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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】車両の走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/16 20200101AFI20240110BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20240110BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B60W30/16
B60W40/04
G08G1/16 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020020651
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2021126907
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝彦
【審査官】竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-151287(JP,A)
【文献】特開2016-222170(JP,A)
【文献】特開2018-083539(JP,A)
【文献】特開2018-158684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車周囲の他車および自車前方の走路を認識する周囲認識機能と自車運動状態を取得する機能を含む環境状態推定部と、
前記環境状態推定部に取得される情報に基づいて目標経路を生成する経路生成部と、
前記目標経路に自車を追従させるべく速度制御および操舵制御を行う車両制御部と、
を備えた車両の走行制御装置であって、
隣接車線の所定範囲に他車がいない場合に隣接車線への自動車線変更を行う機能と、
前記自動車線変更の実施中に自車周囲の所定領域内に他車が認識された場合に、車線変更の継続可否を判定する機能と、
自車位置が料金所の無車線区間を含む特定区間にある場合に、前記無車線区間の前方の道路構造を目標として経路追従走行する機能と、
前記経路追従走行中に自車周囲の所定領域内に他車が認識された場合に、前記経路追従走行の継続可否を判定する機能と、を有し、
前記経路追従走行中に、前記経路追従走行の継続可否判定の基準となる前記所定領域を、自車位置が前記特定区間以外の一般区間にある場合の前記所定領域よりも狭い第2の所定領域に変更するように構成されている、車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記無車線区間における前記経路追従走行中に自車周囲の所定領域に他車がいない場合に、自車の斜前方の道路構造を目標として自動進路変更を行う機能をさらに有し、
前記自動進路変更中に、前記自動進路変更の継続可否判定の基準となる前記所定領域を、自車位置が前記特定区間以外の一般区間にある場合の前記所定領域よりも狭い第3の所定領域または前記第2の所定領域に変更するように構成されている、
請求項1記載の車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記無車線区間は、料金ゲート手前の無車線区間を含み、
前記無車線区間の前方の道路構造は、料金ゲートまたはその手前の車線区分線を含む、請求項1または2記載の車両の走行制御装置。
【請求項4】
前記無車線区間は、料金ゲート通過後の無車線区間を含み、
前記無車線区間の前方の道路構造は、自車前方の一般区間の車線区分線を含む、
請求項1または2記載の車両の走行制御装置。
【請求項5】
前記特定区間は、前記無車線区間の手前の有車線区間をさらに含み、
前記自動車線変更は、前記有車線区間における前記料金ゲートを目標とした予備的車線変更を含む、請求項3記載の車両の走行制御装置。
【請求項6】
前記有車線区間は、前記環境状態推定部により前記料金ゲートを認識可能な有車線区間である、請求項5記載の車両の走行制御装置。
【請求項7】
測位手段による自車位置情報と地図情報に基づいて経路誘導するナビゲーション機能を備え、前記有車線区間は、前記ナビゲーション機能に基づいて設定されており、前記予備的車線変更は、前記ナビゲーション機能による経路誘導と合致する当為性車線変更である、請求項5記載の車両の走行制御装置。
【請求項8】
前記所定領域は、自車の前方所定距離と後方所定距離と側方所定距離とによって画定され、かつ、前記第2の所定領域は、前記前方所定距離と前記後方所定距離が短縮される、
請求項1~7の何れか一項記載の車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行制御装置に関し、さらに詳しくは、自動車線変更システムを構成する走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運転者の負担軽減、安全運転支援を目的とした種々の技術、例えば、車間距離制御システム(Adaptive Cruise Control System:ACCS)、車線維持支援システム(Lane Keeping Assistance System:LKAS)などが実用化されている。さらに、これらをベースにした「車線内部分的自動走行システム(Partially Automated in-lane Driving System:PADS)」や「部分的自動車線変更システム(Partially Automated Lane Change System:PALS)」の実用化や国際規格化が進められている。
【0003】
このような走行制御システムは、道路構造が規格化された高速道路などを中心に運用が進められているが、車線区分線がない料金所区間では、一般走行区間と同様の自動走行は行えない。本発明者らによる特許文献1には、車線区分線がない料金所区間で料金ゲートなどを目標にした経路追従走行または前車追従走行に移行することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-151287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、料金ゲートを目標にした経路追従走行中に先行車に追いついた場合には前車追従走行に移行するが、他車の進路変更などにより、目標進入経路への他車の侵入が予測される場合には、運転者に自動走行中止や権限委譲・操作引継要求が通知され、手動運転に移行する。しかしながら、料金所区間は距離も短いうえ、何れかの料金ゲートを必ず通過しなければならないので、手動運転への移行や目標ゲートに進入できない状況を低減することが望ましい。
