(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】眼科撮影装置制御用プログラム、眼科撮影システム、および、眼科撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/14 20060101AFI20240110BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A61B3/14
A61B3/10 100
(21)【出願番号】P 2020001768
(22)【出願日】2020-01-08
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 晃一
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 祐二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昌平
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-509913(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0228521(US,A1)
【文献】特開2018-246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の撮影方法で被検眼の眼科画像を撮影するための眼科撮影装置制御用プログラムであって、コンピュータのプロセッサに実行されることによって
、
被検者のIDが入力されるID入力ステップと、
被検者の前記IDが入力されてから最初に撮影が実行されるまでのタイミングで、撮影が実行された場合に1又は複数の画像種別の前記眼科画像
の配置
が予定される
レポートのテンプレートを表示させると共に、前記テンプレートを選択
し更に選択されたテンプレート内に配置される前記眼科画像の画像種別を改変するための操作入力を受け付け、前記選択
し改変された前記テンプレート内に配置
が予定される
それぞれの前記眼科画像の画像種別
とそれぞれ対応する撮影動作からなる、前記コンビネーション撮影における撮影動作の組み合わせを設定する、設定ステップと、
前記設定ステップで設定された前記コンビネーション撮影による最初の撮影を実行することで前記眼科画像を取得する眼科画像取得ステップと、を前記コンピュータに実行させる、眼科撮影装置制御用プログラム。
【請求項2】
更に、前記眼科画像を処理して、前記設定ステップにおいて設定された前記テンプレートに応じた前記レポートを生成する、レポート生成ステップを実行する、請求項1記載の眼科撮影装置制御用プログラム。
【請求項3】
前記設定ステップにおいて選択可能な複数の前記テンプレートは、疾患の種別および撮影部位の少なくともいずれかと予め対応付けられており、
前記設定ステップでは、疾患の種別および撮影部位を特定するためのGUIウィジェットを表示させ、前記GUIウィジェットを介して疾患の種別および撮影部位を特定するための前記操作入力を受け付けることによって、複数の前記テンプレートの中から前記操作入力と対応するいずれかが選択される、請求項1又は2記載の眼科撮影装置制御用プログラム。
【請求項4】
前記設定ステップでは、フォローアップ用のテンプレートが前記操作入力に基づいて選択可能であり、
前記フォローアップ用のテンプレートには、
被検眼に対して前回撮影した眼科画像の領域と、次に撮影する眼科画像の領域と、が並列配置される、
又は、次に撮影する眼科画像の領域と共に、被検眼に対して前回撮影した眼科画像に対する解析結果と次に撮影する眼科画像に対する解析結果とによる時系列データの表示領域と、が配置される、
又は、被検眼に対する過去の撮影に基づくレポートと同じレイアウトで、前記眼科画像の領域が設定される、
請求項1から3の何れかに記載の眼科撮影装置制御用プログラム。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の眼科撮影装置制御用プログラムが実行される眼科画像観察装置と、
眼科画像を撮影する眼科撮影装置と、を含む眼科撮影システムであって、
前記眼科画像観察装置は、
前記設定ステップにおいて、設定された撮影動作の組み合わせを示す情報を、前記眼科撮影装置へ送信し、
前記眼科画像取得ステップにおいて、前記眼科撮影装置が前記情報に基づいて撮影した前記眼科画像を取得する眼科撮影システム。
【請求項6】
