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特許7415709ベルト、中間転写ベルト、及び画像形成装置
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  • 特許-ベルト、中間転写ベルト、及び画像形成装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ベルト、中間転写ベルト、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20240110BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240110BHJP
   C08G 73/14 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G15/00 552
C08G73/14
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020050049
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2020187344
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】P 2019089933
(32)【優先日】2019-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹井 大
(72)【発明者】
【氏名】福田 茂
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 聡哉
(72)【発明者】
【氏名】古川 雅士
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】瀬古 真路
(72)【発明者】
【氏名】種村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】小野 雅人
(72)【発明者】
【氏名】林 聖悟
(72)【発明者】
【氏名】松本 晃一
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-237364(JP,A)
【文献】特開2010-250251(JP,A)
【文献】特開2014-132331(JP,A)
【文献】特開2004-295070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/00
G03G 13/02
G03G 13/14-13/16
G03G 15/00
G03G 15/02
G03G 15/14-15/16
G03G 21/16-21/18
C08G 73/00-73/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト外周面を形成する第1層と第1層に内接する第2層とを有し、
前記第1層及び前記第2層が共にポリイミド系樹脂を含み、
前記第1層がカーボンブラック粒子を含み、前記ベルト外周面に露出したカーボンブラック粒子の粒子径が5nm以上150nm以下であり、且つ、前記ベルト外周面に露出したカーボンブラック粒子の当該ベルト外周面に占める面積率が2%以上35%以下であり、
1μm四方当たりの導電点数が80個以上であり、
体積抵抗率が10[logΩ・cm]以上である、ベルト。
【請求項2】
前記第1層に含まれるカーボンブラック粒子の平均一次粒子径が2nm以上20nm以下である請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
前記第1層は、カーボンブラック粒子を第1層の全質量に対して15質量%以上で含む請求項1又は請求項2に記載のベルト。
【請求項4】
前記カーボンブラック粒子が第1層の全質量に対して15質量%以上30質量%以下で含む請求項3に記載のベルト。
【請求項5】
前記第1層に含まれるポリイミド系樹脂がポリアミドイミド樹脂である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項6】
前記ベルト外周面の表面粗さRzが0.2μm以下である請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項7】
前記第2層は、カーボンブラック粒子を含み、該カーボンブラック粒子の平均一次粒子径が20nm超え40nm以下である請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項8】
前記第2層は、カーボンブラック粒子を第2層の全質量に対して10質量%以上40質量%以下で含む請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項9】
前記カーボンブラック粒子が第2層の全質量に対して20質量%以上30質量%以下で含む請求項8に記載のベルト。
【請求項10】
前記第2層に含まれるポリイミド系樹脂がポリイミド樹脂である請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項11】
前記第1層と前記第2層との総膜厚に対する前記第1層の膜厚の割合が3%以上25%以下である請求項1~請求項10のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項12】
カーボンブラック粒子及びポリイミド系樹脂を含み、ベルト外周面を形成する層を有し、
前記ベルト外周面に露出したカーボンブラック粒子の粒子径が5nm以上150nm以下であり、且つ、前記ベルト外周面に露出したカーボンブラック粒子の当該ベルト外周面に占める面積率が2%以上35%以下であり、
1μm四方当たりの導電点数が80個以上であり、
体積抵抗率が10[logΩ・cm]以上である、ベルト。
【請求項13】
前記カーボンブラック粒子の平均一次粒子径が2nm以上20nm以下である請求項12に記載のベルト。
【請求項14】
前記カーボンブラック粒子を層の全質量に対して15質量%以上で含む請求項12又は請求項13に記載のベルト。
【請求項15】
前記ベルト外周面の表面抵抗率をρs1とし、前記ベルト外周面とは反対の面の表面抵抗率をρs2としたとき、下記式(1)及び下記式(2)を満たす請求項1~請求項14のいずれか1項に記載のベルト。
式(1) ρs1≧10.9[logΩ/□]
式(2) 0<|ρs1-ρs2|≦0.3
【請求項16】
曲率半径Rが0.38mmのクランプを用いたMIT試験による耐折れ回数が3000回以上である請求項1~請求項15のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項17】
請求項1~請求項16のいずれか1項に記載のベルトからなる中間転写ベルト。
【請求項18】
請求項1~請求項16のいずれか1項に記載のベルトを備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト、中間転写ベルト、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置(複写機、ファクシミリ、プリンタ等)では、像保持体の表面に形成されたトナー像を記録媒体の表面に転写し、記録媒体上に定着して画像が形成される。なお、こうしたトナー像の記録媒体への転写には、中間転写ベルトのような導電性ベルトが用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、「単層で構成され、ポリアミドイミド樹脂とカーボンブラックとを含有し、カーボンブラックの表面露出率が20%以下であることを特徴とする中間転写体」が開示されている。
【0004】
特許文献2には、「電子写真方式による画像形成装置に用いられ、内層と、該内層よりも外周表面側に積層された外層と、の少なくとも2層を有してなり、前記外層において単位体積当たりに含有されるカーボンブラックの含有量が、前記内層において単位体積当たりに含有されるカーボンブラックの含有量より少ないことを特徴とする環状体」が開示されている。
【0005】
特許文献3には、「非熱可塑性芳香族ポリイミド樹脂基体層に熱可塑性芳香族ポリアミドイミド樹脂層が積層されてなる管状多層フイルムであって、且つ該非熱可塑性芳香族ポリイミド樹脂基体層又は該熱可塑性芳香族ポリアミドイミド樹脂層のいずれか一方又は両方が異なる半導電性を有していることを特徴とする管状芳香族ポリイミド樹脂系多層フイルム」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-237364号公報
【文献】特開2009-258699号公報
【文献】特開2002-316369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
カーボンブラック粒子を樹脂に分散してなるベルトは、導電性を有することもあり、電圧の印加により形成された電界内に曝されることが多い。
しかしながら、カーボンブラック粒子を樹脂に分散してなるベルトは、電界内にて大きな放電が起きやすいことがある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、ベルト外周面に露出したカーボンブラック粒子の粒子径が150nmを超える場合、ベルト外周面に露出したカーボンブラック粒子のベルト外周面に占める面積率が20%未満である場合、1μm四方当たりの導電点数が80個未満である場合、又は体積抵抗率が10[logΩ・cm]未満である場合と比べ、電界内での放電が抑制されるベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の手段により解決される。
<1> ベルト外周面を形成する第1層と第1層に内接する第2層とを有し、
前記第1層及び前記第2層が共にポリイミド系樹脂を含み、
前記第1層がカーボンブラック粒子を含み、前記ベルト外周面に露出したカーボンブラック粒子の粒子径が5nm以上150nm以下であり、且つ、前記ベルト外周面に露出したカーボンブラック粒子の当該ベルト外周面に占める面積率が2%以上35%以下であり、