【0006】
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、料金所などの無車線区間における他車の挙動による自動走行中止や目標経路に進入できない状況を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、
自車周囲の他車および自車前方の走路を認識する周囲認識機能と自車運動状態を取得する機能を含む環境状態推定部と、
前記環境状態推定部に取得される情報に基づいて目標経路を生成する経路生成部と、
前記目標経路に自車を追従させるべく速度制御および操舵制御を行う車両制御部と、
を備えた車両の走行制御装置であって、
隣接車線の所定範囲に他車がいない場合に隣接車線への自動車線変更を行う機能と、
前記自動車線変更の実施中に自車周囲の所定領域内に他車が認識された場合に、車線変更の継続可否を判定する機能と、
自車位置が料金所の無車線区間を含む特定区間にある場合に、前記無車線区間の前方の道路構造を目標として経路追従走行する機能と、
前記経路追従走行中に自車周囲の所定領域内に他車が認識された場合に、前記経路追従走行の継続可否を判定する機能と、を有し、
前記経路追従走行中に、前記経路追従走行の継続可否判定の基準となる前記所定領域を、自車位置が前記特定区間以外の一般区間にある場合の前記所定領域よりも狭い第2の所定領域に変更するように構成されている、車両の走行制御装置にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両の走行制御装置によれば、上記のように、料金所の無車線区間における経路追従走行中に、その継続可否判定の基準となる所定領域が、一般区間における車線変更の継続可否判定の基準となる所定領域よりも狭い第2の所定領域に変更されるので、料金所の無車線区間での他車の挙動による自動走行中止および目標とする料金ゲートや車線に進入できない状況を低減することができ有利である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両の走行制御システムを示す概略図である。
図2】車両の外界センサ群を示す概略的な平面図である。
図3】車両の走行制御システムを示すブロック図である。
図4】料金所区間の手前の有車線区間での進路変更時の制御を示すフローチャートである。
図5】料金ゲート手前の無車線区間での進路変更時の制御を示すフローチャートである。
図6】料金ゲート通過後の無車線区間での進路変更時の制御を示すフローチャートである。
図7】(a)料金所区間の手前の有車線区間での目標経路生成、(b)目標経路への進路変更中止、(c)要件緩和による進路変更継続を例示する概略平面図である。
図8】(a)料金ゲート手前の無車線区間での目標経路生成、(b)目標経路への進路変更中止、(c)要件緩和による進路変更継続を例示する概略平面図である。
図9】(a)料金ゲート通過後の無車線区間での目標経路生成、(b)目標経路への進路変更中止、(c)要件緩和による進路変更継続を例示する概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1において、本発明に係る走行制御システムを備えた車両1は、エンジンや車体など一般的な自動車の構成要素に加え、従来運転者が行っていた認知・判断・操作を車両側で行うために、車両周囲環境を検知する外界センサ21、車両情報を検知する内界センサ22、速度制御および操舵制御のためのコントローラ/アクチュエータ群、車間距離制御のためのACCコントローラ14、車線維持支援制御のためのLKAコントローラ15、および、それらを統括して経路追従制御を行い、車線内部分的自動走行(PADS)や自動車線変更(PALS)を実施するための自動運転コントローラ10を備えている。
【0011】
速度制御および操舵制御のためのコントローラ/アクチュエータ群は、操舵制御のためのEPS(電動パワーステアリング)コントローラ31、加減速度制御のためのエンジンコントローラ32、ESP/ABSコントローラ33を含む。ESP(登録商標;エレクトロニックスタビリティプログラム)はABS(アンチロックブレーキシステム)を包括してスタビリティコントロールシステム(車両挙動安定化制御システム)を構成する。
【0012】
外界センサ21は、自車線および隣接車線を画定する道路上の区分線、自車周辺にある他車両や障害物、人物などの存在と相対距離を画像データや点群データとして自動運転コントローラ10に入力するための複数の検知手段からなる。
【0013】
例えば、図2に示すように、車両1は、前方検知手段211,212としてミリ波レーダ(211)およびカメラ(212)、前側方検知手段213および後側方検知手段214としてLIDAR(レーザ画像検出/測距)、後方検知手段215としてカメラ(バックカメラ)を備え、自車両周囲360度をカバーし、それぞれ自車前後左右方向所定距離内の車両や障害物等の位置と距離、区分線位置を検知できるようにしている。
【0014】
内界センサ22は、車速センサ、ヨーレートセンサ、加速度センサなど、車両の運動状態を表す物理量を計測する複数の検知手段からなり、図3に示すように、それぞれの測定値は、自動運転コントローラ10、ACCコントローラ14、LKAコントローラ15、および、EPSコントローラ31に入力される。
【0015】
自動運転コントローラ10は、環境状態推定部11、経路生成部12、および、車両制御部13を含み、以下に記載されるような機能を実施するためのコンピュータ、すなわち、プログラム及びデータを記憶したROM、演算処理を行うCPU、前記プログラム及びデータを読出し、動的データや演算処理結果を記憶するRAM、および、入出力インターフェースなどで構成されている。
【0016】
環境状態推定部11は、GPS等の測位手段24による自車位置情報と地図情報23とのマッチングにより自車の絶対位置を取得し、外界センサ21に取得される画像データや点群データなどの外界データに基づいて自車線および隣接車線の区分線位置、他車位置および速度を推定する。また、内界センサ22に計測される内界データより自車の運動状態を取得する。
【0017】
経路生成部12は、環境状態推定部11で推定された自車位置から到達目標までの目標経路を生成する。また、地図情報23を参照し、環境状態推定部11で推定された隣接車線の区分線位置、他車位置および速度、自車の運動状態に基づいて、車線変更における自車位置から到達目標地点までの目標経路を生成する。
【0018】
