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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ヒートポンプサイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 47/02 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
F25B47/02 550F
F25B47/02 550H
F25B47/02 560
F25B47/02 570Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020065168
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021162250
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】井上 和宏
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】深谷 昌春
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-145020(JP,A)
【文献】特開2012-57879(JP,A)
【文献】特開2008-241127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00 ~ 49/04
F24F 1/00 ~ 13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機と、利用側熱交換器と、熱源側熱交換器と、前記利用側熱交換器と前記熱源側熱交換器との間に配置された膨張弁と、前記圧縮機の吐出側を前記利用側熱交換器へ接続する第1の状態と前記圧縮機の吐出側を前記熱源側熱交換器へ接続する第2の状態とに選択的に切り替えられる四方弁と、を有する冷媒回路と、
蓄熱材を有し前記圧縮機から吐出される冷媒の一部と前記蓄熱材とを熱交換する蓄熱用熱交換器と、前記蓄熱材の温度に関する情報を検出する温度センサと、前記四方弁と前記熱源側熱交換器との間に配置された三方弁と、前記蓄熱用熱交換器を介して、前記圧縮機の吐出側と、前記熱源側熱交換器と前記膨張弁との間を接続する第1バイパス配管と、前記蓄熱用熱交換器を介して、前記圧縮機の吸入側と前記三方弁とを接続する第2バイパス配管と、を有する蓄熱回路と、
前記熱源側熱交換器の温度に関する情報に基づいて前記熱源側熱交換器に発生した霜を融かすのに必要な熱量である第1熱量を算出し、前記温度センサで検出した前記蓄熱材の温度に関する情報に基づいて前記蓄熱材に蓄えられる熱量である第2熱量を算出し、前記第1熱量および前記第2熱量に基づいて、前記蓄熱材に蓄えられた熱を用いて前記熱源側熱交換器を除霜する蓄熱除霜運転と、前記圧縮機から吐出される冷媒を用いて前記熱源側熱交換器を除霜するリバース除霜運転のいずれかを選択して実行する制御部と、
を備えたヒートポンプサイクル装置。
【請求項2】
請求項1に記載のヒートポンプサイクル装置であって、
前記制御部は、前記第1熱量が第1所定値より大きな値となったとき、前記熱源側熱交換器の除霜が必要と判断し、
前記第2熱量が前記第1所定値よりも小さい第2所定値より大きいときは、前記蓄熱除霜運転を実行し、
前記第2熱量が前記第2所定値より小さいときは、前記リバース除霜運転を実行する
ヒートポンプ制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載のヒートポンプサイクル装置であって、
前記制御部は、前記第1熱量が第1所定値より大きな値となったとき、前記熱源側熱交換器の除霜が必要と判断し、
前記第1熱量から前記第2熱量を減じた差分が第3所定値より小さいときは、前記蓄熱除霜運転を実行し、
前記差分が前記第3所定値より大きいときは、前記リバース除霜運転を実行する
ヒートポンプサイクル装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のヒートポンプサイクル装置であって、
前記制御部は、前記蓄熱除霜運転を所定回数連続して実行した後、前記第1熱量が再び前記第1所定値より大きな値となったときは、前記リバース除霜運転を実行する
ヒートポンプサイクル装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のヒートポンプサイクル装置であって、
前記蓄熱回路は、前記蓄熱用熱交換器を流れる冷媒の量を調整する流量調整弁をさらに有し、
前記制御部は、前記第1熱量から前記第2熱量を減じた差分に応じて前記圧縮機の回転数および前記流量調整弁の開度を制御する
ヒートポンプサイクル装置。
【請求項6】
請求項5に記載のヒートポンプサイクル装置であって、
前記制御部は、前記差分が所定の閾値以上のときは、前記圧縮機の回転数を上昇させ、前記流量調整弁の開度を増加させる
ヒートポンプサイクル装置。
【請求項7】
請求項6に記載のヒートポンプサイクル装置であって、
前記制御部は、前記差分が前記所定の閾値未満のときは、前記圧縮機の回転数を低下させ、前記流量調整弁の開度を減少させる
ヒートポンプサイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除霜運転が行なえるヒートポンプサイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒回路を有するヒートポンプサイクル装置として、空気調和装置や給湯装置が知られている。この種のヒートポンプサイクル装置においては、暖房運転時あるいは給湯運転時に外気温度が低いと、熱源側熱交換器すなわち蒸発器として機能する室外熱交換器に霜が発生することがある。室外熱交換器で霜が発生すると、室外熱交換器で発生した霜によって冷媒と外気との熱交換が阻害されるために、霜が発生していない場合と比べて室外熱交換器における熱交換量が低下してしまう。このため、ヒートポンプサイクル装置の暖房運転中あるいは給湯運転中には、室外熱交換器に発生した霜を融かすための除霜運転が適宜行われる。
【0003】
除霜運転は、典型的には、暖房運転を中断して行われる。具体的に、除霜運転を行うときは、室外熱交換器が蒸発器として機能する状態から凝縮器として機能する状態に冷媒回路を切り替え、圧縮機から吐出される高温の冷媒を室外熱交換器に流入させて、室外熱交換器に発生した霜を融かす。そして、除霜運転中に室外熱交換器の温度が所定温度(例えば、10℃以上)、または、除霜運転時間が所定時間(例えば、10分)となれば、室外熱交換器に発生した霜が全て融けたと判断して除霜運転を終了し、暖房運転を再開する。
【0004】
除霜運転が暖房運転を中断して行われる場合、室内への暖かい空気の供給が中断されることによって室温が低下し、ユーザーに不快感を生じさせることがある。このような問題を解消するため、暖房運転を中断させることなく室外熱交換器の除霜を行う空気調和装置が知られている。
【0005】
例えば特許文献1には、圧縮機の近傍に配置された蓄熱材を有する蓄熱熱交換器と、圧縮機から吐出される冷媒を蓄熱材と熱交換させる蓄熱配管とを備えた空気調和装置が開示されている。この空気調和装置は、冷房運転と、暖房運転と、蓄熱材へ熱を蓄える蓄熱運転と、室外熱交換器を除霜するデフロスト運転とを選択的に実行する。蓄熱運転では、圧縮機から吐出された冷媒を室内熱交換器へ向かう第1経路と蓄熱熱交換器へ向かう第2経路とに分配し、暖房運転を行いながら、蓄熱材に冷媒の熱を蓄える。デフロスト運転では、圧縮機から吐出された冷媒を室内熱交換器へ供給し、室内熱交換器から流出した冷媒を蓄熱材との熱交換により加熱して室外熱交換器へ供給する。これにより、暖房運転を中断することなく、室外熱交換器の除霜を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-241127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、蓄熱材に蓄えられた熱を利用して室外熱交換器の除霜を行う蓄熱除霜運転については記載されているが、蓄熱除霜運転後における室外熱交換器の霜の融け残しを考慮した除霜運転技術については開示がない。蓄熱除霜運転開始時に、室外熱交換器で発生した霜を融かすのに必要な熱量に対して蓄熱材に蓄えられる熱量が足りないと、蓄熱除霜運転後に室外熱交換器に霜の融け残しが発生する。室外熱交換器に霜の融け残しが発生すると、室外熱交換器における霜が融け残っている箇所で冷媒と外気との熱交換が霜によって阻害されるために、霜の融け残りがない場合と比べて室外熱交換器における熱交換量が低下してしまう。
【0008】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、蓄熱用熱交換器を用いて暖房運転を中断せずに除霜運転を行いつつ、室外熱交換器での霜の融け残しを防ぐことができるヒートポンプサイクル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るヒートポンプサイクル装置は、冷媒回路と、蓄熱回路と、制御部とを備える。
上記冷媒回路は、圧縮機と、利用側熱交換器と、熱源側熱交換器と、膨張弁と、四方弁とを有する。上記膨張弁は、上記利用側熱交換器と上記熱源側熱交換器との間に配置される。上記四方弁は、上記圧縮機の吐出側を上記利用側熱交換器へ接続する第1の状態と、上記圧縮機の吐出側を上記熱源側熱交換器へ接続する第2の状態とに選択的に切り替えられる。
上記蓄熱回路は、蓄熱用熱交換器と、温度センサと、三方弁と、第1バイパス配管と、第2バイパス配管とを有する。上記蓄熱用熱交換器は、蓄熱材を有し、上記圧縮機から吐出される冷媒の一部と上記蓄熱材とを熱交換する。上記温度センサは、上記蓄熱材の温度に関する情報を検出する。上記三方弁は、上記四方弁と上記熱源側熱交換器との間に配置される。上記第1バイパス配管は、上記蓄熱用熱交換器を介して、上記圧縮機の吐出側と、上記熱源側熱交換器と上記膨張弁との間を接続する。上記第2バイパス配管は、上記蓄熱用熱交換器を介して、上記圧縮機の吸入側と上記三方弁とを接続する。
