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  • 特許-樹脂組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/66 20060101AFI20240110BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240110BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20240110BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240110BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20240110BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240110BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240110BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C08G59/66
C08L63/00 C
C08K3/08
C08K3/22
C09J163/00
C09J11/04
H01L23/30 R
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020052778
(22)【出願日】2020-03-24
(65)【公開番号】P2021152108
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 純奈
(72)【発明者】
【氏名】荻野 啓志
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-009354(JP,A)
【文献】特開2018-039958(JP,A)
【文献】特開2019-157018(JP,A)
【文献】特開2020-023601(JP,A)
【文献】特開2019-123824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C09J 1/00-5/10、9/00-201/10
H01L 23/30
H01F 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)チオール化合物、及び(C)磁性粉体を含む樹脂組成物であって、
樹脂組成物の硬化物の25℃における弾性率が500MPa以下であり、且つ
樹脂組成物の硬化物の25℃における破断点伸度が30%以上であ
(A)成分が、(A-1)柔軟性骨格含有エポキシ樹脂を含む、樹脂組成物。
ただし、柔軟性骨格含有エポキシ樹脂とは、主鎖に6個以上の炭素原子及び酸素原子から選ばれる骨格原子からなる飽和鎖状骨格を含むエポキシ樹脂を意味する。
【請求項2】
(A)エポキシ樹脂、(B)チオール化合物、及び(C)磁性粉体を含む樹脂組成物であって、
樹脂組成物の硬化物の25℃における弾性率が500MPa以下であり、且つ
樹脂組成物の硬化物の25℃における破断点伸度が30%以上であり、
被着体としてネオジウム磁石を接着するための接着剤、又は封止材として使用するための樹脂組成物。
【請求項3】
接着剤、又は封止材として使用するための請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
被着体としてネオジウム磁石を接着するための接着剤、又は封止材として使用するための請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(A)成分のエポキシ当量が200g/eq.~1000g/eq.である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(B)成分が2官能以上のチオール化合物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ基の総数に対する(B)チオール化合物のメルカプト基の総数の比(メルカプト基/エポキシ基)が、0.3~1.0である、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、40質量%~75質量%である、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
潜在性硬化促進剤をさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
示差走査熱量測定に基づく反応ピーク温度が、100℃以下である請求項1~のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項12】
請求項11に記載の硬化物を含む、ネオジウム磁石含有モーター。
【請求項13】
請求項11に記載の硬化物を含む、電子部品。
【請求項14】
ネオジウム磁石含有モーター、及び請求項11に記載の硬化物を含む、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性粉体を含む樹脂組成物に関する。さらに、本発明は、当該樹脂組成物を用いて得られる硬化物、電子部品、ネオジウム磁石含有モーター等に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石とヨークなどの磁気回路を備えている電子部品において、通常の接着剤の使用は、接着剤を使用した電子部品における磁束の漏えいにより、磁気損失に起因するモーターなどの電子部品の性能低下を生じさせる等の課題があった。
【0003】
このような課題に対し、接着剤に磁性紛体を添加して接着剤に磁性を持たせることにより、磁気回路上の接着部において磁気漏洩を抑制し、モーターなどの電子部品の性能を向上させる技術が知られている(特許文献1)。
【0004】
一般的に、カメラモジュールなどに使用する場合、耐衝撃性を持たせるために低弾性の接着剤が好まれるが、接着剤に磁性紛体を充填すると接着剤の硬化物が硬くなり、弾性率が高くなる傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平1-289883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、磁性粉体を含む樹脂組成物であって、耐衝撃性に優れた硬化物を得ることができる樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を達成すべく、本発明者らは鋭意検討した結果、チオール化合物を含む樹脂組成物を用いることにより、本発明の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)エポキシ樹脂、(B)チオール化合物、及び(C)磁性粉体を含む樹脂組成物であって、
樹脂組成物の硬化物の25℃における弾性率が500MPa以下であり、且つ
樹脂組成物の硬化物の25℃における破断点伸度が30%以上である、樹脂組成物。
[2] (A)成分のエポキシ当量が200g/eq.~1000g/eq.である、上記[1]に記載の樹脂組成物。
[3] (B)成分が2官能以上のチオール化合物である、上記[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] (A)エポキシ樹脂のエポキシ基の総数に対する(B)チオール化合物のメルカプト基の総数の比(メルカプト基/エポキシ基)が、0.3~1.0である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5] (C)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、40質量%~75質量%である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] 潜在性硬化促進剤をさらに含む、上記[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] (A)成分が、(A-1)柔軟性骨格含有エポキシ樹脂を含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] 示差走査熱量測定に基づく反応ピーク温度が、100℃以下である上記[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9] 接着剤として使用するための上記[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10] 被着体としてネオジウム磁石を接着するための接着剤として使用するための上記[9]に記載の樹脂組成物。
[11] 封止材として使用するための上記[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[12] 上記[1]~[11]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物。
[13] 上記[12]に記載の硬化物を含む、ネオジウム磁石含有モーター。
[14] 上記[12]に記載の硬化物を含む、電子部品。
[15] ネオジウム磁石含有モーター、及び上記[12]に記載の硬化物を含む、電子部品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、磁性粉体を含む樹脂組成物であって、耐衝撃性に優れた硬化物を得ることができる樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例1で得られた樹脂組成物の硬化前と硬化後の示差走査熱量曲線(DSC曲線)を示すDSCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
【0012】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)チオール化合物、及び(C)磁性粉体を含む。本発明の樹脂組成物の硬化物は、25℃における弾性率が500MPa以下である。本発明の樹脂組成物の硬化物は、25℃における破断点伸度が30%以上である。このような樹脂組成物の硬化物は、耐衝撃性に優れる。
【0013】
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)チオール化合物、及び(C)磁性粉体の他に、さらに(D)安定剤、(E)分散剤、(F)硬化促進剤、(G)有機充填材、(H)その他の添加剤、及び(I)有機溶剤を含んでいてもよい。以下、樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0014】
<(A)エポキシ樹脂>
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂を含む。(A)エポキシ樹脂とは、エポキシ基を有する硬化性樹脂を意味する。
【0015】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されるものではないが、弾性率を低く抑え且つ破断点伸度を向上させる観点から、好ましくは50g/eq.以上、より好ましくは100g/eq.以上、さらに好ましくは150g/eq.以上、さらにより好ましくは180g/eq.以上、特に好ましくは200g/eq.以上である。(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量の上限は、特に限定されるものではないが、接着剤や封止材として使用する形態において、より扱いやすい樹脂組成物を得る観点から、好ましくは5000g/eq.以下、より好ましくは2000g/eq.以下、さらに好ましくは1000g/eq.以下、さらにより好ましくは700g/eq.以下、特に好ましくは500g/eq.以下である。エポキシ当量は、エポキシ基1当量あたりの樹脂の質量である。エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0016】
(A)エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0017】
樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは99質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、さらにより好ましくは65質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、さらにより好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上である。一実施形態において、(A)エポキシ樹脂の含有量は、(B)チオール化合物の含有量やチオール当量に基づいて設定することができる。
【0018】
<(A-1)柔軟性骨格含有エポキシ樹脂>
本発明において(A)エポキシ樹脂は、弾性率を低く抑え且つ破断点伸度を向上させる観点から、(A-1)柔軟性骨格含有エポキシ樹脂を含んでいることが好ましい。(A-1)柔軟性骨格含有エポキシ樹脂とは、柔軟性骨格及びエポキシ基を有する硬化性樹脂を意味する。ここにおける柔軟性骨格は、例えば、主鎖に6個以上(好ましくは8個以上)の炭素原子及び酸素原子から選ばれる骨格原子からなる飽和鎖状骨格であり得る。(A-1)柔軟性骨格含有エポキシ樹脂は、1分子中にエポキシ基を1~5個有することが好ましく、1~3個有することがより好ましく、2個有することが特に好ましい。(A-1)柔軟性骨格含有エポキシ樹脂は、さらに、水酸基、アミノ基等の官能基を有していてもよい。
【0019】
(A-1)柔軟性骨格含有エポキシ樹脂としては、例えば、(A-1-1)柔軟性骨格含有芳香族エポキシ樹脂(芳香環を有するもの)、及び(A-1-2)柔軟性骨格含有非芳香族エポキシ樹脂(芳香環を有さないもの)が挙げられる。(A-1)柔軟性骨格含有エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0020】
