(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】スピニングディスク、共焦点スキャナ、及び顕微鏡システム
(51)【国際特許分類】
G02B 21/06 20060101AFI20240110BHJP
G02B 21/36 20060101ALI20240110BHJP
G01N 21/01 20060101ALI20240110BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G02B21/06
G02B21/36
G01N21/01 D
G01N21/64 E
(21)【出願番号】P 2020037655
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100181124
【氏名又は名称】沖田 壮男
(72)【発明者】
【氏名】中村 剛
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-161032(JP,A)
【文献】特開2009-168964(JP,A)
【文献】特開2010-026344(JP,A)
【文献】特開2007-225381(JP,A)
【文献】国際公開第2008/072365(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00 - 21/36
G01N 21/62 - 21/74
G01N 21/00 - 21/01
G01N 21/17 - 21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の波長を含む光から試料を走査するための照明光を生成するスピニングディスクであって、
複数のピンホールを有し、回転可能に構成された第1ディスクと、
前記ピンホールに対応づけて形成された複数のマイクロレンズを有し、前記第1ディスクとともに回転可能に構成された第2ディスクと、
前記第1ディスクとともに回転可能であり、前記第1ディスクの回転軸に垂直な面内における予め規定された領域毎に異なる特定波長帯域の光を透過させる光学フィルタと、
を備え
、
前記光学フィルタは、前記第2ディスクに形成されている、
スピニングディスク。
【請求項2】
請求項1に記載のスピニングディスクと、
前記照明光を前記試料に照射して得られる蛍光を、前記特定波長帯域に対応して設定された観察波長帯域毎に弁別する蛍光弁別部と、
を備える共焦点スキャナ。
【請求項3】
前記光学フィルタは、第1特定波長帯域の光、第2特定波長帯域の光、第3特定波長帯域の光、及び第4特定波長帯域の光を透過させる領域を備えており、
前記蛍光弁別部は、前記蛍光を、前記第1特定波長帯域に対応して設定された第1観察波長帯域、前記第2特定波長帯域に対応して設定された第2観察波長帯域、前記第3特定波長帯域に対応して設定された第3観察波長帯域、及び前記第4特定波長帯域に対応して設定された第4観察波長帯域毎に弁別する、
請求項2記載の共焦点スキャナ。
【請求項4】
前記光学フィルタは、波長の長さ順に並べられる第1特定波長帯域、第2特定波長帯域、第3特定波長帯域、及び第4特定波長帯域のうち、前記第1特定波長帯域及び第3特定波長帯域の光を透過させる第1領域と、前記第2特定波長帯域及び第4特定波長帯域の光を透過させる第2領域と、を備えており、
前記蛍光弁別部は、前記蛍光を、前記第1特定波長帯域に対応して設定された第1観察波長帯域、前記第2特定波長帯域に対応して設定された第2観察波長帯域、前記第3特定波長帯域に対応して設定された第3観察波長帯域、及び前記第4特定波長帯域に対応して設定された第4観察波長帯域毎に弁別する、
請求項2記載の共焦点スキャナ。
【請求項5】
複数の波長を含む光を出力する光源部と、
前記光源部から出力される光から試料を走査するための照明光を生成するとともに、前記照明光を前記試料に照射して得られる蛍光を前記観察波長帯域毎に弁別する
請求項2から4の何れか一項に記載の共焦点スキャナと、
前記試料の前記観察波長帯域毎の共焦点像を撮影する複数の撮影装置と、
前記撮影装置で撮影された前記共焦点像の画像処理を行う画像処理装置と、
を備える顕微鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピニングディスク、共焦点スキャナ、及び顕微鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスク走査型共焦点顕微鏡を用いて、生体の組織、器官、細胞等の試料を2次元画像又は3次元画像に画像化する技術が注目されている。この技術は、スピニングディスクを回転させて試料に対する照明光(励起光)の照射位置を変更する(照明光によって試料を走査する)ことで、試料の共焦点像を得るものである。この技術では、焦点面における情報のみが得られるため、解像度及びコントラストが優れた画像が得られるという利点がある。
【0003】
以下の特許文献1,2には、同一箇所における多色の共焦点像を同時に得ることが可能なディスク走査型共焦点顕微鏡が開示されている。具体的に、以下の特許文献1,2に開示されたディスク走査型共焦点顕微鏡では、波長が異なる複数の励起光が含まれる照明光を試料に照射し、試料から得られる蛍光を予め規定された波長帯域毎に弁別することで、同一箇所における多色の共焦点像を同時に得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-288087号公報
