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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】木質面材の加工方法
(51)【国際特許分類】
   B27D 1/04 20060101AFI20240110BHJP
   E04C 2/12 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B27D1/04 D
E04C2/12 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020042870
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021142706
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻 靖彦
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-270504(JP,A)
【文献】実開昭54-034380(JP,U)
【文献】実開平06-020002(JP,U)
【文献】特開2017-177529(JP,A)
【文献】特開2016-204958(JP,A)
【文献】実公昭43-015030(JP,Y1)
【文献】特開2002-137207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27D 1/04
E04C 2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が平行な二辺を備える四角形状の木質面材であって、該表面における繊維方向が該二辺と直交する直交方向に沿う木質面材を、加工する木質面材の加工方法であって、
前記繊維方向に沿ったスリットを前記木質面材に形成するスリット形成工程と、
前記スリットが形成された前記木質面材を、前記二辺がねじれの位置に位置するようにねじり加工するねじり加工工程と、
有し、
前記スリット形成工程においては、前記木質面材の一方面のみに前記スリットを形成し、
前記木質面材は、前記表面が平行層のCLT板であり、
前記スリット形成工程においては、
前記スリットが前記CLT板の直交層に達するように前記スリットを形成することを特徴とする木質面材の加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の木質面材の加工方法であって、
前記スリット形成工程においては、前記木質面材の前記繊維方向における端に達しないように前記スリットを形成することを特徴とする木質面材の加工方法。
【請求項3】
請求項1に記載の木質面材の加工方法であって、
前記木質面材の前記繊維方向における端部を保持するための端部保持部材を前記端部に取り付ける端部保持工程を有し、
前記ねじり加工工程においては、前記端部保持部材が取り付けられた前記木質面材をねじり加工することを特徴とする木質面材の加工方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の木質面材の加工方法であって、
前記CLT板は、前記直交層を複数有しており、
前記スリット形成工程においては、
前記スリットが、前記一方面とは反対側の他方面に最も近い前記直交層に達し、かつ、該直交層を貫かないように、
前記スリットを形成することを特徴とする木質面材の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質面材の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CLT(Cross Laminated Timber)等の木質面材は既によく知られている。かかる木質面材は、表面が平行な二辺を備える四角形状の木質面材であって、該表面(CLTであれば最外層)における繊維方向が該二辺と直交する直交方向に沿っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-53187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来は、上述した木質面材をねじり加工することは困難であったため、専ら当該木質面材を平面のまま使用していた。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、木質面材のねじり加工を容易に行うことができる木質面材の加工方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
