IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タダノの特許一覧

<>
  • 特許-高所作業車 図1
  • 特許-高所作業車 図2
  • 特許-高所作業車 図3
  • 特許-高所作業車 図4
  • 特許-高所作業車 図5
  • 特許-高所作業車 図6
  • 特許-高所作業車 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】高所作業車
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/06 20060101AFI20240110BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B66F9/06 Y
B66F9/06 B
B66F11/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020027254
(22)【出願日】2020-02-20
(65)【公開番号】P2021130554
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002217
【氏名又は名称】弁理士法人矢野内外国特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 正裕
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-276997(JP,A)
【文献】実開平04-068094(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
B66C 13/00-15/06
B66C 19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮、起伏および旋回可能に構成されたブームと、
前記ブームを移動可能に支持する車両部と、
前記ブームの先端に配置されたバケットと、
を備えた高所作業車であって、
前記車両部に作用するモーメントを検出するコントローラと、
前記車両部に作用するモーメントに抗する逆モーメントを発生させる推力発生手段を備え
前記コントローラは、
前記バケットの高さを検出可能に構成され、
前記バケットの高さが所定の第3閾値以上である場合に前記推力発生手段を起動させる、
ことを特徴とする高所作業車。
【請求項2】
記コントローラは、
前記車両部の最大許容モーメントに対する前記モーメントの比率であるモーメント負荷率を算出し、前記モーメント負荷率が所定の第1閾値以上となる場合に前記推力発生手段を起動させる、請求項1に記載の高所作業車。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記モーメント負荷率が所定の第2閾値未満となる場合に前記推力発生手段を停止させる、請求項2に記載の高所作業車。
【請求項4】
前記推力発生手段は、
回転駆動されて推力を発生するプロペラと、
前記プロペラを回転駆動するモータと、を備える、請求項1~の何れか一項に記載の高所作業車。
【請求項5】
前記推力発生手段は、前記バケットの下端よりも下方に配置される、請求項1~の何れか一項に記載の高所作業車。
【請求項6】
前記推力発生手段は、前記バケットに付設される、請求項1~の何れか一項に記載の高所作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業車の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高所作業を行うための作業車両として、伸縮可能なブームの先端に作業者が搭乗可能なバケットを備えた高所作業車が知られている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
従来の高所作業車は、アウトリガを張り出して、車両を所定位置に固定した状態で、ブームの伸縮動作、起伏動作、旋回動作を組み合わせて、バケットを高所の作業位置に配置することができるように構成されている。このような高所作業車では、バケットに搭乗した作業員が、バケットに設けられた操作具を操作することによって、作業半径(作業可能な範囲)の内側において、所望の作業位置にバケットを移動できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-016476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の高所作業車では、バケットに作用する荷重と、アウトリガの張り出し量、ブームの伸縮長さおよび起伏角度等によって作業半径が定められる。例えば、ある場所に高所作業車を設置して、複数の作業位置を移動して作業するような場合において、全ての作業位置を作業半径内に包含できない場合には、作業の途中で高所作業車を移動させる必要が生じる。幾つかの作業位置が少しだけ作業半径から外れているような場面も多い。このため、一時的に作業半径を増大させることができれば、作業の途中で高所作業車を移動させる手間が減り、作業性が向上されるものと考えられる。
