(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 13/00 20060101AFI20240110BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B60C13/00 C
B60C5/00
(21)【出願番号】P 2020042260
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】阪口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】森 一真
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩司
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-104384(JP,A)
【文献】特開2020-029209(JP,A)
【文献】特開2016-215702(JP,A)
【文献】特開2012-101754(JP,A)
【文献】特開2017-1437(JP,A)
【文献】特表2017-516698(JP,A)
【文献】特開2016-215700(JP,A)
【文献】特開2019-104453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤであって、
視認可能な外表面の少なくとも一部に装飾部を有し、
前記装飾部には、前記外表面から突出する複数の微小突起が配置されており、
前記微小突起は、少なくとも1つの第1突起を含み、
前記第1突起は、第1凹部と、前記第1凹部の周囲を囲んで第1頂部を形成する第1外壁部とを含み、
前記第1外壁部は、前記外表面から、前記外表面の法線方向に対して傾斜する方向に延びている、
タイヤ。
【請求項2】
前記第1外壁部は、前記外表面に直交する第1縦断面輪郭を有し、
前記第1縦断面輪郭の少なくとも1つは、前記外表面から前記第1頂部まで延びる一対の第1壁部輪郭線を含み、
一対の前記第1壁部輪郭線は、前記法線方向の中間の位置において、一方の前記第1壁部輪郭線の前記外表面に対する第1角度θ1が、他方の前記第1壁部輪郭線の前記外表面に対する第2角度θ2よりも小さい、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第1角度θ1が45°以上である、請求項2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第1角度θ1が90°未満である、請求項2又は3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第1角度θ1と前記第2角度θ2との和(θ1+θ2)が180°以上である、請求項2ないし4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記微小突起は、少なくとも1つの第2突起を更に含み、
前記第2突起は、第2凹部と、前記第2凹部の周囲を囲んで第2頂部を形成する第2外壁部とを含み、
前記第2外壁部は、前記外表面から、前記法線方向に延びている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記第2外壁部は、前記外表面に直交する第2縦断面輪郭を有し、
前記第2縦断面輪郭は、前記外表面から前記第2頂部まで延びる一対の第2壁部輪郭線を含み、
一対の前記第2壁部輪郭線は、前記法線方向の中間の位置において、一方の前記第2壁部輪郭線の前記外表面に対する第3角度θ3が、他方の前記第2壁部輪郭線の前記外表面に対する第4角度θ4に等しい、請求項6に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記第1外壁部は、前記法線方向において突起高さが大きい少なくとも2つの山部分と、前記突起高さが小さい少なくとも2つの谷部分とを含む、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記第1外壁部の上端面は、前記山部分と前記谷部分とが滑らかな曲面で連なる湾曲面を含む、請求項8に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記第1外壁部は、前記法線方向と直交する第1横断面輪郭を有し、
前記第1横断面輪郭は、円形状又は楕円形状である、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項11】
