(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】屋根施工システム及び屋根施工方法
(51)【国際特許分類】
E04D 15/04 20060101AFI20240110BHJP
E04G 21/14 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
E04D15/04 E
E04D15/04 A
E04G21/14
(21)【出願番号】P 2020030988
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】光永 有
(72)【発明者】
【氏名】上島 康裕
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3223264(JP,U)
【文献】特開2019-031800(JP,A)
【文献】登録実用新案第3025966(JP,U)
【文献】特開昭63-011744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 15/04
E04G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形機によって鋼板ロールから成形される折板を押し出して建物の屋根を施工する屋根施工システムであって、
前記屋根に配置する折板を押し出す作業エリアにおいて移動可能な複数の構台を備え、
前記複数の構台は、
前記成形機を載置する機械構台と、
前記鋼板ロールを載置する資材搬送構台と、
前記鋼板ロールを前記資材搬送構台から前記機械構台に移し替えるクレーンを載置したクレーン構台とを備えたことを特徴とする屋根施工システム。
【請求項2】
前記折板を配置する第1及び第2の屋根領域の間に設けられ、移動方向に延在する作業エリアにおいて配置された走行レールの上において、前記機械構台、資材搬送構台及びクレーン構台は、移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の屋根施工システム。
【請求項3】
成形機によって鋼板ロールから成形される折板を押し出して建物の屋根を施工する屋根施工方法であって、
前記屋根に配置する折板を押し出せる作業エリアに、前記成形機を載置し前記作業エリアを移動可能な機械構台と、前記鋼板ロールを載置し前記作業エリアを移動可能な資材搬送構台と、クレーンを載置し前記作業エリアを移動可能なクレーン構台とを配置し、
前記クレーンは、前記資材搬送構台によって搬送された鋼板ロールを、前記資材搬送構台から前記機械構台に移し替え、
前記成形機は、前記移し替えられた鋼板ロールを用いて、前記折板を成形して屋根に配置することを特徴とする屋根施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折板屋根を施工する屋根施工システム及び屋根施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等の大空間の建物の屋根として、折板屋根が用いられる(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に記載の改修工法では、既設の折板屋根の上方に仮設構台上で構築した新設屋根を配置した後、既設屋根を解体する。
【0003】
折板屋根は、鋼板ロールを成形機において成形した折板を屋根として並べて形成される。この施工時に、折板(屋根)の端部の近傍に、成形機を配置することがある(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2においては、建物の外側に、移動式の作業架台を設置し、この作業架台の上で移動可能な移動式設置架台の上に成形機を配置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-052512号公報
【文献】特開2019-31800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大面積の屋根に折板を配置する場合、成形機は、折板を形成する鋼板ロールを複数、用いる。特許文献2に示すように、地上より高い位置に成形機を設置した場合には、成形機に、クレーンで地上に載置した鋼板ロールを吊り上げて供給する。この場合、地上の鋼板ロールの載置位置から、成形機までの距離が遠い場合には、クレーンを大きくしたり、クレーンの傍まで成形機を移動させたりする必要があった。成形機を地上の鋼板ロールの傍まで移動させる場合には、鋼板ロールの供給のために、折板を配置する作業を中断する必要があり、結果として、折板を配置する施工時間が長くなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための屋根施工システムは、成形機によって鋼板ロールから成形される折板を押し出して建物の屋根を施工する屋根施工システムであって、前記屋根に配置する折板を押し出す作業エリアにおいて移動可能な複数の構台を備え、前記複数の構台は、前記成形機を載置する機械構台と、前記鋼板ロールを載置する資材搬送構台と、前記鋼板ロールを前記資材搬送構台から前記機械構台に移し替えるクレーンを載置したクレーン構台とを備える。
【0007】
また、上記課題を解決するための屋根施工方法は、成形機によって鋼板ロールから成形される折板を押し出して建物の屋根を施工する屋根施工方法であって、前記屋根に配置する折板を押し出せる作業エリアに、前記成形機を載置し前記作業エリアを移動可能な機械構台と、前記鋼板ロールを載置し前記作業エリアを移動可能な資材搬送構台と、クレーンを載置し前記作業エリアを移動可能なクレーン構台とを配置し、前記クレーンは、前記資材搬送構台によって搬送された鋼板ロールを、前記資材搬送構台から前記機械構台に移し替え、前記成形機は、前記移し替えられた鋼板ロールを用いて、前記折板を成形して屋根に配置する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、施工時間を短くして、折板を屋根に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態において施工される屋根の構造を説明する要部の斜視図。
【
