(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】パッチアンテナ、パッチアンテナの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01Q 13/08 20060101AFI20240110BHJP
H01P 11/00 20060101ALI20240110BHJP
H01P 5/12 20060101ALI20240110BHJP
H01Q 21/06 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01P11/00
H01P5/12 D
H01Q21/06
H01P5/12 E
(21)【出願番号】P 2020013861
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥山 和典
【審査官】齊藤 晶
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-267041(JP,A)
【文献】特開2007-037077(JP,A)
【文献】特開2017-188779(JP,A)
【文献】特表2003-510935(JP,A)
【文献】特開2008-219574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/08
H01P 11/00
H01P 5/12
H01Q 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層とグランド層で構成された平面基板の表面である前記誘電体層側の同一面上に、複数のパッチアンテナ素子と、給電分配回路を実装するパッチアンテナにおいて、
前記平面基板の同一面上、かつ、複数のパッチアンテナ素子の一部に対応して配置され、励振方向が前記パッチアンテナ素子の励振方向と平行となるように配置され、かつ、ショートビアを用いて裏面側である前記グランド層に電気的に接続された放射電力制御素子を有するパッチアンテナ。
【請求項2】
誘電体層とグランド層で構成された平面基板の表面である前記誘電体層側の同一面上に、複数のパッチアンテナ素子と、給電分配回路を実装するパッチアンテナにおいて、
前記平面基板の同一面上に配置され、励振方向が前記パッチアンテナ素子の励振方向と平行となるように配置され、かつ、ショートビアを用いて裏面側である前記グランド層に電気的に接続された放射電力制御素子を有し、
使用周波数における前記平面基板内の実効波長をλgとするとき、前記放射電力制御素子は、前記励振方向の電気長が0.217λgより大きく0.333λg以下に設定され、前記励振方向と直交する方向の電気長が0.042λg以上0.125λg以下に設定され、かつ、前記パッチアンテナ素子の端部と前記放射電力制御素子の端部の最小間隔が0.083λg以上0.1λg以下に設定される、パッチアンテナ。
【請求項3】
パッチアンテナ素子及び前記放射電力制御素子の組み合わせが、予め定めた配列パターンで形成され、全体として単一のパッチアンテナとして機能するパッチアレーアンテナを構成する請求項1又は請求項2記載のパッチアンテナ。
【請求項4】
前記放射電力制御素子において、前記放射電力制御素子が前記パッチアンテナ素子を挟んで2つ配置されていることを特徴とする請求項1~請求項3の何れか1項記載のパッチアンテナ。
【請求項5】
前記放射電力制御素子により制御可能となる規格化放射電力利得は-0.68dBから-10dBであることを特徴とする請求項1~請求項4の何れか1項記載のパッチアンテナ。
【請求項6】
誘電体層とグランド層で構成された平面基板の表面である前記誘電体層側の同一面上に、複数のパッチアンテナ素子と、給電分配回路を実装し、
放射電力制御素子を、前記平面基板の同一面上に、励振方向が前記パッチアンテナ素子の励振方向と平行となるように配置し、
放射電力制御素子における、前記励振方向の電気長の一端に取り付けられたショートビアを前記平面基板の誘電体層を貫通させることで、裏面側である前記グランド層に電気的に接続し、
使用周波数における前記平面基板内の実効波長をλgとするとき、前記放射電力制御素子の前記励振方向の電気長が0.217λgより大きく0.333λg以下に設定し、
前記励振方向と直交する方向の電気長を0.042λg以上0.125λg以下に設定し、