前記微小突起は、配設ピッチが0.6~2.0mmである、請求項1ないし10のいずれか1項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視認可能な外表面の少なくとも一部に装飾部を有するタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、視認可能な外表面の少なくとも一部に装飾部を有するタイヤが知られている。例えば、下記特許文献1には、断面形状が異なる2種類以上のリッジから構成された装飾模様を形成した空気入りタイヤが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年、装飾部におけるコントラストを高めて、外観性をより向上させたタイヤが望まれており、特許文献1のタイヤにおいても、更なる改善が期待されていた。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、装飾部により外観性を向上させ得るタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タイヤであって、視認可能な外表面の少なくとも一部に装飾部を有し、前記装飾部には、前記外表面から突出する複数の微小突起が配置されており、前記微小突起は、少なくとも1つの第1突起を含み、前記第1突起は、第1凹部と、前記第1凹部の周囲を囲んで第1頂部を形成する第1外壁部とを含み、前記第1外壁部は、前記外表面から、前記外表面の法線方向に対して傾斜する方向に延びていることを特徴とする。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記第1外壁部は、前記外表面に直交する第1縦断面輪郭を有し、前記第1縦断面輪郭の少なくとも1つは、前記外表面から前記第1頂部まで延びる一対の第1壁部輪郭線を含み、一対の前記第1壁部輪郭線は、前記法線方向の中間の位置において、一方の前記第1壁部輪郭線の前記外表面に対する第1角度θ1が、他方の前記第1壁部輪郭線の前記外表面に対する第2角度θ2よりも小さいのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記第1角度θ1が45°以上であるのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記第1角度θ1が90°未満であるのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記第1角度θ1と前記第2角度θ2との和(θ1+θ2)が180°以上であるのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記微小突起は、少なくとも1つの第2突起を更に含み、前記第2突起は、第2凹部と、前記第2凹部の周囲を囲んで第2頂部を形成する第2外壁部とを含み、前記第2外壁部は、前記外表面から、前記法線方向に延びているのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤにおいて、前記第2外壁部は、前記外表面に直交する第2縦断面輪郭を有し、前記第2縦断面輪郭は、前記外表面から前記第2頂部まで延びる一対の第2壁部輪郭線を含み、一対の前記第2壁部輪郭線は、前記法線方向の中間の位置において、一方の前記第2壁部輪郭線の前記外表面に対する第3角度θ3が、他方の前記第2壁部輪郭線の前記外表面に対する第4角度θ4に等しいのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤにおいて、前記第1外壁部は、前記法線方向において突起高さが大きい少なくとも2つの山部分と、前記突起高さが小さい少なくとも2つの谷部分とを含むのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤにおいて、前記第1外壁部の上端面は、前記山部分と前記谷部分とが滑らかな曲面で連なる湾曲面を含むのが望ましい。
【0015】
本発明のタイヤにおいて、前記第1外壁部は、前記法線方向と直交する第1横断面輪郭を有し、前記第1横断面輪郭は、円形状又は楕円形状であるのが望ましい。
【0016】
