(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】コンデンサ及びマイクロフォン
(51)【国際特許分類】
H04R 19/04 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
H04R19/04
(21)【出願番号】P 2020057328
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】山内 愼吾
【審査官】金子 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-139559(JP,A)
【文献】特開2000-199727(JP,A)
【文献】特開2007-267273(JP,A)
【文献】実開平06-018940(JP,U)
【文献】特開2001-086596(JP,A)
【文献】特開2000-165999(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0272992(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた第1導電膜と、
前記基板及び前記第1導電膜上に設けられた絶縁膜と、
前記絶縁膜の上方に空洞を介して配置され振動フィルムと、
前記振動フィルムの前記基板側の主面上に設けられた第2導電膜と、
前記第1導電膜を囲み、前記絶縁膜と前記振動フィルムとを接着し、前記第2導電膜に電気的に接続された導電性シール材と、
を具備するコンデンサ。
【請求項2】
前記基板上に設けられ、前記第1導電膜に電気的に接続された第1端子と、
前記基板上に設けられ、前記導電性シール材に電気的に接続された第2端子と、
をさらに具備する請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
前記導電性シール材は、接着材と、前記接着材に混入された複数の導電性粒子とを含む
請求項1又は2に記載のコンデンサ。
【請求項4】
前記導電性シール材は、開口部を有する
請求項1乃至3のいずれかに記載のコンデンサ。
【請求項5】
基板と、
前記基板上に設けられた第1導電膜と、
前記基板及び前記第1導電膜上に設けられた絶縁膜と、
前記絶縁膜の上方に空洞を介して配置され振動フィルムと、
前記振動フィルムの前記基板側の主面上に設けられた第2導電膜と、
前記第1導電膜を囲み、前記絶縁膜と前記振動フィルムとを接着する絶縁性シール材と、
を具備するコンデンサ。
【請求項6】
前記基板上に設けられ、前記第1導電膜に電気的に接続された第1端子と、
前記振動フィルム上に設けられ、前記第2導電膜に電気的に接続された接続電極と、
前記基板上に設けられた第2端子と、
前記接続電極と前記第2端子とを接続するコンタクトと、
をさらに具備する請求項5に記載のコンデンサ。
【請求項7】
前記絶縁膜と前記第2導電膜との間に設けられたスペーサをさらに具備する請求項1乃至6のいずれかに記載のコンデンサ。
【請求項8】
前記スペーサは、前記第1導電膜の外周と同じ平面形状を有する
請求項7に記載のコンデンサ。
【請求項9】
前記スペーサは、開口部を有する
請求項7又は8に記載のコンデンサ。
【請求項10】
前記基板は、ガラス、又はガラスエポキシで構成される
請求項1乃至9のいずれかに記載のコンデンサ。
【請求項11】
前記振動フィルムは、ポリイミド、ポリプロピレン、又は液晶ポリマーで構成される
請求項1乃至10のいずれかに記載のコンデンサ。
【請求項12】
前記第1導電膜及び前記第2導電膜は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、又はモリブデン(Mo)を含む
請求項1乃至11のいずれかに記載のコンデンサ。
【請求項13】
前記請求項1乃至12のいずれかに記載のコンデンサで構成されたマイクロフォン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサ、及びコンデンサを用いたマイクロフォンに関する。
【背景技術】
【0002】
コンデンサ型マイクロフォンが知られている。コンデンサ型マイクロフォンには、主として、ECM(Electret Condenser Microphone)と、MEMS(Micro-Electro-Mechanical System:微小電気機械システム)を用いたマイクロフォン(MEMSマイクロフォン)とがある。
【0003】
ECMは、検出用電極をスペーサ等を利用して機械的に振動板へ接近させて固定させるため、固定用部品の形状公差や高度な組み付け作業が要求される。