請求項1から5の何れかに記載の眼科撮影装置制御用プログラムが実行される眼科撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科撮影装置制御用プログラム、眼科撮影システム、および、眼科撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼を多角的に診断および観察するうえで、互いに異なる撮影動作で得られた複数の眼底画像を読影することは、有用である。
【0003】
例えば、特許文献1には、ユーザーによって指示された複数の撮影動作を連続的に実行するコンビネーション撮影(コンボ撮影ともいう)が行われる、眼底撮影装置が開示されている。特許文献1において、コンボ撮影に含まれる撮影動作は、ユーザーからの指示に応じてあらかじめ設定可能である。つまり、事前に計画された撮影動作に従って、撮影が実行される。
【0004】
また、眼科画像はレポート上で表示される場合がある。特許文献2には、予め用意された複数のレポートのテンプレートの中から、検者がいずれかを選択することによって、テンプレートに従って配置された眼科画像を含んだレポートが表示される。特許文献2では、既に撮影が完了している段階で、テンプレートが選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-171367号公報
【文献】国際公開2019/207800号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、従来は、既に撮影が完了した段階でレポートの形式が設定されるので、その段階になってから、所望のレポート形式に対して撮影画像に不足があることが明らかになる場合があり得た。また、撮影を行う検者と、レポートに基づく読影・診断とを行う検者と、が別人によって分担されている場合、後者から要求されるレポートの形式または目的(つまり、検査オーダー)に対し、前者は、どのような撮影動作を設定すべきかが把握し難かった。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、撮影動作の設定を適切に行いやすい、眼科撮影装置制御用プログラム、眼科撮影システム、および、眼科撮影装置を提供すること、を技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1態様に係る眼科撮影装置制御用プログラムは、複数の撮影方法で被検眼の眼科画像を撮影するための眼科撮影装置制御用プログラムであって、コンピュータのプロセッサに実行されることによって、被検者のIDが入力されるID入力ステップと、被検者の前記IDが入力されてから最初に撮影が実行されるまでのタイミングで、撮影が実行された場合に1又は複数の画像種別の前記眼科画像の配置が予定されるレポートのテンプレートを表示させると共に、前記テンプレートを選択し更に選択されたテンプレート内に配置される前記眼科画像の画像種別を改変するための操作入力を受け付け、前記選択し改変された前記テンプレート内に配置が予定されるそれぞれの前記眼科画像の画像種別とそれぞれ対応する撮影動作からなる、前記コンビネーション撮影における撮影動作の組み合わせを設定する、設定ステップと、前記設定ステップで設定された前記コンビネーション撮影による最初の撮影を実行することで前記眼科画像を取得する眼科画像取得ステップと、を前記コンピュータに実行させる。
【0009】
本開示の第2態様に係る眼科撮影システムは、第1態様に係る眼科撮影装置制御用プログラムが実行される眼科画像観察装置と、眼科画像を撮影する眼科撮影装置と、を含む眼科撮影システムであって、前記眼科画像観察装置は、前記設定ステップにおいて、設定された撮影動作の組み合わせを示す情報を、前記眼科撮影装置へ送信し、前記眼科画像取得ステップにおいて、前記眼科撮影装置が前記情報に基づいて撮影した前記眼科画像を取得する。
【0010】
本開示の第3態様に係る眼科撮影装置は、第1態様に係る眼科撮影装置制御用プログラムが実行される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、コンビネーション撮影における撮影動作の組み合わせを、適切に設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例に係る眼科撮影装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】装置の動作の流れを示したフローチャートである。
【
図3】撮影動作およびテンプレートの選択画面の一例を示した図である。
【
図4】フォローアップ撮影用のテンプレートの一例を示した図である。
【
図5】ベースとして選択可能な複数のテンプレートの一例を示した図である。
【
図6】テンプレートの改変作業において利用される作業画面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
