(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】事故パターン判定装置、事故パターン判定方法、及び事故パターン判定プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
G08G1/00 A
(21)【出願番号】P 2020041407
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 真貴
(72)【発明者】
【氏名】武藤 健二
(72)【発明者】
【氏名】竹中 一仁
(72)【発明者】
【氏名】平野 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 駿
(72)【発明者】
【氏名】竹内 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】清水 駿
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-055296(JP,A)
【文献】特開2017-146933(JP,A)
【文献】特開2019-114094(JP,A)
【文献】特開2004-171060(JP,A)
【文献】特開2000-331278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた複数の交通状況の各々に対する属性を記憶した属性記憶部(104)と、
車両に関する事故事例毎に、前記事故事例における前記交通状況の組み合わせを取得する交通状況取得部(102)と、
事故事例毎に取得した前記交通状況の組み合わせと、前記複数の交通状況の各々に対する属性とに基づいて、特定の車両若しくは特定の運転者における事故リスクが高い前記交通状況の組み合わせ、又は前記事故リスクが低い前記交通状況の組み合わせを判定する判定部(105)と、
を含み、
前記特定の車両は、自動運転車両であって、
前記属性は、自動運転機能が不調にな
る状況であること、及びドライバの運転に影響を与え
る状況であることを含み、
前記判定部は、前記ドライバの運転に影響を与え
る状況であることを示す属性が対応付けられた前記交通状況を含む
、前記交通状況の組み合わせについて、
前記ドライバの運転に影響を与える状況であることを示す属性が対応付けられた前記交通状況を含む、前記交通状況の組み合わせに対する事故事例の数と、
前記ドライバの運転に影響を与え
る状況であることを示す属性が対応付けられた前記交通状況以外の交通状況の組み合わせが共通し、かつ、前記ドライバの運転に影響を与え
る状況であることを示す属性が対応付けられた前記交通状況を含まない
、前記交通状況の組み合わせに対する事故事例の数と
を比較して、前記自動運転車両における事故リスクが低いか否かを判定する
事故パターン判定装置(10)。
【請求項2】
予め定められた複数の交通状況の各々に対する属性を記憶した属性記憶部(104)と、
車両に関する事故事例毎に、前記事故事例における前記交通状況の組み合わせを取得する交通状況取得部(102)と、
事故事例毎に取得した前記交通状況の組み合わせと、前記複数の交通状況の各々に対する属性とに基づいて、特定の車両若しくは特定の運転者における事故リスクが高い前記交通状況の組み合わせ、又は前記事故リスクが低い前記交通状況の組み合わせを判定する判定部(105)と、
を含み、
前記特定の車両は、自動運転車両であって、
前記属性は、自動運転機能が不調にな
る状況であること、及びドライバの運転に影響を与え
る状況であることを含み、
前記判定部は、前記自動運転機能が不調にな
る状況であることを示す属性が対応付けられた前記交通状況を含む
、前記交通状況の組み合わせについて、
前記ドライバの運転に影響を与える状況であることを示す属性が対応付けられた前記交通状況を含む、前記交通状況の組み合わせに対する事故事例の数と、
前記自動運転機能が不調にな
る状況であることを示す属性が対応付けられた前記交通状況以外の交通状況の組み合わせが共通し、かつ、前記自動運転機能が不調にな
る状況であることを示す属性が対応付けられた前記交通状況を含まない
、前記交通状況の組み合わせに対する事故事例の数と
を比較して、前記自動運転車両における事故リスクが高いか否かを判定する
事故パターン判定装置(10)。
【請求項3】
前記判定部は、事故事例毎に取得した前記交通状況の組み合わせの各々について、前記事故リスクが高い前記交通状況の組み合わせであるか否か、及び前記事故リスクが低い前記交通状況の組み合わせであるか否かを判定し、
前記事故リスクが高い前記交通状況の組み合わせであると判定されず、かつ、前記事故リスクが低い前記交通状況の組み合わせであると判定されなかった前記交通状況の組み合わせを、シミュレーションで前記事故リスクを判定すべきものであると判定する請求項1又は2記載の事故パターン判定装置。
