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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ステープラ
(51)【国際特許分類】
   B27F 7/38 20060101AFI20240110BHJP
   B27F 7/36 20060101ALI20240110BHJP
   B25C 5/15 20060101ALI20240110BHJP
   B25C 7/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B27F7/38
B27F7/36
B25C5/15
B25C7/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020010427
(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公開番号】P2021115765
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006301
【氏名又は名称】マックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110001209
【氏名又は名称】特許業務法人山口国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 浩明
(72)【発明者】
【氏名】工藤 友亮
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-236684(JP,A)
【文献】特開2012-066315(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0057012(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27F 7/38
B27F 7/36
B25C 5/15
B25C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
一対の側壁と先端壁とにより囲まれ、上方に開口を有し、前記本体に挿入される第1位置と前記本体から突出する第2位置との間で移動可能に構成されるマガジンであって、前記第2位置にあるとき、前記開口からステープルを出し入れ可能なマガジンと、
前記マガジンが前記第1位置にあるとき、前記マガジンの上方に位置し、前記マガジン内の前記ステープルに向けて移動可能に構成されるドライバであって、前記ステープルに向けて移動することで前記マガジンの下方にセットされた用紙束に前記ステープルを打ち込むドライバと、
前記マガジンが前記第1位置にあるとき、前記マガジンの下方かつ前記ドライバと対向するように位置し、前記ドライバの打ち込み動作により前記用紙束を貫通したステープルの脚部を受けて折り曲げるクリンチャと、
少なくとも一部が前記マガジンの移動経路上に位置する第3位置と、全部が前記移動経路上から外れる第4位置との間で変位可能に前記本体に取り付けられるカバーと
前記マガジンを前記第1位置にロックするロック部と、
前記ロックを解除するロック解除部と
を備え、
前記カバーは、前記第3位置にあり、かつ前記マガジンが前記第2位置にあるとき、前記本体から突出している前記マガジンの前記一対の側壁、前記先端壁及び前記開口を覆うように構成され
前記ロック解除部は、前記カバーが前記第3位置にあるときに当該カバーの内側に位置し、前記カバー内の前記本体の上面に設けたロック解除ボタンである
ステープラ。
【請求項2】
前記カバーは、前記本体に回転可能に取り付けられ、回転することで前記第3位置と前記第4位置との間で変位する
請求項1に記載のステープラ。
【請求項3】
前記カバーの前記一部は、前記カバーが前記第4位置にあるとき、前記カバーが前記第3位置にあるときよりも、上方に位置する
請求項2に記載のステープラ。
【請求項4】
前記カバーが前記第3位置にあるとき、前記マガジンの前記先端壁と対向する前記カバーの端面が、前記マガジンの移動方向において前記ドライバと前記クリンチャとによって前記用紙束を前記ステープルで綴じる綴じ位置から13mm以上である
請求項1から3の何れか一項に記載のステープラ。
【請求項5】
前記カバーが前記第3位置にあることを検知する検知部と、
前記検知部により前記カバーが前記第3位置にあることが検知された場合に、前記ドライバによる打ち込み動作を可能とする制御部と
を備える請求項1から4の何れか一項に記載のステープラ。
【請求項6】
前記マガジンを前記第2位置側に付勢する弾性部材を備え、
前記マガジンは、前記カバーが第4位置にあり、かつ前記ロック部により前記本体にロックされていない状態では、前記弾性部材の付勢により前記第2位置に移動する、
請求項に記載のステープラ。
【請求項7】
前記カバーは、前記第3位置にあるとき、前記マガジンを前記第1位置に規制する規制部を有する
請求項1からの何れか一項に記載のステープラ。
【請求項8】
前記規制部は、前記カバーの内壁に設けられる
請求項に記載のステープラ。
【請求項9】
前記規制部は、前記マガジンの前記先端壁と対向する位置に設けられる
