(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】赤外光カットフィルター、固体撮像素子用フィルター、固体撮像素子、および、固体撮像素子用フィルターの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20240110BHJP
C08F 20/16 20060101ALI20240110BHJP
C08F 20/32 20060101ALI20240110BHJP
C08F 220/30 20060101ALI20240110BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G02B5/22
C08F20/16
C08F20/32
C08F220/30
H01L27/146 D
(21)【出願番号】P 2020023724
(22)【出願日】2020-02-14
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】平井 友梨
(72)【発明者】
【氏名】岩田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】三好 英恵
(72)【発明者】
【氏名】古川 茂樹
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-204650(JP,A)
【文献】国際公開第2017/098996(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/101219(WO,A1)
【文献】特開2017-218580(JP,A)
【文献】特開2013-249467(JP,A)
【文献】国際公開第2016/186050(WO,A1)
【文献】特開2016-188357(JP,A)
【文献】特開2019-014807(JP,A)
【文献】国際公開第2016/194527(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/22
C08F 20/16
C08F 20/32
C08F 220/30
H01L 27/146
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリメチン、および、前記ポリメチンの両末端に1つずつ位置し、窒素を含む2つの複素環を有するカチオンと、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸とを含むシアニン色素と、
第1繰り返し単位、および、前記第1繰り返し単位とは異なるモノマーに由来する第2繰り返し単位を含む共重合体と、を含み、
前記第1繰り返し単位が、フェノール性水酸基を有するモノマーに由来
し、
前記共重合体は、前記第1繰り返し単位および前記第2繰り返し単位のみから構成され、
前記共重合体は、5重量%以上30重量%以下の前記第1繰り返し単位を含み、かつ、70重量%以上の前記第2繰り返し単位を含む
赤外光カットフィルター。
【請求項2】
前記共重合体は、下記式(1)によって表される芳香環を有するアクリルモノマーに由来する第2繰り返し単位、または、下記式(2)によって表される脂環式構造を有するアクリルモノマーに由来する第2繰り返し単位を含む
請求項1に記載の赤外光カットフィルター。
【化1】
【化2】
ただし、式(1)および式(2)において、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は単結合、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、または、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基である。R3は水素原子または所定の置換基である。式(1)において、R3が置換基である場合にはmは1から5のいずれかの整数である。式(2)において、R4は炭素数3以上の脂環式構造である。
【請求項3】
ポリメチン、および、前記ポリメチンの両末端に1つずつ位置し、窒素を含む2つの複素環を有するカチオンと、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸とを含むシアニン色素と、
第1繰り返し単位、および、前記第1繰り返し単位とは異なるモノマーに由来する第2繰り返し単位を含む共重合体と、を含み、
前記第1繰り返し単位が、フェノール性水酸基を有するモノマーに由来し、
前記共重合体は、グリシジルメタクリレートに由来する第3繰り返し単位をさらに含む
赤外光カットフィルター。
【請求項4】
前記共重合体は、下記式(1)によって表される芳香環を有するアクリルモノマーに由来する第2繰り返し単位、または、下記式(2)によって表される脂環式構造を有するアクリルモノマーに由来する第2繰り返し単位を含む
請求項3に記載の赤外光カットフィルター。
【化3】
【化4】
ただし、式(1)および式(2)において、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は単結合、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、または、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基である。R3は水素原子または所定の置換基である。式(1)において、R3が置換基である場合にはmは1から5のいずれかの整数である。式(2)において、R4は炭素数3以上の脂環式構造である。
【請求項5】
前記共重合体は、70重量%以上の前記第2繰り返し単位を含み、5重量%以上20重量%以下の前記第3繰り返し単位を含み、
前記共重合体において、前記第3繰り返し単位の重量に対する前記第1繰り返し単位の重量の比が0.5以上である
請求項
3または4に記載の赤外光カットフィルター。
【請求項6】
前記共重合体のガラス転移温度は、75℃以上である
請求項1から5のいずれか一項に記載の赤外光カットフィルター。
【請求項7】
前記共重合体の平均分子量は、3万以上15万以下である
請求項1から6のいずれか一項に記載の赤外光カットフィルター。
【請求項8】
前記共重合体の重量と前記共重合体を構成するモノマーの重量との和(MS)に対する、前記モノマーの重量(MM)の百分率(MM/MS×100)が20%以下である
請求項1から7のいずれか一項に記載の赤外光カットフィルター。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか一項に記載の赤外光カットフィルターと、
前記赤外光カットフィルターを覆い、前記赤外光カットフィルターを酸化する酸化源の透過を抑えるバリア層と、を備える
固体撮像素子用フィルター。
【請求項10】
光電変換素子と、
請求項
9に記載の固体撮像素子用フィルターと、を備える
固体撮像素子。
【請求項11】
ポリメチン、および、前記ポリメチンの両末端に1つずつ位置し、窒素を含む2つの複素環を有するカチオンと、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸とを含むシアニン色素と、フェノール性水酸基を有するモノマーに由来する第1繰り返し単位、および、前記第1繰り返し単位とは異なるモノマーに由来する第2繰り返し単位を含む共重合体と、を含む赤外光カットフィルターを形成することと、
前記赤外光カットフィルターをドライエッチングによってパターニングすることと、を含
み、
前記共重合体は、前記第1繰り返し単位および前記第2繰り返し単位のみから構成され、
前記共重合体は、5重量%以上30重量%以下の前記第1繰り返し単位を含み、かつ、70重量%以上の前記第2繰り返し単位を含む
固体撮像素子用フィルターの製造方法。
【請求項12】
ポリメチン、および、前記ポリメチンの両末端に1つずつ位置し、窒素を含む2つの複素環を有するカチオンと、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸とを含むシアニン色素と、フェノール性水酸基を有するモノマーに由来する第1繰り返し単位、および、前記第1繰り返し単位とは異なるモノマーに由来する第2繰り返し単位を含む共重合体と、を含む赤外光カットフィルターを形成することと、
前記赤外光カットフィルターをドライエッチングによってパターニングすることと、を含み、
前記共重合体は、グリシジルメタクリレートに由来する第3繰り返し単位をさらに含む
固体撮像素子用フィルターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外光カットフィルター、固体撮像素子用フィルター、固体撮像素子、および、固体撮像素子用フィルターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOSイメージセンサーおよびCCDイメージセンサーなどの固体撮像素子は、光の強度を電気信号に変換する光電変換素子を備える。固体撮像素子の一例は、複数の色に対応する光を検出することが可能である。固体撮像素子は、各色用のカラーフィルターと各色用の光電変換素子とを備え、各色用の光電変換素子によって各色用の光を検出する(例えば、特許文献1を参照)。固体撮像素子の他の例は、有機光電変換素子と無機光電変換素子とを備え、カラーフィルターを用いずに、各光電変換素子によって各色の光を検出する(例えば、特許文献2を参照)。
【0003】
固体撮像素子は、光電変換素子上に赤外光カットフィルターを備える。赤外光カットフィルターが有する赤外光吸収色素が赤外光を吸収することによって、各光電変換素子が検出し得る赤外光を光電変換素子に対してカットする。これによって、各光電変換素子での可視光の検出精度が高められる。赤外光カットフィルターは、例えば、赤外光吸収色素であるシアニン色素を含む(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-060176号公報
【文献】特開2018-060910号公報
【文献】特開2007-219114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、赤外光カットフィルターを備える固体撮像素子が実装基板に実装されるときには、リフロー方式によるはんだ付けによって、固体撮像素子が実装基板に実装される。この際に、固体撮像素子が備える赤外光カットフィルターがはんだを溶融させる温度にまで加熱される。一方で、赤外光カットフィルターの形成には、モノマーの重合反応によって得られたポリマーを含むポリマー溶液が用いられる。ポリマー溶液には、モノマーの重合反応に用いられた重合開始剤が含まれる場合がある。こうした重合開始剤は、赤外光カットフィルターが加熱されることによって活性化され、ラジカルを生じさせることがある。重合開始剤によって生じたラジカルは、シアニン色素の分解および変性の一因であり、結果として、加熱後の赤外光カットフィルターが有する赤外光の透過率が、加熱前の赤外光カットフィルターが有する赤外光の透過率よりも上昇することがある。
