(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】情報処理装置、インクジェット記録装置及びインク使用量の算出方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 451
B41J2/01 401
(21)【出願番号】P 2020008004
(22)【出願日】2020-01-22
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】光崎 雅弘
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-218817(JP,A)
【文献】特開2009-233897(JP,A)
【文献】特開2004-090621(JP,A)
【文献】特開2009-183857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に一次元配列された複数のノズルからなるノズル列を有し、前記複数のノズルからインクを吐出するインク吐出部と、
前記インク吐出部と記録媒体とを前記所定方向と交差する方向に相対移動させる移動部と、
画像データの各画素の値に基づいて前記ノズル列の各ノズルからのインクの吐出制御を行うことで、前記移動部により相対移動する前記記録媒体上に画像を形成させる吐出制御手段と、
を備えるインクジェット記録装置におけるインク使用量を算出する情報処理装置であって、
前記画像データの各画素の値に応じた前記ノズルからのインクの想定吐出量を補正する補正手段と、
前記補正手段による補正後の前記想定吐出量を、前記画像データの各画素について積算して前記インク使用量を算出する算出手段と、
を備え、
前記補正手段は、補正対象の画素に対応する補正対象ノズルにより当該画素の値に基づいてインクが吐出される吐出タイミングにおける、前記ノズル列内で前記補正対象ノズルに隣接する隣接ノズルのインクの吐出状態を隣接吐出状態とした場合に、前記吐出タイミングにおける前記補正対象ノズルからのインク吐出量の、前記隣接吐出状態に応じたずれ量に基づく補正量で前記想定吐出量を補正する、情報処理装置。
【請求項2】
前記補正手段は、前記画像データ及び所定の想定吐出量補正情報に基づいて前記想定吐出量を補正し、
前記想定吐出量補正情報からは、任意の前記補正対象ノズルについての、任意の前記隣接吐出状態に応じた前記補正量を取得可能であり、
前記補正手段は、前記補正対象ノズルについての前記隣接吐出状態を前記画像データに基づいて特定し、特定した前記隣接吐出状態に応じた前記補正量を前記想定吐出量補正情報から取得し、取得した前記補正量で前記想定吐出量を補正する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記補正手段は、前記補正対象ノズルに隣接する2つの前記隣接ノズルの前記隣接吐出状態の組み合わせに応じて定まる前記補正量で前記想定吐出量を補正する、請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記隣接吐出状態は、前記ノズル列における、前記隣接ノズル以外の前記補正対象ノズルの近傍ノズルの吐出状態をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記補正手段は、前記吐出タイミングの1つ前の先行吐出タイミングにおける前記補正対象ノズルの吐出状態を先行吐出状態とした場合に、前記吐出タイミングにおける前記補正対象ノズルからのインク吐出量の、前記隣接吐出状態及び前記先行吐出状態に応じた前記ずれ量に基づく補正量で前記想定吐出量を補正する、請求項1~4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記補正手段は、前記吐出タイミングの1つ前の先行吐出タイミングにおける前記補正対象ノズルの吐出状態を先行吐出状態とした場合に、前記吐出タイミングにおける前記補正対象ノズルからのインク吐出量の、前記隣接吐出状態及び前記先行吐出状態に応じた前記ずれ量に基づく補正量で前記想定吐出量を補正し、
前記想定吐出量補正情報からは、任意の前記補正対象ノズルについての、任意の前記隣接吐出状態及び前記先行吐出状態の組み合わせに応じた前記補正量を取得可能であり、
前記補正手段は、前記補正対象ノズルについての前記隣接吐出状態及び前記先行吐出状態を前記画像データに基づいて特定し、特定した前記隣接吐出状態及び前記先行吐出状態の組み合わせに応じた前記補正量を前記想定吐出量補正情報から取得し、取得した前記補正量で前記想定吐出量を補正する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記先行吐出状態は、前記吐出タイミングの2つ以上前の先行吐出タイミングにおける前記補正対象ノズルの吐出状態をさらに含む、請求項5又は6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記補正手段は、前記補正対象ノズルからのインク吐出量の、前記隣接吐出状態、及び前記ノズル列における前記補正対象ノズルの位置に応じた前記ずれ量に基づく補正量で前記想定吐出量を補正する、請求項1~4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記補正手段は、前記補正対象ノズルからのインク吐出量の、前記隣接吐出状態、及び前記ノズル列における前記補正対象ノズルの位置に応じた前記ずれ量に基づく補正量で前記想定吐出量を補正し、
前記想定吐出量補正情報からは、任意の前記補正対象ノズルについての、任意の前記隣接吐出状態及び前記補正対象ノズルの位置の組み合わせに応じた前記補正量を取得可能であり、
前記補正手段は、前記隣接吐出状態及び前記補正対象ノズルの位置の組み合わせに応じた前記補正量を前記想定吐出量補正情報から取得し、取得した前記補正量で前記想定吐出量を補正する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記補正手段は、前記吐出タイミングの1つ前の先行吐出タイミングにおける前記補正対象ノズルの吐出状態を先行吐出状態とした場合に、前記吐出タイミングにおける前記補正対象ノズルからのインク吐出量の、前記隣接吐出状態、前記先行吐出状態、及び前記ノズル列における前記補正対象ノズルの位置に応じた前記ずれ量に基づく補正量で前記想定吐出量を補正する、請求項1~4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記補正手段は、前記吐出タイミングの1つ前の先行吐出タイミングにおける前記補正対象ノズルの吐出状態を先行吐出状態とした場合に、前記吐出タイミングにおける前記補正対象ノズルからのインク吐出量の、前記隣接吐出状態、前記先行吐出状態、及び前記ノズル列における前記補正対象ノズルの位置に応じた前記ずれ量に基づく補正量で前記想定吐出量を補正し、
前記想定吐出量補正情報からは、任意の前記補正対象ノズルについての、任意の前記隣接吐出状態、前記先行吐出状態、及び前記補正対象ノズルの位置の組み合わせに応じた前記補正量を取得可能であり、
前記補正手段は、前記補正対象の画素に対応する前記補正対象ノズルについての前記隣接吐出状態及び前記先行吐出状態を前記画像データに基づいて特定し、特定した前記隣接吐出状態及び前記先行吐出状態と、前記補正対象ノズルの位置との組み合わせに応じた前記補正量を前記想定吐出量補正情報から取得し、取得した前記補正量で前記想定吐出量を補正する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記想定吐出量補正情報において、前記想定吐出量に応じた大きさの前記補正量が、前記想定吐出量ごとに予
め定められている、請求項2、6、9、11のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記想定吐出量補正情報は、空間フィルターにより前記補正量を特定可能に設けられている、請求項2、6、9、11、12のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記補正量を指定する入力操作を受け付ける入力手段と、
前記入力手段により受け付けられた入力操作に基づいて前記想定吐出量補正情報における前記補正量を設定する設定手段と、
を備える、請求項2、6、9、11~13のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記想定吐出量補正情報が記憶された記憶部を備える、請求項2、6、9、11~14のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項16】
所定方向に一次元配列された複数のノズルからなるノズル列を有し、前記複数のノズルからインクを吐出するインク吐出部と、
前記インク吐出部と記録媒体とを前記所定方向と交差する方向に相対移動させる移動部と、
画像データの各画素の値に基づいて前記ノズル列の各ノズルからのインクの吐出制御を行うことで、前記移動部により相対移動する前記記録媒体上に画像を形成させる吐出制御手段と、
請求項1~15のいずれか一項に記載の情報処理装置と、
を備えるインクジェット記録装置。
【請求項17】
前記画像の形成動作、及び前記インク使用量の算出動作を少なくとも一部並行して行う第1のモード、及び
前記画像の形成動作を行わずに前記インク使用量の算出動作を行う第2のモード、
のうち選択された一方のモードで動作する、請求項16に記載のインクジェット記録装置。
【請求項18】
所定方向に一次元配列された複数のノズルからなるノズル列を有し、前記複数のノズルからインクを吐出するインク吐出部と、前記インク吐出部と記録媒体とを前記所定方向と交差する方向に相対移動させる移動部と、画像データの各画素の値に基づいて前記ノズル列の各ノズルからのインクの吐出制御を行うことで、前記移動部により相対移動する前記記録媒体上に画像を形成させる吐出制御手段と、を備えるインクジェット記録装置におけるインク使用量の算出方法であって、
前記画像データの各画素の値に応じた前記ノズルからのインクの想定吐出量を補正する補正ステップと、
補正後の前記想定吐出量を、前記画像データの各画素について積算して前記インク使用量を算出する算出ステップと、
を含み、
前記補正ステップでは、補正対象の画素に対応する補正対象ノズルにより当該画素の値に基づいてインクが吐出される吐出タイミングにおける、前記ノズル列内で前記補正対象ノズルに隣接する隣接ノズルのインクの吐出状態を隣接吐出状態とした場合に、前記吐出タイミングにおける前記補正対象ノズルからのインク吐出量の、前記隣接吐出状態に応じたずれ量に基づく補正量で前記想定吐出量を補正する、インク使用量の算出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、インクジェット記録装置及びインク使用量の算出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録ヘッド等のインク吐出部に対して相対移動する記録媒体に対し、インク吐出部に設けられた複数のノズルから画像データに基づくタイミング及び吐出量でインクを吐出することで、記録媒体上に画像を形成するインクジェット記録装置がある。このインクジェット記録装置では、画像の形成前に予め画像データを補正することにより、形成される画像の色調を調整したり、各ノズルからのインク吐出量のばらつきに起因する濃度むらを低減させたりする技術が知られている。
【0003】
また、インクジェット記録装置による画像形成時の推定のインク使用量を画像データに基づいて算出する技術がある。この技術により、画像の形成に係るコストを見積もったり、インク切れを事前に予測したりすることができる。画像形成時のインク使用量は、画像データの各画素の値に対応するインクの既定の想定吐出量を、画像データに含まれる全画素について積算することで算出することができる。
