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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】筐体
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/02 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
H05K5/02 Q
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020032703
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021136368
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】304020498
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】東 憲一
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-072420(JP,U)
【文献】実公昭43-009171(JP,Y1)
【文献】実開昭52-065758(JP,U)
【文献】実開平02-062777(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ挿通用の貫通孔を有する第1のケースと、
雄ねじ部と頭部との間に前記雄ねじ部より細い軸部を有し、前記貫通孔に挿通されて前記第1のケースに保持された脱落防止ねじと、
前記第1のケースに組み合わせられる第2のケースと、
前記第2のケースに設けられ、前記脱落防止ねじが螺着される雌ねじ部とを備えた筐体であって、
前記第1のケースの内面であって前記貫通孔が開口する部分に、前記第1のケースの内側に突出する係合リブが設けられ、
前記係合リブは、前記脱落防止ねじが前記第1のケースから引き抜かれる方向に移動することによって前記脱落防止ねじの前記雄ねじ部と当接するように構成されているとともに、前記貫通孔の孔壁面に接続された傾斜面を有し、
前記傾斜面は、前記第1のケースの内側に向かうにしたがって次第に前記貫通孔の径方向外側に向かうように傾斜し、
前記脱落防止ねじの前記雄ねじ部が前記係合リブに当接した状態で前記脱落防止ねじが緩む方向に回されることよって、前記雄ねじ部が前記係合リブに食い込むことを特徴とする筐体。
【請求項2】
請求項1記載の筐体において、
前記係合リブは、前記貫通孔を囲む複数の位置にそれぞれ設けられていることを特徴とする筐体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱落防止ねじによって第1のケースと第2のケースとが結合された筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の筐体としては、例えば特許文献1に記載されているように、アッパケースとロアケースを備えたものがある。特許文献1に開示されているアッパケースとロアケースは、開口どうしが向かい合うように重ねられ、複数の締結用のねじによって締結されている。この種の筐体においては、締結用のねじの紛失を防ぐために、ねじを緩めたとしてもねじがケースから脱落することがないような脱落防止ねじを使用しているものもある。
【0003】
このような筐体においては、内部の電池を交換したり、メンテナンスを行うために、締め付けられているねじを緩めてケースの中を開けることがある。アッパケースがロアケースに上方からねじ止めされている筐体の場合、筐体を開くためには、全てのねじのねじ部がロアケースの雌ねじ部から外れている必要がある。通常は、複数のねじを一つずつ緩め、全てのねじを緩め終わった後にアッパケースをロアケースから外す。
【0004】
筐体を開くために複数のねじを一つずつ緩めるときには、先に緩めたねじが自重で雌ねじに載り、振動で雌ねじに入り込んで雄ねじの山と雌ねじの山とが係合するようになることがある。このような場合は、全てのねじを緩めたにもかかわらず、アッパケースをロアケースから外すことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-230998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ねじを緩めた後にこのねじが雌ねじに係合してしまった場合は、作業者がこのねじを再度ドライバーで緩めたり、指でつまんで引っ張って係合状態を解消しなければならない。ねじの本数が多い場合や、ねじを緩めるために作業者に無理な姿勢を強いるような場合は、このようなねじの係合状態を解消する作業が煩雑な作業になる。