【請求項4】
予め定められた複数の交通状況の各々に対する属性を記憶した属性記憶部(104)を含む事故パターン判定装置における事故パターン判定方法であって、
交通状況取得部(102)が、車両に関する事故事例毎に、前記事故事例における前記交通状況の組み合わせを取得し、
判定部(105)が、事故事例毎に取得した前記交通状況の組み合わせと、前記複数の交通状況の各々に対する属性とに基づいて、特定の車両若しくは特定の運転者における事故リスクが高い前記交通状況の組み合わせ、又は前記事故リスクが低い前記交通状況の組み合わせを判定することを含み、
前記特定の車両は、自動運転車両であって、
前記属性は、自動運転機能が不調にな
る状況であること、及びドライバの運転に影響を与え
る状況であることを含み、
前記判定部は、前記ドライバの運転に影響を与え
る状況であることを示す属性が対応付けられた前記交通状況を含む
、前記交通状況の組み合わせについて、
前記ドライバの運転に影響を与える状況であることを示す属性が対応付けられた前記交通状況を含む、前記交通状況の組み合わせに対する事故事例の数と、
前記ドライバの運転に影響を与え
る状況であることを示す属性が対応付けられた前記交通状況以外の交通状況の組み合わせが共通し、かつ、前記ドライバの運転に影響を与え
る状況であることを示す属性が対応付けられた前記交通状況を含まない
、前記交通状況の組み合わせに対する事故事例の数と
を比較して、前記自動運転車両における事故リスクが低いか否かを判定する
事故パターン判定方法。
【請求項5】
予め定められた複数の交通状況の各々に対する属性を記憶した属性記憶部(104)を含む事故パターン判定装置における事故パターン判定方法であって、
交通状況取得部(102)が、車両に関する事故事例毎に、前記事故事例における前記交通状況の組み合わせを取得し、
判定部(105)が、事故事例毎に取得した前記交通状況の組み合わせと、前記複数の交通状況の各々に対する属性とに基づいて、特定の車両若しくは特定の運転者における事故リスクが高い前記交通状況の組み合わせ、又は前記事故リスクが低い前記交通状況の組み合わせを判定することを含み、
前記特定の車両は、自動運転車両であって、
前記属性は、自動運転機能が不調にな
る状況であること、及びドライバの運転に影響を与え
る状況であることを含み、
前記判定部は、前記自動運転機能が不調にな
る状況であることを示す属性が対応付けられた前記交通状況を含む
、前記交通状況の組み合わせについて、
前記ドライバの運転に影響を与える状況であることを示す属性が対応付けられた前記交通状況を含む、前記交通状況の組み合わせに対する事故事例の数と、
前記自動運転機能が不調にな
る状況であることを示す属性が対応付けられた前記交通状況以外の交通状況の組み合わせが共通し、かつ、前記自動運転機能が不調にな
る状況であることを示す属性が対応付けられた前記交通状況を含まない
、前記交通状況の組み合わせに対する事故事例の数と
を比較して、前記自動運転車両における事故リスクが高いか否かを判定する
事故パターン判定方法。
【請求項6】
予め定められた複数の交通状況の各々に対する属性を記憶した属性記憶部(104)を含むコンピュータ(10)を、
車両に関する事故事例毎に、前記事故事例における前記交通状況の組み合わせを取得する交通状況取得部(102)、及び
事故事例毎に取得した前記交通状況の組み合わせと、前記複数の交通状況の各々に対する属性とに基づいて、特定の車両若しくは特定の運転者における事故リスクが高い前記交通状況の組み合わせ、又は前記事故リスクが低い前記交通状況の組み合わせを判定する判定部(105)
として機能させるための事故パターン判定プログラムであって、
前記特定の車両は、自動運転車両であって、
前記属性は、自動運転機能が不調にな
る状況であること、及びドライバの運転に影響を与え
る状況であることを含み、
前記判定部は、前記ドライバの運転に影響を与え
る状況であることを示す属性が対応付けられた前記交通状況を含む
、前記交通状況の組み合わせについて、
前記ドライバの運転に影響を与える状況であることを示す属性が対応付けられた前記交通状況を含む、前記交通状況の組み合わせに対する事故事例の数と、
前記ドライバの運転に影響を与え
る状況であることを示す属性が対応付けられた前記交通状況以外の交通状況の組み合わせが共通し、かつ、前記ドライバの運転に影響を与え
る状況であることを示す属性が対応付けられた前記交通状況を含まない
、前記交通状況の組み合わせに対する事故事例の数と
を比較して、前記自動運転車両における事故リスクが低いか否かを判定する事故パターン判定プログラム。
【請求項7】
予め定められた複数の交通状況の各々に対する属性を記憶した属性記憶部(104)を含むコンピュータ(10)を、