【0006】
本発明は、加熱による赤外光カットフィルターの劣化を抑制可能にした赤外光カットフィルター、固体撮像素子用フィルター、固体撮像素子、および、固体撮像素子用フィルターの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための赤外光カットフィルターは、ポリメチン、および、前記ポリメチンの両末端に1つずつ位置し、窒素を含む2つの複素環を有するカチオンと、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸とを含むシアニン色素と、第1繰り返し単位、および、前記第1繰り返し単位とは異なるモノマーに由来する第2繰り返し単位を含む共重合体と、を含む。前記第1繰り返し単位が、フェノール性水酸基を有したモノマーに由来する。
【0008】
上記課題を解決するための固体撮像素子用フィルターの製造方法は、ポリメチン、および、前記ポリメチンの両末端に1つずつ位置し、窒素を含む2つの複素環を有するカチオンと、トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸とを含むシアニン色素と、フェノール性水酸基を有したモノマーに由来する第1繰り返し単位、および、前記第1繰り返し単位とは異なるモノマーに由来する第2繰り返し単位を含む共重合体と、を含む赤外光カットフィルターを形成することと、前記赤外光カットフィルターをドライエッチングによってパターニングすることと、を含む。
【0009】
赤外光カットフィルターの形成に用いられるポリマー溶液には、モノマーの重合時に用いられたラジカル重合開始剤が含まれることがある。赤外光カットフィルターに含まれるラジカル重合開始剤は、赤外光カットフィルターが加熱された場合に活性化されることによって、ラジカルを生じさせることがある。上記構成によれば、第1繰り返し単位を含む共重合体がラジカルを捕捉する。そのため、第1繰り返し単位および第2繰り返し単位を含む共重合体によれば、仮に赤外光カットフィルターがラジカル重合開始剤を含んでいたとしても、シアニン色素においてラジカルに起因した分解や変性を抑えることができる。これによって、赤外光カットフィルターが加熱によって劣化することを抑えられる。
【0010】
上記赤外光カットフィルターにおいて、前記共重合体は、下記式(1)によって表される芳香環を有するアクリルモノマーに由来する第2繰り返し単位、または、下記式(2)によって表される脂環式構造を有するアクリルモノマーに由来する第2繰り返し単位を含んでもよい。
【0011】
【0012】
【0013】
ただし、式(1)および式(2)において、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は単結合、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、または、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基である。R3は水素原子または所定の置換基である。式(1)において、R3が置換基である場合にはmは1から5のいずれかの整数である。式(2)において、R4は炭素数3以上の脂環式構造である。
【0014】
上記構成によれば、共重合体が芳香環または脂環式構造を有するモノマーに由来する第2繰り返し単位を含むことによって、赤外光カットフィルターが製造された時点において赤外光カットフィルターが有する透過率の上昇を抑えることができる。
【0015】
上記赤外光カットフィルターにおいて、前記共重合体は、前記第1繰り返し単位および前記第2繰り返し単位のみから構成され、前記共重合体は、5重量%以上30重量%以下の前記第1繰り返し単位を含み、かつ、70重量%以上の前記第2繰り返し単位を含んでもよい。
【0016】
赤外光カットフィルターを形成する際に用いられる塗膜はシアニン色素、および、共重合体を含んでいる。この構成によれば、赤外光カットフィルターが製造された時点において赤外光カットフィルターが有する透過率の上昇を抑え、かつ、加熱による赤外光カットフィルターの劣化を抑えることが可能である。
【0017】
上記赤外光カットフィルターにおいて、前記共重合体は、グリシジルメタクリレートに由来する第3繰り返し単位をさらに含んでもよい。
上記赤外光カットフィルターにおいて、前記共重合体は、70重量%以上の前記第2繰り返し単位を含み、5重量%以上20重量%以下の前記第3繰り返し単位を含み、前記共重合体において、前記第3繰り返し単位の重量に対する前記第1繰り返し単位の重量の比が0.5以上であってもよい。
【0018】
上記各構成によれば、第3繰り返し単位を含む共重合体を用いて赤外光カットフィルターを形成することによって、赤外光カットフィルターの耐熱性が高められる。
【0019】
上記赤外光カットフィルターにおいて、前記共重合体のガラス転移温度は、75℃以上であってもよい。この構成によれば、ガラス転移温度が75℃以上であることによって、赤外光カットフィルターにおいて、赤外光カットフィルター13が加熱された場合に、赤外光の透過率における変化を抑える確実性を高めることが可能である。
【0020】
上記赤外光カットフィルターにおいて、前記共重合体の平均分子量は、3万以上15万以下であってもよい。この構成によれば、共重合体の分子量がこの範囲に含まれることによって、赤外光カットフィルターが加熱された場合に、赤外光の透過率における変化を抑える確実性を高めることが可能である。
【0021】
上記赤外光カットフィルターにおいて、前記共重合体の重量と前記共重合体を構成するモノマーの重量との和(MS)に対する、前記モノマーの重量(MM)の百分率(MM/MS×100)が20%以下であってもよい。この構成によれば、残存モノマーが20%よりも多い場合に比べて、赤外光カットフィルターが加熱された場合に、シアニン色素における赤外光の透過率が変化しにくくなる。
【0022】
上記赤外光カットフィルターにおいて、前記赤外光カットフィルターは、ラジカル捕捉能を有する添加剤を含んでもよい。
上記赤外光カットフィルターにおいて、前記添加剤は、N‐ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩を含んでもよい。
【0023】
上記各構成によれば、赤外光カットフィルターがラジカル重合開始剤を仮に含んでいたとしても、赤外光カットフィルターの加熱によって生じたラジカルを添加剤が捕捉するため、ラジカルに起因した赤外光カットフィルターの劣化が抑えられる。
【0024】
上記課題を解決するための固体撮像素子用フィルターは、上記赤外光カットフィルターと、前記赤外光カットフィルターを覆い、前記赤外光カットフィルターを酸化する酸化源の透過を抑えるバリア層と、を備える。この構成によれば、バリア層によって赤外光カットフィルターに向けた酸化源の透過が抑えられるため、赤外光カットフィルターの耐光性が高められる。
【0025】
上記課題を解決するための固体撮像素子は、光電変換素子と、上記固体撮像素子用フィルターと、を備える。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、加熱による赤外光カットフィルターの劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】一実施形態の固体撮像素子における構造を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1を参照して、赤外光カットフィルター、固体撮像素子用フィルター、固体撮像素子、および、固体撮像素子の製造方法における一実施形態を説明する。以下では、固体撮像素子、赤外光カットフィルター、固体撮像素子用フィルターの製造方法、製造例、および、試験例を順に説明する。なお、本実施形態において、赤外光は、0.7μm以上1mm以下の範囲に含まれる波長を有した光であり、近赤外光は、赤外光のなかで特に700nm以上1100nm以下の範囲に含まれる波長を有した光である。
【0029】
[固体撮像素子]
図1を参照して、固体撮像素子を説明する。
図1は、固体撮像素子の一部における各層を分離して示す概略構成図である。
【0030】
図1が示すように、固体撮像素子10は、固体撮像素子用フィルター10F、および、複数の光電変換素子11を備える。
複数の光電変換素子11は、赤色用光電変換素子11R、緑色用光電変換素子11G、青色用光電変換素子11B、および、赤外光用光電変換素子11Pを備える。各色用の光電変換素子11R,11G,11Bは、その光電変換素子11R,11G,11Bに対応付けられた特定の波長を有する可視光の強度を測定する。各赤外光用光電変換素子11Pは、赤外光の強度を測定する。
【0031】
固体撮像素子10は、複数の赤色用光電変換素子11R、複数の緑色用光電変換素子11G、複数の青色用光電変換素子11B、および、複数の赤外光用光電変換素子11Pを備える。なお、
図1では、図示の便宜上、固体撮像素子10における光電変換素子11の繰り返し単位が示されている。
【0032】
固体撮像素子用フィルター10Fは、複数の可視光用フィルター、赤外光パスフィルター12P、赤外光カットフィルター13、バリア層14、複数の可視光用マイクロレンズ、および、赤外光用マイクロレンズ15Pを備える。
【0033】
可視光用カラーフィルターは、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bから構成される。赤色用フィルター12Rは、赤色用光電変換素子11Rに対して光の入射側に位置する。緑色用フィルター12Gは、緑色用光電変換素子11Gに対して光の入射側に位置する。青色用フィルター12Bは、青色用光電変換素子11Bに対して光の入射側に位置する。
【0034】
赤外光パスフィルター12Pは、赤外光用光電変換素子11Pに対して光の入射側に位置する。赤外光パスフィルター12Pは、赤外光用光電変換素子11Pが検出し得る可視光を赤外光用光電変換素子11Pに対してカットする。すなわち、赤外光パスフィルター12Pは、赤外光用光電変換素子11Pに対する可視光の透過を抑える。これによって、赤外光用光電変換素子11Pによる赤外光の検出精度が高められる。赤外光用光電変換素子11Pが検出し得る赤外光は、例えば近赤外光である。
【0035】
