(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240110BHJP
【FI】
H02M7/48 Z ZHV
(21)【出願番号】P 2020062638
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-02-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(72)【発明者】
【氏名】山平 優
(72)【発明者】
【氏名】甲埜 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】一条 弘洋
(72)【発明者】
【氏名】竹内 和哉
(72)【発明者】
【氏名】村上 達也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 侑也
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-191768(JP,A)
【文献】特開2018-68096(JP,A)
【文献】特開2013-13169(JP,A)
【文献】特開2018-196267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相交流式の第一回転電機(1)と接続される第一インバータ(140a)と、
三相交流式の第二回転電機(2)と接続される第二インバータ(140b)と、
直流電源(3)と、前記第一インバータおよび前記第二インバータとの間で直流電圧の電圧を変換するコンバータ(120)と、
前記第一インバータと前記第一回転電機との間の電流を流す第一電機用バスバ(161a)と、
前記第二インバータと前記第二回転電機との間の電流を流す第二電機用バスバ(161b)と、
前記コンバータの電流を流すコンバータバスバ(161c)と、
前記コンバータに含まれ、前記コンバータバスバに通電可能に接続されたリアクトル(60)と、
前記第一電機用バスバに流れる電流を発生した磁界に基づいて検出するセンサであって、コアレス式の第一電機用センサ(162a)と、
前記第一電機用センサの検出値に基づいて前記第一インバータを制御する制御回路部(170)と、を備え、
前記第二電機用バスバは、前記コンバータバスバを挟んで前記第一電機用センサから離れて配置されており、
前記コンバータバスバは、前記第二電機用バスバを介して前記リアクトルとは反対側に配置されている電力変換装置。
【請求項2】
前記第二電機用バスバに流れる電流を発生した磁界に基づいて検出するセンサであって、コアレス式の第二電機用センサ(162b)と、前記コンバータバスバに流れる電流を発生した磁界に基づいて検出するセンサであって、コアレス式のコンバータ用センサ(162c)と、を備え、
前記コンバータ用センサは、前記第一電機用センサと、前記第二電機用センサとの間に配置されている請求項
1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第一インバータは、対応する前記第一電機用バスバと接続された第一電機用装置(40a)を有し、
前記第二インバータは、対応する前記第二電機用バスバと接続された第二電機用装置(40b)を有し、
前記コンバータは、対応する前記コンバータバスバと接続されたコンバータ用装置(40c)を有し、
前記第一電機用装置、前記第二電機用装置、および前記コンバータ用装置は、前記第一電機用バスバ、前記第二電機用バスバ、および前記コンバータバスバの配列方向において、対応する前記第一電機用バスバ、前記第二電機用バスバ、および前記コンバータバスバの配列順と同じ配列順で設けられている請求項1
または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第二電機用バスバに流れる電流を発生した磁界に基づいて検出するセンサであって、コアレス式の第二電機用センサ(162b)と、前記コンバータバスバに流れる電流を発生した磁界に基づいて検出するセンサであって、コアレス式のコンバータ用センサ(162c)と、