【文献】特許第6484234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的に、試料から得られる蛍光は、幅広い波長帯域を有する(スペクトル幅が広い)。このため、波長が近い複数の励起光が含まれる照明光を試料に照射した場合に得られる蛍光のスペクトルは、各々の励起光を個別に試料に照射したときに得られる蛍光のスペクトルが重なり合ったものとなることがある。スペクトルが重なった蛍光は、観察波長帯域毎に弁別することが困難であることから、互いにノイズになりあう現象(以下、「蛍光クロストーク」という)が生ずる。このような蛍光クロストークが生ずると、共焦点像の解像度及びコントラストの低下が引き起こされるという問題がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、蛍光クロストークの影響が殆ど無く、解像度及びコントラストが優れた共焦点像を得ることができるスピニングディスク、共焦点スキャナ、及び顕微鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様によるスピニングディスクは、複数の波長を含む光から試料(SP)を走査するための照明光を生成するスピニングディスク(21)であって、複数のピンホール(32a)を有し、回転可能に構成された第1ディスク(32)と、前記第1ディスクとともに回転可能であり、前記第1ディスクの回転軸(34)に垂直な面内における予め規定された領域(R1~R8、R11~R14、R21,R22)毎に異なる特定波長帯域の光を透過させる光学フィルタ(33)と、を備える。
【0008】
また、本発明の一態様によるスピニングディスクは、前記ピンホールに対応づけて形成された複数のマイクロレンズ(31a)を有し、前記第1ディスクとともに回転可能に構成された第2ディスク(31)を更に備える。
【0009】
また、本発明の一態様によるスピニングディスクは、前記光学フィルタが形成され、前記第1ディスクとともに回転可能に構成された第3ディスク(35)を更に備える。
【0010】
或いは、本発明の一態様によるスピニングディスクは、前記光学フィルタが、前記第1ディスクに形成されている。
【0011】
或いは、本発明の一態様によるスピニングディスクは、前記光学フィルタが、前記第2ディスクに形成されている。
【0012】
また、本発明の一態様によるスピニングディスクは、前記第3ディスクが、前記第1ディスク又は前記第2ディスクに近接配置される。
【0013】
本発明の一態様による共焦点スキャナ(20)は、上記の何れかに記載のスピニングディスクと、前記照明光を前記試料に照射して得られる蛍光を、前記特定波長帯域に対応して設定された観察波長帯域毎に弁別する蛍光弁別部(24、25a~25c、26a~26d、27a~27d)と、を備える。
【0014】
また、本発明の一態様による共焦点スキャナは、前記光学フィルタが、第1特定波長帯域(λ1)の光、第2特定波長帯域(λ2)の光、第3特定波長帯域(λ3)の光、及び第4特定波長帯域(λ4)の光を透過させる領域(R1~R8、R11~R14)を備えており、前記蛍光弁別部が、前記蛍光を、前記第1特定波長帯域に対応して設定された第1観察波長帯域(WB1)、前記第2特定波長帯域に対応して設定された第2観察波長帯域(WB2)、前記第3特定波長帯域に対応して設定された第3観察波長帯域(WB3)、及び前記第4特定波長帯域に対応して設定された第4観察波長帯域(WB4)毎に弁別する。
【0015】
或いは、本発明の一態様による共焦点スキャナは、前記光学フィルタが、波長の長さ順に並べられる第1特定波長帯域(λ1)、第2特定波長帯域(λ2)、第3特定波長帯域(λ3)、及び第4特定波長帯域(λ4)のうち、前記第1特定波長帯域及び第3特定波長帯域の光を透過させる第1領域(R21)と、前記第2特定波長帯域及び第4特定波長帯域の光を透過させる第2領域(R22)と、を備えており、前記蛍光弁別部が、前記蛍光を、前記第1特定波長帯域に対応して設定された第1観察波長帯域(WB1)、前記第2特定波長帯域に対応して設定された第2観察波長帯域(WB2)、前記第3特定波長帯域に対応して設定された第3観察波長帯域(WB3)、及び前記第4特定波長帯域に対応して設定された第4観察波長帯域(WB4)毎に弁別する。
【0016】
本発明の一態様による顕微鏡システム(1)は、複数の波長を含む光を出力する光源部(10)と、前記光源部から出力される光から試料を走査するための照明光を生成するとともに、前記照明光を前記試料に照射して得られる蛍光を前記観察波長帯域毎に弁別する上記の何れかに記載の共焦点スキャナ(20)と、前記試料の前記観察波長帯域毎の共焦点像を撮影する複数の撮影装置(30a~30d)と、前記撮影装置で撮影された前記共焦点像の画像処理を行う画像処理装置(40)と、を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、蛍光クロストークの影響が殆ど無く、解像度及びコントラストが優れた共焦点像を得ることができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態による顕微鏡システムの要部構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態によるスピニングディスクを示す図である。