また、上記のように画像データを事前に補正する場合において、補正後の画像データに基づいてインク使用量を算出することで、画像データの補正によるインク使用量の算出精度の低下を抑える技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、画像データの画素の値に対応するインクの既定の想定吐出量と、当該画素の値に応じて実際にノズルから吐出されるインク量との間には、種々の要因によりずれが生じる。これは、上記のように予め画像データを補正する場合であっても同様である。例えば、既定の吐出量でインクを吐出できない不良ノズルからのインク吐出量を調整するために予め画像データを補正する場合には、補正後の画像データを用いることで当該ノズルから所望の量のインクを吐出させることができるものの、吐出されるインクの量は、補正後の画像データの画素の値に応じて正常なノズルから吐出される量(すなわち、既定の想定吐出量)とは乖離した量となる。画素の値に対応する想定吐出量と、ノズルから実際に吐出されるインク量とが乖離すると、画像データの全体に亘って想定吐出量を積算する際に誤差も累積されるため、算出されるインク使用量に大きな誤差が含まれる結果となる。
このように、従来の技術では、インク使用量を正確に算出することが容易でないという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、インク使用量をより正確に算出することができる情報処理装置、インクジェット記録装置及びインク使用量の算出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の情報処理装置の発明は、
所定方向に一次元配列された複数のノズルからなるノズル列を有し、前記複数のノズルからインクを吐出するインク吐出部と、
前記インク吐出部と記録媒体とを前記所定方向と交差する方向に相対移動させる移動部と、
画像データの各画素の値に基づいて前記ノズル列の各ノズルからのインクの吐出制御を行うことで、前記移動部により相対移動する前記記録媒体上に画像を形成させる吐出制御手段と、
を備えるインクジェット記録装置におけるインク使用量を算出する情報処理装置であって、
前記画像データの各画素の値に応じた前記ノズルからのインクの想定吐出量を補正する補正手段と、
前記補正手段による補正後の前記想定吐出量を、前記画像データの各画素について積算して前記インク使用量を算出する算出手段と、
を備え、
前記補正手段は、補正対象の画素に対応する補正対象ノズルにより当該画素の値に基づいてインクが吐出される吐出タイミングにおける、前記ノズル列内で前記補正対象ノズルに隣接する隣接ノズルのインクの吐出状態を隣接吐出状態とした場合に、前記吐出タイミングにおける前記補正対象ノズルからのインク吐出量の、前記隣接吐出状態に応じたずれ量に基づく補正量で前記想定吐出量を補正する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の情報処理装置において、
前記補正手段は、前記画像データ及び所定の想定吐出量補正情報に基づいて前記想定吐出量を補正し、
前記想定吐出量補正情報からは、任意の前記補正対象ノズルについての、任意の前記隣接吐出状態に応じた前記補正量を取得可能であり、
前記補正手段は、前記補正対象ノズルについての前記隣接吐出状態を前記画像データに基づいて特定し、特定した前記隣接吐出状態に応じた前記補正量を前記想定吐出量補正情報から取得し、取得した前記補正量で前記想定吐出量を補正する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の情報処理装置において、
前記補正手段は、前記補正対象ノズルに隣接する2つの前記隣接ノズルの前記隣接吐出状態の組み合わせに応じて定まる前記補正量で前記想定吐出量を補正する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか一項に記載の情報処理装置において、
前記隣接吐出状態は、前記ノズル列における、前記隣接ノズル以外の前記補正対象ノズルの近傍ノズルの吐出状態をさらに含む。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1~4のいずれか一項に記載の情報処理装置において、
前記補正手段は、前記吐出タイミングの1つ前の先行吐出タイミングにおける前記補正対象ノズルの吐出状態を先行吐出状態とした場合に、前記吐出タイミングにおける前記補正対象ノズルからのインク吐出量の、前記隣接吐出状態及び前記先行吐出状態に応じた前記ずれ量に基づく補正量で前記想定吐出量を補正する。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項2に記載の情報処理装置において、
前記補正手段は、前記吐出タイミングの1つ前の先行吐出タイミングにおける前記補正対象ノズルの吐出状態を先行吐出状態とした場合に、前記吐出タイミングにおける前記補正対象ノズルからのインク吐出量の、前記隣接吐出状態及び前記先行吐出状態に応じた前記ずれ量に基づく補正量で前記想定吐出量を補正し、
前記想定吐出量補正情報からは、任意の前記補正対象ノズルについての、任意の前記隣接吐出状態及び前記先行吐出状態の組み合わせに応じた前記補正量を取得可能であり、
前記補正手段は、前記補正対象ノズルについての前記隣接吐出状態及び前記先行吐出状態を前記画像データに基づいて特定し、特定した前記隣接吐出状態及び前記先行吐出状態の組み合わせに応じた前記補正量を前記想定吐出量補正情報から取得し、取得した前記補正量で前記想定吐出量を補正する。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の情報処理装置において、
前記先行吐出状態は、前記吐出タイミングの2つ以上前の先行吐出タイミングにおける前記補正対象ノズルの吐出状態をさらに含む。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項1~4のいずれか一項に記載の情報処理装置において、
前記補正手段は、前記補正対象ノズルからのインク吐出量の、前記隣接吐出状態、及び前記ノズル列における前記補正対象ノズルの位置に応じた前記ずれ量に基づく補正量で前記想定吐出量を補正する。
【0015】
請求項9に記載の発明は、請求項2に記載の情報処理装置において、
前記補正手段は、前記補正対象ノズルからのインク吐出量の、前記隣接吐出状態、及び前記ノズル列における前記補正対象ノズルの位置に応じた前記ずれ量に基づく補正量で前記想定吐出量を補正し、
前記想定吐出量補正情報からは、任意の前記補正対象ノズルについての、任意の前記隣接吐出状態及び前記補正対象ノズルの位置の組み合わせに応じた前記補正量を取得可能であり、
前記補正手段は、前記隣接吐出状態及び前記補正対象ノズルの位置の組み合わせに応じた前記補正量を前記想定吐出量補正情報から取得し、取得した前記補正量で前記想定吐出量を補正する。
【0016】
請求項10に記載の発明は、請求項1~4のいずれか一項に記載の情報処理装置において、
前記補正手段は、前記吐出タイミングの1つ前の先行吐出タイミングにおける前記補正対象ノズルの吐出状態を先行吐出状態とした場合に、前記吐出タイミングにおける前記補正対象ノズルからのインク吐出量の、前記隣接吐出状態、前記先行吐出状態、及び前記ノズル列における前記補正対象ノズルの位置に応じた前記ずれ量に基づく補正量で前記想定吐出量を補正する。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項2に記載の情報処理装置において、
前記補正手段は、前記吐出タイミングの1つ前の先行吐出タイミングにおける前記補正対象ノズルの吐出状態を先行吐出状態とした場合に、前記吐出タイミングにおける前記補正対象ノズルからのインク吐出量の、前記隣接吐出状態、前記先行吐出状態、及び前記ノズル列における前記補正対象ノズルの位置に応じた前記ずれ量に基づく補正量で前記想定吐出量を補正し、
前記想定吐出量補正情報からは、任意の前記補正対象ノズルについての、任意の前記隣接吐出状態、前記先行吐出状態、及び前記補正対象ノズルの位置の組み合わせに応じた前記補正量を取得可能であり、
前記補正手段は、前記補正対象の画素に対応する前記補正対象ノズルについての前記隣接吐出状態及び前記先行吐出状態を前記画像データに基づいて特定し、特定した前記隣接吐出状態及び前記先行吐出状態と、前記補正対象ノズルの位置との組み合わせに応じた前記補正量を前記想定吐出量補正情報から取得し、取得した前記補正量で前記想定吐出量を補正する。
【0018】
請求項12に記載の発明は、請求項2、6、9、11のいずれか一項に記載の情報処理装置において、
前記想定吐出量補正情報において、前記想定吐出量に応じた大きさの前記補正量が、前記想定吐出量ごとに予め定められている。
【0019】
請求項13に記載の発明は、請求項2、6、9、11、12のいずれか一項に記載の情報処理装置において、
前記想定吐出量補正情報は、空間フィルターにより前記補正量を特定可能に設けられている。
【0020】
請求項14に記載の発明は、請求項2、6、9、11~13のいずれか一項に記載の情報処理装置において、
前記補正量を指定する入力操作を受け付ける入力手段と、
前記入力手段により受け付けられた入力操作に基づいて前記想定吐出量補正情報における前記補正量を設定する設定手段と、
を備える。
【0021】
請求項15に記載の発明は、請求項2、6、9、11~14のいずれか一項に記載の情報処理装置において、
前記想定吐出量補正情報が記憶された記憶部を備える。
【0022】
また、上記目的を達成するため、請求項16に記載のインクジェット記録装置の発明は、
所定方向に一次元配列された複数のノズルからなるノズル列を有し、前記複数のノズルからインクを吐出するインク吐出部と、
前記インク吐出部と記録媒体とを前記所定方向と交差する方向に相対移動させる移動部と、
画像データの各画素の値に基づいて前記ノズル列の各ノズルからのインクの吐出制御を行うことで、前記移動部により相対移動する前記記録媒体上に画像を形成させる吐出制御手段と、
請求項1~15のいずれか一項に記載の情報処理装置と、
を備える。
【0023】
請求項17に記載の発明は、請求項16に記載のインクジェット記録装置において、
前記画像の形成動作、及び前記インク使用量の算出動作を少なくとも一部並行して行う第1のモード、及び
前記画像の形成動作を行わずに前記インク使用量の算出動作を行う第2のモード、
のうち選択された一方のモードで動作する。
【0024】
また、上記目的を達成するため、請求項18に記載のインク使用量の算出方法の発明は、
所定方向に一次元配列された複数のノズルからなるノズル列を有し、前記複数のノズルからインクを吐出するインク吐出部と、前記インク吐出部と記録媒体とを前記所定方向と交差する方向に相対移動させる移動部と、画像データの各画素の値に基づいて前記ノズル列の各ノズルからのインクの吐出制御を行うことで、前記移動部により相対移動する前記記録媒体上に画像を形成させる吐出制御手段と、を備えるインクジェット記録装置におけるインク使用量の算出方法であって、
前記画像データの各画素の値に応じた前記ノズルからのインクの想定吐出量を補正する補正ステップと、
補正後の前記想定吐出量を、前記画像データの各画素について積算して前記インク使用量を算出する算出ステップと、
を含み、
前記補正ステップでは、補正対象の画素に対応する補正対象ノズルにより当該画素の値に基づいてインクが吐出される吐出タイミングにおける、前記ノズル列内で前記補正対象ノズルに隣接する隣接ノズルのインクの吐出状態を隣接吐出状態とした場合に、前記吐出タイミングにおける前記補正対象ノズルからのインク吐出量の、前記隣接吐出状態に応じたずれ量に基づく補正量で前記想定吐出量を補正する。
【発明の効果】
【0025】
本発明に従うと、インク使用量をより正確に算出することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】インクジェット記録装置の概略構成を示す図である。
【
図4】ヘッドモジュールの全体により形成されるドットと、ノズル列により形成されるドットとの関係を示す図である。
【
図5】インクジェット記録装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】隣接吐出状態に応じたインク吐出量のずれを示す図である。
【
図7】隣接吐出状態のパターンに応じた、注目ノズルの想定吐出量の補正方法を説明する図である。
【
図8】想定吐出量の補正量の具体例を示す図である。
【
図9】インク使用量算出処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図10】想定吐出量補正処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図11】隣接吐出状態のパターンに応じたより詳細な想定吐出量の補正方法を説明する図である。