本発明のタイヤにおいて、前記微小突起は、配設ピッチが0.6~2.0mmであるのが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のタイヤにおいて、微小突起は、少なくとも1つの第1突起を含み、前記第1突起は、第1凹部と、前記第1凹部の周囲を囲んで第1頂部を形成する第1外壁部とを含み、前記第1外壁部は、外表面から、前記外表面の法線方向に対して傾斜する方向に延びている。このような微小突起は、第1外壁部の傾斜と第1凹部とにより、装飾部におけるコントラストを高めることができ、タイヤの外観性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のタイヤの一実施形態を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ1を示す部分斜視図である。タイヤ1は、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に用いられる。タイヤ1は、乗用車用の空気入りタイヤに限定されるものではなく、例えば、重荷重用の空気入りタイヤや二輪車用の空気入りタイヤ、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤ等の様々なタイヤに用いることができる。
【0020】
図1に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、走行時に路面に接触するトレッド部2と、トレッド部2のタイヤ半径方向内側に配置されるサイドウォール部3と、サイドウォール部3のタイヤ半径方向内側に配置されるビード部4とを含んでいる。ビード部4は、リム(図示省略)に装着されたときに、リムにかん合する部分である。サイドウォール部3は、トレッド部2とビード部4とを接続する部分である。
【0021】
本実施形態のタイヤ1は、視認可能な外表面1aを備えている。ここで、視認可能な外表面1aとは、タイヤ1がリムに装着されたときに、外部から目視できる面である。外表面1aには、例えば、トレッド部2の外表面2a、サイドウォール部3の外表面3a及びビード部4の外表面4aが含まれている。
【0022】
本実施形態のタイヤ1は、視認可能な外表面1aの少なくとも一部に装飾部5を有している。本実施形態では、装飾部5がサイドウォール部3の外表面3aに設けられたものが例示されている。装飾部5は、このような位置に限定されるものではなく、例えば、トレッド部2の外表面2aやビード部4の外表面4aに設けられていてもよい。このような装飾部5は、使用者に視覚的な刺激を与え、タイヤ1の外観性を向上させることができる。
【0023】
図2は、装飾部5の拡大斜視図である。
図2に示されるように、本実施形態の装飾部5には、外表面1aから突出する複数の微小突起6が配置されている。このような微小突起6は、光を拡散することにより、装飾部5におけるコントラストを高めることができる。
【0024】
本実施形態の微小突起6は、少なくとも1つの第1突起6Aを含んでいる。第1突起6Aは、第1凹部7Aと、第1凹部7Aの周囲を囲んで第1頂部8aを形成する第1外壁部8Aとを含むのが望ましい。このような第1突起6Aは、第1凹部7Aで光を吸収することにより、装飾部5におけるコントラストを高めることができる。このため、本実施形態のタイヤ1は、外観性を向上させることができる。
【0025】
本実施形態の第1外壁部8Aは、外表面1aから、外表面1aの法線方向Nに対して傾斜する方向に延びている。ここで、第1外壁部8Aが法線方向Nに対して傾斜する方向に延びるとは、後述する第1縦断面輪郭12A(
図3に示す)の少なくとも1つの一対の第1壁部輪郭線12aが、外表面1aに対して互いに異なる角度を有することを意味する。
【0026】
すなわち、本実施形態の第1突起6Aは、その突出方向の軸線6aが、外表面1aから、外表面1aの法線方向Nに対して傾斜する方向に延びている。ここで、第1突起6Aの軸線6aは、後述する第1横断面輪郭12B(
図3に示す)の中心を突出方向につなぐ線として定義される。このような微小突起6は、第1外壁部8Aすなわち第1突起6Aの傾斜により、視線の向きに応じてコントラストを変化させることができ、装飾部5の外観性を向上させることができる。
【0027】
図3は、第1突起6Aの斜視図であり、
図4は、第1突起6Aの断面図である。
図3及び
図4に示されるように、第1外壁部8Aは、例えば、外表面1aに直交する第1縦断面輪郭12Aを有している。第1縦断面輪郭12Aは、例えば、任意の断面において形成されればよい。第1縦断面輪郭12Aは、軸線6aを含む断面において形成されるのが望ましい。
【0028】
第1縦断面輪郭12Aの少なくとも1つは、外表面1aから第1頂部8aまで延びる一対の第1壁部輪郭線12aを含むのが望ましい。本実施形態の一対の第1壁部輪郭線12aは、法線方向Nの中間の位置12mにおいて、一方の第1壁部輪郭線12aの外表面1aに対する第1角度θ1が、他方の第1壁部輪郭線12aの外表面1aに対する第2角度θ2よりも小さい。ここで、第1壁部輪郭線12aの法線方向Nの中間の位置12mは、後述する第1外壁部8Aの山部分9Aの高さH1の1/2、すなわちH1/2として定義される。このような第1外壁部8Aは、外表面1aに対する傾斜の程度の認識が容易である。