主たる本発明は、
表面が平行な二辺を備える四角形状の木質面材であって、該表面における繊維方向が該二辺と直交する直交方向に沿う木質面材を、加工する木質面材の加工方法であって、
前記繊維方向に沿ったスリットを前記木質面材に形成するスリット形成工程と、
前記スリットが形成された前記木質面材を、前記二辺がねじれの位置に位置するようにねじり加工するねじり加工工程と、
有し、
前記スリット形成工程においては、前記木質面材の一方面のみに前記スリットを形成し、
前記木質面材は、前記表面が平行層のCLT板であり、
前記スリット形成工程においては、
前記スリットが前記CLT板の直交層に達するように前記スリットを形成することを特徴とする木質面材の加工方法である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、木質面材のねじり加工を容易に行うことができる木質面材の加工方法を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】CLT板1の斜視図である。
図2】CLT板1の加工方法の工程を示した図である。
図3】CLT板1におけるスリット30の位置を示した図である。
図4】スリット30の深さを示した図である。
図5】ねじり加工が行われたCLT板1を示した概略斜視図である。
図6図5のCLT板1を矢印の方から見たときの概略図である。
図7】円筒形状に曲げられたCLT板1の前記繊維方向と直交する断面を示した比較例に係る断面図である。
図8】端部保持工程において端部保持部材34により端部33が保持されたCLT板1の様子を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
【0011】
表面が平行な二辺を備える四角形状の木質面材であって、該表面における繊維方向が該二辺と直交する直交方向に沿う木質面材を、加工する木質面材の加工方法であって、
前記繊維方向に沿ったスリットを前記木質面材に形成するスリット形成工程と、
前記スリットが形成された前記木質面材を、前記二辺がねじれの位置に位置するようにねじり加工するねじり加工工程と、
を有することを特徴とする木質面材の加工方法。
【0012】
このような木質面材の加工方法によれば、木質面材のねじり加工を容易に行うことができる木質面材の加工方法を実現することが可能となる。
【0013】
かかる木質面材の加工方法であって、
前記スリット形成工程においては、前記木質面材の前記繊維方向における端に達しないように前記スリットを形成することが望ましい。
【0014】
このような木質面材の加工方法によれば、木質面材の内部の部材に負荷をかけることなく確実にねじり加工を行うことが可能となる。
【0015】
かかる木質面材の加工方法であって、
前記木質面材の前記繊維方向における端部を保持するための端部保持部材を前記端部に取り付ける端部保持工程を有し、
前記ねじり加工工程においては、前記端部保持部材が取り付けられた前記木質面材をねじり加工することが望ましい。
【0016】
このような木質面材の加工方法によれば、木質面材の内部の部材に負荷をかけることなく確実にねじり加工を行うことが可能となる。
【0017】
かかる木質面材の加工方法であって、
前記スリット形成工程においては、前記木質面材の一方面のみに前記スリットを形成することが望ましい。
【0018】
このような木質面材の加工方法によれば、木質面材の意匠性を高めることが可能となる。
【0019】
かかる木質面材の加工方法であって、
前記木質面材は、前記表面が平行層のCLT板であり、
前記スリット形成工程においては、
前記スリットが前記CLT板の直交層に達するように前記スリットを形成することが望ましい。
【0020】
このような木質面材の加工方法によれば、木質面材のねじり加工をより容易に行うことができる木質面材の加工方法を実現することが可能となる。
【0021】
かかる木質面材の加工方法であって、
前記CLT板は、前記直交層を複数有しており
前記スリット形成工程においては、
前記スリットが、前記一方面とは反対側の他方面に最も近い前記直交層に達し、かつ、該直交層を貫かないように、
前記スリットを形成することが望ましい。
【0022】
このような木質面材の加工方法によれば、木質面材のねじり加工をより一層容易に行うことができる木質面材の加工方法を実現することが可能となる。また、木質面材をねじった際に木質面材に穴を作ってしまうことを防ぐことができ、さらには、木質面材の意匠性を高めることが可能となる。
【0023】
===CLT板1について===
