びメモリを更に含む。他の実施形態において、デジタル表示装置は携帯式又はラップトップコンピュータである。
【0009】
いくつかの実施形態において、2以上の流体がスライド上に同時に吐出される。別の実施形態において、2以上の流体がスライド上に順次に吐出される。
【0010】
ここで説明されるデジタル分注手順において、デジタル分注システムのユーザに、各流体のどれ程の量が、スライド上の特定の位置に適用される又はウェルプレートの各ウェルに堆積されるかを提供する必要性がありうる。他の状況において、ユーザは、スライド又はウェルプレートへ分注される各流体の相対ボリュームを知る必要性がありうる。デジタル分注システムにて一度に少量のスライドのみが処理されるとしても、各ウェルプレートは96、384、1536のウェル、又は応用によってカスタマイズされた数のウェルを有し、分析が実行される。従って、デジタル分注システムのためのユーザインターフェイスは有用であり、ユーザは流体の適切な量が分注されているかを容易に見ることができる。このため、本開示の1つの実施形態は、ここで説明されるデジタル分注システムと組み合わせ、適切なユーザインターフェイスを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の1つの実施形態によるデジタル分注システムとその表示装置の、縮尺通りではない、斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のデジタル分注システムの背面の、縮尺通りではない、立面図である。
【
図3】
図3は、
図1のデジタル分注システムの、縮尺通りではない、破断斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1のデジタル分注システムと共に用いられる試料を保持するためのトレイの、縮尺通りではない、斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4のトレイと共に用いられるスライドとウェルプレートのためのアダプタの、縮尺通りではない、斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1のデジタル分注システムのためのウェルプレートアダプタとウェルプレートを保持する
図4のトレイの、縮尺通りではない、斜視図である。
【
図7】
図7は、
図1のデジタル分注システムのためのスライドアダプタとスライドを保持する
図4のトレイの、縮尺通りではない、斜視図である。
【
図8】
図8は、本開示の分注システムを用いたスライド上又はウェルプレート内への流体分注に関わる次元の図示である。
【
図9】
図9は、サンプル上の流体液滴吐出カートリッジの4回の通過における流体の量の、仮定の楕円の4回の通過の図示である。
【
図10A】
図10Aは、本開示の1つの実施形態によるデジタル分注システムから吐出された流体で染色されたスライド試料の顕微鏡写真である。
【
図10B】
図10Bは、本開示の1つの実施形態によるデジタル分注システムから吐出された流体で染色されたスライド試料の顕微鏡写真である。
【
図11A】
図11Aは、本開示の1つの実施形態によるデジタル分注システムから吐出された流体で染色されたスライド試料の顕微鏡写真である。
【
図11B】
図11Bは、本開示の1つの実施形態によるデジタル分注システムから吐出された流体で染色されたスライド試料の顕微鏡写真である。
【
図12A】
図12Aは、本開示の1つの実施形態によるデジタル分注システムから吐出された流体で染色されたスライド試料の顕微鏡写真である。
【
図12B】
図12Bは、本開示の1つの実施形態によるデジタル分注システムから吐出された流体で染色されたスライド試料の顕微鏡写真である。
【
図13】
図13は、本開示によるデジタル分注
システムを用いて吐出される流体のボリュームのためのデジタル表示出力の図示である。
【
図14】
図14は、本開示によるデジタル分注
システムを用いて吐出される流体のボリュームのためのデジタル表示出力の図示である。
【
図15】
図15は、本開示によるデジタル分注
システムを用いて吐出される流体のボリュームのためのデジタル表示出力の図示である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1~
図9を参照し、ウェルプレートのウェル内、又はスライド上の定義されたスポットのパターンに(一般的にスポッティングと称される)、1以上の流体のある量を正確に分注するための、デジタル分注
システム10が示される。高機能デジタル分注装置とは異なり、本発明の
システム10は、以下に詳細に説明されるように、第1の方向
(x方向)に進退する吐出ヘッド及び流体カートリッジ14と、第1の方向と直交する第2の方向
(y方向)に進退する、ウェル又はスライドを含むトレイ12とに基づく。開示される