【
図12】
図11に示す想定吐出量の補正量の具体例を示す図である。
【
図13】隣接吐出状態に応じた補正のための空間フィルターの例を示す図である。
【
図14】空間フィルター処理の結果から想定吐出量の補正係数を得るための補正テーブルを示す図である。
【
図15】変形例1-2に係る想定吐出量補正処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図16】先行吐出状態に応じたインク吐出量のずれを示す図である。
【
図17】先行吐出状態のパターンに応じた、注目ノズルの想定吐出量の補正方法を説明する図である。
【
図18】想定吐出量の補正量の具体例を示す図である。
【
図19】第2のインク使用量の算出方法に係る想定吐出量補正処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図20】先行吐出状態に応じた補正のための空間フィルターの例を示す図である。
【
図21】空間フィルター処理の結果から想定吐出量の補正係数を得るための補正テーブルを示す図である。
【
図22】ノズルの位置に応じた想定吐出量の補正係数を得るための補正テーブルを示す図である。
【
図24】第3のインク使用量の算出方法に係る想定吐出量補正処理の制御手順を示すフローチャートである。
【
図25】第1、第2のインク使用量の算出方法を組み合わせる場合の空間フィルターの例を示す図である。
【
図26】第1又は第2のインク使用量の算出方法と、第3のインク使用量の算出方法とを組み合わせる場合の想定吐出量の補正係数の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の情報処理装置、インクジェット記録装置及びインク使用量の算出方法に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態であるインクジェット記録装置1の概略構成を示す図である。
インクジェット記録装置1は、給紙部10と、画像形成部20と、排紙部30と、制御部40(
図5参照)などを備える。インクジェット記録装置1は、制御部40による制御下で、給紙部10に格納された記録媒体Mを画像形成部20に搬送し、画像形成部20で記録媒体Mに画像を形成し、画像が形成された記録媒体Mを排紙部30に搬送する。記録媒体Mとしては、普通紙や塗工紙といった紙のほか、布帛又はシート状の樹脂等、表面に着弾したインクを定着させることが可能な種々の媒体を用いることができる。
【0029】
給紙部10は、記録媒体Mを格納する給紙トレー11と、給紙トレー11から画像形成部20に記録媒体Mを搬送して供給する媒体供給部12とを有する。媒体供給部12は、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを備え、このベルト上に記録媒体Mを載置した状態でローラーを回転させることで記録媒体Mを給紙トレー11から画像形成部20へ搬送する。
【0030】
画像形成部20は、搬送ドラム21(移動部)と、受け渡しユニット22と、記録媒体加熱部23と、ヘッドユニット24(インク吐出部)と、定着部25と、デリバリー部26などを有する。
【0031】
搬送ドラム21は、円柱面状の外周面である搬送面21a上に記録媒体Mを保持した状態で
図1の図面に垂直な方向(以下、幅方向と記す)に延びた回転軸の回りで回転することで記録媒体Mを搬送面21aに沿った搬送方向に搬送する。すなわち、搬送ドラム21は、ヘッドユニット24と記録媒体Mとを幅方向(所定方向)と交差する搬送方向に相対移動させる。搬送ドラム21は、搬送面21a上で記録媒体Mを保持するための図示しない爪部及び吸気孔を備える。記録媒体Mは、爪部により端部が押さえられ、かつ吸気孔により搬送面21aに吸い寄せられることで搬送面21aに保持される。
搬送ドラム21は、搬送ドラム21を回転させるための図示しない搬送ドラムモーターに接続されており、搬送ドラムモーターの回転量に比例した角度だけ回転する。
【0032】
受け渡しユニット22は、給紙部10の媒体供給部12により搬送された記録媒体Mを搬送ドラム21に引き渡す。受け渡しユニット22は、給紙部10の媒体供給部12と搬送ドラム21との間の位置に設けられ、媒体供給部12から搬送された記録媒体Mの一端をスイングアーム部221で保持して取り上げ、受け渡しドラム222を介して搬送ドラム21に引き渡す。
【0033】
記録媒体加熱部23は、受け渡しドラム222の配置位置とヘッドユニット24の配置位置との間に設けられ、搬送ドラム21により搬送される記録媒体Mが所定の温度範囲内の温度となるように当該記録媒体Mを加熱する。記録媒体加熱部23は、例えば、赤外線ヒーターを有し、制御部40から供給される制御信号に基づいて赤外線ヒーターに通電してヒーターを発熱させる。
【0034】
ヘッドユニット24は、記録媒体Mが保持された搬送ドラム21の回転に応じた適切なタイミングで、搬送ドラム21の搬送面21aに対向するインク吐出面から記録媒体Mに対してインクを吐出することにより画像を記録する。ヘッドユニット24は、インク吐出面と搬送面とが所定の距離だけ離隔されるように配置される。本実施形態のインクジェット記録装置1では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の4色のインクにそれぞれ対応する4つのヘッドユニット24が記録媒体Mの搬送方向上流側からY、M、C、Kの色の順に所定の間隔で並ぶように配列されている。
【0035】
図2は、ヘッドユニット24の構成を示す図である。
また、
図3は、
図2の一部を拡大して示す図である。
図2及び
図3は、ヘッドユニット24の全体を搬送ドラム21の搬送面21aに相対する側から見た平面図である。
本実施形態では、ヘッドユニット24は、インクを吐出する複数のノズルNが幅方向に配列された16個の記録ヘッド241を備える。各ノズルNからインクを吐出させるためのインク吐出機構は、特には限られないが、圧電体を用いたピエゾ式のものを用いることができる。ピエゾ式のインク吐出機構としては、シアモード及びベントモードが知られている。シアモードのインク吐出機構は、ノズルNに連通する圧力室の壁面の圧電体にシアモード型の変位を生じさせて圧力室内のインクの圧力を変動させるものである。また、ベントモードのインク吐出機構は、圧力室の壁面を構成する振動板に固着された圧電体を変形させることで圧力室内のインクの圧力を変動させてインクを吐出させるものである。ピエゾ式のインク吐出機構では、圧電体の変形量及び/又は変形回数を変更することで、各ノズルNから吐出されるインクの量を多段階に調整することもできる。
【0036】
ヘッドユニット24では、搬送方向に隣接して配置された2つの記録ヘッド241により、ヘッドモジュール242が構成されている。また、8つのヘッドモジュール242が、ノズルNからインクを吐出可能な範囲が幅方向に連続的に繋がるような位置関係で、幅方向についての配置範囲が互いに一部重複するように千鳥格子状に配置されてラインヘッドが構成されている。
【0037】
図3に示すように、各記録ヘッド241は、幅方向に一次元配列された複数のノズルNからなるノズル列を6列有する。したがって、1つのヘッドモジュール242は、12列のノズル列を有する。同一のノズル列に属する複数のノズルNに連通する複数の圧力室には、共通のインク供給流路からインクが供給される。
以下では、ヘッドモジュール242のうち搬送方向下流側の記録ヘッド241が有するノズル列を、搬送方向下流側から順にノズル列NL1~NL6と記し、搬送方向上流側の記録ヘッド241が有するノズル列を、搬送方向下流側から順にノズル列NL7~NL12と記す。また、ノズル列NL1~12のうち任意の1つを指す場合には、ノズル列NLと記す。また、ノズル列NL1~NL3をまとめてノズル列群Gaと記し、ノズル列NL4~NL6をまとめてノズル列群Gbと記し、ノズル列NL7~NL9をまとめてノズル列群Gcと記し、ノズル列NL10~NL12をまとめてノズル列群Gdと記す。
【0038】
各ノズル列NLでは、ノズルNが幅方向について等間隔となるように配列されている。各ノズル列NLにおけるノズルNの配置ピッチはd1である。
また、ノズル列群Gaを構成するノズル列NL1~NL3は、これらの3つのノズル列NL1~NL3に設けられた全てのノズルNの位置が幅方向について異なるように、かつ等間隔となるように、幅方向についての位置がずらされている。具体的には、ノズル列NL2は、ノズル列NL1に対して幅方向に距離d2だけずらされており、ノズル列NL3は、ノズル列NL2に対して幅方向に距離d2だけずらされている。ここで、d2=d1/3である。ノズル列群Gbを構成するノズル列NL4~NL6、ノズル列群Gcを構成するノズル列NL7~NL9、ノズル列群Gdを構成するノズル列NL10~NL12も、それぞれ同様の位置関係となっている。
【0039】
さらに、ノズル列群Ga~Gdは、ノズル列NL1~NL12に設けられた全てのノズルNの位置が幅方向について異なるように、かつ等間隔となるように、幅方向の位置がずらされている。具体的には、ノズル列群Gcは、ノズル列群Gaに対して幅方向に距離d3だけずらされており、ノズル列群Gbは、ノズル列群Gcに対して幅方向に距離d3だけずらされており、ノズル列群Gdは、ノズル列群Gbに対して幅方向に距離d3だけずらされている。ここで、d3=d2/4=d1/12である。したがって、ヘッドモジュール242では、複数のノズルNが、幅方向についての配置ピッチが距離d3=d1/12となるように配列されている。
【0040】
このように、ノズルNの幅方向の位置が等間隔となるように12列のノズル列をずらして配置することで、ヘッドモジュール242の全体では、各ノズル列NLの解像度の12倍の解像度で画像を記録できるようになっている。本実施形態では、各ノズル列NLの幅方向についての解像度は100dpi(dot per inch)であり、ヘッドモジュール242全体の解像度は1200dpiである。
【0041】
図4は、ヘッドモジュール242の全体により形成されるドットと、1つのノズル列NLにより形成されるドットとの関係を示す図である。
図3に示す配置のノズル列NL1~NL12の各ノズルから記録媒体Mの搬送方向についての同一位置にインクを吐出すると、
図4の上部に示すように、幅方向についての配置ピッチが距離d3である複数のドットが形成される。この複数のドットのうち、1つのノズル列NLにより形成されるドットは、距離d1ごと、すなわち12ドットごとに現れる。例えば、
図4においてノズル列NL2のうち1つの注目ノズルN1により形成されるドットはドットD1であり、ノズル列NL2において注目ノズルN1に隣接する隣接ノズルN2により形成されるドットは、ドットD1から12ドット離れたドットD2である。
このように、複数のノズル列NLを幅方向にずらして解像度を高めているヘッドモジュール242では、ノズル列NLにおける隣接ノズルにより形成されるドットは、ヘッドモジュール242の全体により形成されるドットにおいては隣接しない離れた位置に現れることとなる。
【0042】
なお、ヘッドモジュール242に含まれるノズル列NLの数は12列に限られず、必要な記録解像度と各ノズル列NLにおけるノズルNの配置密度に応じて適宜変更可能である。また、ヘッドモジュール242を構成する記録ヘッド241の数は2つに限られず、3つ以上であってもよい。また、必要なノズル列NLを単一の記録ヘッド241内に設けて、ヘッドモジュール242に代えて当該単一の記録ヘッド241を千鳥格子状に配列してもよい。また、記録ヘッド241において所望の配置密度及び配置数でノズルNを設けることが可能であれば、単一の記録ヘッド241によりヘッドユニット24を構成してもよい(換言すれば、ヘッドユニット24に代えて単一の記録ヘッド241を用いてもよい)。
また、ノズル列NLにおけるノズルNの配列方向は、搬送方向に直交する幅方向に限られず、直角以外の角度で搬送方向と交差する方向であってもよい。
【0043】
図2に示すヘッドユニット24に含まれるノズルNの幅方向についての配置範囲は、搬送ドラム21により搬送される記録媒体Mにおける画像の記録幅をカバーしている。ヘッドユニット24は、画像の記録時には位置が固定されて用いられ、記録媒体Mの搬送に応じて搬送方向の異なる位置に所定の間隔(搬送方向間隔)で順次インクを吐出していくことで、シングルパス方式で記録媒体Mに対して画像を記録する。
