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特許7415698ネイルシール製造装置、ネイルシール製造方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ネイルシール製造装置、ネイルシール製造方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A45D 31/00 20060101AFI20240110BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240110BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240110BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20240110BHJP
   B05C 9/12 20060101ALI20240110BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
A45D31/00
B41J2/01 123
B05C5/00 101
B05C11/00
B05C9/12
B05C11/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020047258
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021145806
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】家垣 雄一郎
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/132734(WO,A1)
【文献】特開2015-128696(JP,A)
【文献】特開2014-006738(JP,A)
【文献】特開2006-288829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 31/00
A45D 29/00
B41J 2/01
B05C 5/00
B05C 9/12
B05C 11/00
B05C 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪の表面に粘着剤層を形成する粘着剤層形成手段と、
液剤に覆われる範囲が爪の領域となるように前記粘着剤層上に前記液剤を射出するとともに、前記粘着剤層上を覆った状態の前記液剤に紫外線を照射して硬化させることにより、前記粘着剤層上にシート層を形成するシート層形成手段と、
前記シート層にデザインを描画する描画手段と、
を備えることを特徴とするネイルシール製造装置。
【請求項2】
前記描画手段によって前記デザインが描画された前記シート層を被覆する保護層を前記シート上に形成する保護層形成手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のネイルシール製造装置。
【請求項3】
前記シート層形成手段は、所定の爪形状検出手段によって検出された前記爪の形状に基づいた量の前記液剤を射出する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のネイルシール製造装置。
【請求項4】
前記粘着剤層における粘着剤はシリコン系の粘着剤又はアクリル系の粘着剤である、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のネイルシール製造装置。
【請求項5】
爪の表面に粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程と、
液剤に覆われる範囲が爪の領域となるように前記粘着剤層上に前記液剤を射出するとともに、前記粘着剤層上を覆った状態の前記液剤に紫外線を照射して硬化させることにより、前記粘着剤層上にシート層を形成するシート層形成工程と、
前記シート層にデザインを描画する描画工程と、
を含むことを特徴とするネイルシール製造方法。
【請求項6】
コンピュータを、
所定の粘着剤層形成手段により、爪の表面に粘着剤層を形成させ、
所定のシート層形成手段により、液剤に覆われる範囲が爪の領域となるように前記粘着剤層上に前記液剤を射出させるとともに、前記粘着剤層上を覆った状態の前記液剤に紫外線を照射させて硬化させることにより、前記粘着剤層上にシート層を形成させ、
所定の描画手段により、前記シート層にデザインを描画させる、
制御手段として機能させることを特徴とするプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネイルシール製造装置、ネイルシール製造方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、爪に貼着するネイルチップが知られている。ネイルチップを用いる場合、マニキュア等で爪に直接ネイルデザインを描く場合と異なり、誰でも手軽にネイルアートを楽しむことができる。
例えば特許文献1には、光硬化性樹脂からなるネイルチップ作成用プレート(以下、単に「プレート」という。)を自爪の上に載せ、このプレートを自爪の形状に沿わせた後に光を当てて硬化させ、その後当該プレートをはさみ等でカットして長さを調整し、さらにカットした先を爪ヤスリ等でなめらかに整えることでネイルチップを完成させるネイルチップの作成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-254877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、硬化させたプレート(ネイルチップ作成用プレート)をユーザ自らがカットしたり、爪ヤスリをかける等により、自爪の形状に合わせて整形することは手間がかかる。
特に利き手でない方の手で利き手側のプレートを適切な形状に整形するには、かなりの技術を要する。
このため、このような手法では、誰もが容易にネイルアートを楽しむことはできなかった。
【0005】
