(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ケーブル架設具
(51)【国際特許分類】
H02G 7/00 20060101AFI20240110BHJP
H02G 1/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H02G7/00
H02G1/02
(21)【出願番号】P 2020009611
(22)【出願日】2020-01-24
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】日向 秀昭
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-065804(JP,A)
【文献】特開2019-030102(JP,A)
【文献】実開平06-048334(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
H02G 7/00-7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺体で、電柱の側面に
当接させて取り付けられ、前記電柱の上下方向に沿って延びる腕金支持材と、
前記腕金支持材に着脱自在に取り付けられ、ケーブルを架設可能な腕金と、
を備え、前記腕金支持材は、前記腕金を取り付けるための取付部が、上下方向に沿って所定の間隔で複数設けられている、
ことを特徴とするケーブル架設具。
【請求項2】
前記腕金支持材は、前記電柱の全周の一部から突出するように形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のケーブル架設具。
【請求項3】
前記腕金の端部に係止部が設けられ、
前記取付部は、被係止部で構成され、
前記係止部を前記被係止部に係止することで、前記腕金が前記腕金支持材に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載のケーブル架設具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電柱に通信線や電線などのケーブルを架設するためのケーブル架設具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、通信線を電柱に架設・添架する場合、通信線と通信線との間隔が所定距離(法定距離)以上確保されるように、各通信事業者によって施工が行わる。しかしながら、架設箇所が少ないために、通信線間隔が所定距離未満にもかかわらず、既設の通信線の近くに新たな通信線が架設されてしまう場合がある。
【0003】
すなわち、
図6に示すように、電柱Pに第1の腕金101と第2の腕金102がバンド111、112で取り付けられ、それぞれの腕金101、102に通信線110が架設され、第1の腕金101の通信線110と第2の腕金102の通信線110との間隔D11が、所定距離以上確保されている。このような状態で、第3の腕金103を第1の腕金101と第2の腕金102との間にバンド113で取り付け、第3の腕金103に通信線110を架設したとする。この場合、第1の腕金101の通信線110と第3の腕金103の通信線110との間隔D12および、第2の腕金102の通信線110と第3の腕金103の通信線110との間隔D13が、所定距離未満になってしまい、法規制に反することになる。
【0004】
このため、このような離隔が確保されていない架設が生じていないか否かを定期的に巡視する必要がある。しかも、離隔が確保されていない架設が確認された場合には、該当の通信事業者と協議を行い、架設箇所を変更する工事を行う必要があり、多大な時間と労力を要していた。
【0005】
一方、電線を所定の間隔で配設できる支持装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この支持装置は、V字状の第1の腕金が上部と下部で電柱に取り付けられ、第1の腕金の傾斜部に電線を支持する碍子が所定間隔で複数配設されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の支持装置を通信線の架設などに適用したとしても、第1の腕金が電柱に取り付けられている上部と下部の間で、新たな腕金を電柱に取り付けることができてしまう。この結果、この腕金に通信線が架設されて、所定の離隔を確保できなくなってしまう。
【0008】