前記第一電機用センサ、前記第二電機用センサ、および前記コンバータ用センサを、前記第一電機用バスバ、前記第二電機用バスバ、および前記コンバータバスバと一体に保持するセンサ筐体(163)と、を備える請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第一電機用バスバと前記第二電機用バスバと前記コンバータバスバとにかけ渡されるように設けられ、磁性材料により形成された磁気シールド(165)、を備える請求項1~4のいずれか1つに記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コアレス電流センサを用いる電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両で用いられるメインモータおよびサブモータの二つのモータに対して、それぞれ三相交流を出力する電力変換装置が開示されている。特許文献1の電力変換装置は、各モータに対応する二つのインバータ、各インバータから各モータに電力を伝送する二組のバスバセット、および複数の電流センサを備える。メインモータに電力を伝送するメインバスバセットに流れる電流は、集磁コアを伴うコア付き電流センサにより検出される。サブモータに電力を伝送するサブバスバセットに流れる電流は、集磁コアを伴わないコアレス電流センサにより検出される。電力変換装置は、各電流センサでの検出値に従って各インバータを制御することにより、各モータへの出力電流をフィードバック制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コアレス電流センサは、コア付き電流センサよりも体格やコストなどの点で有利である。しかし、コアレス電流センサは、コア付き電流センサよりも他のバスバに流れる電流により発生した磁界の影響を受けやすい。故に、複数のモータに電力を提供する電力変換装置において、バスバに流れる電流をコアレス電流センサで検出する構成とした場合、他のモータのバスバとの間でクロストークが生じやすくなる。すなわち、あるモータの電流センサの検出値が、実際に流れている電流に、他のモータへの電流の周波数成分を重畳された数値となりやすくなる。従って、上述した構成の電力変換装置において、検出値に従ってフィードバック制御された出力電流にひずみが生じやすくなるおそれがあった。
【0005】
本開示は、モータへの出力電流のひずみを抑制して、コアレス式電流センサで出力電流を検出可能な電力変換装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は独立請求項に記載の特徴の組み合わせにより達成され、また、下位請求項は、本開示の更なる有利な具体例を規定する。特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
上記目的を達成するための本開示の電力変換装置は、三相交流式の第一回転電機(1)と接続される第一インバータ(140a)と、三相交流式の第二回転電機(2)と接続される第二インバータ(140b)と、直流電源(3)と、第一インバータおよび第二インバータとの間で直流電圧の電圧を変換するコンバータ(120)と、第一インバータと第一回転電機との間の電流を流す第一電機用バスバ(161a)と、第二インバータと第二回転電機との間の電流を流す第二電機用バスバ(161b)と、コンバータの電流を流すコンバータバスバ(161c)と、コンバータに含まれ、コンバータバスバに通電可能に接続されたリアクトル(60)と、第一電機用バスバに流れる電流を発生した磁界に基づいて検出するセンサであって、コアレス式の第一電機用センサ(162a)と、第一電機用センサの検出値に基づいて第一インバータを制御する制御回路部(170)と、を備え、第二電機用バスバは、コンバータバスバを挟んで第一電機用センサから離れて配置されており、コンバータバスバは、第二電機用バスバを介してリアクトルとは反対側に配置されている。
【0008】
以上の構成によれば、第二電機用バスバが、第一電機用センサに対して、コンバータバスバを挟んで離れた配置とされている。故に、第一電機用センサによる検出値に対する、第二電機用バスバに流れる三相交流の周波数成分の重畳が抑制される。制御部は、こうした第一電機用センサの検出値に基づいて第一インバータを制御することにより、第二電機用バスバに流れる三相交流の影響を抑制して第一インバータを動作させうる。従って、第一インバータから第一回転電機への出力電流におけるひずみを抑制して、コアレス式電流センサで出力電流を検出可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】電力変換装置の機械的な構成を示す図である。
【
図5】変形例のセンサユニットの構成を示す図である。
【
図6】他の変形例のセンサユニットの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施形態による電力変換装置100を図面に沿って説明する。まず、電力変換装置100の回路構成を
図1に沿って説明する。電力変換装置100は、走行駆動源として内燃機関と回転電機とを備えたハイブリッド自動車などの車両で用いられる。電力変換装置100は、車両において、第一回転電機1、第二回転電機2、および直流電源3の間の電力の変換を行う装置である。
【0011】
