IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニデックの特許一覧

<>
  • 特許-眼科撮影装置制御用プログラム 図1
  • 特許-眼科撮影装置制御用プログラム 図2
  • 特許-眼科撮影装置制御用プログラム 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】眼科撮影装置制御用プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/14 20060101AFI20240110BHJP
   A61B 3/10 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A61B3/14
A61B3/10 100
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020037331
(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2021137311
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 昌平
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 祐二
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 晃一
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0118694(US,A1)
【文献】特開2018-171367(JP,A)
【文献】特開2016-209133(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の撮影方法で被検眼の眼科画像を撮影するための眼科撮影装置制御用プログラムであって、眼科撮影装置のプロセッサによって実行されることによって、
第1眼科画像を撮影するための撮影制御が実行される第1撮影制御ステップと、
コンビネーション撮影実行ステップとを、前記眼科撮影装置に実行させ、
前記コンビネーション撮影実行ステップは、
前記コンビネーション撮影における撮影動作の組み合わせを、前記第1眼科画像に基づいて自動的に設定する設定ステップと、
前記設定ステップで設定された撮影動作の組み合わせで前記眼科画像を撮影するための撮影制御が実行される、第2撮影制御ステップと、
が実行される、眼科撮影装置制御用プログラム。
【請求項2】
前記第1撮影制御ステップでは、前記第2撮影制御ステップで撮影される各眼科画像である第2眼科画像よりも広範囲を撮影した2次元眼科画像を、前記第1撮影制御ステップにおいて撮影する請求項1記載の眼科装置制御用プログラム。
【請求項3】
前記設定ステップは、前記第1眼科画像を解析することによって、眼科画像に含まれる特徴毎に定められた複数のグループのうち少なくともいずれかに前記第1眼科画像を分類してから、前記第1眼科画像が分類されたグループと予め対応付けられた1以上の撮影動作を残りの撮影動作に組み込む、請求項1又は2記載の眼科撮影装置制御用プログラム。
【請求項4】
前記第1撮影制御ステップでは、第1眼科画像として、眼底の正面画像と、眼底の断層画像とが撮影され、
前記設定ステップでは、前記正面画像と前記断層画像とに基づいて、前記コンビネーション撮影における撮影動作の組み合わせを設定する請求項記載の眼科撮影装置制御用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科撮影装置制御用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検眼を多角的に診断および観察するうえで、互いに異なる撮影動作で得られた複数の眼科画像を読影することは、有用である。
【0003】
例えば、特許文献1には、ユーザーによって指示された複数の撮影動作を連続的に実行するコンビネーション撮影(コンボ撮影ともいう)が行われる、眼底撮影装置が開示されている。コンボ撮影に含まれる撮影動作は、撮影開始に先立ってユーザーによって事前に設定されていた。つまり、事前に計画された撮影動作に従って、撮影が実行されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-171367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンボ撮影に含まれるそれぞれの撮影動作の内容は、被検眼における異常の内容(例えば、異常の種別および異常部位の位置等)に応じて設定されることが好ましい。