(A-1-1)柔軟性骨格含有芳香族エポキシ樹脂は、少なくとも1個の芳香族基(例えばフェニレン基等)と、主鎖に6個以上(好ましくは8個以上)の炭素原子及び酸素原子から選ばれる骨格原子からなる少なくとも1個の飽和鎖状骨格を有するエポキシ樹脂である。
【0021】
(A-1-1)柔軟性骨格含有芳香族エポキシ樹脂としては、例えば、柔軟性骨格含有変性ビスフェノール型エポキシ樹脂、柔軟性骨格含有変性ビフェニル型エポキシ樹脂、柔軟性骨格含有変性ノボラック型エポキシ樹脂、柔軟性骨格含有変性フェノールアラルキル型エポキシ樹脂等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0022】
柔軟性骨格含有変性ビスフェノール型エポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールAエーテル構造、ビスフェノールAPエーテル構造、ビスフェノールBエーテル構造、ビスフェノールBPエーテル構造、ビスフェノールCエーテル構造、ビスフェノールEエーテル構造、ビスフェノールFエーテル構造、ビスフェノールTMCエーテル構造等のビスフェノールエーテル骨格を有する。
【0023】
(A-1-1)柔軟性骨格含有芳香族エポキシ樹脂は、例えば、式(1)で表されるエポキシ樹脂であり得る:
【0024】
【化1】
【0025】
[式中、Rは、それぞれ独立して、単結合、-CR -、-O-、-CO-、-S-、-SO-、又は-SO-を示し、Rは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数が1~6)又はアリール基(好ましくは炭素数が6~14)を示すか、或いは同一炭素原子に結合する2個のRが一緒になって結合してシクロアルカン環(好ましくは炭素数が3~8)を形成し、Rは、それぞれ独立して、アルキル基(好ましくは炭素数が1~6)又はアリール基(好ましくは炭素数が6~14)を示し、X及びYは、それぞれ独立して、水酸基を有していてもよいアルキレン基(好ましくは炭素数が2~20、より好ましくは炭素数が2~10)を示し、aは、それぞれ独立して0以上の整数を示し、bは、それぞれ独立して2以上の整数を示し、cは、1以上の整数を示し、dは、それぞれ独立して0~3の整数を示す。]。
【0026】
アルキル基とは、直鎖、分枝鎖及び/又は環状の1価の脂肪族飽和炭化水素基をいう。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、好ましくは、メチル基である。アリール基とは、1価の芳香族炭化水素基をいう。アリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等が挙げられ、好ましくは、フェニル基である。シクロアルカン環とは、環状の脂肪族飽和炭化水素環をいう。シクロアルカン環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、メチルシクロヘキサン環、ジメチルシクロヘキサン環、トリメチルシクロヘキサン環等が挙げられる。アルキレン基とは、直鎖又は分枝鎖の2価の脂肪族飽和炭化水素基を意味する。水酸基を有していてもよいアルキレン基としては、例えば、-CH-CH-、-CH(CH)-、-CH-CH-CH-、-CH-CH(CH)-、-CH(CH)-CH-、-C(CH-、-CH-CH-CH-CH-、-CH-CH-CH(CH)-、-CH-CH(CH)-CH-、-CH(CH)-CH-CH-、-CH-C(CH-、-C(CH-CH-、-CH-CH-CH-CH-CH-、-CH-CH-CH-CH-CH-CH-、-CH-CH(CH)-CH-CH(CH)-CH-CH(CH)-、-CH(CH)-CH-CH(CH)-CH-CH(CH)-CH-、-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-、-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-、-CH-CH(CH)-CH-CH(CH)-CH-CH(CH)-CH-CH(CH)-、-CH(CH)-CH-CH(CH)-CH-CH(CH)-CH-CH(CH)-CH-、-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-、-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-CH-等の炭素数2~10のアルキレン基;-CH-CH(OH)-、-CH(OH)-CH-、-CH-CH(OH)-CH-、-CH(CHOH)-CH-、-CH-CH(CHOH)-、-CH-CH(CHOH)-CH-等の炭素数2~10のヒドロキシアルキレン基が挙げられる。
【0027】
式(1)において、Rは、それぞれ独立して、好ましくは-CR-である。Rは、それぞれ独立して、好ましくは水素原子又はアルキル基であり、より好ましくは水素原子又はメチル基である。Rは、それぞれ独立して、好ましくはアルキル基である。aは、それぞれ独立して、好ましくは0~20の整数(0又は1~20の整数)であり、より好ましくは0~10の整数(0又は1~10の整数)である。bは、それぞれ独立して、好ましくは3~20の整数であり、より好ましくは3~10の整数である。cは、好ましくは1~20の整数であり、より好ましくは1~10の整数であり、さらに好ましくは1~8の整数である。dは、それぞれ独立して、好ましくは0又は1であり、より好ましくは0である。
【0028】
(A-1-1)柔軟性骨格含有芳香族エポキシ樹脂の具体例としては、式(1A)~(1G)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる:
【0029】
【化2】
【0030】
[式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を示し、xは、1~10の整数を示し、yは、それぞれ独立して、1~10の整数を示す。]。
【0031】
(A-1-2)柔軟性骨格含有非芳香族エポキシ樹脂は、炭素原子及び酸素原子から選ばれる骨格原子からなる飽和脂肪族鎖を基本骨格とするエポキシ樹脂である。柔軟性骨格含有芳香族エポキシ樹脂としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-へキサンジオールジグリシジルエーテル等のアルカンジオールジグリシジルエーテル;ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリブチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0032】
(A-1-2)柔軟性骨格含有非芳香族エポキシ樹脂は、例えば、式(2)で表されるエポキシ樹脂であり得る:
【0033】
【化3】
【0034】
[式中、Zは、それぞれ独立して、水酸基を有していてもよいアルキレン基(好ましくは炭素数が2~20、より好ましくは炭素数が2~10)を示し、eは、1以上の整数を示す。]。
【0035】
式(2)において、Zは、それぞれ独立して、好ましくはアルキレン基(好ましくは炭素数が2~20、より好ましくは炭素数が2~10)を示す。eは、好ましくは1~20の整数である。
【0036】
(A-1)柔軟性骨格含有エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ADEKA社製「EP-4000S」、「EP-4010S」(変性ビスフェノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製「YL7175-500」「YL7175-1000」、「YL7410」、「YX7105」(変性ビスフェノール型エポキシ樹脂);DIC社製「EXA-4850」、「EXA-4850-150」、「EXA-4816」、「EXA-4822」(変性ビスフェノール型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製「EG-280」;ナガセケムテックス社製「EX-830」(変性ビスフェノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製「YX7400」(ポリブチレングリコールジグリシジルエーテル)等が挙げられる。
【0037】
(A-1)柔軟性骨格含有エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されるものではないが、好ましくは50g/eq.以上、より好ましくは100g/eq.以上、さらに好ましくは200g/eq.以上、さらにより好ましくは300g/eq.以上、特に好ましくは400g/eq.以上である。(A-1)柔軟性骨格含有エポキシ樹脂のエポキシ当量の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは5000g/eq.以下、より好ましくは2000g/eq.以下、さらに好ましくは1000g/eq.以下、さらにより好ましくは700g/eq.以下、特に好ましくは500g/eq.以下である。エポキシ当量は、エポキシ基1当量あたりの樹脂の質量である。エポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0038】
(A-1)柔軟性骨格含有エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0039】
樹脂組成物中の(A-1)柔軟性骨格含有エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下、さらにより好ましくは50質量%以下、特に好ましくは45質量%以下である。樹脂組成物中の(A-1)柔軟性骨格含有エポキシ樹脂の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上、さらにより好ましくは8質量%以上、特に好ましくは10質量%以上である。
【0040】
<(A-2)その他の任意のエポキシ樹脂>
本発明において(A)エポキシ樹脂は、(A-1)柔軟性骨格含有エポキシ樹脂以外の(A-2)その他の任意のエポキシ樹脂を含んでいてもよい。
【0041】
(A-2)その他の任意のエポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、イソシアヌラート型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂、フェノールフタレイン型エポキシ樹脂等が挙げられる。(A-2)その他の任意のエポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
樹脂組成物は、(A-2)その他の任意のエポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。(A-2)その他の任意のエポキシ樹脂100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0043】
(A-2)その他の任意のエポキシ樹脂は、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とに分類できる。本発明の樹脂組成物は、(A-2)その他の任意のエポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0044】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0045】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0046】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「828EL」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、「604」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-3950L」、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0048】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂、フェノールフタレイン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0049】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「HP-7200L」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3000FH」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN475V」(ナフタレン型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN485」(ナフトール型エポキシ樹脂);日鉄ケミカル&マテリアル社製の「ESN375」(ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YX4000HK」、「YL7890」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(フェノールアラルキル型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「WHR991S」(フェノールフタルイミジン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