1μm四方当たりの導電点数が80個以上であり、
体積抵抗率が10[logΩ・cm]以上である、ベルト。
<2> 前記第1層に含まれるカーボンブラック粒子の平均一次粒子径が2nm以上20nm以下である<1>に記載のベルト。
<3> 前記第1層は、カーボンブラック粒子を第1層の全質量に対して15質量%以上で含む<1>又は<2>に記載のベルト。
<4> 前記カーボンブラック粒子が第1層の全質量に対して15質量%以上30質量%以下で含む<3>に記載のベルト。
<5> 前記第1層に含まれるポリイミド系樹脂がポリアミドイミド樹脂である<1>~<4>のいずれか1に記載のベルト。
<6> 前記ベルト外周面の表面粗さRzが0.2μm以下である<1>~<5>のいずれか1に記載のベルト。
<7> 前記第2層は、カーボンブラック粒子を含み、該カーボンブラック粒子の平均一次粒子径が20nm超え40nm以下である<1>~<6>のいずれか1に記載のベルト。
<8> 前記第2層は、カーボンブラック粒子を第2層の全質量に対して10質量%以上40質量%以下で含む<1>~<7>のいずれか1に記載のベルト。
<9> 前記カーボンブラック粒子が第2層の全質量に対して20質量%以上30質量%以下で含む<8>に記載のベルト。
<10> 前記第2層に含まれるポリイミド系樹脂がポリイミド樹脂である<1>~<9>のいずれか1に記載のベルト。
<11> 前記第1層と前記第2層との総膜厚に対する前記第1層の膜厚の割合が3%以上25%以下である<1>~<10>のいずれか1に記載のベルト。
<12> カーボンブラック粒子及びポリイミド系樹脂を含み、ベルト外周面を形成する層を有し、
前記ベルト外周面に露出したカーボンブラック粒子の粒子径が5nm以上150nm以下であり、且つ、前記ベルト外周面に露出したカーボンブラック粒子の当該ベルト外周面に占める面積率が2%以上35%以下であり、
1μm四方当たりの導電点数が80個以上であり、
体積抵抗率が10[logΩ・cm]以上である、ベルト。
<13> 前記カーボンブラック粒子の平均一次粒子径が2nm以上20nm以下である<12>に記載のベルト。
<14> 前記カーボンブラック粒子を層の全質量に対して15質量%以上で含む<12>又は<13>に記載のベルト。
<15> 前記ベルト外周面の表面抵抗率をρs1とし、前記ベルト外周面とは反対の面の表面抵抗率をρs2としたとき、下記式(1)及び下記式(2)を満たす<1>~<14>のいずれか1に記載のベルト。
式(1) ρs1≧10.9[logΩ/□]
式(2) 0<|ρs1-ρs2|≦0.3
<16> 曲率半径Rが0.38mmのクランプを用いたMIT試験による耐折れ回数が3000回以上である<1>~<15>のいずれか1に記載のベルト。
<17> <1>~<16>のいずれか1に記載のベルトからなる中間転写ベルト。
<18> <1>~<16>のいずれか1に記載のベルトを備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0010】
前記<1>に係る発明によれば、ベルト外周面に露出したカーボンブラック粒子の粒子径が150nmを超える場合、ベルト外周面に露出したカーボンブラック粒子のベルト外周面に占める面積率が20%未満である場合、1μm四方当たりの導電点数が80個未満である場合、又は体積抵抗率が10[logΩ・cm]未満である場合と比べ、電界内での放電が抑制されるベルトが提供される。
前記<2>に係る発明によれば、第1層に含まれるカーボンブラック粒子の平均一次粒子径が20nmを超える場合と比べ、電界内での放電が抑制されるベルトが提供される。
前記<3>又は<4>に係る発明によれば、カーボンブラック粒子を第1層の全質量に対して15質量%未満で含む場合と比べ、電界内での放電が抑制されるベルトが提供される。
前記<5>に係る発明によれば、第1層に含まれるポリイミド系樹脂がポリイミド樹脂である場合と比べ、電界内での放電が抑制されるベルトが提供される。
前記<6>に係る発明によれば、ベルト外周面の表面粗さRzが0.2μm未満である場合と比べ、電界内での放電が抑制されるベルトが提供される。
前記<7>に係る発明によれば、第2層に含まれるカーボンブラック粒子の平均一次粒子径が20nm以下である場合と比べ、電界内での放電が抑制されるベルトが提供される。
前記<8>又は<9>に係る発明によれば、カーボンブラック粒子を第2層の全質量に対して10質量%未満で含む場合と比べ、電界内での放電が抑制されるベルトが提供される。
前記<10>に係る発明によれば、第1層に含まれるポリイミド系樹脂がポリアミドイミド樹脂である場合と比べ、機械的強度に優れたベルトが提供される。
前記<11>に係る発明によれば、第1層と第2層との総膜厚に対する第1層の膜厚の割合が3%未満又は25%超である場合に比べ、電界内での放電が抑制されるベルトが提供される。
前記<12>に係る発明によれば、ベルト外周面に露出したカーボンブラック粒子の粒子径が150nmを超える場合、ベルト外周面に露出したカーボンブラック粒子のベルト外周面に占める面積率が20%未満である場合、1μm四方当たりの導電点数が80個未満である場合、又は体積抵抗率が10[logΩ・cm]未満である場合と比べ、電界内での放電が抑制されるベルトが提供される。
前記<13>に係る発明によれば、カーボンブラック粒子の平均一次粒子径が20nmを超える場合と比べ、電界内での放電が抑制されるベルトが提供される。
前記<14>に係る発明によれば、カーボンブラック粒子を層の全質量に対して15質量%未満で含む場合と比べ、電界内での放電が抑制されるベルトが提供される。
前記<15>に係る発明によれば、前記式(1)及び式(2)の少なくとも一方を満たさない場合と比べ、電界内での放電が抑制されるベルトが提供される。
前記<16>に係る発明によれば、耐折れ回数が3000回未満である場合と比べ、耐屈曲性に優れるベルトが提供される。
前記<17>又は<18>に係る発明によれば、ベルト外周面に露出したカーボンブラック粒子の粒子径が150nmを超えるベルト、ベルト外周面に露出したカーボンブラック粒子のベルト外周面に占める面積率が20%未満であるベルト、1μm四方当たりの導電点数が80個未満であるベルト、又は体積抵抗率が10[logΩ・cm]未満であるベルトに比べ、電界内での放電が抑制される中間転写ベルト、又は、電界内での放電が抑制されるベルトを備えた画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0013】
本実施形態において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本実施形態中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本実施形態中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本実施形態において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本実施形態において実施形態を図面を参照して説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
本実施形態において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。本実施形態において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0014】
<ベルト(1)>
本実施形態に係る第1のベルト(以下、「ベルト(1)」ともいう)は、ベルト外周面を形成する第1層と第1層に内接する第2層とを有し、第1層及び第2層が共にポリイミド系樹脂を含み、第1層がカーボンブラック粒子を含み、ベルト外周面に露出したカーボンブラック粒子の粒子径が5nm以上150nm以下であり、且つ、ベルト外周面に露出したカーボンブラック粒子のベルト外周面に占める面積率が2%以上35%以下であり、1μm四方当たりの導電点数が80個以上であり、体積抵抗率が10[logΩ・cm]以上である。
【0015】
本実施形態に係る第2のベルト(以下、「ベルト(2)」ともいう)は、カーボンブラック粒子及びポリイミド系樹脂を含み、ベルト外周面を形成する層を有し、ベルト外周面に露出したカーボンブラック粒子の粒子径が5nm以上150nm以下であり、且つ、ベルト外周面に露出したカーボンブラック粒子の当該ベルト外周面に占める面積率が2%以上35%以下であり、1μm四方当たりの導電点数が80個以上であり、体積抵抗率が10[logΩ・cm]以上である。
【0016】
以下、本実施形態に係る第1のベルト(即ち、ベルト(1))及び本実施形態に係る第2のベルト(即ち、ベルト(2))に共通する事項については、本実施形態に係るベルトと総称して説明する。
本実施形態に係るベルトは、導電性ベルトであって、電子写真方式を用いた画像形成装置における中間転写ベルトとして好適に用いられる。
【0017】
本実施形態に係るベルトは、上記構成により、電界内での放電が抑制される。この理由は定かではないが、以下に示す理由によるものと推測される。
ベルト(1)において、第1層により形成されたベルト外周面は、カーボンブラック粒子が露出しており、その露出したカーボンブラック粒子の粒子径が小さく、且つ、露出したカーボンブラック粒子はベルト外周面に対して2%以上の面積を占める。
また、ベルト(2)においても、ベルト外周面は、カーボンブラック粒子が露出しており、その露出したカーボンブラック粒子の粒子径が小さく、且つ、露出したカーボンブラック粒子はベルト外周面に対して2%以上の面積を占める。
つまり、ベルト(1)及びベルト(2)は、ベルト外周面が、小さな粒子径のカーボンブラック粒子が、大量に分散及び露出している、といった状態を有することが共通している。
更に、ベルト(1)及びベルト(2)は、共に、1μm四方当たりの導電点数が80個以上であり、また、体積抵抗率も10[logΩ・cm以上]であることから、放電量を抑制し、均一な電界を形成しやすくなる。そのため、ベルト(1)及びベルト(2)は、電界内において、局所的に大きな放電を抑制することができ、結果として、放電数又は放電量を低減させうる。