請求項に記載のステープラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステープルにより用紙束を綴じるステープラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、用紙束にステープルを打ち込んで用紙束を綴じるステープラが利用されている。特に用紙束にステープルを自動で打ち込むことができる電動ステープラは、綴じる力が必要なく、作業性に優れるため、大量の用紙束を綴じる用途などに広く用いられている。引用文献1に記載の電動ステープラは、ステープルを収容するマガジンを備える。マガジンは、側壁と先端壁に囲まれ、上方が開口した構造となっており、マガジンにステープルを装填するときには、本体からマガジンの開口を露出させ(前方に飛び出させ)、開口からステープルを装填するようなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-241171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、マガジンが本体から露出した状態で、ステープルを傾けたり、転倒させたり、落下させるなどした場合、マガジンの開口からステープルが飛散してしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、マガジンが本体から露出した状態で、例えばステープルを傾けるなどしても、ステープルがマガジンから飛び出して周囲に飛散することを防止することができるステープラを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、本体と、一対の側壁と先端壁とにより囲まれ、上方に開口を有し、前記本体に挿入される第1位置と前記本体から突出する第2位置との間で移動可能に構成されるマガジンであって、前記第2位置にあるとき、前記開口からステープルを出し入れ可能なマガジンと、前記マガジンが前記第1位置にあるとき、前記マガジンの上方に位置し、前記マガジン内の前記ステープルに向けて移動可能に構成されるドライバであって、前記ステープルに向けて移動することで前記マガジンの下方にセットされた用紙束に前記ステープルを打ち込むドライバと、前記マガジンが前記第1位置にあるとき、前記マガジンの下方かつ前記ドライバと対向するように位置し、前記ドライバの打ち込み動作により前記用紙束を貫通したステープルの脚部を受けて折り曲げるクリンチャと、少なくとも一部が前記マガジンの移動経路上に位置する第3位置と、全部が前記移動経路上から外れる第4位置との間で変位可能に前記本体に取り付けられるカバーと、前記マガジンを前記第1位置にロックするロック部と、前記ロックを解除するロック解除部とを備え、前記カバーは、前記第3位置にあり、かつ前記マガジンが前記第2位置にあるとき、前記本体から突出している前記マガジンの前記一対の側壁、前記先端壁及び前記開口を覆うように構成され、前記ロック解除部は、前記カバーが前記第3位置にあるときに当該カバーの内側に位置し、前記カバー内の前記本体の上面に設けたロック解除ボタンである
ステープラが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、マガジンが本体から突出した第2位置にあっても、カバーを第3位置にセットしておくことで、本体から突出したマガジンの周囲(一対の側壁、先端壁、開口)はカバーによって覆われる。このため、マガジンが本体から突出(露出)した状態で、ステープラを傾けるなどしても、マガジン内のステープルが周囲に飛散してしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係るカバーが閉じた状態の電動ステープラの斜視図である。
図2A】本実施の形態に係るカバーが開いた状態の電動ステープラの斜視図である。
図2B】本実施の形態に係るカバーが開いた状態で、本体から突出した状態の電動ステープラの斜視図である。
図3A】本実施の形態に係るマガジンの斜視図である。
図3B】本実施の形態に係るマガジンの斜視図である。
図4】本実施の形態に係る電動ステープラの内部構成を示す斜視図である。
図5A】本実施の形態に係る電動ステープラの側面断面図である。
図5B】本実施の形態に係る電動ステープラの側面断面図である。
図6】本実施の形態に係る電動ステープラの側面断面図である。
図7A】本実施の形態に係るロック解除機構の動作を示す図である。
図7B】本実施の形態に係るロック解除機構の動作を示す図である。
図8】本実施の形態に係る綴じ位置調整機構の平面図である。
図9】本実施の形態に係る電動ステープラの側面図である。
図10A】本実施の形態に係るカバー開閉検知部の動作を示す図である。
図10B】本実施の形態に係るカバー開閉検知部の動作を示す図である。
図11】本実施の形態に係るマガジンがロックされていない場合の電動ステープラの状態を示す図である。
図12】本実施の形態に係る電動ステープラの機能構成を示すブロック図である。
図13】本実施の形態に係る電動ステープラの綴じ処理動作を実行する場合の動作の一例を示すフローチャートである。
図14】変形例に係るカバーが開いた状態の電動ステープラの斜視図である。
図15】変形例に係る電動ステープラの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0010】
図1は本実施の形態に係るカバーが閉じた状態の電動ステープラ10の斜視図、図2A及び図2Bはカバー20が開いた状態の電動ステープラ10の斜視図、図3A及び図3Bは本実施の形態に係るマガジン40の斜視図、図4は電動ステープラ10の内部構成を示す斜視図、図5A図5B図6は電動ステープラ10の側面断面図である。図7A及び図7Bは本実施の形態に係るロック解除機構70の動作を示す図である。図8は、本実施の形態に係る綴じ位置調整部100の平面図である。図9は、本実施の形態に係る電動ステープラ10の駆動部の側面図である。図10A及び図10Bは、本実施の形態に係るカバー開閉検知部90の動作を示す図である。図11は、本実施の形態に係るマガジンがロックされていない場合の電動ステープラの状態を示す図である。
