IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士ゼロックス株式会社の特許一覧

特許7415666静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法
<>
  • 特許-静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法 図1
  • 特許-静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/113 20060101AFI20240110BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G03G9/113 361
G03G9/087 331
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020034176
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021135471
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角倉 康夫
(72)【発明者】
【氏名】安野 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】三浦 諭
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 一綱
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 淳平
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-215478(JP,A)
【文献】特開2013-195698(JP,A)
【文献】特開平09-127737(JP,A)
【文献】特開2013-072944(JP,A)
【文献】特開2013-076999(JP,A)
【文献】特開2014-186231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/113
G03G 9/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性樹脂を含むトナー粒子と前記トナー粒子の表面に付着した外添剤とを有するトナーと、
磁性粒子と前記磁性粒子を被覆し脂環式アクリル樹脂と無機粒子とカーボンブラックとを含む樹脂層とを有し、前記無機粒子の平均粒径が5nm以上90nm以下であり、前記樹脂層の平均厚が0.6μm以上1.4μm以下であり、表面を3次元解析したとき平面視面積Aと表面積Bとの比B/Aが1.020以上1.100以下であるキャリアと、
を有する静電荷像現像剤。
【請求項2】
前記トナー粒子は、非晶性ポリエステル樹脂と、前記結晶性樹脂である結晶性ポリエステル樹脂と、を含む、請求項1に記載の静電荷像現像剤。
【請求項3】
前記磁性粒子の粗さ曲線の算術平均高さRaが0.1μm以上1μm以下であり、
前記樹脂層の全質量に対する前記無機粒子の含有量が10質量%以上60質量%以下である、請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像剤。
【請求項4】
前記比B/Aが1.040以上1.080以下である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤。
【請求項5】
前記比B/Aが1.050以上1.080以下である、請求項に記載の静電荷像現像剤。
【請求項6】
前記無機粒子の平均粒径が5nm以上70nm以下である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤。
【請求項7】
前記無機粒子の平均粒径が5nm以上50nm以下である、請求項に記載の静電荷像現像剤。
【請求項8】
前記樹脂層の平均厚が0.8μm以上1.2μm以下である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤。
【請求項9】
前記無機粒子がシリカ粒子である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤。
【請求項10】
前記結晶性樹脂の融点が65℃以上90℃以下である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤。
【請求項11】
前記結晶性樹脂の含有量は、前記トナー粒子全体に対し、5質量%以上30質量%以下である請求項1~請求項10のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤。
【請求項12】
前記トナーにおけるフローテスターの1/2降下温度は、90℃以上140℃以下である請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤。
【請求項13】
前記無機粒子の平均粒径は、前記外添剤の平均粒径の0.015倍以上10倍以下である請求項1~請求項12のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤。
【請求項14】
請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
【請求項15】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置。
【請求項16】
像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、芯材及び該芯材を被覆する被覆樹脂層を有するキャリア本体と、体積平均粒径が50nm以上300nm以下であり、前記キャリア本体100質量部に対し、0.001質量部以上0.100質量部以下の割合で前記キャリア本体の表面に付着している球状のシリカ粒子と、を含む、静電荷像現像用キャリアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-186005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
結晶性樹脂を含むトナー粒子は、表面が柔らかく外添剤が埋没しやすいため、外添剤埋没に起因するトナーの流動性の低下が起こりやすい。そのため、特に高温高湿環境下(例えば、温度28.5℃、湿度85%の環境下)で画像形成(例えば、ハーフトーン画像の形成)を行うと、トナーの凝集体に起因する光沢むらが画像に生じることがある。
【0005】
本発明は、トナー粒子が結晶性樹脂を含み、キャリアの樹脂層に含まれる無機粒子の平均粒径が90nm超え、樹脂層の平均厚が0.6μm未満若しくは1.4μm超え、又は比B/Aが1.020未満若しくは1.100超えである場合に比べ、画像の光沢むらが抑制される静電荷像現像剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段には、下記の態様が含まれる。
【0007】
<1> 結晶性樹脂を含むトナー粒子と前記トナー粒子の表面に付着した外添剤とを有するトナーと、
磁性粒子と前記磁性粒子を被覆し無機粒子を含む樹脂層とを有し、前記無機粒子の平均粒径が5nm以上90nm以下であり、前記樹脂層の平均厚が0.6μm以上1.4μm以下であり、表面を3次元解析したとき平面視面積Aと表面積Bとの比B/Aが1.020以上1.100以下であるキャリアと、
を有する静電荷像現像剤。
【0008】
<2> 前記比B/Aが1.040以上1.080以下である、<1>に記載の静電荷像現像剤。
<3> 前記比B/Aが1.050以上1.080以下である、<2>に記載の静電荷像現像剤。
<4> 前記無機粒子の平均粒径が5nm以上70nm以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の静電荷像現像剤。
<5> 前記無機粒子の平均粒径が5nm以上50nm以下である、<4>に記載の静電荷像現像剤。
<6> 前記樹脂層の平均厚が0.8μm以上1.2μm以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の静電荷像現像剤。
<7> 前記無機粒子がシリカ粒子である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の静電荷像現像剤。
【0009】
<8> 前記結晶性樹脂の融点が65℃以上90℃以下である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の静電荷像現像剤。
<9> 前記結晶性樹脂の含有量は、前記トナー粒子全体に対し、5質量%以上30質量%以下である<1>~<8>のいずれか1つに記載の静電荷像現像剤。
<10> 前記トナーにおけるフローテスターの1/2降下温度は、90℃以上140℃以下である<1>~<9>のいずれか1つに記載の静電荷像現像剤。
【0010】
<11> 前記無機粒子の平均粒径は、前記外添剤の平均粒径の0.015倍以上10倍以下である<1>~<10>のいずれか1つに記載の静電荷像現像剤。
【0011】
<12> <1>~<11>のいずれか1つに記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、
画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジ。
<13> 像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、
<1>~<11>のいずれか1つに記載の静電荷像現像剤を収容し、前記静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、
を備える画像形成装置。
<14> 像保持体の表面を帯電する帯電工程と、
帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、
<1>~<11>のいずれか1つに記載の静電荷像現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、
前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、
前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、
を有する画像形成方法。
【発明の効果】
【0012】
<1>又は<7>に係る発明によれば、トナー粒子が結晶性樹脂を含み、キャリアの樹脂層に含まれる無機粒子の平均粒径が90nm超え、樹脂層の平均厚が0.6μm未満若しくは1.4μm超え、又は比B/Aが1.020未満若しくは1.100超えである場合に比べ、画像の光沢むらが抑制される静電荷像現像剤が提供される。
【0013】
<2>に係る発明によれば、比B/Aが1.040未満又は1.080超えである場合に比べ、画像の光沢むらが抑制される静電荷像現像剤が提供される。
<3>に係る発明によれば、比B/Aが1.050未満又は1.080超えである場合に比べ、画像の光沢むらが抑制される静電荷像現像剤が提供される。
<4>に係る発明によれば、キャリアの樹脂層に含まれる無機粒子の平均粒径が70nm超えである場合に比べ、画像の光沢むらが抑制される静電荷像現像剤が提供される。
<5>に係る発明によれば、キャリアの樹脂層に含まれる無機粒子の平均粒径が50nm超えである場合に比べ、画像の光沢むらが抑制される静電荷像現像剤が提供される。
<6>に係る発明によれば、樹脂層の平均厚が0.8μm未満又は1.2μm超えである場合に比べ、画像の光沢むらが抑制される静電荷像現像剤が提供される。
【0014】
<8>に係る発明によれば、結晶性樹脂の融点が65℃以上90℃以下であっても、キャリアの樹脂層に含まれる無機粒子の平均粒径が90nm超え、樹脂層の平均厚が0.6μm未満若しくは1.4μm超え、又は比B/Aが1.020未満若しくは1.100超えである場合に比べ、画像の光沢むらが抑制される静電荷像現像剤が提供される。