前記パッチアンテナ素子の端部と前記放射電力制御素子の端部の最小間隔を0.083λg以上0.1λg以下に設定する、パッチアンテナの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッチアンテナ、パッチアンテナの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パッチアンテナは、パッチアンテナ素子が基板上に配置されている。通常は、複数のパッチアンテナ素子が単一の基板上に、予め定めたパターンで配列されているため、以下、パッチアンテナとして説明する。
【0003】
同一平面基板上に設けられた複数のパッチアンテナ素子から構成されるアレーアンテナにおいて、アンテナ指向性を制御するために各パッチアンテナ素子から空間へ放射される放射電力量や位相を調整する事で実現できる。
【0004】
空間への放射電力量を制御する方法として、以下の制御方法が考えられる。
【0005】
すなわち、各パッチアンテナ素子と同一平面基板上に設けられたパッチアンテナ素子に電力を給電する給電分配回路によって給電電力量を調整する、各パッチアンテナ素子の放射抵抗を変化させて空間への放射電力量を制御する、及び、直接に給電回路を接続しない無給電素子を用いてパッチアンテナ素子から空間へ放射される放射電力量やアンテナ指向性を制御する、といった制御方法である。
【0006】
特許文献1及び特許文献2には、パッチアンテナの両脇に非給電パッチを設けた技術が記載されている。
【0007】
また、特許文献3には、平面アンテナの各素子に対して、上下方向に対向する位置に非給電アンテナを設け、金属部分、すなわちGNDと接続した技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-188779号公報
【文献】特開2013-168875号公報
【文献】特開2004-328067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、同一平面基板上に複数のパッチアンテナ素子と給電分配回路を実装する場合には、様々な課題がある。
【0010】
給電分配回路を構成するマイクロストリップ線路の線幅は、基板製造過程における銅箔パターンのエッチング加工精度の制限により一般的に製造可能な線幅は0.10mm程度で、給電分配回路の分配電力量の調整比は限界がある。
【0011】
また、各パッチアンテナ素子の放射抵抗を変化させて空間への放射電力量を制御する方法は、パッチアンテナ素子の幅や給電位置の調整等により実現可能であるが、パッチアンテナ素子から空間へ放射されるアンテナ指向性の歪みが発生するため、アレーアンテナの高性能な指向性制御が困難となる。
【0012】
また、無給電素子を用いてパッチアンテナ素子から空間へ放射される放射電力量やアンテナ指向性を制御する方法は、特許文献1及び特許文献2等の構造により原理的に可能である。
【0013】
しかしながら、同一平面基板上に複数のパッチアンテナ素子と給電分配回路を実装するアレーアンテナ(直列及び並列)において、物理的な制約により実装することが困難である。
【0014】
本発明は、給電分配回路の分配電力の調整比の制限による、高性能な指向性設計の限界を緩和することができ、かつ、複数のパッチアンテナ素子と給電分配回路とを含む全ての部品を基板の同一平面上に実装することができるパッチアンテナ、パッチアンテナの製造方法を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るパッチアンテナは、誘電体層とグランド層で構成された平面基板の表面である前記誘電体層側の同一面上に、複数のパッチアンテナ素子と、給電分配回路を実装するパッチアンテナにおいて、前記平面基板の同一面上、かつ、複数のパッチアンテナ素子の一部に対応して配置され、励振方向が前記パッチアンテナ素子の励振方向と平行となるように配置され、かつ、ショートビアを用いて裏面側である前記グランド層に電気的に接続された放射電力制御素子を有することを特徴としている。
【0016】
本発明に係るパッチアンテナは、誘電体層とグランド層で構成された平面基板の表面である前記誘電体層側の同一面上に、複数のパッチアンテナ素子と、給電分配回路を実装するパッチアンテナにおいて、前記平面基板の同一面上に配置され、励振方向が前記パッチアンテナ素子の励振方向と平行となるように配置され、かつ、ショートビアを用いて裏面側である前記グランド層に電気的に接続された放射電力制御素子を有し、使用周波数における前記平面基板内の実効波長をλgとするとき、前記放射電力制御素子は、前記励振方向の電気長が0.217λgより大きく0.333λg以下に設定され、前記励振方向と直交する方向の電気長が0.042λg以上0.125λg以下に設定され、かつ、前記パッチアンテナ素子の端部と前記放射電力制御素子の端部の最小間隔が0.083λg以上0.1λg以下に設定されることを特徴としている。