【0011】
なお、図1等に示す本実施の形態に係る電動ステープラ10において、用紙束を綴じ位置に挿入する挿入口12cが設けられる側を電動ステープラ10の前側とし、その反対側を電動ステープラ10の後側とする。また、マガジン40を本体12から前方に引き出すための解除ボタン72が設けられる側を電動ステープラ10の上側とし、その反対側を電動ステープラ10の下側とする。
【0012】
<電動ステープラ10の構成例>
図1に示すように、本実施の形態に係る電動ステープラ10は、本体12と、本体12の一部を覆うカバー20とを備える。
【0013】
本体12は、図2Aに示すように、前面12w、上面12v、左側面12x、右側面(図示せず)等からなる直方体状の箱体で構成される。本体12の前面12w下方側には、用紙束を綴じ位置に挿入するための挿入口12cが設けられる。挿入口12cの下部側(下面)は、用紙束を挿入口12cに挿入するときに用紙束を載置(セット)しやすいように、挿入口12cよりも前方に張り出している。
【0014】
本体12の前面12wであって挿入口12cの上方には、引出口12dが形成され、その奥にはステープルを収容するためのマガジン40と、マガジン40に収容されたステープルを打ち出すためのドライバ60が設けられる。また、挿入口12cを挟んでマガジン40の下方には、ドライバ60の打ち込み動作によって挿入口12cにセットされた用紙束を貫通したステープルの脚部を受けて折り曲げるクリンチャ30が設けられる。
【0015】
本体12の上面12vには、マガジン40を本体12(引出口12d)から引き出すための解除ボタン72が設けられる。マガジン40は、図2Bに示すように、解除ボタン72が押されることで本体12から突出する。本体12の左側面12x下方には、綴じ位置を前後方向に調整するための綴じ位置調整部100が設けられる。本実施の形態において、綴じ位置調整部100は、本体12の左側部及び右側部のそれぞれに設けられる。本体12の上面12vには、複数個のステープルが連結された連結ステープル、又は複数の連結ステープルが収容されたパッケージ等が収容可能な収容部12fが設けられる。
【0016】
なお、この明細書では、図2Aに示すように、マガジンが本体12にセットされてドライバ60によりマガジン40内のステープルSを打ち込み可能な状態におけるマガジン40の位置を第1位置、図2Bに示すように、マガジン40が本体12(引出口12d)から突出している状態におけるマガジン40の位置を第2位置として説明する場合がある。なお、第2位置は、マガジン40が本体12から突出していればよく、突出量の如何は問わない。すなわち、図2Bに示すように、マガジン40の多くの部分が突出している場合のみならず、僅かに突出している場合も含む意味である。
【0017】
カバー20は、後端部に設けられたヒンジ部21と、本体12の上面12v後方に設けられた取付部13を介して本体12に回転可能に取り付けられる。図2Aに示すように、カバー20を上方に回転させて開くことで、本体12の前面12w及び上面12vが露出し、カバー20を閉じることで、本体12の前面12w及び上面12vがカバー20によって覆われる(図1参照)。なお、カバー20を閉じた後、カバー20を後方にスライドさせることで、カバー20に設けられた凸部26a,26bが本体12に設けられた取付穴12i,12i(一方の取付穴のみ図示)に嵌合し、カバー20が本体12にロックされる。
【0018】
マガジン40は、図3Aに示すように、底壁40dと、底壁40dから立設して対向する一対の側壁40a、40b(左側壁40a、右側壁40b)と、左側壁40a及び右側壁40bの先端縁同士を結ぶ先端壁40cとを有し、上方が開口(開口40eを有する)した細長の箱体である。マガジン40の先端下部には、先端壁40cと底壁40dとの境界縁を跨ぐようにして打出口41が形成される。マガジン40内のステープルSは、ドライバ60により打ち込まれると、この打出口41を介して用紙束に向けて下方に打ち出される。
【0019】
マガジン40の左側壁40aと右側壁40bには、基端部から先端側に向かって切り欠かれた一対の第1溝41a、第2溝41bが形成されている。第1溝41a、第2溝41bには、本体12に設けられる主ピン50が係合し、主ピン50に対して第1溝41a、第2溝41bが前後方向に移動することでマガジン40が前後方向に移動する。図3Bに示すように、主ピン50が第1溝41a、第2溝41bの先端部に位置するとき、マガジン40は第1位置に位置する。さらにマガジン40は、主ピン50を支点に上下方向にも回転する。マガジン40内には、ステープルを打出口41側に押圧するためのプッシャ42が設けられている。また、マガジン40が第1位置にあるとき、開口40eはマガジンカバー43によって覆われる。
【0020】
図4及び図5等に示すように、マガジン40の外側には、マガジン40を挿抜可能に支持するマガジンホルダ46が設けられる。マガジンホルダ46の前後方向の略中間部には主ピン50が挿通されており、マガジンホルダ46はマガジン40とともに主ピン50を支点に回動する。マガジン40内には、プッシャ42を打出口41側に付勢するための圧縮ばね44が設けられる。
【0021】
マガジンホルダ46の後端部とマガジン40の後端部との間にはマガジン40を前方に付勢する圧縮バネ48が配置されており、マガジン40のロックが解除されると、マガジン40を前方に押し出し、マガジン40を本体12から前方に突出させる。
【0022】