図2】実施形態における屋根施工システムの概略側面図。
【
図3】実施形態における屋根施工システムの概略上面図。
【
図4】実施形態において建物を構成する梁の上に配置した走行レールを説明する斜視図。
【
図5】実施形態において建物を構成する梁の上に配置した走行レールを説明する正面断面図。
【
図12】実施形態におけるクレーン構台の要部の拡大側面図。
【
図14】実施形態におけるクレーン構台の要部の拡大正面図。
【
図18】実施形態における機械構台の要部の拡大正面図。
【
図20】実施形態におけるチェーンブロックと昇降ステージを説明する正面断面図。
【
図21】実施形態における昇降ステージの要部を説明する説明図であって、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は(b)におけるc-c線方向から見た背面図、(d)は落下受梁の盛替開始時の状態、(e)は落下受梁の盛替途中の状態、(f)は落下受梁の盛替終了直前の状態を示す。
【
図22】実施形態における傾斜面における機械構台の側面図。
【
図23】実施形態における傾斜面における機械構台の側面図。
【
図24】実施形態における傾斜面における機械構台の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1~
図24を用いて、屋根施工システム及び屋根施工方法を具体化した一実施形態を説明する。本実施形態では、屋根施工システムを用いて、折板屋根を施工する。なお、同じ構成については同一符号を付し、その詳細な構成の説明は省略する。
【0011】
図1に示すように、建物20の屋根21は、第1の屋根領域及び第2の屋根領域としてののこぎり屋根領域22,23の間(中央)に傾斜屋根領域24を配置して構成される。のこぎり屋根領域22,23には、一方向が高くなった傾斜を有した形状の折板が周期的に繰り返して配置される。更に、のこぎり屋根領域22,23は、周期的に傾斜が繰り返される方向と直交する方向の中央が高く両端が低くなった傾斜を有する。なお、折板は、1つ又は複数の凹凸形状を有する板部材である。各のこぎり屋根領域22,23は、傾斜屋根領域24の長手方向に複数の折板を、端部を重ねて配置した折板屋根である。この場合、配置される折板の高さ(垂直方向の位置)が徐々に高くなる。傾斜屋根領域24は、のこぎり屋根領域22,23の端部間に配置され、のこぎり屋根領域22,23からの雨水等が端部から流れ落ちるように、傾斜面を有する。本実施形態では、傾斜屋根領域24における屋根を施工する前に、この領域に屋根施工システムを配置し、のこぎり屋根領域22,23において折板屋根を施工する。このため、傾斜屋根領域24を屋根施工システムの作業エリアとして用いる。
【0012】
図2に示すように、建物20は、複数の柱25a,25b及び梁22b,24b,24cを有する。柱25aは、傾斜屋根領域24の梁24b,24cを支持し、柱25bはのこぎり屋根領域22の梁22bを支持する。梁22b,24b,24cは、建物20を構成する本設の梁である。
【0013】
屋根施工システム100は、資材搬送構台30、クレーン構台40及び機械構台50を備える。資材搬送構台30、クレーン構台40及び機械構台50は、傾斜屋根領域24の長手方向を移動方向D1として移動可能に配置される。
【0014】
機械構台50は、のこぎり屋根領域22,23に配置する折板を成形する成形機M1を載置する。資材搬送構台30は、成形機M1において使用する鋼板ロール(資材)R1を資材昇降領域26から機械構台50の近傍まで搬送する。この資材搬送構台30には、建物外のクレーン(図示せず)を用いて、資材昇降領域26の地上に配置された鋼板ロールR1が積載される。クレーン構台40は、クレーンCL1を載置する。このクレーンCL1によって、資材搬送構台30に載置された鋼板ロールR1を機械構台50の成形機M1に移し替える。このため、資材搬送構台30、クレーン構台40及び機械構台50は、建物20における資材昇降領域26側から、この順番で配置される。また、クレーン構台40及び機械構台50は、成形機M1及びクレーンCL1の載置面の傾きを調整する調整機構を備える。更に、機械構台50は、成形機M1を載置した載置面を昇降させる昇降機構を備える。
【0015】
図3に示すように、本実施形態では、傾斜屋根領域24には、移動方向D1に5本の梁24bが平行に延在する。これら梁24bのうち中央の3本の梁24bの上には、梁24bに沿って走行レール27が固定される。更に、傾斜屋根領域24には、隣接する梁24bに渡るように、梁24cが梁24bに直交して配置される。
【0016】
図4に示すように、中央の梁24bの上には、走行レール27が着脱可能に載置固定される。この走行レール27は、梁24bが傾斜している場合には、この傾斜に応じて傾斜して配置される。
【0017】
図5に示すように、この走行レール27は、上が開口した断面コ字形状の溝を有する長尺物である。
図4に示すように、走行レール27の両側部の外面には、複数の突出板28が、移動方向D1に間隔をおいて固定されている。この突出板28は、走行レール27の下方まで延在する。突出板28の下端部には、係止板29の外側端部が、ボルト及びナットによって固定される。この係止板29は、梁24bの上フランジの下面に当接する。
【0018】
(資材搬送構台30の構成)
次に、
図3及び
図6~
図8を用いて、資材搬送構台30の構成について説明する。
図3に示すように、資材搬送構台30は、隣接する2本の走行レール27の上に配置され、走行レール27上を移動方向D1に走行する。
【0019】
図6に示すように、資材搬送構台30は、2つの走行レール27の中央線C1に対して線対称の構造を有する。資材搬送構台30は、走行レール27の上を走行する走行部31を4隅に備える。
【0020】
図7に示すように、走行部31は、取付ブロック31aと、この下端部に設けられた回転部31bとを備える。回転部31bは、例えばチルタンク(登録商標)であって、複数の円筒体を平行に繋げて、無限軌道のように回転する重量物移動用エンドレスコロである。
【0021】
図6に示すように、2つの走行部31の上には、移動方向D1に延在する大引33が配置される。この大引33の内側には、チルクライマTC1及びシーブS1が、それぞれ取付部材P1,P2を介して取り付けられる。
