(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】発電デバイスおよびセンサ付き軸受
(51)【国際特許分類】
H02K 21/24 20060101AFI20240110BHJP
F16C 41/00 20060101ALI20240110BHJP
H02K 11/30 20160101ALI20240110BHJP
H02K 11/215 20160101ALI20240110BHJP
【FI】
H02K21/24 G
F16C41/00
H02K11/30
H02K11/215
(21)【出願番号】P 2020018076
(22)【出願日】2020-02-05
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】柳野 浩志
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 知之
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-293146(JP,A)
【文献】特開2019-180183(JP,A)
【文献】実開昭54-026673(JP,U)
【文献】特開2004-235321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C41/00-41/04
H02K11/00-11/40
21/00-21/48
H05K1/00-1/02
1/14
3/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向にN極とS極とが並ぶ多極磁石と、
前記多極磁石に対向して配置されるコイル基板と、を備え、
前記多極磁石と前記コイル基板との前記第1方向への相対的な移動に基づいて発電する発電デバイスであって、
前記コイル基板は、
平面コイルが設けられたフレキシブル基板により構成されており、
前記平面コイルが設けられ前記多極磁石と対向する位置に配置されるコイル巻線部と、
前記コイル巻線部から延出され当該コイル巻線部の外縁で前記多極磁石から離間する方向に屈曲された延出部と、を有
し、
前記延出部に、前記コイル基板を取り付けるための取付穴が形成されていることを特徴とする発電デバイス。
【請求項2】
前記延出部に、前記多極磁石と前記コイル基板とによって発電された電力を出力するための出力端子が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の発電デバイス。
【請求項3】
前記取付穴は、長手方向を前記延出部の延出方向に一致させた長穴であることを特徴とする請求項
1または2に記載の発電デバイス。
【請求項4】
前記コイル基板の前記コイル巻線部は平板状とされ、
前記延出部は、
前記コイル巻線部の外縁で前記多極磁石から離間する方向に屈曲する第1の屈曲部と、
前記第1の屈曲部よりも前記延出部の先端側で、前記延出部の先端部を前記コイル巻線部と平行にする方向に屈曲する第2の屈曲部と、を有することを特徴とする請求項1から
3のいずれか1項に記載の発電デバイス。
【請求項5】
前記コイル基板が取り付けられる取り付け先部材をさらに備え、
前記取り付け先部材は、
前記多極磁石に対向し、前記延出部の前記第2の屈曲部よりも先端側が固定される第1面と、
前記第1面よりも前記多極磁石側に設けられ、前記コイル巻線部が固定される第2面と、を有し、
前記取り付け先部材の前記第1面には、前記多極磁石と前記コイル基板とによって発電された電力が供給される回路基板が固定されていることを特徴とする請求項
4に記載の発電デバイス。
【請求項6】
前記第1の屈曲部および前記第2の屈曲部により形成される前記延出部の段差は、
前記第1面と前記第2面との間に形成される前記取り付け先部材の段差よりも低いことを特徴とする請求項
5に記載の発電デバイス。
【請求項7】
前記取り付け先部材の段差は、前記第1面に固定される部品の厚みよりも高いことを特徴とする請求項
5または
6に記載の発電デバイス。
【請求項8】
前記延出部の屈曲された部分の幅は、当該延出部の他の部分の幅よりも狭いことを特徴とする請求項1から
7のいずれか1項に記載の発電デバイス。
【請求項9】
前記延出部の屈曲された部分の幅方向両端部に、半円弧状の切り欠きが対向して設けられていることを特徴とする請求項
8に記載の発電デバイス。
【請求項10】
前記延出部の屈曲された部分の剛性は、当該延出部の他の部分の剛性よりも低いことを特徴とする請求項1から
9のいずれか1項に記載の発電デバイス。
【請求項11】
前記延出部の前記他の部分に、べた塗りの導体パターンが設けられていることを特徴とする請求項
10に記載の発電デバイス。
【請求項12】
前記第1方向は、所定の回転軸を中心とする円の円周方向であり、
前記多極磁石と前記コイル基板とは、前記回転軸を中心に相対的に回転移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1から
11のいずれか1項に記載の発電デバイス。
【請求項13】
軸受と、
請求項1から
12のいずれか1項に記載の発電デバイスと、
前記軸受の外輪と内輪との相対的な回転に基づいて前記発電デバイスが発電した電力が供給されるセンサと、を備えることを特徴とするセンサ付き軸受。
【請求項14】
前記センサは、前記軸受の外輪に対する内輪の相対的な回転角度を計測する角度センサ、およびZ相信号を出力するZ相検出センサの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項