図4図5A及び図5B等に示すように、ドライバ60は、マガジン40が第1位置にあるとき、マガジン40の上方に位置し、マガジン40内のステープルに向けて移動可能に構成され、ステープルに向けて移動することでマガジン40の下方にセットされた用紙束にステープルを打ち込む。ドライバ60は、マガジン40の前後方向に沿って延びるドライバアーム62の先端部に取りけられ、ドライバアーム62の先端部から下方に延びた平板により構成される。ドライバ60は、用紙束にステープルを打ち込む際に、用紙束の面に交差、例えば直交するようにドライバアーム62に取り付けられ、用紙束にステープルを打ち込むときに、その先端面がステープルのクラウン部を押圧し、ステープルを打ち出す。ドライバ60は、ドライバアーム62の回動に伴ってマガジン40に近づく方向及びマガジン40から離れる方向に移動可能に構成される。
【0023】
図4及び図6に示すように、ドライバアーム62の上方には、断面U字状の平板で形成されるハンドルアーム64が設けられる。ハンドルアーム64は、ドライバアーム62の上方に重ねて設けられると共に、ドライバアーム62とは一定の間隔を保持した状態で設けられる。ハンドルアーム64の後端部は、主ピン50に回動可能に支持される。
【0024】
ハンドルアーム64の前端側かつ上方には、用紙束の厚みにより生じるドライバアーム62の移動量の変化を吸収するための圧縮バネ66が設けられる。
【0025】
ドライバアーム62(ドライバ60)の前端部とマガジン40の前端部との間には、コイルバネ61が配置される。コイルバネ61は、コイルバネ38よりも弾性力が強く設定され、ドライバ60がマガジン40の打出口41の上方で待機できるように、マガジン40に対してドライバ60及びドライバアーム62を上方に付勢する。
【0026】
図4図5A及び図5B等に示すように、クリンチャ30は、マガジン40が第1位置にあるとき、マガジン40の下方かつドライバ60と対向するように位置し、ドライバ60の打ち込み動作により用紙束を貫通したステープルの脚部を受けて折り曲げる。クリンチャ30の上面には、ステープルの両脚部を用紙束の裏面に沿って互いに内側に折り曲げるガイドとして機能する溝部が形成される。クリンチャ30は、クリンチャガイド32の前端部に形成された開口32a内に上下方向に揺動可能に収容される。
【0027】
マガジン40の下方であって、クリンチャガイド32の外側には、クリンチャアーム34が設けられる。クリンチャアーム34の後端部は主ピン50によって回動可能に支持される。
【0028】
クリンチャアーム34の後端部とマガジン40の後端部との間には、コイルバネ38が配置される。コイルバネ38は、クリンチャアーム34に対してマガジン40を上方側に付勢する。これにより、クリンチャ30とマガジン40の打出口41との間に、用紙束を挿入するための所定の空間、すなわち挿入口12cが形成される。
【0029】
カバー20は、カバー20の少なくとも一部がマガジン40の移動経路上に位置する第3位置(図1図5等参照)と、カバー20の全部がマガジン40の移動経路上から外れる第4位置(図2等参照)との間で変位可能に構成される。ここで、「マガジン40の移動経路」とは、マガジン40が本体12に挿入される第1位置と本体12から突出する第2位置との間を移動する際のマガジン40が通過する軌跡を意味し、「カバー20の少なくとも一部がマガジン40の移動経路上に位置する」とは、カバー20の少なくとも一部がマガジン40の移動経路を遮断し(遮り)、マガジン40がそれ以上前方に移動できない状態を意味する。したがって、「第3位置」は、カバー20がマガジン40の移動経路を遮っていればよく、カバー20が必ずしも完全に閉じている必要はない。同様に、「第4位置」は、カバー20がマガジン40の移動経路上に無ければよく、換言すれば、マガジン40がカバー20に遮られることなく、最大突出位置まで移動できる状態であればよく、図2に示すように、必ずしもカバー20が完全に開いていなくてもよい。
【0030】
本実施の形態では、カバー20は、図1及び図2A等に示すように、側面形状が(側面視)略L字状でかつ断面形状が略U字状に形成される。このような形状にすることで、カバー20を閉じたとき、より正確にはカバー20が第3位置にあるとき、カバー20の折れ曲がった先端部分で、本体12の上面12v、前面12w及び右側面及び左側面12xの一部を覆うことができるようになっている。本体の上面12v、前面12w及び右側面及び左側面12xの一部を覆うことで、もしマガジン40が本体から突出しても、カバー20によって、マガジン40の左側壁40a、右側壁40b、先端壁40c及び開口40e、すなわち、マガジン40を略全体的に覆うことができる。このため、カバー20が第3位置にある状態で、マガジン40が本体12から突出ししても、マガジン40内のステープルが周囲に飛散してしまうことがない。なお、カバー20を開閉するためのヒンジ部21には、後述するカバー開閉検知部90をオンするための押圧部22が設けられる。本実施の形態によれば、カバー20をヒンジ部21等を支点に開閉させるだけなので、簡易な構成でカバー20を第3位置及び第4位置に移動させることができる。すなわち、構造の簡素化、及びこれに伴う部品点数の削減を図ることができる。また、カバー20を上下方向に開閉させるだけなので、簡単な操作で第3位置及び第4位置間の移動を実現できる。
【0031】
本実施の形態では、カバー20が第3位置にあるとき、図5A及び図5Bに示すように、マガジン40の先端壁40cと対向するカバー20の前壁20wと、マガジン40の移動方向においてドライバ60とクリンチャ30とによって用紙束をステープルで綴じる綴じ位置との間の距離Lが13mmに設定されている。