上記制御部は、上記熱源側熱交換器の温度に関する情報に基づいて、上記熱源側熱交換器に発生した霜を融かすのに必要な熱量である第1熱量を算出する。上記制御部は、上記温度センサで検出した上記蓄熱材の温度に関する情報に基づいて、上記蓄熱材に蓄えられる熱量である第2熱量を算出する。上記制御部は、上記第1熱量および上記第2熱量に基づいて、上記蓄熱材に蓄えられた熱を用いて上記熱源側熱交換器を除霜する蓄熱除霜運転と、上記圧縮機から吐出される冷媒を用いて上記熱源側熱交換器を除霜するリバース除霜運転のいずれかを選択して実行する。
【0010】
上記制御部は、上記第1熱量が第1所定値より大きな値となったとき、上記熱源側熱交換器の除霜が必要と判断してもよい。
この場合、上記制御部は、上記第2熱量が上記第1所定値よりも小さい第2所定値より大きいときは、上記蓄熱除霜運転を実行し、上記第2熱量が上記第2所定値より小さいときは、上記リバース除霜運転を実行する。
あるいは、上記の場合、上記制御部は、上記第1熱量から上記第2熱量を減じた差分が第3所定値より小さいときは、上記蓄熱除霜運転を実行し、上記差分が上記第3所定値より大きいときは、上記リバース除霜運転を実行する。
【0011】
さらに上記の場合、上記制御部は、上記蓄熱除霜運転を所定回数連続して実行した後、上記第1熱量が再び上記第1所定値より大きな値となったときは、上記リバース除霜運転を実行してもよい。
【0012】
上記蓄熱回路は、上記蓄熱用熱交換器を流れる冷媒の量を調整する流量調整弁をさらに有してもよい。この場合、上記制御部は、上記第1熱量から上記第2熱量を減じた差分に応じて上記圧縮機の回転数および上記流量調整弁の開度を制御する。
【0013】
上記制御部は、上記差分が所定の閾値以上のときは、上記圧縮機の回転数を上昇させ、上記流量調整弁の開度を増加させてもよい。
また、上記制御部は、上記差分が上記閾値未満のときは、上記圧縮機の回転数を低下させ、上記流量調整弁の開度を減少させてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、蓄熱用熱交換器を用いて暖房運転を中断せずに除霜運転を行いつつ、室外熱交換器での霜の融け残しを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るヒートポンプサイクル装置としての空気調和機の冷媒回路図である。
図2】上記空気調和機における制御装置の構成を示すブロック図である。
図3】暖房運転時において上記制御装置により実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4】暖房運転時において上記制御装置により実行される処理手順の他の一例を示すフローチャートである。
図5】第1熱量と第2熱量の時間変化の一例を示す模式図である。
図6】除霜運転時において上記制御装置により実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
図7】除霜運転時において上記制御装置により実行される処理手順の他の一例を示すフローチャートである。
図8】ヒートポンプ式給湯装置の一構成例を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0017】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の一実施形態に係るヒートポンプサイクル装置の冷媒回路図である。本実施形態では、ヒートポンプサイクル装置として、室外機と室内機が2本の冷媒配管で接続された空気調和機1を例に挙げて説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することができる。
【0018】
図1に示すように、本実施形態の空気調和機1は、屋外に設置される室外機2と、室内に設置され室外機2に液管4およびガス管5で接続された室内機3を備えている。詳細には、室外機2の閉鎖弁25と室内機3の液管接続部33が液管4で接続されている。また、室外機2の閉鎖弁26と室内機3のガス管接続部34がガス管5で接続されている。以上により、空気調和機1の冷媒回路10が形成される。
【0019】
<室外機の構成>
室外機2は、圧縮機21と、四方弁22と、熱源側熱交換器である室外熱交換器23と、膨張弁24と、液管4が接続された閉鎖弁25と、ガス管5が接続された閉鎖弁26と、室外ファン27と、アキュムレータ28とを備えている。そして、室外ファン27を除くこれら各装置が後述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室外機冷媒回路10aを形成している。
【0020】
圧縮機21は、回転数が可変の図示しないモータを有し、図示しないインバータによりモータの回転数が可変制御されることで、運転容量を変えることができる容量可変型圧縮機である。圧縮機21の冷媒吐出口は、四方弁22のポートaと吐出管61で接続されている。また、圧縮機21の冷媒吸入口は、アキュムレータ28の冷媒流出口と吸入管66で接続されている。
【0021】
四方弁22は、冷媒回路10における冷媒の流れる方向を切り替えるための切替弁である。具体的には、四方弁22は、冷媒回路10を、圧縮機21から吐出された冷媒を室外熱交換器23、膨張弁24、室内熱交換器31およびアキュムレータ28の順で循環させる冷房用冷媒回路と、圧縮機21から吐出された冷媒を室内熱交換器31、膨張弁24、室外熱交換器23およびアキュムレータ28の順で循環させる暖房用冷媒回路のいずれか一方に切り替える。
【0022】
四方弁22は、a、b、c、dの4つのポートを備えている。ポートaは、上述したように圧縮機21の冷媒吐出口と吐出管61で接続されている。ポートbは、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口と冷媒配管62で接続されている。ポートcは、アキュムレータ28の冷媒流入口と冷媒配管69で接続されている。そして、ポートdは、閉鎖弁26と室外機ガス管64で接続されている。
【0023】
室外熱交換器23は、室外ファン27の回転により、冷媒と、室外機2の内部に取り込まれた外気を熱交換させるものである。室外熱交換器23の一方の冷媒出入口は、上述したように四方弁22のポートbと冷媒配管62で接続され、他方の冷媒出入口は閉鎖弁25と室外機液管63で接続されている。室外熱交換器23は、後述する四方弁22の切り替えによって、冷房運転時は凝縮器として機能し、暖房運転時は蒸発器として機能する。
【0024】
膨張弁24は、図示しないパルスモータにより駆動される電子膨張弁であり、室外機液管63に設けられる。具体的には、膨張弁24はパルスモータに加えられるパルス数により、その開度が全閉と全開の間の開度に調整される。膨張弁24の開度は、暖房運転時には室内機3で要求される暖房能力に応じて調整され、冷房運転時には室内機3で要求される冷房能力に応じて調整される。
【0025】
室外ファン27は樹脂材で形成されており、室外熱交換器23の近傍に配置されている。室外ファン27は、図示しないファンモータによって回転することで、室外機2の図示しない吸込口から室外機2の内部へ外気を取り込み、室外熱交換器23において冷媒と熱交換した外気を、室外機2の図示しない吹出口から室外機2の外部へ放出する。
【0026】
アキュムレータ28は、流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒とに分離し、ガス冷媒のみを吸入管66を介して圧縮機21に吸入させる。アキュムレータ28の冷媒流入口と四方弁22のポートcとが冷媒配管69で接続され、アキュムレータ28の冷媒流出口と圧縮機21の冷媒吸入口とが吸入管66で接続されている。
【0027】
室外機2にはさらに、蓄熱回路11と三方弁83とが備えられている。蓄熱回路11は、圧縮機21の図示しない密閉容器から周囲に放射される熱や圧縮機21から吐出される冷媒が有する熱を蓄え、蓄えた熱を後述する蓄熱除霜運転時に使用するために設けられている。蓄熱回路11は、蓄熱用熱交換器81と、流量調整弁82と、第1蓄熱配管86と、第2蓄熱配管87と、第3蓄熱配管88と、第4蓄熱配管89とを備える。
【0028】
蓄熱用熱交換器81は、第1通路81aと、第2通路81bと、蓄熱材84を備える。蓄熱材84は、圧縮機21から周囲へ放射される熱を蓄える。また、蓄熱材84は、後述する第1通路81aを流れる冷媒の熱を蓄える。蓄熱材84は、典型的には、銅やアルミニウムなどの熱伝導性に優れた金属製のブロック材を用いて形成される。第1通路81aおよび第2通路81bは、当該ブロック材に設けられてもよい。また、金属製のブロック材に代えて、ブラインなどの液材が蓄熱材として採用されてもよい。
【0029】
蓄熱材84は、室外熱交換器23に発生した霜の量が想定される最大量であっても、この最大量の霜が全て融けるまで、霜を融かすことにより凝縮した冷媒を蒸発させることができる熱量を蓄えることができる熱容量を有する。
一般に、室外熱交換器23の容量は、機種ごとに設定される定格能力を室内機3で発揮できるように決められる。室外熱交換器23の容量が決まれば、この室外熱交換器23に発生する霜の量の最大量を求めることができる。本実施形態において、室外熱交換器23に発生する霜の量が想定される最大量であるとき、この最大量の霜を全て融かすために必要な熱量をQdMAXとすると、QdMAXは、室外熱交換器23で発生した最大量の霜を全て融かす際に冷媒が霜に与える熱量である。後述する蓄熱除霜運転では、上記QdMAXに相当する熱量を蓄熱材84に蓄えられた熱量で賄うことになるため、蓄熱材84に蓄えられる最大の蓄熱量をQcMAXとすると、QdMAXがQcMAXと同じとなるように蓄熱材84の熱容量が決定される。
【0030】