【0044】
ヘッドユニット24のノズルNから吐出されるインクとしては、ゲル状とゾル状との間で相変化するインクが用いられる。ここで、ゲルは固体に含まれ、ゾルは液体に含まれる。ヘッドユニット24は、このような特性のインクを液化温度以上に加熱してゾル状とするための図示略のインク加熱部を内部に有する。ヘッドユニット24は、加熱によりゲル状となったインクをノズルNから吐出し、記録媒体M上に着弾したインクは、冷却されることで速やかにゲル状となって記録媒体M上で凝固する。ただし、これに限られず、記録媒体Mに着弾後にゲル状に相変化しない、通常の液体のインクを用いてもよい。
また、本実施形態では、紫外線を照射することにより硬化する性質を有するインク(紫外線硬化型インク)が用いられる。このインクとしては、光重合性化合物(モノマー)、光重合開始剤、ゲル化剤及び着色剤を含むものが用いられる。このうち光重合性化合物は、紫外線が照射されることにより重合反応が進行して高分子化する化合物である。この高分子化により、インクが硬化する。光重合開始剤は、上記重合反応を開始させるための化合物である。ゲル化剤は、インクが加熱されてゾル化温度以上になるとインク中に溶解してインクをゾル化させ、インクが冷却されてゲル化温度以下になると架橋構造を形成したり繊維状会合体を形成したりすることによりインクをゲル化させる性質を有する化合物である。また、着色剤は、当該インクに係る色の顔料又は染料を含む。
【0045】
図1に戻り、定着部25は、搬送ドラム21の幅方向の幅に亘って配置された紫外線照射部を有し、搬送ドラム21に載置された記録媒体Mに対して紫外線照射部から紫外線を照射して記録媒体M上に吐出されたインクを硬化させて定着させる。定着部25の紫外線照射部は、搬送方向についてヘッドユニット24の配置位置からデリバリー部26の受け渡しドラム261の配置位置までの間において搬送面と対向して配置される。
【0046】
デリバリー部26は、内側が2本のローラーにより支持された輪状のベルトを有するベルトループ262と、記録媒体Mを搬送ドラム21からベルトループ262に受け渡す円筒状の受け渡しドラム261とを有し、受け渡しドラム261により搬送ドラム21からベルトループ262上に受け渡された記録媒体Mをベルトループ262により搬送して排紙部30に送出する。
【0047】
排紙部30は、デリバリー部26により画像形成部20から送り出された記録媒体Mが載置される板状の排紙トレー31を有する。
【0048】
図5は、インクジェット記録装置1の機能構成を示すブロック図である。
インクジェット記録装置1は、記録媒体加熱部23と、記録ヘッド241及びヘッド駆動部243を有するヘッドユニット24と、定着部25と、制御部40(吐出制御手段、補正手段、算出手段、設定手段)と、搬送駆動部61と、通信部62と、操作表示部63(入力手段)と、バス64などを備える。このうち制御部40及び操作表示部63により情報処理装置100が構成される。以下では、既に説明した構成については記載を省略する。
【0049】
ヘッド駆動部243は、制御部40から供給される制御信号及び画像データ441に基づいて、記録ヘッド241の圧電体を変形動作させる駆動信号を記録ヘッド241に供給することにより、記録ヘッド241のノズルNから画像データ441の画素の値に応じた量のインクを吐出させる。
【0050】
制御部40は、情報処理装置100を含むインクジェット記録装置1の全体動作を統括制御するプロセッサーである。制御部40は、CPU41(Central Processing Unit)と、RAM42(Random Access Memory)と、ROM43(Read Only Memory)と、記憶部44などを備える。
【0051】
CPU41は、ROM43に記憶された各種制御用のプログラムや設定データを読み出してRAM42に記憶させ、当該プログラムを実行して各種演算処理を行う。
【0052】
RAM42は、CPU41に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。RAM42は、不揮発性メモリーを含んでいてもよい。
【0053】
ROM43は、CPU41により実行される各種制御用のプログラムや設定データ等を格納する。なお、ROM43に代えてフラッシュメモリー等の書き換え可能な不揮発性メモリーが用いられてもよい。
【0054】
記憶部44には、通信部62を介して外部装置から入力されたプリントジョブ(画像記録命令)及び当該プリントジョブに係る記録対象の画像の画像データ441などが記憶される。
また、記憶部44には、後述するインク使用量の算出に用いられる想定吐出量補正データ442(想定吐出量補正情報)が記憶されている。
記憶部44としては、例えばHDD(Hard Disk Drive)が用いられ、また、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などが併用されてもよい。
【0055】
このような構成の制御部40は、例えば、外部装置から通信部62を介して入力されたPDL(Page Description Language)データに対して各種の画像処理を行って、画像の形成に用いられる画像データ441を生成し、記憶部44に記憶させる。画像データ441は、Y、M、C、Kの色ごとに生成される。上記の画像処理としては、PDLデータをラスター形式に変換するラスタライズ処理や、ラスター形式に変換後のデータに対する色補正処理、ハーフトーン処理、再配置処理及び多値化処理などが含まれる。なお、外部装置からラスター形式のデータが入力される場合には、ラスタライズ処理は省略される。
色補正処理には、画像の色調を調整するために画素値を補正する処理の他、複数の記録ヘッド241による記録濃度を揃えるためのシェーディング補正の処理が含まれてもよい。
また、再配置処理は、画像のエッジ部を判別して強調したり、不良ノズルから不吐出となるインクを周辺のノズルからのインク吐出により補完させたりするために、画素の値を変更する処理である。
また、多値化処理は、各画素に応じたインクの吐出量を、予め定められている多段階のインク吐出量のうちいずれかに設定するために、画素の値を変更する処理である。
これらの画像処理がなされた画像データ441は、ヘッドユニット24に設けられたノズルNと対応する数の画素列を有する。画像データ441の各画素は、対応するノズルNからインクを吐出させるタイミング、及び吐出させるインク量を指定する。画素の値が多値化されている場合には、ヘッドユニット24の各ノズルNから、多段階のインク吐出量のうち、画素の値に応じた吐出量のインクが吐出される。
なお、これらの画像処理を行う画像処理部を、制御部40とは別個に設けてもよい。
【0056】
また、制御部40は、生成された画像データ441の各画素の値に基づいて、画素に対応するタイミングでノズル列NLの各ノズルNからのインクの吐出制御を行うことで、記録媒体M上に画像を形成させる。ここで、インクの吐出制御は、ヘッド駆動部243から記録ヘッド241に駆動信号を供給させて、画素の値に応じた量のインクをノズルNから吐出させる制御であり、画素の値がインクの非吐出に対応する場合に、当該画素に対応するタイミングでノズルNからインクを吐出させない制御を含む。また、画素に対応するタイミングとは、記録媒体Mのうち画素に対応するドットを形成すべき位置がヘッドユニットのノズルNと対向するタイミングである。
【0057】
搬送駆動部61は、制御部40から供給される制御信号に基づいて搬送ドラム21の搬送ドラムモーターに駆動信号を供給して搬送ドラム21を所定の速度及びタイミングで回転させる。また、搬送駆動部61は、制御部40から供給される制御信号に基づいて媒体供給部12、受け渡しユニット22、及びデリバリー部26を動作させるためのモーターに駆動信号を供給して、記録媒体Mの搬送ドラム21への供給及び搬送ドラム21からの排出を行わせる。
【0058】
通信部62は、外部機器との間での通信動作を制御する通信インターフェースである。通信インターフェースとしては、例えば、LANボードやLANカードなど、各種通信プロトコルに対応したものが一又は複数含まれる。通信部62は、制御部40の制御に基づいて外部装置から記録対象の画像データや画像記録に係る設定データ(ジョブデータ)を取得し、また、外部機器に対してステータス情報などを送信する。
【0059】
操作表示部63は、制御部40からの制御信号に応じてインクジェット記録装置1のステータスや操作メニューなどの表示を行い、またユーザーの入力操作を受け付けて制御部40に出力する。操作表示部63は、例えば、ユーザーの接触操作を検知するタッチパネルが表示画面に重ねて設けられた液晶表示部を備える。
【0060】
バス64は、上記の各構成間を電気的に接続して信号のやり取りを行う経路である。
【0061】
次に、インクジェット記録装置1におけるインク使用量の算出方法について説明する。
インクジェット記録装置1が有する情報処理装置100は、インクジェット記録装置1が画像データ441に基づいて画像を形成する際の推定のインク使用量を算出することができる。ここで、インク使用量は、画像の形成のために各ノズルNから吐出されて消費されるインク量の合計値である。インク使用量を算出することにより、画像の形成に係るコストを見積もったり、インク切れを事前に予測したりすることができる。
【0062】
インク使用量の算出は、画像の形成動作と並行して実行してもよいし、画像の形成動作とは別個のタイミングで(すなわち、画像の形成動作の前、又は後に)実行してもよい。本実施形態のインクジェット記録装置1は、画像の形成動作、及びインク使用量の算出動作を少なくとも一部並行して行う第1のモード、及び画像の形成動作を行わずにインク使用量の算出動作を行う第2のモード、のうち選択された一方のモードで動作する。第1のモード及び第2のモードの選択は、操作表示部63に対するユーザーの入力操作によるモードの指定に基づいて制御部40が行う。
【0063】
インク使用量は、画像データ441の各画素の値に対応するインクの既定の想定吐出量を、画像データ441に含まれる全画素について積算することで算出することができる。
例えば、画像データ441の各画素が2値である場合、すなわち、画像データ441の画素が、インクの吐出に対応するON画素と、インクの非吐出に対応するOFF画素の2種類である場合には、ON画素に対応するインクの既定の想定吐出量に、画像データ441内のON画素の数を乗じることでインク使用量を算出することができる。
また、画像データ441の各画素が3値以上である場合、すなわち、想定吐出量が互いに異なる2種以上のON画素がある場合には、想定吐出量ごとに、想定吐出量とON画素の数とを乗じて合算すればよい。例えば、想定吐出量が2pLである小液滴用ON画素、想定吐出量が6pLである中液滴用ON画素、及び想定吐出量が10pLである大液滴用ON画素が画像データ441に含まれる場合には、2pL×(小液滴用ON画素の数)+6pL×(中液滴用ON画素の数)+10pL×(大液滴用ON画素の数)を算出することによりインク使用量が得られる。
【0064】
ただし、画像データの画素の値に対応するインクの既定の想定吐出量と、当該画素の値に応じて実際にノズルNから吐出されるインク量との間には、以下の(i)~(iii)の要因によりずれが生じ得る。
(i)同一の吐出タイミングにおける、ノズル列NLにおける隣接ノズルの吐出状態(隣接吐出状態)に応じたインク吐出量のずれ。(以下では、「隣接吐出状態に応じたインク吐出量のずれ」と記す。)
(ii)注目ノズルが、搬送方向についての隣接画素に対応する1つ前の先行吐出タイミングでインクを吐出しているか否か(すなわち、注目ノズルからのインク吐出が2画素に亘って連続しているか否か)に応じたインク吐出量のずれ。(以下では、「先行吐出状態に応じたインク吐出量のずれ」と記す。)
(iii)ノズル列NLにおけるノズルNの位置に応じたインク吐出量のずれ。(以下では、「ノズルNの位置に応じたインク吐出量のずれ」と記す。)
【0065】
これらの(i)~(iii)の要因により、画素の値に対応する既定の想定吐出量と、ノズルNから実際に吐出されるインク量とが乖離すると、画像データ441の全体に亘って想定吐出量を積算する際に誤差も累積されるため、算出されるインク使用量に無視できない誤差が含まれる結果となる。