赤外光カットフィルター13は、各色用フィルター12R,12G,12Bに対して光の入射側に位置する。赤外光カットフィルター13は、貫通孔13Hを備える。赤外光カットフィルター13が広がる平面と対向する視点から見て、貫通孔13Hが区画する領域内には、赤外光パスフィルター12Pが位置する。一方で、赤外光カットフィルター13が広がる平面と対向する視点から見て、赤外光カットフィルター13は、赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12B上に位置する。
【0036】
赤外光カットフィルター13は、赤外光吸収色素であるシアニン色素を含む。シアニン色素は、近赤外光に含まれるいずれかの波長において、赤外光の吸収率における最大値を有する。そのため、赤外光カットフィルター13によれば、赤外光カットフィルター13を通過する近赤外光を確実に吸収することが可能である。これにより、各色用の光電変換素子11で検出され得る近赤外光が、赤外光カットフィルター13によって十分にカットされる。すなわち、赤外光カットフィルター13は、各色用の光電変換素子11に対する近赤外光の透過を抑える。赤外光カットフィルター13は、例えば、300nm以上3μm以下の厚さを有することが可能である。
【0037】
バリア層14は、赤外光カットフィルター13の酸化源が赤外光カットフィルター13に向けて透過することを抑制する。酸化源は、酸素および水などである。バリア層14が有する酸素透過率は、例えば、5.0cc/m2/day/atm以下であることが好ましい。すなわち、酸素透過率は、5.0cm3/m2/day/atmであることが好ましい。酸素透過率は、JIS K7126‐2:2006の付属書Aに準拠し、23℃かつ相対湿度50%における値である。酸素透過率が5.0cc/m2/day/atm以下に定められるから、バリア層14によって赤外光カットフィルター13に酸化源が到達することが抑制されるため、赤外光カットフィルター13が酸化源によって酸化されにくくなる。そのため、赤外光カットフィルター13の耐光性が向上可能である。
【0038】
バリア層14を形成する材料は、無機化合物である。バリア層14を形成する材料は、珪素化合物であることが好ましい。バリア層14を形成する材料は、例えば、窒化珪素、酸化珪素、および、酸窒化珪素からなる群から選択される少なくとも一つであってよい。
【0039】
マイクロレンズは、赤色用マイクロレンズ15R、緑色用マイクロレンズ15G、青色用マイクロレンズ15B、および、赤外光用マイクロレンズ15Pから構成される。赤色用マイクロレンズ15Rは、赤色用フィルター12Rに対して光の入射側に位置する。緑色用マイクロレンズ15Gは、緑色用フィルター12Gに対して光の入射側に位置する。青色用マイクロレンズ15Bは、青色用フィルター12Bに対して光の入射側に位置する。赤外光用マイクロレンズ15Pは、赤外光パスフィルター12Pに対して光の入射側に位置する。
【0040】
各マイクロレンズ15R,15G,15B,15Pは、外表面である入射面15Sを備える。各マイクロレンズ15R,15G,15B,15Pは、入射面15Sに入る光を各光電変換素子11R,11G,11B,11Pに向けて集めるための屈折率差を外気との間において有する。各マイクロレンズ15R,15G,15B,15Pは、透明樹脂を含む。
【0041】
[赤外光カットフィルター]
以下、赤外光カットフィルター13についてより詳細に説明する。
赤外光カットフィルター13は、シアニン色素と、共重合体とを含んでいる。赤外光カットフィルター13は、ラジカル重合開始剤を含んでもよい。ラジカル重合開始剤は、赤外光カットフィルター13を形成するための共重合体生成する際に用いられる。シアニン色素は、ポリメチン、および、ポリメチンの両末端に1つずつ位置し、窒素を含む2つの複素環を有するカチオンと、アニオンであるトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸(FAP)とを含む。
【0042】
シアニン色素は、下記式(3)に示される構造を有してもよい。
【0043】
【0044】
上記式(3)において、Xは、1つのメチン、または、ポリメチンである。メチンが含む炭素原子に結合された水素原子は、ハロゲン原子、または、有機基に置換されてもよい。ポリメチンは、ポリメチンを形成する炭素を含む環状構造を有してもよい。環状構造は、ポリメチンを形成する複数の炭素において、連続する3つの炭素を含むことができる。ポリメチンが環状構造を有する場合には、ポリメチンの炭素数は5以上であってよい。各窒素原子は、五員環または六員環の複素環に含まれている。複素環は、縮環されてもよい。
【0045】
また、シアニン色素は、下記式(4)に示される構造を有してもよい。
【0046】
【0047】
上記式(4)において、kは1以上の整数である。kは、ポリメチン鎖に含まれる繰り返し単位の数を示している。R5およびR6は、水素原子または有機基である。R7およびR8は、水素原子または有機基である。R7およびR8は、炭素数1以上の直鎖状アルキル基または分岐鎖状アルキル基であることが好ましい。各窒素原子は、五員環または六員環の複素環に含まれている。複素環は、縮環されてもよい。
【0048】
なお、式(3)において、ポリメチンが環状構造を含む場合には、環状構造は、例えば、環状構造がエチレン性二重結合などの不飽和結合を少なくとも一つ有し、かつ、当該不飽和結合がポリメチン鎖の一部として電子共鳴する環状構造であってよい。こうした環状構造は、例えば、シクロペンテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエン環、シクロヘプテン環、シクロオクテン環、シクロオクタジエン環、および、ベンゼン環などであってよい。これらの環状構造は、いずれも置換基を有してもよい。
【0049】
また、式(4)において、kが1である化合物はシアニンであり、kが2である化合物はカルボシアニンであり、kが3である化合物はジカルボシアニンである。式(4)において、kが4である化合物はトリカルボシアニンである。
【0050】
R5およびR6の有機基は、例えば、アルキル基、アリール基、アラルキル基、および、アルケニル基であってよい。アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、sec‐ブチル基、イソブチル基、tert‐ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、および、デシル基などであってよい。アリール基は、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、および、ナフチル基などであってよい。アラルキル基は、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、および、フェニルプロピル基などであってよい。アルケニル基は、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、および、オクテニル基などであってよい。
【0051】
なお、各有機基が有する水素原子の少なくとも一部が、ハロゲン原子またはシアノ基によって置換されてもよい。ハロゲン原子は、フッ素、臭素、および、塩素などであってよい。置換後の有機基は、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、および、シアノエチル基などであってよい。
【0052】
R7またはR8は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、sec‐ブチル基、イソブチル基、tert‐ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、および、デシル基などであってよい。
【0053】
各窒素原子が含まれる複素環は、例えば、ピロール、イミダゾール、チアゾール、および、ピリジンなどであってよい。
こうしたシアニン色素が含むカチオンは、例えば、下記式(5)および下記式(6)によって表される構造であってよい。
【0054】
【0055】
【0056】
なお、シアニン色素が含むカチオンは、例えば、下記式(7)から式(46)に示される構造を有してもよい。すなわち、シアニン色素が含む各窒素原子は、以下に示される環状構造中に含まれてもよい。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
シアニン色素は、700nm以上1100nm以下に含まれるいずれかの波長において、赤外光の吸光度における最大値を有する。そのため、赤外光カットフィルター13によれば、赤外光カットフィルター13を通過する近赤外光を確実に吸収することが可能である。これにより、各色用の光電変換素子11で検出され得る近赤外光が、赤外光カットフィルター13によって十分にカットされる。
【0098】
なお、波長λにおける透過率Tは、赤外光にシアニン色素を有する赤外光カットフィルター13を透過させたときの、入射光の強度(IL)に対する透過光の強度(TL)の比(TL/IL)によって表される。赤外光カットフィルター13において、入射光の強度を1としたときの透過光の強度が透過率Tであり、透過率Tに100を乗算した値が透過率パーセント%Tである。
【0099】
トリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロリン酸([(C2F5)3PF3]-)は、下記式(47)によって示される構造を有する。
【0100】
【0101】
固体撮像素子10の製造過程において、赤外光カットフィルター13は、200℃程度に加熱される。上述したシアニン色素は、200℃程度に加熱され、これによって、シアニン色素が有する構造が変わり、シアニン色素における赤外光に対する吸光度が低下することがある。
【0102】
この点で、FAPは、シアニン色素におけるポリメチン鎖の近傍に位置することが可能な分子量および分子構造を有するため、シアニン色素のポリメチン鎖が、シアニン色素の加熱によって切断されることが抑えられる。それゆえに、シアニン色素の加熱に起因してシアニン色素が有する赤外光の吸光度が低下することが抑えられ、結果として、赤外光カットフィルター13における赤外光の吸光度が低下することが抑制される。
【0103】
上述したように、赤外光カットフィルター13は、共重合体を含んでいる。共重合体は、アクリル酸またはメタクリル酸を含むモノマーに由来する繰り返し単位を含んでよい。アクリル酸を含むモノマーがアクリレートであり、メタクリル酸を含むモノマーがメタクリレートである。
【0104】
共重合体は、第1繰り返し単位、および、第2繰り返し単位を含む。第1繰り返し単位は、フェノール性水酸基をもつモノマーに由来する。第2繰り返し単位は、下記式(1)によって表される芳香環を有するアクリルモノマー、または、下記式(2)によって表される脂環式構造を有するアクリルモノマーに由来することが好ましい。