「概要」
以下、本開示における実施形態を説明する。実施形態に係る眼科撮影装置制御用プログラムは、複数の撮影方法で眼科画像を撮影するために利用される。
【0014】
眼科撮影装置制御用プログラムは、コンピュータのプロセッサに実行されることによって、少なくとも、設定ステップ、および、眼科画像取得ステップを、コンピュータに実行させる。設定ステップでは、コンビネーション撮影における撮影動作の組み合わせが設定される。眼科画像取得ステップでは、設定ステップで設定されたコンビネーション撮影に基づく被検眼の眼科画像が取得される。なお、ここでいう「取得」とは、「プロセッサによってアクセス可能なメモリ領域に、眼科画像の画像データを格納すること」である。
【0015】
眼科画像は、被検眼の組織の撮影画像である。眼科画像は、前眼部の画像であってもよいし、眼底の画像であってもよい。また、正面画像であってもよいし、断層画像(断面画像)であってもよい。
【0016】
<設定ステップの詳細説明>
設定ステップでは、眼科画像が配置されるテンプレートが表示される。特に断りが無い限り、以下の説明において、テンプレートは、レポートのテンプレートである。設定ステップでは、テンプレートを選択または改変するための操作入力を受け付ける。これにより、レポートのレイアウトが特定される。すなわち、レポート上において眼科画像が配置される領域の数および配置、および、各領域と対応する眼科画像の種別が、操作入力に基づいて特定されてもよい。その際は追加的に、眼科画像以外の情報(テキストまたはグラフィック)の配置および種別が、操作入力に基づいて特定されてもよい。操作入力によって選択または改変されたテンプレートに応じて、コンビネーション撮影における撮影動作の組み合わせが設定される。より詳細には、組み合わせは、操作入力の結果としてテンプレート内に配置される、眼科画像の画像種別に応じて設定される。
【0017】
よって、本実施形態では、レポートのテンプレートを検者が目視で確認しながら、レポートのテンプレートを選択または改変することによって、コンビネーション撮影における撮影動作の組み合わせが、選択または改変されたテンプレートから逆算的に設定される。よって、所望するレポートの目的または形式に対して適切な撮影動作を、容易に設定できる。
【0018】
なお、レポートのテンプレートを改変する場合は、予め用意された複数のテンプレートの中からいずれかを、改変のベースとして選択可能であってもよい。所望するレポートに近しいテンプレートをベースとして選ぶことで、撮影動作の設定作業を簡略化できる。勿論、ゼロベースからレポートのテンプレートを作成可能であってもよい。ベースとなるテンプレートが表示されたうえで、改変操作に基づいてベースに対する改変が行われる。改変操作が行われる度に、表示中のテンプレートにおいて、随時、改変が反映されてもよい。このような改変操作の結果として、独自のテンプレートが生成される。
【0019】
なお、ベースに対する改変としては、例えば、レポート内に配置される眼科画像の数の増減、眼科画像の位置の変更、眼科画像のサイズ変更、眼科画像の種別変更、および、眼科画像と共にレポート内に配置される(眼科画像以外の)オブジェクトの追加・削除・変更、等が挙げられる。これらのうち、少なくともいずれかが、改変操作に基づいて実行されてもよい。また、1つの眼科画像の領域上に、2枚以上の眼科画像を重ねて配置可能であってもよい。この場合、手前側の眼科画像の透過度を設定可能であってもよい。
【0020】
なお、画面上で、ベースの近傍(周囲)には、ベースに対して追加可能なオブジェクト(眼科画像およびその他のオブジェクト)と対応するアイコンが、1つ以上配置されていてもよい。例えば、アイコンの選択後にベース上の位置を指定することによって、アイコンと対応するオブジェクトが指定位置に配置されてもよい。
【0021】
<GUIウィジェットを用いたテンプレート選択>
設定ステップにおいて選択可能または改変可能な複数のテンプレートは、疾患の種別および撮影部位の少なくともいずれかと予め対応付けられていてもよい。また、設定ステップでは、疾患の種別および撮影部位を特定するためのGUIウィジェットを表示させて、GUIウィジェットを介して疾患の種別および撮影部位を特定するための操作入力を受け付けてもよい。操作入力を受け付けることによって、複数のテンプレートの中から操作入力と対応するいずれかが、選択または改変の対象として特定される。これにより、被検眼の疾患の種別および撮影部位のいずれかを予め把握している場合に、検者は、レポートのテンプレートと、コンビネーション撮影における撮影動作の組み合わせと、の両方を、疾患の種別および撮影部位に応じて適切に選択しやすくなる。
【0022】