【0006】
本発明は、斯かる現状の課題に鑑みてなされたものであり、一時的に作業半径を増大させることが可能な高所作業車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、本発明に係る高所作業車は、伸縮、起伏および旋回可能に構成されたブームと、前記ブームを移動可能に支持する車両部と、前記ブームの先端に配置されたバケットと、を備えた高所作業車であって、前記車両部に作用するモーメントを検出するコントローラと、前記車両部に作用するモーメントに抗する逆モーメントを発生させる推力発生手段を備え、前記コントローラは、前記バケットの高さを検出可能に構成され、前記バケットの高さが所定の第3閾値以上である場合に前記推力発生手段を起動させるものである。
【0009】
このように構成された高所作業車によれば、一時的に作業半径を増大させることができる。これにより、バケットにより多くの荷物を積載することや、より遠くの作業位置にアプローチすることが可能になる。また、推力発生手段が所定の第3閾値よりも低い位置にある場合には自動的に起動させないようにすることができる。
【0010】
また、本発明に係る高所作業車は、前記コントローラは、前記車両部の最大許容モーメントに対する前記モーメントの比率であるモーメント負荷率を算出し、前記モーメント負荷率が所定の閾値以上となる場合に前記推力発生手段を起動させるものである。
【0011】
このように構成すれば、バケットの積載量の変動や作業位置の変化に応じて、推力発生手段を自動的に起動させることができる。これにより、運転状況に応じて自動的に、作業半径を一時的に増大させることができる。
【0012】
また、本発明に係る高所作業車において、前記コントローラは、前記前記モーメント負荷率が所定の閾値未満となる場合に前記推力発生手段を停止させるものである。
【0013】
このように構成すれば、バケットの積載量の変動や作業位置の変化に応じて、推力発生手段を自動的に起動させた場合において、推力発生手段を安全に停止させることができる。
【0016】
また、本発明に係る高所作業車において、前記推力発生手段は、回転駆動されて推力を発生するプロペラと、前記プロペラを回転駆動するモータと、を備えるものである。
【0017】
このような構成によれば、揚力発生手段を簡易に構成することができる。
【0018】
また、本発明に係る高所作業車において、前記推力発生手段は、前記バケットの下端よりも下方に配置されるものである。
【0019】
このように構成すれば、バケットに搭乗する作業者にダウンウォッシュの影響が及ぶことを抑制できる。
【0020】
また、本発明に係る高所作業車において、前記推力発生手段は、前記バケットに付設されるものである。
【0021】
このように構成すれば、車両部に生じるモーメントに抗する逆モーメントを効率よく発生させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る高所作業車によれば、一時的に作業半径を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る高所作業車の全体構成を示す左側面図。
図2】本発明の一実施形態に係る高所作業車の制御ブロック図。
図3】作業状態の高所作業車を示す左側面図。
図4】推力発生手段をバケットに取り付けた高所作業車を示す左側面図。
図5】推力発生手段をブームに取り付けた高所作業車を示す左側面図。
図6】高所作業車における推力発生手段の運転フロー図。
図7】別実施形態に係る高所作業車(推力発生手段をブームの各段に取り付けた場合)を示す左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[高所作業車の全体構成]
図1に示す如く、本発明の一実施形態に係る高所作業車1は、主に車両部2と作業装置3により構成されている。なお、高所作業車1に対しては、図1に示す矢印のように前後方向および上下方向を規定して、以下の説明を行う。
【0025】
車両部2は、左右一対の前輪4と後輪5を備えている。また、車両部2は、高所作業を行う際に接地させて安定を図るアウトリガ6を備えている。
【0026】