車両制御部13は、経路生成部12で生成された目標経路に基づいて目標車速および目標舵角を算出し、定速走行または車間距離維持・追従走行のための速度指令をACCコントローラ14に送信し、経路追従のための操舵角指令をLKAコントローラ15経由でEPSコントローラ31に送信する。
【0019】
なお、車速は、EPSコントローラ31およびACCコントローラ14にも入力される。車速により操舵トルクが変わるため、EPSコントローラ31は、車速毎の操舵角-操舵トルクマップを参照して操舵機構41にトルク指令を送信する。エンジンコントローラ32、ESP/ABSコントローラ33、EPSコントローラ31により、エンジン42、ブレーキ43、操舵機構41を制御することで、車両1の縦方向および横方向の運動が制御される。
【0020】
(車線内部分的自動走行システムおよび部分的自動車線変更システムの概要)
次に、高速道路での走行を想定して、車線内部分的自動走行システム(PADS)および部分的自動車線変更システム(PALS)の概要を説明する。
【0021】
車線内部分的自動走行(PADS走行)および部分的自動車線変更(PALS)は、自動運転コントローラ10とともにACCSを構成するACCコントローラ14およびLKASを構成するLKAコントローラ15が共に作動している状態で実行可能となる。
【0022】
車線内部分的自動走行システム作動と同時に、自動運転コントローラ10(経路生成部12)は、外界センサ21を通じて環境状態推定部11に取得される外界情報(車線、自車位置、自車走行車線および隣接車線を走行中の他車位置、速度)、および、内界センサ22に取得される内界情報(車速、ヨーレート、加速度)に基づいて、単一車線内目標経路および目標車速を生成する。
【0023】
自動運転コントローラ10(車両制御部13)は、自車位置と自車の運動特性、すなわち、車速Vで走行中に操舵機構41に操舵トルクTが与えられた時に生じる前輪舵角δによって、車両運動により生じるヨーレートγと横加速度(dy/dt)の関係から、Δt秒後の車両の速度・姿勢・横変位を推定し、Δt秒後に横変位がytとなるような操舵角指令をLKAコントローラ15経由でEPSコントローラ31に与え、Δt秒後に速度Vtとなるような速度指令をACCコントローラ14に与える。
【0024】
ACCコントローラ14、LKAコントローラ15、EPSコントローラ31、エンジンコントローラ32、および、ESP/ABSコントローラ33は、自動操舵とは無関係に独立して作動するが、車線内部分的自動走行機能(PADS)および部分的自動車線変更システム(PALS)の作動中は、自動運転コントローラ10からの指令入力でも作動可能になっている。
【0025】
ACCコントローラ14からの減速指令を受けたESP/ABSコントローラ33は、アクチュエータに油圧指令を出し、ブレーキ43の制動力を制御することで車速を制御する。また、ACCコントローラ14からの加減速指令を受けたエンジンコントローラ32は、アクチュエータ出力(スロットル開度)を制御することで、エンジン42にトルク指令を与え、駆動力を制御することで車速を制御する。
【0026】
ACC機能(ACCS)は、外界センサ21を構成する前方検知手段211としてのミリ波レーダ、ACCコントローラ14、エンジンコントローラ32、ESP/ABSコントローラ33等のハードウエアとソフトウエアの組合せで機能する。
【0027】
すなわち、先行車がいない場合は、クルーズコントロールセット速度を目標車速として定速走行し、先行車に追いついた場合(先行車速度がクルーズコントロールセット速度以下の場合)には、先行車速度に合わせて、設定されたタイムギャップ(車間時間=車間距離/自車速)に応じた車間距離を維持しながら先行車に追従走行する。
【0028】
LKA機能(LKAS)は、外界センサ21(カメラ212,215)に取得される画像データに基づき、自動運転コントローラ10の環境状態推定部11で車線区分線と自車位置を検知し、車線中央を走行できるように、LKAコントローラ15およびEPSコントローラ31により操舵制御を行う。
【0029】
すなわち、LKAコントローラ15からの操舵角指令を受けたEPSコントローラ31は、車速-操舵角-操舵トルクのマップを参照して、アクチュエータ(EPSモータ)にトルク指令を出し、操舵機構41が目標とする前輪舵角を与える。
【0030】
車線内部分的自動走行機能(PADS)は、以上述べたようなACCコントローラ14による縦方向制御(速度制御、車間距離制御)とLKAコントローラ15による横方向制御(操舵制御、車線維持走行制御)を組み合わせることにより実施される。
【0031】
(部分的自動車線変更システムの概要)
次に、中央分離帯のある片側二車線以上の高速道路で車線内部分的自動走行(PADS走行)している状態からの車線変更を想定して、部分的自動車線変更システム(PALS)の概要を説明する。
【0032】
部分的自動車線変更システム(PALS)は、システムの判断により、あるいは、運転者の指示または承認によって、システムが自動的に車線変更(レーンチェンジ)を行うものであり、部分的自動走行(PADS走行)と同様に、ACCコントローラ14による縦方向制御(速度制御、車間距離制御)とLKAコントローラ15による横方向制御(自動操舵による目標経路追従制御)を組み合わせることにより実施される。
【0033】
部分的自動車線変更システム作動と同時に、自動運転コントローラ10(経路生成部12)は、外界センサ21を通じて環境状態推定部11に取得される外界情報(自車線および隣接車線の車線区分線、自車線および隣接車線を走行中の他車位置、速度)、および、内界センサ22に取得される内界情報(車速、ヨーレート、加速度)に基づいて、現在走行中の車線から隣接車線に車線変更するための目標経路を常時生成している。
【0034】
この自動車線変更目標経路は、現在走行中の車線から車線変更して隣接車線中央を走行する状態に至る経路であり、隣接車線を走行する他車両については、それぞれの未来位置および速度の予測がなされ、自車速度に応じて設定される隣接車線の前方所定領域ZFおよび後方所定領域ZR(および側方所定領域)内に、他車両が存在しないと判断され状況下で、システムの判断により、あるいは、運転者がウインカ操作などにより車線変更を指示または承認した場合に、自動操舵により当該隣接車線への自動車線変更を実行する。
【0035】
前方所定領域ZF、後方所定領域ZRは、自車前方および後方で他車との間に確保されるべき車間距離、すなわち、前方所定距離XF、後方所定距離XRに対応しており、それぞれ、下式のように求められる。
【0036】
前方所定距離(XF)=車間距離(S)+車頭時間(TH)×自車速(V)
但し、車間距離(S)=自車速(V)×車間時間(TG)