<9>に係る発明によれば、結晶性樹脂の含有量が5質量%以上30質量%以下であっても、キャリアの樹脂層に含まれる無機粒子の平均粒径が90nm超え、樹脂層の平均厚が0.6μm未満若しくは1.4μm超え、又は比B/Aが1.020未満若しくは1.100超えである場合に比べ、画像の光沢むらが抑制される静電荷像現像剤が提供される。
<10>に係る発明によれば、トナーにおけるフローテスターの1/2降下温度が90℃以上140℃以下であっても、キャリアの樹脂層に含まれる無機粒子の平均粒径が90nm超え、樹脂層の平均厚が0.6μm未満若しくは1.4μm超え、又は比B/Aが1.020未満若しくは1.100超えである場合に比べ、画像の光沢むらが抑制される静電荷像現像剤が提供される。
【0015】
<11>に係る発明によれば、無機粒子の平均粒径が外添剤の平均粒径の10倍超えである場合に比べ、画像の光沢むらが抑制される静電荷像現像剤が提供される。
【0016】
<12>に係る発明によれば、トナー粒子が結晶性樹脂を含み、キャリアの樹脂層に含まれる無機粒子の平均粒径が90nm超え、樹脂層の平均厚が0.6μm未満若しくは1.4μm超え、又は比B/Aが1.020未満若しくは1.100超えである静電荷像現像剤を適用した場合に比べ、画像の光沢むらが抑制されるプロセスカートリッジが提供される。
<14>に係る発明によれば、トナー粒子が結晶性樹脂を含み、キャリアの樹脂層に含まれる無機粒子の平均粒径が90nm超え、樹脂層の平均厚が0.6μm未満若しくは1.4μm超え、又は比B/Aが1.020未満若しくは1.100超えである静電荷像現像剤を適用した場合に比べ、画像の光沢むらが抑制される画像形成装置が提供される。
<15>に係る発明によれば、トナー粒子が結晶性樹脂を含み、キャリアの樹脂層に含まれる無機粒子の平均粒径が90nm超え、樹脂層の平均厚が0.6μm未満若しくは1.4μm超え、又は比B/Aが1.020未満若しくは1.100超えである静電荷像現像剤を適用した場合に比べ、画像の光沢むらが抑制される画像形成方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図2】本実施形態に係る画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0019】
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0020】
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0021】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0022】
本明細書において実施形態を、図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
【0023】
本明細書において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0024】
本明細書において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒子径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0025】
本明細書において「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味する。
【0026】
[静電荷像現像剤]
本実施形態に係る静電荷像現像剤(以下「現像剤」ともいう)は、結晶性樹脂を含むトナー粒子と前記トナー粒子の表面に付着した外添剤とを有するトナーと、磁性粒子と前記磁性粒子を被覆し無機粒子を含む樹脂層とを有し、前記無機粒子の平均粒径が5nm以上90nm以下であり、前記樹脂層の平均厚が0.6μm以上1.4μm以下であり、表面を3次元解析したとき平面視面積Aと表面積Bとの比B/Aが1.020以上1.100以下であるキャリアと、を有する。
【0027】
本実施形態において、キャリアの樹脂層に含まれる無機粒子は、カーボンブラック以外の無機粒子である。
【0028】
本実施形態において、キャリアにおける樹脂層に含まれる無機粒子の平均粒径と樹脂層の平均厚とは、下記の方法により求める。
キャリアをエポキシ樹脂で包埋し、ミクロトームで切削し、キャリア断面を作製する。キャリア断面を走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope,SEM)により撮影したSEM画像を、画像処理解析装置に取り込み画像解析を行う。樹脂層中の無機粒子(一次粒子)を無作為に100個選び、それぞれの円相当径(nm)を求め、算術平均し、これを無機粒子の平均粒径(nm)とする。つまり、無機粒子の平均粒径は、個数平均粒径である。
また、キャリア1粒子あたり10箇所を無作為に選んで樹脂層の厚さ(μm)を測定し、さらにキャリア100個について測定し、すべてを算術平均し、これを樹脂層の平均厚(μm)とする。
【0029】
本実施形態において、キャリアにおける比B/Aは表面の粗さを評価する指標である。比B/Aは、一例として、下記の方法により求められる。
キャリアの表面を3次元解析する装置として、二次電子検出器を4つ有する走査電子顕微鏡(例えば、株式会社エリオニクス製、電子線3次元粗さ解析装置ERA-8900FE)を用い、下記のとおり解析を行う。
キャリア1粒子の表面を5000倍に拡大する。測定点の間隔を0.06μmとし、測定点を長辺方向に400点、短辺方向に300点とり、24μm×18μmの領域を測定して、3次元画像データを得る。
3次元画像データに対し、スプラインフィルタ(スプライン関数を用いる周波数選択フィルタ)のリミット波長を12μmに設定して周期12μm以上の波長を除去し、これによって、キャリア表面のうねり成分を除去し、粗さ成分を抽出し、粗さ曲線を得る。
さらに、ガウシアンハイパスフィルタ(ガウス関数を用いる周波数選択フィルタ)のカットオフ値を2.0μmに設定して周期2.0μm以上の波長を除去し、これによって、スプラインフィルタ処理後の粗さ曲線から、キャリア表面に露出した磁性粒子の凸部に相当する波長を除去し、周期2.0μm以上の波長成分が除かれた粗さ曲線を得る。
フィルタ処理後の3次元粗さ曲線データから、中央部12μm×12μmの領域(平面視面積A=144μm)の表面積B(μm)を求め、比B/Aを求める。キャリア100個についてそれぞれ比B/Aを求め、算術平均する。
【0030】
本実施形態の現像剤によれば、画像における光沢むらが抑制される。その理由は定かではないが、以下のように推測される。
【0031】
結晶性樹脂を含むトナー粒子は、結晶性樹脂を含まないトナー粒子に比べてトナー粒子の表面が柔らかく、特に、互いに相溶しやすい結晶性樹脂と非晶性樹脂とを含むトナー粒子においては、樹脂の相溶によりトナー粒子の表面が柔らかくなりやすい。そのため、低濃度画像の連続形成を行うと、現像手段内のトナーの入れ替わりが少ない状態で長期間キャリアと共に撹拌されるため、外添剤がトナー粒子の表面に埋没しやすい。
外添剤がトナー粒子の表面に埋没すると、外添剤によるトナーの流動性向上の効果が得られにくく、トナー粒子同士が接触する機会の増加によりトナーの流動性が低下し、トナーの凝集体が形成されることがある。特に、高温高湿環境下(例えば、温度28.5℃、湿度85%の環境下)では、上記トナーの凝集体が形成されやすい。そのため、画像形成(例えば、薄い記録媒体にハーフトーン画像の形成)を行うと、画像定着時の熱により、トナーの凝集体に起因する光沢むらが画像に生じることがある。
【0032】
これに対して本実施形態では、キャリアが、平均粒径が5nm以上90nm以下である無機粒子を含む樹脂層を有し、樹脂層の平均厚が0.6μm以上1.4μm以下であり、前記比B/Aが1.020以上1.100以下である。つまり、本実施形態では、キャリアの表面に微細な凹凸が存在する。
そのため、キャリア表面の微細凹凸によりトナーに対する接触が点接触となり、接触面積が小さくなることで、撹拌による負荷が緩和され、外添剤の埋没が抑制されると考えられる。そして、外添剤の埋没が抑制されることにより、トナーの流動性低下が抑制され、トナーの凝集体に起因する画像の光沢むらが抑制されると推測される
以下、本実施形態に係る現像剤を構成するトナー及びキャリアについて詳細に説明する。
【0033】
<トナー>
トナーは、結着樹脂として結晶性樹脂を含むトナー粒子と、トナー粒子の表面に付着した外添剤と、を有する。
【0034】
(トナー粒子)
トナー粒子は、例えば、結着樹脂と、必要に応じて、着色剤と、離型剤と、その他添加剤と、を含んで構成される。
【0035】
-結着樹脂-
結着樹脂は、少なくとも結晶性樹脂を含む。
結晶性樹脂としては、特に制限されないが、例えば、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ビニル樹脂(例えば、ポリアルキレン樹脂、長鎖アルキル(メタ)アクリレート樹脂等)、結晶性エポキシ樹脂、結晶性ポリウレタン樹脂、結晶性セルロース樹脂、結晶性ポリエーテル樹脂、結晶性ポリアミド樹脂、変性ロジン等の公知の樹脂が挙げられる。
これらの中でも、結着樹脂は、結晶性樹脂として結晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。
【0036】
結晶性樹脂の融点としては、例えば、65℃以上90℃以下の範囲が挙げられ、70℃以上85℃以下の範囲が好ましく、70℃以上80℃以下の範囲がより好ましい。
結晶性樹脂の融点が90℃以下であることにより、トナーの低温定着性が得られやすくなる。一方で、結晶性樹脂の融点が低いとトナー粒子の表面は柔らかくなりやすいが、前記キャリアを含むことで、外添剤の埋没は抑制され、画像の光沢むらが抑制される。また、結晶性樹脂の融点が65℃以上であることにより、65℃未満である場合に比べてトナー粒子の表面が柔らかくなりすぎず、外添剤の埋没が抑制されやすく、画像の光沢むらが抑制される。つまり、結晶性樹脂の融点が65℃以上90℃以下であることにより、低温定着性と、画像の光沢むら抑制と、が両立される。
なお、結晶性樹脂の融点は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0037】
結晶性樹脂の含有量は、トナーの低温定着性と画像の光沢むら抑制とを両立する観点から、トナー粒子全体に対し、5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。
また、結晶性樹脂の含有量は、トナーの低温定着性と画像の光沢むら抑制とを両立する観点から、結着樹脂全体に対し、3質量%以上25質量%以下であることが好ましく、3質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上15質量%以下であることがさらに好ましい。
【0038】
結着樹脂は、結晶性樹脂のほかに、さらに非晶性樹脂を含むことが好ましい。
非晶性樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α-メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2-エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
非晶性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの中でも、結着樹脂は、非晶性樹脂として非晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。
【0039】
非晶性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50℃以上80℃以下が好ましく、50℃以上65℃以下がより好ましい。
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K 7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0040】