車両に関する事故事例毎に、前記事故事例における前記交通状況の組み合わせを取得する交通状況取得部(102)、及び
事故事例毎に取得した前記交通状況の組み合わせと、前記複数の交通状況の各々に対する属性とに基づいて、特定の車両若しくは特定の運転者における事故リスクが高い前記交通状況の組み合わせ、又は前記事故リスクが低い前記交通状況の組み合わせを判定する判定部(105)
として機能させるための事故パターン判定プログラムであって、
前記特定の車両は、自動運転車両であって、
前記属性は、自動運転機能が不調にな
る状況であること、及びドライバの運転に影響を与え
る状況であることを含み、
前記判定部は、前記自動運転機能が不調にな
る状況であることを示す属性が対応付けられた前記交通状況を含む
、前記交通状況の組み合わせについて、
前記ドライバの運転に影響を与える状況であることを示す属性が対応付けられた前記交通状況を含む、前記交通状況の組み合わせに対する事故事例の数と、
前記自動運転機能が不調にな
る状況であることを示す属性が対応付けられた前記交通状況以外の交通状況の組み合わせが共通し、かつ、前記自動運転機能が不調にな
る状況であることを示す属性が対応付けられた前記交通状況を含まない
、前記交通状況の組み合わせに対する事故事例の数と
を比較して、前記自動運転車両における事故リスクが高いか否かを判定する事故パターン判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事故パターン判定装置、事故パターン判定方法、及び事故パターン判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
過去の事故データから事故発生パターンを学習し、事故発生を予報する交通事故発生予報装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、手動運転の事故データから事故発生パターンを学習しているため、学習した事故発生パターンで、自動運転にとって事故が発生しやすいかが分からない。例えば、見落としや漫然運転などのヒューマンエラーに因る事故は、自動運転では発生しにくい。
【0005】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、特定の車両若しくは特定の運転者における事故リスクを簡易な処理で判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る事故パターン判定装置は、予め定められた複数の交通状況の各々に対する属性を記憶した属性記憶部と、車両に関する事故事例毎に、前記事故事例における前記交通状況の組み合わせを取得する交通状況取得部と、事故事例毎に取得した前記交通状況の組み合わせと、前記複数の交通状況の各々に対する属性とに基づいて、特定の車両若しくは特定の運転者における事故リスクが高い前記交通状況の組み合わせ、又は前記事故リスクが低い前記交通状況の組み合わせを判定する判定部と、を含んで構成される。
【0007】
また、本発明に係る事故パターン判定方法は、予め定められた複数の交通状況の各々に対する属性を記憶した属性記憶部を含む事故パターン判定装置における事故パターン判定方法であって、交通状況取得部が、車両に関する事故事例毎に、前記事故事例における前記交通状況の組み合わせを取得し、判定部が、事故事例毎に取得した前記交通状況の組み合わせと、前記複数の交通状況の各々に対する属性とに基づいて、特定の車両若しくは特定の運転者における事故リスクが高い前記交通状況の組み合わせ、又は前記事故リスクが低い前記交通状況の組み合わせを判定する方法である。
【0008】
また、本発明に係る事故パターン判定プログラムは、予め定められた複数の交通状況の各々に対する属性を記憶した属性記憶部を含むコンピュータを、車両に関する事故事例毎に、前記事故事例における前記交通状況の組み合わせを取得する交通状況取得部、及び事故事例毎に取得した前記交通状況の組み合わせと、前記複数の交通状況の各々に対する属性とに基づいて、特定の車両若しくは特定の運転者における事故リスクが高い前記交通状況の組み合わせ、又は前記事故リスクが低い前記交通状況の組み合わせを判定する判定部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る事故パターン判定装置、方法、及びプログラムによれば、特定の車両若しくは特定の運転者における事故リスクを簡易な処理で判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る事故パターン判定装置として機能するコンピュータの一例の概略ブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る事故パターン判定装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】事故パターンデータベースの一例を示す図である。