【0018】
本実施形態に係るベルトは、有端ベルトであっても、無端ベルトであってもよい。また、ベルト(1)の場合には第1層及び第2層以外の任意の層を、また、ベルト(2)の場合にはカーボンブラック粒子及びポリイミド系樹脂を含む層以外の任意の層を、更に有する構造のベルトであってもよい。
また、本実施形態において、ポリイミド系樹脂とは、繰り返し単位中にイミド結合を有する重合体を指し、具体的には、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂の他、ポリエーテルイミド樹脂が挙げられる。
【0019】
以下、まず、ベルト(1)における第1層及び第2層について説明する。
【0020】
[第1層]
ベルト(1)は、ベルト外周面を形成する第1層を有する。第1層は、ポリイミド系樹脂及びカーボンブラック粒子を含む。そして、第1層にて形成されるベルト外周面において、露出したカーボンブラック粒子の粒子径が5nm以上150nm以下であり、且つ、露出したカーボンブラック粒子のベルト外周面に占める面積率が2%以上35%以下である。
【0021】
(ベルト外周面に露出したカーボンブラック粒子)
第1層にて形成されるベルト外周面にはカーボンブラック粒子が露出している。露出しているカーボンブラック粒子が以下のような条件を満たすことで、ベルト(1)は、放電を抑制しうる。
露出したカーボンブラック粒子の粒子径は、5nm以上150nm以下であり、5nm以上130nm以下が好ましく、5nm以上100nm以下がより好ましい。
また、露出したカーボンブラック粒子のベルト外周面に占める面積率は、2%以上35%以下であり、3%以上30%以下が好ましく、5%以上20%以下がより好ましい。
ベルト外周面に露出しているカーボンブラック粒子の粒子径、及び、露出したカーボンブラック粒子のベルト外周面に占める面積率を、それぞれ上記の範囲とするためには、第1層に含まれるカーボンブラック粒子の、粒子径、含有量、分散状態等を、適宜、調整すればよい。また、加熱成膜する過程の条件を調整することにより、ベルト外周面に露出しているカーボンブラック粒子の平均粒子径、及び、露出したカーボンブラック粒子のベルト外周面に占める面積率を、それぞれ上記の範囲としてもよい。
【0022】
ここで、上記の粒子径及び面積率の測定方法について説明する。
まず、ベルトを5mm×5mmで切り出し、3個の試験片を作製する。
この試験片の外周面について、走査型電子顕微鏡(SEM)で表面の観察を実施する。得られた画像のうち低コントラスト部分がカーボンブラック粒子、高コントラスト部分が樹脂であり、コントラストの差を利用し2値化の画像処理を実施することで、露出したカーボンブラック粒子の面積率を算出する。ここでいう面積率は、各試験片に対し3視野の観察を実施し、計9箇所の画像における面積率の平均値とする。
また、露出したカーボンブラック粒子の粒子径については、得られた9箇所の画像において、全てのカーボンブラック粒子の凝集体についてその長径を計測し、これを粒子径とする。粒子径は、計測された長径の最小値から最大値までの範囲として示す。
【0023】
(ポリイミド系樹脂)
第1層は、カーボンブラック粒子の分散性、機械的強度、寸法安定性、電気的安定性、耐熱性等の観点から、ポリイミド系樹脂を含む。
ここで、ポリイミド系樹脂としては、ポリイミド樹脂であってもよいし、ポリアミドイミド樹脂であってもよいが、カーボンブラック粒子の分散性に優れる(具体的には、より小径のカーボンブラック粒子の分散性に優れる)観点から、ポリアミドイミド樹脂が好ましい。
【0024】
-ポリアミドイミド樹脂-
ポリアミドイミド樹脂としては、繰り返し単位にイミド結合とアミド結合とを有する樹脂であれば特に制限はない。
より具体的には、ポリアミドイミド樹脂は、酸無水物基を有する3価のカルボン酸化合物(トリカルボン酸ともいう)と、ジイソシアネート化合物又はジアミン化合物との重合体が挙げられる。
【0025】
トリカルボン酸としては、トリメリット酸無水物及びその誘導体が好ましい。トリカルボン酸の他に、テトラカルボン酸二無水物、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などを併用してもよい。
【0026】
ジイソシアネート化合物としては、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ビフェニル-3,3’-ジイソシアネート、ビフェニル-3,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジエチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジエチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジメトキシビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート等が挙げられる。
ジアミン化合物としては、上記のイソシアネートと同様の構造を有し、イソシアナト基の代わりにアミノ基を有する化合物が挙げられる。
【0027】
第1層は、ポリアミドイミド樹脂を1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
ポリアミドイミド樹脂の含有量は、放電を抑制する観点から、第1層の全質量に対して、20質量%以上85質量%以下であることが好ましく、40質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上75質量%以下であることが更に好ましい。
【0028】
(カーボンブラック粒子)
第1層は、カーボンブラック粒子を含む。
カーボンブラック粒子は、導電性に優れ、少ない含有量でも高い導電性を付与することができるという利点がある。
【0029】
第1層に用いられるカーボンブラック粒子としては、例えば、ケッチエンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、表面が酸化されたカーボンブラック(以下、「表面処理カーボンブラック」ともいう)等が挙げられる。このうち、経時での電気抵抗安定性の観点から、表面処理カーボンブラックが好ましい。
表面処理カーボンブラックは、その表面に、例えば、カルボキシ基、キノン基、ラクトン基、ヒドロキシ基等を付与して得られる。表面処理の方法としては、例えば、高温雰囲気下で空気と接触して反応させる空気酸化法、常温(例えば、22℃)下で窒素酸化物又はオゾンと反応させる方法、高温雰囲気下での空気酸化後、低温でオゾンにより酸化する方法等を挙げられる。
【0030】
第1層に用いられるカーボンブラック粒子の平均一次粒子径は、分散性の観点、及び、表面への露出の観点から、2nm以上20nm以下が好ましく、5nm以上20nm以下がより好ましく、8nm以上18nm以下が特に好ましい。
【0031】
カーボンブラック粒子の平均一次粒子径は、次の方法により測定される。
まず、得られたベルトから、ミクロトームにより、100nmの厚さの測定サンプルを採取し、本測定サンプルをTEM(透過型電子顕微鏡)により観察する。そして、カーボンブラック粒子50個の各々の投影面積に等しい円の直径を粒子径として、その平均値を平均一次粒子径とする。
【0032】
第1層は、カーボンブラック粒子を1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
カーボンブラック粒子の含有量としては、放電を抑制する観点から、第1層の全質量に対して、15質量%以上であることが好ましく、15質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、16質量%以上22質量%以下であることが更に好ましい。
【0033】
(その他の成分)
第1層は、上述した成分以外の、その他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、例えば、カーボンブラック粒子以外の導電剤、ベルトの強度向上のためのフィラー、ベルトの熱劣化を防止するための酸化防止剤、流動性を向上させるための界面活性剤、耐熱老化防止剤等が挙げられる。
第1層にその他の成分が含まれる場合、その他の成分の含有量は、第1層の全質量に対して、0質量%超10質量%以下が好ましく、0質量%超5質量%以下がより好ましく、0質量%超1質量%以下が更に好ましい。
【0034】
(表面性状)
ベルト(1)において、ベルト外周面は、表面粗さRzが0.2μm以下であることが好ましく、0.15μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることが更に好ましい。
表面粗さRzは、「最大高さ」と呼ばれる高さ方向のパラメータであり、JIS B 0601:2013で規定されている、基準長さにおける粗さ曲線の山高さの最大値と谷深さの最大値との和である。
【0035】
ベルト外周面の表面粗さRzは、以下のように測定する。
まず、ベルトを3cm×3cmで切り出し、3個の試験片を作製した。
この試験片の外周面の任意の箇所について、表面粗さ測定機(サーフコム、東京精密製)を用いて、表面粗さを測定する。測定条件は、測定長さ2.5mm、カットオフ波長0.8mm、測定速度0.60mm/sの条件で行う。この測定は、試験片1つに対して3箇所行い、3箇所の平均値を、測定対象の試験片の表面粗さRzとする。
3個の試験片について上記の測定を行い、その平均値を、本実施形態に係るベルト(1)における「ベルト外周面の表面粗さRz」とする。
【0036】
(膜厚)
第1層の膜厚としては、製造適性の観点、及び放電を抑制する観点から、1μm以上20μm以下であることが好ましく、3μm以上15μm以下であることがより好ましい。 また、第1層と第2層との総膜厚に対する第1層の膜厚の割合は、3%以上25%以下であることが好ましく、5%以上25%であることがより好ましい。
なお、第1層の膜厚は、以下のようにして測定する。