疾患の種別および撮影部位を特定するためのGUIウィジェットとしては、例えば、疾患ごと、又は、撮影部位ごと、に用意されたボタンであってもよく、各ボタンには、疾患ごと、又は、撮影部位を特定する情報(例えば、テキストや図等)が示されていてもよい。また、例えば、GUIウィジェットは、広域の被検眼の画像や、被検眼を模したモデル(被検眼モデル)であってもよい。これらのウィジェットを表示すると共に、該ウィジェットに対し、被検眼上の疾患部位、又は、撮影部位を指定する操作を受け付けることで、疾患の種別および撮影部位に応じたテンプレートが選択または改変の対象として特定されてもよい。なお、上記の被検眼モデルは、例えば、眼球の解剖図であってもよいし、眼球形状を3次元的に示した3次元モデルであってもよい。
【0023】
また、疾患の種別を特定するためのGUIウィジェットは、各疾患に罹患したときの眼底画像の典型例を示す、症例画像であってもよい。症例画像は、例えば、既存の症例集から引用される。この場合、疾患ごとに複数の症例画像が用意されており、モニタ上に表示されてもよい。また、症例画像を選択する操作を受け付けることにより、症例画像と対応するテンプレートが、選択または改変の対象として特定されてもよい。
【0024】
<フォローアップと対応するテンプレート選択>
設定ステップでは、フォローアップ用のテンプレートが操作入力に基づいて選択可能であってもよい。フォローアップ用のテンプレートは、過去の撮影に関する情報が被検者に関する情報(例えば、ID)と予め対応付けられている場合に、選択可能であってもよい。また、選択されたテンプレートは、前述のように改変操作に基づいて改変可能であってもよい。なお、過去の撮影に関する情報としては、予め用意されている複数のテンプレートのうち、過去の撮影において利用されたテンプレートを特定する情報であってもよい。また、過去の撮影に関する情報としては、過去のレポートに含まれる眼科画像の種別を少なくとも特定する情報であってもよい。
【0025】
フォローアップ用のテンプレートには、以下のようなレイアウトで、眼科画像が配置されてもよい。
【0026】
例えば、被検眼に対して前回撮影した眼科画像の領域と、次に撮影する眼科画像の領域と、が並列配置されていてもよい。
【0027】
また、例えば、フォローアップ用のテンプレートには、次に撮影する眼科画像の領域と共に、前回撮影した眼科画像に対する解析結果と次に撮影する眼科画像に対する解析結果との時系列データの表示領域と、が設けられていてもよい。
【0028】
これらのテンプレートによれば、1枚のレポート上で、前回の撮影結果と、次の撮影結果とを見比べるうえで有用である。また、フォローアップ用のテンプレートに含まれる眼科画像の画像種別に少なくとも応じて、フォローアップ撮影における撮影動作が設定される。これにより、過去の撮影結果と比較するうえで必要な撮影動作が、適切に設定される。なお、テンプレート内に配置される眼科画像を得るための撮影動作と、該眼科画像と同時に表示される解析結果を得るうえで必要となる撮影動作と、が不一致である場合は、更に、解析結果を得るうえで必要となる撮影動作が、テンプレートと対応するコンビネーション撮影での撮影動作の1つとして組み込まれてもよい。
【0029】
また、例えば、被検眼に対する過去の撮影において生成されたレポートと同じレイアウトを持つテンプレートが、フォローアップ用のテンプレートとして選択可能であってもよい。
【0030】
<撮影動作の確認表示>
テンプレートと同時に、又は、テンプレートが改変された以後に、テンプレートと対応する撮影動作の内容が、テンプレートとは別に表示されてもよい。撮影動作の内容は、テキストとして表示されてもよい。また、グラフィカルに表示されてもよい。グラフィカルに表示される場合、被検眼を模したモデル(被検眼モデル)を表示すると共に、該モデルに対し、各撮影動作の種別と撮影位置とを示す情報を、対応付けて表示させてもよい。このとき、被検眼を模したモデルは、眼球の3次元形状を示す3次元眼球モデルであってもよい。
【0031】
テンプレートと対応する撮影動作の内容が表示される場合に、その内容は変更可能であってもよい。例えば、被検眼を模したモデルが表示される場合、少なくとも一部の撮影動作における撮影位置を変更する指示を、被検眼モデルを介して受け付け可能であってもよい。受け付けた指示に基づいて、テンプレートと対応する撮影動作の内容が更に変更されてもよい。
【0032】
また、例えば、それぞれの撮影動作における固視位置が、変更可能であってもよい。
【0033】
また、眼科画像を複数回連続して撮影し、複数枚の画像による合成画像(加算画像)を生成する撮影動作においては、その撮影動作における撮影回数および加算回数のいずれかを、変更可能であってもよい。