【0029】
第1角度θ1は、好ましくは、45°以上である。第1角度θ1が45°以上であることで、加硫成型の金型から脱型するとき等に第1突起6Aにクラックや欠けが生じることを抑制することができる。このような観点から、第1角度θ1は、より好ましくは、50°以上であり、更に好ましくは、55°以上である。
【0030】
第1角度θ1は、好ましくは、90°未満である。第1角度θ1が90°未満であることで、視線の向きに応じた装飾部5のコントラストの変化を大きくすることができる。このような観点から、第1角度θ1は、好ましくは、85°以下、より好ましくは、80°以下である。
【0031】
第2角度θ2は、好ましくは、90°以上である。第2角度θ2が90°以上であることで、第1突起6Aの剛性を向上させることができ、クラックや欠けが生じることを抑制することができる。このような観点から、第2角度θ2は、より好ましくは、95°以上であり、更に好ましくは、100°以上である。
【0032】
第1角度θ1と第2角度θ2との和(θ1+θ2)は、好ましくは、180°以上である。和(θ1+θ2)が180°以上であることで、第1突起6Aの剛性を向上させることができ、クラックや欠けが生じることを抑制することができる。このような観点から、和(θ1+θ2)は、より好ましくは、190°以上であり、更に好ましくは、200°以上である。
【0033】
本実施形態の第1外壁部8Aは、法線方向Nにおいて突起高さが大きい少なくとも2つの山部分9Aと、突起高さが小さい少なくとも2つの谷部分10Aとを含んでいる。本実施形態の第1外壁部8Aは、略管状であり、山部分9Aと谷部分10Aとが周方向に交互に配置されている。このような第1外壁部8Aは、第1頂部8aで光を拡散することができ、装飾部5におけるコントラストを高めることができる。
【0034】
第1外壁部8Aの山部分9Aの高さH1は、好ましくは、0.20~0.60mmである。ここで、第1外壁部8Aの山部分9Aの高さH1は、第1外壁部8Aの第1外壁部8Aの山部分9Aの高さH1は、第1外壁部8Aの谷部分10Aの高さH2は、好ましくは、0.10~0.50mmである。このような第1外壁部8Aは、第1頂部8aにおいて光を拡散するのに適している。
【0035】
第1外壁部8Aの第1上端面11Aは、山部分9Aと谷部分10Aとが滑らかな曲面で連なる湾曲面11aを含むのが望ましい。第1外壁部8Aの第1上端面11Aは、例えば、山部分9Aと谷部分10Aとが平らな傾斜面で連なる屈曲面(図示省略)として形成されていてもよい。このような第1上端面11Aは、光を拡散することができ、装飾部5におけるコントラストを高めることに役立つ。
【0036】
第1外壁部8Aは、例えば、法線方向Nと直交する第1横断面輪郭12Bを有している。第1横断面輪郭12Bは、円形状又は楕円形状であるのが望ましい。このような第1外壁部8Aは、光の拡散効果が良好であり、装飾部5におけるコントラストをより高めることができる。
【0037】
第1外壁部8Aは、例えば、最も外表面1a側において最も幅が大きい最大幅W1を有している。第1外壁部8Aの最大幅W1は、好ましくは、0.30~1.00mmである。第1外壁部8Aの最大幅W1が0.30mm以上であることで、第1外壁部8Aの剛性を確保し、クラックや欠けを抑制することができる。第1外壁部8Aの最大幅W1が1.00mm以下であることで、第1外壁部8Aでの光の反射を抑制し、装飾部5におけるコントラストを高めることができる。
【0038】
第1外壁部8Aの第1頂部8a側における頂部幅W2は、外表面1a側の最大幅W1に略等しいか、外表面1a側の最大幅W1よりも小さいのが望ましい。第1外壁部8Aの頂部幅W2は、好ましくは、0.25~0.95mmである。このような第1外壁部8Aは、クラックや欠けが生じることを抑制しつつ、装飾部5におけるコントラストを高めることができる。
【0039】
本実施形態の第1凹部7Aは、第1突起6Aの軸線6aに沿って形成されている。第1凹部7Aの向きは、このような態様に限定されるものではなく、例えば、法線方向Nに沿って形成されていてもよい。このような第1凹部7Aは、光を吸収するのに適している。
【0040】
本実施形態の第1凹部7Aのくぼみ深さは、第1外壁部8Aの突起高さに略等しい。第1凹部7Aのくぼみ深さは、このような態様に限定されるものではなく、例えば、第1外壁部8Aの突起高さよりも大きくてもよく、第1外壁部8Aの突起高さよりも小さくてもよい。
【0041】
第1凹部7Aの山部分9Aに対する深さD1は、好ましくは、0.15~0.60mmである。第1凹部7Aの谷部分10Aに対する深さD2は、好ましくは、0.15~0.50mmである。このような第1凹部7Aは、第1突起6Aの剛性を維持しつつ、光を吸収するのに適している。