なお、樹脂の「結晶性」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを指し、具体的には、昇温速度10(℃/min)で測定した際の吸熱ピークの半値幅が10℃以内であることを指す。
一方、樹脂の「非晶性」とは、半値幅が10℃を超えること、階段状の吸熱量変化を示すこと、又は明確な吸熱ピークが認められないことを指す。
【0041】
結着樹脂は、結晶性樹脂として結晶性ポリエステル樹脂を含み、かつ、非晶性樹脂として非晶性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。
以下、結晶性樹脂及び非晶性樹脂の一例として、それぞれ、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂について詳細に説明する。
【0042】
・非晶性ポリエステル樹脂
非晶性ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。なお、非晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0043】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000以上1000000以下が好ましく、7000以上500000以下がより好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2000以上100000以下が好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.5以上100以下が好ましく、2以上60以下がより好ましい。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC-8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM-M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0046】
非晶性ポリエステル樹脂は、周知の製造方法により得られる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。
なお、原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0047】
・結晶性ポリエステル樹脂
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合体が挙げられる。なお、結晶性ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
ここで、結晶性ポリエステル樹脂は、結晶構造を容易に形成するため、芳香族を有する重合性単量体よりも直鎖状脂肪族を有する重合性単量体を用いた重縮合体が好ましい。
【0048】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸等の二塩基酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価のカルボン酸としては、例えば、芳香族カルボン酸(例えば1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。
多価カルボン酸としては、これらジカルボン酸と共に、スルホン酸基を持つジカルボン酸、エチレン性二重結合を持つジカルボン酸を併用してもよい。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えば主鎖部分の炭素数が7以上20以下である直鎖型脂肪族ジオール)が挙げられる。脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,14-エイコサンデカンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、脂肪族ジオールとしては、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオールが好ましい。
多価アルコールは、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のアルコールを併用してもよい。3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
ここで、多価アルコールは、脂肪族ジオールの含有量を80モル%以上とすることがよく、好ましくは90モル%以上である。
【0051】
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、6,000以上35,000以下が好ましい。
【0052】
結晶性ポリエステル樹脂は、例えば、非晶性ポリエステル樹脂と同様に、周知の製造方法により得られる。
【0053】
結着樹脂が結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とを含む場合、結晶性樹脂と非晶性樹脂との相溶性の観点から、結晶性ポリエステル樹脂のモノマーとして用いる多価アルコールの炭素数が2以上16以下であることが好ましく、2以上12以下であることがより好ましく、2以上10以下であることがさらに好ましい。
【0054】
結着樹脂の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下がさらに好ましい。
【0055】
-着色剤-
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料、又は、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料等が挙げられる。
着色剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0057】
着色剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0058】
-離型剤-
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0059】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K 7121-1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0060】
離型剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0061】
-その他の添加剤-
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の周知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0062】
-トナー粒子の特性等-
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
ここで、コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0063】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)としては、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
【0064】
なお、トナー粒子の各種平均粒径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON-II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、数粒径D16p、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積数平均粒径D50p、累積84%となる粒径を体積粒径D84v、数粒径D84pと定義する。
これらを用いて、体積粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)1/2、数粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)1/2として算出される。
【0065】
トナー粒子の平均円形度としては、0.94以上1.00以下が好ましく、0.95以上0.98以下がより好ましい。
【0066】
トナー粒子の平均円形度は、(円相当周囲長)/(周囲長)[(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)]により求められる。具体的には、次の方法で測定される値である。
まず、測定対象となるトナー粒子を吸引採取し、扁平な流れを形成させ、瞬時にストロボ発光させることにより静止画像として粒子像を取り込み、その粒子像を画像解析するフロー式粒子像解析装置(シスメックス社製のFPIA-3000)によって求める。そして、平均円形度を求める際のサンプリング数は3500個とする。
なお、トナーが外添剤を有する場合、界面活性剤を含む水中に、測定対象となるトナー(現像剤)を分散させた後、超音波処理をおこなって外添剤を除去したトナー粒子を得る。
【0067】
(外添剤)
外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。該無機粒子として、SiO、TiO、Al、CuO、ZnO、SnO、CeO、Fe、MgO、BaO、CaO、KO、NaO、ZrO、CaO・SiO、KO・(TiO)n、Al・2SiO、CaCO、MgCO、BaSO、MgSO等が挙げられる。
【0068】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0069】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0070】
外添剤は、トナーの流動性を向上させる観点から、これらの中でも無機粒子を含むことが好ましく、無機粒子の中でもシリカ粒子を含むことが好ましい。
外添剤の平均粒径としては、例えば5nm以上300nm以下の範囲が挙げられ、10nm以上250nm以下の範囲が好ましく、10nm以上200nm以下の範囲がより好ましい。
外添剤の平均粒径は、前記キャリアの樹脂層に含まれる無機粒子の平均粒径と同様の方法で求められる。
具体的には、トナー表面を走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope,SEM)により撮影したSEM画像を、画像処理解析装置に取り込み画像解析を行う。トナー表面の外添剤(一次粒子)を無作為に100個選び、それぞれの円相当径(nm)を求め、算術平均し、これを外添剤の平均粒径(nm)とする。つまり、外添剤の平均粒径は、個数平均粒径である。
【0071】
外添剤の外添量としては、例えば、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0072】
(トナーの製造方法)
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0073】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。トナー粒子の製法は、これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。
これらの中でも、凝集合一法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0074】
具体的には、例えば、トナー粒子を凝集合一法により製造する場合、