13に記載のセンサ付き軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電デバイスおよびセンサ付き軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発電部の薄型化のために、コイル基板としてコイルパターン(平面コイル)が設けられたフレキシブル基板を用いた発電ユニットが開示されている。この発電ユニットでは、面一のコイル基板を、カバーに設けられた段差部(凹部)に嵌め込み、接着剤によって固定するようにしている。
上記のような固定方法は、ねじや両面テープ等を用いた固定方法とは異なり、たわみや表面の浮きといった問題を抑制できるため、多極磁石とコイルとの間のギャップを最小化するような設計を検討できる。そして、この設計は、デバイスの自己発電能力向上に寄与することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術においては、コイル基板に対向配置される回転物(回転部)の径はコイル基板の径と同等である。このように、回転物の径が比較的小さい場合、コイル基板および回転物の径方向外側に、(1)発電した電圧を外部に引き出すための配線やはんだ分の厚み、(2)コイル基板を取り付けるためのねじ頭分の厚み(信頼性向上のためにねじ固定を併用する場合)等を逃がせるスペースがある。そのため、多極磁石とコイルとの間のギャップを最小化する設計が可能である。
しかしながら、例えば、コイル基板の外側にZ相検出センサを設置し、当該センサで回転の原点を検出する場合、回転物の径が上記センサに対応させてZ相用磁石を配置する分だけ大きくなる。この場合、上記の(1)や(2)等を逃がすスペースがなく、回転物との接触を回避するためには多極磁石とコイルとの間のギャップを広げるしかない。ところが、多極磁石とコイルとの間のギャップを広げると、発電能力が低下してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、多極磁石とコイルとの間のギャップをできるだけ小さくし、発電能力を向上することができる発電デバイス、およびそれを備えるセンサ付き軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一つの態様の発電デバイスは、第1方向にN極とS極とが並ぶ多極磁石と、前記多極磁石に対向して配置されるコイル基板と、を備え、前記多極磁石と前記コイル基板との前記第1方向への相対的な移動に基づいて発電する発電デバイスであって、前記コイル基板は、平面コイルが設けられたフレキシブル基板により構成されており、前記平面コイルが設けられ前記多極磁石と対向する位置に配置されるコイル巻線部と、前記コイル巻線部から延出され当該コイル巻線部の外縁で前記多極磁石から離間する方向に屈曲された延出部と、を有する。
【0007】
これにより、コイル基板に設けられる部材のうち平面コイル以外の厚みをもつ部材(例えば、配線、はんだ、ねじ頭など)を、コイル巻線部に対して多極磁石から離間する位置に設けられた延出部に配置することができる。したがって、コイル基板に対して相対的に移動する多極磁石側部材がコイル巻線部よりも大きい場合であっても、上記の厚みをもつ部材を多極磁石側部材から逃がし、干渉を回避する構造とすることができる。その結果、コイル巻線部と多極磁石とのギャップを縮めることができ、発電能力を向上させることができる。
【0008】
また、上記の発電デバイスにおいて、前記延出部に、前記多極磁石と前記コイル基板とによって発電された電力を出力するための出力端子が形成されていてもよい。この場合、多極磁石側部材と接触の可能性のある配線やはんだを、多極磁石側部材から適切に逃がすことができる。
さらに、上記の発電デバイスにおいて、前記延出部に、前記コイル基板を取り付けるための取付穴が形成されていてもよい。この場合、コイル基板を取り付け先部材にねじ固定する場合であっても、多極磁石側部材と接触の可能性のあるねじ頭を、多極磁石側部材から適切に逃がすことができる。
また、上記の発電デバイスにおいて、前記取付穴は、長手方向を前記延出部の延出方向に一致させた長穴であってもよい。この場合、延出部の延出方向の寸法のずれ等を長穴によって吸収し、コイル基板を取り付け先部材に適切に取り付けることができる。
【0009】
さらに、上記の発電デバイスにおいて、前記コイル基板の前記コイル巻線部は平板状とされ、前記延出部は、前記コイル巻線部の外縁で前記多極磁石から離間する方向に屈曲する第1の屈曲部と、前記第1の屈曲部よりも前記延出部の先端側で、前記延出部の先端部を前記コイル巻線部と平行にする方向に屈曲する第2の屈曲部と、を有していてもよい。
このように、延出部に多極磁石から離す方向の段を設けてクリアランスを設けることができる。コイル巻線部から1段ずらした面に平面コイル以外の厚みをもつ部材(例えば、配線、はんだ、ねじ頭など)を配置することができるので、上記の厚みをもつ部材を多極磁石側部材から適切に逃がす構造とすることができる。
【0010】
また、上記の発電デバイスは、前記コイル基板が取り付けられる取り付け先部材をさらに備え、前記取り付け先部材は、前記多極磁石に対向し、前記延出部の前記第2の屈曲部よりも先端側が固定される第1面と、前記第1面よりも前記多極磁石側に設けられ、前記コイル巻線部が固定される第2面と、を有し、前記取り付け先部材の前記第1面には、前記多極磁石と前記コイル基板とによって発電された電力が供給される回路基板が固定されていてもよい。