第一回転電機1および第二回転電機2は、三相交流式の回転電機である。第一回転電機1は、例えば主として車両の走行駆動源として利用されている。第二回転電機2は、例えば主として車両の内燃機関から出力される回転駆動力を利用して発電する発電機として利用されている。直流電源3は、例えばリチウムイオン電池などの充放電可能な二次電池を含む、直流電圧を出力する電源ユニットである。
【0012】
電力変換の一例として、電力変換装置100は、直流電源3からの直流電圧を第一回転電機1への三相交流に変換する。これにより電力変換装置100は、直流電源3に充電された電力で第一回転電機1に車両を駆動させる、いわゆるEV駆動を提供する。また他の例として、電力変換装置100は、内燃機関の回転駆動力で発電している第二回転電機2からの三相交流を、周波数などの異なる三相交流に変換して第一回転電機1に出力する。これにより電力変換装置100は、内燃機関の回転駆動力を用いて発電した電力で第一回転電機1に車両を駆動させる、いわゆるHV駆動を提供する。
【0013】
なお、車両における第一回転電機1および第二回転電機2の用途は、上述したものに限られず、利用される車両の設計に応じて適宜変更や追加、入れ替え可能である。従って、電力変換装置100の作動も、上述したものに限られず適宜変更や追加、入れ替え可能である。電力変換装置100は、フィルタコンデンサ110、コンバータ120、平滑コンデンサ130、第一インバータ140a、第二インバータ140b、センサユニット160、および制御回路部170を備える。
【0014】
フィルタコンデンサ110は、直流電源3の正極に接続された正極ライン10Pと、負極に接続された負極ライン10Nとの間に設けられているコンデンサである。フィルタコンデンサ110は、直流電源3からコンバータ120に供給される直流電圧のノイズを除去するフィルタとして機能する。
【0015】
コンバータ120は、半導体スイッチング素子やリアクトルなどを含む、直流電圧を異なる値の直流電圧に変換する変換回路部である。なお、本実施形態では、半導体スイッチング素子として逆導通絶縁ゲートバイポーラトランジスタが用いられている。コンバータ120は、直流電源3と、第一インバータ140aおよび第二インバータ140bとの間における直流電圧の変換に用いられている。一例としてコンバータ120は、直流電源3から正極ライン10Pと負極ライン10Nとの間の電圧として提供される直流電圧を昇圧する動作を行う。コンバータ120は、昇圧した電圧を高電位ライン20Hと低電位ライン20Lとの間の電圧として第一インバータ140a等に提供する機能を有する。
【0016】
コンバータ120は、高電位ライン20Hと低電位ライン20Lとの間に、直列に接続された二つの半導体スイッチング素子を有する。またコンバータ120は、半導体スイッチング素子同士の接続点と、正極ライン10Pとを繋ぐ配置のリアクトル60を有する。
【0017】
平滑コンデンサ130は、高電位ライン20Hと低電位ライン20Lとの間に設けられているコンデンサである。平滑コンデンサ130は、コンバータ120の昇圧などにより高電位ライン20Hと低電位ラインとの間に提供されている電圧を平滑化する機能を有する。
【0018】
第一インバータ140aおよび第二インバータ140bは、複数の半導体スイッチング素子などを含む、直流電圧と三相交流との間の変換を行う変換回路部である。第一インバータ140aおよび第二インバータ140bは、三相に一対一で対応する三つの上下アームを備えている。各上下アームは、互いに並列な配置で、高電位ライン20Hと低電位ライン20Lとを接続している。各上下アームは、高電位ライン20Hと低電位ライン20Lとの間において直列に接続された二つの半導体スイッチング素子を含む。各上下アームの二つの半導体スイッチング素子の接続点が、回転電機の対応する相と接続されている。
【0019】
第一インバータ140aは、第一回転電機1と接続されている。第一インバータ140aは、例えばコンバータ120などから提供された高電位ライン20Hと低電位ライン20Lとの間の直流電圧を、三相交流に変換して第一回転電機1に提供する。
【0020】
第二インバータ140bは、第二回転電機2と接続されている。第二インバータ140bは、例えば第二回転電機2の発電により生じた三相交流を整流し、高電位ライン20Hと低電位ライン20Lとの間の直流電圧として出力する。
【0021】
センサユニット160は、電力変換装置100の各部に流れる電流を検出するための装置である。センサユニット160は、第一インバータ140aと第一回転電機1との間の電流、第二インバータ140bと第二回転電機2との間の電流、およびコンバータ120に流れる電流を検出する。センサユニット160の具体的な構造は後述する。
【0022】