即ち、ベルトの厚み方向の断面を光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡により観察して、第1層の厚さを10箇所測定し、この平均値を第1層の膜厚とする。なお、この方法は、後述する第2層の膜厚及び第1層の膜厚と第2層の膜厚との総膜厚の測定にも適用される。
【0037】
[第2層]
ベルト(1)は、第1層に内接する第2層を有する。そして、第2層はポリイミド系樹脂を含む。
なお、第2層は、ベルト内周面(即ち、ベルト外周面とは反対の面)を形成する層であることが好ましい。
【0038】
(ポリイミド系樹脂)
第2層は、カーボンブラック粒子の分散性、機械的強度、寸法安定性、電気的安定性、耐熱性等の観点から、ポリイミド系樹脂を含む。
ここで、ポリイミド系樹脂としては、ポリイミド樹脂であってもよいし、ポリアミドイミド樹脂であってもよいが、機械的強度に優れる観点から、ポリイミド樹脂が好ましい。
【0039】
-ポリイミド樹脂-
ポリイミド樹脂としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体であるポリアミック酸(ポリイミド樹脂の前駆体)のイミド化物が挙げられる。
【0040】
ポリイミド樹脂としては、例えば、下記一般式(I)で示される構成単位を有する樹脂が挙げられる。
【0041】
【化1】
【0042】
一般式(I)中、Rは4価の有機基を表し、Rは2価の有機基を表す。
で表される4価の有機基としては、芳香族基、脂肪族基、環状脂肪族基、芳香族基と脂肪族基とを組み合わせた基、又はそれらが置換された基が挙げられる。4価の有機基として具体的には、例えば、後述するテトラカルボン酸二無水物の残基が挙げられる。
で表される2価の有機基としては、芳香族基、脂肪族基、環状脂肪族基、芳香族基と脂肪族基とを組み合わせた基、又はそれらが置換された基が挙げられる。2価の有機基として具体的には、例えば、後述するジアミン化合物の残基が挙げられる。
【0043】
ポリイミド樹脂の原料として用いるテトラカルボン酸二無水物として具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0044】
ポリイミド樹脂の原料として用いるジアミン化合物の具体例としては、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,5-ジアミノナフタレン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、3,3’-ジメチル4,4’-ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、2,4-ビス(β-アミノ第三ブチル)トルエン、ビス(p-β-アミノ-第三ブチルフェニル)エーテル、ビス(p-β-メチル-δ-アミノフェニル)ベンゼン、ビス-p-(1,1-ジメチル-5-アミノ-ペンチル)ベンゼン、1-イソプロピル-2,4-m-フェニレンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、ジ(p-アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3-メチルヘプタメチレンジアミン、4,4-ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11-ジアミノドデカン、1,2-ビス-3-アミノプロボキシエタン、2,2-ジメチルプロピレンジアミン、3-メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘプタメチレンジアミン、3-メチルヘプタメチレンジアミン、5-メチルノナメチレンジアミン、2,17-ジアミノエイコサデカン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,10-ジアミノ-1,10-ジメチルデカン、12-ジアミノオクタデカン、2,2-ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、ピペラジン、HN(CHO(CHO(CH)NH、HN(CHS(CHNH、HN(CHN(CH(CHNH等が挙げられる。
【0045】
第2層は、ポリイミド樹脂を1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
ポリイミド樹脂の含有量は、放電を抑制する観点、及び、ベルトの機械的強度の観点から、第2層の全質量に対して、50質量%以上90質量%以下であることが好ましく、60質量%以上85質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上85質量%以下であることが更に好ましい。
【0046】
(カーボンブラック粒子)
第2層は、ベルト(1)において、導電点数を制御する観点、体積抵抗率を制御する観点等から、カーボンブラック粒子を含むことが好ましい。
第2層に用いられカーボンブラック粒子としては、第1層に用いられるカーボンブラック粒子と同様に、ケッチエンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、表面処理カーボンブラックが挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0047】
第2層に用いられるカーボンブラック粒子の平均一次粒子径は、分散性(特に、ポリイミド樹脂に対する分散性)の観点、第2層の機械的強度の観点、ベルトの導電点数及び体積抵抗率を制御しやすい観点から、20nm超え40nm以下が好ましく、20nm超え37nm以下がより好ましく、20nm以上35nm以下が特に好ましい。
【0048】
第2層は、カーボンブラック粒子を1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
カーボンブラック粒子の含有量としては、分散性(特に、ポリイミド樹脂に対する分散性)の観点、第2層の機械的強度の観点、ベルトの導電点数及び体積抵抗率を制御しやすい観点から、10質量%以上40質量%以下が好ましく、13質量%以上35質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上30質量%以下であることが更に好ましい。
【0049】
(その他の成分)
第2層は、上述した成分以外の、その他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、例えば、第1層に用いられるその他の成分と同様の成分が挙げられる。
第2層にその他の成分が含まれる場合、その他の成分の含有量は、第2層の全質量に対して、0質量%超10質量%以下が好ましく、0質量%超5質量%以下がより好ましく、0質量%超1質量%以下が更に好ましい。
【0050】
(膜厚)
第2層の厚みとしては、ベルトの機械的強度の観点から、50μm以上100μm以下であることが好ましく、60μm以上80μm以下であることがより好ましい。
【0051】
次に、ベルト(2)におけるカーボンブラック粒子及びポリイミド系樹脂を含み、ベルト外周面を形成する層について説明する。
【0052】
[カーボンブラック粒子及びポリイミド系樹脂を含み、ベルト外周面を形成する層]
ベルト(2)は、カーボンブラック粒子及びポリイミド系樹脂を含み、ベルト外周面を形成する層(以下、特定層ともいう)を有する。
ベルト(2)は、特定層のみから構成される単層型のベルトであってもよい。
【0053】
(ベルト外周面に露出したカーボンブラック粒子)
特定層にて形成されるベルト外周面にはカーボンブラック粒子が露出している。露出しているカーボンブラック粒子が以下のような条件を満たすことで、ベルト(2)は、放電を抑制しうる。
露出したカーボンブラック粒子の粒子径は、5nm以上150nm以下であり、5nm以上130nm以下が好ましく、5nm以上100nm以下がより好ましい。
また、露出したカーボンブラック粒子のベルト外周面に占める面積率は、2%以上35%以下であり、3%以上30%以下が好ましく、5%以上20%以下がより好ましい。
ベルト外周面に露出しているカーボンブラック粒子の粒子径、及び、露出したカーボンブラック粒子のベルト外周面に占める面積率を、それぞれ上記の範囲とするためには、特定層に含まれるカーボンブラック粒子の、粒子径、含有量、分散状態等を、適宜、調整すればよい。また、加熱成膜する過程の条件を調整することにより、ベルト外周面に露出しているカーボンブラック粒子の平均粒子径、及び、露出したカーボンブラック粒子のベルト外周面に占める面積率を、それぞれ上記の範囲としてもよい。
上記の粒子径及び面積率の測定方法は、ベルト(1)と同様の方法が用いられる。
【0054】
(カーボンブラック粒子)
特定層に含まれるカーボンブラック粒子としては、ベルト(1)の第1層に用いられるカーボンブラック粒子と同様に、ケッチエンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、表面処理カーボンブラックが挙げられ、好ましい態様も同様である。
特定層に含まれるカーボンブラック粒子の平均一次粒子径は、分散性の観点、及び、表面への露出の観点から、2nm以上20nm以下が好ましく、5nm以上18nm以下がより好ましく、8nm以上15nm以下が特に好ましい。
上記のカーボンブラック粒子の平均一次粒子径の測定方法は、ベルト(1)と同様の方法が用いられる。
【0055】
特定層は、カーボンブラック粒子を1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
カーボンブラック粒子の含有量としては、放電を抑制する観点から、特定層の全質量に対して、15質量%以上であることが好ましく、15質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、16質量%以上22質量%以下であることが更に好ましい。
【0056】
(ポリイミド系樹脂)
特定層に含まれるポリイミド系樹脂としては、ベルト(1)の第1層に好適なポリアミドイミド樹脂であってもよいし、ベルト(1)の第2層に好適なポリイミド樹脂であってもよい。特定層に含まれるポリアミドイミド樹脂及びポリイミド樹脂の好ましい態様は、ベルト(1)におけるそれぞれの樹脂の好ましい態様と同様である。