第1通路81aは、圧縮機21から吐出された冷媒の一部を蓄熱材84を介して室外熱交換器23と膨張弁24との間の配管へと流す冷媒配管である。第1通路81aの一端は、吐出管61と第1蓄熱配管86で接続される。吐出管61は、圧縮機21と四方弁22のポートaとの間の配管途中に分岐点P1を有し、この分岐点P1に第1蓄熱配管86が接続される。第1通路81aの他端は、室外機液管63と第2蓄熱配管87で接続される。室外機液管63は、室外熱交換器23と膨張弁24との間の配管途中に合流点P2を有し、この合流点P2に第2蓄熱配管87が接続される。第1蓄熱配管86および第2蓄熱配管87は、蓄熱用熱交換器81を介して、圧縮機21の吐出側と、室外熱交換器23と膨張弁24との間を接続する第1バイパス配管に相当する。
【0031】
第2通路81bは、蓄熱材84に蓄えられた熱を利用した除霜運転(以下、蓄熱除霜運転ともいう)において室外熱交換器23から流出した冷媒を蓄熱材84を介して圧縮機21へと戻す冷媒配管である。第2通路81bの一端は、冷媒配管62に設けられた三方弁83のポートgと第3蓄熱配管88で接続される。第2通路81bの他端は、冷媒配管69と第4蓄熱配管89で接続される。冷媒配管69は、四方弁22のポートcとアキュムレータ28の冷媒流入口との間の配管途中に合流点P3を有し、この合流点P3に第4蓄熱配管89が接続される。第3蓄熱配管88および第4蓄熱配管89は、蓄熱用熱交換器81を介して、圧縮機21の吸入側と三方弁83とを接続する第2バイパス配管に相当する。
【0032】
蓄熱用熱交換器81は、圧縮機21からの放射熱の蓄熱効率を高めるため、圧縮機21の近傍に配置されるのが好ましい。
【0033】
流量調整弁82は、例えば、図示しないパルスモータにより駆動される電子膨張弁であり、第2蓄熱配管87に設けられる。具体的には、流量調整弁82はパルスモータに加えられるパルス数により、その開度が全閉と全開の間の開度に調整される。流量調整弁82の開度は、後述するように、蓄熱材84の蓄熱量に応じて調整される。
【0034】
三方弁83は、冷媒の流れる方向を切り替えるための切替弁である。三方弁83は、冷媒配管62に設けられ、e,f,gの3つのポートを備えている。ポートeは、四方弁22のポートbと冷媒配管62の一部を構成する配管部62aで接続される。ポートfは、室外熱交換器23の一方の冷媒出入口と冷媒配管62の他の一部を構成する配管部62bで接続されている。ポートgは、上述したように、蓄熱用熱交換器81の第2通路81bの一端と第3蓄熱配管88で接続されている。
【0035】
空気調和機1が冷房運転あるいは暖房運転を行うときは、三方弁83は、ポートeとポートfとが連通するように切り替えられて、四方弁22と室外熱交換器23との間を冷媒が流れる。また、蓄熱除霜運転を行うときは、三方弁83は、ポートfとポートgとが連通するように切り替えられて、室外熱交換器23と蓄熱用熱交換器81(第2通路81b)との間を冷媒が流れる。つまり、三方弁83は、室外熱交換器23から流出した冷媒を圧縮機21へと流す第1の状態(ポートeとポートfが連通)と、室外熱交換器23から流出した冷媒を蓄熱用熱交換器81へと流す第2の状態(ポートfとポートgが連通)とを選択的に切り替える。三方弁83は、後述する暖房運転から蓄熱除霜運転へと切り替える際に、第1の状態から第2の状態へ切り替えられる。本実施形態において、三方弁83は、第2の状態において、ポートf側からポートg側へ流れる冷媒を減圧させる機能を有する。なお、本実施形態のように、三方弁83に減圧機能を持たせる代わりに、三方弁83のポートfと蓄熱用熱交換器81の間に減圧手段(膨張弁やキャピラリーチューブなど)を接続し、当該減圧手段で冷媒を減圧させてもよい。
【0036】
以上説明した構成の他に、室外機2には各種のセンサが設けられる。本実施形態では、図1に示すように、吐出管61には、圧縮機21から吐出される冷媒の圧力である吐出圧力を検出する吐出圧力センサ71と、圧縮機21から吐出される冷媒の温度である吐出温度を検出する吐出温度センサ73が設けられている。冷媒配管69には、圧縮機21に吸入される冷媒の圧力である吸入圧力を検出する吸入圧力センサ72と、圧縮機21に吸入される冷媒の温度である吸入温度を検出する吸入温度センサ74が設けられている。
【0037】
室外熱交換器23には、室外熱交換器23の温度である室外熱交温度を検出する熱交温度センサ75が備えられている。そして、室外機2の図示しない吸込口付近には、室外機2の図示しない筐体の内部に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度センサ76が備えられている。
【0038】
さらに、蓄熱用熱交換器81には、蓄熱材84の温度に関する情報を検出する温度センサ85が備えられる。室外機液管63には、室外熱交換器23と膨張弁24との間を流れる冷媒の温度を検出する配管温度センサ80が備えられている。
【0039】
<室内機の構成>
次に、図1を用いて、室内機3について説明する。室内機3は、利用側熱交換器である室内熱交換器31と、室内ファン32と、液管4の他端が接続された液管接続部33と、ガス管5の他端が接続されたガス管接続部34を備えている。そして、室内ファン32を除くこれら各装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室内機冷媒回路10bを形成している。
【0040】
室内熱交換器31は、室内ファン32の回転により、冷媒と、室内機3の図示しない吸込口から室内機3の内部に取り込まれた室内空気を熱交換させるものである。室内熱交換器31の一方の冷媒出入口は、液管接続部33と室内機液管67で接続されている。室内熱交換器31の他方の冷媒出入口は、ガス管接続部34と室内機ガス管68で接続されている。室内熱交換器31は、室内機3が冷房運転を行う場合は蒸発器として機能し、室内機3が暖房運転を行う場合は凝縮器として機能する。尚、液管接続部33やガス管接続部34では、各冷媒配管が溶接やフレアナット等により接続されている。
【0041】
室内ファン32は樹脂材で形成されており、室内熱交換器31の近傍に配置されている。室内ファン32は、図示しないファンモータによって回転することで、室内機3の図示しない吸込口から室内機3の内部に室内空気を取り込み、室内熱交換器31において冷媒と熱交換した室内空気を室内機3の図示しない吹出口から室内へ吹き出す。
【0042】
以上説明した構成の他に、室内機3には各種のセンサが設けられる。本実施形態では、図1に示すように、室内機液管67には、室内熱交換器31に流入あるいは室内熱交換器31から流出する冷媒の温度を検出する液側温度センサ77が設けられている。室内機ガス管68には、室内熱交換器31から流出あるいは室内熱交換器31に流入する冷媒の温度を検出するガス側温度センサ78が設けられている。そして、室内機3の図示しない吸込口付近には、室内機3の内部に流入する室内空気の温度、すなわち室温を検出する室温センサ79が備えられている。
【0043】
<制御装置>
空気調和機1は、制御装置90を備える。制御装置90は、例えば、室外機2に備えられた室外機制御装置であり、室外機2の図示しない電装品箱に格納された制御基板に搭載されている。
【0044】
図2は、制御装置90の構成を示すブロック図である。同図に示すように、制御装置90は、CPU91、記憶部92、通信部93、センサ入力部94、回転数検出部95を有する。
【0045】
記憶部92は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリであり、室外機2の制御プログラムや制御パラメータ、各種センサからの検出信号に対応した検出値、圧縮機21や室外ファン27等の制御状態等を記憶している。
【0046】
通信部93は、室内機3との通信を行うインターフェイスである。センサ入力部94は、室外機2の各種センサでの検出結果を取り込んでCPU91に出力する。回転数検出部95は、圧縮機21のモータの回転数を検出してCPU91に出力する。回転数検出部95は、モータの駆動軸に取り付けられたエンコーダ等でモータの回転数を直接検出するように構成されてもよいし、モータに供給される駆動電流からモータの回転数を検出するように構成されてもよい。以下の説明において、圧縮機21の回転数とは、モータの回転数をいう。
【0047】
CPU91は、記憶部92に格納されたプログラムを実行することで、圧縮機21を含む室外機2の各部の運転を制御する制御部である。プログラムは、例えば種々の記録媒体を介して制御装置90にインストールされる。あるいは、インターネット等を介してプログラムのインストールが実行されてもよい。
【0048】
CPU91は、上述した室外機2の各センサでの検出結果を、センサ入力部94を介して取り込む。さらには、CPU91は、室内機3から送信される制御信号を、通信部93を介して取り込む。CPU91は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、圧縮機21や室外ファン27、室内ファン32の駆動制御を行う。また、CPU91は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、四方弁22や三方弁83の切り替え制御を行う。さらには、CPU91は、取り込んだ検出結果や制御信号に基づいて、膨張弁24や流量調整弁82の開度調整を行う。
【0049】
<冷媒回路の動作>
次に、本実施形態における空気調和機1の空調運転時の冷媒回路10における冷媒の流れや各部の動作について、図1を用いて説明する。また、表1に、各運転モードにおける四方弁22、三方弁83、膨張弁24および流量調整弁82についてのCPU91による制御状態を示す。
【0050】
【表1】
【0051】
(1.冷房運転)
室内機3が冷房運転を行う場合、CPU91は、図1に示すように四方弁22を破線で示す状態、すなわち、四方弁22をポートaとポートbとが連通するよう、また、ポートcとポートdとが連通するよう、切り替える。また、CPU91は、三方弁83をポートeとポートfとが連通するよう切り替える。これにより、室外熱交換器23が凝縮器として機能するとともに室内熱交換器31が蒸発器として機能する冷房サイクルとなる。なお、表1に示すように、冷房運転時は流量調整弁82は全閉とされる。