【0105】
【0106】
【0107】
式(1)および式(2)において、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は単結合、炭素数1以上の直鎖状アルキレン基、または、炭素数3以上の分岐鎖状アルキレン基である。R3は水素原子または所定の置換基である。式(1)において、R3が置換基である場合にはmは1から5のいずれかの整数である。式(2)において、R4は炭素数3以上の脂環式構造である。
【0108】
フェノール性水酸基を有するモノマーは、例えば、4‐ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、4‐ヒドロキシフェニル(メタ)アクリルアミド、3‐(tert‐ブチル)‐4‐ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、4‐(tert‐ブチル)‐2‐ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、4‐ヒドロキシフェニルマレイミド、3‐ヒドロキシフェニルマレイミド、p‐ヒドロキシスチレン、および、α‐メチル‐p‐ヒドロキシスチレンなどであってよい。こうしたフェノール性水酸基を有したモノマーを用いて生成された重合体は、側鎖にフェノール性水酸基を含む。
【0109】
芳香環を有するアクリルモノマーは、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチル‐2‐ヒドロキシプロピルフタレート、2‐ヒドロキシ‐3‐フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2‐(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、エトキシ化オルト‐フェニルフェノール(メタ)アクリレート、o‐フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3‐フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、4‐ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、2‐ナフトール(メタ)アクリレート、4‐ビフェニル(メタ)アクリレート、9‐アントリルメチル(メタ)アクリレート、2‐[3‐(2H‐ベンゾトリアゾール‐2‐イル)‐4‐ヒドロキシフェニル]エチル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキシド(EO)変性アクリレート、ノニルフェノールEO変性アクリレート、フタル酸2‐(メタ)アクリロイルオキシエチル、および、ヘキサヒドロフタル酸2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルなどであってよい。
【0110】
第2繰り返し単位は、上述した芳香環を有するアクリルモノマーのうち、フェニルメタクリレート、および、4‐ビフェニルメタクリレートからなる群から選択されるいずれか1つに由来する単位構造であることがより好ましい。
【0111】
脂環式構造を有するアクリルモノマーは、例えば、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4‐t‐シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、および、テトラシクロドデシル(メタ)アクリレートなどであってよい。
【0112】
第2繰り返し単位は、上述した脂環式構造を有するアクリルモノマーのうち、ジシクロペンタニルメタクリレート、および、シクロヘキシルメタクリレートからなる群から選択されるいずれか1つに由来する単位構造であることがより好ましい。
【0113】
赤外光カットフィルター13の形成に用いられるポリマー溶液には、モノマーの重合時に用いられたラジカル重合開始剤が含まれることがある。赤外光カットフィルター13に含まれるラジカル重合開始剤は、赤外光カットフィルター13が加熱された場合に活性化されることによって、ラジカルを生じさせることがある。こうしたラジカルは、第1繰り返し単位を含む共重合体によって捕捉される。そのため、第1繰り返し単位および第2繰り返し単位を含む共重合体によれば、仮に赤外光カットフィルター13がラジカル重合開始剤を含んでいたとしても、シアニン色素においてラジカルに起因した分解や変性を抑えることができる。これによって、赤外光カットフィルター13が加熱によって劣化することを抑えられる。
【0114】
共重合体が、第1繰り返し単位および第2繰り返し単位のみから構成され、かつ、第2繰り返し単位がフェノール性水酸基を有するモノマーに由来する場合に、5重量%以上30重量%以下の第1繰り返し単位を含み、かつ、70重量%以上の第2繰り返し単位を含むことが好ましい。なお、この場合には、共重合体の全量が100重量%である。赤外光カットフィルターを形成する際に用いられる塗膜はシアニン色素、および、共重合体を含んでいる。第1繰り返し単位と第2繰り返し単位とが上述した割合で含まれることによって、赤外光カットフィルターが製造された時点において赤外光カットフィルターが有する透過率の上昇を抑え、かつ、加熱による赤外光カットフィルターの劣化を抑えることが可能である。
【0115】
共重合体は、環状エーテルを有するアクリルモノマーに由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。環状エーテル基を含むモノマーは、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、2‐メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2‐エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2‐オキシラニルエチル(メタ)アクリレート、2‐グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、3‐グリシジルオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート、オキセタニル(メタ)アクリレート、3‐メチル‐3‐オキセタニル(メタ)アクリレート、3‐エチル‐3‐オキセタニル(メタ)アクリレート、(3‐メチル‐3‐オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3‐エチル‐3‐オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、2‐(3‐メチル‐3‐オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2‐(3‐エチル‐3‐オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2‐[(3‐メチル‐3‐オキセタニル)メチルオキシ]エチル(メタ)アクリレート、2‐[(3‐エチル‐3‐オキセタニル)メチルオキシ]エチル(メタ)アクリレート、3‐[(3‐メチル‐3‐オキセタニル)メチルオキシ]プロピル(メタ)アクリレート、3‐[(3‐エチル‐3‐オキセタニル)メチルオキシ]プロピル(メタ)アクリレート、および、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどであってよい。
【0116】
共重合体は、グリシジルメタクリレートに由来する第3繰り返し単位をさらに含んでいてもよい。共重合体が第3繰り返し単位を含む場合には、共重合体が、70重量%以上の第2繰り返し単位を含み、5重量%以上20重量%以下の第3繰り返し単位を含み、かつ、第3繰り返し単位の重量に対する第1繰り返し単位の重量の比が0.5以上であることが好ましい。なお、この場合には、共重合体の全量が、100重量%である。これにより、第3繰り返し単位を含む共重合体を用いて赤外光カットフィルター13を形成した場合に、赤外光カットフィルター13の耐熱性が高められる。
【0117】
共重合体は、第1繰り返し単位、第2繰り返し単位、および、第3繰り返し単位のみから生成されてもよいし、上述したモノマー以外のモノマーに由来する繰り返し単位を含んでもよい。
【0118】
上述したモノマー以外のモノマーは、例えば、スチレン系モノマー、(メタ)アクリルモノマー、ビニルエステル系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、ハロゲン元素含有ビニル系モノマー、および、ジエン系モノマーなどであってよい。スチレン系モノマーは、例えば、スチレン、α‐メチルスチレン、p‐メチルスチレン、m‐メチルスチレン、p‐メトキシスチレン、p‐ヒドロキシスチレン、p‐アセトキシスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、フェニルスチレン、および、ベンジルスチレンなどであってよい。(メタ)アクリルモノマーは、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、および、2‐エチルヘキシルメタクリレートなどであってよい。ビニルエステル系モノマーは、例えば、酢酸ビニルなどであってよい。ビニルエーテル系モノマーは、例えば、ビニルメチルエーテルなどであってよい。ハロゲン元素含有ビニル系モノマーは、例えば、塩化ビニルなどであってよい。ジエン系モノマーは、例えば、ブタジエン、および、イソブチレンなどであってよい。
【0119】
また、共重合体には、共重合体が有する極性を調整するためのモノマーが重合されていてもよい。極性を調整するためのモノマーは、酸基または水酸基を共重合体に付加する。こうしたモノマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル、アクリル酸-2ヒドロキシエチル、および、(メタ)アクリル酸‐4‐ヒドロキシフェニルなどであってよい。
【0120】
共重合体は、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、および、グラフト共重合体のいずれの構造を有していてもよい。共重合体の構造がランダム共重合体であれば、製造工程およびシアニン色素との調製が容易である。そのため、ランダム共重合体は、他の共重合体よりも好ましい。
【0121】