そこで、本実施形態の情報処理装置100は、(i)~(iii)の一部又は全部に起因するインク吐出量のずれを補正した上でインク使用量を算出する。以下では、当該補正を行ってインク使用量を算出する各種の方法について説明する。
【0066】
(1)第1のインク使用量の算出方法
まず、第1のインク使用量の算出方法について説明する。第1のインク使用量の算出方法では、「(i)隣接吐出状態に応じたインク吐出量のずれ」を補正する。
【0067】
ある吐出タイミングにおける注目ノズルからのインク吐出量は、同一ノズル列NL内で注目ノズルに隣接する隣接ノズルの、上記吐出タイミングにおけるインクの吐出状態に応じて変動する。例えば、
図4のノズル列NL2のうち注目ノズルN1のインク吐出量は、同一の吐出タイミングにおける2つの隣接ノズルN2の吐出状態に応じて変動する。このインク吐出量の変動(ずれ)の要因の一つは、隣接ノズルN2の吐出によりインクに生じる圧力波が、インク供給流路を介して注目ノズルN1に伝わり、注目ノズルN1内のインクの挙動が理想状態からずれることである。よって、隣接ノズルN2がインクを吐出している場合には、隣接ノズルN2からの圧力波によって注目ノズルN1内のインクの挙動が理想状態からずれて、注目ノズルN1からのインク吐出量が既定の想定吐出量から低下する。
【0068】
図6は、隣接吐出状態に応じたインク吐出量のずれを示す図である。
図6のグラフは、隣接ノズルN2が非吐出である場合の注目ノズルN1のインク吐出量(横軸)と、隣接ノズルN2が吐出している場合の注目ノズルN1のインク吐出量(縦軸)とを、駆動信号を変えて(すなわち、想定吐出量を変えて)プロットしたものである。
図6から、隣接ノズルN2が吐出している場合には、隣接ノズルN2が非吐出である場合よりも注目ノズルN1のインク吐出量が低下することがわかる。
【0069】
そこで、第1のインク使用量の算出方法では、補正対象の画素に係る想定吐出量を、当該補正対象の画素に対応する注目ノズルN1(補正対象ノズル)からのインク吐出量の、隣接吐出状態に応じたずれ量に基づく補正値で補正する。そして、このように補正された想定吐出量を、画像データ441の各画素について積算し、インク使用量を算出する。
【0070】
図7は、隣接吐出状態のパターンに応じた、注目ノズルN1の想定吐出量の補正方法を説明する図である。
図7では、注目ノズルN1に対応する画素(補正対象の画素)と、幅方向の2つの隣接ノズルN2に対応する2つの画素(以下、隣接ノズル画素と記す)とが3つの四角形により表されている。このうち補正対象の画素には「*」が付されている。なお、
図4の説明から明らかなように、注目ノズルN1に対応する画素(ドットD1を形成するための画素)と、隣接ノズルN2に対応する画素(ドットD2を形成するための画素)とは、画像データ441においては実際には隣接しておらず、12画素離れている。
また、
図7では、OFF画素を白色で示し、ON画素を着色して示すことで、隣接吐出状態のパターンA1~A4が表されている。
【0071】
パターンA1は、補正対象の画素がON画素、隣接ノズル画素がいずれもOFF画素となっているパターンである。このパターンA1では、隣接ノズルN2がインクを吐出しないため、注目ノズルN1からは、吐出量を変動させる他の要因がない限り、既定の想定吐出量(M)のインクが吐出される。よって、補正後の想定吐出量は、補正前と同一である。換言すれば、補正吐出量は補正されない。換言すれば、補正吐出量の補正量が「0」とされる。
【0072】
A2、A3は、補正対象の画素及び一方の隣接ノズル画素がON画素、他方の隣接ノズルがOFF画素となっているパターンである。また、パターンA4は、補正対象の画素及び2つの隣接ノズル画素がいずれもON画素となっているパターンである。
これらのパターンA2~A4では、少なくとも一方の隣接ノズルN2からインクが吐出されるため、注目ノズルN1からのインク吐出量が、既定の想定吐出量(M)から低減する方向にずれる。よって、パターンA2~A4では、このずれ量に基づいて、想定吐出量がML1=M-dL1に補正される。ここで、-dL1が、想定吐出量の補正量に相当する。-dL1は、注目ノズルN1からのインク吐出量の、隣接吐出状態に応じたずれ量を表すものであるということもできる。
【0073】
図8は、想定吐出量の補正量の具体例を示す図である。
図8では、上述した大液滴、中液滴及び小液滴の3水準のON画素がある場合における補正後の想定吐出量及び補正量の例が示されている。
図8の例では、補正対象の画素が大液滴に対応するON画素であり、隣接吐出状態がパターンA2~A4のいずれかである場合には、想定吐出量が10pLから8.5pLに補正される。すなわち、この場合の補正量は-1.5pLである。
また、補正対象の画素が中液滴に対応するON画素であり、隣接吐出状態がパターンA2~A4のいずれかである場合には、想定吐出量が6pLから5.1pLに補正される。すなわち、この場合の補正量は-0.9pLである。
また、補正対象の画素が小液滴に対応するON画素であり、隣接吐出状態がパターンA2~A4のいずれかである場合には、想定吐出量が2pLから1.7pLに補正される。すなわち、この場合の補正量は-0.3pLである。
【0074】
図7及び
図8に示す、パターンA1~A4に応じた想定吐出量及びその補正量の情報は、想定吐出量補正データ442に予め記憶されている。よって、想定吐出量補正データ442においては、想定吐出量に応じた大きさの補正量が、想定吐出量ごとに(すなわち、大液滴、中液滴、小液滴の各々に対して)予め2水準以上で定められている。これにより、想定吐出量補正データ442からは、任意の注目ノズルN1(補正対象ノズル)についての、任意の隣接吐出状態のパターンに応じた補正量を取得可能となっている。
【0075】
想定吐出量補正データ442に含まれる補正量の情報は、ユーザーの入力操作により変更可能とされていてもよい。すなわち、補正量を指定する入力操作が操作表示部63により受け付けられた場合に、当該入力操作に基づいて、制御部40が想定吐出量補正データ442における補正量を設定するようになっていてもよい。
【0076】
図9は、第1のインク使用量の算出方法を実行するためのインク使用量算出処理の制御部40による制御手順を示すフローチャートである。このインク使用量算出処理は、Y、M、C、Kの各色についてそれぞれ実行される。
インク使用量算出処理が開始されると、制御部40は、画像データの色補正処理、ハーフトーン処理、再配置処理、多値化処理を実行し、インク使用量の算出対象の画像データ441として記憶部44に記憶させる(ステップS101)。
【0077】
制御部40は、画像データ441の先頭の画素を補正対象の画素として選択し(ステップS102)、想定吐出量補正処理を実行する(ステップS103)。
【0078】
図10は、想定吐出量補正処理の制御部40による制御手順を示すフローチャートである。
想定吐出量補正処理が呼び出されると、制御部40は、補正対象の画素、及びその2つの隣接ノズル画素の画素値を取得し、注目ノズルN1及び隣接ノズルN2の吐出状態を特定する(ステップS201)。
【0079】
制御部40は、補正対象の画素がON画素であるか否かを判別し(ステップS202)、ON画素であると判別された場合には(ステップS202で“YES”)、想定吐出量にMを代入する(ステップS203)。
【0080】
制御部40は、左側の隣接ノズル画素がOFF画素であり(ステップS204で“YES”)、かつ右側の隣接ノズル画素がOFF画素である(ステップS205で“YES”)と判別された場合(すなわち、パターンA1に相当する場合)には、想定吐出量補正処理を終了させる。
【0081】
制御部40は、左側の隣接ノズル画素がON画素であると判別された場合(ステップS204で“NO”)、又は右側の隣接ノズル画素がON画素であると判別された場合(ステップS205で“NO”)には、(すなわち、パターンA2~A4のいずれかに相当する場合には)、想定吐出量を上述のML1に補正し(ステップS206)、想定吐出量補正処理を終了させる。
【0082】
ステップS202の処理において、補正対象の画素がOFF画素であると判別された場合には(ステップS202で“NO”)、制御部40は、想定吐出量に0を代入して、想定吐出量補正処理を終了させる。
想定吐出量補正処理の終了時点における想定吐出量が、「補正後の想定吐出量」に相当する。
【0083】
なお、ステップS202~S207の処理フローは、必ずしも
図10のとおりでなくてもよく、想定吐出量補正データ442の参照結果に基づいて、隣接吐出状態がパターンA1である場合には想定吐出量をMとし、隣接吐出状態がパターンA2~A4のいずれかである場合には想定吐出量をML1とするものであれば、任意の処理フローとすることができる。
【0084】
図9に戻り、想定吐出量補正処理が終了すると、制御部40は、想定吐出量補正処理で得られた補正後の想定吐出量を、インク使用量に加算する(ステップS104)。
【0085】
制御部40は、画像データ441に未選択の画素があるか否かを判別し(ステップS105)、未選択の画素があると判別された場合には(ステップS105で“YES”)、次の補正対象の画素を選択して(ステップS106)、処理をステップS103に戻す。全ての画素を選択済であると判別された場合には(ステップS105で“NO”)、制御部40は、インク使用量算出処理を終了させる。
上記のうちステップS103が「補正ステップ」に相当し、ステップS103~S106のループ処理が「算出ステップ」に相当する。
【0086】
(変形例1-1)
次に、第1のインク使用量の算出方法の変形例1-1について説明する。
上述の説明では、2つの隣接ノズル画素のうち少なくとも一方がON画素である場合に、一律に想定吐出量をML1に補正する例を用いて説明したが、これに限られない。
例えば、2つの隣接ノズルN2のうち一方のみがインクを吐出する場合よりも、2つの隣接ノズルN2の双方がインクを吐出する場合の方が、注目ノズルN1からのインク吐出量のずれ量(既定の想定吐出量からの低減量)が大きくなるため、このずれ量の差が反映されるように詳細に補正を行ってもよい。
【0087】
図11は、隣接吐出状態のパターンに応じたより詳細な想定吐出量の補正方法を説明する図である。
また、
図12は、
図11に示す想定吐出量の補正量の具体例を示す図である。
図11及び
図12の例では、一方の隣接ノズル画素のみがON画素であるパターンA2、A3において、想定吐出量がML2=M-dL2に補正される。また、2つの隣接ノズル画素がいずれもON画素であるパターンA4において、想定吐出量がML1=M-dL1に補正される。ここで、dL2<dL1であり、したがってML2>ML1である。
このように、2つの隣接ノズルN2の隣接吐出状態の組み合わせに応じて定まる補正量で想定吐出量を補正することで、より正確に想定吐出量を補正することができる。
【0088】
(変形例1-2)
次に、第1のインク使用量の算出方法の変形例1-2について説明する。
上述では、注目ノズルN1の隣接ノズルN2の吐出状態のみに応じて想定吐出量を補正したが、これに限られず、注目ノズルN1から2つ以上離れた近傍ノズルであって、隣接ノズルN2を除くノズルNの吐出状態をさらに考慮して補正してもよい。すなわち、上述の隣接吐出状態は、ノズル列NLにおける、隣接ノズルN2以外の注目ノズルN1の近傍ノズルの吐出状態をさらに含んでいてもよい。
【0089】
注目ノズルN1から2つ以上離れた近傍ノズルの吐出状態は、隣接ノズルN2の吐出状態よりも、注目ノズルN1のインク吐出量に与える影響が少ない。この影響の大きさを反映させた補正を行う方法としては、空間フィルターを用いる方法が挙げられる。
図13は、隣接吐出状態に応じた補正のための空間フィルターの例を示す図である。
図14は、空間フィルター処理の結果から想定吐出量の補正係数を得るための補正テーブルを示す図である。
図13の空間フィルター、及び
図14の補正テーブルは、想定吐出量補正データ442に含まれている。
【0090】
図13の空間フィルターでは、補正対象の画素の近傍ノズルに対応する画素に、それぞれ空間フィルター係数が設定されている。本変形例の空間フィルター処理では、近傍ノズルに対応する画素のうち、ON画素となっている画素の空間フィルター係数を積算する。そして、