【0022】
チルクライマTC1は、往復牽引可能なエンドレス型電動ウインチである。シーブS1は、チルクライマTC1からのワイヤW3の方向を転換させる滑車である。ワイヤW3は、資材搬送構台30が支持される2本の走行レール27の内側に、走行レール27とほぼ平行に配置される。ワイヤW3は、傾斜屋根領域24の延在方向の端部から端部まで延在する。チルクライマTC1がワイヤW3を相対牽引することにより、資材搬送構台30が走行レール27に沿って移動する。
【0023】
各大引33の中央の上面には、2つの火打ブレースB1の一端部が固定される。
更に、
図7に示すように、大引33の端部の上には、補助ピースP3を介して、2つの受梁36が固定される。補助ピースP3は、火打ブレースB1の厚みに対応する高さを有する。
【0024】
図8に示すように、受梁36は、対向する大引33の端部同士を連結する。
図6に示すように、受梁36の下面には、火打ブレースB1の他端部が固定される。火打ブレースB1は、大引33及びこれに直交する受梁36に対して斜交い形状に固定される。
【0025】
受梁36の中央には、2本の取付梁37の端部が固定される。取付梁37は、鋼板ロールR1の幅に応じた間隔で配置される。この取付梁37の間には、固定具39に端部が固定されたロール保持部38が設けられている。ロール保持部38は、柔軟性のある網や布で構成されており、撓んだ状態で鋼板ロールR1を保持する。
【0026】
(クレーン構台40の構成)
次に、
図3及び
図9~
図14を用いて、クレーン構台40の構成について説明する。ここで、
図9~
図11及び
図13は、クレーン構台40の斜視図、上面図、正面図、側面図であり、
図12及び
図14は、クレーン構台40の正面図及び側面図の要部の拡大断面図である。また、
図9及び
図10においては、クレーンCL1を省略している。
【0027】
図3に示すように、クレーン構台40は、隣接する2本の走行レール27の上に配置され、走行レール27上を移動する。クレーン構台40が支持される走行レール27のうちの1本の走行レール27は、資材搬送構台30が配置される1本と同じである。
【0028】
図10に示すように、クレーン構台40は、2つの走行レール27の中央線C2に対して線対称の構造を有する。クレーン構台40は、走行レール27の上を走行する走行部41を四隅に備える。
【0029】
図12に示すように、各走行部41は、資材搬送構台30の走行部31と同様に、取付ブロック41aと、チルタンクで構成される回転部41bとを備える。
図11に示すように、各走行部41の上には、可動横架材43の端部が固定される。可動横架材43は、移動方向D1に延在し、間隔をおいて移動方向D1に2つ並んで配置される。
【0030】
各可動横架材43の中央側の一端部上には、ピン支承PN1が固定されている。また、各可動横架材43の他端部上には、ピン支承PN2が固定されている。ピン支承PN1,PN2は、上沓と下沓を円柱状のピンで連結した構造で、一方向(
図11において紙面に垂直な第2方向D2を中心軸とする回転方向)のみに回転可能な固定支承である。
【0031】
更に、
図13に示すように、各可動横架材43には、対向する可動横架材43側(内側)に突出する突出部43cが形成されている。
図14に示すように、この突出部43cは、後述するシーブS1(及びチルクライマ)が収容可能な空間を区画する長さを有する。突出部43cの内側中央には、拘束部材P4が設けられている。この拘束部材P4は、後述する支柱49のフランジf1を挟み込み、フランジf1を摺動する。これにより、拘束部材P4は、走行レール27の傾斜に応じて、支柱49に対する相対高さを変更する可動横架材43をガイドする。
【0032】
更に、
図10に示すように、可動横架材43には、対向する可動横架材43と連結する水平繋ぎ材K1が固定される。水平繋ぎ材K1は、それぞれK字形状及び反転K字形状を有し、可動横架材43同士をクレーン構台40の中央端部で連結する部材と、この部材の中央から各可動横架材43に向かう2つの斜めの部材とを有する。
【0033】
また、可動横架材43のピン支承PN2の上には、走行部41に整合するように4つのジャッキ44が固定されている。
図11に示すように、各ジャッキ44は、調整機構として機能し、ラム44aが上方に伸縮する油圧ジャッキである。
【0034】
更に、各可動横架材43の前方の端部及び後方の端部には、基準高さからの高さを検出する高さセンサ(図示せず)が設けられている。そして、高さセンサからの計測値を用いて、可動横架材43の端部の高さや可動横架材43の傾斜量を特定することができる。
【0035】
移動方向D1に整列する2つの可動横架材43の上方には、大引45が配置される。この大引45の中央部の下面には、離間した2つの位置で、ピン支承PN1が固定されている。
【0036】
図10に示すように、各大引45の内側には、機械構台50側(前方)にチルクライマTC1が取付部材P1を介して取り付けられ、資材搬送構台30側(後方)にシーブS1が取付部材P2を介して取り付けられる。チルクライマTC1により、傾斜屋根領域24の延在方向の端部から端部まで延在するワイヤW4を相対牽引することにより、クレーン構台40が、走行レール27に沿って移動する。
【0037】
図11に示すように、大引45の各端部の上面には、2つの反力支柱46a,46bが、受梁48を挟むように固定される。反力支柱46a,46bは、ジャッキ44のラム44aの伸縮に応じた反力を受ける。反力支柱46a,46bは、大引45の上に補助ピースP3を介して固定された受梁48と同じ高さを有する。反力支柱46a,46b及び受梁48の上面には、反力梁47が固定される。反力梁47は、大引45よりも移動方向D1に突出し、突出した側の下面には、ジャッキ44のラム44aが固定される。
【0038】
このため、クレーン構台40が走行レール27の傾斜面に位置したときには、傾斜面に沿って傾斜した可動横架材43の上のジャッキ44のラム44aを伸縮させて、反力梁47の端部の高さをほぼ同じにする。この場合、2つの受梁48の端部の高さがほぼ同じになるので、この受梁48の上に載置するクレーンCL1のアウトリガOT1がほぼ水平面上に設置される。
【0039】
図9に示すように、各大引45の中央の上面には、2つの火打ブレースB1の一端部が固定される。