結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液を準備する工程(樹脂粒子分散液準備工程)と、樹脂粒子分散液中で(必要に応じて他の粒子分散液を混合した後の分散液中で)、樹脂粒子(必要に応じて他の粒子)を凝集させ、凝集粒子を形成する工程(凝集粒子形成工程)と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して加熱し、凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、を経て、トナー粒子を製造する。
【0075】
以下、各工程の詳細について説明する。
なお、以下の説明では、着色剤、及び離型剤を含むトナー粒子を得る方法について説明するが、着色剤、離型剤は、必要に応じて用いられるものである。無論、着色剤、離型剤以外のその他添加剤を用いてもよい。
【0076】
-樹脂粒子分散液準備工程-
まず、結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と共に、例えば、着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液、離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を準備する。
【0077】
ここで、樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0078】
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0079】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0080】
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、例えば転相乳化法を用いて樹脂粒子分散液中に樹脂粒子を分散させてもよい。
なお、転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を、水媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0081】
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μm以下がさらに好ましい。
なお、樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA-700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0082】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量としては、例えば、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0083】
なお、樹脂粒子分散液と同様にして、例えば、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散液における粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤粒子分散液中に分散する着色剤粒子、及び離型剤粒子分散液中に分散する離型剤粒子についても同様である。
【0084】
-凝集粒子形成工程-
次に、樹脂粒子分散液と共に、着色剤粒子分散液と、離型剤粒子分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とをヘテロ凝集させ目的とするトナー粒子の径に近い径を持つ、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とを含む凝集粒子を形成する。
【0085】
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、樹脂粒子のガラス転移温度(具体的には、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度-30℃以上ガラス転移温度-10℃以下)の温度に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、凝集粒子を形成する。
凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温(例えば25℃)で上記凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、上記加熱を行ってもよい。
【0086】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。特に、凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0087】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体等が挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸、イミノジ酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)等が挙げられる。
キレート剤の添加量としては、例えば、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0088】
-融合・合一工程-
次に、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば樹脂粒子のガラス転移温度より10から30℃高い温度以上)に加熱して、凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。
【0089】
以上の工程を経て、トナー粒子が得られる。
なお、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を得た後、当該凝集粒子分散液と、樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と、をさらに混合し、凝集粒子の表面にさらに樹脂粒子を付着するように凝集して、第2凝集粒子を形成する工程と、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱をし、第2凝集粒子を融合・合一して、コア/シェル構造のトナー粒子を形成する工程と、を経て、トナー粒子を製造してもよい。
【0090】
ここで、融合・合一工程終了後は、溶液中に形成されたトナー粒子を、公知の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て乾燥した状態のトナー粒子を得る。
洗浄工程は、帯電性の点から充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。また、乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、気流乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0091】
そして、本実施形態に係るトナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0092】
(トナーの特性等)
トナーにおけるフローテスターの1/2降下温度は、90℃以上140℃以下であることが好ましく、95℃以上120℃以下であることがより好ましく、95℃以上115℃以下であることがさらに好ましい。
トナーにおけるフローテスターの1/2降下温度が90℃以上140℃以下であることにより、トナーの低温定着性が得られやすくなる。一方で、トナーにおけるフローテスターの1/2降下温度が90℃以上140℃以下であるとトナー粒子の表面は柔らかくなりやすいが、前記キャリアを含むことで、外添剤の埋没は抑制され、画像の光沢むらが抑制される。
【0093】
トナーにおけるフローテスターの1/2降下温度の測定は、高化式フローテスターCFT-500C((株)島津製作所製)を用いて測定し、ダイスの細孔の径を0.5mm、ダイスの細孔の長さ1mm、加圧荷重を0.98MPa(10kg/cm)、プレヒート時間を5分間、昇温速度を1℃/分、測定温度間隔を1℃、開始温度を65℃とした条件下で、1.1gの試料を溶融流出させた時の流出開始点から終了点の高さの1/2に相当する温度とする。
【0094】
<キャリア>
キャリアは、磁性粒子と、当該磁性粒子を被覆し、無機粒子を含む樹脂層と、を有する樹脂被覆型キャリアである。
【0095】
(磁性粒子)
磁性粒子は、特に限定されるものではなく、キャリアの芯材として用いられる公知の磁性粒子が適用される。磁性粒子として、具体的には、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属の粒子;フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物の粒子;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸磁性粒子;樹脂中に磁性粉が分散して配合された磁性粉分散樹脂粒子;などが挙げられる。本実施形態において磁性粒子としては、フェライト粒子が好ましい。
【0096】
磁性粒子の体積平均粒径は、15μm以上100μm以下が好ましく、20μm以上80μm以下がより好ましく、30μm以上60μm以下が更に好ましい。
ここで体積平均粒径とは、体積基準の粒度分布において小径側から累積50%となる粒径D50vを意味する。
【0097】
磁性粒子の粗さ曲線の算術平均高さRa(JIS B0601:2001)は、0.1μm以上1μm以下が好ましく、0.2μm以上0.8μm以下がより好ましい。
磁性粒子の粗さ曲線の算術平均高さRaは、表面形状測定装置(例えば、(株)キーエンス製「超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK-9700」)を用いて適切な倍率(例えば、倍率1000倍)で磁性粒子を観察し、カットオフ値0.08mmにて粗さ曲線を得て、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ10μmを抜き出して求める。磁性粒子100個のRaを算術平均する。
【0098】
磁性粒子の磁力は、3000エルステッドの磁場における飽和磁化が、50emu/g以上が好ましく、60emu/g以上がより好ましい。上記飽和磁化の測定は、振動試料型磁気測定装置VSMP10-15(東英工業社製)を用いて行う。測定試料は内径7mm、高さ5mmのセルに詰めて前記装置にセットする。測定は印加磁場を加え、最大3000エルステッドまで掃引する。次いで、印加磁場を減少させ、記録紙上にヒステリシスカーブを作製する。カーブのデータより、飽和磁化、残留磁化、保持力を求める。
【0099】
磁性粒子の体積電気抵抗(体積抵抗率)は、1×10Ω・cm以上1×10Ω・cm以下が好ましく、1×10Ω・cm以上1×10Ω・cm以下がより好ましい。
磁性粒子の体積電気抵抗(Ω・cm)は以下のように測定する。20cmの電極板を配した円形の治具の表面に、測定対象物を1mm以上3mm以下の厚さになるように平坦に載せ、層を形成する。この上に前記20cmの電極板を載せて層を挟み込む。測定対象物間の空隙をなくすため、層上に配置した電極板の上に4kgの荷重をかけてから層の厚み(cm)を測定する。層の上下の両電極には、エレクトロメーターおよび高圧電源発生装置に接続されている。両電極に電界が103.8V/cmとなるように高電圧を印加し、このとき流れた電流値(A)を読み取る。測定環境は、温度20℃、相対湿度50%とする。測定対象物の体積電気抵抗(Ω・cm)の計算式は、下記式に示す通りである。
式:R=E×20/(I-I)/L
上記式中、Rは測定対象物の体積電気抵抗(Ω・cm)、Eは印加電圧(V)、Iは電流値(A)、Iは印加電圧0Vにおける電流値(A)、Lは層の厚み(cm)をそれぞれ表す。係数20は、電極板の面積(cm)を表す。
【0100】
(樹脂層)