制御回路部170は、コンバータ120、第一インバータ140a、および第二インバータ140bの半導体スイッチング素子の作動を制御する機能を発揮する回路群である。制御回路部170は、例えば制御用のソフトウェアを記録したメモリ、およびソフトウェアを実行するプロセッサを含むマイクロコンピュータを主体として構成されている。制御回路部170は、センサユニット160で検出された電流などに基づいて各半導体スイッチング素子の作動を制御することにより、電力変換を制御する。
【0023】
一例として制御回路部170は、車両の上位ECUからの第一回転電機1の出力トルク要求に基づいて、第一回転電機1の各相に流す電流の目標変動パターンを設定する。制御回路部170は、第一インバータ140aから第一回転電機1への出力電流を目標変動パターンに沿って変動させるように、第一インバータ140aをフィードバック制御する。すなわち制御回路部170は、センサユニット160の検出した第一インバータ140aの出力電流に基づいて、第一インバータ140aの各半導体スイッチング素子を駆動する。
【0024】
他の一例として制御回路部170は、コンバータ120に流れる電流を、車輪の空転などの検出に用いる。制御回路部170は、例えばコンバータ120に流れる電流が想定している電流に対して数十%以上増大した場合に、空転発生と判断する。すなわち、本実施形態のコンバータ120に流れる電流は、第一回転電機1への電流と比較して、第二回転電機2とのクロストークによる影響を受けにくい制御に用いられている。
【0025】
次に、電力変換装置100の機械的な構成を説明する。以下において、互いに直交する三方向をそれぞれX方向、Y方向、Z方向と示す。
図2に示すように、電力変換装置100は、複数の半導体装置40、およびそれらを収容した冷却器50を備えている。また電力変換装置100は、平滑コンデンサ130およびセンサユニット160を、X方向において冷却器50を挟む配置で備えている。電力変換装置100は、冷却器50、センサユニット160、および平滑コンデンサ130に対してY方向の片側に配置されたリアクトル60を備えている。
【0026】
半導体装置40は、半導体スイッチング素子、およびそれらを電気的に接続する接続部材を、樹脂封止などにより一体パッケージ化した装置である。本実施形態の各半導体装置40は、略矩形板状に形成されており、一相分の上下アームに相当する半導体スイッチング素子、およびそれらの接続部材を含んでいる。各半導体装置40は、冷却器50の冷媒流路を挟んでY方向に沿って積層されている。
【0027】
各半導体装置40は、それぞれ高電位端子41H、低電位端子41L、および接続点端子41Mの三つの主端子を備える。高電位端子41Hは、上下アームの高電位ライン20Hとの接続点に相当する。低電位端子41Lは、上下アームの低電位ライン20Lとの接続点に相当する。接続点端子41Mは、上下アームの半導体スイッチング素子同士の中間の接続点に相当する。三つの主端子は、X方向に沿って並ぶ配置で半導体装置40のZ方向を向く面から突出している。異なる半導体装置40から突出している同種の主端子は、Y方向に沿って並んでいる。各接続点端子41Mは、三つの主端子のうち、最もセンサユニット160に近い配置で並んでいる。
【0028】
本実施形態の電力変換装置100は、コンバータ120、第一インバータ140a、および第二インバータ140bを構成する七つの半導体装置40を備えている。具体的には、電力変換装置100は、三つの第一電機用装置40a、三つの第二電機用装置40b、および一つのコンバータ用装置40cを備えている。
【0029】
各第一電機用装置40aは、それぞれ第一インバータ140aの一相分に相当する上下アームを構成している。三つの第一電機用装置40aにより、第一インバータ140aが構成されている。Y方向に並ぶ七つの半導体装置40のうち、リアクトル60から遠い側の端から三つが、第一電機用装置40aに相当している。
【0030】
各第二電機用装置40bは、それぞれ第二インバータ140bの一相分に相当する上下アームを構成している。三つの第二電機用装置40bにより、第二インバータ140bが構成されている。Y方向に並ぶ七つの半導体装置40のうち、リアクトル60に近い側の端から三つが、第二電機用装置40bに相当している。
【0031】
コンバータ用装置40cは、コンバータ120の上下アームを構成している。コンバータ用装置40cは、リアクトル60と合わせてコンバータ120を構成している。Y方向に並ぶ七つの半導体装置40のうち、中央に位置する一つがコンバータ用装置40cに相当する。すなわちコンバータ用装置40cは、第一インバータ140aを構成する各第一電機用装置40aと、第二インバータ140bを構成する各第二電機用装置40bとの間に配置されている。換言すれば、各第一電機用装置40aが、各第二電機用装置40bから、コンバータ用装置40cを挟んで離れた配置とされている。