図11に示すように、大引45の端部の上には、補助ピースP3を介して受梁48が固定される。受梁48は、対向する大引45の端部同士を連結する。受梁48の下面には、火打ブレースB1の他端部が固定される。
【0040】
図13に示すように、受梁48の下面には、突出部43cに対応するように各端部から離れた位置に、支柱49が固定されている。支柱49は、H形鋼で構成されている。
図14に示すように、支柱49の外側に位置するフランジf1の一部には、可動横架材43の拘束部材P4が、上下動可能に嵌合する。
【0041】
図13に示すように、支柱49の下端部には、ブレースB2の一端部が回動可能に固定されている。ブレースB2の他端部は、受梁48の中央の下面に、回動可能に固定されている。受梁48の上には、クレーンCL1のアウトリガOT1が固定される。
【0042】
(機械構台50の構成)
次に、
図3及び
図15~
図21を用いて、機械構台50の構成について説明する。
図15は機械構台50の斜視図、
図16は機械構台50の上面図、
図17は機械構台50の正面図、
図18は
図17における要部の拡大図、
図19は機械構台50の側面図である。また、
図20は、機械構台50の昇降機構であるチェーンブロック65の要部を内側から見た要部の正面図、
図21は、機械構台50の載置台である昇降フレーム66を係止する部分の説明図である。
図16及び
図17では、端部から中央線C3までの半分を示しており、反対側に左右対称の部材が設けられている。更に、
図15及び
図16には、機械構台50の構成を示すために、昇降フレーム66の上に載置される足板75を取り除いている。
【0043】
図3に示すように、機械構台50は、5本の梁24bに跨り、3本の走行レール27の上及び両端の梁24bの上を走行して移動する。機械構台50は、中央線C3及び中央線C4に対して線対称の構造を有する。ここで、中央線C3は、真ん中に配置された梁24b(走行レール27)の中央線に位置し、中央線C4は、移動方向D1と直交する第2方向D2の真ん中に位置する。
【0044】
図16に示すように、機械構台50は、複数の走行部51を備える。走行部51は、各走行レール27の上及び梁24bの上にそれぞれ2つずつ配置される。
図18に示すように、走行部51は、クレーン構台40の走行部41と同様に、取付ブロック51aと、チルタンクで構成される回転部51bとを備える。
【0045】
図15に示すように、端部の梁24bを走行する走行部51と、隣接する走行レール27を走行する走行部51との上には、第2方向D2に延在する連結梁52の端部が固定されている。
【0046】
図18に示すように、連結梁52には、端部から距離L1離れた位置及び走行レール27上の位置において、可動横架材53の端部が固定されている。端部の梁24bの近傍には、柱25bが位置し、柱25bの上方には、のこぎり屋根領域22,23の屋根が位置する。このため、のこぎり屋根領域22,23の屋根に、可動横架材53の上に設けられる吊下支柱61等がぶつからないように、走行部51の端部から距離L1以上、離した位置で、可動横架材53を配置する。この位置において、2つの可動横架材53が、移動方向D1に延在して整列して配置される。
【0047】
更に、
図15に示すように、中央の走行レール27上に配置される2つの走行部51の上には、延在する可動横架材53の端部が配置される。
図19に示すように、可動横架材53は、クレーン構台40の可動横架材43と同様に、移動方向D1に延在し、間隔をおいて移動方向D1に2つ並んで配置される。各可動横架材53の中央側の一端部上には、ピン支承PN1が固定されている。また、連結梁52における可動横架材53が接続する部分の上及び中央の走行レール27に位置する可動横架材53の他端部上には、ピン支承PN2が固定されている。ピン支承PN2は、端部の梁24bの上に位置する走行部51の端部から距離L1離れた位置、又は中央の走行レール27上の走行部51の直上に配置される。
【0048】
更に、
図18に示すように、各可動横架材53には、対向する可動横架材53側(内側)に突出する突出部53cが形成されている。この突出部53cは、後述するシーブS1(及びチルクライマ)が収容可能な空間を区画する長さを有する。突出部53cの中央には、後述する支柱59のフランジf1を挟み込み摺動する拘束部材P4が設けられている。これにより、拘束部材P4は、梁24b及び走行レール27の傾斜に応じて、受梁58に固定された支柱59に対する相対高さを変更する可動横架材53をガイドする。
【0049】
更に、
図16に示すように、可動横架材53には、クレーン構台40の可動横架材43と同様に、隣接する可動横架材53と連結する水平繋ぎ材K1が固定される。
また、各ピン支承PN2の上には、ジャッキ54が固定されている。
図19に示すように、各ジャッキ54は、ジャッキ44と同様に、調整機構として機能し、ラム54aが上方に伸縮する油圧ジャッキである。
【0050】
更に、各可動横架材53の前方の端部及び後方の端部には、基準高さからの高さを検出する高さセンサ(図示せず)が設けられている。そして、高さセンサからの計測値を用いて、可動横架材53の端部の高さや可動横架材53の傾斜量を特定することができる。
【0051】
移動方向D1に整列する2つの可動横架材53の上方には、大引55が配置される。この大引55の中央部の下面には、離間した2つの位置で、ピン支承PN1が固定されている。
【0052】
更に、
図16に示すように、連結梁52に対応する大引55の内側には、前方にチルクライマTC1が取付部材P1を介して取り付けられ、後方(クレーン構台40側)にシーブS1が取付部材P2を介して取り付けられる。チルクライマTC1により、傾斜屋根領域24の延在方向の端部から端部まで延在するワイヤW5を相対牽引することにより、機械構台50が、梁24b及び走行レール27に沿って移動する。
【0053】
図3に示すように、連結梁52は、資材搬送構台30及びクレーン構台40よりものこぎり屋根領域22,23側に位置している。このため、ワイヤW5は、ワイヤW3,W4と異なる位置に配置される。
【0054】