【0057】
特定層は、ポリイミド系樹脂を1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
ポリイミド系樹脂の含有量は、放電を抑制する観点、及び、ベルトの機械的強度の観点から、特定層の全質量に対して、50質量%以上85質量%以下であることが好ましく、70質量%以上85質量%以下であることがより好ましく、78質量%以上84質量%以下であることが更に好ましい。
【0058】
(その他の成分)
特定層は、カーボンブラック粒子及びポリイミド系樹脂以外の、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、ベルト(1)の第1層に用いられるその他の成分と同様の成分が挙げられる。
特定層にその他の成分が含まれる場合、その他の成分の含有量は、特定層の全質量に対して、0質量%超10質量%以下が好ましく、0質量%超5質量%以下がより好ましく、0質量%超1質量%以下が更に好ましい。
【0059】
(膜厚)
特定層の厚みとしては、ベルトの機械的強度の観点から、50μm以上120μm以下であることが好ましく、50μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0060】
(表面性状)
ベルト(2)において、ベルト外周面は、表面粗さRzが0.2μm以下であることが好ましく、0.15μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることが更に好ましい。
上記のベルト外周面の表面粗さRzの測定方法は、ベルト(1)と同様の方法が用いられる。
【0061】
続いて、以下、ベルト(1)及びベルト(2)の物性(具体的には、導電点数、体積抵抗率、表面抵抗率、及び耐折れ回数)について説明する。
【0062】
[導電点数]
ベルト(1)及びベルト(2)は、1μm四方当たりの導電点数が80個以上である。
ベルト(1)及びベルト(2)における1μm四方当たりの導電点数は、90個以上が好ましく、100個以上がより好ましい。
導電点数の上限は、例えば、400個である。
【0063】
ここで、本実施形態における「1μm四方当たりの導電点数」とは、以下の方法で求められたものを指す。
ベルトから小片(2cm×2cm)を切り出し、小片表面に導電性の両面テープを貼りつけた後、静電除去した試験片を作製する。
試験片の表面に-20Vの測定電圧をかけながら、大気中で1μm×1μmの範囲を512×512の分解能でコンダクティングAFM測定(Digital Instruments製、NanoscopeIIIa+D3100を使用)を行う。この際、プローブと導電性の両面テープに3.0pA以上の電流が流れる点を「導電点」と判定した。
この導電点の画像解析を行い、1μm四方当たりの導電点数(隣接する導電点はまとめて1つと数える)が算出される。
【0064】
[体積抵抗率]
ベルト(1)及びベルト(2)は、体積抵抗率が10[logΩ・cm]以上である。ベルト(1)及びベルト(2)の体積抵抗率の上限は、例えば、13.5[logΩ・cm]である。
【0065】
ここで、ベルトの体積抵抗率は、以下の方法により行う。
抵抗測定機として、微小電流計(Advantest社製R8430A)を用い、プローブとしてURプローブ(三菱ケミカル(株)製)を使用し、体積抵抗率[logΩ・cm]について、ベルトを周方向に等間隔で6点、幅方向の中央部及び両端部について3点の計18点、電圧100V、印加時間5秒間、加圧1kgfで測定し、平均値を算出する。また、温度22℃、湿度55%RHの環境下で測定を行うものとする。
【0066】
[表面抵抗率]
ベルト(1)及びベルト(2)において、放電をより抑制する観点から、ベルト外周面の表面抵抗率をρs1とし、ベルト外周面とは反対の面(即ち、ベルト内周面)の表面抵抗率をρs2としたとき、下記式(1)及び下記式(2)を満たすことが好ましい。
式(1) ρs1≧10.9[logΩ/□]
式(2) 0<|ρs1-ρs2|≦0.3
【0067】
即ち、式(1)では、ベルト(1)におけるベルト外周面の表面抵抗率ρs1が、10.9[logΩ/□]以上であることが好ましいことを示している。ベルト外周面の表面抵抗率ρs1は、11.0[logΩ/□]以上であることが好ましく、11.3[logΩ/□]以上であることがより好ましい。また、ベルト外周面の表面抵抗率ρs1の上限は、例えば、14.0[logΩ/□]である。
また、式(2)では、ベルト(1)及びベルト(2)におけるベルト外周面の表面抵抗率ρs1とベルト内周面の表面抵抗率ρs2とは同じ値ではなく、且つ、ベルト外周面の表面抵抗率ρs1とベルト内周面の表面抵抗率ρs2との差の絶対値が0.3以下であることが好ましいことを示している。
特に、ベルト(1)及びベルト(2)を中間転写ベルトに適用した際、上記の式(1)及び上記(2)を満たすことで、転写効率を高めることができる。
【0068】
なお、ベルト内周面の表面抵抗率ρs2は、上記式(2)を満たす範囲であればよいが、例えば、11.0[logΩ/□]以上14.0[logΩ/□]以下が好ましく、11.0[logΩ/□]以上 12.5[logΩ/□]以下がより好ましい。
【0069】
ここで、ベルトの表面抵抗率は、以下のようにして行う。
抵抗測定機として、微小電流計(Advantest社製R8430A)を用い、プローブとしてURプローブ(三菱ケミカル(株)製)を使用し、表面抵抗率[logΩ/□]について、ベルトを周方向に等間隔で6点、幅方向の中央部及び両端部について3点の計18点、電圧100V、印加時間3秒間、加圧1kgfで測定し、平均値を算出する。また、温度22℃、湿度55%RHの環境下で測定を行うものとする。
なお、上記のURプローブを押し当てる側がベルト外周面である場合、ベルト外周面の表面抵抗率ρs1が測定され、同様に、URプローブを押し当てる側がベルト内周面である場合、ベルト内周面の表面抵抗率ρs2が測定される。
【0070】
[耐折れ回数]
ベルト(1)及びベルト(2)は、用途を考慮する上で、耐屈曲性を有することが好ましい。そのため、ベルト(1)及びベルト(2)は、曲率半径Rが0.38mmのクランプを用いたMIT試験による耐折れ回数が3000回以上であることが好ましい。
ベルト(1)及びベルト(2)の耐折れ回数は、4000回以上がより好ましく、5000回以上が更に好ましい。
【0071】
ベルトにおける耐折れ回数は、以下のようにして測定する。
MIT試験は、JIS P 8115:2001(MIT試験機法)に準拠する。
具体的には、ベルトから、周方向に幅15mm、長さ200mmの短冊状試験片を切り出す。この短冊状試験片の両端を固定し1kgfの引張張力をかけて、曲率半径R=0.38を有するクランプを支点として左右90°方向に繰返し屈曲(折り曲げ)させる。このときに短冊状試験片が破断するまでの回数を耐折れ回数とする。
なお、温度22℃、湿度55%RHの環境下でMIT試験を行うものとする。
【0072】
[用途]
本実施形態に係るベルトの用途として、具体的には、ベルトが有する導電特性が求められる用途であれば特に制限はない。特に、本実施形態に係るベルトは、他の部材との間に電圧が印加されて電界が形成されたときの放電が抑制されることから、電圧が印加される用途に適用されることが好ましい。
本実施形態に係るベルトは、電子写真方式による画像形成装置における、転写装置用のベルト部材(例えば、中間転写ベルト、記録媒体搬送ベルト、一次転写ベルト、二次転写ベルト等)、帯電装置用のベルト部材(例えば、帯電ベルト等)等に適用される。中でも、中間転写ベルトへと適用が好ましい。
なお、これらのベルトを更に金属製ロール、樹脂製ロール等のロール上に被覆することで、ロール部材(転写装置用のロール部材、帯電装置用のロール部材)として用いてもよい。
【0073】
なお、上記以外にも、本実施形態に係るベルトは円筒形状の太陽電池用基材等にも利用し得る。
加えて、例えば、駆動ベルト、ラミネートベルト、電気絶縁材、配管被覆材、電磁波絶縁材、熱源絶縁体、電磁波吸収フィルム等のベルト状部材等にも利用し得る。
【0074】
[ベルト(1)の製造方法]
ベルト(1)の製造方法は、前述した第1層と第2層とを隣接して形成しうる方法であれば特に限定されない。
ベルト(1)の製造方法の1例としては、以下の方法が挙げられる。
まず、カーボンブラック粒子が分散し、ポリアミック酸(ポリイミド樹脂の前駆体)が溶解した塗布液Aを調製する。また、カーボンブラック粒子が分散し、ポリアミドイミド樹脂が溶解した塗布液Bを調製する。
なお、塗布液A及び塗布液Bを調製する際、カーボンブラックの凝集体を粉砕する観点から、また、カーボンブラックの分散性を高める観点から、プラネタリーミキサー等の分散機にて粗分散後に、ジェットミル等の粉砕機を用いて、分散処理を行うことが好ましい。
そして、塗布液Aを円筒状又は円柱状の被塗布物に塗布し、塗膜の乾燥をして、基材層を形成する。続いて、基材層上に、塗布液Bを塗布し、塗膜を乾燥させて表面層を形成する。
【0075】
なお、塗布液Aに含まれるポリアミック酸は、塗布液Aによる塗膜の乾燥後、又は、第1層形成後に、イミド化を行う。つまり、塗布液Aによる塗膜の乾燥後に、イミド化のための加熱が行われてもよいし、第1層形成後に、イミド化のための加熱が行われてもよい。
イミド化のための加熱は、例えば、150℃以上450℃以下(好ましくは200℃以上430℃以下)で、20分間以上90分間以下(好ましくは40分間以上70分以下)加熱することで、イミド化反応が起こり、ポリイミドが得られる。
【0076】
ここで、塗布液A及び塗布液Bに用いられる溶剤は、特に制限はなく、溶解する樹脂等に応じて適宜決定すればよい。例えば、塗布液A及び塗布液Bに用いられる溶剤は、後述する極性溶剤が好ましく用いられる。
【0077】
なお、上記の方法では、第2層を塗布法にて形成していたが、以下の方法で第2層を形成してもよい。
即ち、ポリイミド樹脂及びカーボンブラック粒子を含むペレットを作製し、このペレットを溶融押出して、第2層を形成する方法である。
【0078】