さらに、特許文献1に記載の手法では、プレートを選択した時点で爪に施すネイルアートの種類も決まってしまう。
このため、例えば各指の爪にそれぞれ異なるデザインを施したい場合には、デザインの種類だけ複数種類のプレートを用意する等により対応しなければならないと想定され、ユーザにとって不便である。
【0006】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、爪形状に応じたネイルチップ(以下、ネイルシールと称する)を簡易に形成することのできるネイルシール製造装置、ネイルシール製造方法及びプログラムを提供することを利点とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の一態様であるネイルシール製造装置は、爪の表面に粘着剤層を形成する粘着剤層形成手段と、液剤に覆われる範囲が爪の領域となるように前記粘着剤層上に前記液剤を射出するとともに、前記粘着剤層上を覆った状態の前記液剤に紫外線を照射して硬化させることにより、前記粘着剤層上にシート層を形成するシート層形成手段と、前記シート層にデザインを描画する描画手段と、を備えることを特徴とする。
また、本発明の一態様であるネイルシール製造方法は、爪の表面に粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程と、液剤に覆われる範囲が爪の領域となるように前記粘着剤層上に前記液剤を射出するとともに、前記粘着剤層上を覆った状態の前記液剤に紫外線を照射して硬化させることにより、前記粘着剤層上にシート層を形成するシート層形成工程と、前記シート層にデザインを描画する描画工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明の一態様であるプログラムは、コンピュータを、所定の粘着剤層形成手段により、爪の表面に粘着剤層を形成させ、所定のシート層形成手段により、液剤に覆われる範囲が爪の領域となるように前記粘着剤層上に前記液剤を射出させるとともに、前記粘着剤層上を覆った状態の前記液剤に紫外線を照射させて硬化させることにより、前記粘着剤層上にシート層を形成させ、所定の描画手段により、前記シート層にデザインを描画させる、制御手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、爪形状に応じたネイルシールを簡易に形成することができるとの効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態における印刷装置の要部構成を示す正面図である。
図2】本実施形態における印刷装置の制御構成を示した要部ブロック図である。
図3】本実施形態に係る印刷処理の全体的な流れを示すフローチャートである。
図4】本実施形態におけるシール形成モードの印刷処理を示すフローチャートである。
図5】爪の上にネイルシールを形成する手順を説明する説明図である。
図6】ネイルシールが形成された状態の爪を含む指の上面図である。
図7】爪からネイルシールを剥離する様子を示す説明図である。
図8】爪からネイルシールを剥離する様子を示す爪を含む指の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から図8を参照しつつ、本発明に係る印刷装置及びネイルシールの形成方法の一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
また、以下の実施形態では、印刷装置が手の指の爪を印刷対象としてこれに印刷するネイルプリント装置である場合を例に説明するが、本発明における印刷装置の印刷対象は手の指の爪に限るものではなく、例えば足の指の爪等を印刷対象としてもよい。
【0011】
図1は、本実施形態における印刷装置の要部構成を示す正面図であり、装置内部の構成の一部を破線で示している。図2は、当該印刷装置の要部制御構成を示すブロック図である。
本実施形態の印刷装置1は、指Uの爪Tに対して印刷を施すネイルプリント装置である。
【0012】
図1に示すように、印刷装置1は、例えばほぼ箱形に形成された筐体2を有している。
筐体2の左右方向(図1におけるX方向)のほぼ中央部であって、上下方向(図1における上下方向)の中央よりも少し上には、印刷対象となる爪Tに対応する指Uを装置内に挿入する挿入口21が設けられている。
挿入口21の奥側には、印刷対象である爪Tに対応する指Uを保持する図示しない指保持部が配置されている。挿入口21から挿入された指Uは、この指保持部によって印刷に適した位置に保持されるようになっている。
【0013】
また、筐体2の前面側上部(図1に示す例では前面右側の上部)には、開口部23が設けられている。
開口部23を開披することで、後述する印刷部40の各印刷ヘッド(すなわちインクジェットヘッド41やシリンジ型ヘッド42a~42c)にユーザがアクセスすることができ、適宜印刷ヘッドの着脱、交換等を行うことができるようになっている。
開口部23は、このように印刷ヘッドにアクセス可能な位置に形成されていればよく、具体的な位置は特に限定されない。
【0014】
筐体2の上面(天板)等には、印刷装置1の操作部12(図2参照)が設けられている。操作部12は、例えば印刷装置1の電源をON/OFFする操作ボタン(電源スイッチボタン)である。操作部12が操作されると、操作信号が制御装置30(図2参照)に出力され、制御装置30が操作信号に従った制御を行い、印刷装置1の各部を動作させる。
【0015】
また、筐体2の上面(天板)には表示部13が設置されている。
表示部13は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のフラットディスプレイ等で構成されている。
本実施形態において、この表示部13には、例えば、挿入口21から挿入される指Uを撮影して装置内における爪Tの配置を確認するための画像が表示されたり、爪Tの輪郭形状が表示されたり、爪に印刷するデザインの画像等が適宜表示される。また、表示部13には、各種の指示やメッセージを表示させる指示画面等が適宜表示される。
なお、表示部13の表面にタッチパネルが一体的に構成されていてもよい。この場合には、表示部13の表面をタッチするタッチ操作によっても各種の入力操作を行うことができるように構成される。