【
図3】本発明の実施形態において、試料に照射される照明光の波長と、観察の対象となっている波長帯域との関係の一例を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態によるスピニングディスクの変形例を示す側面図である。
【
図5】本発明の実施形態によるスピニングディスクの他の変形例を示す平面透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態によるスピニングディスク、共焦点スキャナ、及び顕微鏡システムについて詳細に説明する。以下では、まず本発明の実施形態の概要について説明し、続いて本発明の実施形態の詳細について説明する。
【0020】
〔概要〕
本発明の実施形態は、蛍光クロストークの影響が殆ど無く、解像度及びコントラストが優れた共焦点像を得ることができるスピニングディスク、共焦点スキャナ、及び顕微鏡システムを提供するものである。具体的には、第1ディスク及び光学フィルタによって、複数の波長を含む光から、予め規定された領域毎に異なる特定波長帯域の光のみが含まれる照明光を試料に照射することで、蛍光クロストークの影響が殆ど無く、解像度及びコントラストが優れた共焦点像を得ることができるようにするものである。
【0021】
ここで、上述した特許文献1に開示された発明では、波長が異なる複数の励起光を含む光を試料に照射し、試料から得られる蛍光を観察波長帯域毎に弁別することで、同一箇所における多色の共焦点像を同時に得るようにしている。また、上述した特許文献2に開示された技術では、ある程度波長が離れた2つの励起光が含まれる照明光を試料に照射することでスペクトルの重なりが少ない蛍光を得て、試料から得られる蛍光を観察波長帯域毎に弁別することで、同一箇所における多色の共焦点像を同時に得るようにしている。
【0022】
上述した特許文献1に開示された発明は、波長が異なる複数の励起光を含む光を試料に照射していることから、照明光に含まれる励起光の波長が近い場合には、試料から得られる蛍光はスペクトルが重なり合ったものとなることがある。このようなスペクトルが重なった蛍光は、観察波長帯域毎に弁別することが困難であることから、蛍光クロストークが生じてしまう。その結果、共焦点像の解像度及びコントラストの低下が引き起こされることがある。
【0023】
上述した特許文献2に開示された技術は、ある程度波長が離れた2つの励起光が含まれる照明光を試料に照射することにより、スペクトルの重なりが少ない蛍光を得て、蛍光クロストークを低減するようにしている。しかしながら、上述した特許文献2に開示された技術では、上述の通り、ある程度波長が離れた2つの励起光が含まれる照明光を試料に照射する必要があることから、同時に得ることができる同一箇所における共焦点像の波長帯域が制限されることが考えられる。
【0024】
本発明の実施形態では、複数のピンホールを有し、回転可能に構成された第1ディスクと、第1ディスクとともに回転可能であり、第1ディスクの回転軸に垂直な面内における予め規定された領域毎に異なる特定波長帯域の光を透過させる光学フィルタと、を備えるスピニングディスクによって、複数の波長を含む光から、予め規定された領域毎に異なる特定波長帯域の光のみが含まれる照明光を試料に照射するようにしている。これにより、照明光が照射された箇所からは、特定波長帯域の光が試料に個別に照射されたときの蛍光が得られるため、蛍光クロストークの影響が殆ど無く、解像度及びコントラストが優れた共焦点像を得ることができる。
【0025】
また、本発明の実施形態では、第1ディスクの回転とともに光学フィルタが回転するため、試料に照射される照明光の波長帯域(特定波長帯域)が順次切り替わる。これにより、異なる特定波長帯域の光を試料に照明光として順次照射したときの共焦点像を順次得ることができる。
【0026】
〔実施形態〕
〈顕微鏡システムの要部構成〉
図1は、本発明の実施形態による顕微鏡システムの要部構成を示す図である。
図1に示す通り、本実施形態の顕微鏡システム1は、光源部10、共焦点スキャナ20、カメラ30a~30d(撮影装置)、画像処理装置40、及び表示装置50を備える。
【0027】
このような顕微鏡システム1は、光源部10から出力される光から試料SPを走査するための照明光を共焦点スキャナ20で生成し、照明光が照射される試料SPの共焦点像をカメラ30a~30dで撮影する。そして、顕微鏡システム1は、カメラ30a~30dで撮影された共焦点像を画像処理装置40で画像処理して表示装置50に表示するものである。
【0028】
光源部10は、試料SPを照明するために必要となる光を出力する。光源部10から出力される光は、コヒーレント光(レーザ光)であってもよく、インコヒーレント光であっても良い。尚、本実施形態では、理解を容易にするために、光源部10から出力される光はレーザ光であるとする。
【0029】