(A-2)その他の任意のエポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5,000g/eq.、より好ましくは60g/eq.~2,000g/eq.、さらに好ましくは70g/eq.~1,000g/eq.、さらにより好ましくは80g/eq.~500g/eq.である。エポキシ当量は、エポキシ基1当量あたりの樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0051】
(A-2)その他の任意のエポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは250~3,000、さらに好ましくは400~1,500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0052】
樹脂組成物中の(A-2)その他の任意のエポキシ樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、さらにより好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。樹脂組成物中の(A-2)その他の任意のエポキシ樹脂の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、0質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上等であり得る。
【0053】
樹脂組成物が(A-2)その他の任意のエポキシ樹脂を含有する場合、樹脂組成物中の(A-1)柔軟性骨格含有エポキシ樹脂に対する(A-2)その他の任意のエポキシ樹脂の質量比((A-2)/(A-1))は、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1以下、特に好ましくは0.7以下であり得る。
【0054】
<(B)チオール化合物>
本発明の樹脂組成物は、(B)チオール化合物を含む。(A)エポキシ樹脂に対して(B)チオール化合物を硬化剤として使用した場合、比較的低温で硬化でき、磁力の低下を抑制できる。
【0055】
(B)チオール化合物とは、メルカプト基(-SH)を有する有機化合物を意味し、優れたエポキシ硬化性を得る観点から、2官能以上のチオール化合物であることが好ましく、架橋密度をより向上させる観点から、3官能以上のチオール化合物であることがより好ましい。(B)チオール化合物の説明において官能数を示すときは、1分子中に含まれるメルカプト基(-SH)の個数を基準とする。また、このようなチオール化合物は、反応性を高める観点から、1級及び/又は2級チオール化合物であることが好ましい。
【0056】
(B)チオール化合物には、飽和炭化水素構造のみならず不飽和炭化水素構造を含むものも含まれる。(B)チオール化合物は、直鎖、分岐鎖及び/又は環状構造(例えばイソシアヌル酸構造、グリコールウリル構造、ベンゼン環構造等)を含むものを含むが、一実施形態において、耐衝撃性をより向上させる観点から、環状構造不含チオール化合物(直鎖及び/又は分岐鎖からなり環状構造を含まないもの)を含むことが好ましい。(B)チオール化合物は、非芳香族チオール化合物(芳香環を含まないもの)であっても、芳香族チオール化合物(芳香環を含むもの)であってもよいが、一実施形態において、耐衝撃性をより向上させる観点から、非芳香族チオール化合物(芳香環を含まないもの)が好ましい。(B)チオール化合物は、メルカプト基以外にも、ヒドロキシ基、カルボキシ基、又はアミノ基等の官能基を有していてもよいが、一実施形態においては、有さないことが好ましい。
【0057】
(B)チオール化合物としては、例えば、炭化水素チオール化合物、エーテル構造含有チオール化合物、チオエーテル構造含有チオール化合物、アミン含有チオール化合物、アルコール含有チオール化合物、カルボン酸エステル構造含有チオール化合物、イソシアヌレート構造含有チオール化合物、カルボン酸エステル構造イソシアヌレート構造含有チオール化合物、グリコールウリル構造含有チオール化合物等が挙げられる。(B)チオール化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0058】
炭化水素チオール化合物とは、炭化水素を基本骨格とするチオール化合物を意味し、例えば、1,4-ブタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,8-オクタンジチオール、1,10-デカンジチオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジチオール、1,4-シクロヘキサンジチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、m-キシレン-α,α’-ジチオール、p-キシレン-α,α’-ジチオール等の2官能の炭化水素チオール化合物;2-メルカプトメチル-1,3-プロパンジチオール、2-エチル-2-(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジチオール、2-メルカプトメチル-1,4-ブタンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール等の3官能の炭化水素チオール化合物;テトラキス(メルカプトメチル)メタン、2,2-ビス(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジチオール等の4官能の炭化水素チオール化合物等が挙げられる。
【0059】
エーテル構造含有チオール化合物とは、エーテル構造を有するチオール化合物を意味し、例えば、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール、3,6,9-トリオキサウンデカン-1,11-ジチオール、3,4-ジメトキシブタン-1,2-ジチオール、2,3-ジメルカプトプロピルメチルエーテル、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、ビス[4-(2-メルカプトエチルオキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-メルカプトプロピルオキシ)フェニル]メタン、2,2-ビス[4-(2-メルカプトエチルオキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-メルカプトプロピルオキシ)フェニル]プロパン等の2官能のエーテル構造含有チオール化合物;(2-メルカプトエチル)(2,3-ジメルカプトプロピル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトエチル)エーテル、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトエチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(4-メルカプトブチル)エーテル、トリメチロールエタントリス(4-メルカプトブチル)エーテル、グリセリントリス(3-メルカプトプロピル)エーテル、グリセリントリス(4-メルカプトブチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトプロピル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチル)エーテル、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチル)エーテル、グリセリントリス(2-メルカプトプロピル)エーテル、グリセリントリス(3-メルカプトブチル)エーテル等の3官能のエーテル構造含有チオール化合物;ビス(2,3-ジメルカプトプロピル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトエチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(4-メルカプトブチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトプロピル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチル)エーテル等の4官能のエーテル構造含有チオール化合物;ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2-メルカプトプロピル)エーテル等の5官能以上の多官能のエーテル構造含有チオール化合物が挙げられる。
【0060】
チオエーテル構造含有チオール化合物とは、チオエーテル構造を有するチオール化合物を意味し、例えば、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール、3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、1,4-ジチアン-2,5-ジ(メタンチオール)等の2官能のチオエーテル構造含有チオール化合物;4-(2-メルカプトエチル)-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール、4-メルカプトメチル-3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール等の3官能のチオエーテル構造含有チオール化合物;1,2,6,7-テトラメルカプト-4-チアヘプタン、4,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、5,7-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9-トリチアウンデカン-1,11-ジチオール、2,6-ビス(メルカプトメチル)-3,5-ジチアヘプタン-1,7-ジチオール、3,5-ビス(メルカプトメチルチオ)-2,6-ジチアヘプタン-1,7-ジチオール等の4官能のチオエーテル構造含有チオール化合物;1,2,9,10-テトラメルカプト-6-メルカプトメチル-4,7-ジチアデカン、1,2,6,10,11-ペンタメルカプト-4,8-ジチアウンデカン、1,2,9,13,14-ペンタメルカプト-6-メルカプトメチル-4,7,11-トリチアテトラデカン、1,2,6,10,14,15-ヘキサメルカプト-4,8,12-トリチアペンタデカン等の5官能以上の多官能のチオエーテル構造含有チオール化合物等が挙げられる。
【0061】
アミン含有チオール化合物とは、アミン構造(好ましくは2級アミン構造又は3級アミン構造)を有するチオール化合物(さらにエーテル構造又はチオエーテル構造を有していてもよい)を意味し、例えば、ビス[4-(3-フェノキシ-2-メルカプトプロピルアミノ)フェニル]メタン、ビス{4-[3-(4-メチルフェノキシ)-2-メルカプトプロピルアミノ]フェニル}メタン、1,4-ビス(3-フェノキシ-2-メルカプトプロピルアミノ)ベンゼン等の2官能のアミン含有チオール化合物等が挙げられる。
【0062】
アルコール含有チオール化合物とは、水酸基を有するチオール化合物(さらにエーテル構造又はチオエーテル構造を有していてもよい)を意味し、例えば、1,3-ジメルカプト-2-プロパノール、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、2,2-ビス(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジオール等の2官能のアルコール含有チオール化合物;ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトプロピル)エーテル、3-メルカプト-2,2-ビス(メルカプトメチル)-1-プロパノール等の3官能のアルコール含有チオール化合物等が挙げられる。
【0063】
カルボン酸エステル構造含有チオール化合物とは、カルボン酸エステル構造を有するチオール化合物(さらにエーテル構造又はチオエーテル構造を有していてもよい)を意味し、例えば、コハク酸ビス(2-メルカプトエチル)、フタル酸ビス(2-メルカプトエチル)、フタル酸ビス(3-メルカプトプロピル)、フタル酸ビス(4-メルカプトブチル)、エチレングリコールビス(メルカプトアセタート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(4-メルカプトブチレート)、プロピレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、プロピレングリコールビス(4-メルカプトブチレート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(4-メルカプトブチレート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールビス(メルカプトアセタート)、1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールビス(4-メルカプトブチレート)、1,8-オクタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,8-オクタンジオールビス(4-メルカプトブチレート)、フタル酸ビス(1-メルカプトエチル)、フタル酸ビス(2-メルカプトプロピル)、フタル酸ビス(3-メルカプトブチル)、エチレングリコールビス(2-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、プロピレングリコールビス(2-メルカプトプロピオネート)、プロピレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、テトラエチレングリコールビス(2-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールビス(2-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)、1,8-オクタンジオールビス(2-メルカプトプロピオネート)、1,8-オクタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)等の2官能のカルボン酸エステル構造含有チオール化合物;チオリンゴ酸ビス(2-メルカプトエチル)、トリメチロールプロパントリス(メルカプトアセタート)、トリメチロールエタントリス(メルカプトアセタート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(4-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(4-メルカプトブチレート)、グリセリントリス(3-メルカプトプロピオネート)、グリセリントリス(4-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、グリセリントリス(2-メルカプトプロピオネート)、グリセリントリス(3-メルカプトブチレート)等の3官能のカルボン酸エステル構造含有チオール化合物;2,3-ジメルカプトコハク酸ビス(2-メルカプトエチル)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセタート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(4-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)等の4官能のカルボン酸エステル構造含有チオール化合物;ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2-メルカプトプロピオネート)等の5官能以上の多官能のカルボン酸エステル構造含有チオール化合物が挙げられる。