従来の電動ステープラでは、用紙束を素早く綴じるため及び装置全体の寸法(特に前後方向の寸法)をコンパクトにするため、挿入口の端面と綴じ部との距離を極力短く設定していた(例えば、5mm)。しかし、この距離が短いと、挿入口から物(用紙に限らない)を少し挿入しただけで、これを検知して綴じ処理が行われてしまうため、例えば、誤って用紙以外の異物が挿入された場合にそれを検知して意図しない綴じ処理が行われてしまう場合があった。したがって、この問題を解決するためには、挿入口の端面から綴じ部までの距離を長くすればよいが、そうすると上記したように、綴じ処理が素早く行えないとか装置全体の寸法が大きくなるという問題がある。そこで、これらトレードオフを解消するため、すなわち意図せず異物を綴じてしまうことを抑制し、綴じ処理の迅速性を損なわず、さらに装置の寸法を極力大きくしないような距離について鋭意検討を重ねた結果、その距離は、約20枚から50枚の用紙を綴じる場合、10mmから20mm、30枚から50枚の用紙を綴じる場合、13mmから20mm、40枚から50枚の用紙を綴じる場合、15mmから20mmであることが望ましいということを見出した。
本実施の形態では、挿入口12cを覆うようにしてカバー20を設けることで、カバー20の前壁20wから綴じ部までの距離Lを13mmとしている。
このように、距離Lを、綴じ処理が可能な用紙の枚数に応じて10mmから20mmとすることで、意図せず異物を綴じてしまうことを抑制し、綴じ処理の迅速性を損なわず、さらに装置の寸法を極力大きくしないようにすることができる。本実施の形態では、カバー20が第3位置にあるとき、挿入口12cの入口の前方にカバー20が位置するので、カバー20の厚み分、挿入口12cの入口から綴じ位置までの距離Lを延ばすことができる。
【0032】
図5に示すように、電動ステープラ10は、マガジン40を本体12内の第1位置にロックするためのロック機構80と、ロック機構80によるマガジン40のロックを解除するためのロック解除機構70とを備える。
【0033】
図5A等に示すように、ロック機構80は、マガジン40の後方に設けられ、マガジン40を第1位置でロックするロック部82と、ロック部82をマガジン40をロックする位置に付勢する圧縮バネ84とを有する。
【0034】
ロック部82は、側面形状が前方に開放された略U字状であり、下側端部に設けられるフック82aと、上側端部に設けられる被係合部82bと、フック82aと被係合部82bとを連結する連結部82cとを有する。連結部82cの下部側には、略前後方向に延びる長孔82dが形成される。長孔82dには主ピン50が挿通されており、ロック部82が主ピン50を支点として回動可能となっている。圧縮バネ84は、連結部82cの長孔82dよりも上部に配置され、解除ボタン72の押圧により傾動するロック部82の状態に応じて伸縮すると共に連結部82cを後方に付勢する。
【0035】
フック82aは、マガジン40の底面に形成される開口40hに嵌合可能に構成され、開口40hに嵌合することでマガジン40を第1位置でロックし、マガジン40が本体12内に収容された状態を維持する。被係合部82bは連結部82cから係合部74に向かって延びており、その先端部が係合部74の下面に当接している。
【0036】
図7Aに示すように、ユーザにより解除ボタン72が押圧される前の状態であって、マガジン40が本体12に収容された第1位置ある場合には、圧縮バネ84によって連結部82cの上部が後方に付勢されていることで、フック82aが主ピン50を支点としてマガジン40側に付勢される。これにより、フック82aがマガジン40の開口40hに嵌合された状態が維持され、マガジン40がフック82aによって第1位置でロックされる。第1位置とは、マガジン40がロック部82にロックされる位置である。
【0037】
これに対し、マガジン40を本体12から引き出す場合、図7Bに示すように、ユーザによってカバー20が第3位置から第4位置に移動された後、解除ボタン72が押圧操作される。これに伴い、解除ボタン72と一体形成された係合部74が下方に移動することで、ロック部82の被係合部82bが下方に押圧される。ロック部82は、主ピン50を支点として反時計回りに回動し、圧縮バネ84が圧縮する。フック82aは、マガジン40から離れる方向である下方に移動し、マガジン40の開口40hから外れることで、マガジン40のロック機構80によるロックが解除される。これにより、圧縮バネ48の付勢力によりマガジン40が本体12の前方に押し出される。マガジン40は、第1位置から第2位置に移動し、マガジン40の先端側が本体12の前壁から突出した状態となる。第2位置とは、マガジン40がロック部82によりロックされない位置である。
【0038】
図2及び図5A等に示すように、ロック解除機構70は、例えばマガジン40内にステープルを装填する場合において、マガジン40を本体12の前方に引き出すための機構である。ロック解除機構70は、解除ボタン72と、解除ボタン72の下面に取り付けられると共に上下方向に延びる連結部73と、連結部73の下端部に取り付けられると共にロック機構80の被係合部82bに係合する係合部74とを有する。なお、本実施の形態では、解除ボタン72、連結部73及び係合部74を一体形成しているが、これに限定されることはない。
【0039】
解除ボタン72は、本体12の上面であってかつ収容部12fよりも後方に配置され、カバー20が第3位置にあるときにカバー20の内側に位置する。これにより、カバー20が開いた第4位置にある場合にのみユーザによる解除ボタン72の押圧操作を受け付けることができるようになっている。連結部73の下部には上下方向に延びる長孔73aが形成され、長孔73aには軸75が挿通されており、連結部73が軸75を支点として長孔73aに沿って移動可能に構成される。これにより、ユーザにより解除ボタン72が押圧操作された場合に、解除ボタン72が本体12の上面に対して押し下がるようになっている。