図19に示すように、大引55の各端部の上面には、ジャッキ54のラム54aの伸縮に基づく反力を受ける反力支柱56が固定される。反力支柱56は、大引55に補助ピースP3を介して固定された受梁58の高さに対応した高さを有する。反力支柱56の上面には、反力梁57が固定される。反力梁57は、大引55よりも移動方向D1に突出し、突出した側の下面は、ジャッキ54のラム54aが固定される。
【0055】
このため、機械構台50が梁24b及び走行レール27の傾斜面に位置したときには、ジャッキ54のラム54aが伸縮して、反力梁57の端部の高さをほぼ同じにする。これにより、2つの受梁58の端部の高さ(基準面の高さ)がほぼ同じになるので、この受梁58の上に載置する後述の複数の吊下支柱61がほぼ水平面上に設置される。
【0056】
各大引55の中央の上面には、2つの火打ブレースB1の一端部が固定される。大引55の端部の上には、補助ピースP3を介して受梁58が固定される。受梁58は、対向する大引55の端部同士を連結する。受梁58の下面には、火打ブレースB1の他端部が固定される。
【0057】
図18に示すように、受梁58の下面には、突出部53cに対応するように各端部から離れた位置に、H形鋼で構成された支柱59が固定されている。支柱59のフランジf1の一部には、可動横架材53の拘束部材P4が、上下動可能に嵌合する。
【0058】
図17に示すように、支柱59の下端部には、ブレースB2の一端部が回動可能に固定されている。ブレースB2の他端部は、受梁58の中央の下面に、回動可能に固定されている。
一方、
図15に示すように受梁58の上には、各反力梁57に接触する位置に、複数の吊下支柱61が設けられている。吊下支柱61は、H形鋼で構成される。
【0059】
図21(c)に示すように、各吊下支柱61には、内側のフランジにおいて、2列に並んだ複数の孔61aが形成されている。孔61aは、吊下支柱61の端部から所定間隔(例えば100mm)毎に形成される。
【0060】
図17に示すように、第2方向D2に隣接する吊下支柱61の間には、X型となるようにブレース62が配置される。このブレース62は、一方の吊下支柱61の上端部と、隣接する他方の吊下支柱61の下端部とを連結する。
【0061】
図15に示すように、吊下支柱61の上端部には、移動方向D1の外側及び内側に、補助ピースP6,P7が設けられている。更に、吊下支柱61の上面及び補助ピースP6,P7の上面には、吊下梁63が固定される。吊下梁63は、移動方向D1に並んだ吊下支柱61同士を連結する。
【0062】
外側の補助ピースP6の下面には、水平繋ぎ64が固定される。水平繋ぎ64は、第2方向D2に並んだ吊下支柱61を連結する。
図19に示すように、内側の補助ピースP7には、チェーンブロック65が吊り下げられる。チェーンブロック65は、昇降機構として機能し、載置台としての昇降フレーム66を吊るす。
【0063】
具体的には、
図20に示すように、昇降フレーム66の上面に設けた係合部66aに吊り下げたシャックル67に、チェーンブロック65の下フックを引っ掛ける。そして、チェーンブロック65のチェーン長さを変更することにより、昇降フレーム66を昇降させる。
【0064】
昇降フレーム66には、離間して、複数の小梁68の端部が固定されている。各小梁68は、2つの昇降フレーム66に架け渡される。昇降フレーム66の下面には、補助ピースP8が設けられている。
【0065】
図21(a),(b)は、吊下支柱61及び昇降フレーム66の周囲の構成を示した上面図、側面図である。また、
図21(c)は、
図21(b)におけるc-c線方向から見た断面図である。なお、
図21(d)~(f)は、落下受梁71の盛替え時の移動を説明する説明図である。
【0066】
図21(a),(b)に示すように、小梁68は、吊下支柱61の両側面に位置する。更に、小梁68の上面には、L字形状の落下防止部材70が固定される。この落下防止部材70は、昇降フレーム66にも固定される。落下防止部材70の吊下支柱61側の端部は、吊下支柱61を挟むように配置される。
【0067】
そして、
図21(c)に示すように、落下受梁71が、吊下支柱61に、孔61aに貫通するボルトによって固定される。落下受梁71の上面に落下防止部材70が当接することにより、落下防止部材70は固定される。落下受梁71には、固定用ボルト孔71aと盛替用ボルト孔71bとが2つずつ設けられている。2つの固定用ボルト孔71aは、吊下支柱61の2つの孔61aに対応した位置に設けられ、落下防止部材70を水平状態で係止する場合に用いられる。盛替用ボルト孔71bは、1つの孔61aと固定用ボルト孔71aとをボルト留めした状態で、落下受梁71を回転させたときに1段上の孔61a、又は1段下の孔61aに整合する位置に設けられている。
【0068】
図15に示すように、2つの昇降フレーム66の間には、小梁68と平行に、離散した複数の小梁73が配置される。更に、2つの昇降フレーム66の中央には、昇降フレーム66と平行に、根太74が設けられている。この根太74は小梁68,73の上に固定される。
【0069】
図19に示すように、根太74及び昇降フレーム66の上には、載置面としての足板75が設けられる。そして、この足板75の上に、成形機M1が載置される。
また、機械構台50の前方側には、足場60が設けられ、吊下支柱61に足場60の布板60aが固定される。この足場60には、制御装置(図示せず)が設けられている。制御装置は、操作部から、機械構台50の移動方向及び移動量を含む移動指示や昇降量を含む昇降指示を取得し、機械構台50のチルクライマTC1、走行部51の回転部51b、ジャッキ54、チェーンブロック65を制御する。制御装置は、移動機構を構成するチルクライマTC1及び回転部51bを制御して移動方向及び移動量を制御し、移動した位置の梁24bの傾斜に応じて足板75(載置面)が水平となるようにジャッキ54を制御する。更に、制御装置は、チェーンブロック65の下フックまでのチェーンの長さを変更することにより、昇降フレーム66及び足板75(載置面)の高さを変更する。
【0070】
(屋根施工方法)
次に、上述した構成の屋根施工システム100を用いて、のこぎり屋根領域22,23に折板を配置する屋根施工方法について説明する。ここでは、
図2に示す手前側ののこぎり屋根領域23、奥側ののこぎり屋根領域22の順番で折板を配置する。
【0071】
まず、