【0016】
筐体2の内部には、装置本体10が収容されている。
装置本体10には、挿入口21に対応する位置に指保持部が配置されている。また、指保持部に保持された指Uの爪Tを撮影する撮影部50、爪Tに印刷を施す印刷部40等が設けられている。
【0017】
撮影部50は、指保持部の上方位置に配置されており、指保持部に保持された指Uの爪Tを撮影して爪Tの画像(爪Tを含む指Uの画像、爪画像)を取得する。
撮影部50は、例えばカメラ等である撮影装置51と、撮影対象である爪Tを照明する白色LED等で構成された照明装置52とを備えている(図2参照)。
この撮影部50の動作は、後述する制御装置30の撮影制御部311(図2参照)によって制御される。
撮影装置51によって撮影された爪画像の画像データは、後述する記憶部32に記憶されてもよい。
【0018】
印刷部40は、所定の印刷データにしたがって印刷対象面である爪Tの表面に印刷を施すものであり、爪Tの表面に、粘着剤層F1、シート層F2、デザイン層F3及び保護層F4を有し、粘着剤層F1から剥離可能なネイルシールFs(図7等参照)を形成する。
印刷部40は、印刷動作を行う印刷ヘッド(後述のインクジェットヘッド41やシリンジ型ヘッド42a~42c)を搭載するキャリッジ401及びキャリッジ401を移動させるためのキャリッジ移動機構49を備えている。
【0019】
キャリッジ移動機構49は、印刷ヘッドを搭載したキャリッジ401を装置の左右方向(X方向)に移動させるためのX方向移動モータ46を備えるX方向移動機構45及び印刷ヘッドを装置の前後方向(Y方向)に移動させるためのY方向移動モータ48を備えるY方向移動機構47を含んでおり、X方向移動モータ46及びY方向移動モータ48が適宜駆動することによりキャリッジ401を装置の左右方向(X方向)及び装置の前後方向(Y方向)に移動させる。
【0020】
本実施形態においてキャリッジ401は、インクジェット方式の印刷ヘッド(以下「インクジェットヘッド41」という。)と、シリンジ構造を有する印刷ヘッド(以下「第1のシリンジ型ヘッド42a、第2のシリンジ型ヘッド42b、第3のシリンジ型ヘッド42c」という。)と、を搭載している。これらの各印刷ヘッドは、キャリッジから着脱可能に構成されており、ユーザは、前述の開口部23を開けて、適宜印刷ヘッドの交換等を行うことができる。
【0021】
インクジェットヘッド41は、爪表面に対向する面に、インクを吐出させるインク吐出面(図示せず)を備え、インクを微滴化し、インク吐出面から印刷対象(爪T)の被印刷面である爪表面に対して直接にインクを吹き付けて印刷を行うインクジェット方式の印刷ヘッドである。インクジェットヘッド41の構成は特に限定されないが、例えばインク吐出面等の吐出機構部とインクカートリッジ(いずれも図示せず)とが一体となったカートリッジ一体型のヘッドである。
インクジェットヘッド41は、例えば、シアン(C;CYAN)、マゼンタ(M;MAGENTA)、イエロー(Y;YELLOW)のインクを吐出可能であって、カラー印刷が可能となっており、印刷を施すことによりデザイン層F3を形成するデザイン層形成手段として機能する。すなわち、インクジェットヘッド41は、爪Tに、シート層F2を挟んでデザイン層F3を形成する。
なお、インクジェットヘッド41に備えられるインクの種類はこれに限定されない。
インクジェットヘッド41は、キャリッジ401に設けられたヘッドホルダ411に保持された状態で、キャリッジ401に搭載されており、キャリッジ401の移動に応じてX方向・Y方向に移動可能となっている。
【0022】
第1のシリンジ型ヘッド42a,第2のシリンジ型ヘッド42b,第3のシリンジ型ヘッド42cは、それぞれシリンジホルダ421に保持された状態で、キャリッジ401に搭載されている。
第1のシリンジ型ヘッド42a,第2のシリンジ型ヘッド42b,第3のシリンジ型ヘッド42cは、下端部に筒先423を有する外筒422と、外筒内部に設けられ、上下方向に動作するプランジャ424を備えている。
【0023】
各シリンジホルダ421には、第1のシリンジ型ヘッド42a、第2のシリンジ型ヘッド42b、第3のシリンジ型ヘッド42cに対応して、第1のシリンジ駆動部43a、第2のシリンジ駆動部43b、第3のシリンジ駆動部43cが設けられている。第1のシリンジ駆動部43a、第2のシリンジ駆動部43b、第3のシリンジ駆動部43cは、例えば小型のアクチュエータ等で構成されており、プランジャ424を上下方向に動作させる。
各第1のシリンジ型ヘッド42a、第2のシリンジ型ヘッド42b、第3のシリンジ型ヘッド42cの外筒422には、それぞれ液状体が貯留されており、プランジャ424が下方向に押し込まれると、プランジャ424の移動量に応じた量の液状体が筒先423から射出されるようになっている。射出された液状体は爪Tの表面で広がり、爪Tの表面全体に均一に層が形成される。
【0024】
本実施形態において第1のシリンジ型ヘッド42aは、爪Tの表面に粘着剤層F1を形成する粘着剤層形成手段であり、粘着剤層F1を構成する図示しない粘着剤(液剤)を爪Tの表面に射出する。第1のシリンジ型ヘッド42aの外筒422内には、粘着剤層F1を形成する粘着剤が貯留されている。
なお、第1のシリンジ型ヘッド42aは、筒先423から粘着剤を射出するものであってもよいし、筒先423にフェルトやスポンジ等が取り付けられ、このフェルト等が爪Tの表面に接触して粘着剤を爪Tの表面に塗布するものであってもよい。筒先423に設けられたフェルト等を爪Tの表面に接触させて粘着剤を塗布することで、粘着剤を爪Tの表面全体により均一に塗り広げることができ、効率よく均一な厚みの粘着剤層F1を形成することができる。
【0025】
本実施形態では印刷部40によって形成されるネイルシールFsが、粘着剤層F1から剥離可能となっており、粘着剤層F1を形成する粘着剤には、爪Tと密着するが再剥離も可能な粘着剤が用いられる。粘着剤は例えば透明、半透明のものが用いられるが、その色は特に限定されない。