【0064】
イソシアヌレート構造含有チオール化合物とは、イソシアヌル酸(すなわち1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン)構造を有するチオール化合物(さらにエーテル構造又はチオエーテル構造を有していてもよい)を意味し、例えば、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート、トリス(2-メルカプトプロピル)イソシアヌレート、トリス(2-メルカプトエチル)イソシアヌレート、トリス(4-メルカプトブチル)イソシアヌレート等の3官能のイソシアヌレート構造含有チオール化合物等が挙げられる。
【0065】
カルボン酸エステル構造イソシアヌレート構造含有チオール化合物とは、カルボン酸エステル構造及びイソシアヌル酸構造を有するチオール化合物(さらにエーテル構造又はチオエーテル構造を有していてもよい)を意味し、例えば、トリス[2-(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリス[2-(4-メルカプトブチリルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリス[2-(2-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリス[2-(3-メルカプトブチリルオキシ)エチル]イソシアヌレート等の3官能のカルボン酸エステル構造イソシアヌレート構造含有チオール化合物等が挙げられる。
【0066】
グリコールウリル構造含有チオール化合物とは、グリコールウリル(すなわちテトラヒドロイミダゾ[4,5-d]イミダゾール-2,5(1H,3H)-ジオン)構造を有するチオール化合物を意味し、例えば、1,3-ビス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル、1,3-ビス(3-メルカプトプロピル)グリコールウリル、1,4-ビス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル、1,4-ビス(3-メルカプトプロピル)グリコールウリル、1,6-ビス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル、1,6-ビス(3-メルカプトプロピル)グリコールウリル等の2官能のグリコールウリル構造含有チオール化合物;1,3,4-トリス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル、1,3,4-トリス(3-メルカプトプロピル)グリコールウリル等の3官能のグリコールウリル構造含有チオール化合物;1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)グリコールウリル等の4官能のグリコールウリル構造含有チオール化合物等が挙げられる。
【0067】
一実施形態において、(B)チオール化合物は、耐加水分解性をより向上させる観点から、カルボン酸エステル構造を含有しないチオール化合物が好ましい。
【0068】
一実施形態において、(B)チオール化合物は、25℃において固体状のチオール化合物であっても、25℃において液状のチオール化合物であってもよいが、樹脂組成物を封止剤や接着剤として使用する形態である場合は、好ましくは、25℃において液状のチオール化合物であり得る。
【0069】
(B)チオール化合物の分子量は、特に限定されるものではないが、好ましくは200以上、より好ましくは250以上、さらに好ましくは300以上、特に好ましくは350以上である。(B)チオール化合物の分子量の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは1,500以下、より好ましくは1,000以下、さらに好ましくは800以下、特に好ましくは700以下である。
【0070】
(B)チオール化合物のチオール当量は、特に限定されるものではないが、好ましくは1000g/eq.以下、より好ましくは500g/eq.以下、さらに好ましくは300g/eq.以下、さらにより好ましくは200g/eq.以下、特に好ましくは150g/eq.以下である。(B)チオール化合物のチオール当量の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは50g/eq.以上、より好ましくは70g/eq.以上、さらに好ましくは90g/eq.以上、さらにより好ましくは100g/eq.以上、特に好ましくは110g/eq.以上である。チオール当量は、メルカプト基1当量あたりのチオール化合物の質量である。
【0071】
樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂のエポキシ基の総数に対する(B)チオール化合物のメルカプト基の総数の比(メルカプト基/エポキシ基)は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上、特に好ましくは0.8以上である。樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂のエポキシ基の総数に対する(B)チオール化合物のメルカプト基の総数の比(メルカプト基/エポキシ基)の上限は、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.2以下、特に好ましくは1.0以下である。
【0072】
樹脂組成物中の(B)チオール化合物の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、さらにより好ましくは25質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。樹脂組成物中の(B)チオール化合物の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、さらにより好ましくは5質量%以上、特に好ましくは7質量%以上である。一実施形態において、(B)チオール化合物の含有量は、(A)エポキシ樹脂の含有量やエポキシ当量に基づいて設定することができる。
【0073】
樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂に対する(B)チオール化合物の質量比((B)チオール化合物/(A)エポキシ樹脂)は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、さらに好ましくは0.2以上、特に好ましくは0.25以上である。樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂に対する(B)チオール化合物の質量比((B)チオール化合物/(A)エポキシ樹脂)の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは1.5以下、より好ましくは1以下、さらに好ましくは0.7以下、特に好ましくは0.5以下である。
【0074】
<(C)磁性粉体>
本発明の樹脂組成物は、(C)磁性粉体を含む。本発明の樹脂組成物に(C)磁性粉体を含有させることにより、その硬化物の比透磁率を向上させることができる。
【0075】
(C)磁性粉体は、軟磁性粉体、硬磁性粉体のいずれであってもよいが、本発明の効果を顕著に得る観点から、軟磁性粉体であることが好ましい。
【0076】
(C)磁性粉体としては、例えば、Fe-Mn系フェライト、Fe-Mn-Zn系フェライト、Mg-Zn系フェライト、Mn-Zn系フェライト、Mn-Mg系フェライト、Cu-Zn系フェライト、Mg-Mn-Sr系フェライト、Ni-Zn系フェライト、Ba-Zn系フェライト、Ba-Mg系フェライト、Ba-Ni系フェライト、Ba-Co系フェライト、Ba-Ni-Co系フェライト、Y系フェライト、酸化鉄粉(III)、四酸化三鉄などの酸化鉄粉;純鉄粉末;Fe-Si系合金粉末、Fe-Si-Al系合金粉末、Fe-Cr系合金粉末、Fe-Cr-Si系合金粉末、Fe-Ni-Cr系合金粉末、Fe-Cr-Al系合金粉末、Fe-Ni系合金粉末、Fe-Ni-Mo系合金粉末、Fe-Ni-Mo-Cu系合金粉末、Fe-Co系合金粉末、あるいはFe-Ni-Co系合金粉末などの鉄合金系金属粉;Co基アモルファスなどのアモルファス合金類等が挙げられる。(C)磁性粉体は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0077】
中でも、(C)磁性粉体としては、酸化鉄粉及び鉄合金系金属粉から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。酸化鉄粉としては、Ni、Cu、Mn、及びZnから選ばれる少なくとも1種を含むフェライトを含むことが好ましく、Fe-Mn系フェライト、及びFe-Mn-Zn系フェライトから選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。また、鉄合金系金属粉としては、Si、Cr、Al、Ni、及びCoから選ばれる少なくとも1種を含む鉄合金系金属粉を含むことが好ましい。
【0078】
(C)磁性粉体としては、市販品を用いることができ、2種以上を併用してもよい。用いられ得る市販の磁性粉体の具体例としては、パウダーテック社製「M05S」、「M05SWD」等のMシリーズ;パウダーテック社製「MZ05」;山陽特殊製鋼社製「PST-S」;エプソンアトミックス社製「AW2-08」、「AW2-08PF20F」、「AW2-08PF10F」、「AW2-08PF3F」、「Fe-3.5Si-4.5CrPF20F」、「Fe-50NiPF20F」、「Fe-80Ni-4MoPF20F」;JFEケミカル社製「LD-M」、「LD-MH」、「KNI-106」、「KNI-106GSM」、「KNI-106GS」、「KNI-109」、「KNI-109GSM」、「KNI-109GS」;戸田工業社製「KNS-415」、「BSF-547」、「BSF-029」、「BSN-125」、「BSN-125」、「BSN-714」、「BSN-828」、「S-1281」、「S-1641」、「S-1651」、「S-1470」、「S-1511」、「S-2430」;日本重化学工業社製「JR09P2」;CIKナノテック社製「Nanotek」;キンセイマテック社製「JEMK-S」、「JEMK-H」:ALDRICH社製「Yttrium iron oxide」等が挙げられる。
【0079】
(C)磁性粉体は、球状であることが好ましい。磁性粉体の長軸の長さを短軸の長さで除した値(アスペクト比)としては、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.2以下である。球状の磁性粉体を使用することで、磁気損失を低くでき、また所望の好ましい粘度を有する樹脂組成物を得ることができ得る。
【0080】
(C)磁性粉体の平均粒径は、比透磁率を向上させる観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。(C)磁性粉体の平均粒径の上限は、好ましくは10μm以下、より好ましくは9μm以下、さらに好ましくは8μm以下である。
【0081】
(C)磁性粉体の平均粒径はミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的にはレーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、磁性粉体の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、磁性粉体を超音波により水に分散させたものを好ましく使用することができる。レーザー回折散乱式粒径分布測定装置としては、堀場製作所社製「LA-500」、島津製作所社製「SALD-2200」等を使用することができる。
【0082】
一実施形態において、(C)磁性粉体は、樹脂組成物の粘度を調整し、さらに耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていてもよい。表面処理剤としては、例えば、ビニルシラン系カップリング剤、(メタ)アクリル系カップリング剤、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0083】