【0034】
<被検眼の特徴データに基づく撮影制御の調整>
コンピュータは、更に、被検眼における構造的または機能的な特徴を示す特徴データを取得する特徴データ取得ステップを実行してもよい。特徴データは、例えば、視度に関する情報であってもよい。この場合、撮影時の視度補正量が、視度に関する特徴データに基づいて調整されてもよい。また、特徴データは、例えば、透光体の混濁度に関する情報であってもよい。この場合、撮影時の光量、ゲイン、露光時間のいずれかが、透光体の混濁度に関するに基づいて調整されてもよい。また、特徴データは、例えば、視野に関する情報であってもよい。この場合、固視位置が、視野に関する特徴データに基づいて調整されてもよい。なお、視野に関する特徴データは、視野測定の測定結果であってもよいし、眼底画像から推測される情報であってもよい。
【0035】
<レポート生成ステップ>
コンピュータは、更に、取得ステップの後に、レポート生成ステップを実行してもよい。レポート生成ステップでは、取得ステップによって取得された眼科画像を処理して、設定ステップにおいて設定されたテンプレートに応じたレポートが生成される。生成されるレポート上には、コンビネーション撮影に基づいて取得された各眼科画像がテンプレートの選択または編集したことで予め特定されたレイアウトで配置される。これにより、従来の手法に対し、コンビネーション撮影後にレポートの内容を選択または編集する作業の負担が軽減される。
【0036】
<コンピュータの具体例について>
なお、本開示におけるコンピュータは、眼科撮影装置と一体であってもよいし、眼科撮影装置とは別体であってもよい。
【0037】
コンピュータが、眼科撮影装置と一体である場合、コンピュータは、眼科撮影装置の演算および制御を司る。また、眼科画像は、撮影によって直ちに取得される。この場合、レポートは、眼科撮影装置によって生成されてもよい。但し、必ずしもこれに限られるものではなく、眼科撮影装置とは別体の眼科画像観察装置(つまり、ビュワー)によって生成されてもよい。この場合、眼科画像観察装置は、眼科撮影装置から受信した、設定ステップに基づくレポートのレイアウトを特定する情報と、眼科画像取得ステップに基づく複数の眼科画像と、を処理してレポートを生成する。
【0038】
コンピュータが、眼科撮影装置と別体の場合、眼科撮影装置とコンピュータとはネットワークを介して接続される。この場合、コンピュータから眼科撮影装置へ、コンビネーション撮影における撮影動作の組み合わせを示す情報(コマンド)を送信することで、眼科撮影装置における撮影動作を制御する。また、コンピュータによって処理される眼科画像は、ネットワークを介して眼科撮影装置から取得されてもよい。また、この場合、コンピュータは、眼科画像観察装置(つまり、ビュワー)と一体であってもよい。つまり、本開示は、眼科撮影装置と、眼科画像観察装置と、による眼科撮影システムにおいて実施されてもよい。
【0039】
「実施例」
図1~
図6を参照しつつ眼科撮影装置1を、一実施例として説明する。
【0040】
一例として、実施例における眼科撮影装置1は、OCT(光干渉断層計)と、眼底正面画像撮影装置とを組み合わせた、複合装置である。眼底正面画像撮影装置は、走査型の装置(SLO:scanning light ophthalmoscope)であってもよいし、非走査型の装置であってもよい。
【0041】
本実施例において、眼科撮影装置1は、OCT光学系10と、正面撮影光学系20と、固視標呈示光学系30と、を少なくとも備える。
【0042】
眼科撮影装置1は、複数の種別の眼底画像を、それぞれの種別に応じた撮影動作で撮影する。詳細は省略するが、眼底画像の種別毎に上記の光学系において異なる制御が行われ、その結果として、所期する種別の眼底画像が撮影される。また、撮影動作は、眼底上の撮影位置に応じても異なり得る。
【0043】
OCT光学系10は、OCT画像の撮影に利用される。OCT画像は、Bスキャンに基づく画像(例えば、断層画像)であってもよいし、ボリュームデータに基づく画像(例えば、3次元画像、Enface画像、Cスキャン画像等)であってもよい。これらのOCT画像は、強度OCT画像であってもよいし、機能OCT画像(具体例としては、モーションコントラスト画像)であってもよい。
【0044】
OCTにおけるスキャンラインは、検者からの指示に基づいて任意の位置に設定されてもよい。また、あらかじめ定められた複数のスキャンパターンのうちいずれかが選択されることで、スキャンパターンと対応するスキャンラインが設定されてもよい。スキャンパターンとしては、ライン、クロス、マルチ、マップ、ラジアル、サークル、等の種々のものが知られている。
【0045】