【0017】
本発明に係るパッチアンテナの製造方法は、誘電体層とグランド層で構成された平面基板の表面である前記誘電体層側の同一面上に、複数のパッチアンテナ素子と、給電分配回路を実装し、放射電力制御素子を、前記平面基板の同一面上に、励振方向が前記パッチアンテナ素子の励振方向と平行となるように配置し、放射電力制御素子における、前記励振方向の電気長の一端に取り付けられたショートビアを前記平面基板の誘電体層を貫通させることで、裏面側である前記グランド層に電気的に接続し、使用周波数における前記平面基板内の実効波長をλgとするとき、前記放射電力制御素子の前記励振方向の電気長が0.217λgより大きく0.333λg以下に設定し、前記励振方向と直交する方向の電気長を0.042λg以上0.125λg以下に設定し、前記パッチアンテナ素子の端部と前記放射電力制御素子の端部の最小間隔を0.083λg以上0.1λg以下に設定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
以上説明した如く本発明では、給電分配回路の分配電力の調整比の制限による、高性能な指向性設計の限界を緩和することができ、かつ、複数のパッチアンテナ素子と給電分配回路とを含む全ての部品を基板の同一平面上に実装することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施の形態に係る直線8素子アレー配列の直列給電パッチアレーアンテナの斜視図である。
【
図2】
図1における直列給電パッチアレーアンテナの一部拡大図であり、直線8素子アレー配列の給電電力の調整比を決定する給電電力分配制御回路が設けられた配線パターンの斜視図である。
【
図3】
図2に示す給電電力分配制御回路の拡大斜視図である。
【
図4】
図1に示す直列給電パッチアレーアンテナに取り付けられたパッチアンテナ素子及びその周辺の拡大斜視図である。
【
図5】本実施の形態に係るパッチアンテナ素子と放射電力制御素子との間の寸法(Gap)毎の、放射電力利得制御素子の励振方向長さに対する放射電力利得特性図である。
【
図6】本実施の形態に係る放射電力制御素子における、励振方向長さ(L)毎の指向性角度に対する放射電力利得特性図である。
【
図7】変形例に係る並列給電パッチアレーアンテナの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本実施の形態に係る直線8素子アレー配列の直列給電パッチアレーアンテナ10である。
【0021】
直列給電パッチアレーアンテナ10は、平面基板12上に、複数のパッチアンテナ素子14(
図1では、一部のみ指標)が配列されている。平面基板12の裏面全面は、GND層12Gが設けられている。
【0022】
また、
図2に示される如く、平面基板12の同一平面上には、複数の給電電力分配制御回路16が実装されている。本実施の形態に係る直列給電パッチアレーアンテナ10は、79GHz帯のアンテナとして利用される。
【0023】
図1に示される如く、平面基板12の給電部18から電力が供給されると、特性の異なる給電電力分配制御回路16を介して、直線8素子アレー配列の各配線パターン20へ給電される。
【0024】
79GHz帯の直列給電パッチアレーアンテナ10は、平面基板12として、アンテナ放射効率や高次モードの共振を抑制するため1/16λg~1/64λg(λgは、平面基板12上における実効波長であり、約2.4mmである。)以上の厚さ(誘電体層の厚さ)のテフロン(登録商標)基板材(厚さが0.2mm)が適用されている。
【0025】
図3に示される如く、給電電力分配制御回路16を構成するマイクロストリップ線路16Aの線幅は、基板製造過程における銅箔パターンのエッチング加工精度が制限される。
【0026】
このため、一般的に製造可能な、マイクロストリップ線路16Aの線幅は0.1mm程度である。
【0027】
従って、給電電力分配制御回路16による分配電力量の調整比には、加工精度の制限により限界がある。例えば、上記の平面基板12を使用した場合、0.1mm線幅のマイクロストリップ線路16Aの特性インピーダンスは100Ω程度であり、分配電力量の調整比は最大で4.8dB以下である。