表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM1003」(ビニルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM503」(3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)等が挙げられる。
【0084】
表面処理剤による表面処理の程度は、(C)磁性粉体の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、(C)磁性粉体100質量部は、0.01質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.05質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.1質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0085】
(C)磁性粉体の含有量(体積%)は、比透磁率を向上させ及び損失係数を低減させる観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100体積%とした場合、好ましくは0.1体積%以上、より好ましくは1体積%以上、さらに好ましくは5体積%以上、さらにより好ましくは10体積%以上、特に好ましくは14体積%以上である。(C)磁性粉体の含有量(体積%)の上限は、特に限定されるものではないが、一実施形態において、ペースト状の磁性接着剤としての機能を発揮させる観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは85体積%以下、より好ましくは70体積%以下、さらに好ましくは60体積%以下、さらにより好ましくは50体積%以下、特に好ましくは40体積%以下である。
【0086】
(C)磁性粉体の含有量(質量%)は、比透磁率を向上させ及び損失係数を低減させる観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらにより好ましくは35質量%以上、特に好ましくは40質量%以上である。(C)磁性粉体の含有量(質量%)の上限は、特に限定されるものではないが、一実施形態において、ペースト状の磁性接着剤としての機能を発揮させる観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、さらにより好ましくは77質量%以下、特に好ましくは75質量%以下である。
【0087】
<(D)安定剤>
本発明の樹脂組成物は、任意成分として(D)安定剤を含む場合がある。(D)安定剤は、樹脂組成物(特に一液型の樹脂組成物)の保存安定性を向上させる機能を有する。
【0088】
(D)安定剤としては、例えば、ボレート化合物、チタネート化合物、アルミネート化合物、ジルコネート化合物、イソシアネート化合物、カルボン酸、カルボン酸無水物等を挙げることができる。(D)安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0089】
ボレート化合物としては、例えば、トリメチルボレート、トリエチルボレート、トリプロピルボレート、トリイソプロピルボレート、トリブチルボレート、トリペンチルボレート、トリヘキシルボレート、トリシクロヘキシルボレート、トリス(2-エチルヘキシル)ボレート、トリオクチルボレート、トリノニルボレート、トリデシルボレート、トリドデシルボレート、トリヘキサデシルボレート、トリオクタデシルボレート等のトリアルキルボレート;トリアリルボレート等のトリアルケニルボレート;トリフェニルボレート、トリス(2-メチルフェニル)ボレート、トリス(3-メチルフェニル)ボレート、トリス(4-メチルフェニル)ボレート、トリス(2-エチルフェニル)ボレート、トリス(3-エチルフェニル)ボレート、トリス(4-エチルフェニル)ボレート、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボレート、トリス(2,4-ジメチルフェニル)ボレート等のトリアリールボレート;トリベンジルボレート等のトリアラルキルボレート;トリエタノールアミンボレート等のアミノ基含有ボレート等が挙げられる。
【0090】
チタネート化合物としては、例えば、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトライソプロプルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート等が挙げられる。
【0091】
アルミネート化合物としては、例えば、トリエチルアルミネート、トリプロピルアルミネート、トリイソプロピルアルミネート、トリブチルアルミネート、トリオクチルアルミネート等が挙げられる。
【0092】
ジルコネート化合物としては、例えば、テトラエチルジルコネート、テトラプロピルジルコネート、テトライソプロピルジルコネート、テトラブチルジルコネート等が挙げられる。
【0093】
イソシアネート化合物としては、例えば、n-ブチルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、2-クロロエチルイソシアネート、フェニルイソシアネート、p-クロロフェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2-エチルフェニルイソシアネート、2,6-ジメチルフェニルイソシアネート、トリレンジイソシアネート(例:2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4‘-ジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0094】
カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸等の飽和脂肪族一塩基酸;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和脂肪族一塩基酸;グリコール酸、乳酸等の一塩基性オキシ酸;グリオキザル酸、ブドウ酸などの脂肪族アルデヒド酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸等の脂肪族多塩基酸;安息香酸、p-トルイル酸、フェニル酢酸、けい皮酸、マンデル酸等の芳香族一塩基酸;フタル酸、トリメシン酸等の芳香族多塩基酸;モノクロル酢酸、ジクロル酢酸等のハロゲン化脂肪酸等が挙げられる。
【0095】
カルボン酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水ドデシニルコハク酸、無水マレイン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等の脂肪族多塩基酸無水物等、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロリメリット酸等の芳香族多塩基酸無水物等が挙げられる。
【0096】
樹脂組成物中の(D)安定剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。樹脂組成物中の(D)安定剤の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、0質量%以上、0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり得る。
【0097】
<(E)分散剤>
本発明の樹脂組成物は、任意成分として(E)分散剤を含む場合がある。
【0098】
(E)分散剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸等のリン酸エステル系分散剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド等のポリオキシアルキレン系分散剤;アセチレングリコール等のアセチレン系分散剤;ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系分散剤;ポリアクリル酸ナトリウム、ドデシルベンゼルスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートアンモニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩等のアニオン性分散剤;アミノ基含有ポリアクリレート系樹脂、アミノ基含有ポリスチレン系樹脂等のカチオン性分散剤等が挙げられる。(E)分散剤は1種単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
【0099】
リン酸エステル系分散剤の市販品としては、東邦化学工業社製「フォスファノール」シリーズの「RS-410」、「RS-610」、「RS-710」等が挙げられる。
【0100】
ポリオキシアルキレン系分散剤の市販品としては、日油社製「マリアリム」シリーズの「AKM-0531」、「AFB-1521」、「SC-0505K」、「SC-1015F」及び「SC-0708A」、並びに「HKM-50A」等が挙げられる。
【0101】
アセチレン系分散剤の市販品としては、Air Products and Chemicals Inc.製「サーフィノール」シリーズの「82」、「104」、「440」、「465」及び「485」、並びに「オレフィンY」等が挙げられる。
【0102】
シリコーン系分散剤の市販品の市販品としては、ビックケミー社製「BYK347」、「BYK348」等が挙げられる。
【0103】
アニオン性分散剤の市販品としては、味の素ファインテクノ社製「PN-411」、「PA-111」;ライオン社製「A-550」、「PS-1900」等が挙げられる。
【0104】
カチオン性分散剤の市販品としては、ビックケミー社製「161」、「162」、「164」、「182」、「2000」、「2001」;味の素ファインテクノ社製「PB-821」、「PB-822」、「PB-824」;アイエスピー・ジャパン社製「V-216」、「V-220」;ルーブリゾール社製「ソルスパース13940」「ソルスパース24000」「ソルスパース32000」等が挙げられる。
【0105】
樹脂組成物中の(E)分散剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。樹脂組成物中の(E)分散剤の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、0質量%以上、0.001質量%以上、0.01質量%以上であり、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり得る。
【0106】
<(F)硬化促進剤>
本発明の樹脂組成物は、任意成分として(F)硬化促進剤を含む場合がある。
【0107】
(F)硬化促進剤としては、潜在性硬化促進剤が好ましく使用される。潜在性硬化促進剤は、特に一液型の樹脂組成物とする場合に重要な成分であり、常温(25℃)では(A)エポキシ樹脂の硬化に寄与せず、加熱時に(A)エポキシ樹脂の硬化を促進させる機能を有する。(F)硬化促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0108】
潜在性硬化促進剤は、液状潜在性硬化促進剤であっても、固体分散型潜在性硬化促進剤であってもよいが、固体分散型潜在性硬化促進剤がより好ましい。
【0109】
液状潜在性硬化促進剤とは、常温(25℃)でエポキシ樹脂に可溶な液体であり、加熱することでエポキシ樹脂の硬化促進剤として機能する化合物である。液状潜在性硬化促進剤としては、例えば、イオン液体が挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0110】
イオン液体を構成するカチオンとしては、例えば、イミダゾリウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピラゾニウムイオン、グアニジニウムイオン、ピリジニウムイオン、それらの炭化水素基(アルキル基、フェニル基、それらの組み合わせ等)置換体等のアンモニウム系カチオン;テトラアルキルホスホニウムイオン等のホスホニウム系カチオン;トリアルキルスルホニウムイオン等のスルホニウム系カチオン等が挙げられる。
【0111】
またイオン液体を構成するアニオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物系アニオン:メタンスルホンイオン等のアルキル硫酸系アニオン:トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロホスホン酸イオン、トリフルオロトリス(ペンタフルオロエチル)ホスホン酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、トリフルオロ酢酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン等の含フッ素化合物系アニオン:フェノールイオン、2-メトキシフェノールイオン、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールイオン等のフェノール系アニオン:アスパラギン酸イオン、グルタミン酸イオン等の酸性アミノ酸イオン:グリシンイオン、アラニンイオン、フェニルアラニンイオン等の中性アミノ酸イオン:N-ベンゾイルアラニンイオン、N-アセチルフェニルアラニンイオン、N-アセチルグリシンイオン、N-アセチルグリシンイオン等のN-アシルアミノ酸イオン:ギ酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、馬尿酸イオン、N-メチル場尿酸、安息香酸イオン等のカルボン酸系アニオンが挙げられる。
【0112】
固体分散型潜在性硬化促進剤とは、常温(25℃)ではエポキシ樹脂に不溶の固体であり、加熱することによりエポキシ樹脂に可溶化し、エポキシ樹脂の硬化促進剤として機能する化合物である。
【0113】