【0040】
図4及び図5A等に示すように、本体12内の後方であってマガジン40よりも上方には、モータ112が設けられる。モータ112は、電動ステープラ10の駆動源であり、例えばDCブラシレスモータで構成される。モータ112の各種配線は、制御部110に接続される。制御部110は、例えば、基板を含み、本体12内のモータ112の後方側に配置される。
【0041】
図9等に示すように、モータ112の回転軸112aにはギア14が接続され、ギア14にはギア16が接続され、ギア16の回転軸にはカム18が接続される。これにより、モータ112の回転力が、ギア14及びギア16を介してカム18に伝達されるようになっている。カム18は、ハンドルアーム64の略上方に配置され、カム18の回転角度に応じてハンドルアーム64の上面に当接することでドライバアーム62及びハンドルアーム64等を下方のクリンチャ30側に押圧する。
【0042】
また、電動ステープラ10は、図4及び図5A等に示すように、カバー20が本体12に対して第4位置にあるときの状態及びカバー20が本体12に対して第3位置にあるときの状態を検知するカバー開閉検知部90を備える。カバー開閉検知部90は、検知部の一例に相当し、制御部110の基板上に実装されると共に、カバー20が第3位置にあるときの押圧部22に対向した位置に配置される(図10A参照)。
【0043】
カバー開閉検知部90は、第1スイッチ押圧部91と、第2スイッチ押圧部92と、スイッチ93とを備える。第1スイッチ押圧部91は、例えば板バネで形成され、第2スイッチ押圧部92の前方に重ねて配置される。第2スイッチ押圧部92は、例えばバネで構成され、スイッチ93の前方に配置される。図10Aに示すように、カバー20が第4位置から第3位置に回転し、さらに後方にスライドしてロック位置まで移動すると、図10Bに示すように、カバー20の押圧部22により第1スイッチ押圧部91及び第2スイッチ押圧部92が押圧される。これにより、第2スイッチ押圧部92が後方に傾動し、スイッチ93がオンされる。なお、これに限らず、カバー20の開閉によりスイッチ93をオン・オフする構成でもよい。
【0044】
スイッチ93は、例えばマイクロスイッチで構成され、第2スイッチ押圧部92によりオンされると、カバー20が閉じたことを示す閉じ信号を生成して制御部110に出力する。制御部110は、スイッチ93から閉じ信号が供給されると、電動ステープラ10を綴じ動作不可能な状態から綴じ動作可能な状態に切り替える。このように、本実施の形態では、カバー開閉検知部90がいわゆるインターロックとして機能し、カバー20が第3位置かつロック位置に移動しないと電動ステープラ10の綴じ処理を実行できない構成となっている。
【0045】
また、図11に示すように、マガジン40がロック部82によりロックされない状態では、マガジン40が圧縮バネ48(図5A参照)により前方に付勢されることで、マガジン40が第1位置から第2位置に移動して本体12から前方に突出する。この状態で、カバー20を第4位置から第3位置に移動させようとすると、カバー20の下端部が、本体12から突出するマガジン40の上面に当たって干渉し、カバー20を第3位置まで移動させることができない。これにより、カバー20をロック位置まで移動できないので、インターロックとしてのカバー開閉検知部90をオンすることができない。その結果、電動ステープラ10を動作開始状態に切り替えることができないため、マガジン40が正常にロックされない状態でステープラが動作し、マガジンからステープル射出されずに変形し、ジャムが生じるのを防止することができる。
【0046】
綴じ位置調整部100は、本体12の左右に設けられる押圧部102a,102bと、押圧部102a,102bを弾性的に支持する支持部104a,104bと、用紙束の先端部を突き当てるための2個の用紙ガイド108a,108bとを備える。なお、以下では、綴じ位置調整部100は左右で構成が共通すると共に左右連動して動作するため、便宜上、一方の左側の構成について説明する場合がある。
【0047】
押圧部102aは、用紙束の綴じ位置を調節する際にユーザが押圧及び前後移動させるためのボタンで構成され、本体12の左側面12xに形成された開口12g(図1参照)から突出して設けられる。
【0048】
支持部104aは、平板を略U字状に折り曲げた板バネで構成され、外側の端部104a1が本体12の左側面12x側に付勢された状態で当接する。支持部104aの外面側には押圧部102aが取り付けられており、押圧部102の押圧操作に応じて弾性変形する。また、支持部104aの外面側には、本体12の左側面12xの内側に形成された複数の凹部12hに嵌合可能な凸部106aが形成される。
【0049】
用紙ガイド108aは、支持部104aの前方に設けられ、挿入口12cから挿入された用紙束の先端部が突き当てられる。用紙ガイド108aの後方には、用紙ガイド108aの動作に連動して綴じ処理動作を開始させる用紙束検知部109が設けられる。用紙ガイド108aに用紙束の先端部が当接すると、用紙束検知部109がオンしてオン信号が生成され、生成されたオン信号が制御部110に出力される。
【0050】
ユーザが綴じ位置を調整する場合、左右の押圧部102a,102bを押圧することで、凸部106a,106bを凹部12hから外す。この状態で、目的とする綴じ位置に、用紙ガイド108a,108bを移動した後、押圧部102a,102bの押圧を解除する。これにより、凸部106a,106bが凹部12hに再度嵌合することで、用紙ガイド108a,108bを目的の綴じ位置にセットできる。