車頭時間(TH)=車頭距離/V=TTC×ΔV/V
TTC=ΔV/自車最大減速度(Dmax
ΔV=V-Vf、Vfは前方車速
【0037】
後方所定距離(XR)=車頭時間(TH)×後方車速(Vr)
但し、車頭時間(TH)=車頭距離/V=TTC×ΔV/V
TTC=ΔV/後方車減速度(Dr)
ΔV=Vr-V、Vrは後方車速
【0038】
上記から明らかなように、前方所定距離(XF)、後方所定距離(XR)は、自車、前方車両、後方車両のそれぞれの車速V,VF,Vrにより変動するため、それぞれについて、自車速(V)・相対速度(ΔV)毎の計算値を格納したルックアップテープルが用意され、参照処理によって対応する値が適用されるようになっている。
【0039】
側方所定距離(XL)は隣接車線幅に対応しており、例えば、高速道路の最大車線幅(3.75m)を適用する。
【0040】
したがって、前方所定領域ZFは、縦方向:前方所定距離XF×横方向:走行中の車線幅+隣接車線幅で画定される領域であり、後方所定領域ZRは、縦方向:後方所定距離XR×横方向:走行中の車繍幅+隣接車線幅で画定される領域である。また、側方所定領域は、縦方向:車長×横方向:隣接車線幅で画定される領域である。
【0041】
(自動車線変更における車線変更継続可否判定)
上述したように、自車周囲環境および目標経路が確認され、自動車線変更可能フラグが立った状態で、運転者の車線変更指示またはシステムの判断により、自動車線変更が実行されるが、ウインカ点滅後に車線変更を開始し隣接車線に移動するまでの間に、他車両の挙動により周囲環境が変化する可能性もある。
【0042】
そこで、自動車線変更中においても、外界センサ21を通じて環境状態推定部11に取得される外界情報により、自車周囲の監視が継続されており、前方所定領域ZF、後方所定領域ZR、または、側方所定領域への他車の侵入(割込み)が確認された場合、自動運転コントローラ10は、車線変更中の自車位置に基づき、車線変更継続または中止の判定を行う。
【0043】
車線変更を継続不可能と判定され、車線変更を中止する場合、自動運転コントローラ10(経路生成部12)は、車線変更開始前に走行していた車線(元車線)の中心線に追従目標を変更して目標経路・車速を再生成し、車両制御部13は、再生成した目標経路に車両を追従させるべく、舵角指令をEPSコントローラ31に、速度指令をACCコントローラ14に与え、自動操舵により元車線に戻る(自動車線復帰機能)。
【0044】
前方所定領域ZF、後方所定領域ZR、または、側方所定領域ZLへの他車の侵入(割込み)が確認された場合でも、自車両が殆ど隣接車線に移動しているような場合、例えば4つの車輪のうち、3つ以上が区分線を越えて隣接車線に入っている場合には、車線変更は中止せず、車線変更を継続する。
【0045】
なお、車線変更の継続が困難と判断された場合には、操作引継要求を通知し、自動車線変更を中止して運転者に権限委譲する。運転車が引継できなかった場合には、ミニマルリスクマニューバ(MRM)が作動する。MRMは、自動操舵・制動による緊急時の自動運転形態であり、路肩等に退避して停止する。
【0046】
(高速道路料金所の無車線区間における経路追従走行/前車追従走行)
PADS走行および自動車線変更(PALS)は、自車線および隣接車線の区分線に基づいて目標経路を生成し、経路追従制御による自動操舵を行うものであるため、図7および図8に示す高速道路料金所6の料金ゲート手前の無車線区間60や、図9に示す料金ゲート通過後の無車線区間62では、区分線に基づく経路追従制御は実施できない。
【0047】
そこで、無車線区間60,62では、それらの前方の道路構造(料金ゲートまたはその手前の車線区分線、料金ゲート通過後の本線区間5′の車線区分線)を目標にした経路追従走行または前車追従走行を行う。なお、経路追従走行中およびその過程での進路変更中(後述)においても、外界センサ21および環境状態推定部11による自車周囲の監視は継続されており、自車周囲の所定領域(後述)への他車の侵入が確認された場合は、経路追従走行および進路変更の継続または中止の判定を行う。この点については後述することにして、以下、無車線区間60,62における経路追従走行/前車追従走行の基本的制御について説明する。
【0048】
料金所6の手前では、図7(a)に示すように、外界センサ21を通じて環境状態推定部11に取得される外界情報から、自車前方に位置した料金ゲート(ETCゲート6e1~6e4、一般ゲート6m1,6m2)を検出し、通過可能なゲート(基本的にETCゲート6e1~6e4)の中から、現在の走行車線(52)からの横移動距離が最も小さくなるゲート(6e2)を選定して目標進入経路TR2を生成する。
【0049】
目標ゲート(6e2)が混雑している場合、すなわち、目標進入経路TR2上に複数の先行車が検出された場合には、混雑していないゲート(6e1)に目標を変更し、目標進入経路TR1を再生成する。目標ゲート(6e1)に向かう進入経路上の前方所定領域ZF内に先行車がいない場合には、当該進入経路を目標にして経路追従走行を行う。
【0050】
この際、図7(a)に示すように、自車1が料金所手前の走行車線52を走行している場合は、目標ゲート(6e1)に近い走行車線51に予め自動車線変更LCが実行されるが、図7(b)に示すように、自動車線変更中に、他車の進路変更や加減速、例えば、前車2の急減速により、自車1の周囲の所定領域(前方所定領域ZF)内に前車2が侵入することもありうる(課題1)。
【0051】
また、図8(a)に示すように、自車1の直前方ではない料金ゲート(6e1)を目標として目標進入経路TR1が生成された場合、料金ゲート手前の無車線区間60では車線変更は成立しないため、進路変更CCを伴う経路追従走行を行う。経路追従走行中は、自動操舵により目標車線に向けた進路変更CCが実行されるが、図8(b)に示すように、進路変更中に、他車の進路変更や加減速、例えば、前車2の急減速により、自車1の周囲の所定領域(前方所定領域ZF)内に前車2が侵入することもありうる(課題2)。
【0052】
一方、図9(a)に示すように、料金所通過後の無車線区間62では、外界センサ21を通じて環境状態推定部11に取得される外界情報から自車前方の本線区間5′の走行車線51,52,53位置を検出し、その中から、現在の走行位置からの横移動距離が最も小さくなる走行車線(52)を選定して目標進入経路TR2を生成する。目標車線(52)に向かう経路追従走行中に先行車(前車)を認識した場合は、先行車を目標にした前車追従走行に移行する。
【0053】
目標車線(52)が混雑している場合、混雑していない走行車線(51)に目標を変更し、目標進入経路TR1を再生成する。目標車線(51)に向かう進入経路上の前方所定領域ZF内に先行車がいない場合には、当該進入経路を目標にして経路追従走行を行う。