作業装置3は、その後部から前方へ突き出すようにブーム7を備えている。そして、ブーム7の先端部分には、バケット8を備えている。バケット8は、ブーム7に対してパン・チルト・スイング等の動作が可能となっている。また、バケット8は、ブーム7に対して、図示しないレベリング機構を介して支持されており、バケット8の姿勢を水平に保持することができるように構成されている。そしてブーム7は、車両部2によって、所望の作業位置に移動可能に構成されている。
【0027】
[高所作業車の運転制御]
高所作業車1は、図2に示す如く、コントローラ10を備えている。コントローラ10には、図2に示すように、各種操作具51~53が接続されている。また、コントローラ10には、各種バルブ61~63が接続されている。さらに、コントローラ10には、各種センサ81~84が接続されている。
【0028】
図2に示す如く、ブーム7は、アクチュエータである旋回用油圧モータ71によって旋回自在となっている(図1における矢印A参照)。旋回用油圧モータ71は、方向制御弁である旋回用バルブ61によって適宜に稼動される。つまり、旋回用油圧モータ71は、旋回用バルブ61が作動油の流動方向を切り替えることで適宜に稼動される。なお、旋回用バルブ61は、オペレータによる旋回操作具51の操作に基づいて稼動される。また、ブーム7の旋回角度は、旋回用センサ81によって検出される。そのため、コントローラ10は、ブーム7の旋回角度を認識することができる。
【0029】
また、ブーム7は、アクチュエータである伸縮用油圧シリンダ72によって伸縮自在となっている(図1における矢印B参照)。伸縮用油圧シリンダ72は、方向制御弁である伸縮用バルブ62によって適宜に稼動される。つまり、伸縮用油圧シリンダ72は、伸縮用バルブ62が作動油の流動方向を切り替えることで適宜に稼動される。なお、伸縮用バルブ62は、オペレータによる伸縮操作具52の操作に基づいて稼動される。また、ブーム7の伸縮長さは、伸縮用センサ82によって検出される。そのため、コントローラ10は、ブーム7の伸縮長さ(以降、「ブーム長L」(図1参照)とする)を認識することができる。
【0030】
また、ブーム7は、アクチュエータである起伏用油圧シリンダ73によって起伏自在となっている(図1における矢印C参照)。起伏用油圧シリンダ73は、方向制御弁である起伏用バルブ63によって適宜に稼動される。つまり、起伏用油圧シリンダ73は、起伏用バルブ63が作動油の流動方向を切り替えることで適宜に稼動される。なお、起伏用バルブ63は、オペレータによる起伏操作具53の操作に基づいて稼動される。また、ブーム7の起伏角度は、起伏用センサ83によって検出される。そのため、コントローラ10は、ブーム7の起伏角度を認識することができる。
【0031】
さらに、ブーム7には、バケット8に積載されている荷物や作業者等の重量を検出する荷重センサ84が設けられている。荷重センサ84は、コントローラ10に接続されており、荷重センサ84により検出した荷重をコントローラ10に出力するように構成している。
【0032】
そして、コントローラ10は、旋回用センサ81によって検出されるブーム7の旋回角度、伸縮用センサ82によって検出されるブーム長L、起伏用センサ83によって検出されるブーム7の起伏角度、荷重センサ84によって検出される荷重、アウトリガ6の張り出し量を含む高所作業車1の運転情報に基づいて、高所作業車1の車両部である車両部2におけるモーメント負荷率MRを算出する。モーメント負荷率MRは、そのときのアウトリガ6の張り出し状態およびバケット8の位置において許容可能な最大許容モーメントMxに対する、現状の高所作業車1に生じているモーメントMの比率である。コントローラ10は、最大許容モーメントMxおよびモーメントMを算出し、モーメント負荷率MRを算出することができる。
【0033】
即ち、高所作業車1は、車両部2に作用するモーメントMを検出するコントローラ10をさらに備えており、コントローラ10は、車両部2の最大許容モーメントMxに対するモーメントMの比率であるモーメント負荷率MRを算出する。
【0034】
[推力発生手段]
高所作業車1は、推力発生手段20を備えている。推力発生手段20は、高所作業車1に生じるモーメントMを減ずる方向に作用するモーメント(以下、逆モーメントMfと呼ぶ)を発生させるための推力Fを発生させる手段である。推力Fは、バケット8を上向きに推進させるように作用する力である。
【0035】
本実施形態の推力発生手段20は、プロペラ21とモータ22を備えている。推力発生手段20は、高所作業車1に備えられたバッテリー(図示せず)よりモータ22に電力が供給され、プロペラ21をモータ22で回転駆動することによって、推力Fを生じさせるように構成されている。推力発生手段20が自転しようとする力を打ち消し合うように、プロペラ21とモータ22は偶数個を備えていることが望ましい。