システム10は、開放式分注ヘッドのみではなく、開放式と密封式分注ヘッドを受け入れる。トレイ12は、標準的なマイクロウェルプレート並びにガラススライド及び他の基材との両方に適合可能である。吐出ヘッド及び流体カートリッジ14上の吐出ヘッドは、サーマル型ジェット吐出ヘッド、気泡ジェット吐出ヘッド、圧電吐出ヘッド等を含むがこれらに限定されない、多様な吐出ヘッド装置から選択されてよい。
【0013】
吐出ヘッド及び流体カートリッジ14とヘッド移動機構16(
図3)は、長方形の柱状のボックス18に含まれる。
システム10の起動のための起動スイッチ20がボックス18上に含まれる。ボックス18の背面側22は、流体がウェルプレートまたはスライドに分注するために、第2の方向にボックス18を通ってトレイ12を移動させるための開口24を含む。デジタル分注
システム10をデジタル表示装置27に接続するため、ボックス18の背面側22上にUSBポート25が提供される。電力は、ボックス18の背面側22上の電力入力ポート29を通じて
システム10に提供される。他の実施形態において、デジタル分注
システム10からの情報は、デジタル表示装置27に無線で転送されてよい。
【0014】
トレイ12と、トレイのためのアダプタ26と30が、
図4と
図5に示される。アダプタ26はガラススライド28を保持するための大きさにされており、ウェルプレートアダプタ30は、マイクロウェルプレート32を保持するための大きさにされている。トレイ12は
、流体が分注されるためにアダプタ26と30を保持するためのアダプタホルダ34を有する。
図6は、トレイ12のアダプタ30上のウェルプレートを表す。
図7は、トレイ12内のスライドアダプタ26上のスライド28を示す。
図7に示されるように、トレイ12は、トレイがボックス18を通って移動するときに第2の方向におけるトレイ12を指標付けするためのギア歯36を含んでよい。
【0015】
図8~
図9は、マイクロプレート、ガラススライド、又は他の基板内に流体を分注するための最適化された印刷パターンを算出するための方法を表す。方法は、入力が定義された領域上に送られる流体のボリュームである、デジタル分注システム10のためのデータをフォーマットする。
【0016】
ある与えられたボリュームについて、そのボリュームを分注するために要する液滴の数は(ボリューム/液滴サイズ)として定義される。
【0017】
例えば、もし液滴サイズが10ピコリットルと選択され、10マイクロリットルを分注することを要する場合、吐出ヘッド及び流体カートリッジ14は、10/10e-6又は1,000,000滴を分注しなければならない。これで、与えられたボリュームに対する液滴数が決定されたので、面積を算出できる。ほとんどのインクジェットプリンタは、例えば600H×1200V DPI(drops per inch)といった、特定の解像度を持つグリッドに印刷する。もし目標領域が0.5インチ×0.5インチの正方形である場合、吐出ヘッド及び流体カートリッジ14の1回の通過で該領域に分注できる液滴の最大数は、次のように算出できる:
面積=0.5×0.5=0.25平方インチ
1回の通過の最大液滴=面積×(600×1200)=180,000滴。
最後に、このボリュームを選択された領域に拡散するために要する通過の総数は次のように算出できる:
1,000,000/180,000=5.56回の通過
従って、吐出ヘッド及び流体カートリッジ14は、与えられた領域に対し算出された流体のボリュームを分注するため、5回の完全な通過と、完全ではない「あまり」の通過を要する。各通過は液滴を領域全体に安定して拡散する。
【0018】
前記の計算により生成された入力データは、事実上、XとY軸両方を表す画像であるが、
図8に概略的に示されるように、ボリュームを表すZ軸も導入する。加えて、一度に1つのチャネル又は流体以上を分注するとき、異なるチャネル又は流体を追跡するため4次元が導入される。
【0019】
上記は、吐出ヘッド及び流体カートリッジ14上の吐出ヘッドが0.5インチの長さを有し、全領域をカバーできると仮定している。常にそうであるとは限らないため、追加の変数を導入する必要があり、これは吐出ヘッドの長さである。例えば、上記の例を続けるが、吐出ヘッドの長さが0.25インチであると仮定すると、これは、正しく領域を満たすため、吐出ヘッド及び流体カートリッジ14がスライド又はウェルプレート上でY方向に移動するという要件を導入する。更に、特定の応用では、通過の数を必要とされる最低数を超えて増加させる理由がある。いくつかの例としては次を含みうる:
●出力の何らかの側面(被覆範囲、均一性、等)を改善する
●実験上の理由のため、通過あたりの最大ボリュームを人為的に制限する
改変例は、ジョブのための通過の人為的な最低数を設定することで達成できる。これは、必要な通過数と共に用いれる乗数となる。もし通過の最低数が2の場合、50%の最大制限が各通過の液滴数に設定でき、全体で通過の総数を2で乗算することとなる。