そこでこの発明は、ケーブル間隔を所定距離に維持可能なケーブル架設具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、長尺体で、電柱の側面に当接させて取り付けられ、前記電柱の上下方向に沿って延びる腕金支持材と、前記腕金支持材に着脱自在に取り付けられ、ケーブルを架設可能な腕金と、を備え、前記腕金支持材は、前記腕金を取り付けるための取付部が、上下方向に沿って所定の間隔で複数設けられている、ことを特徴とするケーブル架設具である。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載のケーブル架設具において、前記腕金支持材は、前記電柱の全周の一部から突出するように形成されている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のケーブル架設具において、前記腕金の端部に係止部が設けられ、前記取付部は、被係止部で構成され、前記係止部を前記被係止部に係止することで、前記腕金が前記腕金支持材に取り付けられる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、腕金支持材に取付部が所定の間隔で複数設けられているため、複数の取付部に腕金を取り付け、各腕金でケーブルを架設することで、ケーブル間隔を所定距離(法定距離以上)に確保して複数のケーブルを上下に架設することが可能となる。また、電柱の上下方向に延びて腕金支持材が取り付けられるため、この腕金支持材が邪魔してこの腕金支持材の上から別の腕金(本発明の腕金以外の腕金)を取り付けることが困難となる。すなわち、腕金支持材の取付部間に別の腕金を取り付けることが困難であり、第三者が別の腕金を取り付けることによってケーブル間の離隔が維持されなくなるのを防止することが可能となる。
【0013】
しかも、ケーブルの位置調整(高さ変更)が必要な場合には、腕金を別の取付部に取り付けることで容易に調整できるとともに、調整後においてもケーブル間隔を所定距離に維持することが可能となる。このようにして、ケーブル間の離隔を常に適正に確保、維持することが可能となる。
【0014】
請求項2の発明によれば、電柱の全周の一部から突出するように腕金支持材が形成されているため、この腕金支持材の上から別の腕金を取り付けることがさらに困難となる。この結果、ケーブル間隔を所定距離により効果的に維持することが可能となる。
【0015】
請求項3の発明によれば、係止部を被係止部に係止するだけで、腕金を腕金支持材に容易かつ適正に取り付けられるため、作業者の負担を軽減して、作業時間や作業費を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の実施の形態に係るケーブル架設具の配設状態を示す正面図である。
【
図2】
図1のケーブル架設具の腕金支持材を示す(a)正面図と(b)右側面図と(c)平面図である。
【
図3】
図1のケーブル架設具の腕金を示す(a)正面図と(b)左側面図である。
【
図4】この発明の実施の形態における第2のケーブル架設具の配設状態を示す正面図である。
【
図5】この発明の実施の形態における第3のケーブル架設具の配設状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0018】
図1は、この発明の実施の形態に係るケーブル架設具1の配設状態を示す正面図である。このケーブル架設具1は、電柱Pに通信線や電線などのケーブル110を架設するための吊り具であり、主として、腕金支持材21と腕金3とを備える。
【0019】
腕金支持材21は、電柱Pの側面に接して取り付けられ、電柱Pの上下方向に沿って延びる部材であり、電柱Pの全周の一部から突出するように形成されている。すなわち、
図2に示すように、腕金支持材21は、断面がコ字状の長尺体で、正面板部21Aとその両側から略垂直に延びる脚部21Bを備える。この腕金支持材21の長さは、後述する取付部21Cを所望数設けられるように、つまり、腕金3を所望数取り付けられるように設定されている。
【0020】
この腕金支持材21の上下端側には、それぞれ取付バンド22が装着されている。すなわち、腕金支持材21の上下端側の両脚部21Bに対向するバンド挿入孔が形成され、このバンド挿入孔に取付バンド22が挿入、装着されている。この取付バンド22の自由端部には、締付具(例えば、ボルト、ナット)23が取り付けられている。
【0021】
そして、腕金支持材21の両脚部21Bの自由端部を電柱Pの側面に当接させて、腕金支持材21を電柱Pの上下方向に沿って延びるように配置し、取付バンド22を電柱Pに巻き付けて締付具23を締め付ける。これにより、腕金支持材21が電柱Pの側面に接して電柱Pの上下方向に沿って延びて取り付けられ、かつ、電柱Pの全周の一部から突出するように(全周に沿って腕金支持材21が取り付けられるのではなく、一部から突出するように)取り付けられるものである。
【0022】
また、腕金支持材21の正面板部21Aには、腕金3を取り付けるための取付部21Cが、上下方向に沿って所定の間隔で複数設けられている。各取付部21Cは、この実施の形態では、4つの係止孔(被係止部)21aと1つのネジ孔21bで構成されている。すなわち、係止孔21aは、後述する係止フック(係止部)31が係止可能な縦長の略四角い孔であり、このような係止孔21aが四方(長方形の四隅)に形成されている。また、ネジ孔21bは、後述する取付ボルト32が螺合する雌ネジであり、4つの係止孔21aの中央部に形成されている。
【0023】
このような取付部21Cが、正面板部21Aの上下方向に所定の間隔D1で複数(この実施の形態では4つ)形成されている。ここで、所定の間隔とは、後述するようにして腕金3が取り付けられケーブル110が架設された状態で、隣接する上下のケーブル110間の距離(
図1に示す腕金3間の距離D1に相当)が所定距離(法定距離)以上確保されるように設定されている。