正面撮影光学系20は、眼底の正面画像を撮影する他に、観察画像を取得するために利用される。正面撮影光学系20は、眼底の正面画像として、眼底の反射画像が撮影可能であってもよい。反射画像は、例えば、赤外光による反射画像(以下、IR画像と称する)、および、カラー画像等が挙げられる。正面撮影光学系20は、眼底の正面画像として、眼底の蛍光画像を撮影可能であってもよい。正面撮影光学系20は、眼底の正面画像として、蛍光画像が撮影可能であってもよい。蛍光画像は、蛍光造影画像であってもよいし、自発蛍光画像であってもよい。蛍光造影画像は、眼底血管に投与された蛍光造影剤の蛍光発光による撮影画像である。例えば、インドシアニングリーン造影画像、および、フルオレセイン造影画像等が知られている。
【0046】
また、眼科撮影装置1は、画角を、第1画角と、第1画角よりも大きな第2画角との間で変更可能であってもよい。本実施例では、第1画角での撮影動作と第2画角での撮影動作とは、個別の撮影動作として扱われる。
【0047】
眼科撮影装置1は、演算制御部70を有する。演算制御部70は、眼科撮影装置1におけるプロセッサである。演算制御部70は、
図1に示すように、CPU71、RAM72、および、ROM73等によって構成されてもよい。演算制御部70は、眼科撮影装置制御用プログラムに基づいて、眼底画像の撮影制御、および、表示処理等を実行する。
【0048】
図1に示すように、演算制御部70は、データバス等を介して、メモリ75、操作部77、モニタ80、および、各種光学系10,20,30等と接続される。
【0049】
本実施形態において、メモリ75は、不揮発性の記憶装置である。例えば、ハードディスクあるいはフラッシュメモリ等が、メモリ75として適用可能である。実施例において、眼科撮影装置制御用プログラムは、メモリ75に予め記憶されている。メモリ75は、書き換え可能であってもよい。この場合、メモリ75には、眼科撮影装置1から取得される各種の眼底画像が記憶されてもよい。但し、眼底画像は、眼科撮影装置制御用プログラムが記憶されたメモリとは、別体のメモリ(図示せず)に記憶されてもよい。
【0050】
操作部77は、入力インターフェイスである。演算制御部70は、操作部77への操作入力を受け付ける。操作部77としては、種々のデバイスが考えられる。例えば、タッチパッド、マウス、および、キーボードのうちの少なくともひとつが、操作部77として利用されてもよい。また、眼科撮影装置1に備え付けのジョイスティック、および、スイッチ等が、入力インターフェイスとして利用されてもよい。
【0051】
モニタ80は、本実施形態において、表示部(表示デバイス)として利用される。モニタ80は、例えば、汎用のモニタあってもよいし、装置に備え付けのモニタであってもよい。モニタ80に代えて、ヘッドマウントディスプレイ等の他の表示デバイスが、表示部として利用されてもよい。
【0052】
<動作説明>
以下、フローチャートを参照しつつ、装置の動作を説明する。
図2のフローチャートは、実施例の眼科撮影装置制御用プログラムの流れを示している。
【0053】
<被検者の識別>
本実施例の眼科撮影装置1には、被検者のIDが登録される。予めIDが登録されていれば、登録済みIDのうち、被検者と対応するものを選択することによって、これから撮影される被検者が識別される。未登録であれば、IDの入力作業を行うことで、これから撮影される被検者が識別される。
【0054】
<テンプレートを介した撮影動作の設定>
次に、被検者に対する撮影動作が設定される。つまり、これから撮影する眼科画像の種別と、撮影位置と、が設定される。このとき、
図3に示す設定画面が表示され、設定画面を介した指示に基づいて撮影動作が設定される。
【0055】
設定画面には、1つの撮影動作、又は2つ以上の撮影動作の組み合わせによって規定される、撮影方法毎に、選択ボタンが配置されている。また、設定画面200には、タブ201~204が配置されている。このうち、「SLO」タブ201、「OCT」タブ202、および、「SLO+OCT」タブ203は、デフォルトの撮影方法を選択する際に操作される。
【0056】
操作されたタブに応じて、選択可能な撮影方法が切替わる。例えば、
図3に示すように、「OCT」タブ202が操作された場合、OCT撮影による、複数の撮影方法にそれぞれ対応した複数の選択ボタン(
図3では、ボタン211,212,213,214)が表示される。選択ボタンは、1つ、又は、複数の撮影動作による組み合わせと対応付けられている。
【0057】