【0032】
センサユニット160は、検出対象とする電流を流すバスバ161、およびバスバ161に流れる電流を検出する電流センサ162を一体パッケージ化した装置である。本実施形態のセンサユニット160は、第一回転電機1および第二回転電機2から延びる接続用のコネクタを組み付けるための出力端子台の機能を兼ねている。センサユニット160は、
図2、
図3、および
図4に示すように、センサ筐体163、複数のバスバ161、複数の電流センサ162、センサ基板164、および磁気シールド165を備える。
【0033】
センサ筐体163は、樹脂などの絶縁材料により形成された、センサユニット160を構成する各部材を保持するための部材である。本実施形態のセンサ筐体163は、インサート成型によりバスバ161や磁気シールド165が埋設され、内部の収容空間にセンサ基板164が収容されている樹脂製のケースである。
【0034】
バスバ161は、銅などの導電材料により帯板状に形成された、検出対象とする電流を流す導電部材である。本実施形態のセンサユニット160は、X方向に沿って並行して延伸し、Y方向に沿って配列された七つのバスバ161を有している。従って、Y方向がバスバ161の「配列方向」に相当する。具体的には、センサユニット160は、三つの第一電機用バスバ161a、三つの第二電機用バスバ161b、および一つのコンバータバスバ161cを有している。
【0035】
各バスバ161は、互いの位置関係が維持されるようにセンサ筐体163により一体に保持されている。各バスバ161の両端の一部は、電気的および機械的な接続のため、それぞれセンサ筐体163の外部に露出している。各バスバ161の一端は、センサ筐体163から、接続する対象である対応する半導体装置40に向けてX方向に沿って突出している。
【0036】
各バスバ161は、センサ筐体163の内部に位置する部分の少なくとも一部を、主面をZ方向に向ける姿勢でX方向に沿って延伸している。この主面をZ方向に向ける姿勢の部分が、電流センサ162による被検出部となる。各バスバ161は、Y方向の投影視で被検出部の少なくとも一部を互いに重なる位置とするように配置されている。各バスバ161の被検出部におけるY方向の配列順は、それぞれに対応する半導体装置40のY方向の配列順と一致している。
【0037】
第一電機用バスバ161aは、Y方向に配列された七つのバスバ161のうち、リアクトル60から遠い側の端から三つである。各第一電機用バスバ161aの一端は、対応する第一電機用装置40aの接続点端子41Mと、溶接などにより接続されている。第一電機用バスバ161aと第一電機用装置40aとは、Y方向の配列順が同じもの同士で対応している。より具体的には、第一電機用バスバ161aと第一電機用装置40aとは、リアクトル60から遠い側の端同士、端から二番目同士、端から三番目同士で対応している。
【0038】
各第一電機用バスバ161aの他端は、センサ筐体163から突出して第一回転電機1のコネクタが接続される端子とされている。従って、第一電機用バスバ161aは、第一インバータ140aと第一回転電機1との間を電気的に接続している。第一電機用バスバ161aには、例えばHV駆動時に、第一インバータ140aから第一回転電機1に出力される三相交流が流れる。この場合各第一電機用バスバ161aからは、第一回転電機1に提供している三相交流の周波数に従って強度および向きが周期的に変化する磁界が発生する。
【0039】
第二電機用バスバ161bは、Y方向に配列された七つのバスバ161のうち、リアクトル60に近い側の端から三つである。各第二電機用バスバ161bの一端は、対応する第二電機用装置40bの接続点端子41Mと、溶接などにより接続されている。第二電機用バスバ161bと第二電機用装置40bとは、Y方向の配列順が同じもの同士で対応している。より具体的には、第二電機用バスバ161bと第二電機用装置40bとは、リアクトル60に近い側の端同士、端から二番目同士、端から三番目同士で対応している。
【0040】
各第二電機用バスバ161bの他端は、第二回転電機2のコネクタと接続するための端子としてセンサ筐体163から突出している。従って第二電機用バスバ161bは、第二インバータ140bと第二回転電機2との間を電気的に接続している。第二電機用バスバ161bには、例えばHV駆動時に、発電している第二回転電機2から第二インバータ140bに出力される三相交流が流れる。この場合各第二電機用バスバ161bからは、第二回転電機2の回転数に応じて定まる三相交流の周波数に従って強度および向きが周期的に変化する磁界が発生する。
【0041】