【0004】
MEMSマイクロフォンは、シリコンなどの半導体基板上に半導体プロセスを用いてコンデンサ(振動板及び検出用電極を含む)を作成するため、素子構造や加工方法自体が複雑になりやすい。また、半導体プロセス上の加工バラツキによって振動板の厚さや応力などのバラツキが発生するため、各個体間のコンデンサ特性の均一化が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3375284号公報
【文献】特許第5513813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、コストを低減することが可能なコンデンサ及びマイクロフォンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るコンデンサは、基板と、前記基板上に設けられた第1導電膜と、前記基板及び前記第1導電膜上に設けられた絶縁膜と、前記絶縁膜の上方に空洞を介して配置され振動フィルムと、前記振動フィルムの前記基板側の主面上に設けられた第2導電膜と、前記第1導電膜を囲み、前記絶縁膜と前記振動フィルムとを接着し、前記第2導電膜に電気的に接続された導電性シール材とを具備する。
【0008】
本発明の一態様に係るコンデンサは、基板と、前記基板上に設けられた第1導電膜と、前記基板及び前記第1導電膜上に設けられた絶縁膜と、前記絶縁膜の上方に空洞を介して配置され振動フィルムと、前記振動フィルムの前記基板側の主面上に設けられた第2導電膜と、前記第1導電膜を囲み、前記絶縁膜と前記振動フィルムとを接着する絶縁性シール材とを具備する。
【0009】
本発明の一態様に係るマイクロフォンは、上記いずれか態様に係るコンデンサで構成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コストを低減することが可能なコンデンサ及びマイクロフォンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るマイクロフォンの平面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したA-A´線に沿ったマイクロフォンの断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示したB-B´線に沿ったマイクロフォンの断面図である。
【
図4】
図4は、基板側の構成を説明する平面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示したA-A´線に沿った基板側の構成を説明する断面図である。
【
図6】
図6は、振動フィルム側の構成を説明する平面図である。
【
図7】
図7は、
図6に示したA-A´線に沿った振動フィルム側の構成を説明する断面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る製造工程を説明する断面図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態に係る製造工程を説明する平面図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態に係る製造工程を説明する断面図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態に係る製造工程を説明する断面図である。
【
図12】
図12は、第1実施形態に係る製造工程を説明する断面図である。
【
図13】
図13は、第1実施形態に係る製造工程を説明する平面図である。
【
図14】
図14は、第1実施形態に係る製造工程を説明する断面図である。
【
図15】
図15は、第1実施形態に係る製造工程を説明する平面図である。
【
図16】
図16は、第1実施形態に係る製造工程を説明する断面図である。
【
図17】
図17は、第1実施形態に係る製造工程を説明する断面図である。
【
図18】
図18は、第1実施形態に係る製造工程を説明する断面図である。
【
図19】
図19は、第1実施形態に係る製造工程を説明する断面図である。
【
図20】
図20は、第2実施形態に係るマイクロフォンの平面図である。
【
図23】
図23は、第2実施形態に係る製造工程を説明する平面図である。
【
図24】
図24は、第2実施形態に係る製造工程を説明する断面図である。
【
図25】
図25は、第2実施形態に係る製造工程を説明する平面図である。
【
図26】
図26は、第2実施形態に係る製造工程を説明する断面図である。
【
図27】
図27は、第2実施形態に係る製造工程を説明する断面図である。