しかし、従来は、被検眼における異常の内容を事前に把握するうえで事前にスクリーニング等を経る必要がある。また、スクリーニングを経て異常の内容を把握していたとしても、多様な撮影動作の中から適切な組み合わせを選択して設定することは、検者にとって必ずしも容易では無かった。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、コンビネーション撮影における撮影動作の組み合わせを設定するための検者の負担が軽減される、眼科撮影装置制御用プログラムを提供すること、を技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1態様に係る眼科撮影装置制御用プログラムは、複数の撮影方法で被検眼の眼科画像を撮影するための眼科撮影装置制御用プログラムであって、眼科撮影装置のプロセッサによって実行されることによって、第1眼科画像を撮影するための撮影制御が実行される第1撮影制御ステップと、コンビネーション撮影実行ステップとを、前記眼科撮影装置に実行させ、前記コンビネーション撮影実行ステップは、前記コンビネーション撮影における撮影動作の組み合わせを、前記第1眼科画像に基づいて自動的に設定する設定ステップと、前記設定ステップで設定された撮影動作の組み合わせで前記眼科画像を撮影するための撮影制御が実行される、第2撮影制御ステップと、が実行される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、コンビネーション撮影における撮影動作の組み合わせを設定するための検者の負担が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例に係る眼科撮影装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】装置の動作の流れを示したフローチャートである。
図3】コンビネーション撮影による撮影結果の表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
「概要」
以下、本開示における実施形態を説明する。それぞれの実施形態の内容は、適宜相互に適用可能である。各実施形態に係る眼科撮影装置制御用プログラムは、複数の撮影方法で眼科画像を撮影するために利用される。
【0011】
本実施形態において、眼科画像は、被検眼の組織の撮影画像である。眼科画像は、前眼部の画像であってもよいし、眼底の画像であってもよい。また、正面画像であってもよいし、断層画像(断面画像)であってもよい。
【0012】
まず、本実施形態について説明する。本実施形態において、眼科撮影装置制御用プログラムは、眼科撮影装置のプロセッサによって実行されることによって、コンビネーション撮影実行ステップを、眼科撮影装置に実行させる。コンビネーション撮影実行ステップによって、コンビネーション撮影の撮影制御が、少なくとも実行される。
【0013】
本実施形態におけるコンビネーション撮影実行ステップには、第1撮影制御ステップ、設定ステップ、および、第2撮影制御ステップが、少なくとも含まれる。第1撮影制御ステップでは、コンビネーション撮影を開始させる指示に基づいて、第1眼科画像を撮影するための撮影制御が実行される。設定ステップでは、コンビネーション撮影における残りの撮影動作の組み合わせが、第1眼科画像に基づいて設定される。第2撮影制御ステップでは、設定ステップで設定された撮影動作の組み合わせで眼科画像を撮影するための撮影制御が実行される。
【0014】
このように、コンビネーション撮影における第1眼科画像の撮影以降の撮影動作の内容が、第1眼科画像に基づいて自動的に設定される。よって、コンビネーション撮影における撮影動作の組み合わせを設定するための検者の負担が軽減される。
【0015】
なお、本実施形態において、第1撮影制御ステップは、コンビネーション撮影の開始指示に基づいて実行されるものとして、以後説明する。但し、必ずしもこれに限られるものでは無い。第1撮影制御ステップは、コンビネーション撮影における撮影動作の内容を決定するための予備撮影として位置付けられていてもよい。この場合、第1撮影制御ステップは、コンビネーション撮影の開始指示とは、異なるトリガに基づいて、コンビネーション撮影の開始指示よりも先に実行されてもよい。
【0016】
<第1撮影制御ステップの詳細>
第1撮影制御ステップでは、コンビネーション撮影を開始させる指示後の最初の撮影で、第1眼科画像が撮影されてもよい。
【0017】
第1眼科画像の画像種別(換言すれば、第1眼科画像を得るための撮影方法)、および、被検眼における撮影部位は、撮影毎に一定であってもよい。