先ず、加工対象物としての木質面材(本実施の形態においては、CLT板1)について、図1を用いて説明する。図1は、CLT板1の斜視図である。
【0024】
CLT板1は、建築材料として建物等に用いられるものであり、直交集成板とも呼ばれている。このCLT板1は、表面が平行な二辺の一例としての二つの短辺2を備える四角形状(本実施の形態においては、互いに平行な二つの短辺2と互いに平行な二つの長辺4を有する長方形状)を備え、一定の厚みを有する板材となっている。
【0025】
CLT板1は、ひき板等(ラミナ10と呼ばれている)をその繊維方向を互いにほぼ平行にして短辺方向(幅方向)に並べ又は接着したもの(プライ12と呼ばれている)を、主としてその繊維方向を互いにほぼ直角にして積層接着し3層以上の構造を持たせたものである。なお、ラミナ10(プライ12)の厚さは、約30mmである。
【0026】
本実施の形態に係るCLT板1は、図1に示すように、5層構造(以下、上から第1層20~第5層24と呼ぶ)となっており、各々の層は一つのプライ(第1プライ~第5プライと呼ぶ)から構成されている。なお、このようなCLT板1は、5層5プライと呼ばれている。
【0027】
第1層20(第1プライ)は、CLT板1の表面にあたる層であり、4つのラミナ10を短辺方向(幅方向)に並べ又は接着することにより構成されている。そして、4つのラミナ10の各々の繊維方向は、二つの短辺2と直交する直交方向(すなわち、長辺方向(長さ方向))に沿っている。すなわち、CLT板1の表面における繊維方向(CLT板1の強軸方向とも呼ばれている)は長辺方向(長さ方向)に沿っている。
【0028】
第2層21(第2プライ)は、7つのラミナ10を長辺方向(長さ方向)に並べ又は接着することにより構成されている。そして、7つのラミナ10の各々の繊維方向は、短辺方向(幅方向)に沿っている。
【0029】
第3層22(第3プライ)は、第1層20(第1プライ)と同様、4つのラミナ10を短辺方向(幅方向)に並べ又は接着することにより構成されている。そして、4つのラミナ10の各々の繊維方向は、長辺方向(長さ方向)に沿っている。
【0030】
第4層23(第4プライ)は、第2層21(第2プライ)と同様、7つのラミナ10を長辺方向(長さ方向)に並べ又は接着することにより構成されている。そして、7つのラミナ10の各々の繊維方向は、短辺方向(幅方向)に沿っている。
【0031】
第5層24(第5プライ)は、第1層20(第1プライ)と同様、CLT板1の表面にあたる層であり、4つのラミナ10を短辺方向(幅方向)に並べ又は接着することにより構成されている。そして、4つのラミナ10の各々の繊維方向は、長辺方向(長さ方向)に沿っている。
【0032】
上述したように、本実施の形態においては、第1層20及び第5層24が外層となっており、一方、第2層21、第3層22、第4層23が内層となっている。また、第1層20、第3層22、第5層24が、所謂平行層(強軸方向とプライ12の繊維方向が平行な層)になっており、また、第2層21及び第4層23が、所謂直交層(強軸方向とプライ12の繊維方向が直交する層)になっている。
【0033】
===CLT板1の加工方法について===
次に、CLT板1の加工方法について、図2乃至図6を用いて説明する。図2は、CLT板1の加工方法の工程を示した図である。図3は、CLT板1におけるスリット30の位置を示した図である。図4は、スリット30の深さを示した図である。図5は、ねじり加工が行われたCLT板1を示した概略図である。図6は、図5のCLT板1を矢印の方から見たときの概略図である。
【0034】
なお、以下に説明する加工方法は、前述した5層5プライのCLT板1の加工を例に挙げて説明するが、5層5プライ以外のCLT板1にも適用可能である。
【0035】
本実施の形態に係るCLT板1の加工方法は、図2に示すように、スリット形成工程S1とねじり加工工程S2とを備えており、スリット形成工程S1、ねじり加工工程S2の順に実行される。
【0036】
スリット形成工程S1においては、前記表面(換言すれば、第1層20(外層、平行層))の繊維方向に沿ったスリット30(図3において点線で示す)をCLT板1に第1層20側から形成する。すなわち、スリット30は、長辺方向(長さ方向)に沿うように形成され、また、CLT板1の一方面のみ(すなわち、第1層20側の表面と第5層24側の表面のうちの前者のみ)に形成される
また、本実施の形態においては、CLT板1の当該繊維方向(長辺方向)における端32に達しないようにスリット30を形成する。つまり、CLT板1の長辺方向における両側の端部33を避けてスリット30を形成する。
【0037】