【
図4】交通状況属性データベースの一例を示す図である。
【
図5】ドライバ要因に基づく低リスク判定の方法を説明するための図である。
【
図6】ドライバ要因に基づく低リスク判定の方法を説明するための図である。
【
図7】AD不調要因に基づく高リスク判定の方法を説明するための図である。
【
図8】AD不調要因に基づく高リスク判定の方法を説明するための図である。
【
図9】本発明の実施の形態における事故パターン判定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】交通状況属性データベースの一例を示す図である。
【
図11】AD不調要因に基づく高リスク判定の方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態の詳細を説明する前に、本発明の実施の形態の概要について説明する。
【0012】
<本発明の実施の形態の概要>
従来技術では、人間ドライバの事故データから、人間ドライバにとって交通事故が発生しやすい交通状況のパターンを抽出している。また、シミュレーションで再現した交通状況下で自動運転車両を走行させ、交通事故が発生しやすいかを評価する。このとき、現実で起こりうるすべての交通状況をシミュレーションするのは困難なため、交通状況の絞り込みに人間ドライバの事故パターンを用いる。
【0013】
この場合、自動運転での交通事故の起こりやすさに関係なく一律にシミュレーションしなければならず、効率が悪い。また、脇見や居眠りが原因の事故パターンは、自動運転でリスクが高くないことが明らかである。また、自動運転で用いるセンサの不調要因に該当する事故パターンは、自動運転でリスクが高いことが明らかである。
【0014】
そこで、本実施の形態では、交通状況ごとに自動運転のリスクとの関係の有無に応じた属性を付与しておき、事故パターンを構成する交通状況の属性によってシミュレーションの要否を判定する。これにより、リスクの有無が明らかな交通状況のシミュレーションを省略でき、シミュレーションの手間が減る。
【0015】
ここで、交通状況とは、走行環境情報に関する状況、ドライバ情報に関する状況、車両情報に関する状況、及び車両挙動情報に関する状況を含むものである。
【0016】
<事故パターン判定装置のシステム構成>
図1は、本実施の形態の事故パターン判定装置10のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、事故パターン判定装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、ストレージ14、入力部15、表示部16及び通信インタフェース(I/F)17を有する。各構成は、バス19を介して相互に通信可能に接続されている。
【0018】
CPU11は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU11は、ROM12又はストレージ14からプログラムを読み出し、RAM13を作業領域としてプログラムを実行する。CPU11は、ROM12又はストレージ14に記憶されているプログラムに従って、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。本実施形態では、ROM12又はストレージ14には、自動運転における事故リスクを判定するための事故パターン判定プログラムが格納されている。事故パターン判定プログラムは、1つのプログラムであっても良いし、複数のプログラム又はモジュールで構成されるプログラム群であっても良い。
【0019】
ROM12は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM13は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ14は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0020】
入力部15は、マウス等のポインティングデバイス、及びキーボードを含み、各種の入力を行うために使用される。
【0021】
入力部15は、車両に関する事故事例毎に映像、位置情報、挙動データ、ドライバ情報、又は交通状況データの入力を受け付ける。
【0022】
具体的には、映像として、従来既知のドライブレコーダーで取得した、事故発生時刻の前後区間の前方映像の入力を受け付ける。また、位置情報として、従来既知のドライブレコーダーで取得した、事故発生時刻の前後区間のGPS位置情報の入力を受け付ける。また、挙動データとして、従来既知のドライブレコーダーで取得した、事故発生時刻の前後区間の車速、ペダル操作量、ステアリング操作量、又は加速度の入力を受け付ける。また、ドライバ情報として、従来既知の生体センサで取得した、事故発生時刻の前後区間のセンサ情報、又はドライバのID、年齢、性別、若しくは運転歴などの入力を受け付ける。