【0018】
また、第1眼科画像は、被検眼の広範囲を撮影した画像であることが好ましい。例えば、眼科撮影装置が、眼底の正面画像と、断層画像(OCT画像)と、をそれぞれ撮影可能である場合、眼底の正面画像が、第1眼科画像として利用されてもよい。眼底の正面画像は、カラー眼底画像であってもよいし、赤外画像であってもよい。また、この場合、設定ステップでは、コンビネーション撮影における残りの撮影動作として、断層画像のスキャンパターンが設定されてもよい。また、これに限られるものではなく、断層画像の複数の撮影動作と、2次元眼科画像の複数の撮影動作と、の中から、解析結果に応じた1以上の撮影動作が選択的に設定されてもよい。
【0019】
また、第1撮影制御ステップにおいて、第1眼科画像は、複数枚撮影されてもよい。このとき、互いに異なる画像種別にて、複数枚の眼科画像が撮影されてもよい。例えば、眼底の正面画像と、断層画像(OCT画像)とが、少なくとも1枚ずつ、第1眼科画像として撮影されてもよい。
【0020】
<設定ステップ>
設定ステップでは、次のようにして、残りの撮影動作の組み合わせを設定してもよい。すなわち、被検眼の第1眼科画像を解析することによって、複数のグループのうち少なくともいずれかに第1眼科画像を分類してもよい。それぞれのグループは、眼科画像に含まれる特徴の種類、および、特徴の位置、特徴のサイズ、の少なくとも何れかに応じて定められていてもよい。このとき、あらかじめ、グループごとに1以上の撮影動作が対応付けられていてもよい。第1眼底画像の分類に基づいて、第1眼科画像が分類されたグループと対応する1以上の撮影動作が、残りの撮影動作に組み込まれてもよい。
【0021】
なお、ここでいう特徴は、例えば、疾患などの異常に基づく特徴であってもよく、病変であってもよい。特徴は、眼科画像の一部または全体に生じる特徴であってもよい。
【0022】
設定ステップでは、機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルを用いて分類してもよい。数学モデルは、例えば、入力データと出力データとの関係を予測するためのデータ構造を指す。数学モデルは、訓練データセットを用いて訓練されることで構築される。訓練データセットは、入力用訓練データと出力用訓練データのセットである。入力用訓練データは、数学モデルに入力されるサンプルデータである。例えば、入力訓練データには、過去に撮影された第1眼底画像が用いられる。出力用訓練データは、数学モデルによって予測する値のサンプルデータである。例えば、出力用訓練データには、病名、病変の種類、および、病変の位置、などの診断結果が用いられる。数学モデルは、ある入力訓練データが入力されたときに、それに対応する出力用訓練データが出力されるように訓練される。
【0023】
数学モデルのより詳細については、例えば、本出願人による以下の特許文献2を参照されたい。
【文献】特開2018-121886号公報 また、複数枚の第1眼科画像が得られている場合、設定ステップでは、複数枚の第1の眼科画像に基づいて、コンビネーション撮影における残りの撮影動作の組み合わせが設定される。互いに異なる画像種別の第1眼科画像に基づいて、コンビネーション撮影における残りの撮影動作の組み合わせが設定される場合は、それぞれの第1眼科画像を個別に分類してもよいし、統合的に分類してもよい。
【0024】
個別に分類する場合は、それぞれの第1眼科画像が分類されたそれぞれのグループに対応する撮影動作が、残りの撮影動作として設定されてもよい。この場合、残りの撮影動作において、撮影漏れが抑制されやすい。また、統合的に分類された場合は、より確信度の高い分類結果に基づいて、撮影動作が設定されるので、被検眼の状態に照らしてより妥当性の高い撮影動作が、残りの撮影動作として設定されやすくなる。
【0025】
<設定内容の確認要求>
設定ステップの後、第2撮影制御ステップへ移行する前に、設定ステップによって設定された撮影動作の組み合わせの確認が、検者に対して要求されてもよい。例えば、撮影動作の組み合わせの内容を示した組み合わせ確認画面が表示されると共に、設定された撮影動作の一部または全部に対する変更指示を、検者から受け付けてもよい。組み合わせ確認画面には、第1眼科画像が更に表示されていてもよい。また、第1の眼科画像に対する解析処理によって、病名、病変の種類、および、病変の位置、などの診断結果が出力されている場合は、それらの情報の少なくとも一部を、撮影動作の組み合わせの内容と共に、モニタ上に表示させてもよい。これにより、撮影動作の組み合わせの妥当性を、検者が容易に評価できる。
【0026】