コンバータバスバ161cは、Y方向に配列された七つのバスバ161のうち、中央に位置している。コンバータバスバ161cの一端は、対応するコンバータ用装置40cの接続点端子41Mと、溶接などにより電気的および機械的に接続されている。コンバータバスバ161cの他端は、リアクトル60の一端と直接または間接的に接続可能となるようにセンサ筐体163から露出している。本実施形態のコンバータバスバ161cの他端は、Y方向において第一電機用バスバ161aと第二電機用バスバ161bとの間の位置でセンサ筐体163からZ方向に突出している。
【0042】
センサ筐体163から突出した他端は、センサ筐体163の外部においてY方向に沿ってリアクトル60に向けて延び、リアクトル60と溶接などにより接続されている。従ってコンバータバスバ161cは、コンバータ120の半導体スイッチング素子同士の接続点と、リアクトル60との間を電気的に接続している。コンバータバスバ161cには、コンバータ120のリアクトル60が流している電流が流れる。従ってコンバータバスバ161cには、直流電源3と電力変換装置100との間の電力の供給関係に応じて、向きおよび大きさが概ね一定の直流と見なせる電流が流れる。従ってコンバータバスバ161cからは、第二電機用バスバ161bから発生する磁界と比較して、時間経過に伴う向きや大きさの変動の小さい磁界が発生する。
【0043】
電流センサ162は、電流によって発生した磁界の強度を検出することにより、各バスバ161に流れている電流を検出する装置である。電流センサ162は、例えば磁気抵抗効果素子などの磁電変換素子を形成された半導体基板を含むセンサパッケージである。電流センサ162は、例えば自身の位置における所定の検出軸に沿った磁界の強度および向きを示す検出値を、電気信号として出力する。
【0044】
各電流センサ162は、Y方向に沿って並ぶ配置でセンサ基板164に実装されている。各電流センサ162の出力する電気信号は、センサ基板164に実装された共通の信号コネクタを介して制御回路部170に送信される。各電流センサ162のY方向のピッチは、バスバ161のY方向のピッチに合わせて設定されている。各電流センサ162は、各バスバ161を保持するセンサ筐体163にセンサ基板164を組み付けることにより、対応するバスバ161に対して所定の位置関係で配置されている。具体的には、各電流センサ162は、対応するバスバ161のZ方向に主面を向けている部分に対して、Z方向に沿って並ぶ配置で対向している。
【0045】
各電流センサ162の検出軸は、Y方向に沿っている。各電流センサ162は、X方向に流れる電流により発生した、バスバ161のZ方向を向く主面に対向する位置において磁界を検出する。各電流センサ162は、発生した磁界を直接検出している。
【0046】
各電流センサ162のY方向における両側には、磁性材料による部材は配置されていない。電流センサ162と、その電流センサ162対応するバスバ161に隣接するバスバ161との間には、磁性材料による部材は配置されていない。すなわち、センサユニット160の全ての電流センサ162は、対応するバスバ161を囲う集磁コアを伴わない、コアレス式電流センサとして構成されている。従って各電流センサ162で検出される磁界には、対応するバスバ161に隣接したバスバ161から発生する磁界の成分も部分的に重畳された状態となる。すなわち、各電流センサ162に対する、隣接するバスバ161の離間距離および検出軸に対する角度に従って減衰した成分が重畳される。センサユニット160は、七つの電流センサ162を備えている。具体的には、センサユニット160は、三つの第一電機用センサ162a、三つの第二電機用センサ162b、およびコンバータ用センサ162cを備えている。
【0047】
第一電機用センサ162aは、それぞれ第一電機用バスバ161aと一対一で対応している。第一電機用センサ162aは、対応する第一電機用バスバ161aに流れている電流を検出する。従って第一電機用センサ162aは、Y方向において、コンバータバスバ161cを挟んで第二電機用バスバ161bから離れた配置となっている。すなわち、コンバータバスバ161cと第二電機用バスバ161bとの並ぶ平面において、第一電機用センサ162aを投影した位置と、第二電機用バスバ161bとの間にコンバータバスバ161cが配置された状態となっている。換言すれば、第二電機用バスバ161bが、第一電機用センサ162aに対して、コンバータバスバ161cを挟んでコンバータバスバ161cよりも離れた配置とされている。
【0048】