粘着剤としては、例えば、シリコン系の粘着剤、アクリル系の粘着剤としてアクリル樹脂、酢酸ビニル-アクリル共重合体、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ウレタン系の粘着剤や、ゴム系の粘着剤として天然ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴムなどの組成が挙げられる。
なお粘着剤としては、従来公知の粘着剤を適用することができ、粘着剤の具体的な成分は上記の例に限定されない。なお、本実施形態の粘着剤は、人体の一部分である爪Tに接して用いられるものである。このため、比較的刺激の弱いシリコン系の粘着剤又はアクリル系の粘着剤が好ましい。
【0026】
本実施形態において第2のシリンジ型ヘッド42bは、粘着剤層F1の上にシート層F2を形成するシート層形成手段であり、シート層F2を構成する図示しない液剤を粘着剤層F1の上に射出する。すなわち、第2のシリンジ型ヘッド42bは、爪Tに、粘着剤層F1を挟んでシート層F2を形成する。
第2のシリンジ型ヘッド42bは、このように粘着剤層F1の上にシート層F2を形成するものである。このため、筒先423が粘着剤層F1に接触しない状態で液剤を射出することのできる構成のものが適用される。
第2のシリンジ型ヘッド42bの外筒422内には、シート層F2を形成する液剤が貯留されている。
【0027】
シート層F2は、光を照射することで硬化する光硬化型の材料で形成される層であり、本実施形態では、液剤として紫外線(UV)を照射することで硬化する紫外線硬化型の樹脂材料が適用される。
印刷装置1内には、液剤を硬化させる光(紫外線)を照射する光照射手段としてのUVランプ14が設けられている。
なお、シート層F2を構成する液剤の種類は特に限定されない。紫外線以外の光で硬化するものであってもよい。この場合には、光照射手段として当該液剤を硬化させることのできる光を照射する手段が設けられる。
【0028】
液剤は、例えばジェルネイル等で用いられるものである。液剤は使用する材料によって、硬化した際の硬さが異なってもよい。例えば硬化状態においてある程度柔軟性のあるフィルム状になるものでもよいし、ネイルチップのような硬度の高い状態となってもよい。
印刷部40には、こうした各種の材料からなる液剤を貯留した複数種類の第2のシリンジ型ヘッド42bが交換可能に用意されていてもよい。この場合、ユーザは、開口部23を開けて所望の硬さのシート層F2を形成することのできる液剤の入った第2のシリンジ型ヘッド42bをシリンジホルダ421に装着する。
【0029】
第2のシリンジ型ヘッド42bによって形成されるシート層F2は、次のデザイン層F3の下地となるものである。
このため、インクジェットヘッド41で印刷を行ったときにインクの発色がよくなるように、シート層F2を構成する液剤としては、硬化状態において白色若しくはこれに近い色となる液剤が適用されることが好ましい。
また、このようにシート層F2は、デザイン層F3の下地となるため、後述の爪形状検出部313によって検出された爪Tの形状に基づいて形成されることが好ましい。
【0030】
本実施形態において第3のシリンジ型ヘッド42cは、デザイン層F3が形成された後にその上からデザイン層F3を被覆する保護層F4を形成する保護層形成手段であり、保護層F4を構成する図示しない液剤をデザイン層F3の上に射出する。すなわち、第3のシリンジ型ヘッド42cは、爪Tに、デザイン層F3を挟んでデザイン層F3を被覆する保護層F4を形成する。これにより、爪Tの上に粘着剤層F1、シート層F2、デザイン層F3及び保護層F4が積層される(図5参照)。
第3のシリンジ型ヘッド42cの外筒422内には、保護層F4を形成する液剤が貯留されている。
保護層F4を形成する液剤としては、例えば通常のネイルアートやジェルネイルで用いられるコート剤(トップコート、オーバーコート)等の透明な仕上がりとなるものが適用される。保護層F4は、ある程度水や外部刺激に強く表面に傷等がつきにくいものであることが好ましい。
【0031】
第3のシリンジ型ヘッド42cは、上記のようにデザイン層F3の上に保護層F4を形成するものである。このため、筒先423がデザイン層F3に接触しない状態で液剤を射出するか、もしくは接触してもデザイン層F3のデザインを乱さない構成で液剤を塗布することのできるものが好ましい。
デザイン層F3に接触して液剤を塗布する構成としては、例えば筒先423に刷毛や筆状の部材を取り付けたものが適用される。この場合刷毛や筆状の部材等をデザイン層F3に接触させて液剤を塗布することで、液剤を爪Tの表面全体により均一に塗り広げることができ、むらなく均一な厚みの保護層F4を形成することができる。
【0032】
また、図2に示すように、本実施形態の印刷装置1は乾燥部15を有している。
乾燥部15は、爪Tの表面に形成されたデザイン層F3や保護層F4を乾燥させるものであり、デザイン層F3や保護層F4が形成された爪Tの近傍に配置されることが好ましい。なお、具体的な配置は特に限定されない。
なお、デザイン層F3や保護層F4もシート層F2と同様に光硬化型の液剤で形成される場合には、デザイン層F3や保護層F4を形成した後にUVランプ14等の光照射装置によって紫外線等の光を照射すればよく、乾燥部15を設けなくてもよい。
【0033】
乾燥部15は、加熱用のヒータ151及び送風用のファン152を備えている。
ヒータ151は、例えばセラミックヒーターであり、ヒータ151の電源がONとなると発熱し、周囲の空気を加熱する。なお、ヒータ151は、印刷装置1に組み込むことのできる小型のものであればよく、その構成は特に限定されない。例えばニクロム線等の電熱線をコイル状にした電熱ヒータ等でもよい。
また、ファン152は、例えばプロペラ形の羽根によって軸方向に風を送る軸流ファンであり、ヒータ151によって加熱された空気を温風として指Uの爪Tに送風する。なお、ファンの具体的な構成は特に限定されず、送風機能を有する小型の機器であれば適用することができる。なお、ファンは印刷装置1内に送風可能に構成されていればよく、設置される位置は装置外であってもよい。
乾燥部15はヒータ151を動作させずにファンのみを動作させることができてもよく、この場合は、温風ではなく、冷風又は常温の送風のみが行われる。
【0034】