【0023】
また、交通状況データとして、映像、位置情報、挙動データ、又はドライバ情報から従来既知の方法で付与した、交通状況のラベルの入力を受け付ける。例えば、走行環境情報に関する状況のラベルとして、日時、地点、道路構造(車線数、車線幅、交差点の角度、見通し、信号の有無)、天気、又は交通量の入力を受け付ける。ドライバ情報に関する状況のラベルとして、年齢、性別、運転歴、事故発生地点での運転経験、などの入力を受け付ける。車両情報に関する状況のラベルとして、車両種別(乗用車、トラック、など)、走行支援装備(自動ブレーキ、車線維持、など)の有無、などの入力を受け付ける。車両挙動情報に関する状況のラベルとして、挙動種別(直進、停止、左折、右折、など)、車速、交通違反(一時不停止、速度超過)の有無、などの入力を受け付ける。なお、交通状況のラベルの種類は、予め定められている。
【0024】
表示部16は、例えば、液晶ディスプレイであり、各種の情報を表示する。表示部16は、タッチパネル方式を採用して、入力部15として機能しても良い。
【0025】
通信インタフェース17は、他の機器と通信するためのインタフェースであり、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0026】
次に、事故パターン判定装置10の機能構成について説明する。
図2は、事故パターン判定装置10の機能構成の例を示すブロック図である。
【0027】
事故パターン判定装置10は、機能的には、
図2に示すように、事故事例データベース101、事故パターン抽出部102、事故パターンデータベース103、交通状況属性データベース104、事故リスク簡易判定部105、低リスク事故パターンデータベース106、高リスク事故パターンデータベース107、リスク不明事故パターンデータベース108、及びシミュレーション判定部109を備えている。なお、事故パターン抽出部は、交通状況取得部の一例である。
【0028】
事故事例データベース101は、車両に関する事故事例毎に映像、位置情報、挙動データ、ドライバ情報、又は交通状況データを記憶している。
【0029】
事故パターン抽出部102は、車両に関する事故事例毎に、当該事故事例の映像、位置情報、挙動データ、ドライバ情報、又は交通状況データから、当該事故事例における交通状況の組み合わせである事故パターンを抽出する。なお、交通状況の組み合わせの抽出方法に関しては、従来既知の手法を用いればよいため、詳細な説明を省略する。
【0030】
また、事故パターン抽出部102は、抽出された事故パターン毎に、当該事故パターンが抽出された事故事例の件数を計数し、事故パターンデータベース103に格納する。
【0031】
事故パターンデータベース103は、
図3に示すように、事故パターン毎に、当該事故パターンが抽出された事故事例の件数を記憶している。
図3では、交通状況の組み合わせである事故パターンを識別するID毎に、各交通状況の有無を0、1で表し、事故事例の件数を記録した例を示している。ここでは事故パターンの中に有る交通状況を1、無い交通状況を0で表す。
【0032】
交通状況属性データベース104は、
図4に示すように、事故パターンデータベース103に含まれる複数の交通状況の各々に対する属性を記憶している。属性には、自動運転機能が不調になる交通状況であることを示すAD不調要因、及びドライバの運転に影響を与える交通状況であることを示すドライバ要因を含む。
【0033】
具体的には、属性「AD不調要因」は、自動運転機能が不調になることが明らかな交通状況に付与されている。例えば、自動運転機能で利用するセンサの仕様の不調条件に該当する交通状況であり、交通状況「逆光」、「見通しが悪い」など、センサの仕様上、不調を起こしやすい交通状況に、属性「AD不調要因」が付与される。
【0034】
また、属性「ドライバ要因」は、人間のドライバにだけ起こりやすい交通状況に付与されている。例えば、ドライバの情報に関する交通状況「脇見」、「居眠り」や、交通違反に関する交通状況「一時不停止」、「速度超過」に、属性「ドライバ要因」が付与される。
【0035】
また、自動運転機能が不調になることが明らかな交通状況でもなく、人間のドライバにだけ起こりやすい交通状況でもない交通状況には、属性が付与されない。
【0036】
図4では、交通状況毎に、属性「ドライバ要因」が付与されているか否か、属性「AD不調要因」が付与されているか否かを0、1で表した例を示している。ここでは交通状況に付与されている属性を1、付与されていない属性を0で表す。
【0037】