【0054】
この際、図9(b)に示すように、他車の進路変更や加減速、例えば、前車2の加速度不足などにより、自車1の周囲の所定領域(前方所定領域ZF)内に前車2が侵入する、または、前車4の急な進路変更により、自車1の周囲の所定領域(前方所定領域ZF)内に前車4が侵入することもありうる(課題3)。
【0055】
このように、無車線区間60,62における目標ゲートまたは目標車線に向かう経路追従走行中に、他車両の挙動により周囲環境が変わることも想定されるが、これらの無車線区間60,62では、目標とする料金ゲートや走行車線への進路変更が完遂されることが望ましい。
【0056】
(無車線区間における経路追従走行・進路変更中の自動走行中止要件緩和)
そこで、本発明に係る自動運転コントローラ10は、GPS等の測位手段24による自車位置情報と地図情報23とのマッチング、または、外界センサ21に検知される料金所案内表示や距離標などの表示物に対する画像認識により、料金所6に対する自車位置を検出しており、自車1が料金所6手前の所定地点に到達した時に、予備的車線変更LC(経路追従走行およびその過程での進路変更)の継続可否判定の基準となる所定領域を、先述した一般区間での自動車線変更の継続可否判定の基準となる所定領域(前方所定領域ZF、後方所定領域ZR)よりも狭い特定区間用の所定領域(前方所定領域ZF′、後方所定領域ZR′)に変更する機能を備えている。
【0057】
さらに、自車1が料金ゲート手前の無車線区間60に到達し、経路追従走行に移行した時点で、経路追従走行およびその過程での進路変更CCの継続可否判定の基準となる所定領域を、特定区間用の所定領域(前方所定領域ZF′、後方所定領域ZR′)と同じかまたはそれより狭い所定領域(前方所定領域ZF″、後方所定領域ZR″)に変更する機能を備えている。この無車線区間60における経路追従走行およびその過程での進路変更CCの継続可否判定の基準となる所定領域(前方所定領域ZF″、後方所定領域ZR″)は、料金ゲート通過後の無車線区間62でも維持される。
【0058】
料金所6手前の特定区間における予備的車線変更の継続可否判定の基準となる所定領域(前方所定領域ZF′、後方所定領域ZR′)は、自車前方および後方で他車との間に確保されるべき車間距離、すなわち、前方所定距離XF′、後方所定距離XR′に対応しており、それぞれ、下式のように求められる。
【0059】
前方所定距離(XF′)=最小車間距離(S0)+車頭時間(TH)×自車速(V)
但し、最小車間距離(S0)=自車速(V)×車間時間(TG′)
車間時間(TG′)=最小車間時間(TGmin)、
または、TG>TG′>TGmin
【0060】
後方所定距離(XR′)=車頭時間(TH′)×後方車速(Vr)
但し、車頭時間(TH′)=車頭距離/V=TTC′×ΔV/V
TTC′=ΔV/後方車最大減速度(Drmax)、
または、TTC′=ΔV/後方車減速度(Dr′)、Dr<Dr′<Drmax
【0061】
料金所6の無車線区間60,62における経路追従走行およびその過程での進路変更の継続可否判定の基準となる所定領域(前方所定領域ZF″、後方所定領域ZR″)も、自車前方および後方で他車との間に確保されるべき車間距離、すなわち、前方所定距離XF″、後方所定距離XR″に対応しており、それぞれ、下式のように求められる。
【0062】
前方所定距離(XF″)=最小車間距離(S0)+車頭時間(TH)×自車速(V)
但し、最小車間距離(S0)=自車速(V)×車間時間(TG″)
車間時間(TG″)=最小車間時間(TGmin)、
または、TG>TG″>TGmin 、ここで、TG″≦TG′
【0063】
後方所定距離(XR″)=車頭時間(TH″)×後方車速(Vr)
但し、車頭時間(TH″)=車頭距離/V=TTC″×ΔV/V
TTC″=ΔV/後方車最大減速度(Drmax)、
または、TTC″=ΔV/後方車減速度(Dr″)、
Dr<Dr″<Drmax 、ここで、Dr″≧Dr′
【0064】
すなわち、料金所6手前の特定区間における前方所定距離XF′、後方所定距離XR′、および、無車線区間60,62における前方所定距離XF″、後方所定距離XR″は、一般区間における前方所定距離XF、後方所定距離XRよりそれぞれ小さく、かつ、最小前方所定距離、最小後方所定距離と同じかまたはそれより大きい値から選定される。
【0065】
上記の前方所定距離XF′、後方所定距離XR′、前方所定距離XF″、後方所定距離XR″においても、先述した一般区間と同様、自車、前方車両、後方車両のそれぞれの車速V,VF,Vrにより変動するため、それぞれについて、自車速(V)・相対速度(ΔV)毎の計算値を格納したルックアップテープルが用意され、参照処理によって対応する値が適用されるようになっている。
【0066】
一方、側方所定距離について、料金所6手前の特定区間における側方所定距離XL′は、有車線区間における予備的車線変更の継続可否判定に関連するため、先述した一般区間と同様に隣接車線幅を対応させるが、無車線区間60,62では、車線幅が存在しないことに加えて、一般区間に比較して低速で走行しているため、
側方所定距離(XL″)=車線幅(XL)×係数(W)
として、係数(W)に1より小さい値(例えば0.5~0.9)を適用してもよい。
【0067】
したがって、料金所6手前の特定区間における前方所定領域ZF′は、縦方向:前方所定距離XF′×横方向:走行中の車線幅+隣接車線幅で画定される領域、後方所定領域ZR′は、縦方向:後方所定距離XR′×横方向:走行中の車繍幅+隣接車線幅で画定される領域、側方所定領域ZL′は、縦方向:車長×横方向:隣接車線幅で画定される領域、無車線区間60,62における前方所定領域ZF″は、縦方向:前方所定距離XF″×横方向:走行中の車線幅+側方所定距離XL″で画定される領域、後方所定領域ZR″は、縦方向:後方所定距離XR″×横方向:走行中の車繍幅+側方所定距離XL″で画定される領域、側方所定領域ZL″は、縦方向:車長×横方向:側方所定距離XL″で画定される領域である。
【0068】
(料金所手前の特定区間における予備的車線変更フロー;実施例1)
次に、高速道路の料金所6手前の特定区間における予備的車線変更フローについて図4を参照しながら説明する。
【0069】
(1)車線内部分的自動走行(PALS走行)中における車線変更可否判定