このように、コイル巻線部が固定される面から1段ずらした面に、コンデンサやダイオードといった厚みをもつ電子部品を備える回路基板を配置することができるので、当該回路基板を多極磁石側部材から適切に逃がすことができる。
【0011】
さらにまた、上記の発電デバイスにおいて、前記第1の屈曲部および前記第2の屈曲部により形成される前記延出部の段差は、前記第1面と前記第2面との間に形成される前記取り付け先部材の段差よりも低くてもよい。この場合、延出部を取り付け先部材に取り付けた際の延出部の浮き上がりを防止し、多極磁石を含む多極磁石側部材との接触を回避することができる。
また、上記の発電デバイスにおいて、前記取り付け先部材の段差は、前記第1面に固定される部品の厚みよりも高くてもよい。この場合、取り付け先部材の第1面に固定される部品の逃げを確実に確保することができる。
【0012】
また、上記の発電デバイスにおいて、前記延出部の屈曲された部分の幅は、当該延出部の他の部分の幅よりも狭くてもよい。この場合、延出部の折り曲げたい箇所を曲げやすい構造とすることができる。したがって、延出部が意図しない箇所で変形することを抑制することができる。
さらに、上記の発電デバイスにおいて、前記延出部の屈曲された部分の幅方向両端部に、半円弧状の切り欠きが対向して設けられていてもよい。この場合、延出部の折り曲げたい箇所を容易に曲げやすい構造とすることができる。また、半円弧状の切り欠きとすることで、延出部を折り曲げた際の応力を緩和することができる。
【0013】
また、上記の発電デバイスにおいて、前記延出部の屈曲された部分の剛性は、当該延出部の他の部分の剛性よりも低くてもよい。この場合、延出部の折り曲げたくない箇所の剛性を高めて曲げにくい構造とすることができる。したがって、延出部が意図しない箇所で変形することを抑制することができる。
さらに、上記の発電デバイスにおいて、前記延出部の前記他の部分に、べた塗りの導体パターンが設けられていてもよい。この場合、延出部の折り曲げたくない箇所の剛性強化とGNDエリアの確保による回路動作の安定化とを実現することができる。
【0014】
また、上記の発電デバイスにおいて、前記第1方向は、所定の回転軸を中心とする円の円周方向であり、前記多極磁石と前記コイル基板とは、前記回転軸を中心に相対的に回転移動可能に構成されていてもよい。
この場合、多極磁石とコイル基板との相対的な回転移動に基づいて発電する発電デバイスとすることができる。
【0015】
さらに、本発明の一つの態様のセンサ付き軸受は、軸受と、上記のいずれかの発電デバイスと、前記軸受の外輪と内輪との相対的な回転に基づいて前記発電デバイスが発電した電力が供給されるセンサと、を備える。これにより、自己発電能力が向上されたセンサ付き軸受とすることができる。
また、上記のセンサ付き軸受において、前記センサは、前記軸受の外輪に対する内輪の相対的な回転角度を計測する角度センサ、およびZ相信号を出力するZ相検出センサの少なくとも一方を含んでいてもよい。このように、コイルの外側にセンサを設置する場合など、回転部の径が大きくなる場合でも、コイル巻線部と多極磁石とのギャップを縮めることができ、発電能力を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一つの態様によれば、多極磁石とコイルとの間のギャップをできるだけ小さくすることができ、発電デバイスの発電能力向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、センサ付き軸受の構成を示す分解斜視図である。
【
図2】
図2は、センサ付き軸受の構成を示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は、カバーとコイル基板と回路基板との構成例を示す平面図である。
【
図4】
図4は、コイル基板の構成例を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、コイル基板の取り付け先部材の段差を示す図である。
【
図8】
図8は、コイル基板の接触例を示す図である。
【
図10】
図10は、剛性強化用のべた塗りパターンの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0019】
図1および
図2は、本実施形態における発電デバイスを備えるセンサ付き軸受1の構成を示す分解斜視図である。
図1は、センサ付き軸受1をカバー10側から見た図であり、
図2は、センサ付き軸受1を軸受120側から見た図である。
図1および
図2に示すように、センサ付き軸受1は、本実施形態における発電デバイスを備える発電ユニット100と、軸受120と、を備える。発電ユニット100は、軸受120の一方の側面に取り付けられる。
【0020】
発電ユニット100は、カバー10と、コイル基板20と、回転部30と、回路基板40と、を備える。発電ユニット100が有する基板は、ポッティング剤などにより保護されている。なお、発電ユニット100は、基板上の電子回路の保護を目的として、バックカバーを備えていてもよい。この場合、バックカバーは、例えば、発電ユニット100における軸受120に対向する面側(
図1および
図2の回転部30と軸受120との間)に設置することができる。
また、ここでは、センサ付き軸受1は、
図1および
図2に示すように発電ユニット100と軸受120とが別体である軸受-センサ別体型デバイスである場合について説明するが、軸受側に追加工を施し、軸受にカバーを圧入するなどして軸受-センサ一体型デバイスとしてもよい。
【0021】