事故リスク簡易判定部105は、事故パターンデータベース103に格納された事故事例毎の事故パターンと、交通状況属性データベース104に格納された複数の交通状況の各々に対する属性とに基づいて、事故パターン毎に、自動運転車両における事故リスクが高い事故パターンであるか、及び事故リスクが低い事故パターンであるかを判定する。
【0038】
具体的には、事故リスク簡易判定部105は、属性「ドライバ要因」が付与された交通状況を含む事故パターンについて、当該事故パターンに対する事故事例の数を取得する。また、事故リスク簡易判定部105は、当該事故パターンに対して、属性「ドライバ要因」が付与された交通状況以外の交通状況の組み合わせが共通し、かつ、属性「ドライバ要因」が付与された交通状況を含まない事故パターンに対する事故事例の数を取得する。事故リスク簡易判定部105は、取得した事故事例の数を比較して、自動運転車両における事故リスクが低いか否かを判定する。
【0039】
例えば、
図5に示すように、ID「1」の事故パターンに対する事故事例の数N1が、100である。また、ID「1」の事故パターンに対して、属性「ドライバ要因」が付与された交通状況以外の交通状況の組み合わせが共通し、かつ、属性「ドライバ要因」が付与された交通状況を含まない事故パターンを、ID「j」の事故パターンとする。そして、ID「1」の事故パターンに対する事故事例の数N1と、ID「j」の事故パターンに対する事故事例の数Njとの比N1/Njを計算する。この比N1/Nj=10が、閾値thより大きい場合に、ID「1」の事故パターンは、ドライバ要因の交通状況がなければ自動運転車両での事故が起きにくいと解釈し、自動運転車両における事故リスクが低い事故パターンであると判定する。閾値thは例えば本発明の使用者が設定する。
【0040】
また、
図6に示すように、ID「11」の事故パターンに対する事故事例の数N11が、80である。また、ID「11」の事故パターンに対して、属性「ドライバ要因」が付与された交通状況以外の交通状況の組み合わせが共通し、かつ、属性「ドライバ要因」が付与された交通状況を含まない事故パターンを、ID「k」の事故パターンとする。そして、ID「11」の事故パターンに対する事故事例の数N11と、ID「k」の事故パターンに対する事故事例の数Nkとの比N11/Nkを計算する。この比N11/Nk=0.8が、閾値th以下である場合に、ID「11」の事故パターンは、自動運転車両における事故リスクが低い事故パターンであると判定しない。
【0041】
また、事故リスク簡易判定部105は、属性「ドライバ要因」が付与された交通状況のみを含む事故パターンについては、自動運転車両における事故リスクが低い事故パターンであると判定する。
【0042】
また、事故リスク簡易判定部105は、属性「AD不調要因」が付与された交通状況を含む事故パターンについて、当該事故パターンに対する事故事例の数を取得する。また、事故リスク簡易判定部105は、当該事故パターンに対して、属性「AD不調要因」が付与された交通状況以外の交通状況の組み合わせが共通し、かつ、属性「AD不調要因」が付与された交通状況を含まない事故パターンに対する事故事例の数を取得する。事故リスク簡易判定部105は、取得した事故事例の数を比較して、自動運転車両における事故リスクが高いか否かを判定する。
【0043】
例えば、
図7に示すように、ID「21」の事故パターンに対する事故事例の数N21が、100である。また、ID「21」の事故パターンに対して、属性「AD不調要因」が付与された交通状況以外の交通状況の組み合わせが共通し、かつ、属性「AD不調要因」が付与された交通状況を含まない事故パターンを、ID「m」の事故パターンとする。そして、ID「21」の事故パターンに対する事故事例の数N21と、ID「m」の事故パターンに対する事故事例の数Nmとの比N21/Nmを計算する。この比N21/Nm=10が、閾値thより大きい場合に、ID「21」の事故パターンは、AD不調要因の交通状況があることで自動運転車両での事故が起きやすくなると解釈し、自動運転車両における事故リスクが高い事故パターンであると判定する。
【0044】
また、
図8に示すように、ID「31」の事故パターンに対する事故事例の数N31が、80である。また、ID「31」の事故パターンに対して、属性「AD不調要因」が付与された交通状況以外の交通状況の組み合わせが共通し、かつ、属性「AD不調要因」が付与された交通状況を含まない事故パターンを、ID「n」の事故パターンとする。そして、ID「31」の事故パターンに対する事故事例の数N31と、ID「n」の事故パターンに対する事故事例の数Nnとの比N31/Nnを計算する。この比N31/Nn=0.7が、閾値th以下である場合に、ID「31」の事故パターンは、自動運転車両における事故リスクが高い事故パターンであると判定しない。
【0045】