【0052】
圧縮機21から吐出された高温高圧の冷媒は、吐出管61を流れて四方弁22に流入し、四方弁22から冷媒配管62を流れて室外熱交換器23に流入する。室外熱交換器23に流入した冷媒は、室外ファン27の回転により室外機2の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って凝縮する。
【0053】
室外熱交換器23から流出した中温高圧の冷媒は、室外機液管63を流れ、膨張弁24を通過する際に減圧される。冷房運転時の膨張弁24の開度は、圧縮機21の吐出温度が所定の目標温度となるように調整される。
【0054】
膨張弁24を通過した低温低圧の冷媒は、閉鎖弁25を介して液管4に流出する。液管4を流れ、液管接続部33を介して室内機3に流入した低温低圧の冷媒は、室内機液管67を流れて室内熱交換器31に流入する。
【0055】
室内熱交換器31に流入した低温低圧の冷媒は、室内ファン32の回転により室内機3の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って蒸発する。このように、室内熱交換器31が蒸発器として機能し、室内熱交換器31で冷媒と熱交換を行って冷却された室内空気が図示しない吹出口から室内に吹き出されることによって、室内機3が設置された室内の冷房が行われる。
【0056】
室内熱交換器31から流出した低温低圧の冷媒は、室内機ガス管68を流れ、ガス管接続部34を介してガス管5に流出する。ガス管5を流れる冷媒は、閉鎖弁26を介して室外機2に流入し、室外機ガス管64、四方弁22、冷媒配管69、アキュムレータ28、吸入管66の順に流れ、圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
【0057】
(2.暖房運転(蓄熱運転))
室内機3が暖房運転を行う場合、CPU91は、図1に示すように四方弁22を実線で示す状態、すなわち、四方弁22をポートaとポートdとが連通するよう、また、ポートbとポートcとが連通するよう、切り替える。また、CPU91は、三方弁83をポートeとポートfとが連通するよう切り替える。これにより、室外熱交換器23が蒸発器として機能するとともに、室内熱交換器31が凝縮器として機能する暖房サイクルとなる。なお、表1に示すように、暖房運転時は、流量調整弁82は蓄熱材84の蓄熱量に応じて制御される(詳細は後述する)。
【0058】
圧縮機21から吐出された高温高圧の冷媒は、吐出管61の分岐点P1において四方弁22へ向かう冷媒の流れと、蓄熱用熱交換器81の第1通路81aへ向かう冷媒の流れとに分流される。四方弁22に流入した冷媒は、四方弁22から室外機ガス管64を流れて、閉鎖弁26を介してガス管5に流入する。ガス管5を流れる冷媒は、ガス管接続部34を介して室内機3に流入する。
【0059】
室内機3に流入した高温高圧の冷媒は、室内機ガス管68を流れて室内熱交換器31に流入し、室内ファン32の回転により室内機3の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って凝縮する。このように、室内熱交換器31が凝縮器として機能し、室内熱交換器31で冷媒と熱交換を行って加熱された室内空気が図示しない吹出口から室内に吹き出されることによって、室内機3が設置された室内の暖房が行われる。
【0060】
室内熱交換器31から流出した中温高圧の冷媒は、室内機液管67を流れ、液管接続部33を介して液管4に流入する。液管4を流れ、閉鎖弁25を介して室外機2に流入した冷媒は、室外機液管63を流れて膨張弁24を通過する際に減圧される。暖房運転時の膨張弁24の開度は、圧縮機21の吐出温度が所定の目標温度となるように調整される。
【0061】
一方、吐出管61の分岐点P1において蓄熱用熱交換器81へ向かう冷媒は、第1蓄熱配管86を流れて蓄熱用熱交換器81の第1通路81aに流入する。第1通路81aに流入した冷媒は、蓄熱材84に放熱する。蓄熱材84は、圧縮機21からの放射熱を蓄えると同時に、第1通路部81aを通過する高温高圧の冷媒から得た熱を蓄える。これにより、後述する蓄熱除霜運転時において必要とされる熱量が蓄熱材84に蓄えられる。
【0062】
蓄熱用熱交換器81の第1通路81aに流入する冷媒の量は、流量調整弁82の開度によって調整される。CPU91は、後述するように、温度センサ85により検出される蓄熱材84の温度と蓄熱用熱交換器81に冷媒を流している時間とを用いて求める蓄熱材84に蓄えられる熱量(後述する第2熱量Qcに相当)と、室外熱交換器23に発生した霜を融かすのに必要な熱量(後述する第1熱量Qdに相当)との比較結果に応じて、流量調整弁82の開度を制御する。
【0063】
蓄熱用熱交換器81の第1通路部81aから流出した冷媒は、流量調整弁82を介して第2蓄熱配管87を流れる。膨張弁24および流量調整弁82から流出した低温低圧の冷媒は、室外機液管63を流れて室外熱交換器23に流入する。室外熱交換器23に流入した低温低圧の冷媒は、室外ファン27の回転により室外機2の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って蒸発する。室外熱交換器23から冷媒配管62に流出した冷媒は、三方弁83、四方弁22、冷媒配管69、アキュムレータ28、吸入管66を流れ、圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
【0064】
本実施形態では、暖房運転中に圧縮機21から吐出される冷媒の一部が蓄熱回路11を介して室外熱交換器23へ流入する。蓄熱回路11から室外熱交換器23へ流入する冷媒の温度は、蓄熱材84によって加熱されて高くなる。このため、蓄熱回路11はホットガスバイパスのように機能し、蓄熱回路11がない場合と比較して、室外熱交換器23に加わる熱量が高まる。
【0065】
空気調和機1が暖房運転を行っているときに外気温度が低いと、蒸発器として機能する室外熱交換器23に霜が発生する。室外熱交換器で霜が発生すると、室外熱交換器で発生した霜によって冷媒と外気との熱交換が阻害されるために、霜が発生していない場合と比べて室外熱交換器における熱交換量が低下してしまう。上記の問題を解決するため、本実施形態では室外熱交換器23に発生した霜の量を推定し、それが所定値に達すると、室外熱交換器23に発生した霜を融かすための除霜運転が開始される。これにより、室外熱交換器23の熱交換能力が維持されるため、暖房能力の低下が防止される。
【0066】
(3.暖房運転(蓄熱除霜運転))
室外機2が蓄熱除霜運転を行う場合、CPU91は、図1に示すように四方弁22を実線で示す状態に維持した状態で、三方弁83をポートfとポートgとが連通するよう切り替える。これにより、室内熱交換器31および室外熱交換器23が凝縮器として機能するとともに、蓄熱用熱交換器81が蒸発器として機能する。蓄熱除霜運転時は、表1に示すように、膨張弁24は全開、流量調整弁82は全閉となるように制御される。
【0067】
蓄熱除霜運転時は流量調整弁82が全閉とされるため、圧縮機21から吐出された高温高圧の冷媒のすべてが四方弁22へ流入する。四方弁22に流入した冷媒は、四方弁22から室外機ガス管64を流れて、閉鎖弁26を介してガス管5に流入する。ガス管5を流れる冷媒は、ガス管接続部34を介して室内機3に流入する。
【0068】
室内機3に流入した高温高圧の冷媒は、室内機ガス管68を流れて室内熱交換器31に流入し、室内ファン32の回転により室内機3の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って凝縮する。このように、室内熱交換器31が凝縮器として機能し、室内熱交換器31で冷媒と熱交換を行った室内空気が図示しない吹出口から室内に吹き出されることによって、室内機3が設置された室内の暖房が行われる。
【0069】
室内熱交換器31から流出した中温高圧の冷媒は、室内機液管67を流れ、液管接続部33を介して液管4に流入する。液管4を流れ、閉鎖弁25を介して室外機2に流入した冷媒は、室外機液管63を流れて膨張弁24を通過する。蓄熱除霜運転時の膨張弁24の開度は全開であるため、室内熱交換器31から流出した冷媒は減圧されることなく室外熱交換器23へ流入する。
【0070】
室外熱交換器23へ流入した冷媒は、室外熱交換器23で発生している霜を融かして、冷媒配管62へ流出する。これにより、室外熱交換器23で発生している霜は、室外熱交換器23へ流入した冷媒の熱により融解する。なお、蓄熱除霜運転中は、室外ファン27の運転は停止している。蓄熱除霜運転時の膨張弁24の開度は全開であるため、室内熱交換器31から流出した冷媒は、減圧されることなく、室内熱交換器31の凝縮温度を維持した状態で室外熱交換器23へ流入するため、室外熱交換器23の霜が効率よく融解される。
【0071】
冷媒配管62へ流出した冷媒は、三方弁83および第3蓄熱配管88を通って蓄熱用熱交換器81の第2通路81bへ流入する。前述したように三方弁83は、ポートfとポートgが連通する第2の状態において、ポートf側からポートg側へ流れる冷媒を減圧させる絞り(膨張弁)として機能する。
【0072】
蓄熱用熱交換器81の第2通路81bへ流入した冷媒は、蓄熱材84と熱交換を行って蒸発し、第4蓄熱配管89へ流出する。蓄熱材84は、前述の蓄熱運転によって圧縮機21からの放射熱および第1通路81aを通過する高温高圧の冷媒から得た熱を蓄えているため、第2通路81bを通過する冷媒を蒸発させるのに十分な熱量が確保される。第4蓄熱配管89へ流出した低温低圧の冷媒は、合流点P3、冷媒配管69、アキュムレータ28および吸入管66を流れ、圧縮機21に吸入されて再び圧縮される。
【0073】
蓄熱除霜運転は、室外熱交換器23の温度が所定温度(例えば、10℃以上)になった時点、あるいは、蓄熱材84に蓄えられた熱量が0となった時点で終了し、再び、上述した蓄熱運転が再開される。ここで、所定温度は、予め試験などを行って求められた温度であり、蓄熱除霜運転中に室外熱交換器23の温度が所定温度に到達すれば、室外熱交換器23で発生した霜が全て融けることが確認できている温度である。また、後述するように、蓄熱除霜運転中は、蓄熱材84に蓄えられている熱量を定期的(例えば、1分毎)に算出しており、蓄熱材84に蓄えられている熱量が0となれば、すなわち、蓄熱材84を用いた除霜運転が行えなくなれば、蓄熱除霜運転を終了する。