【0042】
第1凹部7Aは、例えば、法線方向Nと直交する横断面が、円形状又は楕円形状である。第1凹部7Aの横断面は、第1横断面輪郭12Bに相似するのが望ましい。このような第1凹部7Aは、その内部で光を拡散することができ、光の吸収性を向上させることに役立つ。
【0043】
第1凹部7Aの外表面1a側における底部幅W3は、好ましくは、0.90mm以下である。第1凹部7Aの第1頂部8a側における頂部幅W4は、好ましくは、0.10~0.90mmである。このような第1凹部7Aは、第1外壁部8Aの剛性を維持しつつ、良好な光の吸収性を発揮することができる。
【0044】
第1外壁部8Aの第1上端面11Aは、略一定の幅W5を有するのが望ましい。第1上端面11Aの幅W5は、好ましくは、0.2mm以下である。第1上端面11Aの幅W5は、例えば、部分的に異なるものであってもよく、その場合であっても0.2mm以下の範囲であるのが望ましい。このような第1上端面11Aは、光の反射を抑制し、装飾部5におけるコントラストを高めることができる。
【0045】
図2に示されるように、本実施形態の微小突起6は、少なくとも1つの第2突起6Bを更に含んでいる。第2突起6Bは、第2凹部7Bと、第2凹部7Bの周囲を囲んで第2頂部8bを形成する第2外壁部8Bとを含むのが望ましい。このような第2突起6Bは、第2凹部7Bで光を吸収することにより、装飾部5におけるコントラストを高めることができる。このため、本実施形態のタイヤ1は、外観性を向上させることができる。
【0046】
本実施形態の第2外壁部8Bは、外表面1aから、法線方向Nに延びている。ここで、第2外壁部8Bが法線方向Nに延びるとは、後述する第2縦断面輪郭12C(
図5に示す)の少なくとも1つの一対の第2壁部輪郭線12bが、外表面1aに対して同じ角度を有することを意味する。
【0047】
すなわち、本実施形態の第2突起6Bは、その突出方向の軸線6bが、外表面1aから法線方向Nに延びている。ここで、第2突起6Bの軸線6bは、後述する第2横断面輪郭12D(
図5に示す)の中心を突出方向につなぐ線として定義される。このような微小突起6は、第1突起6Aと第2突起6Bとのコントラストの差により、装飾部5に縞状又は斑状の模様を表現することができ、タイヤ1の外観性を向上させることができる。
【0048】
図5は、第2突起6Bの斜視図であり、
図6は、第2突起6Bの断面図である。
図5及び
図6に示されるように、第2外壁部8Bは、例えば、外表面1aに直交する第2縦断面輪郭12Cを有している。第2縦断面輪郭12Cは、例えば、任意の断面において形成されればよい。第2縦断面輪郭12Cは、軸線6bを含む断面において形成されるのが望ましい。
【0049】
第2縦断面輪郭12Cは、外表面1aから第2頂部8bまで延びる一対の第2壁部輪郭線12bを含むのが望ましい。本実施形態の一対の第2壁部輪郭線12bは、法線方向Nの中間の位置12nにおいて、一方の第2壁部輪郭線12bの外表面1aに対する第3角度θ3が、他方の第2壁部輪郭線12bの外表面1aに対する第4角度θ4に等しい。ここで、第2壁部輪郭線12bの法線方向Nの中間の位置12nは、後述する第2外壁部8Bの山部分9Bの高さH3の1/2、すなわちH3/2として定義される。このような第2外壁部8Bは、その対称性を確保することが容易である。
【0050】
本実施形態の第2外壁部8Bは、法線方向Nにおいて突起高さが大きい少なくとも2つの山部分9Bと、突起高さが小さい少なくとも2つの谷部分10Bとを含んでいる。本実施形態の第2外壁部8Bは、略管状であり、山部分9Bと谷部分10Bとが周方向に交互に配置されている。このような第2外壁部8Bは、第2頂部8bで光を拡散することができ、装飾部5におけるコントラストを高めることができる。
【0051】
第2外壁部8Bの山部分9Bの高さH3は、好ましくは、0.20~0.60mmである。第2外壁部8Bの谷部分10Bの高さH4は、好ましくは、0.10~0.50mmである。このような第2外壁部8Bは、第2頂部8bにおいて光を拡散するのに適している。
【0052】
第2外壁部8Bの第2上端面11Bは、山部分9Bと谷部分10Bとが滑らかな曲面で連なる湾曲面11bを含むのが望ましい。第2外壁部8Bの第2上端面11Bは、例えば、山部分9Bと谷部分10Bとが平らな傾斜面で連なる屈曲面(図示省略)として形成されていてもよい。このような第2上端面11Bは、光を拡散することができ、装飾部5におけるコントラストを高めることに役立つ。
【0053】