【0024】
腕金3は、腕金支持材21に着脱自在に取り付けられ、ケーブル110を架設可能なアームである。すなわち、
図3に示すように、横長の略直方体状で、一端側(腕金支持材21側)の下辺部が端縁に向って末広状に形成されている。また、一端面(端部)3aは、略長方形で係止フック31と取付ボルト32が設けられている。係止フック31は、一端面3aから略水平に延びて先端部が略垂直下方に曲がった鉤形で、一端面3aの四隅に設けられている。また、一端面3aの中央部にはボルト孔が形成され、このボルト孔に取付ボルト32の雄ネジ側が挿入、装着されている。ここで、少なくとも腕金3の一端側の末広部3bには開口が設けられ、この開口から取付ボルト32を回せるようになっている。
【0025】
そして、係止フック31を腕金支持材21の係止孔21aに係止することで、腕金2が横(略水平)に延びて腕金支持材21に取り付けられ、取付ボルト32をネジ孔21bに締め付けることで、腕金2が腕金支持材21に強固に固定される。また、取付ボルト32を緩めて係止フック31を係止孔21aから抜き出すことで、腕金2を腕金支持材21から外せるものである。
【0026】
このような腕金3には、ケーブル110を架設するための架設具4が複数(この実施の形態では2つ)取り付けられている。架設具4の構成は、ケーブル110を架設できればどのようなものであってもよいが、この実施の形態では、L字取付材41と把持材44などを備える。L字取付材41は、L字状で、その水平部が架設ボルト42と架設ナット43とによって腕金3に固定されている。把持材44は、ケーブル110を挿入、把持するリング状の把持部44aを備え、L字取付材41の垂直部に把持ボルト45と把持ナット46によって固定されている。このような架設具4が、ケーブル110間の距離が所定距離(法定距離)以上確保されるように、2つ腕金3に取り付けられている。
【0027】
このような構成のケーブル架設具1によれば、腕金支持材21に取付部21Cが所定の間隔D1(法定距離以上)で複数設けられているため、複数の取付部21Cに腕金3を取り付け、各腕金3の架設具4でケーブル110を架設することで、ケーブル110間隔を所定距離(法定距離以上)に確保して複数のケーブル110を上下に架設することが可能となる。また、電柱Pの上下方向に延びて腕金支持材21が取り付けられるため、この腕金支持材21が邪魔してこの腕金支持材21の上から別の腕金(本発明の腕金3以外の腕金、例えば、
図6の腕金101~103)を取り付けることが困難となる。すなわち、腕金支持材21の取付部21C間(腕金3間)に別の腕金を取り付けることが困難であり、第三者が別の腕金を取り付けることによってケーブル110間の離隔が維持されなくなるのを防止することが可能となる。
【0028】
しかも、ケーブル110の位置調整(高さ変更)が必要な場合には、腕金3を別の取付部21Cに取り付けることで容易に調整できるとともに、調整後においてもケーブル110間隔を所定距離に維持することが可能となる。このようにして、ケーブル110間の離隔を常に適正に確保、維持することが可能となる。
【0029】
また、電柱Pの全周の一部から突出するように腕金支持材21が形成されているため、この腕金支持材21の上から別の腕金を取り付けることがさらに困難となる。つまり、電柱Pの全周の一部から腕金支持材21が突出した異形状のため(電柱Pと腕金支持材21を含めた断面形状が円形などではないため)、別の腕金を取り付けることがさらに困難となる。この結果、ケーブル110間隔を所定距離により効果的に維持することが可能となる。
【0030】
さらに、係止フック31を係止孔21aに係止するだけで、腕金3を腕金支持材21に容易かつ適正に取り付けられるため、作業者の負担を軽減して、作業時間や作業費を低減することが可能となる。
【0031】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、取付バンド22で1つの腕金支持材21を電柱Pに取り付ける場合について説明したが、取付バンド22で複数の腕金支持材21を電柱Pに取り付けるようにしてもよい。例えば、
図4に示すように、電柱Pを中心に対象(点対象)に2つの腕金支持材21を配置して、2つの腕金支持材21を取付バンド22で共締めして電柱Pに取り付けるようにしてもよい。
【0032】
また、腕金支持材21を一体で構成する場合について説明したが、着脱自在な複数の部材で腕金支持材21を構成してもよい。例えば、
図5に示すように、1つの取付部23Cを有する支持ブロック20を複数連結して腕金支持材21を構成してもよい。これにより、所望数の取付部23Cを有する腕金支持材21を容易に構成することができるとともに、取付部23Cを容易に追加、削減することができる。ここで、隣接する支持ブロック20同士は、連結部材(接続バー)などを介して連結すればよい。
【符号の説明】
【0033】
1 ケーブル架設具
21 腕金支持材
21C 取付部
21a 係止孔(被係止部)
21b ネジ孔
22 取付バンド
23 締付具
3 腕金
3a 一端面(端部)
31 係止フック(係止部)
32 取付ボルト
4 架設具
110 ケーブル
P 電柱