車線内部分的自動走行システムによるPADS(ACCS・LKAS)走行中(ステップ100)に、部分的自動車線変更システム(PALS)が作動している場合は、環境状態推定部11(外界センサ21)により、隣接車線の所定領域(前方所定領域ZF、後方所定領域ZR、および、側方領域ZL)内に他車両が存在するか否かが監視され、自動車線変更可能か否かが判定されており(ステップ101)、隣接車線の所定領域内に他車両が存在しない場合は車線変更可能と判定され、車線変更可能フラグが立てられる(ステップ102)。
【0070】
(2)料金所接近判定
PADS走行中は、GPS等の測位手段24による自車位置情報と地図情報23とのマッチング、または、外界センサ21に検知される料金所案内表示や距離標などの表示物に対する画像認識により、自車走行位置が料金所6近傍の特定区間か否か(所定地点に到達したか否か)が常時判定されている(ステップ103)。所定地点は、例えば、料金所6の手前の無車線区間60の開始地点を起点としてその手前300mの地点とするか、または、料金所6の構造物を外界センサ21で認識可能となった地点とする。
【0071】
(3)料金所近傍特定区間での予備的車線変更可否判定用所定領域設定
自車走行位置が料金所6近傍の特定区間(所定地点)に到達するか、料金所6の構造物を外界センサ21で認識可能となった場合には、車線変更可否判定用の所定領域(前方所定領域ZF、後方所定領域ZR、および、側方領域ZL)が、予備的車線変更可否判定用所定領域(前方所定領域ZF′、後方所定領域ZR′、および、側方領域ZL′)に変更される(ステップ104)。
【0072】
(4)予備的車線変更可否判定
この状況で、例えば、料金所6の複数の料金ゲートが通過後の行き先別になっているか、料金ゲート通過後に車線分岐がある場合に、ナビゲーションシステムで設定されている経路に対応する料金ゲート(例えば図7(c)における料金ゲート6e1)が現在の走行車線(52)に合致しているか否か、あるいは、外界センサ21の情報に基づいて環境状態推定部11で選定された料金ゲート(6e1)が現在の走行車線(52)に合致しているか否かに基づき、目標ゲート(6e1)に近い走行車線(51)に予め車線変更すべきか否かが判定される(ステップ105)。
【0073】
(5)車線変更実行表示・ウインカ点滅
予備的車線変更の実行決定と同時にヘッドアップディスプレイやメーターパネル内の情報表示部にシステム判断(自動車線変更実行)が表示され(音声などによる通知でもよい)、車線変更方向のウインカ点滅が開始される(ステップ106)。
【0074】
(6)LKAオフ・自動車線変更開始
ウインカ点滅開始後に所定時間(例えば3秒間)が経過すると、LKA機能(車線維持機能)がオフになり、隣接車線中央を目標位置として自動車線変更が開始される(ステップ107)。
【0075】
(7)車線変更継続可否判定
自動車線変更中においても、環境状態推定部11(外界センサ21)により、隣接車線の所定領域(ZF′、ZR′)内に他車両が存在するか否かが監視されており(ステップ108)、他車が存在しない場合は車線変更が継続される。また、隣接車線の所定領域内に他車が確認された場合でも、自車が殆ど隣接車線に移動しているような場合、例えば4つの車輪のうち、3つ以上が区分線を越えて隣接車線に入っている場合には、車線変更は中止せず、車線変更を継続する。
【0076】
(8)車線変更終了判定
車線変更が継続された場合は、区分線に対する自車位置に基づいて車線変更終了判定を行う。車線変更の目標横位置(例えば車線中央)からの自車偏差が所定値(例えば車線中央±0.5m)内となったことをもって車線変更終了と判定する(ステップ109)。
【0077】
(9)車線変更中止表示・ウインカ消灯
一方、ステップ108において、自動車線変更実行決定(ウインカ点滅開始)以降の他車の急な車線変更や急制動などの周囲環境の変化により、所定領域(ZF′、ZR′)内への他車の侵入が確認され、車線変更継続困難と判断された場合には、ヘッドアップディスプレイやメーターパネル内の表示や音声によって、運転者に車線変更中止が通知されると同時に、目標車線側のウインカを消灯する(ステップ113)。
【0078】
(10)元車線変更可否判定
同時に、自動元車線復帰機能による元車線復帰が可能であるか否かが判定され(ステップ114)、元車線復帰可能と判定された場合には、元車線変更可能フラグを立て(ステップ115)、元車線側のウインカを点滅させ(ステップ116)、自動車線復帰機能による元車線復帰が開始される(ステップ117)。元車線中央からの自車偏差が所定値内となったことをもって元車線復帰終了と判定する(ステップ118)。
【0079】
(11)経路追従走行区間判定
ステップ109で車線変更終了と判定された場合、または、ステップ118で元車線復帰終了と判定された場合は、その時の自車走行位置が、一般走行区間5にあるか、一般走行区間5経路追従走行区間(料金ゲート手前の無車線区間60)にあるかが判定される(ステップ110)。
【0080】
自車走行位置が依然として一般走行区間5にあると判定された場合は、LKA機能(車線維持機能)がオンになり、車線内部分的自動走行が再開される(ステップ111)。一方、自車走行位置が料金ゲート手前の無車線区間60にあると判定された場合、前車追従走行、または、料金ゲートを目標とした経路追従走行に移行する(ステップ112)。
【0081】
なお、ステッップ114で、元車線における先行車または後方車との接近等により、元車線側の所定領域(ZF′、ZR′)内に他車が確認された場合には、自動元車線復帰機能を作動させずに、その時の自車走行位置が、一般走行区間5にあるか、一般走行区間5経路追従走行区間(料金ゲート手前の無車線区間60)にあるかが判定され(ステップ119)、自車走行位置が料金ゲート手前の無車線区間60にあると判定された場合は、前車追従走行または経路追従走行(ステップ112)に移行する。
【0082】
(12)権限委譲・引継要求表示・警報
一方、ステップ119で、自車走行位置が依然として一般走行区間5にあると判定された場合は、自動元車線復帰機能を作動させずに、ヘッドアップディスプレイやメーターパネル内の表示や音声によって、運転者に操作引継要求を通知する(ステップ120)。権限委譲・引継要求表示・警報を受け、運転者が操舵を引継したか否かを判定する(ステップ121)。
【0083】
この引継判定は、運転者による操舵トルクが所定値を越えた場合に操作引継したものと判定する。運転者が操舵を引継した場合は、自動車線変更を中止し、手動走行に移行する(ステップ122)。所定時間経過後(例えば4秒後)、運転車が操作引継できなかった場合には、ミニマルリスクマニューバ(MRM)が作動する(ステップ123)。
【0084】
(料金ゲート手前の無車線区間における進路変更フロー;実施例2)
次に、料金ゲート手前の無車線区間60における進路変更フローについて図5を参照しながら説明する。
【0085】