制御装置30は、例えば筐体2の上面(天板)の内側(下面側)等に配置された図示しない基板等に搭載されている。
図2は、本実施形態の制御構成を示すブロック図である。
制御装置30は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで構成される制御部31と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)で構成される記憶部32とを備えるコンピュータである。なお、記憶部32は別構成とし、制御装置30の外部に設けるようにしてもよい。
【0035】
記憶部32には、プログラム記憶領域321、デザイン記憶領域322及び爪形状記憶領域323等が設けられている。
プログラム記憶領域321には、例えば印刷処理を行うための印刷プログラム等、印刷装置1を動作させるための各種プログラム等が格納されている。制御部31がこれらのプログラムを例えばRAMの作業領域に展開して、プログラムが制御部31において実行されることによって、印刷装置1の各部が統括制御されるようになっている。
【0036】
デザイン記憶領域322には、爪Tに印刷するネイルデザインのデザインデータが記憶されている。
また、爪形状記憶領域323には、例えば撮影部50によって取得された爪画像等のデータや爪画像等から検出された爪の輪郭形状(爪Tの形状、爪形状)等、各種の情報が記憶されている。なお、記憶部32には、その他の各種情報が記憶されてもよい。
【0037】
制御部31は、機能的に見た場合、撮影制御部311、表示制御部312、爪形状検出部313、印刷データ生成部314、印刷制御部315、UV制御部316、乾燥制御部317等を備えている。これら撮影制御部311、表示制御部312、爪形状検出部313、印刷データ生成部314、印刷制御部315、UV制御部316、乾燥制御部317等としての機能は、制御部31と記憶部32のプログラム記憶領域321に記憶されたプログラムとの協働によって実現される。
【0038】
撮影制御部311は、撮影部50の撮影装置51及び照明装置52を制御して撮影装置51により、指保持部に保持された指Uの爪Tの画像を含む指Uの画像(爪画像)を撮影させる。撮影制御部311は、撮影部50から爪画像を取得し、記憶部32に記憶させる。
【0039】
表示制御部312は、表示部の表示動作を制御して、撮影制御部311が撮影部50から取得した爪画像等の各種画像や各種の指示画面、メッセージ画面等を表示部13に表示させる。
【0040】
爪形状検出部313は、爪Tの画像(爪画像)に基づいて指Uの爪Tについての情報(本実施形態では爪の形状)を検出する爪形状検出手段である。
前記本実施形態では、爪形状検出部313によって検出された爪Tの形状に合わせてネイルシールが形成される。
なお、爪形状検出部313によって検出される情報はこれに限定されない。
例えば爪形状検出部313は、爪T全体の輪郭(爪形状、爪Tの水平位置のXY座標等)だけでなく、例えば、爪Tの表面の、XY平面に対する傾斜角度(爪Tの傾斜角度、爪曲率)等を含んでいてもよい。また、撮影装置51によって撮影された画像等から爪Tの高さ(爪Tの垂直方向の位置)を取得できる場合には、爪Tの高さも爪情報に含まれてよい。
爪形状検出部313によって取得された各種の情報は、記憶部32の爪形状記憶領域323に記憶される。
【0041】
印刷データ生成部314は、爪形状検出部313によって検出された爪Tの爪形状(爪の輪郭形状)等に基づいて印刷データを生成する制御手段である。
本実施形態では、印刷データ生成部314は、爪Tの爪形状(爪の輪郭形状)から生成した、印刷領域のみを指定するシリンジ型ヘッド42a~42c用の印刷データと、ユーザによって選択されたデザイン(ネイルデザイン)のデータを適宜拡大縮小等するとともに、爪Tの領域として検出された爪形状の範囲内にデザインを合わせ込んだインクジェットヘッド用の印刷データとを生成する。
なお、爪形状検出部313において爪Tの曲率等が取得された場合には、印刷データ生成部314は、この爪Tの曲率等に基づいて、印刷データに適宜曲面補正を行ってもよい。曲面補正を行った場合には、より爪Tの形状に合った印刷データを生成することができる。
【0042】
印刷制御部315は、印刷データ生成部314において生成された印刷データにしたがって爪Tに印刷を施すように印刷部40を制御する。
具体的には、印刷制御部315は、第1のシリンジ型ヘッド42a~第3のシリンジ型ヘッド42cを用いて印刷を行う場合にはシリンジ型ヘッド42a~42c用の印刷データに基づいて印刷部40に制御信号を出力し、爪Tに対してこの印刷データにしたがった印刷を施すように印刷部40のX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48、第1のシリンジ駆動部43a、第2のシリンジ駆動部43b、第3のシリンジ駆動部43c等を制御する。
また、印刷制御部315は、インクジェットヘッド41を用いて印刷を行う場合にはインクジェットヘッド41用の印刷データに基づいて印刷部40に制御信号を出力し、爪Tに対してこの印刷データにしたがった印刷を施すように印刷部40のX方向移動モータ46、Y方向移動モータ48、インクジェットヘッド41等を制御する。
【0043】
UV制御部316は、UVランプ14のON/OFFを制御する。
具体的には、紫外線硬化型の液剤でシート層F2を形成する場合に、第2のシリンジ型ヘッド42bから液剤が射出された後、UVランプ14を点灯させ、爪Tに対して紫外線を照射する。
なお、UVランプ14を点灯させる場合には、その点灯前に、キャリッジ移動機構49を動作させて、第2のシリンジ型ヘッド42bを搭載したキャリッジを、UVランプ14からの紫外線照射野からできるだけ離れた位置に退避させることが好ましい。これにより、第2のシリンジ型ヘッド42b(特に第2のシリンジ型ヘッド42bの筒先423)に紫外線が到達するのを避けて、筒先423等に付着した液剤の硬化を防ぐことができる。
【0044】
乾燥制御部317は、乾燥部15のヒータ151及びファン152の動作を制御する。
なお、ヒータ151及びファン152を動作させるタイミングは、インクジェットヘッド41による印刷動作が終了してからでもよいし、ヒータ151については、印刷装置1の電源投入時等からONとし、ファン152に関してだけ印刷動作終了後に動作させるようにしてもよい。