カバー10は、リング状の平板部材であり、例えば、ケイ素鋼板、炭素鋼(JIS規格 SS400またはS45C)、マルテンサイト系ステンレス(JIS規格 SUS420)またはフェライト系ステンレス(JIS規格 SUS430)などのような磁性を有する材料により形成される。
このカバー10の軸受120と対向する側の面には、
図2に示すように、回路基板40が取り付けられている。回路基板40は、電源基板41と、センサ基板42と、制御基板43と、を備える。電源基板41、センサ基板42および制御基板43は、例えばカバー10に開けられた雌ねじ穴に、黄銅など非磁性材料のボルトが締結することで、当該カバー10に固定される。この場合、ボルトは、カバー10に取り付けられた状態で、カバー10から突出しない長さを有する。なお、電源基板41、センサ基板42および制御基板43は、必要に応じて任意に分割または一体化することができる。
【0022】
また、カバー10には、貫通孔が開けられており、この貫通孔は、樹脂などの不導体材料で形成された蓋17で密閉されている。後述するように、センサ基板42には、アンテナ47(後述の
図3参照)が実装される。カバー10は導体で製作されているので、アンテナ47からの電磁波をシールドする作用を有する。しかしながら、アンテナ47は蓋17と対向する位置に配置され、これにより、アンテナ47の電磁波は、蓋17を介して、外部の通信部へ到達することができる。
コイル基板20は、カバー10の軸受120と対向する側の面に取り付けられている。
【0023】
図3は、カバー10とコイル基板20と回路基板40(電源基板41、センサ基板42、制御基板43)との構成例を示す平面図である。
図3に示すように、コイル基板20は、フレキシブル基板21と、フレキシブル基板21に設けられたコイルパターン23と、フレキシブル基板21に設けられた複数のヨーク25と、を有する。なお、ヨーク25の設置は任意である。フレキシブル基板21は、絶縁性を有する材料(例えば、ポリイミド、液晶ポリマー等)により構成され、回転軸Axを中心とする正円のリング状のコイル巻線部20aと、コイル巻線部20aから径方向外側に延出した延出部20bと、を備える。
【0024】
コイルパターン23は、フレキシブル基板21の厚さ方向に積層された複数の平面コイルを有する。平面コイルとは、絶縁体の所定の面上にパターニングされて設けられた導電体(例えば、銅箔)のパターンである。コイルパターン23は、フレキシブル基板21のコイル巻線部20aに設けられている。
本実施形態においては、導電体のパターンが絶縁体の複数の面上に形成されている。ただし、これに限られず、導電体のパターンが絶縁体の1つの面上に形成されていてもよい。コイルパターン23のターン数は平面コイルの積層数に比例する。発電ユニット100の用途によって、平面コイルの積層数を変化させ、発電量を調整してもよい。なお、発電電力向上のためには、複数積層された平面コイルを直列接続することが好ましいが、これに限定されるものではなく、並列接続してもよい。
【0025】
また、コイルパターン23は、平面視で、回転軸Axを中心とする円の円周方向に沿って凹凸が交互に並ぶように延設されている。この凹凸の凹部にヨーク25が1つずつ配置されている。なお、本実施形態では、後述するエンコーダマグネットの磁気変化を検出できる位置に角度センサを配置するため、コイルと角度センサとの物理的干渉を回避するために、コイル巻線部20aおよびコイルパターン23を、
図3に示すように一部円形を欠けさせる形状としてもよい。
また、延出部20bには、ねじ止め穴(取付穴)20cを形成することができる。この場合、コイル基板20は、ねじ止め穴20cを介してねじ27によってカバー10に固定されてもよい。延出部20bの形状等については後で詳述する。なお、コイル基板20は、例えば接着剤を介してカバー10に固定されてもよい。また、コイル基板20は、ねじと接着剤とを併用してカバー10に固定されてもよい。
【0026】
また、電源基板41とセンサ基板42と制御基板43とは、平面視で、コイル基板20よりも例えば外周側に取り付けられている。
電源基板41には、整流回路411(後述の
図11参照)を含む電源部(不図示)が実装されている。当該電源部は、発電部50(後述の
図11参照)から供給された単相交流電力を直流電圧に変換して、センサ基板42および制御基板43へ供給する。
【0027】
センサ基板42には、角度センサ421と、ホールセンサ422と、が実装されている。ホールセンサ422は、後述するZ相用小型磁石36が近傍を通過する毎に、1つのパルスを生成する。つまり、ホールセンサ422は、軸受120が1回転する毎に1パルス(Z相信号)を生成するZ相検出センサとして機能する。
制御基板43には、制御回路部45と、アンテナ47と、加速度センサ441と、温度センサ442とが実装されている。
なお、上記の各センサ、制御回路部45およびアンテナ47は、別々のIC(Integrated Circuit)チップで構成されていてもよいし、それらの一部または全部が1つのICチップで構成されていてもよい。
【0028】
また、コイル基板20の1つの延出部20bには、交流電圧出力端子(パッド)20dが設けられている。コイルパターン23の両端は、当該延出部20bに設けられた交流電圧引き出し用のパターン(不図示)を介してパッド20dに接続され、パッド20dから、例えばリード線(不図示)を介して電源基板41に接続されている。