光源部10は、複数の波長を含む光を出力する。例えば、光源部10は、波長λ1(第1特定波長帯域)のレーザ光、波長λ2(第2特定波長帯域)のレーザ光、波長λ3(第3特定波長帯域)のレーザ光、波長λ4(第4特定波長帯域)のレーザ光を含む光を出力する。例えば、波長λ1は405[nm]であり、波長λ2は488[nm]であり、波長λ3は561[nm]であり、波長λ4は640[nm]である。尚、光源部10は、これらの波長を含む白色光を出力するものであっても良い。また、光源部10から出力される光の波長範囲は、上記の波長範囲(405~640[nm])に制限される訳ではなく、試料SPの光学的な特性に応じた任意の波長範囲にすることができる。
【0030】
共焦点スキャナ20は、光源部10から出力される光から試料SPを走査するための照明光を生成するとともに、照明光を試料SPに照射して得られる反射光や蛍光等(以下、これらを総称する場合には、単に「戻り光」という)をカメラ30a~30dに導くものである。共焦点スキャナ20は、スピニングディスク21、対物光学系22、ダイクロイックミラー23、リレー光学系24(蛍光弁別部)、ダイクロイックミラー25a~25c(蛍光弁別部)、リレー光学系26a~26d(蛍光弁別部)、及びバンドパスフィルタ27a~27d(蛍光弁別部)を備える。
【0031】
スピニングディスク21は、光源部10から出力される光から、試料SPを走査するための照明光を生成する。
図2は、本発明の実施形態によるスピニングディスクを示す図である。尚、
図2(a)は、スピニングディスク21の側面図であり、
図2(b)は、スピニングディスク21の平面透視図である。
図2に示す通り、スピニングディスク21は、マイクロレンズアレイディスク31(第2ディスク)、ピンホールアレイディスク32(第1ディスク)、バンドパスコーティング33(光学フィルタ)、及び回転軸34を備える。尚、
図1では、図示を簡略化するために、マイクロレンズアレイディスク31及びピンホールアレイディスク32等を回転軸34の周りに回転駆動するモータの図示は省略している。
【0032】
マイクロレンズアレイディスク31は、所定のパターンに形成された複数のマイクロレンズ31aを有する円板状のディスクである。このマイクロレンズアレイディスク31の第1面P11に設定された照射領域A1(
図2(b)参照)には光源部10から出力される光が照射される。ピンホールアレイディスク32は、マイクロレンズアレイディスク31のマイクロレンズ31aに対応づけられて形成された複数のピンホール32aを有する円板状のディスクである。ピンホールアレイディスク32のピンホール32aは、
図2(b)に示す通り、螺旋放射状に配列されて形成されている。尚、マイクロレンズアレイディスク31のマイクロレンズ31aも、
図2(b)に示すピンホール32aと同様に、螺旋放射状に形成されている。
【0033】
バンドパスコーティング33は、マイクロレンズアレイディスク31の第2面P12に形成されており、光源部10から出力される光から、回転軸34に垂直な面内における予め規定された領域毎に異なる特定波長帯域の光を透過させるものである。このバンドパスコーティング33は、試料SPの一箇所に特定波長帯域の光のみが照射される(複数の波長を含む光が照射されない)ようにするためのものである。尚、試料SPの一箇所に複数の特定波長帯域の光が照射されることはないが、試料SPの異なる箇所に異なる特定波長帯域の光が同時に照射されることがある点に注意されたい。
【0034】
バンドパスコーティング33は、例えば、
図2(b)に示す通り、回転軸34に垂直な面内において、螺旋放射状の8つの領域R1~R8に均等に分割されている。例えば、
図2(b)において、領域R1,R5は波長λ1の光を透過させる領域であり、領域R2,R6は波長λ2の光を透過させる領域であり、領域R3,R7は波長λ3の光を透過させる領域であり、領域R4,R8は、波長λ4の光を透過させる領域である。尚、領域R1~R8は、領域R1~R8の何れか2つが同じ波長の光を透過させるように設定されていれば良く、回転軸34の周りにおいて、透過させる波長の長さの順に配列されている必要は必ずしもない。
【0035】
回転軸34の両端にはマイクロレンズアレイディスク31及びピンホールアレイディスク32がそれぞれ取り付けられている。よって、マイクロレンズアレイディスク31及びピンホールアレイディスク32は、回転軸34の周りでともに(一体的に)回転可能に構成されている。尚、バンドパスコーティング33は、マイクロレンズアレイディスク31の第2面P12に形成されていることから、マイクロレンズアレイディスク31及びピンホールアレイディスク32とともに回転軸34の周りで回転可能である。
【0036】
マイクロレンズアレイディスク31に形成されたマイクロレンズ31a、ピンホールアレイディスク32に形成されたピンホール32a、及びバンドパスコーティング33の領域R1~R8の関係は、スピニングディスク21が回転しても変わらない。このため、ピンホールアレイディスク32に設けられたピンホール32aの各々を通過する照明光は、波長λ1のレーザ光、波長λ2のレーザ光、波長λ3のレーザ光、波長λ4のレーザ光の何れかとなる。
【0037】
対物光学系22は、スピニングディスク21で生成された照明光を試料SPに照射するとともに、試料SPに照明光を照射して得られる戻り光をスピニングディスク21に導く。尚、