ヒータ151が一定の温度まで温まるまで時間を要するような場合には、ある程度余熱状態を保つことが好ましい。また、ファン152については、各印刷ヘッドの印刷動作中に動作させると、空気の流れを乱して液剤やインクが適切な位置に着弾しないおそれがあることから、印刷動作が完全に停止してから動作させることが好ましい。
【0045】
次に、図3から図8を参照して、本実施形態の印刷装置1で実現されるネイルシール形成方法を含む印刷方法について説明する。
印刷装置1の電源がONとなると、指保持部に指を保持させるようにユーザに促す画面が表示部13に表示され、ユーザが印刷対象となる爪Tに対応する指Uを挿入口21から装置内に挿入して指保持部に保持させる。
その後、図3に示すように、指保持部に保持されている指Uを撮影部50によって撮影し、制御部31が爪画像を取得する(ステップS1)。
爪画像が取得されると、爪形状検出部313が、当該爪画像から爪形状(爪の輪郭形状)等を検出し(ステップS2)、爪形状記憶領域323に記憶させる。
【0046】
本実施形態の印刷装置1は、爪Tに対してインクジェットヘッド41を用いてネイルデザインを印刷する爪印刷モードと、爪Tの表面にネイルシールFsを印刷(形成する)ネイルシールモードの2種類の印刷モードを実行可能に構成されている。
このように、1台の印刷装置1を用いて2種類の印刷モードによる印刷を行うことができるため、ユーザは、印刷を行う際の用途や必要性、場面等に応じて、好みの印刷を自由に選んで行うことができる。
例えば印刷装置1の表示部13等に、いずれの印刷モードで印刷を行うかを問い合わせる画面が表示される。ユーザがいずれかを選択する動作を行うと、当該入力信号が制御部によって受け付けられる。制御部31は、いずれかの印刷モードが選択されたか否かを判断し(ステップS3)、いずれの印刷モードも選択されていない場合(ステップS3;NO)には、ステップS3の判断を繰り返す。なお、いずれかの印刷モードを選択するよう促す画面を表示部13等に表示させてもよい。
【0047】
印刷モードの入力があった場合には、制御部31はユーザによって選択された印刷モードが爪印刷モードであるか否かを判断する(ステップS4)。
爪印刷モードが選択された場合(ステップS4;YES)には、印刷データ生成部314が、爪形状検出部313によって検出された爪形状にネイルデザインをフィッティングして、爪印刷用の印刷データを生成する(ステップS5)。すなわち、ネイルデザインのデータを爪Tの領域として検出された爪形状の範囲内に合わせ込み、インクジェットヘッド41によってデザインを印刷するための印刷データを生成する。
生成された印刷データは、印刷部40に出力され、当該印刷データに基づいてインクジェットヘッド41によって爪Tにデザインを印刷する印刷処理が行われる(ステップS6)。
【0048】
他方、選択された印刷モードが爪印刷モードでない場合(ステップS4;NO)には、制御部31は、ネイルシールモードが選択されたと判断する。そして、印刷データ生成部314が、爪形状検出部313によって検出された爪形状に基づいてシール形成用の印刷データを生成する(ステップS7)。
すなわち、印刷データ生成部314は、爪Tの爪形状(爪の輪郭形状)から印刷領域(液剤の射出領域)のみを指定するシリンジ型ヘッド用の印刷データと、ネイルデザインのデータを爪Tの領域として検出された爪形状の範囲内に合わせ込んだインクジェットヘッド用の印刷データと、からなるシール形成用の印刷データを生成する。
そして、シール形成用の印刷データが生成されると、これらにしたがって、ネイルシールFs(図6等参照)を形成するための印刷処理が行われる(ステップS8)。
【0049】
次に、図4等を参照しつつ、ネイルシールFsを形成するための印刷処理(図3のステップS8)の詳細について説明する。
この場合、まず、シリンジ型ヘッド用の印刷データを印刷部40に出力する。印刷制御部315は、第1のシリンジ型ヘッド42aのプランジャ424を動作させる第1のシリンジ駆動部43aを制御して、第1のシリンジ型ヘッド42aのプランジャ424を所定のタイミング(例えば第1のシリンジ型ヘッド42aが爪Tのほぼ中央部の上方に位置したタイミング)で、所定量だけ押し下げ、適量の粘着剤(液剤)を爪Tの表面に射出又は塗布させる(ステップS11)。これにより、爪Tの表面に粘着剤層F1が形成される。
【0050】
次に印刷制御部315は、第2のシリンジ型ヘッド42bのプランジャ424を動作させる第2のシリンジ駆動部43bを制御して、第2のシリンジ型ヘッド42bのプランジャ424を所定のタイミング(例えば第2のシリンジ型ヘッド42bが爪Tのほぼ中央部の上方に位置したタイミング)で、所定量だけ押し下げ、適量の液剤を粘着剤層F1の上に射出させる(ステップS12)。これにより、粘着剤層F1の上にシート層F2が形成される。
第2のシリンジ型ヘッド42bから射出された液剤が粘着剤層F1の全体にほぼ均一に広がり、シート層F2が形成されると、UV制御部316は、UVランプ14を点灯させて、シート層F2に紫外線を照射させ、シート層F2を硬化させる(ステップS13)。なお、前述のように、UVランプ14を点灯させる前にキャリッジ401を移動させて印刷ヘッド(特に第2のシリンジ型ヘッド42b)を紫外線照射野から退避させることが好ましい。例えば、印刷ヘッドを非印刷時に待機させておく待機スペースが設けられている場合には、この待機スペースまで印刷ヘッドを移動させてもよい。待機スペースに筒先423を覆うキャップ等が設けられている場合には、より確実に第2のシリンジ型ヘッド42bに付着した液剤の硬化を防ぐことができる。
【0051】
次に制御部31は、インクジェットヘッド用の印刷データを印刷部40に出力する。そして、印刷制御部315は、インクジェットヘッド41を所定の印刷開始位置まで移動させ、インクジェットヘッド41を動作させて、シート層F2の上に印刷データにしたがいデザインを印刷してデザイン層F3を形成させる(ステップS14)。
そして、インクジェットヘッド41による印刷動作が完了すると、乾燥制御部317は、乾燥部15を動作させ、デザイン層F3の乾燥を行う(ステップS15)。