固体分散型潜在性硬化促進剤として、例えば、常温(25℃)で固体のイミダゾール化合物、および固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化促進剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0114】
常温(25℃)で固体のイミダゾール化合物としては、例えば、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-ベンジル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2-(2-メチル-1-イミダゾリル)エチル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2-(2-メチル-1-イミダゾリル)エチル]-1,3,5-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール-トリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール-トリメリテイト、N-(2-メチルイミダゾリル-1-エチル)尿素等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0115】
固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化促進剤の好適な例としては、アミン化合物のエポキシアダクト、アミン化合物の尿素アダクト、及びエポキシアダクトの水酸基にイソシアネート化合物を付加反応させた化合物からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0116】
アミン化合物のエポキシアダクトの製造原料の一つとして用いられるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、カテコール、レゾルシノールなど多価フェノール、またはグリセリンやポリエチレングリコールのような多価アルコールとエピクロロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエーテル;p-ヒドロキシ安息香酸、β-ヒドロキシナフトエ酸のようなヒドロキシカルボン酸とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル;フタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるポリグリシジルエステル;4,4’-ジアミノジフェニルメタンやm-アミノフェノールなどとエピクロロヒドリンとを反応させて得られるグリシジルアミン化合物;エポキシ化フェノールノボラック樹脂、エポキシ化クレゾールノボラック樹脂、エポキシ化ポリオレフィンなどの多官能性エポキシ化合物やブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレートなどの単官能性エポキシ合物;等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0117】
固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化促進剤の製造原料として用いられるアミン化合物は、エポキシ基と付加反応しうる活性水素を分子内に1以上有し、かつ1級アミノ基、2級アミノ基および3級アミノ基の中から選ばれた官能基を少なくとも分子内に1以上有するものであればよい。このような、アミン化合物としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、n-プロピルアミン、2-ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、4,4’-ジアミノ-ジシクロヘキシルメタンのような脂肪族アミン化合物;4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2-メチルアニリンなどの芳香族アミン化合物;2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾリン、2,4-ジメチルイミダゾリン、ピペリジン、ピペラジンなどのを含窒素複素環化合物;等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0118】
また、この中で特に分子内に3級アミノ基を有する化合物は、優れた硬化促進能を有する潜在性硬化促進剤を与える原料であり、そのような化合物の例としては、例えば、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジ-n-プロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、N-メチルピペラジンなどのアミン化合物や、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールなどのイミダゾール化合物のような、分子内に3級アミノ基を有する1級もしくは2級アミン類;2-ジメチルアミノエタノール、1-メチル-2-ジメチルアミノエタノール、1-フェノキシメチル-2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、1-ブトキシメチル-2-ジメチルアミノエタノール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル)-2-フェニルイミダゾリン、1-(2-ヒドロキシ-3-ブトキシプロピル)-2-メチルイミダゾリン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N-β-ヒドロキシエチルモルホリン、2-ジメチルアミノエタンチオール、2-メルカプトピリジン、2-ベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、4-メルカプトピリジン、N,N-ジメチルアミノ安息香酸、N,N-ジメチルグリシン、ニコチン酸、イソニコチン酸、ピコリン酸、N,N-ジメチルグリシンヒドラジド、N,N-ジメ
チルプロピオン酸ヒドラジド、ニコチン酸ヒドラジド、イソニコチン酸ヒドラジドなどのような、分子内に3級アミノ基を有するアルコール類、フェノール類、チオール類、カルボン酸類およびヒドラジド類;等が挙げられる。
【0119】
エポキシ化合物とアミン化合物を付加反応して潜在性硬化促進剤を製造する際に、さらに分子内に活性水素を2以上有する活性水素化合物を反応させることもできる。このような活性水素化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、フェノールノボラック樹脂などの多価フェノール類、トリメチロールプロパンなどの多価アルコール類、アジピン酸、フタル酸などの多価カルボン酸類、1,2-ジメルカプトエタン、2-メルカプトエタノール、1-メルカプト-3-フェノキシ-2-プロパノール、メルカプト酢酸、アントラニル酸、乳酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0120】
固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化促進剤の製造原料として用いられるイソシアネート化合物としては、例えば、n-ブチルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、フェニルイソシアネート、ベンジルイソシアネートなどの単官能イソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネートなどの多官能イソシアネート化合物;さらに、これら多官能イソシアネート化合物と活性水素化合物との反応によって得られる、末端イソシアネート基含有化合物;等も用いることができる。このような末端イソシアネート基含有化合物の例としては、トルイレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの反応により得られる末端イソシアネート基を有する付加化合物、トルイレンジイソシアネートとペンタエリスリトールとの反応により得られる末端イソシアネート基を有する付加化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0121】
また、固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化促進剤の製造原料として用いられる尿素化合物として、例えば、尿素、チオ尿素などが挙げられるが、これらに限定されるものでない。
【0122】
固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化促進剤は、例えば、上記の製造原料を適宜混合し、常温から200℃の温度において反応させた後、冷却固化してから粉砕するか、あるいは、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の溶媒中で反応させ、脱溶媒後、固形分を粉砕することにより容易に得ることが出来る。
【0123】
固体分散型アミンアダクト系潜在性硬化促進剤の市販品としては、例えば、「アミキュアPN-FJ」(味の素ファインテクノ社製)、「アミキュアPN-23」(味の素ファインテクノ社製)、「アミキュアPN-H」(味の素ファインテクノ社製)、「ハードナーX-3661S」(エー・シー・アール社製)、「ハードナーX-3670S」(エー・シー・アール社製)、「FXR-1081」(T&K TOKA社製)、「フジキュアFXR-1000」(T&K TOKA社製)、「フジキュアFXR-1030」(T&K TOKA社製)、「ノバキュアHX-3721」(旭化成社製)、「HX-3722」(旭化成社製)、「ノバキュアHX-3742」(旭化成社製)等が挙げられる。
【0124】
樹脂組成物中の(F)硬化促進剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下である。樹脂組成物中の(F)硬化促進剤の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、0質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上であり、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上であり得る。
【0125】
<(G)有機充填材>
本発明の樹脂組成物は、さらに任意成分として(G)有機充填材を含む場合がある。
【0126】
(G)有機充填材は、樹脂組成物中に粒子状の形態で存在する。(G)有機充填材としては、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、ゴム粒子を用いることが好ましい。(G)有機充填材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0127】
ゴム粒子に含まれるゴム成分としては、例えば、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系エラストマー;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソブチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、イソプレン-イソブチレン共重合体、イソブチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン三元共重合体等のオレフィン系熱可塑性エラストマー;ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、ポリ(メタ)アクリル酸オクチル等のアクリル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。さらにゴム成分には、ポリオルガノシロキサンゴム等のシリコーン系ゴムを混合してもよい。ゴム粒子に含まれるゴム成分は、ガラス転移温度が例えば0℃以下であり、-10℃以下が好ましく、-20℃以下がより好ましく、-30℃以下がさらに好ましい。
【0128】
(G)有機充填材は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、コア-シェル型ゴム粒子であることが好ましい。コア-シェル型ゴム粒子とは、上記で挙げたようなゴム成分を含むコア粒子と、それを覆う1層以上のシェル部からなる粒子状の有機充填材である。さらに、コア-シェル型粒子は、上記で挙げたようなゴム成分を含むコア粒子と、コア粒子に含まれるゴム成分と共重合可能なモノマー成分をグラフト共重合させたシェル部からなるコア-シェル型グラフト共重合体ゴム粒子であることが好ましい。ここでいうコア-シェル型とは、必ずしもコア粒子とシェル部が明確に区別できるもののみを指しているわけではなく、コア粒子とシェル部の境界が不明瞭なものも含み、コア粒子はシェル部で完全に被覆されていなくてもよい。
【0129】
ゴム成分は、コア-シェル型ゴム粒子中に、40質量%以上含有することが好ましく、50質量%以上含有することがより好ましく、60質量%以上含有することがさらに好ましい。コア-シェル型ゴム粒子中のゴム成分の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、コア粒子をシェル部で十分に被覆する観点から、例えば、95質量%以下、90質量%であることが好ましい。
【0130】
コア-シェル型ゴム粒子のシェル部を形成するモノマー成分は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸;N-メチルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のN-置換マレイミド;マレイミド;マレイン酸、イタコン酸等のα,β-不飽和カルボン酸;スチレン、4-ビニルトルエン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリロニトリル等を含み、中でも、(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸メチルを含むことがより好ましい。