図14の補正テーブルを参照し、得られた積算値に対応する補正係数を取得して、既定の想定吐出量に当該補正係数を乗じて補正する。既定の想定吐出量と、当該想定吐出量に補正係数を乗じた後の値との差分が、補正量に相当する。補正テーブルは、空間フィルターの積算値と補正係数との関係を示す
図14のグラフそのものを表すデータであってもよいし、空間フィルターの可能な積算値と補正係数とが対応付けられたテーブルデータであってもよい。
想定吐出量補正データ442に含まれる空間フィルター係数及び補正テーブルの内容は、ユーザーの入力操作により変更可能とされていてもよい。
【0091】
図13の例1は、隣接ノズルN2に対応する隣接ノズル画素のみを考慮する場合の空間フィルターであり、
図11で説明した補正方法に相当する。
図13の例2は、影響範囲を注目ノズルN1の隣接3ノズルまでとみなし、注目ノズルN1に近いノズルNの重み付けが大きくなるように空間フィルター係数を配分したものである。
図13の例3は、隣接3ノズルに対応する画素のうち、既に補正対象の画素として選択済の画素のみを考慮するものである。これにより、画素値を取得済の画素のみが空間フィルターの処理対象とされるため、データ参照の処理を簡素化することができる。
【0092】
本変形例の方法でインク使用量を算出する場合には、
図9のインク使用量算出処理において、ステップS103の想定吐出量補正処理の内容を以下のように変更する。
【0093】
図15は、変形例1-2に係る想定吐出量補正処理の制御部40による制御手順を示すフローチャートである。
図15のフローチャートは、
図10のフローチャートのステップS201をステップS201aに変更し、ステップS204~S206を削除し、ステップS203の後にステップS208を追加したものに相当する。以下では、
図10のフローチャートとの相違点について説明する。
【0094】
ステップS201aでは、制御部40は、補正対象の画素の画素値と、2つの隣接ノズルN2を含む、所定範囲の近傍ノズルに対応する画素の画素値を取得し、注目ノズルN1及び近傍ノズルの吐出状態を特定する。
【0095】
制御部40は、ステップS203が終了すると、上述の空間フィルター処理を実行し、処理結果に応じて想定吐出量を補正する(ステップS208)。すなわち、制御部40は、空間フィルターの積算値を算出した上で
図14の補正テーブルを参照し、空間フィルターの積算値に対応する補正係数を取得して、想定吐出量に当該補正係数を乗じて補正する。ステップS208の処理が終了すると、制御部40は、想定吐出量補正処理を終了させる。
【0096】
(2)第2のインク使用量の算出方法
次に、第2のインク使用量の算出方法について説明する。第2のインク使用量の算出方法では、「(ii)先行吐出状態に応じたインク吐出量のずれ」を補正する。
【0097】
ある吐出タイミングにおける注目ノズルN1からのインク吐出量は、当該吐出タイミングより1つ前の先行吐出タイミングにおける注目ノズルN1の吐出状態(先行吐出状態)に応じて変動する。換言すれば、注目ノズルN1からのインク吐出が、搬送方向に隣接する2画素に亘って連続しているインク吐出であるか否かに応じて、インク吐出量が変動する。より詳しくは、インク吐出が連続している場合には、後段で吐出されるインク量が既定の想定吐出量よりも多くなりやすい。これは、先行するインク吐出によって、注目ノズルN1に連通する圧力室内に圧力波が生じ、この圧力波との間で共振が生じるタイミングで後段のインクが吐出されることでインクの吐出効率が上がり、インク吐出量が増大するためである。
【0098】
図16は、先行吐出状態に応じたインク吐出量のずれを示す図である。
図16のグラフは、先行吐出タイミングで非吐出である場合の注目ノズルN1のインク吐出量(横軸)と、先行吐出タイミングで吐出している場合の注目ノズルN1のインク吐出量(縦軸)とを、駆動信号を変えて(すなわち、想定吐出量を変えて)プロットしたものである。
図16から、先行吐出タイミングで吐出している場合には、非吐出である場合よりも注目ノズルN1のインク吐出量が増大することがわかる。
【0099】
そこで、第2のインク使用量の算出方法では、補正対象の画素に係る想定吐出量を、当該補正対象の画素に対応する注目ノズルN1(補正対象ノズル)からのインク吐出量の、先行吐出状態に応じたずれ量に基づく補正値で補正する。そして、このように補正された想定吐出量を、画像データ441の各画素について積算し、インク使用量を算出する。
【0100】
図17は、先行吐出状態のパターンに応じた、注目ノズルN1の想定吐出量の補正方法を説明する図である。
図17では、注目ノズルN1に対応する画素(補正対象の画素)と、当該画素の隣接画素であって、注目ノズルN1の先行吐出タイミングに対応する隣接画素(以下、先行隣接画素と記す)とが2つの四角形により表されている。また、
図17では、先行吐出状態のパターンB1、B2が表されている。
【0101】
パターンB1は、補正対象の画素がON画素、先行隣接画素がOFF画素となっているパターンである。このパターンB1では、先行吐出タイミングでのインク吐出がなく、連続吐出によるインク吐出量の増大効果が生じないため、注目ノズルN1からは、吐出量を変動させる他の要因がない限り、既定の想定吐出量(M)のインクが吐出される。よって、補正後の想定吐出量は、補正前と同一である。換言すれば、補正吐出量の補正量が「0」とされる。
【0102】
図7のパターンB2は、補正対象の画素及び先行隣接画素がいずれもON画素となっているパターンである。このパターンB2では、先行吐出タイミングにおける吐出によってインク吐出量の増大効果が生じるため、注目ノズルN1からのインク吐出量が、既定の想定吐出量(M)から増大する方向にずれる。よって、パターンB2では、このずれ量に基づいて、想定吐出量がMH=M+dHに補正される。ここで、dHが、想定吐出量の補正量に相当する。dHは、注目ノズルN1からのインク吐出量の、先行吐出状態に応じたずれ量を表すものであるということもできる。
【0103】
図18は、想定吐出量の補正量の具体例を示す図である。
図18では、上述した大液滴、中液滴及び小液滴の3水準のON画素がある場合における補正後の想定吐出量及び補正量の例が示されている。
図18の例では、補正対象の画素が大液滴に対応するON画素であり、先行吐出状態がパターンB2である場合には、想定吐出量が10pLから11.5pLに補正される。すなわち、この場合の補正量は1.5pLである。
また、補正対象の画素が中液滴に対応するON画素であり、先行吐出状態がパターンB2である場合には、想定吐出量が6pLから6.9pLに補正される。すなわち、この場合の補正量は0.9pLである。
また、補正対象の画素が小液滴に対応するON画素であり、先行吐出状態がパターンB2である場合には、想定吐出量が2pLから2.3pLに補正される。すなわち、この場合の補正量は0.3pLである。
【0104】
図17及び
図18に示す、パターンB1、B2に応じた想定吐出量の補正量の情報は、想定吐出量補正データ442に予め記憶されている。すなわち、想定吐出量補正データ442からは、任意の注目ノズルN1(補正対象ノズル)についての、任意の先行吐出状態のパターンに応じた補正量を取得可能となっている。
想定吐出量補正データ442に含まれる補正量の情報は、ユーザーの入力操作により変更可能とされていてもよい。すなわち、補正量を指定する入力操作が操作表示部63により受け付けられた場合に、当該入力操作に基づいて、制御部40が想定吐出量補正データ442における補正量を設定するようになっていてもよい。
【0105】
第2のインク使用量の算出方法でインク使用量を算出する場合には、
図9のインク使用量算出処理において、ステップS103の想定吐出量補正処理の内容を以下のように変更する。
【0106】
図19は、第2のインク使用量の算出方法に係る想定吐出量補正処理の制御部40による制御手順を示すフローチャートである。
図19のフローチャートは、
図10のフローチャートのステップS201をステップS201bに変更し、ステップS204~S206を削除し、ステップS203の後にステップS209、S210を追加したものに相当する。以下では、
図10のフローチャートとの相違点について説明する。
【0107】
ステップS201bでは、制御部40は、補正対象の画素及び先行隣接画素の画素値を取得し、注目ノズルN1の吐出状態及び先行吐出状態を特定する。
【0108】
制御部40は、ステップS203が終了すると、先行隣接画素がOFF画素であるか否かを判別し(ステップS209)、先行隣接画素がOFF画素であると判別された場合、すなわちパターンB1に相当すると判別された場合には(ステップS209で“YES”)、想定吐出量補正処理を終了させる。
一方、先行隣接画素がON画素であると判別された場合、すなわちパターンB2に相当すると判別された場合には(ステップS209で“NO”)、制御部40は、想定吐出量をMHに補正し(ステップS210)、想定吐出量補正処理を終了させる。
【0109】
(変形例2-1)
次に、第2のインク使用量の算出方法の変形例2-1について説明する。
上述では、注目ノズルN1の吐出タイミングの1つ前の先行吐出タイミングにおける吐出状態のみに応じて想定吐出量を補正したが、これに限られず、2つ以上前の先行吐出タイミングにおける吐出状態をさらに考慮して補正してもよい。すなわち、上述の先行吐出状態は、2つ以上前の先行吐出タイミングにおける吐出状態をさらに含んでいてもよい。
【0110】
2つ以上前の先行吐出タイミングにおける吐出状態は、1つ前の先行吐出タイミングにおける吐出状態よりも、注目ノズルN1のインク吐出量に与える影響が少ない。この影響の大きさを反映させた補正を行う方法としては、上述の変形例1-2と同様、空間フィルター処理を用いる方法が挙げられる。
図20は、先行吐出状態に応じた補正のための空間フィルターの例を示す図である。
図21は、空間フィルター処理の結果から想定吐出量の補正係数を得るための補正テーブルを示す図である。
図20の空間フィルター、及び
図21の補正テーブルは、想定吐出量補正データ442に含まれている。
【0111】
図20の空間フィルターでは、補正対象の画素(iライン目の画素)と、当該画素に対応する吐出タイミングよりn回前の先行吐出タイミングに対応する画素(i-nライン目の画素)と、に対してそれぞれ空間フィルター係数が設定されている。本変形例の空間フィルター処理では、i-nライン目の画素のうち、ON画素となっている画素の空間フィルター係数を積算する。そして、
図21の補正テーブルを参照し、得られた積算値に対応する補正係数を取得して、既定の想定吐出量に当該補正係数を乗じて補正する。既定の想定吐出量と、当該想定吐出量に補正係数を乗じた後の値との差分が、補正量に相当する。
想定吐出量補正データ442に含まれる空間フィルター係数及び補正テーブルの内容は、ユーザーの入力操作により変更可能とされていてもよい。
【0112】
図20の例1は、1つ前の先行吐出タイミングに対応する画素のみを考慮する場合の空間フィルターであり、
図17で説明した補正方法に相当する。
図20の例2は、影響範囲を3つ前の先行吐出タイミングまでとみなし、近い先行吐出タイミングの重み付けが大きくなるように空間フィルター係数を配分したものである。
【0113】
本変形例の方法でインク使用量を算出する場合には、
図19の想定吐出量補正処理のステップS209、S210に代えて、空間フィルター処理を実行し、処理結果に応じて想定吐出量を補正するステップを設ければよい。
【0114】
(3)第3のインク使用量の算出方法
次に、第3のインク使用量の算出方法について説明する。第3のインク使用量の算出方法では、「(iii)ノズルNの位置に応じたインク吐出量のずれ」を補正する。
【0115】
ノズルNからのインク吐出量は、ノズル列NLにおけるノズルNの位置によっても変動し得る。
ノズルNの位置によるインク吐出量の変動要因は様々であるが、一例としては、ノズルNの位置によるインクの温度差(及び当該温度差に応じた粘度差)、圧力室へのインク流量の差、インクの流路形状の相違などが挙げられる。このうちインクの温度差は、記録ヘッド241(又は、ヘッドモジュール242、ヘッドユニット24。以下同じ)の外部からインクを加熱する場合に、記録ヘッド241の外縁部に近いノズルNほど加熱効率が高まって高温となることにより生じ得る。また、記録ヘッド241の動作熱によってもインクの温度差が生じ得る。記録ヘッド241の動作熱は、記録ヘッド241の外縁部から遠いほど放熱されにくいため、上記の加熱による温度差とは逆に、記録ヘッド241の外縁部から遠いノズルNほどインクが高温となる。