【0051】
図12は、電動ステープラ10の機能構成を示すブロック図である。図12に示すように、電動ステープラ10は、制御部110を備える。制御部110は、例えば、演算及び制御機能を有するCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read only memory)及びRAM(Random access memory)等のメモリを有する。制御部110には、カバー開閉検知部90、用紙束検知部109及びモータ112がそれぞれ接続される。制御部110は、カバー開閉検知部90から供給される閉じ信号及び用紙束検知部109から供給されるセット完了信号に基づいて、モータ112を回転制御する。
【0052】
<電動ステープラ10の動作例>
次に、本実施の形態に係る電動ステープラ10の綴じ動作の一例について説明する。図13は、電動ステープラ10の綴じ処理動作を実行する場合の動作の一例を示すフローチャートである。なお、電動ステープラ10の電源はオンされており、かつ、カバー20が本体12に対して第4位置、つまりカバー20が開いた状態にあるものとする。
【0053】
ユーザによりカバー20が第4位置から第3位置に操作されると、カバー20が本体12に対して閉じた状態となる。この状態で、カバー20がロック位置までスライドされると、カバー20の凸部26a,26bが本体12に形成された取付穴12iに装着される。これにより、カバー20が本体12に対してロックされる。
【0054】
本実施の形態では、カバー20がロック位置に移動する際に、カバー20の押圧部22によってカバー開閉検知部90を構成する第1スイッチ押圧部91及び第2スイッチ押圧部92が後方に押圧される。これにより、スイッチ93がオンされ、制御部110に閉じ信号が供給される。制御部110は、スイッチ93から閉じ信号が供給され、カバー開閉検知部90がオンされたと判定すると、電動ステープラ10を綴じ動作不可能な状態から綴じ動作可能な状態に切り替える(図13のステップS10)。
【0055】
続けて、ユーザにより本体12の挿入口12cに用紙束が挿入されると、用紙束の先端面が用紙ガイド108a,108bに突き当たる。これにより、用紙ガイド108a,108bが後方に移動することで用紙束検知部109がオンし、用紙束の綴じ位置へのセットの完了を示すセット完了信号が制御部110に供給される。
【0056】
制御部110は、セット完了信号を受けると用紙束検知部109がオンされたと判定し、モータ112を駆動するための駆動信号を生成するよう駆動回路等を制御する(図13のステップS20)。モータ112は、制御部110による制御等に基づいて回転駆動する(図13のステップS30)。モータ112の回転により、ギア14及びギア16を介してカム18が例えば反時計回りに回転する。本実施の形態では、カム18が1回転する間に1回の綴じ処理動作が実行される。
【0057】
具体的には、カム18が反時計回りに回転していくと、カム18によりハンドルアーム64が下方に押圧されることで、ドライバアーム62及びドライバ60が下方に移動する。これに伴い、マガジン40が下方に移動すると共にマガジン40内に装填されたステープルがドライバ60によって打ち出され、載置台12e上に載置されている用紙束に打ち込まれる。用紙束に打ち込まれたステープルは、用紙束を厚み方向に貫通し、貫通したステープルの脚部がクリンチャ30によって用紙束の裏面に沿って互いに内側に折り曲げられる。これにより、用紙束がステープルによって綴じられる。
【0058】
カム18がさらに回転すると、カム18の回転角度に応じてハンドルアーム64に対する押圧力が徐々に減少していき、カム18がハンドルアーム64の上面から離間すると、ハンドルアーム64、ドライバアーム62及びドライバ60は上方に移動して元の初期位置に戻る。
【0059】
カバー20は、本実施の形態に限られず、例えば、カバー20の回転方向を上下方向ではなく、左右方向にしてもよく(例えば、カバー20の回転支点を左端又は右端に設け、カバー20を左右方向に回転させることでカバー20を第3位置と第4位置との間で変位させてもよい)、回転ではなくカバー20を前後、左右方向等にスライドさせて開閉するようにしてもよい。また、カバー20を本体12に対して着脱可能に構成してもよい。また、カバー20は一つではなく、複数設けてもよい。また、カバー20の取り付け位置、より具体的には回転支点を、本体12の上面12vの後端部ではなく、上面12vの前端部等にしてもよい。このように、カバー20がマガジン40の移動経路上に位置する第3位置と、移動経路上から外れる第4位置との間で変位可能に構成できる箇所に設けることが可能である。すなわち、カバー20がマガジン40の移動経路上、つまり第3位置と、マガジン40の移動経路から外れる第4位置の間で変位可能に構成できれば、カバー20の取付構造や取付位置等は特定の形状や構造に限定されるものではない。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態によれば、マガジン40の本体12から前方に突出する移動方向上の第3位置にカバー20を配置するので、第2位置に移動するマガジン40の一対の左側壁40a、右側壁40b及び先端壁40cをカバー20によって覆うことができる。これにより、電動ステープラ10の転倒、落下等により、マガジン40のロックが不意に解除される場合でも、マガジン40が本体12から前方に飛び出すことを防止できる。その結果、マガジン40内に装填されたステープルが周囲に飛散してしまうことを防止できる。