【0131】
コア-シェル型ゴム粒子の市販品としては、例えば、チェイルインダストリーズ社製の「CHT」;UMGABS社製の「B602」;ダウ・ケミカル日本社製の「パラロイドEXL-2602」、「パラロイドEXL-2603」、「パラロイドEXL-2655」、「パラロイドEXL-2311」、「パラロイド-EXL2313」、「パラロイドEXL-2315」、「パラロイドKM-330」、「パラロイドKM-336P」、「パラロイドKCZ-201」、三菱レイヨン社製の「メタブレンC-223A」、「メタブレンE-901」、「メタブレンS-2001」、「メタブレンW-450A」「メタブレンSRK-200」、カネカ社製の「カネエースM-511」、「カネエースM-600」、「カネエースM-400」、「カネエースM-580」、「カネエースMR-01」等が挙げられる。
【0132】
(G)有機充填材は、(A)エポキシ樹脂中分散物であってもよい。(G)有機充填材の(A)エポキシ樹脂中分散物は、(A)エポキシ樹脂中に(G)有機充填材が一次粒子の状態で分散しているものであり得る。(G)有機充填材の(A)エポキシ樹脂中分散物において、(G)有機充填材の含有量は10~40重量%が好ましい。
【0133】
(G)有機充填材の(A)エポキシ樹脂中分散物の市販品としては、例えば、ゴム状コアシェルポリマー変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂として市販されているカネカ社製カネエース「MX120」、「MX125」、「MX130」(ゴム状コアシェルポリマー(ゴム粒子コアがスチレン-ブタジエン共重合物)を25重量%含有)、MX960」、MX965」(シリコーンゴム(ゴム粒子コアがポリジメチルシロキサン等)からなるゴム状コアシェルポリマーを25重量%含有)、クレハトレーディング社製の「RKB-3040」(ゴム状コアシェルポリマー(ゴム粒子コアがブタジエンゴム)を29重量%含有)、「RKB-3040H」(ゴム状コアシェルポリマー(ゴム粒子コアがブタジエンゴム)を25重量%含有)等が挙げられる。
【0134】
(G)有機充填材の平均粒径(平均一次粒子径)は、特に限定されるものではないが、好ましくは20nm以上、より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは50nm以上である。(G)有機充填材の平均粒径(平均一次粒子径)の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは5,000nm以下、より好ましくは2,000nm以下、さらに好ましくは1,000nm以下である。(G)有機充填材の平均粒径(平均一次粒子径)は、ゼータ電位粒度分布測定装置等を用いて測定できる。
【0135】
樹脂組成物中の(G)有機充填材の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。樹脂組成物中の(G)有機充填材の含有量の下限は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、例えば、0質量%以上、0.01質量%以上、0.1質量%以上、1質量%以上、1.5質量%以上であり得る。
【0136】
<(H)その他の添加剤>
本発明の樹脂組成物は、不揮発性成分として、さらに任意の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、イミダゾール系硬化剤等のチオール化合物以外の硬化剤;フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂;有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シロキサン等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;シランカップリング剤、トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤等が挙げられる。添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。(H)その他の添加剤の含有量は当業者であれば適宜設定できる。
【0137】
<(I)有機溶剤>
本発明の樹脂組成物は、上述した不揮発性成分以外に、揮発性成分として、さらに任意の有機溶剤を含有する場合がある。(I)有機溶剤としては、不揮発性成分の少なくとも一部を溶解可能なものである限り、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されるものではない。(I)有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。(I)有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。(I)有機溶剤は、使用する場合、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。(I)有機溶剤は、量が少ないほど好ましく(例えば樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合3質量%以下、1質量%以下、0.5質量%以下、0.1質量%以下、0.01質量%以下)、含まないこと(0質量%)が特に好ましい。
【0138】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物は、例えば、任意の調製容器に(A)エポキシ樹脂、(B)チオール化合物、(C)磁性粉体、必要に応じて(D)安定剤、必要に応じて(E)分散剤、必要に応じて(F)硬化促進剤、必要に応じて(G)有機充填材、必要に応じて(H)その他の添加剤、及び必要に応じて(I)有機溶剤を、任意の順で及び/又は一部若しくは全部同時に加えて混合することによって、製造することができる。また、各成分を加えて混合する過程で、温度を適宜設定することができ、一時的に又は終始にわたって、加熱及び/又は冷却してもよい。また、各成分を加えて混合する過程において、撹拌又は振盪を行ってもよい。また、加えて混合する際に又はその後に、樹脂組成物を、例えば、ミキサーなどの撹拌装置又は振盪装置を用いて撹拌又は振盪し、均一に分散させてもよい。また、撹拌又は振盪と同時に、真空下等の低圧条件下で脱泡を行ってもよい。混合温度は、例えば、10~40℃であり得る。混合時の撹拌速度は、例えば、100~10000rpmであり得る。混合時間は、例えば、10秒から10分であり得る。
【0139】
<樹脂組成物の特性>
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)チオール化合物、及び(C)磁性粉体を含み、樹脂組成物の硬化物の25℃における弾性率が500MPa以下であり、且つ破断点伸度が30%以上であることから、耐衝撃性に優れた硬化物を得ることができる。耐衝撃性は、例えば、下記試験例5の方法により評価することができる。
【0140】
本発明の樹脂組成物の硬化物は、25℃における弾性率が、500MPa以下である。一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物の25℃における弾性率は、耐衝撃性をさらに向上させる観点から、好ましくは450MPa以下、400MPa以下、より好ましくは350MPa以下、300MPa以下、さらに好ましくは250MPa以下、200MPa以下、特に好ましくは150MPa以下、100MPa以下であり得る。弾性率は、例えば、下記試験例1の方法により測定することができる。なお、弾性率については、配合成分の選択やその含有量を変更することにより所望の弾性率に制御できることが知られている。
【0141】
本発明の樹脂組成物の硬化物は、25℃における破断点伸度が、30%以上である。一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物の25℃における破断点伸度は、耐衝撃性をさらに向上させる観点から、好ましくは35%以上、40%以上、より好ましくは45%以上、50%以上、さらに好ましくは55%以上、60%以上、特に好ましくは65%以上、70%以上であり得る。破断点伸度は、例えば、下記試験例2の方法により測定することができる。なお、破断点伸度については、配合成分の選択やその含有量を変更することにより所望の破断点伸度に制御できることが知られている。
【0142】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の硬化物の23℃における比透磁率(μ’)(測定周波数100MHz)は、好ましくは1以上、より好ましくは1.3以上、さらに好ましくは1.6以上、特に好ましくは2以上であり得る。比透磁率は、例えば、下記試験例3の方法により測定することができる。
【0143】
一実施形態において、本発明の樹脂組成物の25℃における粘度は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.001Pa・s以上、より好ましくは0.01Pa・s以上、さらに好ましくは0.1Pa・s以上、さらにより好ましくは1Pa・s以上、特に好ましくは10Pa・s以上であり得る。本発明の樹脂組成物の25℃における粘度の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは1000Pa・s以上、より好ましくは500Pa・s以上、さらに好ましくは100Pa・s以上、特に好ましくは50Pa・s以上であり得る。粘度は、例えば、下記試験例4の方法により測定することができる。
【0144】
示差走査熱量測定に基づく反応ピーク温度は、好ましくは150℃以下、140℃以下、より好ましくは130℃以下、120℃以下、さらに好ましくは110℃以下、100℃以下、特に好ましくは95℃以下、90℃以下、85℃以下又は80℃以下であり得る。このような範囲であることにより、比較的低温で樹脂組成物を硬化できるため、磁力の低下を抑制することができる。反応ピーク温度の下限としては、例えば、50℃以上等であり得る。ここで、示差走査熱量測定に基づく反応ピーク温度は、5℃/分の昇温速度、25℃~300℃の温度範囲で示差走査熱量測定を行った場合に得られる示差走査熱量曲線(DSC曲線)の最も低温側に位置するピークトップを示す温度である。
【0145】
本発明の樹脂組成物の硬化温度は、例えば、示差走査熱量測定(DSC)に基づく樹脂組成物の反応開始温度又は反応ピーク温度を参照して、硬化反応を十分に行うことができると判断される温度に設定すればよい。一実施形態において、本発明の樹脂組成物は比較的低温で硬化できることから、本発明の樹脂組成物の硬化温度は、例えば180℃以下、好ましくは150℃以下、140℃以下、より好ましくは130℃以下、120℃以下、さらに好ましくは110℃以下、100℃以下、特に好ましくは95℃以下、90℃以下であり得る。なお、硬化温度は、磁力の低下をより抑制するために低い温度であるほど好ましい。硬化温度の下限としては、例えば、50℃以上、60℃以上、70℃以上等であり得る。上記の硬化温度において、硬化時間は、例えば、10分以上、20分以上等に設定できる。硬化時間の上限は、60分以下等に設定できる。
【0146】
<樹脂組成物の用途>
本発明の樹脂組成物は、様々な半導体装置(例えば、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット型デバイス、ウェラブルデバイス、デジタルカメラ、医療機器、及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等)における様々な電子部品において使用することができ、例えば、接着剤、注型剤、シーリング剤、封止剤、繊維強化用樹脂、コーティング剤、塗料等として好適に使用することができ、中でも、接着剤又は封止剤として特に好適に使用することができる。
【0147】
特に、本発明の樹脂組成物は、磁石の磁気損失を抑制することができるため、磁石を搭載した電子部品において好適に使用することができ、例えば、被着体として磁石を接着する用途(特に、被着体として磁石と他の部材とを接着する用途);磁石以外の部材同士を接着する用途(特に、被着体として磁石以外の構成部材同士を接着する用途);磁石含有部品搭載後の電子部品の接着工程における用途等に好適である。
【0148】
ここで、磁石は、特に限定されるものではないが、例えば、フェライト磁石、アルニコ磁石、希土類磁石(特にネオジウム磁石)等の公知の永久磁石であり得る。また、ネオジウム磁石は加熱されると収縮し、冷却されると膨張するという傾向が強いことで知られているが、本発明の樹脂組成物は、一実施形態においてネオジウム磁石に対する優れた接着力を有し得るため、被着体としてネオジウム磁石を接着するための接着剤に特に好適であり得る。
【0149】
磁石を搭載した電子部品としては、例えば、モーター、特に、ネオジウム磁石含有モーターを含む電子部品であり得る。本発明の樹脂組成物は、ネオジウム磁石含有モーターを搭載した電子部品用の接着剤、特に、ネオジウム磁石含有モーターにおける磁石と筐体とを接着するための接着剤として使用することができる。
【0150】
本発明の樹脂組成物は、最終的に硬化して使用するため、本発明の樹脂組成物を使用した電子部品は、本発明の樹脂組成物の硬化物を含み得、特定の実施形態においては、ネオジウム磁石含有モーター、及び本発明の樹脂組成物の硬化物を含み得る。また、本発明の樹脂組成物を使用したネオジウム磁石含有モーターは、本発明の樹脂組成物の硬化物を含み得る。
【実施例
【0151】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。特に温度の指定が無い場合の温度条件は、室温(25℃)である。