【0036】
このように、高所作業車1における推力発生手段20は、回転駆動されて推力Fを発生するプロペラ21と、プロペラ21を回転駆動するモータ22と、を備えている。このように構成した高所作業車1では、揚力発生手段20を簡易に構成することができる。なお、本実施形態では、モータ22で回転駆動されるプロペラ21によって推力Fを生じさせる構成であるが、推力発生手段の構成はこれに限定されるものではない。
【0037】
高所作業車1では、車両部2に対するブーム7の取り付け位置(支点)から推力発生手段20の取り付け位置(力点)までの長さと、力点に作用させる推力Fとの関係により、逆モーメントMfを発生させることができる。高所作業車1では、推力発生手段20によって発生させた推力Fをバケット8に付与することによって、逆モーメントMfを発生させる構成としている。
【0038】
コントローラ10は、車両部2に作用するモーメントMと、推力Fによって車両部2に作用する逆モーメントMfと、をそれぞれ区別して算出することができるように構成されている。
【0039】
[推力発生手段の動作制御]
高所作業車1では、モーメント負荷率MRが所定の第1閾値X1以上となったときに、コントローラ10によって、推力発生手段20を起動させるように構成している。例えば、閾値Xを60%に設定した場合において、コントローラ10は、モーメント負荷率MRが60%以上であることを検出したときに、推力発生手段20を起動させる。
【0040】
即ち、高所作業車1におけるコントローラ10は、算出したモーメント負荷率MRが第1閾値X1以上となる場合に推力発生手段20を起動させる。このような構成とすれば、バケット8の積載量や作業位置の変化に応じて、推力発生手段20を自動的に起動させることができる。これにより、運転状況に応じて自動的に、作業半径を一時的に増大させることができる。
【0041】
なお、高所作業車1では、コントローラ10によってモーメント負荷率MRの変化を監視し、モーメント負荷率MRが増加傾向にあるか、あるいは減少傾向にあるかを検知し、モーメント負荷率MRが増加傾向にあり、かつ、第1閾値X1以上となったときに、推力発生手段20を起動させる構成としてもよい。ここで、モーメント負荷率MRが増加傾向になるときとは、ブーム7の伸張動作、伏せ動作、モーメントMが増大する方向への旋回動作、等が該当する。
【0042】
推力発生手段20が起動すると、推力FによってモーメントMの抑制に寄与する逆モーメントMfが生じ、車両部2に作用するモーメントMが減少され、ひいては、モーメント負荷率MRも減少する。推力発生手段20を起動している状態では、モーメント負荷率MRに若干の余裕が生まれるため、例えば、ブーム長Lをさらに伸ばした位置にバケット8を配置することができ、一時的に作業半径を増大させることが可能になる。
【0043】
また、高所作業車1では、モータ22を定回転で運用するのではなく、モータ22の回転数を制御(例えば、インバータ制御)することによって、推力Fを無段階に調整可能に構成してもよい。このような構成とすれば、バケット8の積載量や位置の変化に応じて、必要な推力Fを発生させつつ、モータ22の消費電力を抑制することが可能になる。
【0044】
また、高所作業車1では、推力発生手段20を起動した後は、コントローラ10によって、モーメント負荷率MRが所定の第2閾値X2未満となったときに、推力発生手段20を停止させることができるように構成している。具体的には、コントローラ10は、推力発生手段20を起動することによって生じている逆モーメントMfを考慮して、逆モーメントMfが無いものと仮定して算出したモーメント負荷率MRが第2閾値X2未満となったときに推力発生手段20を自動的に停止させる構成としている。
【0045】
即ち、高所作業車1におけるコントローラ10は、モーメント負荷率MRが第2閾値X2未満となる場合に推力発生手段20を停止させる構成としている。このような構成では、バケット8の積載量や作業半径の変化に応じて、推力発生手段20を自動的に起動させた場合において、推力発生手段20を安全に停止させることが可能になる。
【0046】
なお、高所作業車1では、コントローラ10によって、モーメント負荷率MRが減少傾向にあり、かつ、第2閾値X2未満となったときに、推力発生手段20を停止させる構成としてもよい。ここで、モーメント負荷率MRが減少傾向になるときとは、ブーム7の縮小動作、起こし動作、モーメントMが減少する方向への旋回動作、等が該当する。
【0047】
[推力発生手段の取り付け位置]