樹脂層を構成する樹脂としては、スチレン・アクリル酸共重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン等のポリビニル系又はポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂又はその変性物;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素樹脂;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;尿素・ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂;などが挙げられる。
【0101】
樹脂層は、脂環式アクリル樹脂を含有することが好ましい。脂環式アクリル樹脂の重合成分としては、(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数が1以上9以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステル)が好ましく、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単量体は、1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
脂環式アクリル樹脂は、重合成分としてシクロヘキシル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。脂環式アクリル樹脂に含まれるシクロヘキシル(メタ)アクリレートに由来するモノマー単位の含有量は、脂環式アクリル樹脂の全質量に対して、75質量%以上100質量%以下が好ましく、85質量%以上100質量%以下がより好ましく、95質量%以上100質量%以下が更に好ましい。
【0102】
樹脂層に含まれる無機粒子としては、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ等の金属酸化物粒子;硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の金属化合物粒子;金、銀、銅等の金属粒子;などが挙げられる。これらの中でも、トナーのふき出しを抑制する観点およびトナー画像の転写性を維持する観点から、シリカ粒子が好ましい。
【0103】
無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていてもよい。疎水化処理剤としては、例えば、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)を有する公知の有機珪素化合物が挙げられ、具体例には、アルコキシシラン化合物、シロキサン化合物、シラザン化合物等が挙げられる。これらの中でも、疎水化処理剤は、シラザン化合物が好ましく、ヘキサメチルジシラザンが好ましい。疎水化処理剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0104】
無機粒子を疎水化処理剤による疎水化処理する方法としては、例えば、超臨界二酸化炭素を利用して、超臨界二酸化炭素中に疎水化処理剤を溶解させて、無機粒子表面に疎水化処理剤を付着させる方法;大気中において、疎水化処理剤と前記疎水化処理剤を溶解する溶媒とを含む溶液を無機粒子表面に付与(例えば噴霧又は塗布)して、無機粒子表面に疎水化処理剤を付着させる方法;大気中において、無機粒子分散液に疎水化処理剤と前記疎水化処理剤を溶解する溶媒とを含む溶液を添加して保持した後、無機粒子分散液及び前記溶液の混合溶液を乾燥させる方法;が挙げられる。
【0105】
無機粒子の平均粒径は、5nm以上90nm以下であり、5nm以上70nm以下であることが好ましく、5nm以上50nm以下であることがより好ましく、8nm以上50nm以下であることがさらに好ましい。
無機粒子の平均粒径が5nm以上であることにより、樹脂層の強度を増すフィラー効果が得られやすく、画像形成を繰り返した際における樹脂層の剥がれが抑制される。なお、樹脂層の剥がれが生じた場合は、キャリア表面において磁性粒子の露出面積が増え、トナーへの機械的負荷が強まり、外添剤がトナー粒子に埋没しやすくなり、トナー凝集が発生しやすくなると推測される。したがって、無機粒子の平均粒径が5nm以上であることによりトナー凝集が抑制されると推測される。
無機粒子の平均粒径が90nm以下であることにより、樹脂層の凸部から無機粒子が脱離することが起こりにくく、画像形成を繰り返した際における樹脂層の剥がれが抑制される。また、無機粒子の平均粒径が90nm以下であることにより、キャリア表面の凹凸が微細になり、トナーに対する接触が点接触となることで撹拌による負荷が緩和され、外添剤の埋没が抑制される。そのため、トナー凝集が抑制されると推測される。
無機粒子の平均粒径は、樹脂層の形成に用いる無機粒子の大きさを調整することで制御してもよい。
【0106】
無機粒子の平均粒径は、トナーの流動性低下抑制の観点から、トナーに含まれる外添剤の平均粒径の0.015倍以上10倍以下であることが好ましく、0.02倍以上5倍以下であることがより好ましく、0.05倍以上1倍以下であることがさらに好ましい。
【0107】
樹脂層に含まれる無機粒子の含有量は、樹脂層の全質量に対して、10質量%以上60質量%以下が好ましく、15質量%以上55質量%以下がより好ましく、20質量%以上50質量%以下が更に好ましい。
【0108】
樹脂層に含まれるシリカ粒子の含有量は、樹脂層の全質量に対して、10質量%以上60質量%以下が好ましく、15質量%以上55質量%以下がより好ましく、20質量%以上50質量%以下が更に好ましい。
【0109】
樹脂層には、帯電や抵抗を制御する目的で、導電性粒子が含まれていてもよい。導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック、前述の無機粒子のなかで導電性を有する粒子が挙げられる。
【0110】
樹脂層を磁性粒子表面に形成する方法としては、例えば、湿式製法及び乾式製法が挙げられる。湿式製法は、樹脂層を構成する樹脂を溶解又は分散させる溶剤を用いる製法である。一方、乾式製法は、上記溶剤を用いない製法である。
【0111】
湿式製法としては、例えば、磁性粒子を樹脂層形成用樹脂液中に浸漬して被覆する浸漬法;樹脂層形成用樹脂液を磁性粒子表面に噴霧するスプレー法;磁性粒子を流動床中に流動化させた状態で樹脂層形成用樹脂液を噴霧する流動床法;ニーダーコーター中で磁性粒子と樹脂層形成用樹脂液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法;などが挙げられる。これらの製法を繰り返したり、組み合わせたりしてもよい。
湿式製法において用いられる樹脂層形成用樹脂液は、樹脂、無機粒子及びその他の成分を溶剤に溶解又は分散させて調製する。溶剤としては、特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;などが使用される。
【0112】
乾式製法としては、例えば、磁性粒子と樹脂層形成用樹脂の混合物を乾燥状態で加熱して樹脂層を形成する方法が挙げられる。具体的には例えば、磁性粒子と樹脂層形成用樹脂とを気相中で混合して加熱溶融し、樹脂層を形成する。
【0113】
樹脂層の平均厚は、0.6μm以上1.4μm以下であり、0.8μm以上1.2μm以下であることが好ましく、0.8μm以上1.1μm以下であることがより好ましい。
樹脂層の平均厚が0.6μm以上であることにより、画像形成を繰り返した際における樹脂層の剥がれが抑制される。なお、樹脂層の剥がれが生じると、キャリア表面において磁性粒子の露出面積が増え、トナーへの機械的負荷が強まり、外添剤がトナー粒子に埋没しやすくなり、トナー凝集が発生しやすくなると推測される。また、樹脂層の平均厚が0.6μm以上であることにより、樹脂層内における無機粒子の分散性が高くなり、キャリアの表面における凹凸が均一に近い状態になりやすくなる。
樹脂層の平均厚が1.4μm以下であることにより、外添剤がトナー粒子表面からキャリア表面に移行した後にキャリアの樹脂層に付着又は埋没しにくく、トアーからキャリアへの外添剤移行量の増加が抑制され、トナー凝集の発生が抑制されると推測される。
樹脂層の平均厚は、樹脂層の形成に用いる樹脂の量を調整することで制御してもよく、磁性粒子の量に対する樹脂の量が多いほど樹脂層の平均厚は厚くなる。
【0114】
(キャリアの特性)
キャリアの表面について表面を3次元解析したときにおける平面視面積Aと表面積Bとの比B/Aは、1.020以上1.100以下であり、1.040以上1.080以下であることが好ましく、1.040以上1.070以下であることがさらに好ましい。
比B/Aが1.020以上であることにより、キャリア表面が微細な凹凸を有し、キャリアとトナーとの接触が点接触となるため、トナーへの機械的負荷が緩和され、トナー外添剤がトナー粒子に埋没することが抑制される。そのため、トナー凝集の発生が抑制されると推測される。
比B/Aが1.100以下であることにより、キャリア表面の微細凹凸の間隔が狭すぎず、キャリア表面の微細凹凸の高低差が相対的に大きすぎないため、トナーの外添剤がキャリア表面の凹部に入り込むことが起こりにくくなり、トアーからキャリアへの外添剤移行量の増加が抑制される。また、キャリア表面の微細凹凸が密になりすぎないことにより、キャリアとトナーとの接触が点接触となり、トナーの機械的負荷が緩和され、外添剤の埋没が抑制される。そのため、トナー凝集が抑制されると推測される。
【0115】
比B/Aは、製造条件によって制御し得る。
例えば、ニーダーコーター法を複数回(例えば2回)繰り返して段階的に樹脂層を形成する製造方法において、最後のニーダーコーター工程において、被覆対象粒子と樹脂層形成用樹脂液との混合時間を調整し、比B/Aを制御する。最後のニーダーコーター工程の混合時間を長くするほど、比B/Aは小さくなる傾向がある。
ほかに例えば、ニーダーコーター法で製造した樹脂被覆型キャリア表面に、無機粒子を含む液体組成物(樹脂を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。)をスプレー法で付与する製造方法において、液体組成物に含まれる無機粒子の粒径及び含有量、又は、樹脂被覆型キャリアに対する液体組成物の付与量を調整し、比B/Aを制御する。
【0116】
キャリア表面における磁性粒子の露出面積率は、5%以上30%以下であることが好ましく、7%以上25%以下であることがより好ましく、10%以上25%以下であることが更に好ましい。キャリアにおける磁性粒子の露出面積率は、樹脂層の形成に用いる樹脂の量で制御でき、磁性粒子の量に対する樹脂の量が多いほど露出面積率は小さくなる。
【0117】
キャリア表面における磁性粒子の露出面積率は、以下の方法で求める値である。
対象となるキャリアと、対象となるキャリアから樹脂層を除いた磁性粒子とを用意する。キャリアから樹脂層を除く方法としては、例えば、有機溶剤で樹脂成分を溶解させて樹脂層を除去する方法、800℃程度の加熱により樹脂成分を消失させて樹脂層を除去する方法などが挙げられる。キャリアと磁性粒子とをそれぞれ測定試料にして、XPSにより試料表面のFe濃度(atomic%)を定量し、(キャリアのFe濃度)÷(磁性粒子のFe濃度)×100を算出し、磁性粒子の露出面積率(%)とする。
【0118】
キャリアの体積平均粒径は、10μm以上120μm以下が好ましく、20μm以上100μm以下がより好ましく、30μm以上80μm以下が更に好ましい。
ここで体積平均粒径とは、体積基準の粒度分布において小径側から累積50%となる粒径D50vを意味する。
【0119】
<キャリアとトナーとの混合比>
現像剤おけるキャリアとトナーとの混合比(質量比)は、キャリア:トナー=100:1乃至100:30が好ましく、100:3乃至100:20がより好ましい。
【0120】
[画像形成装置、画像形成方法]