また、スリット30がCLT板1の直交層に達するようにスリット30を形成する。すなわち、スリット30の深さとしては、平行層止まりではなく、少なくとも直交層(第2層21)には到達するような深さとする。本実施の形態においては、図4に示すように、スリット30の深さが、第2層21を越えて第4層23まで到達するような深さとなっている。より具体的には、本実施の形態に係るスリット30が、前記一方面とは反対側の他方面(すなわち、第5層24側の表面)に最も近い直交層(すなわち、第4層23)に達し、かつ、第4層23を貫かないように(第5層24には達しないように)、スリット30を形成する。つまり、スリット30が、第1層20、第2層21、及び、第3層22を貫き、第4層23の途中で止まるような深さまで形成される。
【0038】
なお、本実施の形態においては、一つのラミナ10対して2つのスリット30が形成されている。すなわち、各々のラミナ10の幅方向における1/3位置と2/3位置にスリット30を形成することとしているが、これに限定されるものではなく、スリット30の量をより多くしてもよいし、より少なくしてもよい。
【0039】
スリット形成工程S1が終わると、次に、ねじり加工工程S2が実施される。ねじり加工工程S2においては、スリット30が形成されたCLT板1を、CLT板1の前記二つの短辺2がねじれの位置に位置するようにねじり加工する(図5図6参照)。すなわち、本実施の形態においては、前記表面の繊維方向(長辺方向)を軸として、前記二つの短辺2(換言すれば、当該二つの短辺2に対応する二つの小口面)の一方に対して他方が相対回転するようにCLT板1をねじることにより、前記二つの短辺2(二つの小口面)をねじれの位置に位置させる。かかるねじり加工工程S2が実行されることで、本実施の形態に係るCLT板1の加工方法が完了する。なお、「ねじれの位置」とは、二直線(二つの短辺2)が互いに平行でなく、また、交叉もない状態をいう。
【0040】
===CLT板1の加工方法の有効性について===
上述したとおり、本実施の形態に係るCLT板1の加工方法は、表面が平行な二つの短辺2を備える四角形状(長方形状)のCLT板1であって、該表面における繊維方向が該二つの短辺2と直交する直交方向に沿うCLT板1を、加工する加工方法であることとした。そして、前記繊維方向に沿ったスリット30をCLT板1に形成するスリット形成工程S1と、スリット30が形成されたCLT板1を、前記二つの短辺2がねじれの位置に位置するようにねじり加工するねじり加工工程S2と、を有することとした。
【0041】
従来は、CLT板1をねじり加工することは困難であったため、専らCLT板1を平面のまま使用していた。すなわち、CLT板1をねじるという発想自体が存在していなかった。
【0042】
これに対し、本実施の形態においては、ねじり加工を行う前にCLT板1にスリット30を設けたため、CLT板1を容易にねじることができる。すなわち、CLT板1のねじり加工を容易に行うことができるCLT板1の加工方法を実現することが可能となり、したがって、ねじり加工されたCLT板1を容易に提供することが可能となる。
【0043】
さらに、本実施の形態においては、スリット30を前記繊維方向に沿うように(換言すれば、前記強軸方向に沿うように)設けているので、CLT板1の強軸方向における強度を損なうことなく(落とさずに)CLT板1の加工を行うことができる。
【0044】
また、CLT板1のねじり加工には、以下の利点がある。第一に、ねじり加工されたCLT板1には意匠上の価値がある。すなわち、ねじり加工されたCLT板1には曲線的な美しさ(擬似曲線美)が存在するため、例えば建物の屋根(従来は、平面的な板で構成されている)等にねじり加工されたCLT板1を用いることで意匠性を高めることが可能となる。
【0045】
第二に、ねじり加工されたCLT板1の前記繊維方向と直交する断面(例えば、図5に示す一点鎖線でCLT板1をカットした断面)は、前記繊維方向におけるどの位置で断面を取っても(前記一点鎖線を繊維方向にずらしても)、略直線的な断面となる。比較例として、CLT板1を円筒形状に曲げた例を図7に示すが、この例の場合には、前記繊維方向と直交する断面が曲線的な断面となっている(曲線状に曲げられている)ので、各々の層のプライ12(木質面材の内部の部材)に大きな負荷がかかってしまう。これに対し、ねじり加工の場合には、断面が曲線状ではなく略直線状となるため、曲線状に曲げられることによる当該負荷をプライ12にかけることなく加工を行うことが可能となる。なお、図7は、円筒形状に曲げられたCLT板1の前記繊維方向と直交する断面を示した比較例に係る断面図である。
【0046】