図1では、対物光学系22及び試料SPを共焦点スキャナ20の内部に図示しているが、対物光学系22及び試料SPは、共焦点スキャナ20の外部に設けられていても良い。
【0038】
ダイクロイックミラー23は、試料SPに照射される光(照明光)を透過させるとともに、試料SPに照明光を照射して得られる戻り光をリレー光学系24に向けて反射する。具体的に、ダイクロイックミラー23は、対物光学系22の光軸上であって、スピニングディスク21に設けられたマイクロレンズアレイディスク31とピンホールアレイディスク32との間に配置されている。尚、ダイクロイックミラー23に代えて、ハーフミラーを用いることもできる。
【0039】
尚、ダイクロイックミラー23は、マイクロレンズアレイディスク31に設けられたマイクロレンズ31aで分割・収束された複数の光束を透過させる。ダイクロイックミラー23を透過した光束は、ピンホールアレイディスク32に設けられたピンホール32aに集光され、ピンホール32aを通過してスピニングディスク21の外部に射出される。
【0040】
リレー光学系24とリレー光学系26a~26dとは、ダイクロイックミラー23で反射された戻り光を、カメラ30a~30dに導く光学系を構成する。リレー光学系24とリレー光学系26a~26dとによって構成される光学系は、像のシェーディング(明るさの不均一性)を無くすために、テレセントリック光学系であることが望ましい。ここで、テレセントリック光学系とは、主光線が光軸に対して平行である光学系のことをいう。
【0041】
リレー光学系24とリレー光学系26a~26dとによってテレセントリック光学系が構成される場合には、リレー光学系24の物体側焦点面は、ピンホールアレイディスク32のピンホール32aの位置に設定される対物光学系22の像側焦点面と一致するように設定される。また、リレー光学系26a~26dの像側焦点面はそれぞれ、カメラ30a~30dの撮像面に一致するように設定される。
【0042】
ダイクロイックミラー25a~25cは、リレー光学系24とリレー光学系26dとの間の光軸上に順に配置され、ダイクロイックミラー23で反射された戻り光を、波長に応じて反射又は透過させる。ダイクロイックミラー25a~25cは、概して、短波長帯域の光を反射させ、長波長帯域の光を透過させる。
【0043】
具体的に、ダイクロイックミラー25aは、波長λ1の照明光を試料SPに照射して得られる蛍光の、観察の対象となっている波長帯域WB1(第1波長観察帯域)の光を反射させ、波長帯域WB1よりも長波長帯域の光を透過させる。ダイクロイックミラー25bは、波長λ2の照明光を試料SPに照射して得られる蛍光の、観察の対象となっている波長帯域WB2(第2波長観察帯域)の光を反射させ、波長帯域WB2よりも長波長帯域の光を透過させる。
【0044】
ダイクロイックミラー25cは、波長λ3の照明光を試料SPに照射して得られる蛍光の、観察の対象となっている波長帯域WB3(第3波長観察帯域)の光を反射させ、波長帯域WB3よりも長波長帯域の光を透過させる。ダイクロイックミラー25cを透過した光には、波長λ4の照明光を試料SPに照射して得られる蛍光の、観察の対象となっている波長帯域WB4(第4波長観察帯域)の光が含まれる。
【0045】
図3は、本発明の実施形態において、試料に照射される照明光の波長と、観察の対象となっている波長帯域との関係の一例を示す図である。
図3に示す通り、試料SPに波長λ1の照明光が照射された場合にはスペクトルSP1を有する蛍光が得られ、試料SPに波長λ2の照明光が照射された場合にはスペクトルSP2を有する蛍光が得られる。また、試料SPに波長λ3の照明光が照射された場合にはスペクトルSP3を有する蛍光が得られ、試料SPに波長λ4の照明光が照射された場合にはスペクトルSP4を有する蛍光が得られる。
【0046】
試料SPに照射される照明光の波長λ1が405[nm]である場合の波長帯域WB1は、例えば、422.5~476.5[nm]に設定され、試料SPに照射される照明光の波長λ2が488[nm]である場合の波長帯域WB2は、例えば、500.5~550[nm]に設定される。また、試料SPに照射される照明光の波長λ3が561[nm]である場合の波長帯域WB3は、例えば、581.5~618.5[nm]であり、試料SPに照射される照明光の波長λ4が640[nm]である場合の波長帯域WB4は、例えば、661.5~690.5[nm]である。尚、上述した波長帯域WB1~WB4はあくまでも一例であって、試料SPに照射されるレーザ光の波長に応じて任意の波長帯域を設定することができる。
【0047】
バンドパスフィルタ27a~27dは、ある波長帯域の光を透過させ、他の波長帯域の光を遮断する特性を有するフィルタである。具体的に、バンドパスフィルタ27aは、波長帯域WB1の光を透過させる特性を有し、バンドパスフィルタ27bは、波長帯域WB2の光を透過させる特性を有し、バンドパスフィルタ27cは、波長帯域WB3の光を透過させる特性を有し、バンドパスフィルタ27dは、波長帯域WB4の光を透過させる特性を有する。
【0048】
尚、リレー光学系26a及びバンドパスフィルタ27aは、ダイクロイックミラー25aで反射される光の光路上に配置され、リレー光学系26b及びバンドパスフィルタ27bは、ダイクロイックミラー25bで反射される光の光路上に配置され、リレー光学系26c及びバンドパスフィルタ27cは、ダイクロイックミラー25cで反射される光の光路上に配置されている。リレー光学系26d及びバンドパスフィルタ27dは、ダイクロイックミラー25cを透過した光の光路上に配置されている。