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0121】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0122】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置;等の公知の画像形成装置が適用される。
本実施形態に係る画像形成装置が中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0123】
本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に着脱するカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0124】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0125】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づく、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に着脱するプロセスカートリッジであってもよい。
【0126】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの上方には、各ユニットを通して中間転写ベルト(中間転写体の一例)20が延設されている。中間転写ベルト20は、駆動ロール22及び支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行するようになっている。支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段の一例)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナーの供給がなされる。
【0127】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成及び動作を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。
【0128】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール5Y(一次転写手段の一例)、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Yが順に配置されている。
一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。各ユニットの一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスの値を変える。
【0129】
以下、第1のユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が-600V乃至-800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率1×10-6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線が照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3からレーザ光線3Yを照射する。それにより、イエローの画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0130】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転する。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として現像され可視化される。
【0131】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして、感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0132】
感光体1Y上のイエロートナー画像が一次転写位置へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用し、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と逆極性の(+)極性であり、第1のユニット10Yでは制御部(図示せず)によって例えば+10μAに制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0133】
第2のユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエローのトナー画像が転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0134】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と、中間転写ベルトの内面に接する支持ロール24と、中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(-)と同極性の(-)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用し、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0135】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれ、トナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0136】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体としては、記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録紙Pの表面も平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0137】
記録媒体は、特に限定されるものではなく、本実施形態では薄い記録媒体であっても光沢むらが抑制された画像が形成される。薄い記録媒体は、厚い記録媒体に比べて画像定着時における熱の影響が大きく、トナーの凝集体に起因する光沢むらが画像に生じやすい。しかし本実施形態では、前記キャリアを用いトナーの凝集体が生じにくいため、薄い記録媒体に形成された画像においても光沢むらが抑制される。
上記記録媒体の厚みとしては、例えば10μm以上200μm以下の範囲が挙げられ、15μm以上150μm以下の範囲が好ましく、20μm以上100μm以下の範囲がより好ましい。
また、上記記録媒体が記録紙である場合、記録紙の坪量としては、例えば5g/m以上150g/m以下の範囲が挙げられ、8g/m以上120g/m以下の範囲が好ましく、10g/m以上100g/m以下の範囲がより好ましい。
【0138】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0139】
<プロセスカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0140】
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、上記構成に限られず、現像手段と、その他、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0141】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。以下の説明においては、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0142】
図2は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
図2に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107(像保持体の一例)と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電手段の一例)、現像装置111(現像手段の一例)、及び感光体クリーニング装置113(クリーニング手段の一例)を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
図2中、109は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、112は転写装置(転写手段の一例)、115は定着装置(定着手段の一例)、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【実施例
【0143】
以下、実施例により発明の実施形態を詳細に説明するが、発明の実施形態は、これら実施例に限定されるものではない。以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0144】
以下の記載において、体積平均粒径とは、体積基準の粒度分布において小径側から累積50%となる粒径D50vを意味する。
【0145】
[トナーの作製]
<非晶性ポリエステル樹脂分散液(A1)の作製>
・エチレングリコール :37部
・ネオペンチルグリコール:65部
・1,9-ノナンジオール:32部
・テレフタル酸 :96部
上記の材料をフラスコに仕込み、1時間かけて温度200℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認したのち、ジブチル錫オキサイドを1.2部投入した。生成する水を留去しながら6時間かけて240℃まで温度を上げ、240℃で4時間攪拌を継続し、非晶性ポリエステル樹脂(酸価9.4mgKOH/g、重量平均分子量13,000、ガラス転移温度62℃)を得た。非晶性ポリエステル樹脂を溶融状態のまま、乳化分散機(キャビトロンCD1010、ユーロテック社)に毎分100gの速度で移送した。別途、試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.37%濃度の希アンモニア水をタンクに入れ、熱交換器で120℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度で非晶性ポリエステル樹脂と同時に乳化分散機に移送した。乳化分散機を回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cmの条件で運転し、体積平均粒径160nm、固形分量20質量%の非晶性ポリエステル樹脂分散液(A1)を得た。
【0146】
<結晶性ポリエステル樹脂分散液(C1)の作製>
・ドデカン二酸 :81部
・ヘキサンジオール:47部
上記の材料をフラスコに仕込み、1時間かけて温度160℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認したのち、ジブチル錫オキサイドを0.03部投入した。生成する水を留去しながら6時間かけて200℃まで温度を上げ、200℃で4時間攪拌を継続した。次いで、反応液を冷却し、固液分離を行い、固形物を温度40℃/減圧下で乾燥し、結晶性ポリエステル樹脂(C1)(融点75℃、重量平均分子量15,000)を得た。
【0147】
・結晶性ポリエステル樹脂(C1) :50部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK):2部
・イオン交換水 :200部
上記の材料を120℃に加熱して、ホモジナイザー(ウルトラタラックスT50、IKA社)で十分に分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理した。体積平均粒径が180nmになったところで回収し、固形分量20質量%の結晶性ポリエステル樹脂分散液(C1)を得た。
【0148】
<結晶性ポリエステル樹脂分散液(C2)の作製>
・デカン二酸 :81部
・ヘキサンジオール:47部