さらに印刷制御部315は、第3のシリンジ型ヘッド42cのプランジャ424を動作させる第3のシリンジ駆動部43cを制御して、第3のシリンジ型ヘッド42cのプランジャ424を所定のタイミング(例えば第3のシリンジ型ヘッド42cが爪Tのほぼ中央部の上方に位置したタイミング)で、所定量だけ押し下げ、適量の液剤をデザイン層F3の上に射出又は塗布させる(ステップS16)。これにより、デザイン層F3の上に保護層F4が形成される。
第3のシリンジ型ヘッド42cから射出された液剤がデザイン層F3の全体にほぼ均一に広がり、保護層F3が形成されると、乾燥制御部317は、乾燥部15を動作させ、保護層F4の乾燥を行う(ステップS17)。
【0052】
これにより、図5に示すように、粘着剤層F1、シート層F2、デザイン層F3及び保護層F4が順に積層され、図6に示すようなネイルシールFsが爪Tの上に形成される。
【0053】
こうして形成されたネイルシールFsは、図7及び図8に示すように、爪Tの表面に接して形成されている第1層目の粘着剤層F1から剥離することができ、爪Tの表面から取り外すことができる。
粘着剤層F1の粘着力は、複数回の着脱に耐えられるものであり、一旦剥離したネイルシールFsを保管しておき、再度任意のときに同じ爪Tの上に貼着して用いることができる。
【0054】
以上のように、本実施形態の印刷装置1は、爪Tの表面に粘着剤層F1を形成する第1のシリンジ型ヘッド42aと、粘着剤層F1の上にシート層F2を形成する第2のシリンジ型ヘッド42bと、シート層F2の上に印刷を施してデザイン層F3を形成するインクジェットヘッド41と、を備え、爪Tの表面に、粘着剤層F1、シート層F2及びデザイン層F3を有し、粘着剤層F1から剥離可能なネイルシールFsを形成することができる。
これにより、ユーザの爪Tの上に直接ネイルシールFsを形成することができ、あたかも爪Tに直接ネイルアートを施したような外観を形成することができるとともに、粘着剤層F1から剥離することができ、リムーバ(除光液)等を用いて拭き取る手間をかけずに、容易にネイルアートを爪Tから取り除くことができる。
このため、例えば仕事上平日は爪Tにネイルアートを施したまま出掛けることのできないユーザでも、休日だけ気軽にネイルアートを楽しむことができる。
【0055】
また、本実施形態では、デザイン層F3の上にデザイン層F3を被覆する保護層F4を形成する第4のシリンジ型ヘッド42cをさらに備え、ネイルシールFsを、粘着剤層F1、シート層F2、デザイン層F3及び保護層F4が積層されてなる構成としている。
このため、多少の水濡れや衣服等との擦れによっては表面に傷がつかず、ある程度長持ちするネイルシールFsを形成することができる。
【0056】
また、本実施形態では、爪Tの形状を検出する爪形状検出部313を備え、ネイルシールFsは、爪形状検出部313によって検出された爪Tの形状に合わせて形成される。
このため、ユーザが自分で切ったり削ったりして形を整えなくても、自分の爪Tの形状に合ったネイルシールFsを容易に作成することができる。
【0057】
また、本実施形態では、粘着剤層F1を構成するための印刷ヘッドは、シリンジ構造を有する第1のシリンジ型ヘッド42aであり、粘着剤を爪Tの表面に射出若しくは塗布する。
このため、粘着剤のような比較的粘度の高い液剤でも容易に射出若しくは塗布することができ、印刷装置1を用いて自動で粘着剤層F1を形成することができる。
【0058】
また、本実施形態では、シート層F2を構成するための印刷ヘッドは、シリンジ構造を有する第2のシリンジ型ヘッド42bであり、シート層F2を形成する液剤を粘着剤層F1の上に射出する。
このため、例えばジェルネイルに用いられるような比較的粘度の高い液剤でも容易に射出することができ、印刷装置1を用いて自動でシート層F2を形成することができる。
【0059】
また、本実施形態では、インクを吐出させてインクジェット方式で印刷を行うインクジェットヘッド41によってデザイン層F3を形成する。
このため、手書きでは再現することが難しい緻密なデザインでも、正確に印刷することができ、高品位なネイルアートを簡易に楽しむことができる。
【0060】
また、本実施形態では、シート層F2が光硬化型の材料で形成される。
このため、比較的強度のあるシート層F2を容易に形成することができる。
また、本実施形態では、光硬化型の材料を硬化させる光を照射する光照射手段を装置内に備えている。
このため、液剤を硬化させるために指Uを装置外に取り出す必要がなく、指保持部に指を保持させたまま自動で液剤を硬化させ、ユーザの手間を要さずにシート層F2を形成することができる。
【0061】
また、本実施形態では、一旦剥離したネイルシールFsを爪Tに再貼着することができる。
このため、気に入ったデザインのネイルシールFsを作成しておけば、これを繰り返し爪Tに貼着して楽しむことができる。この場合、既に作成されたネイルシールFsを爪Tに貼り付けるだけで済むため、自爪にあった形状のネイルシールFsによってお気に入りのネイルデザインを、手間をかけずに簡易迅速に楽しむことが可能となる。
【0062】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0063】
例えば、本実施形態では、ネイルシールFsが、粘着剤層F1、シート層F2、デザイン層F3及び保護層F4が積層されてなる4層構成である場合を例示したが、保護層F4を形成する手段(本実施形態では第3のシリンジ型ヘッド42c)を印刷装置1が備えることは必須ではない。
第3のシリンジ型ヘッド42cを備えない場合は、第3のシリンジ駆動部43cを備える必要がない。またシリンジホルダ421も2つ用意すればよい。
この場合、粘着剤層F1、シート層F2、デザイン層F3の3層構成のネイルシールFsとしてもよいし、デザイン層F3の上にユーザ自らがコート剤等を手動で塗布して保護層を形成してもよい。
【0064】
また、粘着剤層F1、シート層F2、デザイン層F3、保護層F4は、その機能を損なわないかぎり各層間に他の層を付加することができる。