【
図28】
図28は、第3実施形態に係るマイクロフォンの平面図である。
【
図30】
図30は、第4実施形態に係るマイクロフォンの平面図である。
【
図34】
図34は、振動フィルム側の構成を説明する平面図である。
【
図35】
図35は、
図34に示したC-C´線に沿った振動フィルム側の構成を説明する断面図である。
【
図36】
図36は、第4実施形態に係る製造工程を説明する平面図である。
【
図37】
図37は、第4実施形態に係る製造工程を説明する断面図である。
【
図38】
図38は、第4実施形態に係る製造工程を説明する平面図である。
【
図39】
図39は、第4実施形態に係る製造工程を説明する断面図である。
【
図40】
図40は、第4実施形態に係る製造工程を説明する平面図である。
【
図41】
図41は、第4実施形態に係る製造工程を説明する断面図である。
【
図42】
図42は、第4実施形態に係る製造工程を説明する平面図である。
【
図43】
図43は、第4実施形態に係る製造工程を説明する断面図である。
【
図44】
図44は、第4実施形態に係る製造工程を説明する断面図である。
【
図45】
図45は、第5実施形態に係るスピーカーモジュールのブロック図である。
【
図46】
図46は、スピーカーに印加される電圧の一例を説明する図である。
【
図47】
図47は、第6実施形態に係るスピーカーの平面図である。
【
図49】
図49は、スピーカーモジュールのブロック図である。
【
図50】
図50は、スピーカーに印加される電圧の一例を説明する図である。
【
図51】
図51は、第7実施形態に係る振動センサーの平面図である。
【
図53】
図53は、振動センサーモジュールのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法および比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、図面の相互間で同じ部分を表す場合においても、互いの寸法の関係や比率が異なって表される場合もある。特に、以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0013】
[1] 第1実施形態
第1実施形態は、コンデンサの構成例、及びコンデンサを用いた装置の構成例である。具体的には、第1実施形態は、コンデンサを用いたマイクロフォン(コンデンサマイクロフォン)の構成例である。また、第1実施形態は、MEMSを用いたマイクロフォン(MEMSマイクロフォン)の構成例である。
【0014】
[1-1] マイクロフォン1の構成
図1は、第1実施形態に係るマイクロフォン1の平面図である。
図2は、
図1に示したA-A´線に沿ったマイクロフォン1の断面図である。
図3は、
図1に示したB-B´線に沿ったマイクロフォン1の断面図である。
【0015】
まず、基板10側の構成について説明する。
図4は、基板10側の構成を説明する平面図である。
図5は、
図4に示したA-A´線に沿った基板10側の構成を説明する断面図である。
【0016】
基板10は、音波によって変形しない強度を有する。基板10は、固定基板とも呼ばれる。基板10としては、ガラス、又はガラスエポキシなどが用いられる。基板10は、例えば四角形である。
【0017】
基板10上には、固定電極としての導電膜11が設けられる。導電膜11としては、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、又はモリブデン(Mo)などが用いられる。導電膜11は、例えば円形である。導電膜11は、バックプレート電極とも呼ばれる。
【0018】
基板10上には、導電膜11に電気的に接続された端子12が設けられる。端子12は、導電膜11からX方向に引き出される。基板10上には、振動フィルム20側の振動電極を引き出すための端子13が設けられる。端子13は、X方向に延びる。端子12、13は、導電膜11と同じ材料で構成される。なお、
図1の例では、端子12、13は、端部において、Y方向にさら延びるように構成される。端子12、13は、マイクロフォン1を外部機器と電気的に接続するために使用される。
【0019】
基板10、導電膜11、及び端子12、13上には、絶縁膜14が設けられる。絶縁膜14は、基板10側の固定電極と、振動フィルム20側の振動電極とが電気的に接続されるのを防ぐ機能を有する。絶縁膜14としては、シリコン窒化物(SiN)、又はシリコン酸化物(SiO2)などが用いられる。
【0020】