図2に示すように、建物20は、傾斜屋根領域24の屋根を施工する前の梁24bの上に、走行レール27を配置する。
ここでは、
図4に示すように、梁24cの間に収まるように走行レール27を配置し、突出板28の下端部に、梁24bの上フランジの下面に当接させた係止板29の端部を固定する。そして、梁24b及び走行レール27の上に、各構台(30,40,50)を配置する。
【0072】
次に、
図3に示すように、のこぎり屋根領域23における折板の配置位置に成形機M1を対応させるように、制御装置に移動指示を入力し、機械構台50を移動させる。そして、成形機M1を、配置する折板の高さに対応する高さとするために、昇降指示を制御装置に入力し、落下受梁71を取り外す。次に、チェーンブロック65のチェーン長さを変更して、昇降フレーム66を昇降させる。この場合、落下防止部材70が吊下支柱61に沿って移動することにより、昇降フレーム66がガイドされる。所望の高さに昇降した場合には、落下受梁71を落下防止部材70の下に配置して、落下防止部材70を介して昇降フレーム66を固定する。
【0073】
例えば、
図21(d)に示すように、昇降フレーム66を上昇させる場合には、昇降フレーム66をチェーンブロック65で所望の高さまで吊上げた後、落下受梁71の一方の固定用ボルト孔71aからボルトを取り外す。そして、ボルトにより固定されている固定用ボルト孔71aを支点として、二点鎖線で示すように、落下受梁71を回転させる。更に、ボルトを取り外した固定用ボルト孔71aに隣接する盛替用ボルト孔71bを、1段上の吊下支柱61の孔61aと係合させてボルト締めを行なう。
【0074】
次に、
図21(e)に示すように、もう一方の固定用ボルト孔71aからボルトを取り外し、二点鎖線で示すように、落下受梁71を回転させて、2段上の吊下支柱61の孔61aと係合させてボルト締めを行なう。
【0075】
そして、
図21(f)に示すように、ボルト締めしていた盛替用ボルト孔71bのボルトを取り外す。そして、落下受梁71を回転させて、二点鎖線で示すように水平状態にして、盛替用ボルト孔71bに隣接する固定用ボルト孔71aを、1段上の孔61aに固定する。以上により、吊下支柱61に形成された孔61aを1つ飛ばした間隔(200mm間隔)で、昇降フレーム66を固定することができる。そして、上述した作業を繰り返すことにより、任意の高さまで落下受梁71を上昇させる。
【0076】
折板を配置する位置及び高さについての調整を完了した場合、成形機M1を稼働させて、鋼板ロールR1を折板形状に成形して、のこぎり屋根領域23に配置する。
ここで、本実施形態の機械構台50が走行する走行レール27及び梁24bは、移動方向D1において、一部が傾斜している。
図22に示すように、梁24bの傾斜面に、機械構台50が位置する場合には、制御装置が、高さセンサからの計測値を用いて、各可動横架材53における前後の高さ及び傾斜を特定する。そして、制御装置は、傾斜面の低い側のジャッキ54のラム54aを伸長させ、傾斜面の高い側のジャッキ54のラム54aを縮小させて、ラム54aが固定された反力梁57の高さを同じにする。この場合、可動横架材53のピン支承PN1の下沓が大引55に対して回動し、大引55を水平状態に維持する。更に、可動横架材53の拘束部材P4が、支柱59のフランジf1に沿って上下動して、大引55の昇降をガイドする。そして、大引55に載置された受梁58の上に設置された複数の吊下支柱61は水平面に立設され、吊下支柱61に固定された補助ピースP7のチェーンブロック65の同じチェーン長さで吊り下げられた昇降フレーム66の足板75(載置面)が水平状態に維持される。
【0077】
図23は、機械構台50が、移動方向D1において、中央が低くなり、前後が中央よりも高くなる傾斜面に至った場合を示している。また、
図24は、機械構台50が、移動方向D1において、中央が高くなり、前後が中央よりも低くなる傾斜面に至った場合を示している。いずれの場合においても、制御装置が、傾斜に応じてジャッキ54のラム54aを伸縮することにより、大引55及び受梁58が水平状態に維持され、成形機M1が載置された昇降フレーム66の足板75(載置面)が水平になる。
【0078】
そして、特定した機械構台50の位置及び高さにおいて、成形機M1は、鋼板ロールR1を用いて折板を成形して押し出し、この折板をのこぎり屋根領域23に配置する。
その後、のこぎり屋根領域23の傾斜に応じて、機械構台50の成形機M1の位置と、折板を配置する位置とのずれが大きくなった場合には、機械構台50の移動及び高さを変更する。具体的には、成形機M1を停止し、配置する折板の位置に機械構台50を移動させ、折板の配置高さに昇降フレーム66の高さを調整する。次に、再び成形機M1を稼働して、鋼板ロールR1から成形した折板を、のこぎり屋根領域23に配置する。この処理を繰り返す。
【0079】
機械構台50の鋼板ロールR1を使い切った場合には、資材昇降領域26において鋼板ロールR1を積み上げた資材搬送構台30を、チルクライマTC1を駆動して、機械構台50の近傍まで移動させる。次に、資材搬送構台30と機械構台50との間に配置されたクレーン構台40のクレーンCL1を稼働させて、資材搬送構台30の鋼板ロールR1を、機械構台50に移し替える。
【0080】
ここで、クレーン構台40が、走行レール27の傾斜面に位置している場合には、クレーン構台40におけるすべての反力梁47の下面の高さが同じになるように、傾斜面の高さに応じてジャッキ44のラム44aを伸縮させる。ここで、ラム44aの伸縮に応じて、可動横架材43のピン支承PN1の下沓が大引45に対して回動し、可動横架材43の拘束部材P4が、支柱49のフランジf1に沿って上下動して、大引45の昇降をガイドする。そして、大引45に載置された受梁48の上に設置されたアウトリガOT1は水平面に立設され、クレーンCL1が水平に維持される。
【0081】
そして、機械構台50は、移し替えられた鋼板ロールR1及び成形機M1を用いて形成した折板を、のこぎり屋根領域23に順次、配置する。
また、鋼板ロールR1を移し替えて空になった資材搬送構台30を、資材昇降領域26の近傍まで移動させる。そして、資材昇降領域26の地上の鋼板ロールR1を、新たに資材搬送構台30に積み込む。以上のことを繰り返す。
【0082】