【0049】
カメラ30a~30dは、試料SPの共焦点像を得るものである。このカメラ30a~30dは、例えばCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)等の固体撮像素子を備えており、二次元の静止画像又は動画を撮影可能なカメラである。カメラ30a~30dは、バンドパスフィルタ27a~27dを介した光が撮像面に入射するよう、共焦点スキャナ20に対して位置合わせされている。
【0050】
画像処理装置40は、カメラ30a~30dで撮影された共焦点像の画像データを逐次記憶し、記憶した画像データを読み出して画像処理を行う。この画像処理装置40としては、例えばデスクトップ型のパーソナルコンピュータ、或いはワークステーションにより実現される。表示装置50は、例えば液晶表示装置を備えており、画像処理装置40で画像処理がれた共焦点像を表示する。
【0051】
〈顕微鏡システムの動作〉
顕微鏡システム1の動作が開始されると、光源部10から波長λ1~λ4のレーザ光を含む光が出力されるとともに、スピニングディスク21の回転(回転軸34の周りの回転)が開始される。光源部10から出力された光は、共焦点スキャナ20に入力される。共焦点スキャナ20に入力された光は、スピニングディスク21のマイクロレンズアレイディスク31の第1面P11に設定された照射領域A1(
図2(b)参照)に照射される。
【0052】
マイクロレンズアレイディスク31に照射された光は、マイクロレンズアレイディスク31に設けられたマイクロレンズ31aで複数の光束に分割される。マイクロレンズ31aで分割された複数の光束は、マイクロレンズアレイディスク31の第2面P12に形成されたバンドパスコーティング33に入射する。そして、各々の光束に含まれる複数の波長成分のうち、
図2(b)に示す領域R1~R8毎に異なる波長の光のみがバンドパスコーティング33を通過することとなる。
【0053】
例えば、バンドパスコーティング33の領域R1,R5に入射した光束については、波長λ1の光のみが通過し、バンドパスコーティング33の領域R2,R6に入射した光束については、波長λ2の光のみが通過する。また、バンドパスコーティング33の領域R3,R7に入射した光束については、波長λ3の光のみが通過し、バンドパスコーティング33の領域R4,R8に入射した光束については、波長λ4の光のみが通過する。
【0054】
バンドパスコーティング33を通過した光は、ダイクロイックミラー23を透過し、マイクロレンズ31aに対応づけてピンホールアレイディスク32に形成されたピンホール32aを介して照明光としてスピニングディスク21の外部に射出される。このとき、ダイクロイックミラー23を透過した光は、ピンホール32aに集光されてからスピニングディスク21の外部に射出される。
【0055】
スピニングディスク21の外部に射出された照明光は、対物光学系22を介して試料SPに照射される。ここで、試料SPの異なる箇所に異なる波長の光が同時に照射されることはあるものの、試料SPの一箇所には特定の波長の光のみが照射され、複数の波長を含む光が照射されることはない。つまり、試料SPは、局所的に見ると、所謂単色励起される。
【0056】
試料SPからの戻り光(照明光を試料SPに照射して得られた戻り光)は、対物光学系22を介して、スピニングディスク21に入射する。そして、スピニングディスク21のピンホールアレイディスク32に形成されたピンホール32aを介した後に、ダイクロイックミラー23によってリレー光学系24に向けて反射される。
【0057】
ダイクロイックミラー23で反射された戻り光は、リレー光学系24、ダイクロイックミラー25a~25c、リレー光学系26a~26d、及びバンドパスフィルタ27a~27dを順に介してカメラ30a~30dに入射し結像する。
【0058】
具体的に、ダイクロイックミラー23で反射された戻り光のうち、波長帯域WB1の光は、リレー光学系24、ダイクロイックミラー25a、リレー光学系26a、及びバンドパスフィルタ27aを順に介してカメラ30aに入射し結像する。また、ダイクロイックミラー23で反射された戻り光のうち、波長帯域WB2の光は、リレー光学系24、ダイクロイックミラー25a,25b、リレー光学系26b、及びバンドパスフィルタ27bを順に介してカメラ30bに入射し結像する。
【0059】
また、ダイクロイックミラー23で反射された戻り光のうち、波長帯域WB3の光は、リレー光学系24、ダイクロイックミラー25a~25c、リレー光学系26c、及びバンドパスフィルタ27cを順に介してカメラ30cに入射し結像する。また、ダイクロイックミラー23で反射された戻り光のうち、波長帯域WB4の光は、リレー光学系24、ダイクロイックミラー25a~25c、リレー光学系26d、及びバンドパスフィルタ27dを順に介してカメラ30dに入射し結像する。
【0060】
ここで、スピニングディスク21は回転軸34の周りで回転していることから、試料SPに照射される照明光はスピニングディスク21の回転に応じて走査される。これにより、カメラ30a~30dには、照明光の走査位置に応じた戻り光が順次入力される。このようにして、試料SPの共焦点像がカメラ30a~30dで得られる。