第2外壁部8Bは、例えば、法線方向Nと直交する第2横断面輪郭12Dを有している。第2横断面輪郭12Dは、円形状又は楕円形状であるのが望ましい。このような第2外壁部8Bは、光の拡散効果が良好であり、装飾部5におけるコントラストをより高めることができる。
【0054】
第2外壁部8Bは、例えば、最も外表面1a側において最も幅が大きい最大幅W6を有している。第2外壁部8Bの最大幅W6は、好ましくは、0.30~1.00mmである。第2外壁部8Bの最大幅W6が0.30mm以上であることで、第2外壁部8Bの剛性を確保し、クラックや欠けを抑制することができる。第2外壁部8Bの最大幅W6が1.00mm以下であることで、第2外壁部8Bでの光の反射を抑制し、装飾部5におけるコントラストを高めることができる。
【0055】
第2外壁部8Bの第2頂部8b側における頂部幅W7は、外表面1a側の最大幅W6に略等しいか、外表面1a側の最大幅W6よりも小さいのが望ましい。第2外壁部8Bの頂部幅W7は、好ましくは、0.25~0.95mmである。このような第2外壁部8Bは、クラックや欠けが生じることを抑制しつつ、装飾部5におけるコントラストを高めることができる。
【0056】
本実施形態の第2凹部7Bは、第2突起6Bの軸線6bに沿って、すなわち、法線方向Nに沿って形成されている。第2凹部7Bの向きは、このような態様に限定されるものではなく、例えば、法線方向Nに対して傾斜する方向に形成されていてもよい。このような第2凹部7Bは、光を吸収するのに適している。
【0057】
本実施形態の第2凹部7Bのくぼみ深さは、第2外壁部8Bの突起高さよりも小さい。第2凹部7Bのくぼみ深さは、このような態様に限定されるものではなく、例えば、第2外壁部8Bの突起高さに略等しくてもよく、第2外壁部8Bの突起高さよりも大きくてもよい。
【0058】
第2凹部7Bの山部分9Bに対する深さD3は、好ましくは、0.15~0.60mmである。第2凹部7Bの谷部分10Bに対する深さD2は、好ましくは、0.15~0.50mmである。このような第2凹部7Bは、第2突起6Bの剛性を維持しつつ、光を吸収するのに適している。
【0059】
第2凹部7Bは、例えば、法線方向Nと直交する横断面が、円形状又は楕円形状である。第2凹部7Bの横断面は、第2横断面輪郭12Dに相似するのが望ましい。このような第2凹部7Bは、その内部で光を拡散することができ、光の吸収性を向上させることに役立つ。
【0060】
第2凹部7Bの外表面1a側における底部幅W8は、好ましくは、0.90mm以下である。第2凹部7Bの第2頂部8b側における頂部幅W9は、好ましくは、0.10~0.90mmである。第2凹部7Bは、底部幅W8が頂部幅W9以下であるのが望ましい。このような第2凹部7Bは、第2外壁部8Bの剛性を維持しつつ、良好な光の吸収性を発揮することができる。
【0061】
第2外壁部8Bの第2上端面11Bは、略一定の幅W10を有するのが望ましい。第2上端面11Bの幅W10は、好ましくは、0.20mm以下である。第2上端面11Bの幅W10は、例えば、部分的に異なるものであってもよく、その場合であっても0.20mm以下の範囲であるのが望ましい。このような第2上端面11Bは、光の反射を抑制し、装飾部5におけるコントラストを高めることができる。
【0062】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の装飾部5は、第1突起6Aが配置された第1領域5Aと、第2突起6Bが配置された第2領域5Bとを含んでいる。このような装飾部5は、第1突起6Aと第2突起6Bとのコントラストの差により、縞状の模様を表現することができ、タイヤ1の外観性を向上させることができる。第1領域5Aと第2領域5Bとの配置は、このような態様に限定されるものではなく、斑状に配置されていてもよく、角度θの異なる複数の第1突起6Aにより複数の第1領域5Aが設けられていてもよい。
【0063】
微小突起6は、例えば、第3突起6C(図示省略)を更に含んでいてもよい。この場合の装飾部5は、第3突起6Cが配置された第3領域5C(図示省略)を含むのが望ましい。第3突起6Cは、例えば、第1突起6Aとは異なる方向に傾斜している。第3突起6Cは、例えば、第1突起6Aと傾斜角度が異なるものであってもよい。微小突起6は、傾斜方向や傾斜角度の異なる第4突起6D等(図示省略)を更に含んでいてもよい。このような装飾部5は、縞状又は斑状の模様の形成の自由度が高い。
【0064】
図2に示されるように、本実施形態の装飾部5には、1mm
2当り2~10個の密度で複数の微小突起6が配置されている。このような微小突起6は、装飾部5におけるコントラストを高めることに役立つ。
【0065】