【0020】
上記の方法は、単一の作動で流体の全ボリュームをマイクロウェルプレート内に印刷する従来のデジタル分注システムに対する利点を提供する。上記の方法は、複数の吐出ヘッド通過、及び吐出ヘッドの分注ヘッドアレイに沿った複数の流体吐出器で、流体のボリュームを分注するよう拡散する。これは、欠落又は低性能の流体吐出器の影響を最小限にする。所望の分注精度と吐出器が正しく機能しない可能性に応じて、使用する流体吐出器の最低数を特定又は算出できる。
【0021】
血液学といった分野において、スライドガラスといった基板の定義された領域上に複数の染色剤や緩衝剤を堆積または印刷することが望ましい場合がある。流体の層を印刷するとき、流体が堆積される速度を制御することにより、試験を改善することができうる。この方法は、ユーザに、より好ましい堆積速度の制御を可能にする。
図9は、最初の3回の通過が同一の液滴数を有し、第4回目の通過がより明るい色で示されたより少ない液滴数を有することを示す、「あまり」の第4回目の通過を伴う、仮定的な4回の通過例を表す。第4回目の通過は必要とされる液滴のあまりの数を終了する。
【0022】
従って、本発明による分注装置は、流体を特定された領域/形状に安定して拡散することを可能にする。また、吐出ヘッドノズルの使用を吐出ヘッド全体に分散させることにより、ばらつきを最低限にするよう定義されたモードを可能にする。吐出ヘッド及び流体カートリッジ14の通過の最低数は、通過あたりの最大ボリュームと共に特定することができる。もし通過あたりの最大ボリュームが定義された流量を超える場合は、動作モードに追加的な通過を加えることができる。分注システム10は、システムにより分注される如何なる数の流体にも拡張することができる。
【0023】
図10A~
図12Bは、血液といった体液を分析するため、1以上の流体をガラススライド上に分注するための分注システム10の使用を表す。血液塗抹標本を有するガラススライド10Aと10Bは、血液標本の細胞タイプを研究するための染色スライドを作成するため、本開示のよるデジタル分注システム10を用いて、複数の染色剤と他の流体の種類で選択的又は同時に染色される。血液細胞を識別するための染色剤の使用は長期にわたり用いられているが、スライド上に染色剤を付す技術は非常に面倒である。
【0024】
ロマノウスキータイプの染色剤が、ガラススライド上の血液塗抹標本から赤血球(RBC)と白血球(WBC)を識別するために用いられている。ほとんどの実験室で、何らかの形式のロマノフスキータイプの染色剤(例えばライトギムザ)を使用している。これら染色剤は素晴らしい結果をもたらすが、スライドに染色剤を付す方法は面倒である。従来の方法において、血液塗抹標本を有するガラススライドは一定時間、染色剤に浸される。しかし、スライドの浸漬は手間と時間がかかる。上述したように、本発明は、スライド上の定義された位置に流体の正確な量を堆積することにより、血液標本の細胞タイプを研究するための染色スライドを作成するための改善された技術を提供する。
【0025】
複数種類の染色剤と緩衝剤溶液が吐出ヘッド及び流体カートリッジ14のチャンバに配置される。次いで、メイグリュンワルドとギムザ染色のためのギムザ染料といった染色剤又は他の種類の染色剤と緩衝剤溶液とが、ガラススライド上に同時又は選択的に噴射される。分注システム10は、1、2、又はそれ以上の染色剤と緩衝剤溶液を同時又は選択的に噴射する柔軟性を提供する。いくつかの実施形態において、3以上の流体チャンバと、吐出ヘッド及び流体カートリッジ14から吐出される流体種類が存在する。この技術の使用は、ギムザとメイグリュンワルド染色に限定されない。流体吐出技術に符合する如何なる他の流体にも使用できる。各流体の所定のボリュームが本発明により噴射できる。分注技術は、
図10Aと
図10Bに示されるように、血液塗抹標本を有する染色されたガラススライドから白血球と赤血球を識別することに成功している。
【0026】
図11Aと
図11Bは、染色スライドの均一性を改善するため、2つ又は3つの流体の種類がスライド上に同時に噴射されるスライドを表す。
図12Aと
図12Bは、本開示の分注システム10を用いて、連続的にスライドを選択的に染色する技術を表す。
【0027】
図13~
図15を参照し、デジタル分注
システム10にユーザインターフェイスを提供するため、デジタル分注システム10により分注されデジタル表示装置27上に表示される、流体ボリュームの視覚的表現が表される。ユーザインターフェイスは、ユーザにマイクロウェルプレートの各ウェル内又はガラススライド上の流体のスポットのボリュームの明確な知識を与えると共に、どれ程の流体をスライド28又はウェルプレート32の各位置に分注するかを選択する手段を提供することができる。
【0028】