なお、本実施形態において、コイルパターン23と電源基板41との接続は、リード線ではなく、FPC(Flexible Printed Circuit)コネクタを介して行われてもよい。または、コイル基板20を延長して電源基板41と直接接続されてもよい。FPCコネクタを使用した接続では、半田が不要となるので、発電ユニット100の生産性をさらに高めることができる。
【0029】
図1および
図2に戻って、回転部30は、リング状の磁気トラック31と、リング状の基材33と、リング状の取付け治具35と、Z相用小型磁石36と、を有する。基材33および取付け治具35は、磁性を持つ金属材料であることが望ましい。
磁気トラック31は、基材33の一方の面側に設けられている。基材33は、磁気トラック31の外形よりも大きく、Z相用小型磁石36は、基材33の一方の面側において磁気トラック31よりも外周側に設けられている。なお、Z相用小型磁石36およびそれに対応するホールセンサ422を含むセンサ基板42は、磁気トラック31の内側に配置されていてもよい。
取付け治具35は、基材33の他方の面側に固定されている。取付け治具35は、基材33の他方の面側から、基材33の中央に位置する貫通した開口部を通って、基材33の一方の面側に突き出ている。基材33の一方の面側はカバー10と対向する面側である。基材33の他方の面側は軸受120と対向する面側である。
なお、磁気トラック31は、基材33に対して着脱可能な構成であってもよい。また、磁気トラック31は、軸受120に設けられていてもよい。この場合、例えば、磁気トラック31は、軸受120に形成された溝に圧入されていてもよい。
【0030】
本実施形態では、磁気トラック31と基材33とを合わせて、エンコーダマグネットという。例えば、エンコーダマグネットは、金属製の基材の一方の面にプラスチックマグネットが形成され、形成されたプラスチックマグネットの表面にN極とS極とが交互に着磁されることにより形成される。取付け治具35は、エンコーダマグネットを、発電ユニット100と軸受120とに通される軸部に取り付けるために使用される。
【0031】
磁気トラック31は、N極31NとS極31Sとからなる磁極対311を複数有する。複数の磁極対311は、磁気トラック31の円周方向(回転軸Axを中心とする円の円周方向)に並んでいる。N極31NおよびS極31Sは、交互に配置されている。
また、磁気トラック31における隣り合うN極31NとS極31Sとの中心間の距離は、コイル基板20における隣り合うヨーク25の中心間の距離と同じ長さになっている。
【0032】
本実施形態では、回転軸Ax(
図3参照)を中心に、コイル基板20に対して磁気トラック31が相対的に回転すると、隣り合うヨーク25のうち一方のヨーク25がN極と対向するときは、他方のヨーク25はS極と対向する。また、一方のヨーク25がS極と対向するときは、他方のヨーク25はN極と対向する。つまり、コイル基板20の隣り合うヨーク25は、磁気トラック31の同一磁極と対向することはない。これにより、一方のヨーク25を通る磁束密度の変化の位相と、他方のヨーク25を通る磁束密度の変化の位相は、180°ずれた状態となる。
【0033】
このように、コイル基板20に対して磁気トラック31が相対的に回転すると、ヨーク25と対向する磁極が交互に替わる。これにより、ヨーク25を通る磁束密度が周期的に変化する。この磁束密度の周期的な変化に応じて、ヨーク25の周りに位置するコイルパターン23に電圧変化(例えば、正弦波の交流電圧)が発生する。
磁気トラック31を有する回転部30は軸受120の内輪に固定されており、軸受120の内輪が回転すると、軸受120の中で電磁誘導による発電が行われる。この発電は自己発電である。なお、磁気トラック31とコイル基板20との組み合わせが、本実施形態における発電デバイスに対応し、後述の
図11における発電部50に対応している。
【0034】
図4は、コイル基板20の構成例を示す斜視図である。なお、
図4では、説明の都合上、コイルパターン23を露出させているが、実際は保護や外部とのショート防止を目的として、パッド20d以外はレジスト等により表面が覆われているため外部には露出していない。
この
図4に示すように、コイル基板20は、コイルパターン23が設けられたリング状のコイル巻線部20aと、第1の屈曲部20eおよび第2の屈曲部20fを有する延出部20bと、を備える。第1の屈曲部20eは、コイル巻線部20aの外縁において、延出部20bを回転部30から離間する方向に屈曲させる。第2の屈曲部20fは、第1の屈曲部20eよりも延出部20bの先端側で、延出部20bの先端部をコイル巻線部20aと平行となるように屈曲させる。つまり、延出部20bには、第1の屈曲部20eと第2の屈曲部20fとによって段差が形成されている。
【0035】
図5に示すように、カバー10の第1面(回転部30に対向する面)10aにおいて、カバー10の中央に設けられた開口部10bの周囲には、第1面10aから回転部30側に突出する突出部11が設けられている。これらカバー10および突出部11が、コイル基板20が取り付けられる取り付け先部材に対応している。コイル基板20は、延出部20bを第1面10aに配置し、コイル巻線部20aを突出部11における回転部30に対向する面(第2面)に配置して、ねじ27により固定されている。
【0036】
なお、本実施形態では、カバー10と突出部11との2つの部材により取り付け先部材を構成する場合について説明するが、取り付け先部材の構成は上記に限定されない。例えば、取り付け先部材は1つの部材により構成されていてもよいし、3つ以上の部材により構成されていてもよい。
また、本実施形態では、第1の屈曲部20eおよび第2の屈曲部20fの角度を90°または略90°とする場合について説明するが、当該角度は、取り付け先部材の形状に応じて任意に設定可能である。