微小突起6は、好ましくは、配設ピッチPが0.6~2.0mmである。ここで、配設ピッチPは、微小突起6の中心間距離として定義される。本実施形態の微小突起6は、千鳥状に配置されている。微小突起6の配置は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、格子状に配置されていてもよい。このような微小突起6の配置は、装飾部5におけるコントラストを高めることに役立つ。
【0066】
装飾部5の微小突起6間は、高さが0.05mm以下の凹凸部13を含んでいる。このような凹凸部13は、装飾部5に影をもたらし、装飾部5におけるコントラストを更に高めるのに役立つ。また、このような凹凸部13は、装飾部5の剛性を高め、微小突起6の欠けを抑制するのにも役立つ。
【0067】
図1に示されるように、タイヤ1は、例えば、外表面1aの少なくとも一部に、装飾部5に隣接する非装飾部14を有している。本実施形態では、装飾部5と同様に、非装飾部14がサイドウォール部3の外表面3aに設けられたものが例示されている。非装飾部14は、このような位置に限定されるものではなく、例えば、トレッド部2の外表面2a又はビード部4の外表面4aに設けられていてもよい。このような非装飾部14は、装飾部5とのコントラストにより、使用者に視覚的な刺激を与え、タイヤ1の外観性を向上させることができる。
【0068】
本実施形態の非装飾部14は、外表面3aから隆起した隆起部14aを含んでいる。隆起部14aは、例えば、外表面1aから外方に延びる側面14bと、側面14bに連なって平滑な面で形成される頂面14cとで構成される。このような頂面14cは、光を反射することにより装飾部5に対するコントラストが高められ、非装飾部14の視認性を向上させることができる。非装飾部14は、例えば、タイヤ1のメーカ名、商品名、サイズ等を表す文字や標章等の記号であるマークとして形成されている。
【0069】
図7は、他の実施形態の装飾部15の拡大斜視図である。上述の実施形態と同一の機能を有する要素には、同一の符号が付され、その説明が省略される。
図7に示されるように、この実施形態の装飾部15は、外表面1aからの突出方向の軸線16aが、外表面1aの法線方向Nに対して傾斜している複数の第1突起16を含んでいる。
図7では、第1突起16が配置された第1領域15Aのみが例示されているが、装飾部15には、例えば、第2領域5B(
図2に示す)が設けられていてもよい。
【0070】
この実施形態の複数の第1突起16は、傾斜の向き、角度、大きさ、配設ピッチP等がランダムに設けられている。このような装飾部15は、クラックや欠け等の損傷箇所が目立たなくすることができ、タイヤ1の外観性を向上させることができる。
【0071】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。
【実施例】
【0072】
図1ないし
図6に示される実施例のタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例として、装飾部の全てを第2突起で形成したタイヤが試作された。これらの試作タイヤを用いて、タイヤの外観性が試験された。試作タイヤの共通仕様及び試験方法は、以下のとおりである。
【0073】
<共通仕様>
第2外壁部の山部分の高さH3:0.30mm
第2外壁部の谷部分の高さH4:0.20mm
第2外壁部の最大幅W6 :0.51mm
第2外壁部の頂部幅W7 :0.41mm
第2凹部の山部分の深さD3 :0.25mm
第2凹部の谷部分の深さD4 :0.15mm
第2凹部の底部幅W8 :0.20mm
第2凹部の頂部幅W9 :0.31mm
第2頂部の幅W10 :0.05mm
凹凸部の高さ :0.03mm
【0074】
<実施例の共通仕様>
第1外壁部の山部分の高さH1:0.30mm
第1外壁部の谷部分の高さH2:0.20mm
第1外壁部の最大幅W1 :0.51mm
第1外壁部の頂部幅W2 :0.51mm
第1凹部の山部分の深さD1 :0.30mm
第1凹部の谷部分の深さD2 :0.20mm
第1凹部の底部幅W3 :0.31mm
第1凹部の頂部幅W4 :0.31mm
第1頂部の幅W5 :0.10mm
【0075】
<外観性>
各試作タイヤの外観性が、装飾部と非装飾部とのコントラスト及び第1領域と第2領域とのコントラストに基づき、評価者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする指数であり、数値が大きいほど、外観性に優れていることを示す。
【0076】
【0077】
試験の結果、実施例のタイヤは、比較例に比べ、外観性に優れていることが確認された。
【符号の説明】
【0078】
1 タイヤ
1a 外表面
5 装飾部
6 微小突起
6A 第1突起
7A 第1凹部
8A 第1外壁部
8a 第1頂部