【0061】
尚、バンドパスコーティング33は、
図2(b)に示す通り、回転軸34に垂直な面内において、螺旋放射状の8つの領域R1~R8に均等に分割されている。このため、試料SPは、順次異なる波長の照明光で走査されたり、異なる位置が異なる波長の照明光で同時に走査されたりする。このため、カメラ30a~30dで得られる共焦点像は、試料SPに照明光が照射される領域(観察対象領域)の一部についてのものになることある。
【0062】
カメラ30a~30dで撮影された共焦点像の画像データは、画像処理装置40に順次出力される。そして、画像処理装置40では、カメラ30a~30dから順次出力される画像データを逐次記憶し、記憶した画像データを読み出して試料SPの共焦点像を作成するための画像処理が行われる。この画像処理は、例えば、観察対象領域の一部についての共焦点像を合成して、観察対象領域全体の共焦点像を得る処理である。このようにして得られた試料SPの共焦点像は、表示装置50に表示される。
【0063】
以上の通り、本実施形態では、マイクロレンズアレイディスク31、ピンホールアレイディスク32、及びバンドパスコーティング33を備えるスピニングディスク21を用い、試料SPの一箇所には特定の波長の照明光のみが照射されるようにしている。これにより、照明光が照射された箇所からは、特定の波長の光が試料に個別に照射されたときの蛍光が得られるため、蛍光クロストークの影響が殆ど無く、解像度及びコントラストが優れた共焦点像を得ることができる。
【0064】
また、本実施形態では、試料SPの観察対象領域の一箇所に複数の波長を含む照明光が照射されることはないが、試料SPの観察対象領域は、異なる波長λ1~λ4の光で走査されることになる。このため、観察対象領域について、異なる波長λ1~λ4の各々についての共焦点像を得ることができ、前述した特許文献2のように、同時に得ることができる同一箇所における共焦点像の波長帯域が制限されることはない。
【0065】
また、本実施形態では、試料SPからの戻り光(照明光を試料SPに照射して得られた戻り光)は、ダイクロイックミラー23によってリレー光学系24に向けて反射され、マイクロレンズアレイディスク31に形成されたバンドパスコーティング33を透過することはない。このため、使用する蛍光色素の種類の自由度を高めることができる。
【0066】
〈変形例〉
図4は、本発明の実施形態によるスピニングディスクの変形例を示す側面図である。尚、
図4においては、
図2(a)に示す構成と同じ構成については同一の符号を付してある。
図4(a)に示すスピニングディスク21は、
図2に示すスピニングディスク21のマイクロレンズアレイディスク31に形成されていたバンドパスコーティング33を省略し、補助ディスク35(第3ディスク)を追加した構成である。
【0067】
補助ディスク35は、少なくとも光源部10から出力される光に対して透明な円板状のディスクである。例えば、補助ディスク35は、透明なガラスで形成された円板状のディスクである。補助ディスク35は、マイクロレンズアレイディスク31及びピンホールアレイディスク32とともに(一体的に)、回転軸34の周りで回転可能に構成されている。この補助ディスク35の第1面P31には、バンドパスコーティング33が形成されている。補助ディスク35は、
図4(a)に示す通り、第2面P32をマイクロレンズアレイディスク31の第1面P11側に向けた状態で、マイクロレンズアレイディスク31に近接配置されている。
【0068】
尚、補助ディスク35は、バンドパスコーティング33が形成された第1面P31をマイクロレンズアレイディスク31の第1面P11側に向けた状態で、マイクロレンズアレイディスク31に近接配置されていても良い。また、補助ディスク35は、マイクロレンズアレイディスク31とピンホールアレイディスク32との間において、マイクロレンズアレイディスク31に近接配置されていても良い。
【0069】
このように、
図4(a)に示すスピニングディスク21は、マイクロレンズアレイディスク31とは別に、バンドパスコーティング33が形成されている補助ディスク35を設けたものである。
図4(a)に示すスピニングディスク21では、マイクロレンズアレイディスク31にバンドパスコーティング33を形成する必要はないため、スピニングディスク21を容易に作成することができる。
【0070】
図4(b)に示すスピニングディスク21は、
図2に示すスピニングディスク21のマイクロレンズアレイディスク31に形成されていたバンドパスコーティング33を省略し、ピンホールアレイディスク32にバンドパスコーティング33を形成した構成である。バンドパスコーティング33は、
図4(b)に示す通り、ピンホールアレイディスク32の第1面P21に形成されている。尚、ピンホールアレイディスク32は、ピンホールアレイディスク32の第2面P22に形成されていても良い。
【0071】
図4(c)に示すスピニングディスク21は、
図4(a)に示すスピニングディスク21と同様に、
図2に示すスピニングディスク21のマイクロレンズアレイディスク31に形成されていたバンドパスコーティング33を省略し、補助ディスク35(第3ディスク)を追加した構成である。但し、