また、ノズルNの位置によるインク吐出量の変動には、ノズルの個体差、例えば、ノズルの製造ばらつきや、異物の付着等による経時的な状態変化などに起因するものも含まれる。
【0116】
このようなノズルNの位置によるインク吐出量の変動があると、形成画像に濃度ばらつきが生じて画質の低下に繋がる。この画質低下を抑えるために、記録ヘッド241の取付時や交換時に、記録ヘッド241ごと、又はノズル列NLごとに駆動電圧の電圧値を調整したり、ノズル列NL方向の濃度の不均一性を補正するために画像データに対してシェーディング補正を行ったりする対処が行われる。なお、1ノズル単位で駆動信号の電圧値を補正することで、ノズルNの位置によるインク吐出量の変動を正確に抑えるシステム構成も考えられるが、インクジェット記録装置1の制御規模、コスト、及び印刷パフォーマンスなどの観点から現実的ではない。
【0117】
上記の対処により、ノズルNの位置によるインク吐出量のばらつきが多少あっても、画像の均一性を目視上悪化させずに画像を形成することが可能である。
しかしながら、このような対処を行っても、各ノズルNから実際に吐出されるインク量と、画素の値に対応する既定の想定吐出量との乖離は解消されないため、インク使用量の算出結果には無視できない誤差が生じる。
【0118】
そこで、第3のインク使用量の算出方法では、補正対象の画素に係る想定吐出量を、当該補正対象の画素に対応する注目ノズルN1(補正対象ノズル)からのインク吐出量の、ノズル列NLにおける注目ノズルN1の位置に応じたずれ量に基づく補正値で補正する。そして、このように補正された想定吐出量を、画像データ441の各画素について積算し、インク使用量を算出する。
【0119】
図22は、ノズルNの位置に応じた想定吐出量の補正係数を得るための補正テーブルを示す図である。
図22は、記録ヘッド241を外部から加熱することにより、ノズルNの位置に応じたインク吐出量のばらつきが生じている場合の補正テーブルの例である。この場合には、記録ヘッド241の外縁部に近いノズルNほどインクが高温となって粘度が低下し、吐出効率が増大してインク吐出量が大きくなっている。よって、幅方向について記録ヘッド241の両端部近傍の位置範囲P3で想定吐出量の補正係数を大きくするとともに、記録ヘッド241の中央付近の位置範囲P1では補正係数を1に近い値とし、位置範囲P1、P3の中間の位置範囲P2では補正係数をその中間値としている。ノズルN1の位置に応じてこの補正係数を既定の想定吐出量に乗じることで、ノズルN1の位置によるインク吐出量のずれを考慮した正確なインク使用量の算出が可能となる。
図22の補正テーブルは、想定吐出量補正データ442に含まれている。この補正テーブルの内容は、ユーザーの入力操作により変更可能とされていてもよい。
【0120】
なお、
図22の補正テーブルは一例であり、上述した各種の要因によって生じるインク吐出量のずれに応じて補正係数を定めればよい。ノズルNの位置に応じたインク吐出量のずれは、各ノズルNからのインク吐出量を予め直接測定してもよいし、インク吐出量が反映される代用特性から予め推測してもよい。
この代用特性としては、例えばノズルNからのインク吐出により記録媒体M上に形成した所定のテスト画像におけるラインの濃度又は線幅、若しくはドットの濃度、直径又は面積などが挙げられる。
【0121】
図23は、テスト画像70の例を示す図である。
図23(a)のテスト画像70は、1つのノズルNからのインク吐出により形成された搬送方向に延在するライン71が、ノズルNに対応する数だけ形成された画像である。
図23(a)のテスト画像70のライン71は、搬送方向に搬送される記録媒体Mに対して3ノズルおきのノズルNから連続してインクを吐出させることにより形成されたものである。
図23(b)のテスト画像70は、1つのノズルNからのインク吐出により形成されたドット72が、ノズルNに対応する数だけ形成された画像である。
図23(b)のテスト画像70のドット72は、搬送方向に搬送される記録媒体Mに対して3ノズルおきのノズルNからインクを吐出させることにより形成されたものである。
各ライン71及び各ドット72は、単一のノズルNから吐出されたインクにより形成されたものであるため、テスト画像70の撮像結果からライン71の濃度又は線幅、若しくはドット72の濃度、直径又は面積を検出することで、ノズルNからのインク吐出量を推定することができる。テスト画像70を撮像する撮像装置は、インクジェット記録装置1に設けられたインラインの撮像装置であってもよいし、インクジェット記録装置1の外部に設けられたオフラインの撮像装置であってもよい。
【0122】
また、環境変化又は経時的な変化に伴うインク吐出量のずれが予め分かっている場合には、環境変化又は時間の経過を検知する検知手段をインクジェット記録装置1に設け、当該検知手段の検知結果に基づいて想定吐出量の補正係数を都度設定してもよい。
【0123】
第3のインク使用量の算出方法でインク使用量を算出する場合には、
図9のインク使用量算出処理において、ステップS103の想定吐出量補正処理の内容を以下のように変更する。
【0124】
図24は、第3のインク使用量の算出方法に係る想定吐出量補正処理の制御部40による制御手順を示すフローチャートである。
図24のフローチャートは、
図10のフローチャートのステップS201をステップS201cに変更し、ステップS204~S206を削除し、ステップS203の後にステップS211を追加したものに相当する。以下では、
図10のフローチャートとの相違点について説明する。
【0125】
ステップS201cでは、制御部40は、補正対象の画素の画素値、及び当該画素に対応する注目ノズルN1の位置を取得し、注目ノズルN1の吐出状態を特定する。
【0126】
制御部40は、ステップS203が終了すると、
図22の補正テーブルを参照して注目ノズルN1の位置に対応する補正係数を取得し、想定吐出量に当該補正係数を乗じて補正する(ステップS211)。制御部40は、ステップS211の処理が終了すると、想定吐出量補正処理を終了させる。
【0127】
(4)第1~第3のインク使用量の算出方法の組み合わせ
次に、第1~第3のインク使用量の算出方法の組み合わせについて説明する。
【0128】
(4-1)第1、第2のインク使用量の算出方法の組み合わせ
隣接吐出状態に応じて想定吐出量を補正する第1のインク使用量の算出方法と、先行吐出状態に応じて想定吐出量を補正する第2のインク使用量の算出方法とは、組み合わせることができる。この場合には、隣接ノズル画素がON状態である場合に想定吐出量を低減させる補正と、先行吐出タイミングで吐出している場合に想定吐出量を増大させる補正とを合成すればよい。このような補正は、空間フィルターを用いることで容易に行うことができる。
【0129】
図25は、第1、第2のインク使用量の算出方法を組み合わせる場合の空間フィルターの例を示す図である。
この空間フィルターは、
図13の例2の空間フィルターと、
図20の例2の空間フィルターを組み合わせたものに相当する。
図25の空間フィルターを用いる空間フィルター処理では、注目ノズルN1から隣接3ノズル以内の近傍ノズルに対応する画素のうち、ON画素となっている画素の空間フィルター係数を積算し、さらに、i-n(n=1~3)ライン目の画素のうち、ON画素となっている画素の空間フィルター係数を積算する。そして、図示略の所定の補正テーブルを参照し、得られた積算値に対応する補正係数を取得して、既定の想定吐出量に当該補正係数を乗じて補正する。
このような方法によれば、隣接吐出状態に応じたインク吐出量のずれ、及び先行吐出状態に応じたインク吐出量のずれを反映した想定吐出量の補正を行うことができるため、より正確にインク使用量を算出することができる。
【0130】
(4-2)第1又は第2のインク使用量の算出方法と、第3のインク使用量の算出方法との組み合わせ
第1又は第2のインク使用量の算出方法と、ノズルNの位置に応じたインク吐出量のずれ」を補正する第3のインク使用量の算出方法とは、組み合わせることができる。この場合には、隣接吐出状態の各パターン、又は先行吐出状態の各パターンに対して、それぞれノズルNの位置に応じた補正係数を設定しておき、隣接吐出状態のパターンとノズルNの位置の組み合わせ、又は先行吐出状態のパターンとノズルNの位置の組み合わせに対応する補正係数で想定吐出量を補正すればよい。
【0131】
図26は、第1又は第2のインク使用量の算出方法と、第3のインク使用量の算出方法とを組み合わせる場合の想定吐出量の補正係数の例を示す図である。
図26の補正係数の情報は、想定吐出量補正データ442に含まれている。
図26(a)は、第1、第3のインク使用量の算出方法を組み合わせる場合の想定吐出量の補正係数の例を示す。
図26(a)では、隣接吐出状態のパターンA1~A4の各々に対して、位置範囲P1~P3にそれぞれ対応する補正係数が設定されている。よって、隣接ノズル画素から特定した隣接吐出状態のパターンと、注目ノズルN1の位置とから、1つの補正係数を特定することができる。想定吐出量補正処理では、この特定した補正係数により想定吐出量を補正すればよい。
【0132】
また、
図26(b)は、第2、第3のインク使用量の算出方法を組み合わせる場合の想定吐出量の補正係数の例を示す。
図26(b)では、先行吐出状態のパターンB1、B2の各々に対して、位置範囲P1~P3にそれぞれ対応する補正係数が設定されている。よって、先行隣接画素から特定した先行吐出状態のパターンと、注目ノズルN1の位置とから、1つの補正係数を特定することができる。想定吐出量補正処理では、この特定した補正係数により想定吐出量を補正すればよい。
【0133】
これらの方法によれば、隣接吐出状態又は先行吐出状態と、注目ノズルN1の位置とに応じたインク吐出量のずれを考慮した補正を行うことができるため、より正確にインク使用量を算出することができる。
【0134】
(4-3)第1~第3のインク使用量の組み合わせ
第1~第3のインク使用量の算出方法をすべて組み合わせてもよい。この場合には、例えば
図25の空間フィルターの可能な積算値の各々に対して、
図26のように位置範囲P1~P3にそれぞれ対応する補正係数を設定しておき、
図25の空間フィルターの積算値と、注目ノズルN1の位置とから特定された補正係数により想定吐出量を補正すればよい。この方法によれば、隣接吐出状態、先行吐出状態、及び注目ノズルN1の位置に応じたインク吐出量のずれを全て考慮した補正を行うことができるため、より正確にインク使用量を算出することができる。
【0135】
以上のように、本実施形態に係る情報処理装置100は、幅方向に一次元配列された複数のノズルNからなるノズル列NLを有し、複数のノズルNからインクを吐出するヘッドユニット24と、ヘッドユニット24と記録媒体Mとを幅方向と交差する方向に相対移動させる搬送ドラム21と、画像データ441の各画素の値に基づいてノズル列NLの各ノズルNからのインクの吐出制御を行うことで、搬送ドラム21により相対移動する記録媒体M上に画像を形成させる吐出制御手段としての制御部40と、を備えるインクジェット記録装置1におけるインク使用量を算出する情報処理装置100であって、当該情報処理装置100の制御部40は、画像データ441の各画素の値に応じたノズルNからのインクの想定吐出量を補正し(補正手段)、補正後の想定吐出量を、画像データ441の各画素について積算してインク使用量を算出し(算出手段)、補正対象の画素に対応する注目ノズルN1(補正対象ノズル)により当該画素の値に基づいてインクが吐出される吐出タイミングにおける、ノズル列NL内で注目ノズルN1に隣接する隣接ノズルN2のインクの吐出状態を隣接吐出状態とした場合に、上記吐出タイミングにおける注目ノズルN1からのインク吐出量の、隣接吐出状態に応じたずれ量に基づく補正量で想定吐出量を補正する(補正手段)(第1のインク使用量の算出方法)。
これによれば、隣接ノズルN2の隣接吐出状態に応じた注目ノズルN1からのインク吐出量のずれを、インク使用量の算出値に反映させることができる。よって、想定吐出量を一律の固定値とする従来のインク使用量の算出方法と比較して、より正確にインク使用量を算出することができる。また、1ノズル単位で駆動信号の電圧値を補正するような大規模な電圧制御機構を設けてインク吐出量のずれを抑制する必要がないため、インクジェット記録装置1の構成の複雑化及び高コスト化を避けつつ、インク使用量の算出精度を高めることができる。