このとき、第1眼科画像と共に、補足マップが表示されてもよい。補足マップは、設定ステップにおいて、数学モデルによって第1眼科画像を解析した場合に、併せて取得されてもよい。補足マップは、数学モデルに入力された眼科画像の画像領域(つまり、領域における座標)を変数とする、数学モデルによる解析に関する重みの分布を示す。補足マップは、補足マップは、影響度マップ(「アテンションマップ」と言われる場合もある)であってもよいし、確信度マップであってもよい。影響度マップは、数学モデルが解析結果を出力する際に影響した影響度(注目度)の分布を示す。また、確信度マップは、数学モデルによる自動解析の確信度の分布を示す。検者は、補足マップを参考にして、撮影動作の組み合わせの妥当性を、検者が容易に評価してもよい。
【0027】
<第2撮影制御ステップ>
第2撮影制御ステップでは、設定ステップで設定された撮影動作の組み合わせで眼科画像を撮影するための撮影制御が実行される。
【0028】
<撮影結果の確認要求>
本実施形態では、コンビネーション撮影において実行されるそれぞれの撮影動作の間で、撮影結果の確認が、検者に対して要求されてもよい。例えば、確認画面を表示すると共に、再撮影の指示を受け付けてもよい。ここでいう確認画面には、直近の撮影動作によって得られた眼科画像が少なくとも表示されてもよい。また、確認画面の表示と、再撮影の指示の受付とが、撮影動作後の一定時間で行われ、時間経過後に、自動的に次の撮影動作が実行されてもよい。再撮影の指示を受け付けた場合、直ちに、直前の撮影動作が再度実行されてもよいし、一連の撮影動作の完了後に、指示に基づいて特定された撮影動作が再度実行されてもよい。また、撮影結果の確認を要求する場合は、確認画面を表示したうえで、次の撮影動作に移行する指示と、再撮影を行う指示と、を選択的に受け付けてもよい。
【0029】
また、それぞれの撮影動作の間で、撮影結果の確認が要求されることなく、複数の撮影動作が続けて実行されてもよい。この場合、設定ステップで設定された組み合わせによる全ての撮影動作の完了後に、撮影結果の確認が要求されてもよい。
【0030】
また、撮影結果の確認が要求されるときに表示される確認画面においては、撮影動作の内容を示すテキストが表示されてもよい。
【0031】
<定義ステップ>
眼科撮影装置においては、更に、定義ステップが実行されてもよい。定義ステップは、コンビネーション撮影に先立って実行されてもよい。定義ステップでは、それぞれのグループ毎に、1以上の撮影動作が、検者からの指示に基づいて対応付けられる。定義ステップでグループごとに対応付けられた1以上の撮影動作が、設定ステップでは、第1眼科画像に基づいて選択的に設定されるようになる。定義ステップでグループごとに対応付けられた1以上の撮影動作は、被検者に関わらず使いまわし可能であってもよい。
【0032】
「実施例」
図1図2を参照しつつ眼科撮影装置1を、一実施例として説明する。
【0033】
一例として、実施例における眼科撮影装置1は、複数のモダリティを組み合わせた複合装置である。より具体的には、眼科撮影装置1は、OCT(光干渉断層計)と、眼底正面画像撮影装置とを組み合わせた装置である。眼底正面画像撮影装置は、走査型の装置(SLO:scanning light ophthalmoscope)であってもよいし、非走査型の装置であってもよい。
【0034】
本実施例において、眼科撮影装置1は、OCT光学系10と、正面撮影光学系20と、固視標呈示光学系30と、を少なくとも備える。
【0035】
眼科撮影装置1は、複数の種別の眼底画像を、それぞれの種別に応じた撮影動作で撮影する。詳細は省略するが、眼底画像の種別毎に上記の光学系において異なる制御が行われ、その結果として、所期する種別の眼底画像が撮影される。また、撮影動作は、眼底上の撮影位置に応じても異なり得る。
【0036】
OCT光学系10は、OCT画像の撮影に利用される。OCT画像は、Bスキャンに基づく画像(例えば、断層画像)であってもよいし、ボリュームデータに基づく画像(例えば、3次元画像、Enface画像、Cスキャン画像等)であってもよい。これらのOCT画像は、強度OCT画像であってもよいし、機能OCT画像(具体例としては、モーションコントラスト画像)であってもよい。本実施例では、強度OCT画像の他、モーションコントラスト画像の一種である、OCTアンジオグラフィ(以下、OCT-A)を取得可能であるものとして説明する。
【0037】
OCTにおけるスキャンラインは、検者からの指示に基づいて任意の位置に設定されてもよい。また、あらかじめ定められた複数のスキャンパターンのうちいずれかが選択されることで、スキャンパターンと対応するスキャンラインが設定されてもよい。スキャンパターンとしては、ライン、クロス、マルチ、マップ、ラジアル、サークル、等の種々のものが知られている。