【0028】
本実施の形態では、この調整比4.8dB以上の調整比を実現するべく、放射電力制御素子22(
図1及び
図4参照)を採用した。
【0029】
図1に示される如く、パッチアンテナ素子14は、一辺が約1.1mm正方形の銅箔パターンで構成され、8本の直線状の配線パターンのそれぞれに複数のパッチアンテナ素子14が電気的に直列接続されている。
【0030】
図4に示される如く、パッチアンテナ素子14において、励振方向と直交する方向と交差する2辺に対峙するように、放射電力制御素子22が配置されている。
【0031】
放射電力制御素子22は、導電性のプレート状とされ、平面基板12を貫通するショートビア20Aを備えている。平面基板12を貫通したショートビア20Aは、裏面に設けられたGND層12Gに電気的に接続されている。
【0032】
なお、以下において、パッチアンテナ素子14と放射電力制御素子22との間の隙間寸法をGapとし、放射電力制御素子22の励振方向の長さをLとする(
図4参照)。また、
図1に示される如く、アレー配列における隣り合うパッチアンテナ素子14同士の間隔をP、パッチアンテナ素子14同士のピッチ(空間波長)をMとする。
【0033】
また、
図1に示される如く、放射電力制御素子22は、アレー配列における隣り合うパッチアンテナ素子14同士の間隔Mは、空間波長P=0.65λ(λ≒3.8mm)である場合に、1.4mmとなり、放射電力制御素子22は、このパッチアンテナ素子14の間隔1.4mm(≒0.65×3.8)の間に配置することになる。
【0034】
放射電力制御素子22は、パッチアンテナ素子14から放射された電力の一部が給電されて放射するようになっている。
【0035】
本実施の形態では、放射電力制御素子22の寸法(主として励振方向の長さL)及び位置(主として、放射電力制御素子22との隙間寸法Gap)を調整することで、この放射電力制御素子22からの放射電力と、パッチアンテナ素子14からの放射電力との位相とが設定される。
【0036】
すなわち、放射電力制御素子22は、パッチアンテナ素子14の放射電力を制御する機能を有している。
【0037】
なお、放射電力制御素子22とパッチアンテナ素子14との間の隙間寸法Gapは、平面基板12の厚さである0.2mmに相当する距離以上離すことで、パッチアンテナ素子14単体の性能への影響は、ほぼなくなり、パッチアンテナ素子14の単体としての放射電力の制御は安定する。
【0038】
放射電力制御素子22の幅寸法Wは、放射電力の制御に対する影響は、ほぼないが、本実施の形態では、平面基板12へ実装するときの物理的な制限を考慮して、W=0.2mm(0.083λg)とした。なお、平面基板12上の実装スペースに余裕があれば放射電力制御素子22の幅は、上記以外でもよい。
【0039】
(放射電力制御素子22の寸法及び位置を調整基準)
【0040】
図5及び
図6に従い、放射電力制御素子22の寸法及び位置を調整基準について解析する。
【0041】
図5は、本実施の形態に係るパッチアンテナ素子14と放射電力制御素子22との間の寸法(Gap)毎の、放射電力利得制御素子の励振方向長さに対する放射電力利得特性図である。
【0042】
また、
図6は、本実施の形態に係る放射電力制御素子22における、励振方向長さ(L)毎の指向性角度に対する放射電力利得特性図である。
【0043】
図5に示される如く、放射電力制御素子22との隙間寸法Gapが0.5mmの離隔距離(励振方向の長さL=0.58mm(0.242λg)以上の場合)を保つ事で、ほぼパッチアンテナ素子14の放射電力利得への影響がないことがわかる。
【0044】
また、
図6に示される如く、放射電力制御素子22の励振方向は、長さL=0.52mm(0.217λg)以上、かつ、長さL=1.1mm(0.458λg)以下であれば指向性への影響(指向性角度0deg付近でのへこみ)は、ほぼないことがわかる。
【0045】
隣り合うパッチアンテナ素子14の間隔は、1.4mmであり、この間隔(1.4mm)の間に、放射電力制御素子22を配置する場合、放射電力制御の対象となるパッチアンテナ素子14の隣に配置されている近傍のパッチアンテナ素子に対して0.5mm(0.208λg)以上の離隔距離を保って放射電力制御素子22を配置すれば、当該隣の放射電力制御素子22には影響を及ぼさない。
【0046】
このため、Gap=0.2mm~0.3mm(0.083λg~0.125λg)の範囲で、放射電力制御素子22の寸法及び位置を調整することが望ましい。