極性溶剤として、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジエチルアセトアミド(DEAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチレンホスホルアミド(HMPA)、N-メチルカプロラクタム、N-アセチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(N,N-ジメチルイミダゾリジノン、DMI)等が挙げられ、これらは1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0079】
[ベルト(2)の製造方法]
ベルト(2)の製造方法は、前述した特定層を形成しうる方法であれば特に限定されない。
ベルト(2)の製造方法の1例としては、以下の方法が挙げられる。
カーボンブラック粒子が分散し、ポリアミック酸(ポリイミド樹脂の前駆体)又はポリアミドイミド樹脂が溶解した塗布液Cを調製する。
なお、塗布液Cを調製する際、カーボンブラックの凝集体を粉砕する観点から、また、カーボンブラックの分散性を高める観点から、プラネタリーミキサー等の分散機にて粗分散後に、ジェットミル等の粉砕機を用いて、分散処理を行うことが好ましい。
そして、塗布液Cを円筒状又は円柱状の被塗布物に塗布し、塗膜の乾燥をして、特定層を形成する。
また、特定層は、ポリイミド系樹脂及びカーボンブラック粒子を含むペレットを作製し、このペレットを溶融押出して形成してもよい。
【0080】
なお、塗布液Cにポリアミック酸を含む場合、塗布液Cによる塗膜の乾燥後にイミド化を行う。つまり、塗布液Cによる塗膜の乾燥後に、イミド化のための加熱が行われる。
イミド化のための加熱は、例えば、150℃以上450℃以下(好ましくは200℃以上430℃以下)で、20分間以上90分間以下(好ましくは40分間以上70分以下)加熱することで、イミド化反応が起こり、ポリイミドが得られる。
【0081】
ここで、塗布液Cに用いられる溶剤は、特に制限はなく、溶解する樹脂等に応じて適宜決定すればよい。例えば、塗布液Cに用いられる溶剤は、既述の極性溶剤が好ましく用いられる。
【0082】
<画像形成装置>
本実施形態に係る画像形成装置は、前述した本実施形態に係るベルトを備えるものである。
具体的には、本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体の表面を帯電する帯電装置と、帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成装置と、トナーを含む現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写装置と、を備え、本実施形態に係るベルトを備えるものである。
【0083】
以下、本実施形態に係る画像形成装置について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の構成を示した概略構成図である。なお、図1は、中間転写ベルトとして本実施形態に係るベルトが適用されている例を示している。
本実施形態に係るベルトを中間転写ベルトとして用いることで、一次転写時及び二次転写時に形成される転写電界においても放電が抑制され、転写効率の低下を抑制しうる。
【0084】
本実施形態に係る画像形成装置100は、図1に示すように、例えば、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kと、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10と、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー像を記録媒体である用紙Kに一括転写(二次転写)させる二次転写部20と、二次転写された画像を用紙K上に定着させる定着装置60と、を備えている。また、画像形成装置100は、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。
【0085】
画像形成装置100の各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、表面に形成されるトナー像を保持する像保持体の一例として、矢印A方向に回転する感光体11を備えている。
【0086】
感光体11の周囲には、帯電手段の一例として、感光体11を帯電させる帯電器12が設けられ、潜像形成手段の一例として、感光体11上に静電潜像を書込むレーザ露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)が設けられている。
【0087】
また、感光体11の周囲には、現像手段の一例として、各色成分トナーが収容されて感光体11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14が設けられ、感光体11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16が設けられている。
【0088】
更に、感光体11の周囲には、感光体11上の残留トナーが除去される感光体クリーナ17が設けられ、帯電器12、レーザ露光器13、現像器14、一次転写ロール16及び感光体クリーナ17の電子写真用デバイスが感光体11の回転方向に沿って順次配設されている。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に、略直線状に配置されている。
【0089】
中間転写体である中間転写ベルト15は、体積抵抗率が例えば1×10Ωcm以上1×1014Ωcm以下となるように形成されており、その厚みは、例えば0.1mm程度に構成されている。
【0090】
中間転写ベルト15は、各種ロールによって図1に示すB方向に目的に合わせた速度で循環駆動(回転)されている。この各種ロールとして、定速性に優れたモータ(不図示)により駆動されて中間転写ベルト15を回転させる駆動ロール31、各感光体11の配列方向に沿って略直線状に延びる中間転写ベルト15を支持する支持ロール32、中間転写ベルト15に対して張力を与えると共に中間転写ベルト15の蛇行を防止する補正ロールとして機能する張力付与ロール33、二次転写部20に設けられる背面ロール25、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニング背面ロール34を有している。
【0091】
一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体11に対向して配置される一次転写ロール16で構成されている。そして、一次転写ロール16は中間転写ベルト15を挟んで感光体11に圧接配置され、更に一次転写ロール16にはトナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、一次転写部10では転写電界が形成され、各々の感光体11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上において重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
【0092】
二次転写部20は、背面ロール25と、中間転写ベルト15のトナー像保持面側に配置される二次転写ロール22と、を備えて構成されている。
【0093】
背面ロール25は、表面抵抗率が1×10Ω/□以上1×1010Ω/□以下となるように形成され、硬度は、例えば、70°(アスカーC:高分子計器社製、以下同様。)に設定される。この背面ロール25は、中間転写ベルト15の裏面側に配置されて二次転写ロール22の対向電極を構成し、二次転写バイアスが安定的に印加される金属製の給電ロール26が接触配置されている。
【0094】
一方、二次転写ロール22は、体積抵抗率が107.5Ωcm以上108.5Ωcm以下の円筒ロールである。そして、二次転写ロール22は中間転写ベルト15を挟んで背面ロール25に圧接配置され、更に二次転写ロール22は接地されて背面ロール25との間に二次転写バイアスが印加される。これにより、二次転写部20には転写電界が形成され、この二次転写部20に搬送される用紙K上に、中間転写ベルト15上のトナー像が二次転写する。
【0095】
また、中間転写ベルト15の二次転写部20の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト15の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーナ35が接離自在に設けられている。
【0096】
なお、中間転写ベルト15、一次転写部10(一次転写ロール16)、及び二次転写部20(二次転写ロール22)が、転写手段の一例に該当する。
【0097】
一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配設されている。また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配設されている。この基準センサ42は、中間転写ベルト15の裏側に設けられたマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部40からの指示により、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは画像形成を開始するように構成されている。
【0098】
更に、本実施形態に係る画像形成装置では、用紙Kを搬送する搬送手段として、用紙Kを収容する用紙収容部50、この用紙収容部50に集積された用紙Kを予め定められたタイミングで取り出して搬送する給紙ロール51、給紙ロール51により繰り出された用紙Kを搬送する搬送ロール52、搬送ロール52により搬送された用紙Kを二次転写部20へと送り込む搬送ガイド53、二次転写ロール22により二次転写された後に搬送される用紙Kを定着装置60へと搬送する搬送ベルト55、用紙Kを定着装置60に導く定着入口ガイド56を備えている。
【0099】