医療ウェルプレート又はスライドといった、ボリュームが重要な入力である応用において流体を分注するとき、ユーザに使用される各流体のボリュームの有用な視覚的表現を表示できることが重要である。ウェルによっては大きなボリュームを保持できることから、最大ボリュームの流体を最大として用い、残りの流体を最大ボリュームの流体に対し拡大縮小する相対ボリューム表示が、流体を相互に比較する1つの方法である。絶対ボリューム比率は、流体量が視覚的に有用な情報を提供するのに十分でない可能性があることから、大きなウェル内の流体には有用でない。
【0029】
図13において、2つの流体のための棒グラフ38と40は、スライド28上又はウェルプレート32の単一のウェル内の各流体の相対ボリュームを表し、42は分注される流体の絶対総ボリュームを表す。
図14において、2つの流体のための棒グラフ38と40は、繰り返しとなるが、スライド上又はウェルプレート32の単一のウェル内の各流体の相対ボリュームを表すが、ウェル内又はスライド28上に分注される全流体の総相対ボリュームを表すため、拡張する円44を用いてもよい。デジタル表示装置27上に表示するためのユーザインターフェイスは、ユーザインターフェイスのドロップダウンメニューから所望の視覚化表現を選択することにより、
図13と
図14に示される両方の視覚化表現の種類を提供するよう構成されてよい。同様に、ユーザインターフェイスは、ウェルプレート32の単一のウェル又は複数のウェル内の絶対ボリューム又は相対ボリュームを示すよう構成されてもよい。
【0030】
図15は、棒グラフ38、40、46と相対ボリューム円47を用いたウェルプレートのウェル内の流体の視覚的表現を表す。流体の最大ボリュームを表す棒グラフ46が、各ウェル内の流体の好ましい比較を提供するために、他の流体を拡大縮小するために用いられる。ウェルプレート32のごく一部のみが、列A~
F、欄W~Zのウェル内の流体の視覚化表現を提供する
図15の視覚化表示により表されている。分注される各流体の量は、列、欄、又は個別のセルにより異なる可能性がある。デジタル分注装置は、デジタル表示装置の使用により、流体の所定量を、ウェルプレート32、スライド28の所定の位置に堆積するようプログラムされてもよい。
【0031】
上述した視覚的表現は、ガラススライドを用いた応用と、ガラススライド上に液体をスポッティングするため、同一の情報を提供するために用いることができることを理解されたい。ガラススライド応用においては、流体は分離されたウェルではなく平面基板上に分注される。上記のデジタル的表現は、ウェル内又はスライド上に流体を吐出するため、ユーザに同一のデジタル分注装置とインターフェイスを使用する能力を与える。
【0032】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる単数形「a」、「an」、「the」は、明示的かつ明確に1つの指示物に限定されない限り、複数の指示物を含むことに留意されたい。本明細書で用いられる「include」という用語およびその文法上の変形は、リスト内の項目の列挙が、リストされた項目を置換または追加できる他の同様の項目を除外しないよう、非限定的であることを意図している。
【0033】
本明細書および添付の特許請求の範囲では、特に明記しない限り、量、比率又は割合を表す全ての数字及び本明細書及び特許請求の範囲で使用されるその他の数値は、全ての場合に用語「約」によって改変されると理解されるべきである。従って、そうでないと示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本開示により得ることが求められる所望の特性に応じて変わり得る近似値である。少なくとも、そして請求項の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメーターは、少なくとも、述べられた有効数字の数を考慮し、そして通常の丸め手法を適用することにより、解釈されるべきである。
【0034】
特定の実施形態について説明したが、出願人または他の当業者には、現在予測しない、又は予測できない、代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物が生じうる。従って、添付の提出された特許請求の範囲と修正された特許請求の範囲は、そのようなすべての代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物を包含することを意図している。
【符号の説明】
【0035】
10:流体分注システム
12:トレイ
14:吐出ヘッド及び流体カートリッジ
18:ボックス
20:起動スイッチ
22:背面側
24:開口
25:USBポート
27:デジタル表示装置
26:アダプタ
28:ガラススライド
29:電力入力ポート
30:アダプタ(ウェルプレートアダプタ)
32:マイクロウェルプレート
34:アダプタホルダ
36:ギア歯
38、40、46:棒グラフ
42:絶対総ボリューム
44、47:円(ボリューム円)
A~F:行
W~Z:欄