また、本実施の形態に係るスリット形成工程S1においては、CLT板1の前記繊維方向における端32に達しないようにスリット30を形成することとした。そのため、端部33を確実に直線状に保った状態でねじり加工をすることが可能となる。仮に、端32までスリット30を設けてねじり加工を行った場合には、端部33が前述した円筒形状に曲げられ、これが中央側へ波及した結果当該中央側も円筒形状となってしまう可能性がある。したがって、本実施形態によれば、プライ12に負荷をかけることなく確実にねじり加工を行うことが可能となる。
【0047】
また、本実施の形態に係るスリット形成工程S1においては、CLT板1の一方面のみ(第1層20側の表面のみ)にスリット30を形成することとした。そのため、他方面(第5層24側の表面)にはスリット30が形成されず、CLT1板の意匠性を高めることが可能となる。例えば、当該他方面(第5層24側の表面)を仕上げ面とすることができる。
【0048】
また、本実施の形態に係るスリット形成工程S1においては、スリット30がCLT板1の直交層に達するようにスリット30を形成することとした。すなわち、スリット30の深さとしては、平行層止まりではなく、少なくとも直交層(本実施の形態においては第2層21)には到達するような深さとした。そのため、よりCLT板1をねじり易くなり(また、スリット30がある程度深く形成されていることにより、ねじったときにCLT板1が歪んで破断してしまうことを防ぐことにもなる)、CLT板1のねじり加工をより容易に行うことができるCLT板1の加工方法を実現することが可能となる。
【0049】
また、本実施の形態に係るスリット形成工程S1においては、スリット30が、前記一方面とは反対側の他方面(すなわち、第5層24側の表面)に最も近い直交層(すなわち、第4層23)に達し、かつ、第4層23を貫かないように(第5層24には達しないように)、スリット30を形成することとした。
【0050】
そのため、より一層CLT板1をねじり易くなり(また、ねじったときにCLT板1が歪んで破断してしまうことをより適切に防ぐことができ)、CLT板1のねじり加工をより一層容易に行うことができるCLT板1の加工方法を実現することが可能となる。
【0051】
また、スリット30が第5層24に達するまでスリット30を形成するのは、スリット30の形成が深すぎることとなる。仮に、このようにスリット30を形成した場合には、CLT板1をねじった際に、スリット30が第5層24を貫通してしまう恐れがある。この場合には、CLT板1の表から裏までスリット30が貫通してスリット30が穴となってしまい望ましくないし、また、意匠上の問題(他方面(第5層24側の表面)を仕上げ面とすることができない)も生じる。本実施の形態においては、スリット30が第4層23を貫かないように(第5層24には達しないように)、スリット30を形成するため、上記のような問題が生じない。すなわち、CLT板1をねじった際にCLT板1に穴を作ってしまうことを防ぐことができ、CLT板1の意匠性を高めることが可能となる。
【0052】
===その他の実施の形態===
上記の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0053】
上記実施の形態に係るスリット形成工程においては、CLT板1の前記繊維方向における端32に達しないようにスリット30を形成することにより、端部33を確実に直線状に保った状態でねじり加工をすることとしたが、これに限定されるものではない。
【0054】
例えば、図8に示すように、CLT板1の前記繊維方向における端部33を保持するための端部保持部材34(端部保持ツール)を端部33に取り付ける端部保持工程を有し、ねじり加工工程においては、端部保持部材34が取り付けられたCLT板1をねじり加工することとしてもよい(なお、この場合には、スリット形成工程において、スリット30を端部33に(端32まで)形成してもよい)。
【0055】
かかる場合においても、端部保持部材34により端32を確実に直線状に保った状態でねじり加工をすることができる。そのため、プライ12に負荷をかけることなく確実にねじり加工を行うことが可能となる。
【0056】
なお、図8は、端部保持工程において端部保持部材34により端部33が保持されたCLT板1の様子を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1 CLT板
2 短辺
4 長辺
10 ラミナ
12 プライ
20 第1層
21 第2層
22 第3層
23 第4層
24 第5層
30 スリット
32 端
33 端部
34 端部保持部材
40 小口面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8