共重合体を得るための重合方法には、ラジカル重合を用いることができる。ラジカル重合は、工業的な生産が容易である点で好ましい。ラジカル重合は、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、および、懸濁重合法などであってよい。ラジカル重合には、溶液重合法を用いることが好ましい。溶液重合法を用いることによって、共重合体における分子量の制御が容易である。さらに、モノマーの重合後に共重合体を含む溶液を溶液の状態で固体撮像素子用フィルターの製造に使用することができる。
【0122】
ラジカル重合では、上述したモノマーを重合溶剤によって希釈した後に、重合開始剤を加えてモノマーの重合を行ってもよい。
重合溶剤は、例えば、エステル系溶剤、アルコールエーテル系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族系溶剤、アミド系溶剤、および、アルコール系溶剤などであってよい。エステル系溶剤は、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n‐ブチル、酢酸イソブチル、酢酸t‐ブチル、乳酸メチル、および、乳酸エチルなどであってよい。アルコールエーテル系溶剤は、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3‐メトキシ‐1‐ブタノール、および、3‐メトキシ‐3-メチル‐1‐ブタノールなどであってよい。ケトン系溶剤は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、および、シクロヘキサノンなどであってよい。芳香族系溶剤は、例えば、ベンゼン、トルエン、および、キシレンなどであってよい。アミド系溶剤は、例えば、ホルムアミド、および、ジメチルホルムアミドなどであってよい。アルコール系溶剤は、例えば、メタノール、エタノール、n‐プロパノール、イソプロパノール、n‐ブタノール、イソブタノール、s‐ブタノール、t‐ブタノール、ジアセトンアルコール、および、2‐メチル‐2‐ブタノールなどであってよい。このうち、ケトン系溶剤、および、エステル系溶剤は、固体撮像素子用フィルターの製造に用いることができるため好ましい。なお、上述した重合溶剤において、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0123】
ラジカル重合において、重合溶剤を使用する量は特に限定されないが、モノマーの合計を100重量部に設定する場合に、重合溶剤の使用量は、1重量部以上1000重量部以下であることが好ましく、10重量部以上500重量部以下であることがより好ましい。
【0124】
ラジカル重合開始剤は、例えば、過酸化物およびアゾ化合物などであってよい。過酸化物は、例えば、ベンゾイルペルオキシド、t‐ブチルパーオキシアセテート、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、および、ジ‐t‐ブチルパーオキシドなどであってよい。アゾ化合物は、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスアミジノプロパン塩、アゾビスシアノバレリックアシッド(塩)、および、2,2’‐アゾビス[2‐メチル‐N‐(2‐ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]などであってよい。
【0125】
ラジカル重合開始剤の使用量は、モノマーの合計を100重量部に設定した場合に、0.0001重量部以上20重量部以下であることが好ましく、0.001重量部以上15重量部以下であることがより好ましく、0.005重量部以上10重量部以下であることがさらに好ましい。ラジカル重合開始剤は、モノマーおよび重合溶剤に対して、重合開始前に添加されてもよいし、重合反応系中に滴下されてもよい。ラジカル重合開始剤をモノマーおよび重合溶剤に対して重合反応系中に滴下することは、重合による発熱を抑制することができる点で好ましい。
【0126】
ラジカル重合の反応温度は、ラジカル重合開始剤および重合溶剤の種類によって適宜選択される。反応温度は、製造上の容易性、および、反応制御性の観点から、60℃以上110℃以下であることが好ましい。
【0127】
共重合体は、ラジカル捕捉能を有する添加剤を含んでいてもよい。添加剤によってもラジカルを捕捉することができるため、共重合体および添加剤によって、シアニン色素においてラジカルによる分解や変性を抑えることができる。これによって、赤外光カットフィルター13の加熱による劣化をさらに抑えることができる。添加剤は、250℃以上の耐熱性を有することが好ましく、例えば、N‐ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩などを含んでいてよい。
【0128】
共重合体のガラス転移温度は、75℃以上であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。ガラス転移温度が75℃以上であれば、赤外光カットフィルターにおいて、赤外光カットフィルター13が加熱された場合に、赤外光の透過率における変化を抑える確実性を高めることが可能である。
【0129】
共重合体の分子量は、3万以上15万以下であることが好ましく、5万以上15万以下であることがより好ましい。共重合体の分子量がこの範囲に含まれることによって、赤外光カットフィルター13が加熱された場合に、赤外光の透過率における変化を抑える確実性を高めることが可能である。
【0130】
15万を超える分子量を有した共重合体は、重合時の粘度上昇によりシアニン色素とともに塗液化することが困難である。そのため、共重合体の分子量が15万を超える場合には、赤外光カットフィルター13の形成が容易ではない。一方で、共重合体の分子量が15万以下であれば、共重合体とシアニン色素とを含む塗液を形成することが可能であることから、赤外光カットフィルター13の形成がより容易である。なお、共重合体の平均分子量は、重量平均分子量である。共重合体の重量平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー法によって測定することが可能である。例えば、ラジカル重合反応において、溶液中のモノマーおよびラジカル重合開始剤の濃度を変更することによって、共重合体の分子量を制御することができる。
【0131】
共重合体の重量と、共重合体を構成するモノマーの重量との和(MS)に対するモノマーの重量(MM)の百分率(MM/MS×100)は、20%以下であることが好ましい。残存モノマーが20%よりも多い場合に比べて、赤外光カットフィルター13が加熱された場合に、シアニン色素における赤外光の透過率が変化しにくくなる。
【0132】
なお、共重合体の重量と、共重合体を構成するモノマーの重量との和(MS)に対するモノマーの重量(MM)の百分率(MM/MS×100)は、10%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。共重合体の重量、および、モノマーの重量は、共重合体の分析結果に基づき定量することが可能である。共重合体の分析方法は、例えば、ガスクロマトグラフィー量分析法(GC‐MS)、核磁気共鳴分光法(NMR)、および、赤外分光法(IR)などであってよい。
【0133】
共重合体の重量とモノマーの重量との和に対するモノマーの重量の割合を変更する方法は、例えば、重合時間を変更する方法、および、重合温度を変更する方法などであってよい。また、共重合体の重量とモノマーの重量との和に対するモノマーの重量の割合を変更する方法は、重合反応の開始時におけるモノマーおよびラジカル重合開始剤の濃度を変更する方法などであってよい。共重合体の重量とモノマーの重量との和に対するモノマーの重量の割合を変更する方法は、重合反応後の精製条件を変更する方法などであってよい。このうち、重合時間を変更する方法は、モノマーの重量の割合を変更する制御の精度が高いため好ましい。
【0134】
[固体撮像素子用フィルターの製造方法]
固体撮像素子用フィルター10Fの製造方法は、赤外光カットフィルター13を形成することと、赤外光カットフィルター13をドライエッチングによってパターニングすることとを含む。赤外光カットフィルター13を形成することでは、シアニン色素と、共重合体とを含む赤外光カットフィルター13を形成する。以下、固体撮像素子用フィルター10Fの製造方法をより詳細に説明する。
【0135】
各色用フィルター12R,12G,12B,12Pは、着色感光性樹脂を含む塗膜の形成、および、フォトリソグラフィー法を用いた塗膜のパターニングによって形成される。例えば、赤色用感光性樹脂を含む塗膜は、赤色用感光性樹脂を含む塗布液の塗布、および、塗膜の乾燥によって形成される。赤色用フィルター12Rは、赤色用感光性樹脂を含む塗膜に対し、赤色用フィルター12Rの領域に相当する露光、および、現像を経て形成される。なお、緑色用フィルター12G、青色用フィルター12B、および、赤外光パスフィルター12Pも、赤色用フィルター12Rと同様の方法によって形成される。
【0136】
赤色用フィルター12R、緑色用フィルター12G、および、青色用フィルター12Bの着色組成物に含有される顔料には、有機または無機の顔料を単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。顔料は、発色性が高く、かつ、耐熱性の高い顔料、特に耐熱分解性の高い顔料であることが好ましく、有機顔料であることが好ましい。有機顔料は、例えば、フタロシアニン系、アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、ペリレン系、チオインジゴ系、イソインドリン系、キノフタロン系、および、ジケトピロロピロール系などであってよい。
【0137】
また、赤外光パスフィルター12Pに含有される着色成分には、黒色色素、あるいは、黒色染料を用いることができる。黒色色素は、単一で黒色を有する色素、あるいは、2種以上の色素によって黒色を有する混合物であってよい。黒色染料は、例えば、アゾ系染料、アントラキノン系染料、アジン系染料、キノリン系染料、ペリノン系染料、ペリレン系染料、および、メチン系染料などであってよい。
【0138】
各色の感光性着色組成物にはさらに、バインダー樹脂、光重合開始剤、重合性モノマー、有機溶剤、および、レベリング剤などが含まれる。
赤外光カットフィルター13を形成する際には、上述したシアニン色素、第1繰り返し単位および第2繰り返し単位を含む共重合体、および、有機溶剤を含む塗布液を各色用フィルター12R,12G,12B,12P上に塗布する。次いで、プレベーク処理によって塗膜を乾燥させる。その後、乾燥した塗膜をポストベーク処理による加熱によって硬化させる。これにより、赤外光カットフィルター13が形成される。
【0139】