【0074】
(4.リバース除霜運転)
室外機2がリバース除霜運転を行う場合、CPU91は、図1に示すように四方弁22を破線で示す状態、すなわち、四方弁22のポートaとポートbとが連通するよう、また、ポートcとポートdとが連通するよう、切り替える。さらに、CPU91は、三方弁83のポートeとポートfとが連通するよう切り替える、あるいは、三方弁83のポートeとポートfとが連通している状態を維持する。これにより、冷媒回路10は、室外熱交換器23が凝縮器として機能するとともに室内熱交換器31が蒸発器として機能する。このとき、表1に示すように、膨張弁24は全開とされ、流量調整弁82は全閉とされる。さらに、室外ファン27および室内ファン32の運転が停止される。
【0075】
リバース除霜運転は、暖房運転(蓄熱運転)中に後述するリバース除霜運転の開始条件が成立すると開始される。リバース除霜運転を開始してから、所定時間(例えば、10分)経過後、あるいは、室外熱交換器23の温度が所定温度(例えば、10℃以上)になった時点で終了し、CPU91によって四方弁22が暖房運転(蓄熱運転)の状態に切り替えられて上述した暖房運転(蓄熱運転)が再開される。ここで、所定時間は、暖房運転(蓄熱運転)が中断することによりユーザーに不快感を与えない時間である。また、所定温度は、予め試験などを行って求められた温度であり、リバース除霜運転中に室外熱交換器23の温度が所定温度に到達すれば、室外熱交換器23で発生した霜が全て融けることが確認できている温度である。
【0076】
蓄熱除霜運転では、前述したように、流量調整弁82を全閉とする。そして、暖房運転(蓄熱運転)中に蓄熱材84に蓄えられた熱が、室外熱交換器23に発生した霜を融かして凝縮した冷媒を蒸発させることに使われる。このため、蓄熱除霜運転では、蓄熱材84に蓄えられた熱量が時間とともに減少していく。従って、蓄熱除霜運転は、暖房を中断せずに室外熱交換器23の除霜ができるというメリットを有するが、蓄熱除霜運転終了後は、室外熱交換器23に霜が融け残る場合がある。これに対し、リバース除霜運転では、圧縮機21から吐出される高温の冷媒のすべてが室外熱交換器23へ流入し、かつ、リバース除霜運転中は、圧縮機21の回転数を高回転数に維持して駆動する。このため、高温の冷媒を室外熱交換器23に供給し続けることができるので、暖房運転が中断するというデメリットはあるものの、霜を融かすための熱量を室外熱交換器23に継続的に与え続けることができる。従って、リバース除霜運転終了後は、室外熱交換器23に霜の融け残りが発生しない。
【0077】
<蓄熱材の蓄熱量制御>
上述したように、本実施形態の空気調和機1は、除霜運転として、暖房運転を中断することなく、蓄熱材84に蓄えられた熱を利用して室外熱交換器23の除霜を行う蓄熱除霜運転を有する。蓄熱除霜運転では、蓄熱材84に蓄えられた熱で室外熱交換器23に発生した霜を融かして凝縮した冷媒を蒸発させる必要があるため、室外熱交換器23に発生した霜を融かして凝縮した冷媒を蒸発させて圧縮機21に吸入させるのに十分な熱量が蓄熱材84に蓄えられる必要がある。このため、暖房運転中に蓄熱材84に上述した十分な熱量が蓄えられるようにする必要があるが、蓄熱材84の蓄熱量を高める運転を優先させるために流量調整弁82の開度を大きくすれば、圧縮機21から蓄熱材84へ流れる冷媒の量が増加する反面、圧縮機21から室内熱交換器31へ流れる冷媒の量が減少するため、暖房能力が低下して、室内機3で発揮される暖房能力が低下する。そこで本実施形態では、暖房能力の低下を抑制しつつ、蓄熱材84の蓄熱量を高めるため、CPU91による蓄熱運転の制御が以下のように実行される。
【0078】
[第1の制御例]
図3は、暖房運転時においてCPU91により実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0079】
暖房運転を開始したCPU91は、室外熱交換器23に発生した霜を融かすのに必要な熱量である第1熱量Qdを算出する(ステップ101)。第1熱量Qdは、室外熱交換器23に発生した霜を全て融かすために必要な熱量(単位:kJ)である。第1熱量Qdは、例えば、以下のようにして算出される。
【0080】
第1熱量Qdは、氷点下の温度である霜の温度を0℃まで上昇させるのに必要な顕熱量Qd1と、0℃まで温度が上昇した霜を融かして水にするのに必要な潜熱量Qd2との合計値となる。これら各熱量の計算式を以下の数式1~3に示す。
Qd=Qd1+Qd2 ・・・(数式1)
Qd1=m1×c1×ΔT1 ・・・(数式2)
Qd2=m1×hw ・・・(数式3)
m1:霜の質量(単位:kg)
c1:水の比熱=2.09(単位:kJ/(kg・K))
ΔT1:除霜運転前の室外熱交換器23の温度と、除霜運転後の室外熱交換器23の温度との温度差(単位:℃)
hw:霜の融解熱=333.5(単位:kJ/kg)
【0081】
数式1~3の各値のうち、水の比熱c1と霜の融解熱hwは定数である。また、除霜運転後の室外熱交換器23の温度は、除霜運転前の室外熱交換器23における着霜状態に関わらず、除霜運転終了直後において霜が全て水となる温度を0℃とみなして、予め記憶部92に記憶される。また、霜の質量m1は、既知の算出方法を用いて求めればよく、例えば、特開平7-167473号公報に記載されているように、単位時間当たりに室外熱交換器23に発生する霜の質量を求め、これに暖房運転時間を積算して求めればよい。
【0082】
除霜運転前の室外熱交換器23の温度と除霜運転後の室外熱交換器23の温度との温度差ΔT1は、室外熱交換器23に取り付けられた熱交温度センサ75の検出信号を用いて算出することができる。これら熱交温度センサ75の検出信号や配管温度センサ80の検出信号は、室外熱交換器23の温度に関する情報として、定期的(例えば、1分毎)にCPU91に読み込まれる。CPU91は、数式1~3により、室外熱交換器23に発生した霜を融かすのに必要な熱量である第1熱量Qdを算出する。
【0083】
上述したように、水の比熱c1、霜の融解熱hw、および、除霜運転後の室外熱交換器23の温度はそれぞれ定数であるので、第1熱量Qdは、除霜運転開始前の霜の質量m1と、除霜運転前の室外熱交換器23の温度とに応じて定まる。例えば、霜の質量m1が大きい場合は、霜の質量m1が小さい場合より第1熱量Qdが大きくなる。また、除霜運転前の室外熱交換器23の温度が低い場合は、除霜運転前の室外熱交換器23の温度が高い場合と比べて温度差ΔT1が大きくなるので、第1熱量Qdが大きくなる。
【0084】
次に、CPU91は、蓄熱用熱交換器81における蓄熱材84に蓄えられる熱量である第2熱量Qc(単位:kJ)を算出する(ステップ102)。第2熱量Qcは、蓄熱材84に蓄えられる熱量であって、圧縮機21からの放射熱の受熱量と、第1通路81aにおける冷媒との熱交換作用で得られる熱量との総和に相当する。第2熱量Qcは、例えば、以下の数式4で算出される。
【0085】
Qc=m2×c2×ΔT2 ・・・(数式4)
m2:蓄熱材84の質量(単位:kg)
c2:蓄熱材84の比熱(単位:kJ/(kg・K))
ΔT2:暖房運転前の蓄熱材84の温度と現在の蓄熱材84の温度との温度差(単位:℃)
【0086】
数式4の各値のうち、蓄熱材84の質量m2と蓄熱材84の比熱c2は定数である。蓄熱材84の質量m2および比熱c2は、蓄熱材84の大きさ、材料によって定まり、これらの値は予め記憶部92に記憶されている。
【0087】
暖房運転前の蓄熱材84の温度と現在の蓄熱材84の温度との温度差ΔT2は、蓄熱材84に取り付けられた温度センサ85の検出信号を用いて算出することができる。温度センサ85の検出信号は、蓄熱材84の温度に関する情報として、定期的(例えば、1分毎)にCPU91に読み込まれる。CPU91は、温度センサ85の検出信号に基づいて、数式4により、第2熱量Qcを算出する。なお、CPU91は、蓄熱除霜運転中は、第2熱量Qcを一定時間(例えば、1分)ごとに算出し、時系列で記憶部92に記憶している。
【0088】
暖房運転前の蓄熱材84の温度と現在の蓄熱材84の温度との温度差ΔT2は、蓄熱材84への蓄熱が進み第2熱量QCがQcMAXに近づくのにつれて増加し、温度差ΔT2の増加する早さは、縮機21の発熱量、第1通路81aを流れる冷媒の循環量などによって変化はするものの、第1通路81aを通過する冷媒の量が多いほど温度差ΔT2の増加する早さは早くなる、つまり、第2熱量Qcが早く大きな値となる。
【0089】
続いて、CPU91は、算出された第1熱量Qdが第1所定値Th1未満か否かを判定する(ステップ103)。ここで、第1所定値Th1は、除霜運転の要否を判定するのに使用される値であり、第1熱量Qdが第1所定値Th1以上であれば、室内機3で発揮される暖房能力に支障をきたす量の霜が室外熱交換器23で発生していることが、予め行った試験などにより判明している値である。
【0090】
CPU91は、算出された第1熱量Qdが第1所定値Th1以上であると判定した場合(ステップ103において「N」)は、除霜運転を開始する(ステップ110)。除霜運転として蓄熱除霜運転およびリバース除霜運転のいずれを選択するかの決定手順については、後述する。
【0091】
ステップ103において、CPU91は、算出された第1熱量Qdが第1所定値Th1未満であると判定した場合(ステップ103において「Y」)は、ステップ101およびステップ102において算出された第1熱量Qdから第2熱量Qcを減じた差分(Qd-Qc)である熱量差ΔQを算出する(ステップ104)。そして、CPU91は、算出した熱量差ΔQの大きさが所定値(図3の例では、0。本発明における「所定の閾値」に相当)以上であるか否かを判定する(ステップ105)。なお、上記所定値は、典型的には0であるが、後述するように、0を中心とする所定範囲の値であってもよい(図4のステップ105aを参照)。
【0092】