次に、本実施形態に係る画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。
【0100】
本実施形態に係る画像形成装置では、図示しない画像読取装置や図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等から出力される画像データは、図示しない画像処理装置により画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって作像作業が実行される。
【0101】
画像処理装置では、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器13に出力される。
【0102】
レーザ露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体11に照射している。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各感光体11では、帯電器12によって表面が帯電された後、このレーザ露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
【0103】
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの感光体11上に形成されたトナー像は、各感光体11と中間転写ベルト15とが接触する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。より具体的には、一次転写部10において、一次転写ロール16により中間転写ベルト15の基材に対しトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト15の表面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
【0104】
トナー像が中間転写ベルト15の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト15は移動してトナー像が二次転写部20に搬送される。トナー像が二次転写部20に搬送されると、搬送手段では、トナー像が二次転写部20に搬送されるタイミングに合わせて給紙ロール51が回転し、用紙収容部50から目的とするサイズの用紙Kが供給される。給紙ロール51により供給された用紙Kは、搬送ロール52により搬送され、搬送ガイド53を経て二次転写部20に到達する。この二次転写部20に到達する前に、用紙Kは一旦停止され、トナー像が保持された中間転写ベルト15の移動タイミングに合わせて位置合わせロール(不図示)が回転することで、用紙Kの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
【0105】
二次転写部20では、中間転写ベルト15を介して、二次転写ロール22が背面ロール25に加圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Kは、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。その際に、給電ロール26からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール22と背面ロール25との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト15上に保持された未定着トナー像は、二次転写ロール22と背面ロール25とによって加圧される二次転写部20において、用紙K上に一括して静電転写される。
【0106】
その後、トナー像が静電転写された用紙Kは、二次転写ロール22によって中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール22の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。搬送ベルト55では、定着装置60における最適な搬送速度に合わせて、用紙Kを定着装置60まで搬送する。定着装置60に搬送された用紙K上の未定着トナー像は、定着装置60によって熱及び圧力で定着処理を受けることで用紙K上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Kは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙収容部(不図示)に搬送される。
【0107】
一方、用紙Kへの転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回転に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニング背面ロール34及び中間転写ベルトクリーナ35によって中間転写ベルト15上から除去される。
【0108】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施の形態に限定的に解釈されるものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【実施例
【0109】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0110】
<実施例1>
-塗布液Aの調製-
3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’-ジアミノジフェニルエーテルからなるポリアミック酸のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液(固形分濃度:22質量%)に、平均一次粒子径25nmのカーボンブラック粒子(カーボンブラック(SPECIAL BLACK 4、オリオンエンジニアドカーボンズ社製))を、樹脂固形分100質量部に対して27質量部(即ち、27phr:per hundred resin)で添加し、プラネタリーミキサー((株)愛工舎製作所)での混合・粗分散及びジェットミルにより分散処理を経て、塗布液Aを調製した。
【0111】
-塗布液Bの調製-
ポリアミドイミド樹脂(HPC-9000(日立化成(株)製)のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液(固形分濃度:21質量%)に、樹脂固形分100質量部に対し、平均一次粒子径13nmのカーボンブラック粒子(COLOR BLACK FW1、オリオンエンジニアドカーボンズ社製)を19質量部になるよう添加し、プラネタリーミキサー((株)愛工舎製作所)での混合・粗分散及び撹拌することにより、塗布液Bを調製した。
【0112】
-第2層の形成-
外径278mm、長さ600mmのステンレス製の円筒体を用意した。
円筒体を回転させながら、円筒体の外面にらせん塗布にて塗布液Aを塗布した。その後、円筒体を水平としたまま、140℃で30分間加熱乾燥させて、第2層を形成した。
【0113】
-第1層の形成-
円筒体を回転させながら、上記のようにして形成された第2層上にらせん塗布にて塗布液Bを塗布した。その後、円筒体を水平としたまま、140℃で15分間加熱乾燥させて、第1層を形成した。
【0114】
-イミド化-
続いて、第1層及び第2層が形成された円筒体を、320℃で1時間加熱し、ポリアミック酸のイミド化を行った。
その後、第1層及び第2層を円筒体から外し、長さ350mmになるように切断して、実施例1のベルトを得た。
【0115】
<実施例2>
第1層及び第2層の膜厚を下記表1に記載のように変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2のベルトを得た。
【0116】
<実施例3~5>
第1層中のカーボンブラック粒子の添加量及び含有量、第1層の膜厚、並びに第2層の膜厚を、適宜、下記表1に記載のように変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例3~5のベルトを得た。
【0117】
<実施例6>
第1層中に含まれるカーボンブラック粒子を平均一次粒子径17nmのカーボンブラック粒子(SPECIAL BLACK 6、オリオンエンジニアドカーボンズ社製)に変更し、更に、第1層中のカーボンブラック粒子の添加量及び含有量を下記表1に記載のように変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例6のベルトを得た。
【0118】
<実施例7>
第1層の形成に、下記の塗布液B2を用い、膜厚10μmの第1層を形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例7のベルトを得た。
【0119】
-塗布液B2の調製-
3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’-ジアミノジフェニルエーテルからなるポリアミック酸のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液(固形分濃度:22質量%)に、平均一次粒子径13nmのカーボンブラック粒子(COLOR BLACK FW1、オリオンエンジニアドカーボンズ社製)を、樹脂固形分100質量部に対して19質量部(即ち、19phr)で添加し、プラネタリーミキサー((株)愛工舎製作所)での混合・粗分散及びジェットミルにより分散処理を経て、塗布液B2を調製した。
【0120】
<実施例8>
第1層及び第2層の膜厚を下記表1に記載のように変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例8のベルトを得た。
【0121】
<比較例1>
塗布液Bにおけるカーボンブラック粒子の添加量を19質量部から12質量部に変えた塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例1のベルトを得た。
【0122】
<比較例2>