赤外光カットフィルター13が備える貫通孔13Hを形成する際には、まず、赤外光カットフィルター13上にフォトレジスト層を形成する。このフォトレジスト層をパターニングすることによってレジストパターンを形成する。次に、このレジストパターンをエッチングマスクとして用いたドライエッチングによって、赤外光カットフィルター13をエッチングする。そして、エッチング後の赤外光カットフィルター13に残存するレジストパターンを剥離液によって除去することによって貫通孔13Hが形成される。これにより、赤外光カットフィルターをパターニングすることができる。
【0140】
剥離液には、レジストパターンを溶解することが可能な液体を用いることができる。剥離液は、例えば、N‐メチルピロリドン、または、ジメチルスルホキシドであってよい。赤外光カットフィルター13と剥離液とを接触させる方法は、ディップ法、スプレー法、および、スピン法などいずれの方法であってもよい。赤外光カットフィルター13が架橋構造を有した共重合体を含むことによって、剥離液に対する耐性と、耐熱性とを満たすことが可能である。
【0141】
バリア層14は、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法などの気相成膜法、あるいは、塗布法などの液相成膜法を用いた成膜によって形成される。酸化珪素から構成されるバリア層14は、例えば、赤外光カットフィルター13が形成された基板に対し、酸化珪素からなるターゲットを用いたスパッタリングによる成膜を経て形成される。酸化珪素から構成されるバリア層14は、例えば、赤外光カットフィルター13が形成された基板に対し、シランと酸素とを用いたCVDによる成膜を経て形成される。酸化珪素から構成されるバリア層14は、例えば、ポリシラザンを含む塗布液の塗布、改質、および、塗膜の乾燥によって形成される。バリア層14の層構造は、単一の化合物からなる単層構造でもよいし、単一の化合物からなる層の積層構造であってもよいし、相互に異なる化合物からなる層の積層構造であってもよい。
【0142】
各マイクロレンズ15R,15G,15B,15Pは、透明樹脂を含む塗膜の形成、フォトリソグラフィー法を用いた塗膜のパターニング、および、熱処理によるリフローによって形成される。透明樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、および、ノルボルネン系樹脂などである。
【0143】
[製造例1]
表1を参照して、赤外光カットフィルターを製造するための重合体における製造例1を説明する。なお、重合体が2種以上のモノマーを用いて生成された共重合体である場合には、生成された共重合体における各モノマーに由来する繰り返し単位での重量比が、共重合体の生成時における各モノマーの重量比に等しい。
【0144】
【0145】
[製造例1‐1]
150重量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)を重合溶剤として準備し、80重量部のフェニルメタクリレート(PhMA)(C10H10O2)と、20重量部の4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート(HPMA)(C10H10O3)をモノマーとして準備した。また、1.5重量部のベンゾイルペルオキシド(BPO)をラジカル重合体として準備した。これらを攪拌装置と環流管とが設置された反応容器に入れ、反応容器に窒素ガスを導入しつつ、80℃に加熱しながら8時間にわたって攪拌しかつ環流した。これにより、フェニルメタクリレートおよび4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0146】
[製造例1‐2]
製造例1‐1において、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートを4‐ヒドロキシフェニルメタクリルアミド(HPMAA)(C10H11NO2)に変更した以外は、製造例1‐1と同様の方法によって、フェニルメタクリレートおよび4‐ヒドロキシフェニルメタクリルアミドから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0147】
[製造例1‐3]
製造例1‐1において、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートを4‐ヒドロキシフェニルマレイミド(C10H7NO3)に変更した以外は、製造例1‐1と同様の方法によって、フェニルメタクリレートおよび4‐ヒドロキシフェニルマレイミドから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0148】
[製造例1‐4]
製造例1‐1において、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートをα‐メチル‐p‐ヒドロキシスチレン(C9H10O)に変更した以外は、製造例1‐1と同様の方法によって、フェニルメタクリレートおよびα‐メチル‐p‐ヒドロキシスチレンから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0149】
[製造例1‐5]
製造例1‐1において、100重量部のフェニルメタクリレートのみをモノマーとして準備した以外は、製造例1‐1と同様の方法によって、フェニルメタクリレートから生成された単独重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0150】
[試験例1]
表2を参照して試験例1を説明する。
製造例1‐1から製造例1‐5の重合体を以下の方法で用いることによって、5種の赤外光カットフィルターを得た。そして、各赤外光カットフィルターにおいて、耐熱試験前、および、耐熱試験後における透過率を以下に説明する方法で測定した。
【0151】
0.3gのシアニン色素、12.5gの25%ポリマー溶液、および、10gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含む塗液を作製した。この際に、シアニン色素として、上記式(5)によって表される色素を用い、上述した製造例1‐1から製造例1‐5によって得られた共重合体をそれぞれ含む5種のポリマー溶液を用いた。塗液を透明基板上に塗布し、塗膜を乾燥させた。次いで、塗膜を230℃に加熱して硬化させることによって、1.0μmの厚さを有する試験例1‐1から試験例1‐5の赤外光カットフィルターを得た。
【0152】
[評価方法]
[分光特性]
分光光度計(U-4100、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて350nmから1150nmの各波長を有した光に対する各試験例の赤外光カットフィルターにおける透過率を測定した。これにより、各赤外光カットフィルターについて、透過率のスペクトルを得た。なお、上記式(5)によって表されるシアニン色素における透過率のスペクトルは、950nmにおいて極小値を有する。そのため、各赤外光カットフィルターにおける950nmでの透過率%Tを、耐熱試験の前後において算出した。
【0153】
[耐熱試験]
各試験例の赤外光カットフィルターにおける透過率の測定後、各試験例の赤外光カットフィルターを250℃で加熱した。加熱後の各試験例の赤外光カットフィルターについて、加熱前の各試験例の赤外光カットフィルターに対する方法と同様の方法によって透過率を算出した。
【0154】
[透過率の変化量]
各試験例について、耐熱試験後における950nmでの透過率%Tから耐熱試験前における950nmでの透過率%Tを減算することによって、透過率の変化量%Tを算出した。
【0155】
[評価結果]
各試験例について、耐熱試験前の透過率%T、耐熱試験後の透過率%T、および、透過率%Tの変化量は以下の表2に示す通りであった。
【0156】
【0157】
表2が示すように、試験例1‐1から試験例1‐5の赤外光カットフィルターにおいて、耐熱試験前における950nmでの透過率%Tは10%Tであることが認められた。また、試験例1‐1から試験例1‐4の赤外光カットフィルターにおいて、耐熱試験後における950nmでの透過率%Tが15%Tであることが認められた。一方で、試験例1‐5の赤外光カットフィルターにおいて、耐熱試験後における950nmでの透過率%Tが45%Tであることが認められた。このように、赤外光カットフィルターが含む重合体がフェニルメタクリレートに由来する第2繰り返し単位を含む場合には、フェノール性水酸基を有するモノマーに由来する第1繰り返し単位を含むことによって、赤外光カットフィルターの耐熱性が高まることが認められた。
【0158】
[製造例2]
表3を参照して、赤外光カットフィルターを製造するための重合体における製造例2を説明する。
【0159】
【0160】
[製造例2‐1]
製造例1‐1と同様の方法によって、製造例2‐1のポリマー溶液を得た。
【0161】
[製造例2‐2]
製造例2‐1において、フェニルメタクリレートを4‐ビフェニルメタクリレート(BPMA)(C16H14O2)に変更した以外は、製造例2‐1と同様の方法によって、4‐ビフェニルメタクリレートおよび4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0162】
[製造例2‐3]
製造例2‐1において、フェニルメタクリレートをジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)(C14H20O2)に変更した以外は、製造例2‐1と同等の方法によって、ジシクロペンタニルメタクリレートおよび4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0163】
[製造例2‐4]
製造例2‐1において、フェニルメタクリレートをシクロヘキシルメタクリレート(CHMA)(C10H16O2)に変更した以外は、製造例2‐1と同様の方法によって、シクロヘキシルメタクリレートおよび4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0164】
[製造例2‐5]
製造例2‐1において、100重量部のフェニルメタクリレートのみをモノマーとして準備した以外は、製造例2‐1と同様の方法によって、フェニルメタクリレートから生成された単独重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0165】
[製造例2‐6]
製造例2‐2において、100重量部の4‐ビフェニルメタクリレート(BPMA)のみをモノマーとして準備した以外は、製造例2‐2と同様の方法によって、4‐ビフェニルメタクリレートから生成された単独重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0166】