熱量差ΔQが0以上の場合、つまり、第1熱量Qdが第2熱量Qcより大きい場合は、蓄熱除霜運転時に蓄熱材84の蓄熱量が不足して、室外熱交換器23から流出した冷媒を蓄熱用熱交換器81において十分に蒸発させることができず、所望とする除霜能力が得られない。反対に、熱量差ΔQが0未満の場合、つまり、第2熱量Qcが第1熱量Qdよりも大きい場合は、蓄熱除霜運転時に蓄熱材84の蓄熱量が足り、室外熱交換器23から流出した冷媒を蓄熱用熱交換器81において十分に蒸発させることができる。本実施形態では、暖房運転(蓄熱運転)時に、熱量差ΔQの大きさに応じて、圧縮機21の回転数および流量調整弁82の開度が調整される。
【0093】
例えば、CPU91は、熱量差ΔQが0以上であると判定したとき(ステップ105において「Y」)、つまり、第1熱量Qdが第2熱量Qcより大きくて蓄熱材84の蓄熱量で室外熱交換器23から流出した冷媒を十分に蒸発させることができない場合は、熱量差ΔQの大きさに応じて圧縮機21の回転数を上昇させる(ステップ106)とともに、熱量差ΔQの大きさに応じて流量調整弁82の開度を増加させる(ステップ107)。圧縮機21の回転数上昇制御および流量調整弁82の開度増加制御の順序は特に限定されず、これらの制御が同時に行われてもよい。
【0094】
流量調整弁82の開度の増加により、圧縮機21から蓄熱用熱交換器81の第1通路81へ流れる冷媒の量が多くなり、その結果、第2熱量Qcが増加する。また、圧縮機21の回転数の上昇により、流量調整弁82の開度の増加に伴う圧縮機21から室内熱交換器31へ流れる冷媒の量の不足が補償されるため、室内機3の暖房能力の低下が抑えられる。
【0095】
一方、CPU91は、熱量差ΔQが0未満であると判定したとき(ステップ105において「N」)、つまり、第2熱量Qcが第1熱量Qdよりも大きくて蓄熱材84の蓄熱量で室外熱交換器23から流出した冷媒を十分に蒸発させることができる場合は、熱量差ΔQの大きさに応じて圧縮機21の回転数を低下させる(ステップ108)とともに、熱量差ΔQの大きさに応じて流量調整弁82の開度を減少させる(ステップ109)。圧縮機21の回転数低下制御および流量調整弁82の開度減少制御の順序は特に限定されず、これらの制御が同時に行われてもよい。
【0096】
流量調整弁82の開度の減少により、圧縮機21から蓄熱用熱交換器81の第1通路81へ流れる冷媒の量が少なくなり、その結果、第2熱量Qcの増加が抑えられる。また、圧縮機21から蓄熱用熱交換器81の第1通路81へ流れる冷媒の量が少なくなった分、室内機3の室内熱交換器31へと流れる冷媒量が増加するが、圧縮機21の回転数の低下により冷媒回路10全体の冷媒循環量を低下させるので、室内機3で暖房能力が過剰となることがなく、また、圧縮機21の消費電力も低減できる。
【0097】
このように、CPU91は、室外熱交換器23の温度に関する情報に基づいて室外熱交換器23に発生した霜を融かすのに必要な熱量である第1熱量Qdを算出し、蓄熱材84の温度に関する情報に基づいて蓄熱材84に蓄えられた熱量である第2熱量Qcを算出し、第1熱量Qdから第2熱量Qcを減じた差分である熱量差ΔQの大きさに応じて圧縮機21の回転数及び流量調整弁82の開度を制御する制御部として機能する。CPU91は、上述したステップ101~ステップ109の処理を、第1熱量Qdおよび第2熱量Qcを算出する毎に、つまり、各熱量の算出に使用する各温度センサの検出値を定期的(例えば、1分毎)に取り込む毎に実行する。これにより、室内機3の暖房能力の低下を防ぎつつ、室外機2の除霜に必要な熱量を蓄熱材に蓄えることができる。
また、ステップ105において「No」の判定が続くことで流量調整弁82の開度が全閉となった場合は、蓄熱材84に冷媒を流さない、つまり、圧縮機21から吐出された冷媒が全て室内熱交換器31へと流れる一般的な暖房運転となる。
【0098】
なお、本制御例では、圧縮機21および流量調整弁82の制御の基準となる熱量差ΔQの所定値を0としている。蓄熱除霜運転を行う際は、実際は第2熱量Qcと圧縮機21の駆動による熱量とで室外熱交換器23の霜を融かすので、前述したようにQdMAXがQcMAXと同じとなるように蓄熱材84の熱容量が決められているため、第2熱量Qcが第1熱量Qd以上の熱量であれば、蓄熱除霜運転で室外熱交換器23の霜を融かし切ることができる。つまり、蓄熱除霜運転では、室外熱交換器23の第1熱量Qdは、蓄熱材84の第2熱量Qcで賄われ、室内熱交換器31の熱量は、圧縮機21の駆動による熱量で賄われる。これにより、蓄熱用熱交換器81を用いて暖房運転を中断せずに除霜運転を行いつつ、室外熱交換器23での霜の融け残しを防ぐことができる。
【0099】
[第2の制御例]
図4は、暖房運転時においてCPU91により実行される処理手順の他の一例を示すフローチャートである。この例では、圧縮機21および流量調整弁82の制御の基準となる熱量差ΔQの所定値を0とすることに代えて、熱量差ΔQの所定値をα以上β未満の範囲とするものである。なお、この熱量差ΔQの所定値の違い以外については、第1の制御例と同じであるため、以下では詳細な説明を省略する。
【0100】
図4に示すフローチャートは、図3に示す第1の制御例でのステップ105が、ステップ105aと105bとに置き換わっていることを除いて、第1の制御例でのフローチャートと同じである。本制御例では、CPU91は、熱量差ΔQを算出するステップ(ステップ104)の後、熱量差ΔQの値がα以上β未満であるか否かを判定する(ステップ105a)。ここで、所定値αおよび所定値βは、それぞれ予め試験などを行って求められた値であり、熱量差ΔQの値がα以上β未満であれば、その時点の第2熱量Qcで第1熱量Qdを賄える値であるとみなしても問題ないことが判明している値である。CPU91は、熱量差ΔQの値がα以上β未満の場合(ステップ105aにおいて「Y」)、現在の第1熱量Qdに対し現在の第2熱量Qcが過不足ない値であると判断し、圧縮機21の回転数および流量調整弁82の開度を現状のまま維持してステップ101へ戻る。
【0101】
CPU91は、熱量差ΔQの値がα以上β未満でない場合(ステップ105aにおいて「N」)、熱量差ΔQがβ以上であるか否かを判定する(ステップ105b)。CPU91は、熱量差ΔQがβ以上であると判定したとき(ステップ105bにおいて「Y」)、熱量差ΔQの大きさに応じて圧縮機21の回転数を上昇させる(ステップ106)とともに、熱量差ΔQの大きさに応じて流量調整弁82の開度を増加させる(ステップ107)。また、CPU91は、熱量差ΔQがβ以上でないと判定したとき(ステップ105bにおいて「N」)、つまり、熱量差ΔQがα未満であると判定したとき、熱量差ΔQの大きさに応じて圧縮機21の回転数を低下させる(ステップ108)とともに、熱量差ΔQの大きさに応じて流量調整弁82の開度を減少させる(ステップ109)。
【0102】
なお、所定値α、βの値は任意に設定可能であり、蓄熱材84や室外熱交換器23の種類や仕様、冷媒の種類、熱量差ΔQの算出精度等に応じて任意に設定可能である。所定値α、βで区分される熱量差ΔQの範囲は、0を中心とする所定範囲とされるが、所定値α、βの絶対値は、同一の値であってもよいし、異なる値であってもよい。この場合、所定値αは、圧縮機21の駆動による熱量を考慮した値であればよく、第2熱量Qcが第1熱量Qdより小さい熱量であってもその差分が圧縮機21の駆動による熱量で賄える程度の値であればよい。
【0103】
第1の制御例における所定値を本制御例のように所定範囲(α以上β未満)とすることで、圧縮機21および流量調整弁82の制御のばたつき(ハンチング)を防止でき、圧縮機21の回転数および流量調整弁82の開度を安定に制御することができる。
【0104】
また、本制御例においても、圧縮機21の回転数および流量調整弁82の開度は、熱量差ΔQの大きさに対応する変化量で変化するように制御されるのが好ましい。これにより、第2熱量Qcを上記所定範囲に迅速に収めることができる。さらには、圧縮機21の回転数および流量調整弁82の開度がいずれも所定のステップ量ずつ変化するような制御が実行されてもよい。
【0105】
流量調整弁82の開度は、圧縮機21の回転数の変化に対応して変化させるのが好ましい。例えば、室内熱交換器31へ流入する冷媒の量が、蓄熱回路11に流れる冷媒量に関わらず一定となるように、流量調整弁82の開度が圧縮機21の回転数にリンクして制御されることが好ましい。流量調整弁82の開度の制御には全開および全閉が含まれてもよい。例えば、熱交温度センサ75により検出される室外熱交換器23の温度が0℃より高い場合、着霜量が少ない場合、もしくは、着霜量が現時点で蓄熱材84に蓄えられた熱量で十分に除霜が行なえるレベルである場合(圧縮機21の排熱のみで蓄熱される熱量増加分のみで除霜を行うのに十分な蓄熱量が得られる場合)などは、流量調整弁82を全閉としてもよい。この場合、蓄熱運転は、単なる暖房運転になる。
【0106】
<除霜運転制御>
上述のように本実施形態の空気調和機1は、蓄熱除霜運転とリバース除霜運転の2つの除霜運転を行うことができる。蓄熱除霜運転では、暖房運転を継続しながら蓄熱材84に蓄えられた熱を利用して室外熱交換器23の除霜を行うが、このとき、第2熱量Qcが第1熱量Qdより小さい値である状態で除霜運転開始条件(前述したステップ103の条件)が成立してしまうと、室外熱交換器23で発生した霜を融かすのに必要な第1熱量Qdに対して蓄熱材84に蓄えられる第2熱量Qcが足りないために、蓄熱除霜運転後に室外熱交換器23に霜の融け残しが発生する。室外熱交換器23に霜の融け残しが発生すると、室外熱交換器23における霜が融け残っている箇所で冷媒と外気との熱交換が霜によって阻害されるために、霜の融け残りがない場合と比べて室外熱交換器23における熱交換量が低下してしまう。一方、リバース除霜運転では、上述したように十分な量の高温冷媒を継続的に室外熱交換器23へ流入させることができるため、室外熱交換器23の霜の融け残しを防止できる。しかし、リバース除霜運転は、冷媒回路10を冷房運転時の状態とする必要があるために暖房運転が中断される。このため、リバース除霜運転中は室温が低下してユーザーに不快感を与えるおそれがある。そこで本実施形態では、蓄熱除霜運転とリバース除霜運転とを適切に選択して行うことで、室温の低下によるユーザーへの不快感を抑制しつつ、除霜運転後の室外熱交換器23における霜の融け残しの発生を防ぐ。そのために、制御装置90(CPU91)は、以下のような除霜運転制御を実行する。