絶縁膜14は、開口部15、16、17を有する。開口部15は、端子13の一端を露出する。開口部17は、端子13の他端を露出する。開口部16は、端子12の一端を露出する。端子12は、開口部16を介して、外部機器と電気的に接続される。端子13は、開口部17を介して、外部機器と電気的に接続される。
【0021】
次に、振動フィルム20の構成について説明する。
図6は、振動フィルム20側の構成を説明する平面図である。
図7は、
図6に示したA-A´線に沿った振動フィルム20側の構成を説明する断面図である。
図6及び
図7は、振動フィルム20を、Y方向(X方向に直交する方向)を基準にして
図1の状態から180度回転させた様子を示している。
【0022】
絶縁膜14の上方には、空洞24を介して、振動フィルム20が設けられる。振動フィルム20は、物理的な力によって変形する材料で構成され、また、音波によって振動する機能を有する。振動フィルム20としては、ポリイミド、ポリプロピレン、又は液晶ポリマーなどが用いられる。振動フィルム20上(すなわち、振動フィルム20の基板10側の主面上)には、振動電極としての導電膜21が設けられる。導電膜21としては、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、又はモリブデン(Mo)などが用いられる。導電膜21は、例えば円形である。導電膜21は、メンブレン電極とも呼ばれる。
【0023】
振動フィルム20上には、導電膜21に電気的に接続された接続電極22が設けられる。接続電極22は、導電膜21からY方向に延びる。接続電極22は、導電膜21と同じ材料で構成される。
【0024】
基板10(具体的には、絶縁膜14)と振動フィルム20とは、導電性シール材23によって接着される。導電性シール材23は、例えば、円環形(中空円形)である。導電性シール材23は、導電膜11、21を囲むように構成される。導電性シール材23の内円のサイズは、導電膜11、21のサイズより若干大きい。
【0025】
導電性シール材23は、絶縁膜14に接するとともに、開口部15を介して端子13に接する。また、導電性シール材23は、振動フィルム20に接するとともに、接続電極22に接する。これにより、導電膜21は、接続電極22及び導電性シール材23を経由して、端子13に電気的に接続される。
【0026】
導電性シール材23によって囲まれた領域が空洞24となる。導電性シール材23は、空洞24のギャップを規定するスペーサとしても機能する。導電性シール材23は、接着材と、接着材に混入された複数の導電性粒子とで構成される。導電性粒子は、例えば球状の基材を(金など)で被覆して構成される。導電性粒子は、導電性シール材23に導電性を付与する機能と、空洞24のギャップを調整するギャップ材としての機能を有する。
【0027】
図3に示すように、振動フィルム20のX方向におけるサイズは、基板10のX方向におけるサイズより小さい。開口部16及び端子12は、振動フィルム20から露出される。
【0028】
[1-2] 動作
次に、上記のように構成されたマイクロフォン1の動作について説明する。
【0029】
端子13、12には、バイアス電圧は発生するバイアス回路(図示せず)と、検出回路(図示せず)とが接続される。導電膜11と導電膜21とには、端子13、12を介して、バイアス電圧(直流電圧)が印加される。
【0030】
振動フィルム20側に設けられた導電膜21とは、振動フィルム20に印加される音圧に応じて振動する。すると、導電膜11と導電膜21とで構成される平行平板キャパシタ(平行平板コンデンサ)の静電容量が変化する。検出回路は、容量変化に比例した電圧変化を検出することにより、音を検出する。
【0031】
[1-3] 製造方法
次に、マイクロフォン1の製造方法について説明する。なお、以下の説明では、1個のマイクロフォン1を抽出して説明する。実際には、複数のマイクロフォン1が同一基板上に行列状に形成され、最終的に複数のマイクロフォン1が各小片に分離される。
【0032】
図8に示すように、基板10上に、導電膜11aを蒸着する。続いて、
図9及び
図10に示すように、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、導電膜11aを加工し、導電膜11、及び端子12、13を形成する。
【0033】
続いて、
図11に示すように、基板10、導電膜11、及び端子12、13上に、絶縁膜14を蒸着する。
【0034】
続いて、
図4及び
図5に示すように、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、絶縁膜14を加工し、開口部15、16、17を形成する。開口部15は、端子13の一端を露出する。開口部17は、端子13の他端を露出する。開口部16は、端子12の一端を露出する。