【0136】
また、補正手段としての制御部40は、画像データ441及び想定吐出量補正データ442に基づいて想定吐出量を補正し(補正手段)、想定吐出量補正データ442からは、任意の注目ノズルN1についての、任意の隣接吐出状態に応じた補正量を取得可能であり、制御部40は、注目ノズルN1についての隣接吐出状態を画像データ441に基づいて特定し、特定した隣接吐出状態に応じた補正量を想定吐出量補正データ442から取得し、取得した補正量で想定吐出量を補正する。これによれば、想定吐出量補正データ442を参照する簡易な処理で適切な補正量を取得することができる。
【0137】
また、補正手段としての制御部40は、注目ノズルN1に隣接する2つの隣接ノズルN2の隣接吐出状態の組み合わせに応じて定まる補正量で想定吐出量を補正する(第1のインク使用量の算出方法の変形例1-1)。これによれば、2つの隣接ノズルの吐出状態の組み合わせに応じて、より正確に想定吐出量を補正することができる。
【0138】
また、隣接吐出状態は、ノズル列NLにおける、隣接ノズルN2以外の注目ノズルN1の近傍ノズルの吐出状態をさらに含む(第1のインク使用量の算出方法の変形例1-2)。これによれば、2ノズル以上離れた近傍ノズルの吐出状態に応じたインク吐出量のずれをさらに考慮して想定吐出量を補正することができる。よって、インク使用量の算出精度をさらに高めることができる。
【0139】
また、補正手段としての制御部40は、吐出タイミングの1つ前の先行吐出タイミングにおける注目ノズルN1の吐出状態を先行吐出状態とした場合に、吐出タイミングにおける注目ノズルN1からのインク吐出量の、隣接吐出状態及び先行吐出状態に応じたずれ量に基づく補正量で想定吐出量を補正する(第1、第2のインク使用量の算出方法の組み合わせ)。これによれば、先行吐出状態に応じた注目ノズルN1からのインク吐出量のずれを、インク使用量の算出値にさらに反映させることができる。よって、インク使用量の算出精度をさらに高めることができる。
【0140】
また、想定吐出量補正データ442からは、任意の注目ノズルN1についての、任意の隣接吐出状態及び先行吐出状態の組み合わせに応じた補正量を取得可能であり、補正手段としての制御部40は、注目ノズルN1についての隣接吐出状態及び先行吐出状態を画像データ441に基づいて特定し、特定した隣接吐出状態及び先行吐出状態の組み合わせに応じた補正量を想定吐出量補正データ442から取得し、取得した補正量で想定吐出量を補正する(第1、第2のインク使用量の算出方法の組み合わせ)。これによれば、想定吐出量補正データ442を参照する簡易な処理で適切な補正量を取得することができる。
【0141】
また、先行吐出状態は、吐出タイミングの2つ以上前の先行吐出タイミングにおける注目ノズルN1の吐出状態をさらに含む(第2のインク使用量の算出方法の変形例2-1)。これによれば、2つ以上前の先行吐出タイミングにおける吐出状態に応じたインク吐出量のずれをさらに考慮して想定吐出量を補正することができる。よって、インク使用量の算出精度をさらに高めることができる。
【0142】
また、補正手段としての制御部40は、注目ノズルN1からのインク吐出量の、隣接吐出状態、及びノズル列NLにおける注目ノズルN1の位置に応じたずれ量に基づく補正量で想定吐出量を補正する(第1、第3のインク使用量の算出方法の組み合わせ)。これによれば、ノズル列NLにおける注目ノズルN1の位置に応じた注目ノズルN1からのインク吐出量のずれを、インク使用量の算出値にさらに反映させることができる。よって、インク使用量の算出精度をさらに高めることができる。
【0143】
また、想定吐出量補正データ442からは、任意の注目ノズルN1についての、任意の隣接吐出状態及び注目ノズルN1の位置の組み合わせに応じた補正量を取得可能であり、補正手段としての制御部40は、隣接吐出状態及び注目ノズルN1の位置の組み合わせに応じた補正量を想定吐出量補正データ442から取得し、取得した補正量で想定吐出量を補正する(第1、第3のインク使用量の算出方法の組み合わせ)。これによれば、想定吐出量補正データ442を参照する簡易な処理で適切な補正量を取得することができる。
【0144】
また、補正手段としての制御部40は、吐出タイミングの1つ前の先行吐出タイミングにおける注目ノズルN1の吐出状態を先行吐出状態とした場合に、吐出タイミングにおける注目ノズルN1からのインク吐出量の、隣接吐出状態、先行吐出状態、及びノズル列NLにおける注目ノズルN1の位置に応じたずれ量に基づく補正量で想定吐出量を補正する(第1~第3のインク使用量の算出方法の組み合わせ)。これによれば、先行吐出状態に応じた注目ノズルN1からのインク吐出量のずれ、及びノズル列NLにおける注目ノズルN1の位置に応じた注目ノズルN1からのインク吐出量のずれを、インク使用量の算出値にさらに反映させることができる。よって、インク使用量の算出精度をさらに高めることができる。
【0145】
また、想定吐出量補正データ442からは、任意の注目ノズルN1についての、任意の隣接吐出状態、先行吐出状態、及び注目ノズルN1の位置の組み合わせに応じた補正量を取得可能であり、補正手段としての制御部40は、補正対象の画素に対応する注目ノズルN1についての隣接吐出状態及び先行吐出状態を画像データ441に基づいて特定し、特定した隣接吐出状態及び先行吐出状態と、注目ノズルN1の位置との組み合わせに応じた補正量を想定吐出量補正データ442から取得し、取得した補正量で想定吐出量を補正する(第1~第3のインク使用量の算出方法の組み合わせ)。これによれば、想定吐出量補正データ442を参照する簡易な処理で適切な補正量を取得することができる。
【0146】
また、想定吐出量補正データ442において、想定吐出量に応じた大きさの補正量が、想定吐出量ごとに予め2水準以上で定められている。これによれば、想定吐出量に応じた適切な補正量を簡易な処理で特定することができる。
【0147】
また、想定吐出量補正データ442は、空間フィルターにより補正量を特定可能に設けられている(変形例1-2、変形例2-1、第1、第2のインク使用量の算出方法の組み合わせ)。これによれば、空間フィルターの係数を積算する簡易な処理で、想定吐出量の適切な補正量を特定することができる。
【0148】
また、情報処理装置100は、補正量を指定する入力操作を受け付ける操作表示部63を備え、設定手段としての制御部40は、操作表示部63により受け付けられた入力操作に基づいて想定吐出量補正データ442における補正量を設定する。これによれば、想定吐出量の補正量をユーザーが簡易に調整することができる。
【0149】
また、情報処理装置100は、想定吐出量補正データ442が記憶された記憶部44を備える。これによれば、外部装置との通信を行わずに情報処理装置100の内部で想定吐出量の補正を行うことができる。
【0150】
また、本実施形態に係るインクジェット記録装置1は、幅方向に一次元配列された複数のノズルNからなるノズル列NLを有し、複数のノズルNからインクを吐出するヘッドユニット24と、ヘッドユニット24と記録媒体Mとを幅方向と交差する方向に相対移動させる搬送ドラム21と、画像データ441の各画素の値に基づいてノズル列NLの各ノズルNからのインクの吐出制御を行うことで、搬送ドラム21により相対移動する記録媒体M上に画像を形成させる吐出制御手段としての制御部40と、上記の情報処理装置100と、を備える。これによれば、インクジェット記録装置1の内部で、インク使用量を正確に算出することができる。
【0151】
また、インクジェット記録装置1は、画像の形成動作、及びインク使用量の算出動作を少なくとも一部並行して行う第1のモード、及び画像の形成動作を行わずにインク使用量の算出動作を行う第2のモード、のうち選択された一方のモードで動作する。このうち第2のモードによれば、実際に画像の印刷を開始する前にインク使用量を推定することができるため、想定するコストに見合った印刷であるか否か判断を印刷開始前に行うことができる。
【0152】
また、本実施形態に係るインク使用量の算出方法は、画像データ441の各画素の値に応じたノズルNからのインクの想定吐出量を補正する補正ステップと、補正後の想定吐出量を、画像データ441の各画素について積算してインク使用量を算出する算出ステップと、を含み、補正ステップでは、補正対象の画素に対応する注目ノズルN1(補正対象ノズル)により当該画素の値に基づいてインクが吐出される吐出タイミングにおける、ノズル列NL内で注目ノズルN1に隣接する隣接ノズルN2のインクの吐出状態を隣接吐出状態とした場合に、吐出タイミングにおける注目ノズルN1からのインク吐出量の、隣接吐出状態に応じたずれ量に基づく補正量で想定吐出量を補正する。これによれば、想定吐出量を一律の固定値とする従来のインク使用量の算出方法と比較して、より正確にインク使用量を算出することができる。
【0153】
なお、本発明は、上記実施形態及び各変形例に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、インク使用量を算出する情報処理装置100がインクジェット記録装置1に設けられている例を用いて説明したが、これに限られず、情報処理装置100は、インクジェット記録装置1の外部に設けられていてもよい。この場合には、インクジェット記録装置1と情報処理装置100とを通信接続することで、画像データ441をインクジェット記録装置1及び情報処理装置100で共用することができる。
【0154】
また、インク使用量の算出に用いる画像データは、1つの独立した画像を形成するための画像データ441に限られず、1つの画像に対応する画像データ441の一部であってもよい。画像の一部に対応するデータを用いることにより、画像のうち任意の部分を形成するために消費されるインク量を算出することができる。
【0155】
また、上記実施形態では、隣接吐出状態に応じたインク吐出量のずれとして、隣接ノズルN2が吐出している場合に注目ノズルN1からのインク吐出量が減少する例を用いて説明したが、これに限定する趣旨ではない。記録ヘッド241のインク吐出機構や駆動方式などによっては、隣接ノズルN2が吐出している場合に注目ノズルN1からのインク吐出量が増大する場合もあり得る。本発明は、このような場合にも適用することができる。
【0156】
また、上記実施形態では、先行吐出状態に応じたインク吐出量のずれとして、先行吐出タイミングで吐出している場合に注目ノズルN1からのインク吐出量が増大する例を用いて説明したが、これに限定する趣旨ではない。記録ヘッド241のインク吐出機構や駆動方式などによっては、先行吐出タイミングで吐出している場合に注目ノズルN1からのインク吐出量が減少する場合もあり得る。本発明は、このような場合にも適用することができる。
【0157】
また、上記実施形態では、シングルパス形式のインクジェット記録装置1を例に挙げて説明したが、記録ヘッドを走査させながら画像の記録を行うインクジェット記録装置に本発明を適用してもよい。
【0158】
また、上記実施形態では、移動部として搬送ドラム21を例示して説明したが、これに限定する趣旨ではない。移動部は、例えば2本のローラーに支持されローラーの回転に応じて移動する搬送ベルトなどであってもよい。また、記録ヘッドを走査させながら画像の記録を行う場合の移動部には、記録ヘッドを走査させる機構が含まれる。
【0159】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0160】
1 インクジェット記録装置
10 給紙部
11 給紙トレー
12 媒体供給部
20 画像形成部
21 搬送ドラム(移動部)
21a 搬送面
22 受け渡しユニット
23 記録媒体加熱部
24 ヘッドユニット(インク吐出部)
241 記録ヘッド
242 ヘッドモジュール
243 ヘッド駆動部
25 定着部
26 デリバリー部
30 排紙部
31 排紙トレー
40 制御部(吐出制御手段、補正手段、算出手段、設定手段)
41 CPU
42 RAM
43 ROM
44 記憶部
441 画像データ
442 想定吐出量補正データ(想定吐出量補正情報)
61 搬送駆動部
62 通信部
63 操作表示部(入力手段)
64 バス
70 テスト画像
100 情報処理装置
Ga~Gd ノズル列群
M 記録媒体
N ノズル
N1 注目ノズル(補正対象ノズル)
N2 隣接ノズル
NL、NL1~NL12 ノズル列