高所作業車1における推力発生手段20は、図3に示すように、ブーム7の先端部に設けることが好ましく、ブーム7の先端部に設けられているバケット8に取り付けることがより好ましい。推力発生手段20をバケット8に取り付けることにより、車両部2に対するブーム7の取り付け位置(支点)から、推力発生手段20の取り付け位置(力点)までの長さをより長く確保することができ、車両部2に作用させる逆モーメントMfをより大きくすることができる。
【0048】
また、高所作業車1では、バケット8の下面でない位置に推力発生手段20を設けてもよい。例えば、図4に示すように、バケット8の前方側における側面に推力発生手段20を付設した場合には、車両部2に対するブーム7の取り付け位置(支点)から推力発生手段20の取り付け位置(力点)までの長さをより長くすることができるため、より大きい逆モーメントMfを確保できる点で有利である。推力発生手段20をバケット8の側面に取り付ける場合には、支持ステー23を介して取り付けることが好ましく、支持ステー23はレベリング機構を備える構成とすることがさらに好ましい。
【0049】
また、バケット8に対する推力発生手段20の取り付け位置は、バケット8の前方側の側面に限らず、左右の側面に設ける構成としてもよい。この場合には、左右のバランスがとれるように、バケット8の左右の側面に一対で推力発生手段20を設けることが好ましい。また、バケット8の左右の側面に推力発生手段20を設ける場合には、側面のできるだけ前方寄りの位置に推力発生手段20を取り付けることがより好ましい。
【0050】
即ち、高所作業車1における推力発生手段20は、バケット8に付設されている。このような構成では、推力発生手段20により発生させた推力Fによって、車両部2に生じるモーメントMに抗する逆モーメントMfを効率よく発生させることが可能になる。
【0051】
また、推力発生手段20は、図5に示すように、ブーム7の先端部に直接取り付けてもよい。推力発生手段20をブーム7に取り付ける場合には、支持ステー23を介して取り付けることが好ましく、支持ステー23はレベリング機構を備える構成とすることがさらに好ましい。
【0052】
また、高所作業車1では、図1に示すように、バケット8よりも下方となる位置に推力発生手段20を設けることが好ましい。このような構成では、バケット8に搭乗している作業者が、推力発生手段20から生じる気流(ダウンウォッシュ)の影響を受けずに作業を行うことができる。なお、推力発生手段20は、図3に示すように、バケット8の下面に直接取り付ける構成としてもよいし、図5に示すように、バケット8の直下に配置されるようにブーム7の先端部に取り付ける構成としてもよい。
【0053】
即ち、高所作業車1における推力発生手段20は、バケット8の下端よりも下方に配置されている。このような構成では、バケット8に搭乗する作業者に推力発生手段20より生じた風によるダウンウォッシュの影響が及ぶことを抑制できる。なお、ここでいうバケット8の「下端」とは、バケット8の底面を構成する部材の下面の位置を意味している。
【0054】
また、高所作業車1では、コントローラ10によって、高所作業車1の運転情報(ブーム7のブーム長Lと起伏角度、アウトリガ6の伸張量等)に基づいて、バケット8の地上からの高さを算出し、その高さHが所定の第3閾値Y以上である場合に、推力発生手段20の起動を許可するように構成している。このような構成では、推力発生手段20が、例えば、バケット8が地上にいる作業員から十分離れた上空に位置している場合にのみ推力発生手段20を起動させることが可能になる。これにより、推力発生手段20のダウンウォッシュによって、地上の砂やほこり等を巻き上げることが抑制されるとともに、推力発生手段20が、地上の作業員や物品等に接触することが抑制される。
【0055】
即ち、高所作業車1におけるコントローラ10は、バケット8の高さを検出可能に構成され、バケット8の高さHが第3閾値Y以上である場合に推力発生手段20を起動させる構成としている。このような構成では、推力発生手段20が低い位置にある場合には自動的に起動させないようにすることが可能になる。
【0056】
また、高所作業車1では、モーメント負荷率MRが第1閾値X1以上であるときに推力発生手段20を起動する構成とすることで、推力発生手段20を常時起動する場合に比べて電力の消費量を抑制することができる。これにより、推力発生手段20の起動用として設けるバッテリーの容量を抑制することができる。なお、高所作業車1では、例えば、推力発生手段20を常時起動することができるスイッチ等の別途設けておいて、状況に応じて、推力発生手段20を常時起動できるように構成してもよい。
【0057】