(1)経路追従走行区間での進路変更可否判定用所定領域設定
既に述べたように、自車走行位置が料金ゲート手前の無車線区間60にあると判定された時点で、料金ゲートを目標とした経路追従走行(前車に追いついた場合は前車追従走行)に移行する(ステップ130)。その際、先述した予備的車線変更可否判定用所定領域(前方所定領域ZF′、後方所定領域ZR′、および、側方領域ZL′)は、経路追従走行およびその過程での進路変更の可否判定用所定領域(前方所定領域ZF″、後方所定領域ZR″、および、側方領域ZL″)に変更される(ステップ131)。
【0086】
(2)経路追従走行(進路変更)可否判定
無車線区間60での経路追従走行中においても環境状態推定部11(外界センサ21)により、自車周囲の所定領域(前方所定領域ZF″、後方所定領域ZR″、および、側方領域ZL″)内に他車両が存在するか否かが監視され、進路変更可能か否かが判定されており(ステップ132)、所定領域内に他車両が存在しない場合は進路変更可能と判定され、進路変更可能フラグが立てられる(ステップ133)。
【0087】
(3)進路変更可否判定
無車線区間60における経路追従走行では、外界センサ21を通じて環境状態推定部11に取得される外界情報から、自車前方に位置した料金ゲートを検出し、通過可能なゲートの中から、現在走行位置からの横移動が少ない料金ゲートが選定され、目標進入経路が生成されるが、当該ゲートの混雑度や、ナビゲーションシステムの設定経路への適合性に基づいて、他の料金ゲートに進路変更すべきか否かが判定される(ステップ134)。
【0088】
(4)進路変更実行表示・ウインカ点誠
進路変更の実行決定と同時にヘッドアップディスプレイやメーターパネル内の情報表示部にシステム判断(進路変更実行)が表示され(音声などによる通知でもよい)、進路変更方向のウインカ点滅が開始される(ステップ135)。
【0089】
(5)進路変更開始・継続可否判定
ウインカ点滅開始後に他の料金ゲートを目標にして目標経路が再生成され、進路変更が開始される(ステップ136)。進路変更中も自車周囲の所定領域(前方所定領域ZF″、後方所定領域ZR″、および、側方領域ZL″)内に他車両が存在するか否かが監視され、進路変更継続可否が判定されており(ステップ137)、所定領域内に他車両が侵入した場合には進路変更は中止される。
【0090】
(6)進路変更終了判定
進路変更が継続された場合は、進路変更の終了判定を行う(ステップ138)。例えば、目標とする料金所ゲート(6e1)への導入線中央からの自車偏差が所定値(例えば士0.5m)以内となったことをもって進路変更終了と判定することができる。なお、料金所ゲート(6e1)手前の有車線区間への進入をもって終了判定してもよい。
【0091】
(7)経路追従走行・料金ゲート通過判定
進路変更終了後は目標とする料金ゲート通過に向けた経路追従走行を継続し(ステップ139)、ETC車載器の通過信号(またはGPS24による自車位置情報と地図情報23とのマッチング)により料金ゲート通過を判定する(ステップ140)。料金ゲート通過後は、後述の経路追従走行(ゲート出側モード)に移行する(ステップ141)。
【0092】
(8)権限委譲・引継要求表示・警報
なお、ステッップ137で、所定領域内への他車両の侵入などで進路変更が中止された場合は、ヘッドアップディスプレイやメーターパネル内の表示や音声によって、進路変更中止が表示され(ステップ142)、運転者に操作引継要求が通知される(ステップ143)。先述したステッップ132で進路変更不可と判定された場合にも運転者への操作引継要求が通知される。
【0093】
その後、運転者が操舵を引継したか否かが判定され(ステップ144)、引継された場合は経路追従走行を中止して手動走行に移行し(ステップ145)、引継されない場合はミニマルリスクマニューバ(MRM)が作動する(ステップ146)。
【0094】
(料金ゲート通過後の無車線区間における進路変更フロー;実施例3)
次に、料金ゲート通過後の無車線区間62における進路変更フローについて図6を参照しながら説明する。
【0095】
(1)経路追従走行(ゲート出側モード)
ETC車載器の通過信号等により料金ゲート通過が判定され、経路追従走行(ゲート出側モード)に移行すると(ステップ150)、外界センサ21を通じて環境状態推定部11に取得される外界情報から、自車前方の本線区間5′の走行車線51,52,53を検出し、その中から、現在の走行位置からの横移動距離が少ない走行車線が決定され、目標進入経路が生成される(ステップ151)。
【0096】
(2)経路追従走行区間での進路変更可否判定用所定領域設定
料金ゲート区間での区分線(ゲートアイランド)の消失をもって無車線区間62への進入が検知されると(ステップ152)、料金ゲートへの進入時に無効化されていた所定領域(前方所定領域ZF″、後方所定領域ZR″、および、側方領域ZL″)が有効になり(ステップ153)、目標車線に向かう経路追従走行が開始される(ステップ154)。
【0097】
(3)進路変更可否判定
環境状態推定部11(外界センサ21)により、自車周囲の所定領域(前方所定領域ZF″、後方所定領域ZR″、および、側方領域ZL″)内に他車両が存在するか否かが監視され、目標車線に向かう経路追従走行のための進路変更が可能か否か判定され(ステップ155)、進路変更可能と判定された場合は進路変更可能フラグが立てられる(ステップ156)。
【0098】
(4)進路変更実行表示・ウインカ点誠
進路変更の実行決定と同時にヘッドアップディスプレイやメーターパネル内の情報表示部にシステム判断(進路変更実行)が表示され(音声などによる通知でもよい)、進路変更方向のウインカ点滅が開始される(ステップ157)。
【0099】
(5)進路変更開始・継続可否判定
ウインカ点滅開始後に目標車線に向かう進路変更が開始される(ステップ158)。進路変更中も自車周囲の所定領域(前方所定領域ZF″、後方所定領域ZR″、および、側方領域ZL″)内に他車両が存在するか否かが監視され、進路変更継続可否が判定されており(ステップ159)、所定領域内に他車が侵入した場合には進路変更は中止される。
【0100】
(6)進路変更終了判定
進路変更が継続された場合は、進路変更の終了判定を行う(ステップ160)。例えば、目標とする走行車線中央からの自車偏差が所定値(例えば士0.5m)以内となったことをもって進路変更終了と判定することができる。なお、料金所ゲート通過後の無車線区間62の終了をもって終了判定してもよい。
【0101】
(7)走行車線区間における車線変更用所定領域設定