本実施例において、それぞれの選択ボタンには、撮影方法と対応するレポートのテンプレートが、サムネイルとして対応付けられ表示されている。また、それぞれのテンプレートと対応する撮影動作の組み合わせを示す情報(コマンド)が、211~214の各選択ボタンに予め対応付けられている。これにより、選択ボタンを操作することによって、これから実行される撮影動作の組み合わせ、および、撮影結果としてのレポートの形式が、操作された選択ボタンに応じて設定される。このとき、選択ボタンに付加されたサムネイル(レポートのテンプレート)を目視で確認しながら、検者は、所望のテンプレートでレポートを得るために必要な撮影動作を、適切に選択できる。
【0058】
本実施例において、サムネイルとして表示されるテンプレートのいくつかは、疾患の種別および撮影部位の少なくともいずれかと、予め対応付けられている。例えば、
図3の例において、「黄斑マルチ」および「黄斑マップ」のテンプレートは、疾患の種別としては、例えば、各種黄斑疾患(例えば、加齢黄斑変性、黄斑前膜等)と対応する。また、
図3の例において、「緑内障」および「隅角」のテンプレートは、疾患の種別としては、例えば、緑内障と対応する。
【0059】
図3に示した選択ボタン211~214以外にも、フォローアップ撮影用の選択ボタンが用意されていてもよい。本実施例において、フォローアップ撮影用の選択ボタンには、上記した各選択ボタンと同様に、フォローアップ用のテンプレートが、サムネイルとして対応付けられ表示されていてもよい。
【0060】
ここで、
図4に、フォローアップ用のテンプレートの1例を示す。
図4に示すように、フォローアップ用のテンプレートには、被検眼に対して前回撮影した眼科画像の領域301と、次に撮影する眼科画像の領域302と、が並列配置されてもよい。また、更に、前回撮影した眼科画像に対する解析結果と次に撮影する眼科画像に対する解析結果との時系列データの表示領域310,320と、が配置されてもよい。
図4では、時系列データとして、撮影毎に時系列に並べられた解析マップ311,312(
図4では厚みマップ)と、トレンドグラフ321(
図4では、層厚に関するトレンドグラフ)と、配置されている。トレンドグラフ321において、次に撮影する眼科画像に対する解析結果が配置される領域は、符号322で示した位置に配置される。但し、時系列データは、必ずしもこれに限られるものではない。時系列データは、撮影毎に得られた解析結果を並列配置したものであってもよい。例えば、符号310で示した領域には、撮影毎に得られた解析結果として、解析マップが時系列に並べて配置される。また、時系列データは、撮影毎に得られた解析結果の差分を示す、画像データまたは数値データであってもよい。
【0061】
「Custom」タブ204は、任意の撮影動作の組み合わせによる撮影方法で、撮影を行う場合に操作される。例えば、「Custom」タブ204が操作された場合に表示される選択ボタンには、検者によって作成された(換言すれば、ベースから改変された)レポートのテンプレートが、サムネイルとして対応付けられ表示される。また、それぞれのテンプレートと対応する撮影動作の組み合わせを示す情報が、それぞれの選択ボタンに予め対応付けられている。これにより、選択ボタンを操作することによって、検者によって作成されたレポートと対応する組み合わせで、撮影動作が実行される。このとき利用される撮影動作の組み合わせを規定する情報は、テンプレートの改変操作に基づいて予め記憶されている。
【0062】
本実施例において、「Custom」タブ204が操作された場合に選択可能な撮影方法は、ベースとなるレポートのテンプレートに対する改変操作に基づいて、追加または変更できる。
【0063】
例えば、
図3の選択画面において、ボタン220を操作することで、カスタムレポート(および、独自のコンビネーション撮影)の作成画面(
図6参照)が表示される。
【0064】
その際、本実施例では、まず、予め用意された複数のテンプレート(例えば、
図5に示す、401,402,403,404,…)が表示され、その中から、いずれかをベースとして選択できる。ベースとして選択されたテンプレートは、作成画面上に表示され、該テンプレートに対する改変操作を受け付ける。改変操作に基づいて、テンプレートは改変される。
【0065】
ベースとして選択可能なテンプレートは、デフォルトとして用意されたテンプレート(例えば、「SLO」タブ201、「OCT」タブ202、および、「SLO+OCT」タブ203が選択された場合にサムネイルとして表示されるテンプレート)であってもよいし、過去に作成されたカスタムレポートのテンプレートであってもよい。この時、フォローアップ用のテンプレートを選択可能であってもよい。フォローアップ用のテンプレートを選択することで、被検者に対する過去の撮影で得られた眼底画像および解析結果の何れかが組み込まれ、且つ、カスタマイズされたテンプレートが作成できる。
【0066】