例えば、シリンジホルダ421の1つに下地用の液剤を貯留するシリンジ型ヘッドを装着可能とし、爪印刷モードの場合に、インクジェットヘッド41による印刷の前に、下地用の液剤を貯留するシリンジ型ヘッドによって爪Tの表面に自動で下地を塗布することができるように構成してもよい。
爪Tにインクジェットヘッド41による印刷を行う場合には、爪Tの表面にインクを受容するインク受容層を形成し、インクの発色がよくなるように白色等の下地を塗布する必要がある。この下地塗布の工程はユーザが手動で行うのが一般的である。
しかし下地用の液剤を貯留するシリンジ型ヘッドを設けた場合には、爪印刷モードにおいて、印刷前にユーザが予め下地を手塗りする必要がなく、下地の塗布から印刷まで(さらに、本実施形態のように保護層F4を設ける場合にはオーバーコートまで)を、1台の装置で自動的に行うことができる。
これにより、より簡易にネイルプリントを楽しむことができる。
【0065】
また、本実施形態では印刷装置1が3つのシリンジホルダ421を備える場合を例示したが、印刷装置1が備えるシリンジホルダ421の数は4つ以上であってもよいし、例えば1つのみ備える構成としてもよい。
シリンジホルダ421が1つ等である場合には、各層を形成するごとにユーザがシリンジホルダ421に必要なシリンジ型ヘッドが装着されるように適宜交換する。この場合、表示部13等に、次に装着すべきシリンジ型ヘッドをユーザに示すガイド表示等を行ってもよい。
【0066】
また、粘着剤層F1、シート層F2、保護層F4を形成するための各液剤を印刷する印刷ヘッドは、本実施形態に示したものに限定されない。
各液剤を印刷する印刷ヘッドは、液剤を適切な位置に適量射出等により滴下したり、塗布したりすることができればよく、具体的な形状・構成等は適宜変更可能である。
【0067】
また、本実施形態では、印刷装置1が爪形状検出部313や印刷データ生成部314等を有する場合を例示したが、印刷装置1は単体で印刷処理を行うものに限定されない。例えばスマートフォン等の外部の端末装置と連携し、印刷動作以外の処理や動作(例えば爪形状の検出や印刷データの生成等)については、端末装置側の制御部において行われる構成としてもよい。
このように印刷装置1が端末装置等と連携する場合には、操作部や表示部等についても、端末装置側に設けて、ユーザによる操作入力や各種画面の表示処理を端末装置側で行い、印刷装置が端末装置と通信を行いながら各種の処理を実行する構成としてもよい。
この場合には、印刷装置の構成を簡易なものとすることができる。
【0068】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
爪の表面に粘着剤層を形成する粘着剤層形成手段と、
前記爪に、前記粘着剤層を挟んでシート層を形成するシート層形成手段と、
前記爪に、前記シート層を挟んでデザイン層を形成するデザイン層形成手段と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
<請求項2>
前記爪に、前記デザイン層を挟んで前記デザイン層を被覆する保護層を形成する保護層形成手段をさらに備え、
前記粘着剤層、前記シート層、前記デザイン層及び前記保護層を積層することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
<請求項3>
前記爪の形状を検出する爪形状検出手段を備え、
前記シート層は、前記爪形状検出手段によって検出された前記爪の形状に基づいて形成されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の印刷装置。
<請求項4>
前記粘着剤層形成手段は、シリンジ構造を有し、前記粘着剤層を構成する粘着剤を前記爪の表面に射出若しくは塗布するものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項5>
前記シート層形成手段は、シリンジ構造を有し、前記シート層を構成する液剤を前記粘着剤層の上に射出するものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項6>
前記デザイン層形成手段は、インクを吐出させて印刷を行うインクジェット方式の印刷ヘッドであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項7>
前記シート層は、光を照射することで硬化する光硬化型の材料で形成され、
装置内に前記光硬化型の材料を硬化させる光を照射する光照射手段を備えていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項8>
前記粘着剤層を前記爪の表面に対して剥離可能に構成することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の印刷装置。
<請求項9>
前記粘着剤層は、前記爪の表面から一旦剥離させたのち、前記爪の表面に再貼着することが可能に構成されていることを特徴とする請求項8に記載の印刷装置。
<請求項10>
爪の表面に粘着剤層を形成する粘着剤層形成工程と、
前記爪に、前記粘着剤層を挟んでシート層を形成するシート層形成工程と、
前記爪に、前記シート層を挟んでデザイン層を形成するデザイン層形成工程と、
を含む形成方法。
<請求項11>
コンピュータに、
爪の表面に粘着剤層を形成する粘着剤層形成機能と、
前記爪に、前記粘着剤層を挟んでシート層を形成するシート層形成機能と、
前記爪に、前記シート層を挟んでデザイン層を形成するデザイン層形成機能と、
を実現させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0069】
1 印刷装置
13 表示部
14 UVランプ
15 乾燥部
31 制御部
32 記憶部
40 印刷部
41 インクジェットヘッド
42a 第1のシリンジ型ヘッド
42b 第2のシリンジ型ヘッド
42c 第3のシリンジ型ヘッド
43a 第1のシリンジ駆動部
43b 第2のシリンジ駆動部
43c 第3のシリンジ駆動部
F1 粘着剤層
F2 シート層
F3 デザイン層
F4 保護層
Fs ネイルシール
T 爪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8