第1層中に含まれるカーボンブラック粒子を平均一次粒子径25nmのカーボンブラック粒子(SPECIAL Black 4、オリオンエンジニアドカーボンズ社製)に変え、更に、第1層中のカーボンブラック粒子の添加量及び含有量を下記表1に記載のように変えた以外は、実施例1と同様にして、比較例2のベルトを得た。
【0123】
<比較例3>
塗布液Bにおけるカーボンブラック粒子の添加量を19質量部から31質量部に変えた塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして、比較例3のベルトを得た。
【0124】
<比較例4>
第2層の厚みを80μmに変え、第1層を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして、比較例4のベルトを得た。
つまり、比較例4のベルトは、80μmの第2層のみからなる単層構造のベルトである。
【0125】
<比較例5>
実施例1と同様の方法で第2層を形成した後に、第2層上に下記の塗布液Xをらせん塗布法により塗布し、140℃、20分間加熱して焼成し、厚み5μmの第1層を形成して、比較例5のベルトを得た。
【0126】
-塗布液Xの調製-
硬化性樹脂「ゼッフル(登録商標)GK510(ダイキン工業社製)」100部と、カーボンブラック粒子「SPECIAL BLACK 4、オリオンエンジニアドカーボンズ社製」30部と、を酢酸ブチル(溶剤)に投入し、その液をジェットミル分散機「Geanus PY(ジーナス社製)」により、分散処理(圧力=200N/mm、衝突回数=5パス)して、樹脂液を得た。更に、この樹脂液を、ステンレス製20μmメッシュに通過させて、異物、カーボンブラック凝集物等を取り除き、更に、真空脱泡して最終的な樹脂液とした。
次に、樹脂液の硬化性樹脂100部に対して、硬化剤としてタケネートD-140N(三井化学社製)20部、及びスミジュールN3300(住化バイエルウレタン社製)20部を樹脂液に混合し、塗布液Xを調製した。
【0127】
<実施例9>
-塗布液Cの調製-
3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と4,4’-ジアミノジフェニルエーテルからなるポリアミック酸のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液(固形分濃度:22質量%)に、樹脂固形分100質量部に対し、平均一次粒子径13nmのカーボンブラック粒子(COLOR BLACK FW200、オリオンエンジニアドカーボンズ社製)を23質量部になるよう添加し、プラネタリーミキサー((株)愛工舎製作所)での混合・粗分散及び撹拌することにより、塗布液Cを調製した。
【0128】
-特定層の形成-
外径278mm、長さ600mmのステンレス製の円筒体を用意した。
円筒体を回転させながら、円筒体の外面にらせん塗布にて塗布液Cを塗布した。その後、円筒体を水平としたまま、170℃で15分間加熱乾燥させて、特定層を形成した。
【0129】
-イミド化-
続いて、特定層が形成された円筒体を、320℃で1時間加熱し、ポリアミック酸のイミド化を行った。
その後、特定層を円筒体から外し、長さ350mmになるように切断して、実施例9のベルトを得た。
【0130】
<実施例10~12>
特定層中のカーボンブラック粒子の添加量及び含有量、並びに特定層の膜厚を、適宜、下記表3に記載のように変えた以外は、実施例9と同様にして、実施例10~12のベルトを得た。
【0131】
<実施例13~14>
特定層中に含まれるカーボンブラック粒子を平均一次粒子径17nmのカーボンブラック粒子(SPECIAL BLACK 6、オリオンエンジニアドカーボンズ社製)に変更し、更に、特定層中のカーボンブラック粒子の添加量及び含有量、並びに特定層の膜厚を下記表3に記載のように変えた以外は、実施例9と同様にして、実施例13~14のベルトを得た。
【0132】
<実施例15~16>
特定層の形成に、下記の塗布液C2を用い、特定層の膜厚を表3に記載のように変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例15~16のベルトを得た。
【0133】
特定層中に含まれるカーボンブラック粒子を平均一次粒子径11nmのカーボンブラック粒子(COLOR BLACK FW285、オリオンエンジニアドカーボンズ社製)に変更し、更に、特定層中のカーボンブラック粒子の添加量及び含有量、並びに特定層の膜厚を下記表3に記載のように変えた以外は、実施例9と同様にして、実施例15~16のベルトを得た。
【0134】
-塗布液C2の調製-
ポリアミドイミド樹脂(HPC-9000(日立化成(株)製)のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液(固形分濃度:21質量%)に、樹脂固形分100質量部に対し、平均一次粒子径11nmのカーボンブラック粒子(COLOR BLACK FW285、オリオンエンジニアドカーボンズ社製)を下記表3に記載の量になるよう添加し、プラネタリーミキサー((株)愛工舎製作所)での混合・粗分散及び撹拌することにより、塗布液C2を調製した。
【0135】
<比較例6>
特定層の形成の際の乾燥条件を120℃で45分間の加熱乾燥に変えた以外は、実施例9と同様にして、比較例6のベルトを得た。
【0136】
<比較例7>
特定層中に含まれるカーボンブラック粒子を平均一次粒子径25nmのカーボンブラック粒子(SPECIAL Black 4、オリオンエンジニアドカーボンズ社製)に変え以外は、実施例9と同様にして、比較例7のベルトを得た。
【0137】
[測定及び評価]
各例のベルトについて、下記の測定及び評価を実施した。
【0138】
各例のベルトについて、ベルト外周面に露出したカーボンブラック粒子の平均粒子径、ベルト外周面に露出したカーボンブラック粒子のベルト外周面に占める面積率、導電点数、及び体積抵抗率を、既述の方法で測定した。
また、各例のベルトについて、各層中のカーボンブラック粒子の平均一次粒子径、ベルト外周面の表面粗さRz、各層の層厚、及び表面抵抗率も、既述の方法で測定した。
測定結果を表1及び表3にまとめて示す。
また、MIT試験による耐折れ回数についても、既述の方法で測定した。結果を表2及び表4に示す。
【0139】
-放電の評価-
各例のベルトを用い、以下の方法で放電の評価を行った。
各例のベルトを50mm×50mmに切り抜き、厚さ5mmの導電性ゴムシートの上に設置し、導電性ゴムシートの上部に100μmの空隙を空け、透明材料で形成された導電性基板をベルトと平行に設置した。導電性ゴムシートに所望の電圧を印加し、導電性基板上に発生する放電光を暗室内で高速度高感度カメラにて観測することにより放電の評価を実施した。
・評価基準
G1(○):放電光の発生が殆どない
G2(△):微弱な放電光が発生
G3(×):放電光が常に発生
結果を表2及び表4に示す。
【0140】
-転写効率の評価-
各例のベルトを中間転写ベルトとして用い、以下のようにして転写効率を評価した。
各例のベルトを、画像形成装置(Apeos Port VI C7773、富士ゼロックス社製)に、中間転写ベルトとして装着した。
この画像形成装置を用い、Cyanベタ(濃度100%)の3cm×3cmパッチを並べた画像を出力し、2次転写工程中にハードストップを行い、2次転写前のトナー重量aと2次転写後の中間転写ベルト上の残トナー重量bとを計測し、下式により転写効率を求めた。
転写効率[%]=(a-b)/a×100
結果を表2及び表4に示す。
なお、この転写効率が高いほど、転写電界内での局部的な放電が抑制されていると考えられる。
【0141】
-エンボス紙に対する転写性の評価-
各例のベルトを中間転写ベルトとして用い、以下のようにして転写効率を評価した。
得られた中間転写ベルトを、画像形成装置(Apeos Port VI C7773、富士ゼロックス社製)搭載し、画質評価を実施した。
画質評価にはエンボス紙(レザック66、250gsm)を用い、黒色ハーフトーン(画像濃度60%)のベタ画像で評価した。
・評価基準
G1(◎):用紙の凹部での白抜け無し
G2(○):用紙の凹部での白抜けほとんど無し
G3(△):用紙の凹部でやや白抜けしている
G4(×):用紙の凹部で殆ど白抜けしている
結果を表2及び表4に示す。
【0142】
-印刷耐性の評価-
転写効率及び転写性の評価と同様に各例のベルトを、画像形成装置(Apeos Port VI C7773、富士ゼロックス社製)に、中間転写ベルトとして装着し、ベルトの機械耐性を確認した。
実施例1~16のベルトは、10万枚の印刷を行っても、ベルト破断が発生しなかった。
【0143】
【表1】
【0144】
表1及び後述の表3に記載の略称の詳細を以下に示す。
・CB:カーボンブラック粒子
・PAI:ポリアミドイミド樹脂
・PI:ポリイミド樹脂
・FP:フッ素系樹脂(四フッ化エチレン/ビニルモノマー共重合体)
【0145】
【表2】
【0146】
前記表2に示す結果から、本実施例1~8のベルトは、比較例1~5のベルトに比べ、転写効率が高く、電界内での放電が抑制されていることがわかる。
また、本実施例1~8のベルトは、エンボス紙に対する転写性も優れることが分かる。
【0147】
【表3】
【0148】
【表4】
【0149】
前記表4に示す結果から、本実施例9~16のベルトは、比較例6~7のベルトに比べ、転写効率が高く、電界内での放電が抑制されていることがわかる。
また、本実施例9~16のベルトは、エンボス紙に対する転写性も優れることが分かる。
【符号の説明】
【0150】
1Y,1M,1C,1K 画像形成ユニット
10 一次転写部
11 感光体
12 帯電器
13 レーザ露光器
14 現像器
15 中間転写ベルト
16 一次転写ロール
17 感光体クリーナ
20 二次転写部
22 二次転写ロール
25 背面ロール
26 給電ロール
31 駆動ロール
32 支持ロール
33 張力付与ロール
34 クリーニング背面ロール
35 中間転写ベルトクリーナ
40 制御部
42 基準センサ
43 画像濃度センサ
50 用紙収容部
51 給紙ロール
52 搬送ロール
53 搬送ガイド
55 搬送ベルト
56 定着入口ガイド
60 定着装置
100 画像形成装置
図1