【0107】
本実施形態では、室外熱交換器23に発生した霜をすべて融かすために必要な熱量である第1熱量Qdが第1所定値Th1より大きい値となったとき、除霜運転が必要と判断する。このとき、蓄熱材84に蓄えられる熱量である第2熱量Qcが第2所定値Th2よりも大きい値であれば、蓄熱除霜運転を行い、第2熱量Qcが第2所定値Th2よりも小さい値であれば、リバース除霜運転を行う。これにより、蓄熱除霜運転とリバース除霜運転とをそれぞれ適切なタイミングで行えるため、リバース除霜運転および蓄熱除霜運転のいずれか一方のみを行う場合よりも、リバース除霜運転の運転回数を減らしつつ、蓄熱除霜運転での霜の融け残しを抑えることができる。したがって本実施形態によれば、リバース除霜運転での室温の低下によるユーザーに与える不快感と蓄熱除霜運転で生じる霜の融け残しをともに抑制することができる。
【0108】
ここで、第2所定値Th2は、予め試験などを行って求められた値であり、第2熱量Qcが第2所定値Th2以下で蓄熱除霜運転を行うと、蓄熱除霜運転後における室外熱交換器23の霜の融け残し量が蓄熱除霜運転終了後に再開される暖房運転に支障をきたすことが確認できている値である。第2所定値Th2は、第1所定値Th1より小さく、その値は、上述した蓄熱除霜運転を実行することができる熱量であれば特に限定されず、例えば、第2熱量Qcの最大値の約50%の値に設定される。
【0109】
図5は、除霜運転開始条件が成立して蓄熱除霜運転またはリバース除霜運転が行われたたときの第1熱量Qdの時間変化(図5(A))および第2熱量Qcの時間変化(図5(B))を表すものである。図5では、室外熱交換器24に霜が発生するような低外気温下での暖房運転(蓄熱運転)時において、暖房運転(蓄熱運転)中に蓄熱量制御を行った場合の第1熱量Qdおよび第2熱量Qcの時間変化と除霜運転開始のタイミングを示している。
【0110】
まず、時刻t0で暖房運転(蓄熱運転)を開始すると、第1熱量Qdおよび第2熱量Qcは徐々に増加する。そして、時刻t1で第1熱量Qdが第1所定値Th1以上になったとき、室外熱交換器23の除霜運転が必要と判断され、そのときの第2熱量Qcが第2所定値Th2以上か否かが判定される。この際、図5(B)に示したように、時刻t1では第2熱量Qcは第2所定値Th2以上であるため(図5(B)参照)、除霜運転として蓄熱除霜運転が選択されて行われる。
【0111】
時刻t1において、蓄熱材84に蓄えられた第2熱量Qcは、室外熱交換器23に発生している霜を蓄熱除霜運転で融かす際に使用される熱量である。このとき、第1熱量Qdが第2熱量Qcよりも大きい場合は、室外熱交換器23に発生している霜を融かすために必要な第1熱量Qdから、蓄熱材84に蓄えられた第2熱量Qcを差し引いた値が、蓄熱除霜運転後に室外熱交換器23に融け残る霜の量に相当する。時刻t1で蓄熱除霜運転が開始されると、時間が経つのにつれて第1熱量Qdおよび第2熱量Qcはともに減少し、時刻t2で蓄熱材84に蓄えられた第2熱量Qcが0となれば蓄熱除霜運転が終了して暖房運転(蓄熱運転)に復帰すると、第1熱量Qdおよび第2熱量Qcは増加に転じる。時刻t3において、第1熱量Qdが第1所定値Th1へ再度到達したとき、第2熱量Qcは第2所定値Th2以上であるため、時刻t3においても除霜運転として蓄熱除霜運転が選択されて行われる。
【0112】
時刻t3で蓄熱除霜運転が開始されると、時間が経つのにつれて第1熱量Qdおよび第2熱量Qcはともに減少し、時刻t4で蓄熱材84に蓄えられた第2熱量Qcが0となれば蓄熱除霜運転が終了して暖房運転(蓄熱運転)に復帰すると、第1熱量Qdおよび第2熱量Qcは再び増加する。そして、時刻t5において第1熱量Qdが第1所定値Th1へ再度到達する。このとき、図5(B)に示すように第2熱量Qcが第2所定値Th2未満であるため、除霜運転としてリバース除霜運転が選択されて行われる。リバース除霜運転では、圧縮機21から室外熱交換器23に高温の冷媒を流し続けることができるため、室外熱交換器23に発生している霜が全て融けるまで除霜運転を継続することが可能となる。このため、室外熱交換器23の除霜において霜の融け残しが発生しない。なお、リバース除霜運転を行っているときは、蓄熱材84に蓄えられた第2熱量Qcは使用されず、蓄熱材84には圧縮機21からの放射熱が蓄えられるため、第2熱量Qcはリバース除霜運転中も増加する。
【0113】
以上に説明したように、第1熱量Qdと第2熱量Qcの値に応じて蓄熱除霜運転とリバース除霜運転とをそれぞれ適切なタイミングで行うことができる。これにより、蓄熱除霜運転とリバース除霜運転とをそれぞれ適切なタイミングで行えるため、上述のように、リバース除霜運転および蓄熱除霜運転のいずれか一方のみを行う場合よりも、リバース除霜運転の運転回数を減らしつつ、蓄熱除霜運転での霜の融け残しを抑えることができる。
【0114】
図6は、CPU91により実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。図6は、図3および図4におけるステップ110のサブルーチンであり、除霜運転時の除霜運転方法の決定および決定した運転の実行に関わる処理の流れを示すものである。
【0115】
図3あるいは図4におけるステップ103において、CPU91にて算出された第1熱量Qdが第1所定値Th1以上の場合は、除霜運転が必要と判断されて除霜運転方法の決定および決定した運転の実行に関わる処理が開始される。まず、ステップ201において、CPU91は、第2熱量Qcが第2所定値Th2以上であるか否かを判定し、第2熱量Qcが第2所定値Th2以上の場合(ステップ201において「Yes」)は、ST202に処理を進め、第2熱量Qcが第2所定値Th2未満の場合(ステップ201において「No」)は、リバース除霜運転を開始する(ステップ206)。
【0116】
CPU91は、第2熱量Qcが第2所定値Th2以上の場合(ステップ201において「Yes」)、蓄熱除霜運転の実行回数nがあらかじめ設定された所定回数N未満であるか否かを判定する(ステップ202)。本実施形態では、後述するように、蓄熱除霜運転を所定回数連続して実行したときは、第2熱量Qcが第2所定値Th2以上の場合であっても、除霜運転としてリバース除霜運転を選択する。
【0117】
蓄熱除霜運転の実行回数nが所定回数N(例えば、5回)未満の場合(ステップ202において「Yes」)、CPU91は、蓄熱除霜運転を開始する(ステップ203)。蓄熱除霜運転を行うことで、暖房運転を停止させることなく、室外熱交換器23の除霜を行うことができる。
【0118】
ここで、所定回数Nは、蓄熱除霜運転後で室外熱交換器23に霜が融け残った霜が蓄積している状態が長時間続くことによる室外熱交換器23における熱交換量の減少を防ぐために設定される値である。すなわち、蓄熱除霜運転では室外熱交換器23の霜の融け残りが発生するおそれがあり、蓄熱除霜運転を連続して行うと、第1熱量Qdが第1所定値以上(Qd≧Th1)とならない範囲で室外熱交換器23に融け残りの霜が蓄積する。その結果、室外熱交換器23に霜の融け残しが発生すると、室外熱交換器23における霜が融け残っている箇所で冷媒と外気との熱交換が霜によって阻害されるために、霜の融け残りがない場合と比べて室外熱交換器23における熱交換量が低下してしまう。室外熱交換器23に霜の融け残しがある状態で暖房運転を継続すると、暖房運転で発揮される暖房能力が低下し、この暖房能力の低下分を圧縮機21の回転数上昇で補おうとするので圧縮機21の消費電力が増加する。そこで、本実施形態では後述するように、蓄熱除霜運転の実行回数nが所定回数Nに達した時点で、第2熱量Qdが第2所定値Th2以上の場合でもリバース除霜運転が開始される(ステップ202において「No」→ステップ206)。リバース除霜運転を行うことで、蓄熱除霜運転時に融け残って室外熱交換器23に蓄積している霜を全て融かすことができ、暖房能力が向上して圧縮機21の回転数の不要な上昇を抑制できる。
【0119】
ST203の処理を終えたCPU91は、蓄熱除霜運転の終了条件が成立したか否かを判定し(ステップ204)、蓄熱除霜運転の終了条件が成立していなければ(ステップ204において「No」)、蓄熱除霜運転の終了条件が成立するまで蓄熱除霜運転を継続する。本実施形態では、例えば、室外熱交換器23の温度が所定温度(例えば、10℃以上)となった場合、あるいは、蓄熱材84に蓄えられた熱量が0となった場合に蓄熱除霜運転の終了条件が成立したと判定される。
【0120】
蓄熱除霜運転の終了条件が成立したとき(ステップ204において「Yes」)、CPU91は、蓄熱除霜運転の実行回数nに1を加えてn+1とし(ステップ205)、処理を終了する(ステップ212)。以後、図3または図4のステップ101へ戻って上述した各処理を実行する。
【0121】
一方、ステップ201において、第2熱量Qcが第2所定値Th2未満の場合(ステップ201において「No」)、CPU91は、リバース除霜運転を開始する(ステップ206)。これにより、室外熱交換器23に発生した霜や蓄熱除霜運転で室外熱交換器23に蓄積している霜を確実に融かすことができる。
【0122】
続いて、CPU91は、リバース除霜運転の終了条件が成立したか否かを判定し(ステップ207)、リバース除霜運転の終了条件が成立していなければ(ステップ207において「No」)、リバース除霜運転の終了条件が成立するまでリバース除霜運転を継続する。本実施形態では、例えば、リバース除霜運転を開始してから所定時間(例えば、10分)が経過した場合のほか、熱交温度センサ75により検出される室外熱交換器23の温度、あるいは、配管温度センサ80により検出される室外機液管63の配管温度が所定温度(例えば、10℃)以上になった場合に、リバース除霜運転の終了条件が成立したと判定される。