【0061】
また、本実施の形態では、カバー20の内側に解除ボタン72を配置するので、カバー20を第4位置の開いた状態としなければ解除ボタン72を操作することができない構成を採用している。これにより、解除ボタン72が従来のように露出した状態ではないので、例えば、電動ステープラ10を持ち運ぶ際に解除ボタン72が誤操作されることを防止できる。その結果、マガジン40が意図せずに本体12の前方に飛び出してしまうことを防止できる。
【0062】
また、本実施の形態によれば、マガジン40が第1位置でロックされない場合には、マガジン40が本体12の前方に飛び出す構成となっている。そのため、例えば、マガジン40へのステープルの装填後にマガジン40を本体12内に収容することを失念した場合でも、カバー20を閉じる際に、カバー20が飛び出したマガジン40に当たって第3位置まで移動させるができない。これにより、ユーザは、綴じ処理を行う際に、マガジン40が本体12にロックされているか否かを視認することで容易に確認できる。また、マガジン40が本体12にロックされているか否かを検知するセンサが不要となるため、電動ステープラ10の低コスト化を図ることができる。
【0063】
また、本実施の形態によれば、マガジン40を主ピン50に突き当てることでマガジン40の位置決めを行うことができるので、例えば第1溝41a及び第2溝41bの寸法等で、マガジン40を位置決めする。これにより、従来の電動ステープラでは、例えば2部品でマガジン40の寸法管理が必要であったが、本実施の形態ではマガジン40の部品の寸法管理のみで良いので、1部品に対する寸法公差を大きくできる。その結果、管理コストを抑えることができ、電動ステープラ10自体のコストも抑えることができる。
【0064】
<電動ステープラ10の変形例>
図14は変形例に係るカバー20が開いた状態の電動ステープラ10の斜視図、図15は変形例に係る電動ステープラ10の側面断面図である。なお、上述した実施の形態の電動ステープラ10と実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0065】
カバー20の前壁20wの内面には、図14及び図15等に示すように、第1位置と第2位置との間を移動するマガジン40の先端壁40cに当接可能なマガジン規制部24が設けても良い。マガジン規制部24は、規制部の一例に相当し、カバー20の前壁20wの内面からマガジン40側に突出する凸部で構成される。マガジン40に対向する対向面は、第1位置にあるマガジン40の先端壁40cと若干の隙間Gを空けて設けられる。この隙間Gは、マガジン40に対してロックが解除される力が作用した場合でも、マガジン規制部24が前方に移動するマガジン40の先端壁40cに当接することでマガジン40の前方への出量を規制でき、マガジン40をロック位置である第1位置で待機させることを可能とする範囲に設定される。なお、マガジン規制部24の対向面を第1位置にあるマガジン40の先端壁40cに当接させるように、マガジン規制部24の出量を規定しても良い。また、カバー20にマガジン規制部24を設ける場合、カバー20が閉じていれば解除ボタン72が押されてもマガジン40が本体12の前方に飛び出すことはない。このような構成の場合には、解除ボタン72をカバー20の内側ではなく外側に配置することもできる。
【0066】
本変形例によれば、カバー20の前壁20wの内面にマガジン規制部24を設けるので、カバー20を第3位置に配置することで、マガジン40を本体12の前方に飛び出させることなく第1位置で待機させることが可能となる。つまり、マガジン40の本体12から前方への出量をマガジン規制部24により規制できるので、ロック機構80のフック82aが常にマガジン40の開口40hを拾うことが可能な状態とすることができる。これにより、ロック機構80のフック82aが開口40hから瞬間的に外れた場合でも、再びフック82aによりマガジン40をロックできる。また、マガジン40の待機位置のずれが原因で生じる綴じ不良、ステープルの変形、ドライバ60の損傷を防止でき、綴じ処理の信頼性を向上させることができる。
【0067】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施の形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されることはない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得る技術的思想は本開示の技術的範囲に属するものとする。
【0068】
上述した実施の形態では、自動でステープルを用紙束に打ち込む電動ステープラ10について説明したが、これに限定されることはない。例えば、手動でステープルを用紙束に打ち込むステープラであって、マガジンが本体から前方に飛び出す構成を備えたステープラに対しても、上記実施の形態及び変形例で説明したカバー20の構成等を適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
10 電動ステープラ
12 本体
20 カバー
24 マガジン規制部(規制部)
30 クリンチャ
40 マガジン
40a 左側壁
40b 右側壁
40c 先端壁
40e 開口
48 圧縮バネ(弾性部材)
60 ドライバ
70 ロック解除機構(ロック解除部)
72 解除ボタン
80 ロック機構
82 ロック部
90 カバー開閉検知部(検知部)
110 制御部
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15