【0037】
図6に示すように、カバー10および突出部11からなる取り付け先部材は、
図5の回転部30(磁気トラック31)に対向して延出部20bが固定される第1面10aと、第1面10aよりも
図5の回転部30(磁気トラック31)側に設けられてコイル巻線部20aが固定される第2面10cと、を有する。
そして、
図6に示す第1面10aと第2面10cとの間に形成される段差aは、
図7に示す第1の屈曲部20eおよび第2の屈曲部20fにより形成される延出部20bの段差bよりも大きい(a>b)。ここで、a>bとは、両者に極端に差をつけるという意味ではなく、公差を設ける際にa>bとなるように設定することを意味する。なお、高さaと高さbとは等しくてもよい(a=b)。また、特に図示しないが、突出部11において、屈曲部20eと接触する角には面取りを施すことが望ましい。
【0038】
コイル基板20を構成するフレキシブル基板21は、極めて薄く、自在に曲げられる材料により構成されているため、単にフレキシブル基板21の一部を折り曲げて段をつけようとしても、意図しないところで変形するおそれがある。例えば、コイル基板20の段差の高さbが突出部11の高さaよりも大きいと、
図8に示すように、コイル基板20が意図しないところで盛り上がってしまい、対向する磁気トラック31などに接触するおそれがある。
【0039】
上述したようにコイル基板20の段差の寸法を規定することで、折り曲げたくない箇所の変形(折り曲げ)を防止することができる。
また、延出部20bに設けられたねじ止め穴20cは、例えば、コイル基板20の径方向(延出部20bの延出方向)に長手方向を一致させた長穴とすることができる。このように、ねじ止め穴20cを長穴により構成することで、上記の高さaと高さbとの差分を適切に吸収することができる。
【0040】
また、コイル基板20において、曲がりやすい点、曲がりにくい点を意図的に設けることで、折り曲げたくない箇所の変形(折り曲げ)を防止するようにしてもよい。例えば、
図9に示すように、第1の屈曲部20eおよび第2の屈曲部20fの幅方向両端部に切り欠き部20gを設けてもよい。つまり、第1の屈曲部20eおよび第2の屈曲部20fにおける延出部20bの幅を、延出部20bの他の部分の幅よりも狭くするようにしてもよい。これにより、第1の屈曲部20eおよび第2の屈曲部20fの剛性を他の部分よりも小さくして曲げやすくすることができる。
なお、切り欠き部20gの形状は、
図9に示すような半円弧状に限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。ただし、延出部20bを折り曲げた際の応力緩和のため、切り欠き部20gの形状は半円弧状であることが好ましい。
【0041】
さらに、
図10に示すように、第1の屈曲部20eおよび第2の屈曲部20f以外の延出部20bに、べた塗りパターン20hを設けてもよい。ここで、べた塗りパターン20hとしては、例えば、コイルパターン23を形成する際に用いる銅箔を用いることができる。
本来、回路動作の安定化のためにGNDエリアを広くする目的でべた塗り状態の導体パターンを設ける。上記のように、コイル基板20における変形をさせたくない部分にべた塗りパターン20hを設けることで、フレキシブル基板21に薄い銅版が入っている状態を擬似的に再現することができる。これにより、折り曲げたくない部分の剛性を高めることができる。
なお、べた塗りパターン20hは、剛性を高めることができればよく、銅箔により構成される場合に限定されない。また、
図6および
図7に示す寸法の規定、
図9に示す屈曲部の切り欠き部20g、ならびに
図10に示す剛性強化用のべた塗りパターン20hは、任意に組み合わせて適用可能である。
【0042】
図11は、センサ付き軸受1が備える回路基板40の構成例を示す図である。
図11に示すように、回路基板40は、電源基板41と、センサ基板42と、制御基板43と、を備える。
電源基板41は、整流回路411を備える。
発電部50は、上述したように、磁気トラック31(
図5参照)とコイル基板20(
図6参照)と、を備える発電デバイスである。発電部50は、軸受120の外輪と内輪との相対的な回転に基づいて発電し、センサ基板42および制御基板43に電力を供給する。
【0043】
発電部50は、単相交流電力を発電して整流回路411に出力する。整流回路411は、発電部50で発電された単相交流電力を全波整流して直流電力へと変換する。整流回路411としてダイオードブリッジが例示されるが、本実施形態はこれに限定されない。整流回路411から出力された直流電力は、不図示の平滑回路により平滑化され安定した電源となり、その後、不図示の蓄電回路および蓄電器に蓄電される。蓄電器に蓄電された直流電力は、不図示の定電圧出力回路により一定電圧に調整された後、制御基板43に出力される。
【0044】
制御基板43には、加速度センサ441と、温度センサ442と、マイコン451と、DC-DCコンバータ452と、無線モジュール(送信部)453と、が実装されている。マイコン451、DC-DCコンバータ452および無線モジュール453は、制御回路部45(
図3参照)に含まれる。
加速度センサ441および温度センサ442は、DC-DCコンバータ452を介して電源基板41から供給される直流電力を使用して、加速度や温度を検出する。DC-DCコンバータ452は、マイコン451が備えるCPUの制御下で、加速度センサ441および温度センサ442に電源基板41から供給される直流電力を供給する。