また、事故リスク簡易判定部105は、属性「AD不調要因」が付与された交通状況のみを含む事故パターンについては、自動運転車両における事故リスクが高い事故パターンであると判定する。
【0046】
また、事故リスク簡易判定部105は、事故パターンデータベース103に格納された事故事例毎の事故パターンの各々について、自動運転車両における事故リスクが高いと判定されず、自動運転車両における事故リスクが低いとも判定されない場合、当該事故パターンを、シミュレーションで事故リスクを判定すべきものであると判定する。
【0047】
低リスク事故パターンデータベース106には、自動運転車両における事故リスクが低い事故パターンと判定された、事故パターンが記憶される。
【0048】
高リスク事故パターンデータベース107には、自動運転車両における事故リスクが高い事故パターンと判定された、事故パターンが記憶される。
【0049】
リスク不明事故パターンデータベース108には、シミュレーションで事故リスクを判定すべきものであると判定された、事故パターンが記憶される。
【0050】
シミュレーション判定部109は、リスク不明事故パターンデータベース108に記憶された、事故パターンの各々について、自動運転車両における事故リスクが高い事故パターンであるか、自動運転車両における事故リスクが低い事故パターンであるかを判定する。
【0051】
例えば、事故事例データベース101から、判定対象となる事故パターンに該当する事故事例を抽出し、事故事例の映像、挙動情報、位置情報などから、従来既知の方法でシミュレータ上に走行状況を模擬する。模擬した走行状況で自動運転車両を模擬した車を1回以上走らせ、一定の割合以上事故が起これば、自動運転車両におけるリスクが高いと判定し、当該事故パターンを、高リスク事故パターンデータベース107に格納する。事故が起きる割合が、一定の割合未満であれば、自動運転車両におけるリスクが低いと判定し、当該事故パターンを、低リスク事故パターンデータベース106に格納する。
【0052】
<本発明の実施の形態に係る事故パターン判定装置の作用>
図9は、事故パターン判定装置10による事故パターン判定処理の流れを示すフローチャートである。CPU11がROM12又はストレージ14から事故パターン判定プログラムを読み出して、RAM13に展開して実行することにより、事故パターン判定処理が行なわれる。
【0053】
ステップS100において、CPU11は、事故パターン抽出部102として、車両に関する事故事例毎に、当該事故事例の映像、位置情報、挙動データ、ドライバ情報、又は交通状況データから、当該事故事例における交通状況の組み合わせである事故パターンを抽出する。
【0054】
ステップS102で、CPU11は、上記ステップS100で抽出された事故パターンから、一つの事故パターンを判定対象として選び、判定対象となる事故パターンが、属性「ドライバ要因」又は属性「AD不調要因」が付与された交通状況を含むか否かを判定する。判定対象となる事故パターンが、属性「ドライバ要因」又は属性「AD不調要因」が付与された交通状況を含む場合には、CPU11は、ステップS104へ移行する。一方、判定対象となる事故パターンが、属性「ドライバ要因」が付与された交通状況及び属性「AD不調要因」が付与された交通状況の何れも含まない場合には、CPU11は、ステップS110へ移行する。
【0055】
ステップS104で、CPU11は、事故リスク簡易判定部105として、事故パターンデータベース103に格納された事故事例毎の事故パターンと、交通状況属性データベース104に格納された複数の交通状況の各々に対する属性とに基づいて、自動運転車両における事故リスクが高い事故パターンであるか、及び事故リスクが低い事故パターンであるかを判定する。
【0056】
ステップS106では、CPU11は、上記ステップS104で、自動運転車両における事故リスクが高い事故パターンであると判定されたか、又は事故リスクが低い事故パターンであると判定されたかを判定する。自動運転車両における事故リスクが高い事故パターンであると判定されたか、又は事故リスクが低い事故パターンであると判定された場合には、ステップS108へ移行する。
【0057】
一方、自動運転車両における事故リスクが高い事故パターンであると判定されず、事故リスクが低い事故パターンであるとも判定されなかった場合には、ステップS110へ移行する。
【0058】
ステップS108では、CPU11は、自動運転車両における事故リスクが低いと判定された事故パターンを、低リスク事故パターンデータベース106に格納し、あるいは、自動運転車両における事故リスクが高いと判定された事故パターンを、高リスク事故パターンデータベース107に格納する。
【0059】
ステップS110で、CPU11は、判定対象となる事故パターンを、リスク不明事故パターンデータベース108に格納する。
【0060】