[製造例2‐7]
製造例2‐3において、100重量部のジシクロペンタニルメタクリレートのみをモノマーとして準備した以外は、製造例2‐3と同様の方法によって、ジシクロペンタニルメタクリレートから生成された単独重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0167】
[製造例2‐8]
製造例2‐4において、100重量部のシクロヘキシルメタクリレートのみをモノマーとして準備した以外は、製造例2‐4と同様の方法によって、シクロヘキシルメタクリレートから生成された単独重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0168】
[試験例2]
表4を参照して試験例2を説明する。
製造例2‐1から製造例2‐8の重合体を試験例1と同様の方法で用いることによって、8種の赤外光カットフィルターを得た。そして、各赤外光カットフィルターにおいて、試験例1と同様の方法によって、耐熱試験前、および、耐熱試験後における透過率%Tを算出した。
【0169】
[評価結果]
各試験例について、耐熱試験前の透過率%T、耐熱試験後の透過率%T、および、透過率%Tの変化量は以下の表4に示す通りであった。
【0170】
【0171】
表4が示すように、試験例2‐1から試験例2‐8の赤外光カットフィルターにおいて、耐熱試験前における950nmでの透過率%Tは10%Tであることが認められた。また、試験例2‐1から試験例2‐4の赤外光カットフィルターにおいて、耐熱試験後における950nmでの透過率%Tは15%Tであることが認められた。一方で、耐熱試験後における950nmでの透過率%Tは、試験例2‐5の赤外光カットフィルターにおいて45%Tであり、試験例2‐6の赤外光カットフィルターにおいて40%Tであり、試験例2‐7の赤外光カットフィルターにおいて80%Tであり、試験例2‐8の赤外光カットフィルターにおいて70%Tであることが認められた。
【0172】
このように、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートに由来する第1繰り返し単位を含む場合には、第2繰り返し単位が上述した4種のうちのいずれのモノマーに由来しても、第1繰り返し単位を含まない場合に比べて、赤外光カットフィルターの耐熱性が高まることが認められた。
【0173】
[製造例3]
表5を参照して、赤外光カットフィルターを製造するための重合体における製造例3を説明する。
【0174】
【0175】
[製造例3‐1]
製造例1‐1において、90重量部のフェニルメタクリレートと、10重量部の4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートをモノマーとして準備した以外は、製造例1‐1と同様の方法によって、フェニルメタクリレートおよび4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0176】
[製造例3‐2]
製造例1‐1と同様の方法によって、製造例3‐2のポリマー溶液を得た。
[製造例3‐3]
製造例3‐1において、70重量部のフェニルメタクリレートと、30重量部の4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートをモノマーとして準備した以外は、製造例3‐1と同様の方法によって、フェニルメタクリレートおよび4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0177】
[製造例3‐4]
製造例3‐1において、60重量部のフェニルメタクリレートと、40重量部の4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートをモノマーとして準備した以外は、製造例3‐1と同様の方法によって、フェニルメタクリレートおよび4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0178】
[試験例3]
表6を参照して試験例3を説明する。
試験例3‐1から試験例3‐4の重合体を試験例1と同様の方法で用いることによって、4種の赤外光カットフィルターを得た。そして、各赤外光カットフィルターにおいて、試験例1と同様の方法によって、耐熱試験前、および、耐熱試験後における透過率%Tを算出した。
【0179】
[評価結果]
各試験例について、耐熱試験前の透過率%T、耐熱試験後の透過率%T、および、透過率%Tの変化量は以下の表6に示す通りであった。
【0180】
【0181】
表6が示すように、試験例3‐1から試験例3‐3の赤外光カットフィルターにおいて、耐熱試験前における950nmでの透過率%Tは10%Tであることが認められた。これに対して、試験例3‐4の赤外光カットフィルターにおいて、耐熱試験前における950nmでの透過率%Tは25%Tであることが認められた。
【0182】
また、耐熱試験後における950nmでの透過率%Tは、試験例3‐1および試験例3‐2の赤外光カットフィルターにおいて15%であり、試験例3‐3の赤外光カットフィルターにおいて17%Tであり、試験例3‐4の赤外光カットフィルターにおいて25%Tであることが認められた。
【0183】
これらの結果から、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートに由来する第1繰り返し単位、および、フェニルメタクリレートに由来する第2繰り単位によって構成された共重合体では、第1繰り返し単位が10重量%以上30重量%以下の割合で含まれる場合に、耐熱試験前における950nmでの透過率%Tが低くなり、かつ、透過率%Tの変化量が小さくなることが認められた。
【0184】
[製造例4]
表7を参照して、赤外光カットフィルターを製造するための重合体における製造例4を説明する。
【0185】
【0186】
[製造例4‐1]
90重量部のフェニルメタクリレート、5重量部の4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、5重量部のグリシジルメタクリレート(GMA)(C7H10O3)をモノマーとして準備した。それ以外は、製造例1‐1と同様の方法によって、フェニルメタクリレート、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、グリシジルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0187】
[製造例4‐2]
80重量部のフェニルメタクリレート、10重量部の4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、10重量部のグリシジルメタクリレートをモノマーとして準備した。それ以外は、製造例4‐1と同様の方法によって、フェニルメタクリレート、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、グリシジルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0188】
[製造例4‐3]
70重量部のフェニルメタクリレート、15重量部の4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、15重量部のグリシジルメタクリレートをモノマーとして準備した。それ以外は、製造例4‐1と同様の方法によって、フェニルメタクリレート、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、グリシジルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0189】
[製造例4‐4]
60重量部のフェニルメタクリレート、20重量部の4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、20重量部のグリシジルメタクリレートをモノマーとして準備した。それ以外は、製造例4‐1と同様の方法によって、フェニルメタクリレート、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、グリシジルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0190】
[製造例4‐5]
70重量部のフェニルメタクリレート、20重量部の4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、10重量部のグリシジルメタクリレートをモノマーとして準備した。それ以外は、製造例4‐1と同様の方法によって、フェニルメタクリレート、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、グリシジルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0191】
[製造例4‐6]
70重量部のフェニルメタクリレート、10重量部の4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、20重量部のグリシジルメタクリレートをモノマーとして準備した。それ以外は、製造例4‐1と同様の方法によって、フェニルメタクリレート、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、グリシジルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0192】
[製造例4‐7]
70重量部のフェニルメタクリレート、5重量部の4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、25重量部のグリシジルメタクリレートをモノマーとして準備した。それ以外は、製造例4‐1と同様の方法によって、フェニルメタクリレート、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、グリシジルメタクリレートから生成された共重合体を含むポリマー溶液を得た。
【0193】
[試験例4]
表8を参照して試験例4を説明する。
試験例4‐1から試験例4‐7の共重合体を試験例1と同様の方法で用いることによって、7種の赤外光カットフィルターを得た。そして、各赤外光カットフィルターにおいて、試験例1と同様の方法によって、耐熱試験前、および、耐熱試験後における透過率%Tを算出した。
【0194】
[評価結果]