【0045】
センサ基板42には、角度センサ421と、ホールセンサ422と、が実装されている。角度センサ421およびホールセンサ422は、DC-DCコンバータ452を介して電源基板41から供給される直流電力を使用して、回転角度やZ相を検出する。DC-DCコンバータ452は、マイコン451が備えるCPUの制御下で、角度センサ421およびホールセンサ422に電源基板41から供給される直流電力を供給する。
【0046】
角度センサ421は、磁気トラック31に対向するようにセンサ基板42に実装されている。磁気トラック31を有する回転部30は軸受120の内輪に固定されており、角度センサ421は、軸受120の内輪と共に磁気トラック31が回転することによって変化する磁束密度を検出することによって、軸受120の外輪に対する内輪の回転角度を検出する。
なお、角度センサ421の種類は、インクリメンタル型であってもよいし、アブソリュート型であってもよい。
【0047】
ホールセンサ422は、Z相用小型磁石36に対向するようにセンサ基板42に実装されている。Z相用小型磁石36を有する回転部30は軸受120の内輪に固定されており、ホールセンサ422は、軸受120の内輪と共にZ相用小型磁石36が回転することによって変化する磁束密度を検出することによって、Z相を検出する。
【0048】
マイコン451は、特に図示しないが、CPUや内部メモリを備える。また、マイコン451は、DMACを備えていてもよい。マイコン451は、各センサから取得した計測値を内部メモリ等に書き込む。例えば、マイコン451は、軸受120の回転角度計測と同期して振動データを計測することができる。
【0049】
無線モジュール453は、マイコン451が備えるCPUの制御下で、内部メモリ等に記憶されたデータを外部に送信する。この無線モジュール453は、
図3のアンテナ47を備える。例えば、無線モジュール453は、無線通信によりデータを外部装置に送信する。送信されたデータは、外部装置の通信部で受信され、処理される。
なお、本実施形態では、センサ付き軸受1と外部装置とが無線通信を行う場合について説明したが、センサ付き軸受1と外部装置との間で通信可能な構成であれば、その通信規格は問わない。つまり、センサ付き軸受1から外部装置へのデータ送信は、有線通信により行ってもよい。
【0050】
以上説明したように、本実施形態における発電デバイスは、第1方向にN極とS極とが並ぶ磁気トラック(多極磁石)31と、磁気トラック31に対向して配置されるコイル基板20と、を備え、磁気トラック31とコイル基板20との第1方向への相対的な移動に基づいて発電する。ここで、上記第1方向は、
図3に示す回転軸Axを中心とする円の円周方向であり、磁気トラック31とコイル基板20とは、回転軸Axを中心に相対的に回転移動可能に構成されている。
コイル基板20は、コイルパターン(平面コイル)23が設けられたフレキシブル基板21により構成されており、コイルパターン23が設けられ磁気トラック31と対向する位置に配置されるコイル巻線部20aと、コイル巻線部20aから延出され当該コイル巻線部20aの外縁で磁気トラック31から離間する方向に屈曲された延出部20bと、を有する。より具体的には、延出部20bは、コイル巻線部20aの外縁で磁気トラック31から離間する方向に屈曲する第1の屈曲部20eと、第1の屈曲部20eよりも延出部20bの先端側で、延出部20bの先端部をコイル巻線部20aと平行にする方向に屈曲する第2の屈曲部20fと、を有する。
【0051】
そして、延出部20bには、コイル基板20を取り付け先部材(カバー10および突出部11)に取り付けるためのねじ止め穴20cや、磁気トラック31とコイル基板20とによって発電された電力を出力するための交流電圧出力端子(パッド)20dを形成することができる。
また、発電された電力が供給される回路基板40は、取り付け先部材における延出部20bが固定される面(第1面10a)に固定することができる。
【0052】
このように、コイル基板20は、コイル巻線部20aが存在する面からずらした面(段つき部)に延出部20bを有する。したがって、コイル基板20に設けられる部材のうち、コイルパターン23以外の厚みをもつ部材(例えば、配線、はんだ、ねじ頭など)を、コイル巻線部20aに対して回転部30から離間する位置に配置することができる。また、コンデンサやダイオードといった厚みをもつ部品が実装された回路基板40も、コイル巻線部20aが存在する面からずらした面に配置することができる。
すなわち、回転部30から離す方向に段を設けてクリアランスを設けることで、回転部30との接触のおそれのある配線、はんだ、止めねじ、電子部品といった厚みを持つ部材を逃がすことができる。そのため、コイルの外側にZ相検出センサを設ける場合など、回転部30の径が大きくなる場合でも、磁気トラック31とコイル基板20との間のギャップを縮めることができる。これにより、発電電力(発電効率)を向上させることができる。
【0053】
なお、上記実施形態では、角度センサ421を磁場範囲内に設置するためにコイルパターン23の一部を欠けさせているが、磁気トラック31の外径をコイルパターン23の外径よりも大きくして、角度センサをコイルの外側に配置することもできる。この場合にも、回転部30の径が大きくなるため、上記のように段付きのコイル基板20を用いることで、上述した効果が得られる。
【0054】
また、
図7に示す延出部20bの段差bは、