その後、のこぎり屋根領域23において折板の配置を終了した後には、成形機M1を反転させて、のこぎり屋根領域22に向ける。そして、上述したのこぎり屋根領域23における折板の配置と同様に、のこぎり屋根領域22に対して、折板を配置する。
【0083】
傾斜屋根領域24の両側ののこぎり屋根領域22,23に折板の配置を完了した後、傾斜屋根領域24から屋根施工システム100及び走行レール27を撤去して、傾斜屋根領域24に屋根を施工する。
【0084】
(作用)
折板を形成する鋼板ロールR1を、資材搬送構台30が、折板を成形する成形機M1を載置した機械構台50の近傍まで搬送する。これにより、鋼板ロールR1を積載する資材昇降領域26から遠い位置にある場合であっても、機械構台50を、鋼板ロールR1を積み込むために移動させる必要がない。従って、折板を屋根に効率的に配置することができる。
【0085】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態においては、屋根施工システム100は、資材搬送構台30及び機械構台50を備える。資材搬送構台30は、積載した鋼板ロールR1を機械構台50の近傍まで搬送し、機械構台50に移し替える。機械構台50の成形機M1は、供給された鋼板ロールR1を用いて折板を成形して、のこぎり屋根領域23に配置する。これにより、クレーンでは届かない位置に機械構台50がある場合に、機械構台50より移動が容易な資材搬送構台30を移動させて、鋼板ロールR1を、機械構台50に供給する。従って、成形機M1に鋼板ロールR1を効率的に供給して、のこぎり屋根領域23に折板を配置することができる。また、機械構台50の成形機M1において折板を成形している場合に、資材搬送構台30が、資材昇降領域26まで鋼板ロールR1を搬送するので、成形機M1において鋼板ロールR1の補充を、効率的に行なうことができる。
【0086】
(2)本実施形態では、クレーンCL1を載置するクレーン構台40を備える。これにより、クレーンCL1を用いて、資材搬送構台30で搬送された鋼板ロールR1を機械構台50に移し替えることができる。
【0087】
(3)本実施形態では、資材搬送構台30と機械構台50との間に、クレーンCL1を載置するクレーン構台40を配置した。これにより、クレーンCL1は、機械構台50及び資材搬送構台30に隣接するので、鋼板ロールR1の移し替えを短い動作範囲で行なうことができ、クレーンCL1を小さくすることができる。
【0088】
(4)本実施形態では、資材搬送構台30、クレーン構台40及び機械構台50は、建物20の傾斜屋根領域24の梁24bの上を走行する。これにより、建物20の上に各構台(30,40,50)を配置するので、建物20の周囲のスペースが小さい場合にも、折板を屋根に効率的に配置することができる。
【0089】
(5)本実施形態では、資材搬送構台30、クレーン構台40及び機械構台50は、建物20の梁24bの上を走行する。これにより、資材搬送構台30、クレーン構台40及び機械構台50の荷重を、建物20の梁24bで支持することができる。
【0090】
(6)本実施形態では、中央の梁24bの上には、両側部を有する走行レール27を固定した。これにより、資材搬送構台30、クレーン構台40及び機械構台50は、走行レール27の両側部によってガイドされながら移動することができる。
【0091】
(7)本実施形態では、走行レール27は、下方に延在する突出板28と、これに端部が固定され梁24bの上フランジの下面に当接する係止板29とを用いて、梁24bに固定される。これにより、固定のために梁24bに孔開け等の加工を行なうことなく、走行レール27の固定及び除去を効率的に行なうことができる。
【0092】
(8)本実施形態では、クレーン構台40及び機械構台50は、調整機構としてのジャッキ44,54を備える。これにより、傾斜面であっても、成形機M1やクレーンCL1を、水平状態に維持することができる。
【0093】
(9)本実施形態では、クレーン構台40及び機械構台50は、大引45,55の中央においてピンで連結し、移動方向D1に並んだ2つの可動横架材43,53を備える。これにより、中央が低く前後が中央より高くなる傾斜面に至った場合や、中央が高く前後が中央より低くなる傾斜面に至った場合においても、大引45,55及び受梁48,58を水平状態に維持することができる。
【0094】
(10)本実施形態では、機械構台50の支柱59のフランジf1には、可動横架材53の拘束部材P4が、上下方向に摺動する。これにより、ジャッキ54のラム54aの伸縮により可動横架材53に対する支柱59の相対高さを変更する場合に、支柱59の昇降をガイドするので、高さ調整を円滑に行なうことができる。
【0095】
(11)本実施形態では、資材搬送構台30及びクレーン構台40の内側に、チルクライマTC1に係合したワイヤW3,W4を配置する。資材搬送構台30及びクレーン構台40が移動する領域より外側に、機械構台50のワイヤW5を配置する。これにより、ワイヤW3~W5を異なる領域に配置させて、円滑に各構台(30,40,50)を移動させることができる。
【0096】
(12)本実施形態では、機械構台50の連結梁52において、走行部51の端部から、距離L1以上離れた位置に可動横架材53、大引55及び吊下支柱61等を配置する。これにより、機械構台50を、柱25bの上方の屋根に接触させることなく、円滑に移動させることができる。
【0097】
(13)本実施形態では、機械構台50は、吊下支柱61に吊り下げたチェーンブロック65のチェーン長さを変更することにより、昇降フレーム66の上で、成形機M1を載置する載置面としての足板75を昇降させる。これにより、のこぎり屋根領域22,23において、折板を配置する高さが変わる場合においても、配置位置に応じて成形機M1の高さを変更することができる。従って、成形機M1から押し出された折板を、円滑に配置することができる。
【0098】
(14)本実施形態では、昇降フレーム66には、吊下支柱61を挟む落下防止部材70が固定される。これにより、昇降フレーム66を昇降させる場合には、落下防止部材70が吊下支柱61に沿って移動するため、円滑に昇降フレーム66を昇降させることができる。
【0099】
(15)本実施形態では、昇降フレーム66に固定された落下防止部材70は、落下受梁71の上面に当接する。これにより、昇降フレーム66の高さを固定することができる。