上記の材料をフラスコに仕込み、1時間かけて温度160℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認したのち、ジブチル錫オキサイドを0.03部投入した。生成する水を留去しながら6時間かけて200℃まで温度を上げ、200℃で4時間攪拌を継続した。次いで、反応液を冷却し、固液分離を行い、固形物を温度40℃/減圧下で乾燥し、結晶性ポリエステル樹脂(C2)(融点67℃、重量平均分子量15,000)を得た。
【0149】
結晶性ポリエステル樹脂(C1)の代わりに結晶性ポリエステル樹脂(C2)を用いた以外は、結晶性ポリエステル樹脂分散液(C1)と同様にして、固形分量20質量%の結晶性ポリエステル樹脂分散液(C2)を得た。
【0150】
<結晶性ポリエステル樹脂分散液(C3)の作製>
・ドデカン二酸 :81部
・エチレングリコール:47部
上記の材料をフラスコに仕込み、1時間かけて温度160℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認したのち、ジブチル錫オキサイドを0.03部投入した。生成する水を留去しながら6時間かけて200℃まで温度を上げ、200℃で4時間攪拌を継続した。次いで、反応液を冷却し、固液分離を行い、固形物を温度40℃/減圧下で乾燥し、結晶性ポリエステル樹脂(C3)(融点86℃、重量平均分子量15,000)を得た。
【0151】
結晶性ポリエステル樹脂(C1)の代わりに結晶性ポリエステル樹脂(C3)を用いた以外は、結晶性ポリエステル樹脂分散液(C1)と同様にして、固形分量20質量%の結晶性ポリエステル樹脂分散液(C3)を得た。
【0152】
<結晶性ポリエステル樹脂分散液(C4)の作製>
・オクタン二酸 :81部
・エチレングリコール:47部
上記の材料をフラスコに仕込み、1時間かけて温度160℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認したのち、ジブチル錫オキサイドを0.03部投入した。生成する水を留去しながら6時間かけて200℃まで温度を上げ、200℃で4時間攪拌を継続した。次いで、反応液を冷却し、固液分離を行い、固形物を温度40℃/減圧下で乾燥し、結晶性ポリエステル樹脂(C4)(融点63℃、重量平均分子量15,000)を得た。
【0153】
結晶性ポリエステル樹脂(C1)の代わりに結晶性ポリエステル樹脂(C4)を用いた以外は、結晶性ポリエステル樹脂分散液(C1)と同様にして、固形分量20質量%の結晶性ポリエステル樹脂分散液(C4)を得た。
【0154】
<結晶性ポリエステル樹脂分散液(C5)の作製>
・フタル酸 :81部
・ノナンジオール:47部
上記の材料をフラスコに仕込み、1時間かけて温度160℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認したのち、ジブチル錫オキサイドを0.03部投入した。生成する水を留去しながら6時間かけて200℃まで温度を上げ、200℃で4時間攪拌を継続した。次いで、反応液を冷却し、固液分離を行い、固形物を温度40℃/減圧下で乾燥し、結晶性ポリエステル樹脂(C5)(融点91℃、重量平均分子量15,000)を得た。
【0155】
結晶性ポリエステル樹脂(C1)の代わりに結晶性ポリエステル樹脂(C5)を用いた以外は、結晶性ポリエステル樹脂分散液(C1)と同様にして、固形分量20質量%の結晶性ポリエステル樹脂分散液(C5)を得た。
【0156】
<離型剤粒子分散液(W1)の作製>
・パラフィンワックス(日本精蝋(株)製 HNP-9) :100部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK):1部
・イオン交換水 :350部
上記の材料を混合して100℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、体積平均粒径200nmの離型剤粒子が分散した離型剤粒子分散液を得た。この離型剤粒子分散液にイオン交換水を加えて固形分量を20質量%に調製して、離型剤粒子分散液(W1)とした。
【0157】
<着色剤粒子分散液(K1)の作製>
・カーボンブラック(キャボット社製、Regal330) :50部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製、ネオゲンRK):5部
・イオン交換水 :195部
上記の材料を混合し、高圧衝撃式分散機(アルティマイザーHJP30006、スギノマシン社)を用いて60分間分散処理し、固形分量20%の着色剤粒子分散液(K1)を得た。
【0158】
<トナー粒子(K1)の作製>
・イオン交換水 :200部
・非晶性ポリエステル樹脂分散液(A1) :375部
・結晶性ポリエステル樹脂分散液(C1) :50部
・離型剤粒子分散液(W1) :50部
・着色剤粒子分散液(K1) :25部
・アニオン性界面活性剤(TaycaPower):2.8部
上記の材料を丸型ステンレス製フラスコに入れ、0.1Nの硝酸を添加してpHを3.5に調整した後、ポリ塩化アルミニウム(王子製紙(株)製、30%粉末品)2部をイオン交換水30部に溶解させたポリ塩化アルミニウム水溶液を添加した。ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて30℃において分散した後、加熱用オイルバス中で45℃まで加熱し、体積平均粒径が4.9μmとなるまで保持した。次いで、非晶性ポリエステル樹脂分散液(A1)60部を追加し30分間保持した。次いで、体積平均粒径5.2μmとなったところで、さらに非晶性ポリエステル樹脂分散液(A1)60部を追加し30分間保持した。続いて、10%のNTA(ニトリロ三酢酸)金属塩水溶液(キレスト70、キレスト株式会社製)20部を加え、1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを9.0に調整した。次いで、アニオン性界面活性剤(TaycaPower)1部を投入して攪拌を継続しながら85℃まで加熱し、5時間保持した。次いで、20℃/分の速度で20℃まで冷却した。次いで、濾過し、イオン交換水で充分に洗浄し、乾燥させることにより、体積平均粒径5.7μm、平均円形度0.971のトナー粒子(K1)を得た。
なお、トナー粒子(K1)全体に対する結晶性ポリエステル(C1)の含有量は10質量%であった。
【0159】
<トナー(K1)の作製>
トナー粒子(K1)100質量部と、疎水性シリカ粒子(外添剤、日本アエロジル社製、RY50、平均粒径:40nm)1.5質量部とをサンプルミルに入れ、回転速度10000rpmで30秒間混合した。次いで、目開き45μmの振動篩いで篩分して、体積平均粒径5.7μmのトナー(K1)を得た。フローテスターの1/2降下温度は105℃であった。
【0160】
<トナー粒子(K2)及びトナー(K2)の作製>
結晶性ポリエステル樹脂分散液(C1)10部の代わりに結晶性ポリエステル樹脂分散液(C2)75部を添加した以外は、トナー粒子(K1)及びトナー(K1)と同様にして、トナー粒子(K2)及びトナー(K2)を得た。
なお、トナー粒子(K2)全体に対する結晶性ポリエステル(C2)の含有量は14.3質量%であった。フローテスターの1/2降下温度は95℃であった。
【0161】
<トナー粒子(K3)及びトナー(K3)の作製>
結晶性ポリエステル樹脂分散液(C1)10部の代わりに結晶性ポリエステル樹脂分散液(C3)35部を添加した以外は、トナー粒子(K1)及びトナー(K1)と同様にして、トナー粒子(K3)及びトナー(K3)を得た。
なお、トナー粒子(K3)全体に対する結晶性ポリエステル(C3)の含有量は7.2質量%であった。フローテスターの1/2降下温度は135℃であった。
【0162】
<トナー粒子(K4)及びトナー(K4)の作製>
結晶性ポリエステル樹脂分散液(C1)10部の代わりに結晶性ポリエステル樹脂分散液(C4)125部を添加した以外は、トナー粒子(K1)及びトナー(K1)と同様にして、トナー粒子(K4)及びトナー(K4)を得た。
なお、トナー粒子(K4)全体に対する結晶性ポリエステル(C4)の含有量は21.7質量%であった。フローテスターの1/2降下温度は85℃であった。
【0163】
<トナー粒子(K5)及びトナー(K5)の作製>
結晶性ポリエステル樹脂分散液(C1)10部の代わりに結晶性ポリエステル樹脂分散液(C5)25部を添加した以外は、トナー粒子(K1)及びトナー(K1)と同様にして、トナー粒子(K5)及びトナー(K5)を得た。
なお、トナー粒子(K5)全体に対する結晶性ポリエステル(C5)の含有量は5.2質量%であった。フローテスターの1/2降下温度は145℃であった。
【0164】
[キャリアの作製]
<フェライト粒子(1)の作製>
Fe1318部と、Mn(OH)587部と、Mg(OH)96部とを混合し、温度900℃且つ4時間の仮焼成を行った。水中に、仮焼成品と、ポリビニルアルコール6.6部と、分散剤としてのポリカルボン酸0.5部と、メディア径1mmのジルコニアビーズとを投入し、サンドミルで粉砕及び混合し、分散液を得た。分散液中の粒子の体積平均粒径は1.5μmであった。
分散液を原料にしてスプレードライヤーで造粒及び乾燥させ、体積平均粒径37μmの粒状物を得た。次に、酸素分圧1%の酸素窒素混合雰囲気のもと、電気炉を用いて温度1450℃且つ4時間で本焼成を行い、次いで、大気中で温度900℃且つ3時間の加熱を行い、焼成粒子を得た。焼成粒子を解砕及び分級し、体積平均粒径35μmのフェライト粒子(1)を得た。フェライト粒子(1)の粗さ曲線の算術平均高さRa(JIS B0601:2001)は0.6μmであった。
【0165】
<シリカ粒子(1)>
シリカ粒子(1)として、市販品の疎水性シリカ粒子(ヘキサメチルジシラザンにより表面処理された気相シリカ粒子)、トクヤマ社製、品名:レオロシールHM20S、平均一次粒径:12nm)を準備した。
【0166】
<シリカ粒子(2)>
(シリカ粒子分散液(2)の調整)
撹拌機、滴下ノズル、温度計を具備した1.5Lのガラス製反応容器にメタノール890部、9.8%アンモニア水210部を添加して混合し、アルカリ触媒溶液を得た。
このアルカリ触媒溶液を46℃に調整した後、撹拌しながら、テトラメトキシシラン550部と7.6%アンモニア水140部を同時に450分で滴下を行い、平均一次粒径が6nmである親水性のシリカ粒子が分散したシリカ粒子分散液(2)を得た。
【0167】
(シリカ粒子(2)の作製)
シリカ粒子分散液(2)を用いて、以下に示すようにして、シリカ粒子に対し超臨界二酸化炭素雰囲気下でシロキサン化合物による表面処理を行った。なお、表面処理には、二酸化炭素ボンベ、二酸化炭素ポンプ、エントレーナポンプ、撹拌機付きオートクレーブ(容量500ml)、圧力弁を具備した装置を用いた。
まず、撹拌機付きオートクレーブ(容量500ml)へ、シリカ粒子分散液(2)を300部投入し、撹拌機を100rpmで回転させた。その後、オートクレーブ内に液化二酸化炭素を注入し、ヒーターにより昇温しながら二酸化炭素ポンプにより昇圧し、オートクレーブ内を150℃、15MPaの超臨界状態とした。圧力弁でオートクレーブ内を15MPaに保ちながら二酸化炭素ポンプより超臨界二酸化炭素を流通させ、シリカ粒子分散液(2)からメタノールと水を除去し(溶媒除去工程)、シリカ粒子(未処理のシリカ粒子)を得た。
【0168】
次に、流通した超臨界二酸化炭素の流通量(積算量:標準状態の二酸化炭素の流通量として測定)が900部となった時点で、超臨界二酸化炭素の流通を停止した。
その後、ヒーターにより温度150℃、二酸化炭素ポンプにより圧力15MPaを維持し、オートクレーブ内で二酸化炭素の超臨界状態を維持させた状態で、上記シリカ粒子(未処理のシリカ粒子)100部に対して、予め疎水化処理剤としてヘキサメチルジシラザン(HMDS:有機合成薬品工業社製)100部をエントレーナポンプにてオートクレーブ内に注入した後、撹拌しながら、180℃で20分間反応させた。その後、再度超臨界二酸化炭素を流通させ、余剰の処理剤溶液を除去した。その後、撹拌を停止し、圧力弁を開けてオートクレーブ内の圧力を大気圧まで開放し温度を室温(25℃)まで下げた。