【0035】
続いて、
図12に示すように、振動フィルム20上に、導電膜21aを蒸着する。続いて、
図13及び
図14に示すように、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、導電膜21aを加工し、導電膜21、及び接続電極22を形成する。
【0036】
続いて、
図15及び
図16に示すように、形状のひずみ等を抑制するために、固定用プレート30上に、振動フィルム20を吸着させ又は仮接着し、振動フィルム20を固定する。
【0037】
続いて、スクリーン印刷、又はディスペンサでの塗布により、振動フィルム20及び接続電極22上に、円環形の導電性シール材23を形成する。
【0038】
続いて、
図17に示すように、導電性シール材23上に、基板10を圧着する。空洞24のギャップは、導電性シール材23に含まれるギャップ材(導電性粒子)、及び/又は印加圧力などの条件に依存する。
【0039】
続いて、同一基板上に形成された複数のマイクロフォン1を各小片に分離する。
図18は、同一基板に形成された複数のマイクロフォン1を示している。
図18に示すように、基板10に、ダイヤモンドカッターなどで分離用の切り込み31を形成する。続いて、振動フィルム20に、レーザー(YAGレーザー、又はCO
2レーザーなど)などで分離用の切り込み32を形成する。切り込み加工において、適宜、基板10又は振動フィルム20が固定用プレートに固定される。
【0040】
続いて、
図19に示すように、切り込み31、32を中心として折り曲げ及び引き離し工程を行い、小片に分離する。続いて、
図3に示すように、レーザーなどを用いて、振動フィルム20のX方向における一端をカットし、開口部16及び端子12を露出させる。このようにして、マイクロフォン1が製造される。
【0041】
[1-4] 変形例
上記実施形態では、基板10としてガラス等を使用している。しかし、これに限定されず、基板10として、振動フィルム20と同様な変形性に優れた基材を用いてもよい。具体的には、基板10は、ポリイミド、ポリプロピレン、又は液晶ポリマーなどで構成してもよい。
【0042】
この変形例によれば、コンデンサ全体が変形可能となり、曲面への設置、総重量の削減、及び耐衝撃性の向上が期待できる。
【0043】
[1-5] 第1実施形態の効果
第1実施形態によれば、ガラス基板を用いてマイクロフォン1を構成することができる。よって、半導体基板を用いてMEMSを形成する場合に比べて、マイクロフォン1のコストを低減することができる。
【0044】
また、基板10と振動フィルム20とを導電性シール材23で接着することができる。そして、導電性シール材23を用いて、基板10と振動フィルム20との間の空洞24のギャップを調整することができる。これにより、数μm~数十μmレベルを要求されるコンデンサの両電極間隔形成を、一般的なLCD(liquid crystal display)製造工程と同様の圧着工程のみで高精度かつ短時間に実現できる。よって、第1実施形態によれば、製造コストを低減することができる。
【0045】
また、基板10と振動フィルム20とを接着するためのシール材として導電性を有するシール材23を用いている。そして、基板10上に設けられた端子13と、振動フィルム20側に配置された導電膜21とを導電性シール材23を介して電気的に接続するようにしている。これにより、上下の導電膜11、21にそれぞれ電気的に接続された端子12、13を基板10上に引き出すことができる。よって、マイクロフォン1と外部機器との接続を容易に行うことができる。
【0046】
また、振動フィルム20を半導体プロセスを用いて製造ロット毎に形成するのではなく、汎用の樹脂フィルム等の既成弾性基材を利用することができる。これにより、振動フィルム20の製造バラツキを低減できる。ひいては、マイクロフォン1の特性バラツキを低減できる。
【0047】
また、振動フィルム20に使用される弾性基材が持つ厚み/弾性/共振周波数等の特性や、シール材23の材料/設置箇所/平面形状等を変更することにより、振動フィルムの振動特性を容易に調整することが可能となる。
【0048】
また、半導体プロセスを用いるMEMS方式は、原理的に製造時のウェハサイズを上回る大きさの振動部分を作成することができないが、基板がガラスであればそのサイズを大幅に上回ることも可能である。
【0049】
また、単一基板上に多数個のコンデンサを任意に配置でき、配線層数を増やせばコンデンサ間を任意接続させることができる。このため、例えばアレイ状のコンデンサ群を単一基板上に配置し、相互接続が可能である。
【0050】
[2] 第2実施形態