【0007】
本発明の目的は、ケースどうしを結合させるねじを緩めた状態で保持し、このねじが雌ねじに係合することを防ぐことが可能な筐体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明に係る筐体は、ねじ挿通用の貫通孔を有する第1のケースと、前記貫通孔に挿通されて前記第1のケースに保持された脱落防止ねじと、前記第1のケースに組み合わせられる第2のケースと、前記第2のケースに設けられ、前記脱落防止ねじが螺着される雌ねじ部とを備えた筐体であって、前記第1のケースの内面であって前記貫通孔が開口する部分に、前記第1のケースの内側に突出する係合リブが設けられ、前記係合リブは、前記脱落防止ねじが第1のケースから引き抜かれる方向に移動することによって前記脱落防止ねじの雄ねじ部と当接するように構成され、前記脱落防止ねじの雄ねじ部が前記係合リブに当接した状態で前記脱落防止ねじが緩む方向に回されることよって、前記雄ねじ部が前記係合リブに食い込むものである。
【0009】
本発明は、前記筐体において、前記係合リブは、前記貫通孔の孔壁面に接続された傾斜面を有し、前記傾斜面は、前記第1のケースの内側に向かうにしたがって次第に前記貫通孔の径方向外側に向かうように傾斜していてもよい。
【0010】
本発明は、前記筐体において、係合リブは、前記貫通孔を囲む複数の位置にそれぞれ設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、脱落防止ねじの雄ねじ部が係合リブに食い込んだ状態で脱落防止ねじが第1のケースに保持される。したがって、ケースどうしを結合させるねじを緩めた状態で保持し、このねじが雌ねじに係合することを防ぐことが可能な筐体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明に係る筐体の分解斜視図である。
図2図2は、締結状態における要部の断面図である。
図3図3は、脱落防止ねじが緩められた状態における要部の断面図である。
図4図4は、脱落防止ねじが保持されている状態における要部の断面図である。
図5図5は、雄ねじ部が係合リブに食い込んでいる状態を示す断面図である。
図6図6は、第1のケースの内面の一部を拡大して示す平面図である。
図7図7は、第1のケースの一部を破断して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る筐体の一実施の形態を図1図7を参照して詳細に説明する。図1に示す筐体1は、図1において上側に位置する第1のケース2と、この第1のケース2に重ねて組み合わせられる第2のケース3とを備えている。この実施の形態による第1のケース2と第2のケース3は、それぞれ有底角筒状に形成されており、図2に示すように、開口部を互いに対向させた状態で後述する脱落防止ねじ4によって結合されている。
【0014】
第1のケース2は、図1に示すように、4箇所の角部にそれぞれねじ挿通用の貫通孔5を有している。これらの貫通孔5には、それぞれ脱落防止ねじ4が通される。貫通孔5は、図7に示すように、第1のケース2の内面2aに突設された円筒状のボス6の内部に開口している。ボス6の外周部には、図6に示すように、4枚の補強用リブ7が設けられている。図2図7の破断位置は、図6中にII-II線で示す位置である。
【0015】
ボス6の内径は、貫通孔5の孔径より大きい。このため、ボス6の内部であって貫通孔5との間に第1のケース2の内面2aの一部が環状に露出している。この環状部分2bに本発明に係る係合リブ11が設けられている。係合リブ11の詳細な説明は後述する。
【0016】
第2のケース3は、図1に示すように、4箇所の隅部にそれぞれ円筒状のボス12が設けられている。これらのボス12は、図2に示すように、第2のケース3に第1のケース2が取付けられた状態で第1のケース2のボス6の補強用リブ7と接触する。第2のケース3の4つのボス12には、ナット部材13がそれぞれ挿入されて固着されている。ナット部材13は、本発明でいう「雌ねじ部」を構成するものである。第1のケース2の貫通孔5に通された脱落防止ねじ4は、図2に示すように、このナット部材13に螺着される。第2のケース3の中央部には、図示していない電子部品を取付けるために複数のボス14が設けられている。
【0017】