【0038】
正面撮影光学系20は、眼底の正面画像を撮影する他に、観察画像を取得するために利用される。正面撮影光学系20は、眼底の正面画像として、眼底の反射画像が撮影可能であってもよい。反射画像は、例えば、赤外光による反射画像(以下、IR画像と称する)、および、カラー画像等が挙げられる。正面撮影光学系20は、眼底の正面画像として、眼底の蛍光画像を撮影可能であってもよい。正面撮影光学系20は、眼底の正面画像として、蛍光画像が撮影可能であってもよい。蛍光画像は、蛍光造影画像であってもよいし、自発蛍光画像であってもよい。蛍光造影画像は、眼底血管に投与された蛍光造影剤の蛍光発光による撮影画像である。例えば、インドシアニングリーン造影画像、および、フルオレセイン造影画像等が知られている。
【0039】
また、眼科撮影装置1は、画角を、第1画角と、第1画角よりも大きな第2画角との間で変更可能であってもよい。本実施例では、第1画角での撮影動作と第2画角での撮影動作とは、個別の撮影動作として扱われる。
【0040】
眼科撮影装置1は、演算制御部70を有する。演算制御部70は、眼科撮影装置1におけるプロセッサである。演算制御部70は、図1に示すように、CPU71、RAM72、および、ROM73等によって構成されてもよい。演算制御部70は、眼科撮影装置制御用プログラムに基づいて、眼底画像の撮影制御、および、表示処理等を実行する。
【0041】
図1に示すように、演算制御部70は、データバス等を介して、メモリ75、操作部77、モニタ80、および、各種光学系10,20,30等と接続される。
【0042】
本実施例において、メモリ75は、不揮発性の記憶装置である。例えば、ハードディスクあるいはフラッシュメモリ等が、メモリ75として適用可能である。実施例において、眼科撮影装置制御用プログラムは、メモリ75に予め記憶されている。また、SLO画像に基づいて病変を特定するための数学モデル(詳細は後述)についても、メモリ75にあらかじめ記憶されている。メモリ75は、書き換え可能であってもよい。この場合、メモリ75には、眼科撮影装置1から取得される各種の眼底画像が記憶されてもよい。但し、眼底画像は、眼科撮影装置制御用プログラムが記憶されたメモリとは、別体のメモリ(図示せず)に記憶されてもよい。
【0043】
操作部77は、入力インターフェイスである。演算制御部70は、操作部77への操作入力を受け付ける。操作部77としては、種々のデバイスが考えられる。例えば、タッチパッド、マウス、および、キーボードのうちの少なくともひとつが、操作部77として利用されてもよい。また、眼科撮影装置1に備え付けのジョイスティック、および、スイッチ等が、入力インターフェイスとして利用されてもよい。
【0044】
モニタ80は、本実施例の表示部(表示デバイス)として利用される。モニタ80は、例えば、汎用のモニタあってもよいし、装置に備え付けのモニタであってもよい。モニタ80に代えて、ヘッドマウントディスプレイ等の他の表示デバイスが、表示部として利用されてもよい。
【0045】
<動作説明>
次に、実施例における装置の動作を説明する。
【0046】
本実施例では、選択画面を介して撮影シーケンスが選択される。撮影シーケンスとは、被検眼を少なくとも1回撮影する一連の撮影処理である。本実施例では、このとき、コンビネーション撮影のための撮影シーケンスが選択可能である。選択画面の操作後、装置と被検眼とのアライメント等の各種調整が行われる。更にその後、撮影動作が実行される。
【0047】
コンビネーション撮影では、複数の撮影動作が連続的に実行される。本実施例では、コンビネーション撮影における撮影動作の組み合わせが、病変を特定する情報に基づいて自動的に設定可能である。ここで、図2のフローチャートには、コンビネーション撮影における撮影動作の組み合わせが自動的に設定されるときの各処理の流れが、一例として示されている。
【0048】
図2に示すように、病変を特定する情報は、幾つかの経路から取得可能である。図2では、以下の(A)(B)(C)の3つの経路から、病変を特定する情報を取得可能な場合を示している。選択画面を介して撮影動作の組み合わせを自動的に設定するコンビネーション撮影が選択されるときに、併せて、経路についても選択される。
・(A)これから撮影する眼科画像(第1眼科画像)
・(B)既存の眼科画像
・(C)被検眼への所見
以下、経路ごとに説明を行う。
【0049】
<(A)これから撮影する眼科画像を利用し、疾患を特定する場合>