第2実施形態は、基板10と振動フィルム20との間にスペーサを設け、このスペーサを用いて空洞24のギャップを調整するようにしている。
【0051】
[2-1] マイクロフォン1の構成
図20は、第2実施形態に係るマイクロフォン1の平面図である。
図21は、
図20に示したA-A´線に沿ったマイクロフォン1の断面図である。
図22は、
図20に示したB-B´線に沿ったマイクロフォン1の断面図である。
【0052】
マイクロフォン1は、スペーサ25をさらに備える。スペーサ25は、絶縁膜14と導電膜21との間に設けられ、絶縁膜14と導電膜21とに接する。スペーサ25は、空洞24のギャップを規定するために用いられる。スペーサ25は、例えば、円環形(中空円形)である。スペーサ25は、導電膜11、21の外形と概略同じ形状を有する。スペーサ25としては、樹脂が用いられる。
【0053】
その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0054】
[2-2] 製造方法
次に、マイクロフォン1の製造方法について説明する。導電膜21を形成するまでの製造工程(第1実施形態で説明した
図14までの製造工程)は、第1実施形態と同じである。
【0055】
続いて、
図23及び
図24に示すように、固定用プレート30上に、振動フィルム20を吸着させ又は仮接着し、振動フィルム20を固定する。
【0056】
続いて、スクリーン印刷、又はディスペンサでの塗布により、導電膜21上に、円環形のスペーサ25を形成する。
【0057】
続いて、
図25及び
図26に示すように、スクリーン印刷、又はディスペンサでの塗布により、振動フィルム20及び接続電極22上に、円環形の導電性シール材23を形成する。
【0058】
続いて、
図27に示すように、導電性シール材23上に、基板10を圧着する。基板10側の絶縁膜14は、スペーサ25に接する。空洞24のギャップは、スペーサ25によって規定される。
【0059】
その後の製造工程は、第1実施形態と同じである。
【0060】
[2-3] 第2実施形態の効果
第2実施形態によれば、空洞24のギャップをスペーサ25によって調整できる。これにより、空洞24のギャップをより均一化することができる。
【0061】
[3] 第3実施形態
第3実施形態は、導電性シール材23に開口部を設け、同様に、スペーサ25に開口部を設けるようにしている。
【0062】
図28は、第3実施形態に係るマイクロフォン1の平面図である。
図29は、
図28に示したB-B´線に沿ったマイクロフォン1の断面図である。
【0063】
導電性シール材23は、開口部23Aを有する。すなわち、導電性シール材23は、完全な円ではなく、部分的に欠損している。
【0064】
スペーサ25は、開口部25Aを有する。すなわち、スペーサ25は、完全な円ではなく、部分的に欠損している。開口部25Aは、開口部23AとX方向に並んで配置される。
【0065】
その他の構成は、第2実施形態と同じである。
【0066】
第3実施形態によれば、空洞24が開口部23A、25Aを介して外部に開放される。これにより、空洞24が密封されるのを防ぐことができる。この結果、導電膜11、21が配置された領域に対応する振動領域の振幅可動量を大きくすることができる。
【0067】
なお、振動フィルム20及び導電膜21に開口部を設け、空洞24を外部に開放するようにしてもよい。この変形例の場合、導電性シール材23及びスペーサ25に開口部を設けてもよいし、設けなくてもよい。
【0068】
[4] 第4実施形態
第4実施形態は、絶縁性シール材23を用いて、基板10と振動フィルム20とを接着するようにしている。
【0069】
[4-1] マイクロフォン1の構成
図30は、第4実施形態に係るマイクロフォン1の平面図である。
図31は、
図30に示したC-C´線に沿ったマイクロフォン1の断面図である。
【0070】
まず、基板10側の構成について説明する。
図32は、基板10側の構成を説明する平面図である。
図33は、
図32に示したC-C´線に沿った基板10側の構成を説明する断面図である。
【0071】
端子13は、X方向に延びる。基板10、導電膜11、及び端子12、13上には、絶縁膜14が設けられる。絶縁膜14は、開口部15を有する。開口部15は、端子13の一端を露出する。
【0072】
次に、振動フィルム20の構成について説明する。
図34は、振動フィルム20側の構成を説明する平面図である。
図35は、
図34に示したC-C´線に沿った振動フィルム20側の構成を説明する断面図である。
図35及び
図34は、振動フィルム20を、Y方向を基準にして
図31の状態から180度回転させた様子を示している。