ステップS112で、CPU11は、上記ステップS100で抽出された全ての事故パターンについて、上記のステップS102~ステップS112を実行したか否かを判定する。
【0061】
上記のステップS102~ステップS112を実行していない事故パターンが存在する場合には、上記ステップS102へ戻り、当該事故パターンを判定対象とする。一方、全ての事故パターンについて、上記のステップS102~ステップS112を実行した場合には、ステップS114へ移行する。
【0062】
ステップS114では、CPU11は、シミュレーション判定部109として、リスク不明事故パターンデータベース108に記憶された事故パターンの各々について、自動運転車両における事故リスクが高い事故パターンであるか、自動運転車両における事故リスクが低い事故パターンであるかを判定する。そして、判定結果に応じて、事故パターンを、高リスク事故パターンデータベース107又は低リスク事故パターンデータベース106に格納し、事故パターン判定処理は終了する。
【0063】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係る事故パターン判定装置は、事故事例毎に取得した交通状況の組み合わせである事故パターンと、複数の交通状況の各々に対する属性とに基づいて、自動運転車両における事故リスクが高い事故パターンであるか、及び自動運転車両における事故リスクが低い事故パターンであるかを判定する。これにより、自動運転車両における事故リスクを簡易な処理で判定することができる。また、簡易な処理で判定できる事故パターンについてはシミュレーションする必要がなく、シミュレーションの手間を減らすことができる。
【0064】
<変形例>
上記の実施の形態では、自動運転車両における事故リスクを簡易な処理で判定する場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、他の特定の車両又は特定の運転者における事故リスクを簡易な処理で判定する装置に、本発明を適用してもよい。
【0065】
具体的には、高齢者ドライバにおける事故リスクを簡易な処理で判定するようにしてもよい。この場合には、交通状況に対して付与される属性に、運転者の加齢に伴って事故が起こりやすい交通状況であることを示す加齢要因が含まれるようにすればよい。
【0066】
例えば、
図10に示すように、交通状況「ペダル踏み間違い」、「逆走」、「方向指示器非点灯」などに、属性「加齢要因」が付与される。
【0067】
そして、事故リスク簡易判定部は、属性「加齢要因」が付与された交通状況を含む事故パターンについて、当該事故パターンに対する事故事例の数を取得する。また、事故リスク簡易判定部は、当該事故パターンに対して、属性「加齢要因」が付与された交通状況以外の交通状況の組み合わせが共通し、かつ、属性「加齢要因」が付与された交通状況を含まない事故パターンに対する事故事例の数を取得する。事故リスク簡易判定部は、取得した事故事例の数を比較して、高齢者ドライバにおける事故リスクが高いか否かを判定する。
【0068】
例えば、
図11に示すように、ID「1」の事故パターンに対する事故事例の数N1が、100である。また、ID「1」の事故パターンに対して、属性「加齢要因」が付与された交通状況以外の交通状況の組み合わせが共通し、かつ、属性「加齢要因」が付与された交通状況を含まない事故パターンを、ID「k」の事故パターンとする。そして、ID「1」の事故パターンに対する事故事例の数N1と、ID「k」の事故パターンに対する事故事例の数Nkとの比N1/Nkを計算する。この比N1/Nk=10が、閾値thより大きい場合に、ID「1」の事故パターンは、加齢要因の交通状況があることで自動運転車両での事故が起きやすくなると解釈し、高齢者ドライバにおける事故リスクが高い事故パターンであると判定する。
【0069】
また、上記実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各種処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、各種処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0070】
また、上記実施形態では、プログラムがROMに予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0071】
10 事故パターン判定装置
15 入力部
16 表示部
101 事故事例データベース
102 事故パターン抽出部
103 事故パターンデータベース
104 交通状況属性データベース
105 事故リスク簡易判定部
106 低リスク事故パターンデータベース
107 高リスク事故パターンデータベース
108 リスク不明事故パターンデータベース
109 シミュレーション判定部