【0152】
まず、下記で示す表1の配合組成で各成分を混合し、実施例1~11及び比較例1~4の樹脂組成物を調製した。詳細は以下のとおりである。
【0153】
<実施例1>
専用のプラスチック容器に、柔軟性骨格含有エポキシ樹脂(DIC社製「EXA-4850-150」、エポキシ当量450g/eq)60部、ブタジエンゴム粒子エポキシ樹脂中分散物(クレハトレーディング社製「RKB-3040H」、ビスフェノールA型/F型エポキシ樹脂(ゴム状コアシェルポリマー(コアがブタジエンゴム)25%分散)、エポキシ当量223g/eq)40部、カルボン酸エステル構造含有チオール化合物(淀化学工業社製「TMTP」、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、チオール当量140g/eq)39部、磁性粉体(パウダーテック社製「M05SWD」)110部、安定剤(東京化成社製「TEB」、トリエチルボレート)0.8部、分散剤(日油社製「SC-1015F」)1.1部、アミンエポキシアダクト系硬化促進剤(味の素ファインテクノ社製「PN-FJ」)14部の各材料を量り取った。
【0154】
その後、自転・公転ミキサーあわとり錬太郎(シンキー社製;ARE-310)を用い、室温25℃にて2000rpmで充分混合し(スパチュラで磁性粉が十分分散混合されているのを確認。混合時間は約30秒~約1分)、さらに共立精機社製の自動公転式攪拌脱泡機「HM-200W」で真空下(圧力0に設定)、1000rpm、2分間脱泡し、樹脂組成物を得た。
【0155】
<実施例2>
柔軟性骨格含有エポキシ樹脂(DIC社製「EXA-4850-150」)60部の代わりに、柔軟性骨格含有エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX-7400」、エポキシ当量440g/eq)60部を使用し、カルボン酸エステル構造含有チオール化合物(淀化学工業社製「TMTP」)の使用量を39部から40部に変更し、磁性粉体(パウダーテック社製「M05SWD」)の使用量を110部から120部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0156】
<実施例3>
柔軟性骨格含有エポキシ樹脂(DIC社製「EXA-4850-150」)の使用量を60部から100部に変更し、ブタジエンゴム粒子エポキシ樹脂中分散物(クレハトレーディング社製「RKB-3040H」)40部を使用せず、カルボン酸エステル構造含有チオール化合物(淀化学工業社製「TMTP」)の使用量を39部から28部に変更し、磁性粉体(パウダーテック社製「M05SWD」)の使用量を110部から105部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0157】
<実施例4>
磁性粉体(パウダーテック社製「M05SWD」)110部の代わりに、磁性粉体(エプソンアトミックス社製「AW2―08PF3F」)110部を使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0158】
<実施例5>
磁性粉体(パウダーテック社製「M05SWD」)の使用量を110部から155部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0159】
<実施例6>
磁性粉体(パウダーテック社製「M05SWD」)の使用量を110部から268部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0160】
<実施例7>
磁性粉体(パウダーテック社製「M05SWD」)の使用量を110部から416部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0161】
<実施例8>
カルボン酸エステル構造含有チオール化合物(淀化学工業社製「TMTP」)39部の代わりに、イソシアヌレート構造含有チオール化合物(味の素ファインテクノ社製「TMPIC」、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート、チオール当量117g/eq)38部を使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0162】
<実施例9>
カルボン酸エステル構造含有チオール化合物(淀化学工業社製「TMTP」)39部の代わりに、カルボン酸エステル構造含有チオール化合物(昭和電工社製「PE-1」、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、チオール当量136g/eq)33部を使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0163】
<実施例10>
分散剤(日油社製「SC-1015F」)1.1部の代わりに、分散剤(味の素ファインテクノ社製「PB-821」)1.1部を使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0164】
<実施例11>
分散剤(日油社製「SC-1015F」)1.1部を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0165】
<比較例1>
カルボン酸エステル構造含有チオール化合物(淀化学工業社製「TMTP」)39部の代わりに、ポリアミン(T&K TOKA社製「FXR-1081」)15部を使用し、磁性粉体(パウダーテック社製「M05SWD」)の使用量を110部から90部に変更した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0166】
<比較例2>
カルボン酸エステル構造含有チオール化合物(淀化学工業社製「TMTP」)39部の代わりに、アリル基含有フェノール(明和化成社製「MEH-8000H」、水酸基当量141g/eq)39部を使用し、磁性粉体(パウダーテック社製「M05SWD」)の使用量を110部から111部に変更し、安定剤(東京化成社製「TEB」、トリエチルボレート)0.8部及び分散剤(日油社製「SC-1015F」)1.1部を使用せず、アミンエポキシアダクト系硬化促進剤(味の素ファインテクノ社製「PN-FJ」)14部の代わりに、リン系硬化促進剤(北興化学社製「TBP-DA」、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩)0.4部を使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0167】
<比較例3>
カルボン酸エステル構造含有チオール化合物(淀化学工業社製「TMTP」)39部の代わりに、フェノールノボラック型シアネートエステル(Ronza社製「PT-30」、シアネートの官能基等量124g/eq)35部を使用し、磁性粉体(パウダーテック社製「M05SWD」)の使用量を110部から105部に変更し、安定剤(東京化成社製「TEB」、トリエチルボレート)0.8部及び分散剤(日油社製「SC-1015F」)1.1部を使用せず、アミンエポキシアダクト系硬化促進剤(味の素ファインテクノ社製「PN-FJ」)14部の代わりに、金属系硬化促進剤(東京化成社製、アセチルアセトンマンガン(III)(トリス(2,4-ペンタンジオナト)マンガン(III)))0.4部を使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0168】
<比較例4>
カルボン酸エステル構造含有チオール化合物(淀化学工業社製「TMTP」)39部を使用せず、磁性粉体(パウダーテック社製「M05SWD」)の使用量を110部から79部に変更し、安定剤(東京化成社製「TEB」、トリエチルボレート)0.8部及び分散剤(日油社製「SC-1015F」)1.1部を使用せず、アミンエポキシアダクト系硬化促進剤(味の素ファインテクノ社製「PN-FJ」)14部の代わりに、リン系硬化促進剤(北興化学社製「TBP-DA」、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩)2部を使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0169】
<試験例1:弾性率の測定>
実施例及び比較例で得られた各樹脂組成物を、離型PETフィルム(NS-80A:東レ社製)上にバーコートを用いて塗布し、それぞれ加熱し(反応ピーク温度±30℃の硬化温度且つ30分以上の硬化時間に設定(以下同様):実施例1~11は80℃で30分間、比較例1は100℃で30分間、比較例2は180℃で60分間、比較例3は200℃で120分間、比較例4は150℃で60分間)、硬化物を得た。得られた厚みが100μmの硬化物を、ダンベル(商品名「スーパーダンベルカッター(型式:SDMK-5889-01)」、ダンベル社製)で打ち抜き、引張強度測定用試験片を作製した。試験片から、PETフィルムを剥離した。温度25℃、湿度50%、引っ張り速度5mm/分の条件で、テンシロン万能試験機(オリエンテック社製、RTM-500)を用いて引っ張り試験を行い、弾性率(MPa)を測定した。
【0170】
なお、各実施例については、硬化前と硬化後についてDSC(示差走査熱量)を測定し、硬化後の硬化物において硬化前に存在していた硬化反応温度における示差走査熱量曲線(DSC曲線)のピーク(60℃~90℃付近のピーク)が現れないことを確認した。DSCは、示差走査熱量計(DSC7000X、日立ハイテク社製)を用い、25℃から300℃まで5℃/分にて昇温を行い測定した。実施例1~11何れにおいても反応ピーク温度が、90℃以下であった。図1は、実施例1で得られた樹脂組成物の硬化前と硬化後の示差走査熱量曲線(DSC曲線)を示すDSCチャートである。図1においては、実線が硬化前を示し、破線が硬化後を示す。
【0171】
<試験例2:破断点伸度の測定>
実施例及び比較例で得られた各樹脂組成物を、離型PETフィルム(NS-80A:東レ社製)上にバーコートを用いて塗布し、それぞれ加熱し(実施例1~11は80℃で30分間、比較例1は100℃で30分間、比較例2は180℃で60分間、比較例3は200℃で120分間、比較例4は150℃で60分間)、硬化物を得た。得られた厚みが100μmの硬化物を、ダンベル(商品名「スーパーダンベルカッター(型式:SDMK-5889-01)」、ダンベル社製)で打ち抜き、引張強度測定用試験片を作製した。試験片から、PETフィルムを剥離した。温度25℃、湿度50%、引っ張り速度5mm/分の条件で、テンシロン万能試験機(オリエンテック社製、RTM-500)を用いて引っ張り試験を行い、破断点伸度(%)を測定した。
【0172】
<試験例3:比透磁率の測定>
実施例及び比較例で得られた各樹脂組成物を、離型PETフィルム(NS-80A:東レ社製)上にバーコートを用いて塗布し、それぞれ加熱し(実施例1~11は80℃で30分間、比較例1は100℃で30分間、比較例2は180℃で60分間、比較例3は200℃で120分間、比較例4は150℃で60分間)、硬化物を得た。試験片から、PETフィルムを剥離した。得られた厚みが400μmの硬化物を、幅10mm、長さ30mmの試験片に切断し、測定用試験片を作製した。この評価サンプルを、アジレントテクノロジーズ(Agilent Technologies社製、「HP8362B」)を用いて、短絡ストリップライン法にて測定周波数を0.1MHzから500MHzの範囲とし、室温23℃にて比透磁率(μ’)を測定した。下記表1に示す比透磁率は、測定周波数が100MHzである場合の比透磁率(μ’)である。
【0173】
<試験例4:粘度の測定>
実施例及び比較例で得られた各樹脂組成物の温度を25℃(±2℃)に保ち、E型粘度計(東機産業社製「RE-85U」、3°×R9.7ロータ)を用いて、測定サンプル0.22ml、回転数20rpmの測定条件にて粘度(Pa・s)を測定した。
【0174】
<試験例5:耐衝撃性の評価>
60mm×100mmに裁断した厚さ4mmのフッ素ゴム版(アズワン社製)をさらに半分に裁断し、二枚のうち一枚の中心に10mm×80mmの長方形をくり抜いた。くり抜いた内側に離型剤DAIFREE(GA-9700、ダイキン工業株式会社製)を噴霧し、硬化条件温度で30分間加熱した。
【0175】
加熱したフッ素ゴム版を恒温槽から取り出し冷却した後、二枚のフッ素ゴム版を重ね、周囲をクリップで留め、長方形のくぼみに、実施例及び比較例で得られた各樹脂組成物を表面が平らになるように流し込み、それぞれ加熱し(実施例1~11は80℃で30分間、比較例1は100℃で30分間、比較例2と比較例3は180℃で60分間、比較例4は200℃で60分間)、硬化させた。
【0176】
恒温槽から取り出し冷却した後型枠から硬化物を取り外し、10mm×80mm×4mmの試験片を得た。この試験片をアイゾット衝撃試験機(株式会社オリエンテック社製)の固定部に30mm挿入し、固定部から45mmの位置でハンマーにより打撃して試験片の破壊・非破壊を確認した。試験片と衝撃試験片固定部の隙間は接着しない。また試験片には切り込み(ノッチ)は施していない。
【0177】
耐衝撃性試験(N=3)の結果を、各回それぞれ非破壊の場合を「○」、破壊した場合を「×」と評価し、最終判定として、3回中、3回とも非破壊であったものを「◎」、2回非破壊であったものを「〇」、1回のみ非破壊であったものを「△」、3回とも破壊したものを「×」とした。
【0178】
実施例及び比較例の樹脂組成物の不揮発成分及びその使用量、並びに試験例の測定結果及び評価結果を下記表1に示す。
【0179】
【表1】
【0180】
<評価結果の考察>
実施例1~11の樹脂組成物からは、比較例1~4の樹脂組成物と比べて耐衝撃性に優れた硬化物が得られた。詳細には、チオール化合物を用いた実施例1~11では、弾性率が低く抑えられ、高い破断点伸度を示しており、耐衝撃性に優れていることがわかった。また、他の硬化剤を利用した比較例1~3やエポキシ樹脂の単独重合系である比較例4においては弾性率及び破断点伸度が悪化しており、耐衝撃性に対して有効でないことが確認された。
図1