【0073】
振動フィルム20上には、導電膜21に電気的に接続された接続電極22が設けられる。接続電極22は、導電膜21からY方向に対して斜め方向に延びる。接続電極22は、導電膜21と同じ材料で構成される。
【0074】
基板10(具体的には、絶縁膜14)と振動フィルム20とは、絶縁性シール材23によって接着される。絶縁性シール材23の平面形状は、第1実施形態で説明した導電性シール材と同じである。絶縁性シール材23は、絶縁膜14に接するとともに、振動フィルム20に接する。絶縁性シール材23は、絶縁性の接着材で構成される。
【0075】
スペーサ25は、絶縁膜14と導電膜21との間に設けられ、絶縁膜14と導電膜21とに接する。スペーサ25は、空洞24のギャップを規定するために用いられる。スペーサ25の平面形状は、第1実施形態で説明したスペーサと同じである。
【0076】
なお、スペーサ25を省略して、絶縁性シール材23によって、空洞24のギャップを調整するようにしてもよい。この例の場合、絶縁性シール材23は、樹脂などで構成された複数のギャップ材を含むように構成される。
【0077】
接続電極22の一端上には、コンタクト26が設けられる。コンタクト26は、絶縁膜14の開口部15を通り、端子13の一端に接する。これにより、導電膜21は、接続電極22及びコンタクト26を経由して、端子13に電気的に接続される。コンタクト26は、銀(Ag)などの金属を含む導電性ペーストで構成される。
【0078】
その他の構成は、第1実施形態と同じである。
【0079】
[4-2] 製造方法
次に、マイクロフォン1の製造方法について説明する。
【0080】
図36及び
図37に示すように、基板10上に、導電膜を蒸着する。続いて、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、導電膜を加工し、導電膜11、及び端子12、13を形成する。
【0081】
続いて、
図32及び
図33に示すように、基板10、導電膜11、及び端子12、13上に、絶縁膜14を蒸着する。続いて、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、絶縁膜14を加工し、開口部15、16、17を形成する。開口部15は、端子13の一端を露出する。開口部17は、端子13の他端を露出する。開口部16は、端子12の一端を露出する。
【0082】
続いて、
図38及び
図39に示すように、振動フィルム20上に、導電膜を蒸着する。続いて、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、導電膜を加工し、導電膜21、及び接続電極22を形成する。
【0083】
続いて、
図40及び
図41に示すように、形状のひずみ等を抑制するために、固定用プレート30上に、振動フィルム20を吸着させ又は仮接着し、振動フィルム20を固定する。
【0084】
続いて、スクリーン印刷、又はディスペンサでの塗布により、導電膜21上に、円環形のスペーサ25を形成する。
【0085】
続いて、
図42及び
図43に示すように、スクリーン印刷、又はディスペンサでの塗布により、振動フィルム20及び接続電極22上に、円環形の絶縁性シール材23を形成する。
【0086】
続いて、スクリーン印刷、又はディスペンサでの塗布により、接続電極22の一端上に、コンタクト26を形成する。
【0087】
続いて、
図44に示すように、絶縁性シール材23上に、基板10を圧着する。その後の製造工程は、第1実施形態と同じである。
【0088】
[4-3] 第4実施形態の効果
第4実施形態によれば、絶縁性シール材23を用いて、基板10と振動フィルム20とを接着することができる。その他の効果は、第1実施形態と同じである。
【0089】
なお、絶縁性シール材23は、開口部を有していてもよい。また、スペーサ25は、開口部を有していてもよい。また、スペーサを省略し、絶縁性シール材23を用いて空洞24のギャップを調整してもよい。
【0090】
[5] 第5実施形態
第5実施形態は、コンデンサを用いたスピーカーの構成例である。
【0091】
図45は、第5実施形態に係るスピーカーモジュール40のブロック図である。スピーカーモジュール40は、スピーカー1、及び電圧制御回路41を備える。
【0092】
上記第1乃至第4実施形態で説明したコンデンサ1(すなわち、コンデンサを用いたマイクロフォン)は、スピーカーとして用いることができる。スピーカー1の構成は、上記第1乃至第4実施形態のいずれかのコンデンサと同じである。
【0093】