こうした配置により、三つのうち最も第二電機用バスバ161bに近い第一電機用センサ162aは、第二電機用バスバ161bではなく、コンバータバスバ161cに隣接した状態となっている。従って、この第一電機用センサ162aの検出値に重畳される隣接するバスバ161に流れる電流による成分は、第二電機用バスバ161bと隣接している場合よりも、時間経過に伴う向きや大きさの変動が抑制される。すなわち、検出する電流の波形にひずみが生じにくくなる。この結果、第一電機用バスバ161aと第二電機用バスバ161bとの間隔増大に伴うセンサユニット160の体格増大を抑制しつつ、波形のひずみ抑制が可能となる。
【0049】
第二電機用センサ162bは、それぞれ第二電機用バスバ161bと一対一で対応している。第二電機用センサ162bは、対応する第二電機用バスバ161bに流れている電流を検出する。第二電機用センサ162bは、Y方向において、コンバータバスバ161cを挟んで第一電機用バスバ161aから離れた配置となっている。
【0050】
コンバータ用センサ162cは、コンバータバスバ161cに対応しており、コンバータバスバ161cに流れる電流を検出する。コンバータ用センサ162cは、Y方向において隣接する第一電機用センサ162aおよび第二電機用センサ162bの間に配置されている。すなわち、第一電機用センサ162aおよび第二電機用センサ162bの並ぶ方向の投影視において、少なくとも一部が第一電機用センサ162aおよび第二電機用センサ162bと重なりを生じている。
【0051】
コンバータ用センサ162cの検出値には、実際にコンバータバスバ161cに流れる電流に加えて、両側の隣接するバスバ161の電流による成分が部分的に重畳される。すなわち、第一電機用バスバ161aおよび第二電機用バスバ161bの交流による成分が重畳され、脈流成分を含む直流となる。上述の通り、コンバータ用センサ162cで検出される電流は、こうした脈流成分を含んでいても、制御回路部170における制御に実質的な影響を生じにくい。
【0052】
磁気シールド165は、磁性材料により板状に形成され、両面をZ方向に向ける姿勢で配置されている。磁気シールド165は、Z方向において各電流センサ162に対して各バスバ161とは反対側と、各バスバ161に対して各電流センサ162とは反対側とにそれぞれ配置されている。本実施形態の各磁気シールド165は、Y方向に沿って延びる帯板状に形成され、Z方向の投影視において七つの電流センサ162を全て覆う配置で設けられている。各磁気シールド165は、センサユニット160の外部磁界による電流センサ162の検出値への影響を抑制する。なお磁気シールド165は、Y方向において分割され、各電流センサ162に対して個別に設けられる構成でもよい。
【0053】
[実施形態のまとめ]
以上、説明した実施形態によれば、第二電機用バスバ161bが、第一電機用センサ162aに対して、コンバータバスバ161cを挟んで離れた配置とされている。故に、第一電機用センサ162aによる検出値に対する、第二電機用バスバ161bに流れる三相交流の周波数成分の重畳が抑制される。制御回路部170は、こうした第一電機用センサ162aの検出値に基づいて第一インバータ140aを制御することにより、第二電機用バスバ161bに流れる三相交流の影響を抑制して第一インバータ140aを動作させうる。従って、第一インバータ140aから第一回転電機1への出力電流におけるひずみを抑制して、コアレス式の電流センサ162で出力電流を検出可能となる。
【0054】
加えて本実施形態では、コンバータ用センサ162cが、第一電機用センサ162aと、第二電機用センサ162bとの間に配置されている。上述の構成に反してコンバータ用センサ162cを他の位置に配置する場合、磁気シールド165などの他の部材の増加や拡大によるセンサユニット160の体格増大を生じうる。こうした懸念に対し本実施形態では、コンバータ用センサ162cは、他の部材の増加および拡大などを抑制可能な配置とされている。従って電力変換装置100は、センサユニット160で検出された電流に基づく制御への影響を抑制しつつ、センサユニット160の体格増大を抑制可能となる。
【0055】
また本実施形態の各半導体装置40は、Y方向において、接続されているバスバ161の配列順と同じ配列順とされている。上述の構成に反して、半導体装置40の配列順がバスバ161の電流センサ162と対向する部分の配列順と異なる場合、一部のバスバ161が、他のバスバ161を迂回して対応する半導体装置40と接続されることとなり、体格の増大が発生しうる。こうした懸念に対して本実施形態では、各バスバ161が他のバスバ161を迂回することなく対応する半導体装置40と接続可能となる。従って電力変換装置は、各バスバ161の体格増大を抑制しつつ、第二電機用バスバ161bを第一電機用センサ162aから離して配置可能となる。
【0056】