【0100】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、資材搬送構台30と機械構台50との間に、クレーン構台40を配置した。クレーン構台40の位置は、資材搬送構台30と機械構台50との間に限られない。例えば、資材搬送構台30とクレーン構台40とが異なる梁に取り付けられた場合には、資材搬送構台30をクレーン構台40が追い抜かしてもよい。
【0101】
・上記実施形態では、資材搬送構台30、クレーン構台40及び機械構台50が移動する作業エリアは、建物20の中央(間)の傾斜屋根領域24とした。各構台(30,40,50)が移動する作業エリアは、建物20の中央に限られず、両側の折板を配置する領域があればよい。また、施工する屋根において折板を配置する領域が作業エリアに対して片方にのみの場合であってもよい。この場合、作業エリアの反対側が、他の高い建築物等が配置されている場合等、細長い作業エリアにおいて、折板を効率的に配置することができる。
【0102】
・上記実施形態において、各構台(30,40,50)の構成は、上述した構成に限定されない。例えば、資材搬送構台30を複数の鋼板ロールR1を積み込める構成とし、成形機M1が鋼板ロールR1を使い切る度に、資材搬送構台30から機械構台50に、鋼板ロールR1を1つずつ供給してもよい。
【0103】
・上記実施形態においては、資材搬送構台30、クレーン構台40及び機械構台50は、傾斜を有する梁24bに沿って移動する。各構台(30,40,50)は、傾斜を有する作業エリアの移動に限定されない。例えば、傾斜を有しない仮設の梁の上において各構台(30,40,50)を移動可能に配置してもよい。
【0104】
・上記実施形態においては、機械構台50が走行する走行レール27を、傾斜部がある梁24bの上に設け、この傾斜部に対応して傾斜させた。機械構台50が移動可能に配置される梁は、傾斜部を有する梁に限られず、傾斜していない平坦な梁であってもよい。例えば、同じ高さで折板を配置して屋根を施工する場合、建物の端部に配置された平坦な本設梁の上を移動する機械構台としてもよい。
【0105】
・上記実施形態においては、機械構台50は、ジャッキ54を用いて、成形機M1の載置面を水平に維持する調整機構を有する。機械構台50の調整機構は、載置面の傾きを調整する調整機構であれば、載置面を水平に調整する機構に限定されない。例えば、高さセンサに応じて走行部51の取付ブロックを昇降する構成や昇降機構であるチェーンブロック等を用いて載置面の傾きを調整する調整機構としてもよい。また、屋根に配置する折板の傾きに応じて成形機を傾けて配置する場合には、成形機が傾けた状態を維持するように調整機構を用いて調整してもよい。具体的には、重量がある折板を配置する場合には、配置する折板の傾きに対応した傾斜面を維持するように載置面の傾きを調整する。この場合、制御装置に、載置面の傾斜を記憶させて、この傾斜となるように調整装置を調整する。
【0106】
・上記実施形態においては、各可動横架材43,53の前方の端部及び後方の端部に高さセンサを設け、この高さセンサからの計測値に基づいて載置面の傾きを調整した。調整機構は、センサからの計測値を用いて、制御装置からの指示に応じて、載置面の傾きを調整する構成に限られない。例えば、大引45,55や受梁48,58の端部の高さ等を、作業員が手動で計測し、計測した値に基づいて、ジャッキ44,54のラム44a,54aの伸縮を調整することにより、大引45,55や受梁48,58の高さを調整して、載置面の傾きを調整してもよい。
【0107】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記機械構台、前記クレーン構台及び資材搬送構台は、前記作業エリアにおいて移動方向に延在し傾斜した複数の梁の上に移動可能に載置され、前記機械構台及び前記クレーン構台が、前記梁の傾斜部に位置したときに、載置面の傾きを調整する調整機構を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の屋根施工システム。
【0108】
(b)前記水平調整機構は、移動方向の中央が前後よりも高く又は前記中央が前後よりも低くなっている場合においても前記載置面の傾きを調整可能であることを特徴とする前記(a)に記載の屋根施工システム。
【0109】
(c)前記資材搬送構台及び前記クレーン構台は、それぞれ異なる隣接されたレール間に配置されるワイヤを用いて移動可能であることを特徴とする前記(a)、(b)、請求項1又は2に記載の屋根施工システム。
【符号の説明】
【0110】
B1…火打ブレース、B2,62…ブレース、C1,C2,C3,C4…中央線、CL1…クレーン、D1…移動方向、D2…第2方向、f1…フランジ、K1…水平繋ぎ材、M1…成形機、OT1…アウトリガ、P1,P2…取付部材、P3,P6,P7,P8…補助ピース、P4…拘束部材、PN1,PN2…ピン支承、R1…鋼板ロール、S1…シーブ、TC1…移動機構を構成するチルクライマ、W3,W4,W5…ワイヤ、20…建物、21…屋根、22,23…のこぎり屋根領域、22b,24b,24c…梁、24…傾斜屋根領域、25a,25b…柱、26…資材昇降領域、27…走行レール、28…突出板、29…係止板、30…資材搬送構台、31,41,51,81…走行部、31a,41a,51a…取付ブロック、31b,41b,51b…移動機構を構成する回転部、33,45,55…大引、36,48,58…受梁、37…取付梁、38…ロール保持部、39…固定具、40…クレーン構台、43,53…可動横架材、43c,53c…突出部、44,54…調整機構としてのジャッキ、44a,54a…ラム、46a,46b,56…反力支柱、47,57…反力梁、49,59…支柱、50…機械構台、52…連結梁、60…足場、60a…布板、61…吊下支柱、61a…孔、63…吊下梁、64…水平繋ぎ、65…昇降機構としてのチェーンブロック、66…載置台としての昇降フレーム、66a…係合部、67…シャックル、68,73…小梁、70…落下防止部材、71…落下受梁、71a…固定用ボルト孔、71b…盛替用ボルト孔、74…根太、75…載置面としての足板、100…屋根施工システム。