【0123】
リバース除霜運転の終了条件が成立したとき(ステップ207において「Yes」)、CPU91は、蓄熱除霜運転の実行回数「n」を初期値(例えば、0)にリセットし(ステップ208)、処理を終了する。以後、図3または図4のステップ101へ戻って上述した各処理を実行する。
なお、蓄熱除霜運転の実行回数「n」は、暖房運転を開始する時点では初期値に設定されている。
【0124】
以上のように本実施形態において、CPU91は、室外熱交換器23に発生した霜を融かすのに必要な熱量である第1熱量Qdが第1所定値Th1より大きな値となったとき、室外熱交換器23の除霜が必要と判断し、蓄熱材84に蓄えられる熱量である第2熱量Qcが第2所定値Th2より大きいときは蓄熱除霜運転を実行し、第2熱量Qcが第2所定値Th2より小さいときはリバース除霜運転を実行する。
このように、蓄熱材84に蓄えられた熱量(第2熱量Qc)を基準として蓄熱除霜運転とリバース運転除霜とを選択することにより、蓄熱除霜運転とリバース除霜運転とをそれぞれ適切なタイミングで行うことができる。これにより、上述のように、リバース除霜運転および蓄熱除霜運転のいずれか一方のみを行う場合よりも、リバース除霜運転の運転回数を減らしつつ、蓄熱除霜運転での霜の融け残しを抑えることができるので、リバース除霜運転での室温の低下によるユーザーに与える不快感と蓄熱除霜運転で生じる霜の融け残しをともに抑制することができる。
【0125】
さらに本実施形態においては、CPU91は、蓄熱除霜運転を所定回数N回連続して実行した後、第1熱量Qdが再び第1所定値Th1より大きな値となったときは、リバース除霜運転を実行する。このように蓄熱除霜運転が所定回数N回実行された後はリバース除霜運転が強制的に実行されるようにすることで、蓄熱除霜運転後において室外熱交換器23に融け残った霜が蓄積した場合でも、リバース除霜運転の実行により室外熱交換器23に蓄積した霜を確実に融かすことができる。これにより、暖房運転の継続時間をできるだけ長くしつつ、室外熱交換器23に融け残した霜の蓄積による室外熱交換器23における熱交換量の減少を抑えることができるので、圧縮機21の回転数を不要に上昇させることを抑制できる。
【0126】
また、本実施形態では、上記所定回数Nを5回としたが、空気調和機1の仕様や設定などにより任意に調整可能とされてもよい。なお、このような蓄熱除霜運転を所定回数N回実行した後にリバース除霜運転を実行する処理も任意であり、必要に応じて省略されてもよい。
【0127】
(第2の実施形態)
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態においても、第1の実施形態と同様に室外熱交換器23に発生した霜をすべて融かすために必要な熱量である第1熱量Qdが第1所定値Th1より大きい値となったとき、除霜運転が必要と判断する。しかし、本実施形態では、除霜運転の選択方法が上述の第1の実施形態と異なる。
【0128】
本実施形態では、除霜運転が必要と判断されたとき、それぞれ算出した第1熱量Qdから第2熱量Qcを減じた熱量差(Qd-Qc)である熱量差ΔQを算出する。ここで、熱量差ΔQは、蓄熱除霜運転を行った後に室外熱交換器23で融け残った霜を融かすために必要な熱量を表している。そして、算出した熱量差ΔQの値を用いて蓄熱除霜運転あるいはリバース除霜運転のいずれを行うかを選択する。具体的には、熱量差ΔQが第3所定値Th3よりも小さい値であれば、蓄熱除霜運転を行い、熱量差ΔQが第3所定値Th3よりも大きい値であれば、リバース除霜運転を行う。
【0129】
ここで、第3所定値Th3は、予め試験などを行って求められた値であり、熱量差ΔQ第3所定値Th3以上で蓄熱除霜運転を行うと、蓄熱除霜運転後における室外熱交換器23の霜の融け残し量が蓄熱除霜運転終了後に再開される暖房運転に支障をきたすことが確認できている値である。本実施形態では、第1所定値Th1の約50%の値に設定される。
【0130】
図7は、本実施形態においてCPU91により実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。図7は、図3および図4におけるステップ110のサブルーチンであり、除霜運転時の処理の流れを示すものである。以下、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0131】
本実施形態では、除霜運転として蓄熱除霜運転とリバース除霜運転のいずれかを選択するかの基準として、室外熱交換器23に発生した霜を融かすのに必要な熱量である第1熱量Qdと、蓄熱材84に蓄えられる熱量である第2熱量Qcとの差分を参照する点で、第1の実施形態と異なる。
【0132】
本実施形態では、図6に示す第1の実施形態におけるステップ201が、ステップ201aとステップ201bに置き換わっていることを除いて、第1の実施形態と同じである。本実施形態では、図3及び図4におけるステップ103において、CPU91にて算出された第1熱量Qdが第1所定値Th1以上の場合、除霜運転が開始される。まず、CPU91は、第1熱量Qdから第2熱量Qcを減じた差分である熱量差ΔQを算出するステップ(ステップ201a)の後、算出した熱量差ΔQの値が第3所定値Th3以上であるか否かを判定する(ステップ201b)。
【0133】
CPU91は、熱量差ΔQの値が第3所定値Th3未満であれば(ステップ201bにおいて「Yes」)、蓄熱除霜運転を選択し、その実行回数nが連続して所定回数N以下(ステップ202において「Yes」)であることを条件として、蓄熱除霜運転を開始する(ステップ203)。
【0134】
一方、熱量差ΔQの値が第3所定値Th3以上の場合(ステップ201bにおいて「No」)、あるいは、熱量差ΔQの値が第3所定値Th3以上の場合でも蓄熱除霜運転の実行回数nが連続して所定回数Nに達したときは(ステップ202において「No」)、上述したように室外熱交換器23の霜の融け残しが長時間続くことがあり、室外熱交換器23に霜の融け残しが発生すると、室外熱交換器23における霜が融け残っている箇所で冷媒と外気との熱交換が霜によって阻害されるために、霜の融け残りがない場合と比べて室外熱交換器23における熱交換量が低下してしまう。室外熱交換器23に霜の融け残しがある状態で暖房運転を継続すると、暖房運転で発揮される暖房能力が低下し、この暖房能力の低下分を圧縮機21の回転数上昇で補おうとするので圧縮機21の消費電力が増加する。そこで、圧縮機21の回転数を不要に上昇させることを防止するためにリバース除霜運転を選択し、その運転を開始する(ステップ206)。
【0135】
本実施形態においては、CPU91は、第1熱量Qdが第1所定値Th1より大きな値となったとき、室外熱交換器23の除霜が必要と判断して第1熱量Qdと第2熱量Qcとの熱量差である熱量差ΔQを算出し、算出した熱量差ΔQが第3所定値Th3より大きいときはリバース除霜運転を実行し、算出した熱量差ΔQが第3所定値Th3より小さいときは蓄熱除霜運転を実行する。
【0136】
このように、第1熱量Qdと第2熱量Qcとの熱量差であるΔQを用いることで室外熱交換器23で融け残った霜を融かすために必要な熱量を正確に推定し、推定した融け残った霜を融かすために必要な熱量に基づいて蓄熱除霜運転とリバース除霜運転とを選択するため、第1の実施形態と比べてより適切に蓄熱除霜運転とリバース除霜運転とを選択して実行することができる。これにより、上述のように、リバース除霜運転および蓄熱除霜運転のいずれか一方のみを行う場合よりも、リバース除霜運転の運転回数を減らしつつ、蓄熱除霜運転での霜の融け残しを抑えることができるため、リバース除霜運転での室温の低下によるユーザーに与える不快感と蓄熱除霜運転で生じる霜の融け残しをともに抑制することができる。
【0137】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0138】
例えば以上の実施形態では、ヒートポンプサイクル装置として、室外機と室内機が2本の冷媒配管で接続された空気調和機1を例に挙げて説明したが、これに代えて、ヒートポンプ式給湯装置にも本発明は適用可能である。
【0139】
図8はヒートポンプ式給湯装置100の一構成例を示す系統図である。以下、上述の実施形態と異なる構成について主に説明し、上述の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0140】
図8に示すように、ヒートポンプ式給湯装置100は、室内機2に代えて、給湯回路101を備える。給湯回路101は、凝縮器として機能する利用側熱交換器である給湯用熱交換器102と、貯湯タンク103と、給湯用熱交換器102と貯湯タンク103の間で水を循環させるポンプ104を備えた循環通路105とを有する。冷媒回路10は、圧縮機21からの吐出冷媒を給湯用熱交換器102、膨張弁24および室外熱交換器23の順で供給する暖房サイクルを形成する。
【0141】
このようなヒートポンプ式給湯装置100においても、室外熱交換器23に発生した霜を融かす除霜運転として、蓄熱用熱交換器81を蒸発器として機能させて蓄熱除霜運転を行うことができる。そして、室外熱交換器23に発生した霜を融かすのに必要な熱量である第1熱量から蓄熱材84に蓄えられる熱量である第2熱量を減じた差分に応じて圧縮機21の回転数および流量調整弁82の開度を制御することで、上述の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0142】
1…空気調和機(ヒートポンプサイクル装置)
2…室外機
3…室内機
10…冷媒回路
11…蓄熱回路
21…圧縮機
22…四方弁
23…室外熱交換器
24…膨張弁
31…室内熱交換器
75…熱交温度センサ
80…配管温度センサ
81…蓄熱用熱交換器
82…流量調整弁
83…三方弁
84…蓄熱材
85…温度センサ
90…制御装置
91…CPU(制御部)
100…ヒートポンプ式給湯装置(ヒートポンプサイクル装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8