各試験例について、耐熱試験前の透過率%T、耐熱試験後の透過率%T、および、透過率%Tの変化量は以下の表8に示す通りであった。
【0195】
【0196】
表8が示すように、試験例4‐1から試験例4‐3、および、試験例4‐5から試験例4‐7の赤外光カットフィルターにおいて、耐熱試験前における950nmでの透過率%Tは10%Tであることが認められた。これに対して、試験例4‐4の赤外光カットフィルターにおいて、耐熱試験前における950nmでの透過率%は20%Tであることが認められた。
【0197】
また、試験例4‐1から試験例4‐3、試験例4‐5、および、試験例4‐6の赤外光カットフィルターにおいて、耐熱試験後における950nmでの透過率%は15%Tであることが認められた。これに対して、耐熱試験後において、950nmでの透過率%Tは、試験例4‐4において40%Tであり、試験例4‐7において20%Tであることが認められた。
【0198】
これらの結果から、フェニルメタクリレート、4‐ヒドロキシフェニルメタクリレート、および、グリシジルメタクリレートから生成された共重合体は、以下の条件を満たすことが好ましいと言える。
【0199】
[条件1]フェニルメタクリレートに由来する第2繰り返し単位の割合が、70重量%以上である。
[条件2]グリシジルメタクリレートに由来する繰り返し単位の割合が、5重量%以上20重量%以下である。
【0200】
[条件3]グリシジルメタクリレートの重量(WG)に対する4‐ヒドロキシフェニルメタクリレートの重量(WH)の比(WH/WG)が、0.5以上である。
[試験例5]
試験例1において、製造例3‐1のポリマー溶液を用い、かつ、添加剤として0.3mgのN‐ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩を加えた以外は、試験例1と同様の方法によって、試験例5‐1の赤外光カットフィルターを得た。また、試験例1において、製造例3‐1のポリマー溶液を用いた以外は、試験例1と同様の方法によって、試験例5‐2の赤外光カットフィルターを得た。各赤外光カットフィルターにおいて、試験例1と同様の方法によって、耐熱試験前、および、耐熱試験後における透過率%Tを算出した。
【0201】
[評価結果]
各試験例について、耐熱試験前の透過率%T、耐熱試験後の透過率%T、および、透過率%Tの変化量は以下の表9に示す通りであった。
【0202】
【0203】
表9が示すように、試験例5‐1および試験例5‐2の赤外光カットフィルターにおいて、耐熱試験前における950nmでの透過率%Tは10%Tであることが認められた。また、耐熱試験後において、950nmでの透過率%Tは、試験例5‐1において13%Tであり、試験例5‐2において15%Tであることが認められた。
【0204】
このように、赤外光カットフィルターを製造するための塗膜にN‐ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩を添加することによって、赤外光カットフィルターの耐熱性がさらに高まることが認められた。
【0205】
以上説明したように、赤外光カットフィルター13、固体撮像素子用フィルター10F、固体撮像素子10、および、固体撮像素子用フィルター10Fの製造方法によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
【0206】
(1)第1繰り返し単位を含む共重合体がラジカルを捕捉する。そのため、第1繰り返し単位および第2繰り返し単位を含む共重合体によれば、仮に赤外光カットフィルター13がラジカル重合開始剤を含んでいたとしても、シアニン色素においてラジカルに起因した分解や変性を抑えることができる。これによって、赤外光カットフィルター13が加熱によって劣化することを抑えられる。
【0207】
(2)共重合体が芳香環または脂環式構造を有するモノマーに由来する第2繰り返し単位を含むことによって、赤外光カットフィルター13が製造された時点において赤外光カットフィルターが有する透過率の上昇を抑えることができる。
【0208】
(3)赤外光カットフィルター13が製造された時点において赤外光カットフィルター13が有する透過率の低下を抑え、かつ、加熱による赤外光カットフィルターの劣化を抑えることが可能である。
【0209】
(4)第3繰り返し単位を含む共重合体を用いて赤外光カットフィルターを形成した場合に、赤外光カットフィルターの耐熱性が高められる。
(5)ガラス転移温度が75℃以上であることによって、赤外光カットフィルターにおいて、赤外光カットフィルター13が加熱された場合に、赤外光の透過率における変化を抑える確実性を高めることが可能である。
【0210】
(6)共重合体の分子量が3万以上15万以下の範囲に含まれることによって、赤外光カットフィルター13が加熱された場合に、赤外光の透過率における変化を抑える確実性を高めることが可能である。
【0211】
(7)残存モノマーが20%以下であるため、残存モノマーが20%よりも多い場合に比べて、赤外光カットフィルターが加熱された場合に、シアニン色素における赤外光の透過率が変化しにくくなる。
【0212】
(8)赤外光カットフィルターがラジカル重合開始剤を仮に含んでいたとしても、赤外光カットフィルターの加熱によって生じたラジカルを添加剤が捕捉するため、ラジカルに起因した赤外光カットフィルターの劣化が抑えられる。
【0213】
(9)バリア層14によって赤外光カットフィルター13に向けた酸化源の透過が抑えられるため、赤外光カットフィルター13の耐光性が高められる。
[変更例]
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
【0214】
[共重合体]
・共重合体は、30重量%を超える第1繰り返し単位を含んでいてもよい。
・共重合体は、グリシジルメタクリレートに由来する第3繰り返し単位を含んでいなくてもよい。また、共重合体が含む第3繰り返し単位は、5重量%よりも少なくてもよい。この場合であっても、共重合体が第1繰り返し単位と第2繰り返し単位とを含んでいれば、上述した(1)に準じた効果を得ることは可能である。
【0215】
[添加剤]
・赤外光カットフィルター13は、ラジカル捕捉能を有する添加剤を含んでいなくてもよい。この場合であっても、共重合体が第1繰り返し単位と第2繰り返し単位とを含んでいれば、上述した(1)に準じた効果を得ることは可能である。なお、ラジカル捕捉能を有する添加剤は、例えば、上述したN‐ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩などであってよい。
【0216】
[バリア層]
・バリア層14は、赤外光カットフィルター13とマイクロレンズ15R,15G,15B,15Pとの間に限らず、各マイクロレンズ15R,15G,15B,15Pの外表面に配置されてもよい。
【0217】
・固体撮像素子用フィルター10Fはバリア層14を備えていなくてもよい。この場合であっても、上述した(1)に準じた効果を得ることは可能である。
・固体撮像素子10は、バリア層14とバリア層14の下層との間にアンカー層を備えてもよい。この場合には、バリア層14とバリア層14の下層との密着性がアンカー層によって高められる。また、固体撮像素子10は、バリア層14とバリア層14の上層との間にアンカー層を備えてもよい。この場合には、バリア層とバリア層の上層との密着性をアンカー層によって高められる。アンカー層を形成する材料は、例えば、多官能アクリル樹脂、あるいは、シランカップリング剤などである。
【0218】
・バリア層14の層構造は、単一の化合物からなる単層構造でもよいし、単一の化合物からなる層の積層構造であってもよいし、相互に異なる化合物からなる層の積層構造でもよい。
【0219】
・バリア層14は、赤外光カットフィルター13の表面と赤外光パスフィルター12Pの表面が形成する段差を埋める平坦化層として機能してもよい。
[その他]
・各色用フィルター12R,12G,12Bの厚さは、赤外光パスフィルター12Pと相互に等しい大きさであってもよいし、異なる大きさであってもよい。各色用フィルター12R,12G,12Bの厚さは、例えば、0.5μm以上5μm以下であってよい。
【0220】
・カラーフィルターは、シアン用フィルター、イエロー用フィルター、マゼンタ用フィルターから構成された三色用フィルターでもよい。また、カラーフィルターは、シアン用フィルター、イエロー用フィルター、マゼンタ用フィルター、ブラック用フィルターから構成された四色用フィルターでもよい。また、カラーフィルターは、透明用フィルター、イエロー用フィルター、赤色用フィルター、ブラック用フィルターから構成された四色用フィルターでもよい。
【0221】
・各色用フィルター12R,12G,12Bは、赤外光パスフィルター12Pと互いに等しい厚さを有してもよいし、互いに異なる厚さを有してもよい。各色用フィルター12R,12G,12Bの厚さは、例えば、0.5μm以上5μm以下であってよい。
【0222】
・赤外光カットフィルター13を形成する材料は、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、および、帯電防止剤などの他の機能を兼ね備えるための添加物を含むことが可能である。
・固体撮像素子10は、赤外光カットフィルター13に対して入射面15Sの側に位置する積層構造での酸素透過率が、5.0cc/m2/day/atm以下である構成であってもよい。例えば、積層構造は、平坦化層や密着層などの他の機能層であって、各マイクロレンズと共に、その酸素透過率が5.0cc/m2/day/atm以下であってもよい。
【0223】
・固体撮像素子10は、複数のマイクロレンズに対して光の入射面側にバンドパスフィルターを備えてもよい。バンドパスフィルターは可視光と近赤外光の特定の波長を有する光のみを透過するフィルターであり、赤外光カットフィルター13と類似の機能を備える。すなわち、バンドパスフィルターにより各色用光電変換素子11R,11G,11Bが検出し得る不要な赤外光をカットすることができる。それによって、各色用光電変換素子11R,11G,11Bによる可視光の検出精度、および、赤外光用光電変換素子11Pの検出対象である850nmあるいは940nm帯域の波長を有した近赤外光の検出精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0224】
10…固体撮像素子
10F…固体撮像素子用フィルター
11…光電変換素子
12R…赤色用フィルター
12G…緑色用フィルター
12B…青色用フィルター
12P…赤外光パスフィルター
13…赤外光カットフィルター
13H…貫通孔
14…バリア層
15R…赤色用マイクロレンズ
15G…緑色用マイクロレンズ
15B…青色用マイクロレンズ
15P…赤外光用マイクロレンズ