さらに本実施形態では、各電流センサ162の全てが、センサ筐体163により各バスバ161と一体に保持されている。上述の構成に反して、各電流センサ162が個別に各バスバ161に対して取り付けられる構成の場合、センサユニット160全体の部品点数や、体格の増加を招く。こうした懸念に対して本実施形態では、一体に保持するセンサ筐体163により、部品点数や、体格の増加を抑制して各電流センサ162を各バスバ161に対して取り付け可能となる。
【0057】
<他の実施形態>
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の変形例も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。なお、以下の説明において、それまでに使用した符号と同一番号の符号を有する要素は、特に言及する場合を除き、それ以前の実施形態における同一符号の要素と同一である。また、構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分については先に説明した実施形態を適用できる。
【0058】
上述の実施形態においては、電力変換装置100は、二つの回転電機とそれぞれ接続される二つのインバータを備え、コンバータ120として単相コンバータを用いていた。また、それらを構成する半導体装置40は、それぞれ一相の上下アームに相当する半導体スイッチング素子およびそれらの接続部材を含んでいた。この結果、上述の実施形態においては、半導体装置40、バスバ161、および電流センサ162がそれぞれ七つずつ設けられていた。しかし、いずれかの回転電機へのバスバに対応する電流センサから、他の回転電機へのバスバ161がコンバータバスバ161cを挟んで離れて配置されていれば、電力変換装置100の構成はこれに限られない。
【0059】
一例として電力変換装置100は、第三回転電機に接続される第三インバータをさらに備える構成を採用可能である。こうした構成の電力変換装置100においては、
図5に示すように、それらを接続する第三電機用バスバ161d、およびそこに流れる電流を検出する第三電機用センサ162dが更に設けられる。この場合、第三電機用センサ162dと第二電機用バスバ161bの間には、コンバータバスバ161cを配置されていなくてもよい。すなわち、いずれかの回転電機のバスバ161と他の回転電機の電流センサ162との間にコンバータバスバ161cが配置されていれば、他の回転電機のペアにおける配置関係は問わない。
【0060】
さらに他の一例として、コンバータ120として多相コンバータを用いる構成の場合には、複数のコンバータバスバ161cが設けられる。例えば二相コンバータを用いており、かつ第三インバータを備えている場合には、いずれかの回転電機のバスバ161を二つのコンバータバスバ161cの間に入れ子状に配置できる。すなわち、
図6に示すように、二つのコンバータバスバ161cの間に三つの第二電機用バスバ161bを配置し、その外側の一方に三つの第一電機用バスバ161a、他方に三つの第三電機用バスバ161dを配置できる。複数のコンバータバスバ161cが設けられている場合、それらを互いに隣り合った状態で回転電機用のバスバ161の間に配置することも可能である。
【0061】
また、複数の半導体装置40を併せて上下アームに相当している構成、また一つの半導体装置が複数の上下アームに相当している構成なども採用可能である。こうした構成に起因して各半導体装置40と各バスバ161とが一対一に対応しない場合などにおいては、各半導体装置40と各バスバ161とが異なった配列順となりうる。こうした配列の場合などにおいては、各バスバ161は、少なくとも一部が互いに並行していない状態となりうる。
【0062】
上述の実施形態においては、三つの第一電機用バスバ161aの全てに第一電機用センサ162aが一対一で設けられていた。しかし、三つのうち二つに対して第一電機用センサ162aを二つずつ設けて二重化し、残る一つに流れる電流を他の二つから推定して制御する構成も採用可能である。この場合、第一電機用センサ162aを設けられていない第一電機用バスバ161aの配置に拘わらず、最も第二電機用バスバ161bに近い第一電機用センサ162aと第二電機用バスバ161bとの間にコンバータバスバ161cが設けられていればよい。
【符号の説明】
【0063】
1 第一回転電機、 2 第二回転電機、 3 直流電源、 40a 第一電機用装置、 40b 第二電機用装置、 40c コンバータ用装置、 100 電力変換装置、 120 コンバータ、 140a 第一インバータ、 140b 第二インバータ、 161a 第一電機用バスバ、 161b 第二電機用バスバ、 161c コンバータバスバ、 162a 第一電機用センサ、 162b 第二電機用センサ、 162c コンバータ用センサ、 163 センサ筐体、 170 制御回路部