電圧制御回路41は、スピーカー1の端子12、13に電気的に接続される。端子12は、基板10側の導電膜11に電気的に接続され、端子13は、振動フィルム20側の導電膜21に電気的に接続される。電圧制御回路41は、端子12、13にそれぞれ電圧を印加する。
【0094】
図46は、スピーカー1に印加される電圧の一例を説明する図である。電圧制御回路41は、端子12に電圧42を印加し、端子13に電圧43を印加する。電圧42は、直流電圧である。電圧43は、交流電圧である。
【0095】
電圧制御回路41は、端子12と端子13との間の電圧を変化させることができる。端子12と端子13との間の電圧に応じて、導電膜11と導電膜21との間隔が変化する。これにより、コンデンサをスピーカーとして用いることができる。
【0096】
[6] 第6実施形態
第6実施形態は、スピーカーの他の構成例である。
【0097】
図47は、第6実施形態に係るスピーカー1の平面図である。
図48は、
図47に示したA-A´線に沿ったスピーカー1の断面図である。
【0098】
振動フィルム20の導電膜21が形成された面と反対側の面には、絶縁性シール材50が設けられる。絶縁性シール材50上には、補助電極51が設けられる。補助電極51の平面形状は、振動フィルム20と概略同じである。補助電極51としては、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、又はモリブデン(Mo)などが用いられる。
【0099】
その他の構成は、第2実施形態と同じである。
【0100】
図49は、スピーカーモジュール40のブロック図である。電圧制御回路41は、スピーカー1の端子12、13、52に電気的に接続される。端子52は、補助電極51に電気的に接続される。電圧制御回路41は、端子12、13、52にそれぞれ電圧を印加する。
【0101】
図50は、スピーカー1に印加される電圧の一例を説明する図である。電圧制御回路41は、端子12に電圧42を印加し、端子13に電圧43を印加し、端子52に電圧45を印加する。電圧42は、直流電圧である。電圧43は、交流電圧である。電圧45は、直流電圧である。
【0102】
図50の破線で示した電圧44は、無信号時の端子13に印加される直流電圧である。直流電圧42は、交流電圧43の最小値より低く設定される。直流電圧45は、交流電圧43の最大値より高く設定される。直流電圧44は、直流電圧42と直流電圧45との間に設定される。
【0103】
第6実施形態によれば、振動フィルム20側の導電膜21に印加される電界を大きくすることができる。これにより、振動フィルム20の振動振幅を大きくすることができるので、音圧を高くすることが可能となる。
【0104】
[7] 第7実施形態
第7実施形態は、コンデンサを用いた振動センサーの構成例である。
【0105】
図51は、第7実施形態に係る振動センサー1の平面図である。
図52は、
図51に示したA-A´線に沿った振動センサー1の断面図である。
【0106】
振動フィルム20の導電膜21が形成された面と反対側の面には、重り60が設けられる。重り60は、接着剤によって振動フィルム20に接着される。重り60は、導電膜21の中央に配置される。
【0107】
その他の構成は、第2実施形態と同じである。
【0108】
図53は、振動センサーモジュール61のブロック図である。振動センサーモジュール61は、振動センサー1、及び検出回路62を備える。
【0109】
検出回路62は、振動センサー1の端子12、13に電気的に接続される。検出回路62は、振動センサー1の容量変化を検出する。
【0110】
振動センサー1は、外部から加速度が印加された場合に、重り60を含む振動領域が変形する。検出回路62は、振動センサー1の変形量を容量変化として検出する。これにより、本発明のコンデンサを振動センサーとして動作させることができる。
【0111】
[8] その他の実施例
上記実施形態では、コンデンサの構成例として、マイクロフォン、スピーカー、及び振動センサーを挙げている。これらの構成例以外でも、本発明は、コンデンサを利用した素子に幅広く適用可能である。
【0112】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0113】
1…マイクロフォン、10…基板、11…導電膜、12,13…端子、14…絶縁膜、15~17…開口部、20…振動フィルム、21…導電膜、22…接続電極、23…シール材、24…空洞、25…スペーサ、26…コンタクト、30…固定用プレート、31,32…切り込み、40…スピーカーモジュール、41…電圧制御回路、50…シール材、51…補助電極、52…端子、60…重り、61…振動センサーモジュール、62…検出回路。