またさらに、高所作業車1においては、コントローラ10によって、推力発生手段20に電力を供給するバッテリー(図示せず)の容量を監視し、推力発生手段20の運転可能時間を算出している。そして、コントローラ10は、推力発生手段20の運転可能時間が短くなってきたときに警報を発するように構成している。このような構成により、作業半径を一時的に増大させながら作業を行っている状況で警報が発せられたとき、作業員は警報に従って、推力発生手段20が停止しても作業可能な作業位置にバケット8を移動させることができる。
【0058】
[高所作業車における推力発生手段の制御状況]
図6に示すように、高所作業車1の運転が開始されると、コントローラ10によって、バケット8の高さHが第3閾値Y以上であるか否かに基づく判定を行う(STEP-1)。ここで、バケット8の高さHが第3閾値Y以上であれば、コントローラ10は、推力発生手段20が起動可能な状態であると判断し、さらに、モーメント負荷率MRが第1閾値X1以上であるか否かに基づく判定を行う(STEP-2)。
【0059】
一方、(STEP-1)において、バケット8の高さHが第3閾値Y未満であれば、コントローラ10は、推力発生手段20が起動できない状態であると判断する。このときコントローラ10は、推力発生手段20の起動を許可しない。
【0060】
(STEP-2)において、モーメント負荷率MRが第1閾値X1以上であった場合、コントローラ10は、推力発生手段20を起動させる必要があると判断し、推力発生手段20を起動する(STEP-3)。
【0061】
一方、(STEP-2)において、モーメント負荷率MRが第1閾値X1未満であれば、コントローラ10は、推力発生手段20を起動させる必要がないと判断し、推力発生手段20を起動させずに(STEP-1)の判定に戻る。
【0062】
(STEP-3)において、推力発生手段20を起動させたとき、コントローラ10は、モーメント負荷率MRが第2閾値X2未満であるか否かに基づく判定をする(STEP-4)。
【0063】
(STEP-4)において、モーメント負荷率MRが第2閾値X2未満である場合、コントローラ10は、推力発生手段20を起動させる必要がなく、かつ、停止可能であると判断し、推力発生手段20を停止する(STEP-5)。そして、高所作業車1における推力発生手段20の一連の制御動作を終了する。
【0064】
一方、(STEP-4)において、モーメント負荷率MRが第2閾値X2未満でなければ、コントローラ10は、推力発生手段20が停止できない状態であると判断する。このときコントローラ10は、推力発生手段20の停止を許可せず、起動させた状態を継続する。
【0065】
即ち、本実施形態に示した高所作業車1は、伸縮、起伏および旋回可能に構成されたブーム7と、ブーム7を支持する車両部たる車両部2と、ブーム7の先端に配置されたバケット8と、を備えたものであり、車両部2に作用するモーメントMに抗する逆モーメントMfを発生させる推力発生手段20を備えるものである。このように構成することで、高所作業車1における作業半径を一時的に増大させることが可能になる。そして、このような構成の高所作業車1では、バケット8により多くの荷物を積載することや、より遠くの作業位置にアプローチすることが可能になる。さらに、推力発生手段20を起動することで、ブーム7の負荷が軽減されるため、高所作業車1におけるブーム7を軽量化したり、あるいは長尺化したりすることが可能になる。
【0066】
[推力発生手段を備えた高所作業車の別実施形態]
さらに、高所作業車1では、図7に示すように、複数の推力発生手段20をブーム7の各段の先端部に分散させて設ける構成としてもよい。このような構成では、複数の推力発生手段20によって、推力F1、F2を付与し、逆モーメントMf1、Mf2を発生させることができる。複数の推力発生手段20、20を備える構成では、ブーム7の伸縮状態や、バケット8の積載量や位置の変化等に応じて、必要な推力発生手段20を選択して起動することができるため、推力F1による逆モーメントMf1のみを発生させるか、推力F2による逆モーメントMf2のみを発生させるか、あるいは両逆モーメントMf1、Mf2を同時に発生させるか、を選択することが可能になる。このため、複数の推力発生手段20をブーム7に分散させて配置した場合には、各推力発生手段20のON-OFFを切り替えることによって、車両部2に作用させる逆モーメントMfの大きさを容易に調整することが可能になる。
【符号の説明】
【0067】
1 高所作業車
2 車両部
7 ブーム
8 バケット
10 コントローラ
20 推力発生手段
21 プロペラ
22 モータ
MR モーメント負荷率
M モーメント
Mf 逆モーメント
Mx 最大許容モーメント
F 推力
X1 第1閾値
X2 第2閾値
Y 第3閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7