目標とする走行車線への進入が確認された時点で、進路変更可否判定用所定領域(前方所定領域ZF″、後方所定領域ZR″、および、側方領域ZL″)は、一般走行区間5′での車線変更可否判定用の所定領域(前方所定領域ZF、後方所定領域ZR、および、側方領域ZL)に変更され(ステップ161)、LKA機能(車線維持機能)がオンになり、部分的自動車線変更システム(PALS)が作動している車線内部分的自動走行システムによるPADS(ACCS・LKAS)走行に戻る(ステップ162)。
【0102】
(8)権限委譲・引継要求表示・警報
なお、ステッップ159で、所定領域内への他車両の侵入などで進路変更が中止された場合は、ヘッドアップディスプレイやメーターパネル内の表示や音声によって、進路変更中止が表示され(ステップ163)、運転者に操作引継要求が通知される(ステップ164)。
【0103】
その後、運転者が操舵を引継したか否かが判定され(ステップ165)、引継された場合は経路追従走行を中止して手動走行に移行し(ステップ166)、引継されない場合はミニマルリスクマニューバ(MRM)が作動する(ステップ167)。
【0104】
(作用と効果)
以上詳述したように、本発明に係る車両の走行制御装置は、自車位置が料金所6手前の所定地点に到達した時に、(i)車線変更可否判定用の所定領域(ZF、ZR、ZL)が、予備的車線変更可否判定用所定領域(ZF′、ZR′、ZL′)に変更され、さらに、(ii)料金ゲート手前の無車線区間60に進入した時点で、経路追従走行およびその過程での進路変更の可否判定用所定領域(ZF″、ZR″、ZL″)に変更され、(iii)料金ゲート通過後の無車線区間62でも維持されるような、自動走行中止要件緩和制御を実行することにより、以下に例示するような各区間において、目標とする料金ゲートや走行車線に進入できない状況を低減する効果が期待できる。
【0105】
(例1:料金所手前の特定区間における予備的車線変更)
例えば、図7(a)に示すように、片側3車線(51,52,53)の高速道路本線区間5の走行車線52を走行していた車両1が、料金所6の手前で、現在位置から横移動距離が最も小さい料金ゲート(6e2)を検出したものの、当該ゲートが混雑しているか、または、ナビゲーションシステムで設定されている経路に対応する料金ゲートに合致しないことから、他の料金ゲート(6e1)に目標を変更し、目標ゲート(6e1)に近い走行車線51に予備的車線変更LCを行う場合を想定する。
【0106】
このような場合に、上記自動走行中止要件緩和制御(i)が実施されなければ、図7(b)に示すように、前車2の急減速による所定領域(前方所定領域ZF)内への侵入で予備的車線変更LCが継続不可能となり、元車線復帰(LB)を余儀なくされる。
【0107】
しかし、上記自動走行中止要件緩和制御(i)が実施され、予め、自車位置が料金所6手前の所定地点に到達した時点で、車線変更可否判定用の所定領域(ZF、ZR、ZL)が、それよりも狭い予備的車線変更可否判定用所定領域(ZF′、ZR′、ZL′)に変更されているので、図7(c)に示すように、前車2の所定領域(前方所定領域ZF′)内への侵入が回避され、目標ゲート(6e1)に近い走行車線51への予備的車線変更LCを継続できる。
【0108】
(例2:料金ゲート手前の無車線区間における進路変更)
次に、図8(a)に示すように、本線区間5の走行車線52を走行していた車両1が、料金ゲート手前の無車線区間60に進入した際に、前記同様の理由で、現在位置に対して斜前方にある料金ゲート(6e1)を目標にして経路追従走行するために進路変更CCを行う場合を想定する。
【0109】
このような場合に、上記自動走行中止要件緩和制御(ii)が実施されなければ、図8(b)に示すように、前車2の急減速による所定領域(前方所定領域ZF)内への侵入で進路変更CCを継続不可能となる。
【0110】
しかし、上記自動走行中止要件緩和制御(ii)が実施され、予め、自車位置が無車線区間60に進入した時点で、車線変更可否判定用の所定領域(ZF、ZR、ZL)が、それよりも狭い進路変更可否判定用所定領域(ZF″、ZR″、ZL″)に変更されているので、図8(c)に示すように、前車2の所定領域(前方所定領域ZF″)内への侵入が回避され、目標ゲート(6e1)進入路への進路変更CCを継続できる。
【0111】
(例3:料金ゲート通過後の無車線区間における進路変更)
次に、図9(a)に示すように、料金ゲート(6e2)を通過して無車線区間62に進入した車両1が、前記同様の理由で、現在位置に対して斜前方にある本線区間5′の走行車線51を目標にして経路追従走行するために進路変更CCを行う場合を想定する。
【0112】
このような場合に、上記自動走行中止要件緩和制御(iii)が実施されなければ、図9(b)に示すように、前車2の急減速による所定領域(前方所定領域ZF)内への侵入で進路変更CCを継続不可能となるが、進路変更CCを中止すると前車4に接近する虞がある。
【0113】
しかし、上記自動走行中止要件緩和制御(iii)が実施され、予め、料金ゲート(6e2)を通過した時点で、車線変更可否判定用の所定領域(ZF、ZR、ZL)よりも狭い進路変更可否判定用所定領域(ZF″、ZR″、ZL″)が維持されているので、図9(c)に示すように、前車2の所定領域(前方所定領域ZF″)内への侵入が回避され、走行車線51を目標にした進路変更CCを継続でき、前車4との接近も回避できる。
【0114】
なお、上記各場合の説明で参照した図7図9における各所定領域の図示は、あくまでも説明のための例示的なものであって、実際の距離を厳密に反映したものではない。
【0115】
以上、本発明のいくつかの実施形態について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内においてさらに各種の変形および変更が可能であることを付言する。
【符号の説明】
【0116】
1 車両(自車)
2,3,4 他車
5 本線区間(料金所手前)
5′ 本線区間(料金所通過後)
5s,6s 車線区分線
6 料金所
6e1,6e2,6e3,6e4 料金ゲート(ETCゲート)
6m1,6m2 料金ゲート(一般ゲート)
10 自動運転コントローラ
11 環境状態推定部
12 経路生成部
13 車両制御部
14 ACCコントローラ
15 LKAコントローラ
21 外界センサ
22 内界センサ
31 EPSコントローラ
32 エンジンコントローラ
33 ESP/ABSコントローラ
34 手動操舵(ハンドル)
41 操舵機構
42 エンジン
43 ブレーキ
51,52,53 走行車線
60 無車線区間(料金ゲート手前)
62 無車線区間(料金ゲート通過後、料金ゲート出側)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9