【0047】
本実施の形態では、Gap=0.2m~0.24mm(0.083λg~0.1λg)とし、かつ、L=0.52mm~0.8mm(0.217λg~0.333λg)の範囲で放射電力制御素子22の寸法及び位置を調整する事で、パッチアンテナ素子14の放射電力利得を-0.68dB~-10dBの範囲で調整が可能となる。
【0048】
以下に、本実施の形態の作用を説明する。
【0049】
パッチアンテナ素子14に給電された電力は、パッチアンテナ素子14から空間へ放射される。
【0050】
空間へ放射された一部はパッチアンテナ素子14の近傍に配置された放射電力制御素子22を電磁結合により給電し、放射電力制御素子22から空間へ放射される。
【0051】
放射電力制御素子22から空間へ放射された電波は、パッチアンテナ素子14から放射された電波に対し、異なる位相で空間合成されるように構成されており、パッチアンテナ素子14の放射電力を制御することができる。
【0052】
放射電力の調整は、パッチアンテナ素子14と放射電力制御素子22の間の隙間寸法Gapによって電磁結合量を調整し、放射電力制御素子22の長さLによって所望周波数における放射電力制御素子22の放射利得を調整することで実現している。
【0053】
ここで、前述したように、本実施の形態では、Gap=0.2m~0.24mm(0.083λg~0.1λg)とし、かつ、L=0.52mm~0.8mm(0.217λg~0.333λg)の範囲で放射電力制御素子22の寸法及び位置を調整する事で、パッチアンテナ素子14の放射電力利得を-0.68dB~-10dBの範囲で調整が可能となる。
【0054】
例えば、
図2に示される如く、直線8素子アレー配列の給電電力の調整比において、低サイドローブレベル-32dB(開口励振分布f(x)=cos
n(πx/D)、n=2)のアレーアンテナ指向性を、直線8素子アレー配列の分配回路にて設計する場合、給電電力分配制御回路16は5.5dB(10dB-4.5dB)の給電電力の調整比にて設計する必要がある。
【0055】
しかし、加工精度の制限により、給電電力の調整比4.8dB以上の性能を得ることが困難である。
【0056】
そこで、本実施の形態では、不足した給電電力の調整比0.7dB分を、放射電力制御素子22(Gap=0.24mm、L=0.8mm)により補うようにした。
【0057】
本実施の形態では、給電電力の調整比を5.5dBとしたがより高性能な低サイドローブレベルを有する指向性アンテナを設計する場合にも放射電力制御素子22による調整が可能である。
【0058】
また、
図1に示される如く、放射電力制御素子22を実装した直列給電パッチアレーアンテナ10では、中央付近のパッチアンテナ素子14に対しては放射電力制御素子22による電力制御を行わず、周縁のパッチアンテナ素子14に対して放射電力制御素子22による電力制御を行っている。これにより、複数のパッチアンテナ素子14と給電電力分配制御回路16が平面基板12の同一平面上に配置されたパッチアレーアンテナを、アンテナ実装面積を維持したまま実現することができる。
【0059】
以上説明したように本実施の形態では、直線8素子アレー配列の直列給電パッチアレーアンテナ10における、各パッチアンテナ素子14の近傍に配置された放射電力制御素子22によって、パッチアンテナ素子14の放射電力を制御することで給電電力分配制御回路16の分配電力の調整比の制限による高性能なアレーアンテナ指向性設計の限界を緩和することができる。
【0060】
また、複数のパッチアンテナ素子14、給電電力分配制御回路16、及び、各パッチアンテナ素子14の近傍に配置された放射電力制御素子22のそれぞれを、平面基板12の同一平面上へ実装することができる。
【0061】
なお、本実施の形態では、直列給電パッチアレーアンテナ10(
図1参照)を例にとり説明したが、本発明に係る放射電力制御素子22のパッチアンテナ素子14の近傍への配置による放射電力制御技術は、
図7に示される如く、並列給電パッチアレーアンテナ10Aにおいても適用可能である。
【0062】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0063】
10 直列給電パッチアレーアンテナ
12 平面基板
12G GND層
14 パッチアンテナ素子
16 給電電力分配制御回路
16A マイクロストリップ線路
18 給電部
20 配線パターン
22 放射電力制御素子
20A ショートビア
10A 並列給電パッチアレーアンテナ(変形例)