まず、(A)の経路を説明する。この場合、本実施例では、撮影開始の指示に基づいて、第1眼科画像と、第1眼科画像に基づいて設定される残りの撮影動作と、が連続的に実行される。
【0050】
<第1眼科画像を撮影>
本実施例において、第1眼科画像は、眼底の2次元正面画像の1種である、SLO画像である。特に、ここでは、複数色の可視光を眼底に照射して撮影されるマルチカラー画像が、SLO画像として撮影される。また、広角の(第2画角による)SLO画像が撮影される。
【0051】
第1眼科画像が撮影されてから、残りの撮影動作が開始されるまでの間に、第1眼科画像を表示し、検者に対して確認を要求してもよい。このとき、第1眼科画像の再撮影を、検者の操作に基づいて選択可能であってもよい。瞬きなどによる写損が第1眼科画像において生じていた場合に、不適切な第1眼科画像に基づいて、残りの撮影動作が設定されることを抑制できる。また、本実施例において、(A)の経路においては、第1眼底画像としてカラーSLO画像が撮影されるので、その後、しばらく(数十秒程度)、被検眼は縮瞳していることが考えられる。このため、残りの撮影動作は、第1眼科画像を撮影してから所定時間待機してから開始されてもよい。そこで、この数十秒の時間内で、第1眼科画像を表示してもよい。
【0052】
<解析処理>
次に、第1眼科画像が解析される。本実施例の解析処理による解析結果として、被検眼の病名および病変の位置を大まかな分類を示す情報が、解析結果として出力される。解析結果は、例えば、黄斑疾患、緑内障、糖尿病網膜症、網膜色素変性症、…等程度の大まかさで分類されたものであってもよい。黄斑疾患については、例えば、加齢黄斑変性、黄斑浮腫、…のレベル、また、例えば、緑内障については、PPG(前視野緑内障)、NFLD(神経線維層欠損)…等のレベル、といったように、より詳細な分類による解析結果が出力されてもよい。また、被検眼に複数の疾患が見いだされる場合もあるので、この場合、それぞれの疾患を特定する情報が、解析結果として出力されてもよい。
【0053】
本実施例における解析処理では、第1眼科画像を、機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルへ入力することで、数学モデルからの出力として解析結果が取得される。
【0054】
本実施例において、第1眼科画像は、眼底の2次元正面画像であるため、比較的広範囲における病変の有無を判定できる。更には、第1眼科画像の画角は、より広角の第2画角であるため、眼底周辺部における異常等を考慮した解析結果を得ることが期待できる。
【0055】
<残りの撮影動作の設定>
次に、コンビネーション撮影における残りの撮影動作が、解析処理による解析結果に基づいて設定される。このとき、第1眼科画像に対する分類に応じた撮影動作が設定される。このとき、OCTによる複数の撮影動作(換言すれば、断層画像の撮影動作)と、SLOによる複数の撮影動作(換言すれば、2次元眼科画像の撮影動作)と、の中から、解析結果に応じた1以上の撮影動作が選択的に設定される。
【0056】
例えば、緑内障疾患と分類された場合は、OCTによる広範囲への黄斑マップスキャンと、乳頭マップスキャンと、が残りの撮影動作として設定されてもよい。
【0057】
また、例えば、黄斑疾患と分類された場合は、OCTによる黄斑マップスキャンと、黄斑マルチスキャンと、が残りの撮影動作として設定されてもよい。更に、黄斑疾患として加齢黄斑変性と分類された場合は、OCT-Angiography、および、SLOによるFAF撮影のうちいずれかが、更に、残りの撮影動作に組み込まれてもよい。
【0058】
また、例えば、糖尿病網膜症と分類された場合は、SLOによるパノラマ撮影が、残りの撮影動作に組み込まれてもよい。
【0059】
なお、解析処理によって特定の疾患に分類されなかった場合は、デフォルトの組み合わせで、残りの撮影動作が設定される。
【0060】
残りの撮影動作が開始されるまでの間に、設定された残りの撮影動作の内容を表示し、検者に対して確認を要求してもよい。このとき、併せて、第1眼科画像、および、解析結果を、モニタ上に表示させてもよい。これにより、設定された撮影動作が適正であるか否かを、検者に確認させることができる。このとき、残りの撮影動作の一部または全部が、検者の操作に基づいて変更可能であってもよい。
【0061】
<撮影動作の実行>
残りの撮影動作が、以上のようにして設定された組み合わせで、順次実行される。このとき、それぞれの撮影動作の際に、固視位置の変更、および、開瞼等が、要求されてもよい。例えば、それぞれの要求に対応する音声アナウンスが、図示なきスピーカー等から出力されてもよい。
【0062】
<(B)既存の眼科画像に基づいて、疾患を特定する場合>