このように、溶媒除去工程、シロキサン化合物による表面処理を順次行い、表面処理シリカ粒子であるシリカ粒子(2)を得た。
【0169】
<シリカ粒子(3)>
シリカ粒子(3)として、市販品の疎水性シリカ粒子(ジメチルシリコーンオイルにより表面処理された気相シリカ粒子、トクヤマ社製、品名:PM09、平均一次粒径:60nm)を準備した。
【0170】
<シリカ粒子(4)>
シリカ粒子(2)の作製と同様にして、ただしアルカリ触媒溶液の温度を35℃に変更し、ヘキサメチルジシラザンにより表面処理されたシリカ粒子(4)を得た。シリカ粒子(4)は、平均一次粒径が75nmであった。
【0171】
<シリカ粒子(5)>
シリカ粒子(5)として、市販品の疎水性シリカ粒子(ヘキサメチルジシラザンにより表面処理された気相シリカ粒子、日本アエロジル社製、品名:RX50、平均一次粒径:85nm)を準備した。
【0172】
<シリカ粒子(6)>
シリカ粒子(2)の作製と同様にして、ただしアルカリ触媒溶液の温度を45℃に変更し、ヘキサメチルジシラザンにより表面処理されたシリカ粒子(6)を得た。シリカ粒子(6)は、平均一次粒径が2nmであった。
【0173】
<キャリア(1)の作製>
・フェライト粒子(1):100部
・トルエン 10部
・スチレン/メチルメタクリレート共重合体(共重合比15モル:85モル):0.8部
・シクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体(共重合比95モル:5モル):0.8部
・カーボンブラック:0.08部
・シリカ粒子(1):0.9部
上記の材料のうち、スチレン/メチルメタクリレート共重合体とシクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体とシリカ粒子(1)とトルエンとガラスビーズ(直径1mm、トルエンと同量)とをサンドミル(関西ペイント社)に投入し、回転速度1200rpmで30分間攪拌し、樹脂層形成用樹脂液(1)とした。真空脱気型ニーダーにフェライト粒子(1)を入れ、さらに樹脂層形成用樹脂液(1)の半分量を入れ、40rpmで攪拌しながら70℃まで昇温し、15分保持した。その後、減圧を30分かけて行い、トルエンを留去させた。その後、室温(25℃)まで冷却し、樹脂層形成用樹脂液(1)の残り半分量を入れ、40rpmで攪拌しながら70℃まで昇温し20分混合した。その後、減圧を30分かけて行い、トルエンを留去させた。次いで、エルボジェットにて微粉及び粗粉を取り除き、樹脂被覆キャリアであるキャリア(1)を得た。
【0174】
<キャリア(2)の作製>
シリカ粒子(1)0.9部の代わりにシリカ粒子(5)0.6部を用い、かつ、スチレン/メチルメタクリレート共重合体の添加量を0.9部、シクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体の添加量を0.9部、二回目の混合時間(すなわち、樹脂層形成用樹脂液(1)の残り半分量を入れ40rpmで攪拌しながら70℃まで昇温し混合する時間)を20分から40分に変更した以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(2)を得た。
【0175】
<キャリア(3)の作製>
シリカ粒子(1)0.9部の代わりにシリカ粒子(2)1.1部を用い、かつ、スチレン/メチルメタクリレート共重合体の添加量を0.8部、シクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体の添加量を0.8部、二回目の混合時間(すなわち、樹脂層形成用樹脂液(1)の残り半分量を入れ40rpmで攪拌しながら70℃まで昇温し混合する時間)を20分から15分に変更した以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(3)を得た。
【0176】
<キャリア(4)の作製>
シリカ粒子(1)0.9部の代わりにシリカ粒子(3)0.8部を用い、かつ、スチレン/メチルメタクリレート共重合体の添加量を0.9部、シクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体の添加量を0.9部、二回目の混合時間(すなわち、樹脂層形成用樹脂液(1)の残り半分量を入れ40rpmで攪拌しながら70℃まで昇温し混合する時間)を20分から30分に変更した以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(4)を得た。
【0177】
<キャリア(5)の作製>
シリカ粒子(1)0.9部の代わりにシリカ粒子(4)1.0部を用い、かつ、スチレン/メチルメタクリレート共重合体の添加量を0.8部、シクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体の添加量を0.8部、二回目の混合時間(すなわち、樹脂層形成用樹脂液(1)の残り半分量を入れ40rpmで攪拌しながら70℃まで昇温し混合する時間)を20分から35分に変更した以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(5)を得た。
【0178】
<キャリア(6)の作製>
シリカ粒子(1)0.9部の代わりにシリカ粒子(1)0.4部を用い、かつ、スチレン/メチルメタクリレート共重合体の添加量を0.6部、シクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体の添加量を0.6部に変更した以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(6)を得た。
【0179】
<キャリア(7)の作製>
シリカ粒子(1)0.9部の代わりにシリカ粒子(1)1.4部を用い、かつ、スチレン/メチルメタクリレート共重合体の添加量を1.0部、シクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体の添加量を1.0部に変更した以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(7)を得た。
【0180】
<キャリア(8)の作製>
シリカ粒子(1)0.9部の代わりにシリカ粒子(1)0.8部を用い、かつ、スチレン/メチルメタクリレート共重合体の添加量を0.7部、シクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体の添加量を0.7部に変更した以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(8)を得た。
【0181】
<キャリア(9)の作製>
シリカ粒子(1)0.9部の代わりにシリカ粒子(1)1.1部を用い、かつ、スチレン/メチルメタクリレート共重合体の添加量を0.9部、シクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体の添加量を0.9部に変更した以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(9)を得た。
【0182】
<キャリア(10)の作製>
シリカ粒子(1)を添加せず、かつ、スチレン/メチルメタクリレート共重合体の添加量を1.1部、シクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体の添加量を1.1部に変更した以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(10)を得た。
【0183】
<キャリア(11)の作製>
シリカ粒子(1)0.9部の代わりにシリカ粒子(6)0.8部を用い、かつ、スチレン/メチルメタクリレート共重合体の添加量を0.8部、シクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体の添加量を0.8部、二回目の混合時間(すなわち、樹脂層形成用樹脂液(1)の残り半分量を入れ40rpmで攪拌しながら70℃まで昇温し混合する時間)を20分から10分に変更した以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(11)を得た。
【0184】
<キャリア(12)の作製>
シリカ粒子(1)0.9部の代わりにシリカ粒子(1)0.2部を用い、かつ、スチレン/メチルメタクリレート共重合体の添加量を0.3部、シクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体の添加量を0.3部に変更した以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(12)を得た。
【0185】
<キャリア(13)の作製>
シリカ粒子(1)0.9部の代わりにシリカ粒子(1)1.6部を用い、かつ、スチレン/メチルメタクリレート共重合体の添加量を1.1部、シクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート共重合体の添加量を1.1部に変更した以外は、キャリア(1)と同様にして、キャリア(13)を得た。
【0186】
<キャリアの測定>
得られたキャリアについて、比B/A(表1中の「比B/A」)、樹脂層に含まれるシリカ粒子の平均粒径(表1中の「無機粒子粒径」)、及び樹脂層の平均厚(表1中の「膜厚」)を前述の方法により求めた結果を表1に示す。
【0187】
[現像剤の評価]
温度28.5℃湿度85%の環境下でDocuCentreColor400(富士ゼロックス(株)製)の改造機を用いて、A4サイズの記録紙(富士ゼロックス(株)製、坪量64g/m)を使用し、画像濃度10%のハーフトーン画像を10,000枚形成した後に、A4サイズの薄い記録紙(富士ゼロックス(株)製、ST紙、厚み78μm、坪量54g/m)に画像濃度100%の画像を形成し、グロスメーター(BYK マイクロトリグロス光沢計(20+60+85゜)、ガードナー社製)を用いて、10点について60度グロスの測定を行った。その10点での光沢度の差(最大値-最小値)、標準偏差から、光沢むらの評価を行った。また、評価基準は以下の通りである。
【0188】
<評価基準>
A:グロスの差が5%未満でかつグロス測定10点の標準偏差が2以下
B:グロスの差が5%未満でかつグロス測定10点の標準偏差が2超え
C:グロスの差が5%以上7.5%未満
D:グロスの差が7.5%以上10%未満
E:グロスの差が10%以上
【0189】
【表1】
【0190】
上記表に示す通り、実施例では、比較例に比べ、画像における光沢むらが抑制されていることがわかる。
【符号の説明】
【0191】
1Y、1M、1C、1K 感光体(像保持体の一例)
2Y、2M、2C、2K 帯電ロール(帯電手段の一例)
3 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
4Y、4M、4C、4K 現像装置(現像手段の一例)
5Y、5M、5C、5K 一次転写ロール(一次転写手段の一例)
6Y、6M、6C、6K 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
20 中間転写ベルト(中間転写体の一例)
22 駆動ロール
24 支持ロール
26 二次転写ロール(二次転写手段の一例)
28 定着装置(定着手段の一例)
30 中間転写体クリーニング装置
P 記録紙(記録媒体の一例)
107 感光体(像保持体の一例)
108 帯電ロール(帯電手段の一例)
109 露光装置(静電荷像形成手段の一例)
111 現像装置(現像手段の一例)
112 転写装置(転写手段の一例)
113 感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)
115 定着装置(定着手段の一例)
116 取り付けレール
117 筐体
118 露光のための開口部
200 プロセスカートリッジ
300 記録紙(記録媒体の一例)
図1
図2