改変操作が行われる度に、表示中のテンプレートにおいて、随時、改変が反映される。改変されたテンプレートは、保存ボタン510を操作することによって保存される。このとき、改変されたテンプレートに含まれる各眼底画像の種別に応じて、コンビネーション撮影における撮影動作の組み合わせを示す情報が、改変後のテンプレートと対応付けて保存される。
【0067】
保存された改変後のテンプレートは、撮影方法を選択するための新たな選択ボタンのサムネイルとして利用される。新たな選択ボタンは、例えば、設定画面において 「Custom」タブ204が操作された場合に表示されてもよい。
【0068】
例えば、テンプレート上における眼底画像の領域に対して選択操作が行われることで、該領域のサイズ変更、該領域に対して表示される画像種別の変更、削除等の改変操作が、更に入力可能となる。
【0069】
また、テンプレート内に、眼底画像以外のオブジェクトが配置されている場合、該オブジェクトに対する選択操作を行うことによって、該オブジェクトの領域のサイズ変更、該オブジェクトの種別の変更、削除等の改変操作が、更に入力可能となる。
【0070】
また、作業画面上には、作業ウインドウ520が表示される。作業ウインドウ520には、例えば、ベースに対して追加可能なオブジェクトと対応するアイコンが、1つ以上配置されている。例えば、正面画像追加用アイコン521、断層画像追加用アイコン522、解析結果追加用アイコン523、テキスト追加用アイコン524、・・・等が、作業ウインドウ520に配置されていてもよい。これらのアイコンの選択後にベース上の位置を指定することによって、アイコンと対応するオブジェクトが指定位置に配置されてもよい。本実施例では、少なくとも眼底画像が追加されることによって、改変中のテンプレートと対応する撮影動作の組み合わせが、変更される。
【0071】
また、作業ウインドウ520には、眼底画像およびその他のオブジェクトに対するその他の改変操作と対応するボタンが配置されていてもよい。
【0072】
なお、ベースに対する改変としては、例えば、レポート内に配置される眼科画像の数の増減、眼科画像の位置の変更、眼科画像のサイズ変更、眼科画像の種別変更、および、眼科画像と共にレポート内に配置される(眼科画像以外の)オブジェクトの追加・削除・変更、等が挙げられる。これらのうち、少なくともいずれかが、改変操作に基づいて実行されてもよい。また、1つの眼科画像の領域上に、2枚以上の眼科画像を重ねて配置可能であってもよい。この場合、手前側の眼科画像の透過度を設定可能であってもよい。
【0073】
<撮影制御>
選択ボタンのいずれかが操作されることによって、操作されたボタンと予め対応付けられている撮影動作の組み合わせを示す情報に基づいて、撮影動作が実行される。撮影動作の組み合わせを示す情報に基づいて、光学系(ここでは、OCT光学系10、正面撮影光学系20、および、固視標呈示光学系30)が適宜制御される。なお、コンビネーション撮影における複数の撮影動作の順序については、それぞれの撮影動作に対して予め定められた優先度に応じて、自動的に設定されてもよい。但し、必ずしもこれに限られるものではなく、検者からの指示に応じてあらかじめ設定されていてもよい。
【0074】
なお、コンビネーション撮影が行われる場合、各撮影動作は、自動的に切換えられてもよい。また、各撮影動作の間に、検者による応答を要求してもよい。ここでいう応答としては、通常画角と広角との切換作業であってもよい。
【0075】
<撮影結果の表示>
撮影動作の完了後、撮影結果が表示される。このとき、所定のテンプレートに撮影結果が組み込まれたレポートが表示されてもよい。例えば、テンプレートに、撮影結果として眼底画像(および解析結果)が組みまれたものが、レポートとして表示されてもよい。
【0076】
このように、本実施例では、撮影動作を設定する際に想定したレポートを、適正に作成できる。
【0077】
以上、実施形態および実施例に基づいて本開示を説明したが、本開示は必ずしも上記実施形態および実施例に限られるものでは無く、種々の変形が可能である。
【0078】
例えば、上記実施形態および実施例において、テンプレートは、レポートのテンプレートであるものとして説明した。しかし、必ずしもレポートのテンプレートに限定されるものではない。テンプレートは、コンビネーション撮影における撮影動作の組み合わせを、テンプレート上に配置される眼底画像によって設定することを目的とした、レポートとは異なる形式のテンプレートであってもよい。つまり、テンプレート上の眼底画像のレイアウトと、撮影の結果出力されるレポートのレイアウトとが、一致することは必ずしも要求されない。なお、この場合においても、操作入力に応じて選択または改変されたテンプレート上に配置される眼底画像に基づいて、レポートの内容が自動的に決定され、出力されてもよい。