図4(c)に示すスピニングディスク21において、補助ディスク35は、ピンホールアレイディスク32に近接配置されている。
【0072】
具体的に、補助ディスク35は、バンドパスコーティング33が形成された第1面P31をピンホールアレイディスク32の第2面P22側に向けた状態で、ピンホールアレイディスク32に近接配置されている。尚、補助ディスク35は、第2面P32をピンホールアレイディスク32の第2面P22側に向けた状態でピンホールアレイディスク32に近接配置されていても良い。また、補助ディスク35は、マイクロレンズアレイディスク31とピンホールアレイディスク32との間において、ピンホールアレイディスク32に近接配置されていても良い。
【0073】
このように、
図4(c)に示すスピニングディスク21は、
図4(a)に示すスピニングディスク21と同様に、マイクロレンズアレイディスク31とは別に、バンドパスコーティング33が形成されている補助ディスク35を設けたものである。このため、
図4(c)に示すスピニングディスク21では、ピンホールアレイディスク32にバンドパスコーティング33を形成する必要はないため、スピニングディスク21を容易に作成することができる。
【0074】
図4(d)に示すスピニングディスク21は、
図2に示すスピニングディスク21のマイクロレンズアレイディスク31に代えて、補助ディスク35を設けた構成である。補助ディスク35は、第2面P32をピンホールアレイディスク32の第1面P21側に向けた状態で回転軸34に取り付けられている。尚、補助ディスク35は、バンドパスコーティング33が形成された第1面P31をピンホールアレイディスク32の第1面P21側に向けた状態で回転軸34に取り付けられていても良い。
【0075】
図5は、本発明の実施形態によるスピニングディスクの他の変形例を示す平面透視図である。尚、
図5においては、
図2(b)示す構成と同じ構成については同一の符号を付してある。
図5(a),(b)に示すスピニングディスク21は、
図2に示すスピニングディスク21のマイクロレンズアレイディスク31に形成されていたバンドパスコーティング33の分割方法を変えたものである。
【0076】
図5(a)に示すスピニングディスク21において、バンドパスコーティング33は、回転軸34に垂直な面内において、中心から径方向に伸びる直線で4つの領域R11~R14に均等に分割されている。例えば、領域R11は波長λ1の光を透過させる領域であり、領域R12は波長λ2の光を透過させる領域であり、領域R13は波長λ3の光を透過させる領域であり、領域R14は、波長λ4の光を透過させる領域である。尚、領域R11~R14は、回転軸34の周りにおいて、透過させる波長の長さの順に配列されている必要は必ずしもない。
【0077】
図5(b)に示すスピニングディスク21において、バンドパスコーティング33は、回転軸34に垂直な面内において、中心から径方向に伸びる直線で2つの領域R21(第1領域)と領域R22(第2領域)とに均等に分割されている。例えば、領域R21は波長λ1の光と波長λ3の光とを透過させる領域であり、領域R22は波長λ2の光と波長λ4の光とを透過させる領域である。
【0078】
図5(b)に示すスピニングディスク21では、複数の波長の含む照明光が試料SPに照射される。具体的には、波長λ1の光と波長λ3の光とを含む照明光、又は、波長λ2の光と波長λ4の光とを含む照明光が、試料SPの一箇所に照射される。但し、試料SPに照射される照明光に含まれる波長λ1,λ3の光はある程度波長が離れている。また、試料SPに照射される照明光に含まれる波長λ2,λ4の光も、ある程度波長が離れている。このため、多少の蛍光クロストークは生じ得るものの、解像度及びコントラストが優れた共焦点像を得ることができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態によるスピニングディスク、共焦点スキャナ、及び顕微鏡システムについて説明したが、本発明は上記実施形態に制限されることなく本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、光源部10から4つの波長λ1~λ4を含む光が出力され、試料SPから得られる戻り光を共焦点スキャナ20で4つの波長帯域WB1~WB4に弁別する例について説明した。しかしながら、光源部10から出力される光に含まれる波長は4つ以外(例えば、2つ、3つ、又は5つ以上)であっても良く、共焦点スキャナ20で弁別される波長帯域は4つ以外(例えば、2つ、3つ、又は5つ以上)であっても良い。
【符号の説明】
【0080】
1 顕微鏡システム
10 光源部
20 共焦点スキャナ
21 スピニングディスク
24 リレー光学系
25a~25c ダイクロイックミラー
26a~26d リレー光学系
27a~27d バンドパスフィルタ
30a~30d カメラ
31 マイクロレンズアレイディスク
31a マイクロレンズ
32 ピンホールアレイディスク
32a ピンホール
33 バンドパスコーティング
34 回転軸
35 補助ディスク
40 画像処理装置
R1~R8 領域
R11~R14 領域
R21,R22 領域
SP 試料
WB1~WB4 波長帯域
λ1~λ4 波長