(B)の経路では、事前に撮影されている眼科画像に基づいて、コンビネーション撮影における撮影動作が設定される。本実施例では、コンビネーション撮影の開始指示よりも前に撮影されている第1眼科画像が、上述の解析処理によって解析される。以降は、(A)の経路と同様の処理を経て、解析結果に応じた撮影動作が設定される。
【0063】
<(C)被検眼への所見>
(C)の経路では、コンビネーション撮影の開始指示よりも前に取得されている被検眼の所見を示す情報に基づいて、撮影動作が設定される。本実施例において、所見を示す情報は、(A),(B)の経路での解析処理によって出力される解析結果と同様な扱いで、撮影動作を設定する際に利用される。所見を示す情報は、例えば、被検眼の病名および病変の位置を示す情報であって、過去の検査における所見であってもよい。この場合、コンビネーション撮影の開始指示よりも前に、所見を示す情報を、装置に対して手動で入力可能であってもよい。
【0064】
<撮影結果の表示>
撮影動作の完了後、撮影結果が表示される(一例として、図3参照)。このとき、撮影結果の表示態様が、コンビネーション撮影において利用された撮影動作の組み合わせに応じて、自動的に調整されてもよい。また、例えば、テンプレートに、撮影結果として眼底画像(および解析結果)が組みまれたものが、レポートとして表示されてもよい。その結果、例えば、レポート内に配置される眼科画像の数、種別、位置、および、サイズのいずれかが、コンビネーション撮影毎に異なっていてもよい。
【0065】
以上、実施形態および実施例に基づいて本開示を説明したが、本開示は必ずしも上記実施形態および実施例に限られるものでは無く、種々の変形が可能である。
【0066】
<変容形態>
一例として、次に、上記実施形態の変容形態を示す。変容形態では、コンビネーション撮影が一定の撮影動作の組み合わせで実行された後、このとき得られた複数枚の眼科画像の中から、診断・読影に用いるべき一部が、自動的にピックアップされて表示される。
【0067】
変容形態において、眼科撮影装置制御用プログラムは、眼科撮影装置のプロセッサによって実行されることによって、コンビネーション撮影実行ステップと、解析ステップと、表示ステップと、が少なくとも実行される。
【0068】
変容形態では、予め定められた複数の撮影動作の組み合わせでコンビネーション撮影が実行され、複数の眼科画像が取得される。解析ステップでは、コンビネーション撮影で得られた複数の眼科画像のうち、少なくとも一部を解析することによって、複数のグループのうち少なくともいずれかに複数の眼科画像を分類してもよい。このとき、前述の数学モデルを用いて解析処理が実行されてもよい。それぞれのグループは、病名、病変の種類、および、病変の位置、等の少なくともいずれかに応じて定められていてもよい。このとき、あらかじめ、コンビネーション撮影に組み込まれている複数の撮影動作のうち、1以上の撮影動作が、それぞれのグループに対して対応付けられていてもよい。
【0069】
表示ステップでは、コンビネーション撮影によって撮影された複数の眼科画像のうち、解析ステップで分類されたグループと対応する各撮影動作による眼科画像が選択的に表示される。解析処理によって、病名、病変の種類、および、病変の位置、などの診断結果が出力されている場合は、それらの情報の少なくとも一部が、眼科画像と共に表示されてもよい。
【0070】
このように、変容形態のコンビネーション撮影では、一定の撮影動作の組み合わせで撮影が実行され、撮影した複数の眼科画像のうち、眼科画像の解析結果に応じてピックアップしたものだけが、被検眼の状態に応じた撮影結果として表示される。このため、変容形態では、撮影動作の組み合わせの内容を設定する作業を、必ずしも必要としない。
【0071】
変容形態では、表示ステップにおいて表示される眼科画像に他の眼科画像を追加可能であってもよい。また、表示ステップにおいて表示される眼科画像を、他の眼科画像と入れ替え可能であってもよい。ここでいう他の眼科画像は、コンビネーション撮影において撮影され、且つ、解析ステップで分類されたグループと対応付けられていいない撮影動作で得られた画像である。従来のコンビネーション撮影では、画像に不足がある場合に、改めて撮影を行う必要があったところ、変容形態では、既に得られている画像の中から選択すれば足りる。よって、検者および被検者が、撮り直しのために拘束されにくくなる。
【0072】
なお、解析処理が数学モデルに基づいて実行された場合は、ピックアップされた眼科画像と共に、補足マップが表示されてもよい。これにより、ピックアップの妥当性を、検者が判断しやすい。
【符号の説明】
【0073】
1 眼科撮影装置
70 演算制御部

図1
図2
図3