図6に示すカバー10および突出部11からなる取り付け先部材の段差aよりも低くすることができる。これにより、延出部20bを取り付け先部材に取り付けた際の延出部20bが意図しないところで曲がったり浮き上がったりすることを防止し、延出部20bと回転部30との接触を回避することができる。さらに、延出部20bにねじ止め穴20cを設ける場合には、このねじ止め穴20cを、長手方向を延出部20bの延出方向に一致させた長穴とすることで、取り付け先部材の段差aと延出部20bの段差bとの差分を吸収させることができ、コイル基板20を取り付け先部材に適切にねじ固定することができる。
【0055】
また、
図6に示す取り付け先部材の段差aは、回路基板40などの第1面10aに固定される部品の厚みよりも高くすることができる。これにより、取り付け先部材の第1面10aに固定される部品の逃げを確実に確保し、コイル巻線部20aの表面よりも回転部30側には部品が何も突出されていない状態とすることができる。したがって、回転部30の径が大きくなる場合でも、磁気トラック31とコイル基板20との間のギャップを最小にする設計が狙える。これにより、発電電力(発電効率)をより向上させることができる。
【0056】
さらに、
図9に示すように、延出部20bの屈曲された部分(第1の屈曲部20e、第2の屈曲部20f)の幅方向両端部に半円弧状の切り欠き部20gを対向して設け、この部分の幅を、延出部20bの他の部分の幅よりも狭くするようにしてもよい。この場合、延出部20bの折り曲げたい箇所を曲げやすい構造とすることができる。したがって、延出部20bが意図しない箇所で変形することを効果的に抑制することができる。
【0057】
また、
図10に示すように、延出部20bの屈曲された部分(第1の屈曲部20e、第2の屈曲部20f)以外にべた塗りパターン20hを設け、延出部20bの屈曲された部分(第1の屈曲部20e、第2の屈曲部20f)の剛性を、当該延出部20bの他の部分の剛性よりも低くするようにしてもよい。この場合、延出部20bの折り曲げたくない箇所の剛性を高めて曲げにくい構造とすることができる。したがって、この場合にも、延出部20bが意図しない箇所で変形することを効果的に抑制することができる。
【0058】
(変形例)
上記実施形態においては、コイル基板20のリング状のコイル巻線部20aから、第1の屈曲部20eおよび第2の屈曲部20fを介して延出部20bが延出している場合について説明したが、コイル基板20の形状は上記に限定されない。例えば、突出部11が平面状の側面を有する場合、
図12に示すように、延出部20bを突出部11の側面に固定することもできる。つまり、第2の屈曲部20fを設けなくてもよい。この場合、突出部11の側面に、延出部20bをねじ27により固定してもよい。また、特に図示しないが、突出部11の側面に固定された延出部20bに、交流電圧引き出し線やはんだを設けてもよい。この場合にも、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
なお、
図12では、延出部20bを90°に屈曲させた例を示しているが、延出部20bを屈曲させる角度は上記に限定されるものではなく、突出部11の側面の形状に応じて任意に設定可能である。
【0059】
さらに、上記実施形態においては、コイル基板20の延出部20bに、ねじ止め穴20cを設ける場合について説明したが、コイル基板20をねじ止めしない場合(例えば接着剤により固定する場合)には、ねじ止め穴20cは不要である。
また、上記実施形態においては、コイル基板20が2つの延出部20bを有する場合について説明したが、延出部20bの数、位置、形状、大きさは任意に変更可能である。
【0060】
また、上記実施形態においては、Z相検出センサとしてホールセンサを用いる場合について説明したが、Z相検出センサの種類は上記に限定されない。Z相検出センサは、回転機器の動作1サイクル(1回転)ごとに1パルスを出力するセンサであればよく、例えば光学式フォトセンサを用いることもできる。
【0061】
さらに、上記実施形態においては、回転機器が軸受である場合について説明したが、回転機器は、例えば歯車であってもよい。この場合、例えば歯車に磁気トラック31を固定し、磁気トラック31に対向するように上述したコイル基板20を配置するようにしてもよい。歯車に磁気トラック31を固定した場合、磁気トラック31の外側に歯車の歯が存在することになり、回転部の径は大きくなる。しかしながら、上述した段付きのコイル基板20を用いることで、磁気トラック31とコイル基板20との間のギャップを小さくすることができ、発電能力を向上させることができる。
【0062】
なお、上記実施形態においては、発電ユニット100を回転機器に適用する場合について説明したが、例えば直動機構にも適用可能である。つまり、コイル基板20のコイル巻線部20aおよびコイル基板20に対向配置される多極磁石の形状はリング状に限定されず、直線方向に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…センサ付き軸受、10…カバー、11…突出部、20…コイル基板、20a…コイル巻線部、20b…延出部、20c…ねじ止め穴、20d…交流電圧出力端子、20e…第1の屈曲部、20f…第2の屈曲部、20g…切り欠き部、20h…べた塗りパターン、21…フレキシブル基板、23…コイルパターン、25…ヨーク、27…ねじ、30…回転部、31…磁気トラック、36…Z相用小型磁石、40…回路基板、41…電源基板、42…センサ基板、43…制御基板、100…発電ユニット、120…軸受、421…角度センサ、422…ホールセンサ、441…加速度センサ、442…温度センサ