脱落防止ねじ4は、第1のケース2を第2のケース3に固定するためのもので、図2に示すように、雄ねじ部21と頭部22との間に雄ねじ部21より細い軸部23を有している。第1のケース2の貫通孔5の孔径は、雄ねじ部21の外径より小さく、軸部23の外径より大きい。この脱落防止ねじ4を貫通孔5に通すときは、雄ねじ部21を貫通孔5にねじ込むようにして行う。雄ねじ部21が貫通孔5を通過した後に細い軸部23が貫通孔5の中に入る。このように軸部23が貫通孔5内に挿通されている状態においては、雄ねじ部21と頭部22とが実質的にストッパーになるために、脱落防止ねじ4は第1のケース2から簡単に外れることができない。すなわち、脱落防止ねじ4は、第1のケース2に移動自在に保持されることになる。
【0018】
第1のケース2に設けられている係合リブ11は、図7に示すように、第1のケース2の内面2aであって貫通孔5が開口する部分(ボス6内の環状部分2b)から第1のケース2の内側に向けて突出している。この実施の形態による係合リブ11は、貫通孔5を囲む複数の位置にそれぞれ設けられている。この実施の形態においては、図6に示すように、貫通孔5の周囲を3等分する位置にそれぞれ係合リブ11が設けられている。これらの係合リブ11は、貫通孔5の孔壁面に接続された傾斜面11aを有している。この傾斜面11aは、第1のケース2の内側(図6においては紙面の手前側)に向かうにしたがって次第に貫通孔5の径方向外側に向かうように傾斜している。
【0019】
このように構成された筐体1を分解するときは、先ず、図2に示す組立状態から脱落防止ねじ4を緩める。そして、図3に示すように雄ねじ部21がナット部材13から外れた状態で、脱落防止ねじ4を作業者(図示せず)が指でつまみ、第1のケース2から引き抜くように引っ張る。脱落防止ねじ4が第1のケース2から引き抜かれる方向に移動することにより、雄ねじ部21が係合リブ11の傾斜面11aに当接する。
【0020】
次に、雄ねじ部21が係合リブ11に当接している状態で脱落防止ねじ4を緩む方向に回す。このように脱落防止ねじ4が回されることによって、雄ねじ部21のねじ山21a(図5参照)が傾斜面11aによって貫通孔5の径方向の内側に導かれて係合リブ11を噛み込むようになる。すなわち、雄ねじ部21が係合リブ11に対していわゆるねじ切り動作を行うようになり、図4および図5に示すように、雄ねじ部21が係合リブ11に食い込む。
【0021】
このように雄ねじ部21が係合リブ11に食い込むことにより、作業者が脱落防止ねじ4から指を離したとしても、脱落防止ねじ4がナット部材13から外れた状態で第1のケース2に保持される。4本の脱落防止ねじ4を全て上述したように第1のケース2に保持させた後、第1のケース2を第2のケース3から外すことによって、脱落防止ねじ4がナット部材13に引っかかることなく、筐体1が分解される。
したがって、この実施の形態によれば、ケースどうしを結合させる脱落防止ねじ4を緩めた状態で保持し、この脱落防止ねじ4が雌ねじ(ナット部材13)に係合することを防ぐことが可能な筐体を提供することができる。
【0022】
この実施の形態による係合リブ11は、貫通孔5の孔壁面に接続された傾斜面11aを有している。傾斜面11aは、第1のケース2の内側に向かうにしたがって次第に貫通孔5の径方向外側に向かうように傾斜している。このため、雄ねじ部21のねじ山21aが係合リブ11に当たることによって、貫通孔5の径方向の内側に導かれるようになるから、ねじ山21aが係合リブ11を噛み込み易くなる。この結果、脱落防止ねじ4の保持を容易に行うことができるようになる。
【0023】
この実施の形態による係合リブ11は、貫通孔5を囲む複数の位置にそれぞれ設けられている。このため、雄ねじ部21によるねじ切り動作を少ない回転角で開始できるから、脱落防止ねじ4の保持を早く行うことができる。また、係合リブ11が貫通孔5の周囲全域に設けられている場合と較べると、係合リブ11をねじ山21aが横切る際の抵抗を小さくすることができるから、少量の力で脱落防止ねじ4を第1のケース2に保持させることができる。
【0024】
上述した実施の形態においては、係合リブ11を貫通孔5の周囲の3箇所に設ける例を示した。しかし、係合リブ11の数は、1箇所あるいは2箇所、または4箇所以上など、適宜変更することができる。
また、上述した実施の形態においては、係合リブ11に傾斜面11aを形成する例を示したが、傾斜面11aは、形成しなくてもよい。この場合であっても、雄ねじ部21のねじ山21aを係合リブ11に食い込ませることができるから、上述した実施の形態と同等の効果が得られる。
【符号の説明】
【0025】
1…筐体、2…第1のケース、2b…環状部分、3…第2のケース、4…脱落防止ねじ、5…貫通孔、11…係合リブ、11a…傾斜面、13…ナット部材(雌ねじ部)、21…雄ねじ部、22…頭部、23…軸部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7