(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 5/16 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
H02K5/16 A
(21)【出願番号】P 2020065169
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】田邉 洋一
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 智則
(72)【発明者】
【氏名】松井 庸佑
(72)【発明者】
【氏名】小俣 黎
(72)【発明者】
【氏名】小島 広雄
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-068554(JP,A)
【文献】特開平10-110699(JP,A)
【文献】特開2017-057907(JP,A)
【文献】国際公開第2019/212142(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子と、
前記回転子の回転軸に沿って配置されて前記回転子が固定されたシャフトと、
前記シャフトの一端側に設けられた第1軸受と、
前記シャフトの他端側に設けられた第2軸受と、
環状部と、前記環状部の前記回転軸方向における両端に形成された端面部と、を有し、
前記環状部と前記端面部とで覆われた内部に前記回転子を収容する外郭と、
前記第1軸受と前記第2軸受とを導通させる導通部材と、
前記外郭の外周面から径方向の外側に突出した脚部と
を備える電動機であって、
前記脚部には、防振部材が取り付けられる取付穴が形成され、
前記取付穴には、前記導通部材が固定される固定部が設けられ
、
前記導通部材は、前記取付穴に取り付けられる前記防振部材によって前記径方向の外側への移動が規制される
電動機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動機であって、
前記導通部材は、前記回転軸の軸線方向に沿うように前記外郭の外周面に配置される、
外周面側配置部を有し、
前記導通部材は、前記外周面側配置部が前記固定部に固定される
電動機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電動機であって、
前記固定部は、前記取付穴に連続して形成された溝部である
電動機。
【請求項4】
請求項3に記載の電動機であって、
前記固定部は、前記取付穴において前記回転軸からの距離が最小となる位置に形成されている
電動機。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電動機であって、
前記取付穴の外径側の一部が切り欠かれており、前記脚部の外周面と前記取付穴とが連続している
電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのベアリングハウスと、これらのベアリングハウス同士を導通させる導通部材とを備えた電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動機として、回転磁界を発生させる円筒状の固定子の内径側に、永久磁石を有する円柱状の回転子を固定子と同軸的に配置したインナーロータ型の電動機が知られている。この電動機は、例えば、空気調和機に搭載する送風ファンの回転駆動に用いられる。
【0003】
この電動機は、高周波スイッチングを行うPWM方式のインバータで駆動する場合に、軸受の内輪と外輪の間に電位差(軸電圧)を生じる。この軸電圧が軸受内部の油膜の絶縁破壊電圧に達すると、軸受内部に電流が流れて軸受に電食を発生させる。この軸受の電食を防止するために、電動機の回転軸方向の一端側に設けられた軸受と他端側に設けられた軸受とを、導通部材によって導通させるものが知られている。
導通部材を電動機の外郭の外周面に固定する従来技術として、特許文献1が挙げられる。また、導通部材を電動機の内部に埋め込む従来技術として、特許文献2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-20348号公報
【文献】特開2014-121100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、導通部材を電動機の外郭の外周面に固定すると、電動機の組立性を向上させることができるが、導通部材が外周面から脱落するおそれがあった。その一方で、導通部材を電動機の内部に埋め込むと、導通部材が電動機から脱落するのを防止できるが、埋め込みの工程が生じることで電動機の組立性が低下してしまう。
【0006】
そこで本発明は、導通部材が電動機から脱落するのを防止しつつ、組立性を向上させる電動機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電動機の一態様は、回転子と、上記回転子の回転軸に沿って配置されて上記回転子が固定されたシャフトと、上記シャフトの一端側に設けられた第1軸受と、上記シャフトの他端側に設けられた第2軸受と、環状部と、上記環状部の両端に形成された端面部と、を有し、上記環状部と上記端面部とで覆われた内部に上記回転子を収容する外郭と、上記第1軸受と上記第2軸受とを導通させる導通部材と、上記外郭の外周面から径方向の外側に突出した脚部とを備える。上記脚部には、防振部材が取り付けられる取付穴が形成される。上記取付穴には、上記導通部材が固定される固定部が設けられている。
【0008】
本発明によれば、導通部材が電動機から脱落するのを防止しつつ、組立性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】本発明に係る電動機のブラケットの斜視図である。
【
図4】
図3のブラケットを取り外した状態の、本発明に係る電動機の全体斜視図である。
【
図5】
図1における切り込み溝部に沿った断面を示す断面図である。
【
図6】出力側から見た本発明に係る電動機の、防振部材および導通部材を取り外した状態の全体斜視図である。
【
図7】
図6において防振部材および導通部を取り付けた状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なり得ることに留意すべきである。したがって、具体的な構成部品については以下の説明を参酌して判断すべきものである。
【0011】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
以下に、本発明の一実施形態に係る電動機について説明する。
【0013】
<電動機の全体構成>
図1乃至
図5は、本実施形態における電動機1の構成を説明する図である。これらの図に示すように、この電動機1は、例えば、ブラシレスDCモータである。この電動機1は、図示しないが、例えば空気調和機の室外機に搭載される送風ファンを回転駆動するために用いられる。
【0014】
本実施形態における電動機1は、
図1、
図2に示すように、固定子(ステータ)2と、回転子(ロータ)3と、モータ外郭(筐体、外郭)10と、ブラケット41と、導通部材5と、を備えている。
以下では、回転磁界を発生する円筒状の固定子2の径方向の内側に、永久磁石部31を有する円柱状の回転子3を回転可能に配置したインナーロータ型の永久磁石電動機1を例に説明する。
【0015】
<固定子と回転子とモータ外郭>
回転子3は、
図2に示すように、環状の永久磁石部31と、永久磁石部31よりも内径側に配置されて同永久磁石部31とシャフト32とを連結する連結部35と、を備える。シャフト32は、円柱状の回転子3の中心軸に沿って配置されるとともに、回転子3に固定されている。本実施例では、回転子3の永久磁石部31と連結部35とは、フェライト磁性体を混合した樹脂材の一体成形によって形成されており、成形後に永久磁石部31のみを着磁することで永久磁石部31をフェライトボンド磁石として機能させている。また、永久磁石部31は、その周方向にS極とN極が交互に現れる極異方性磁石となるよう着磁されている。これにより、永久磁石部31の磁束の流れを集中させるためのヨークの一部分が不要となり、漏れ磁束を抑制することができる。
なお、永久磁石部31と連結部35とは別体に形成されていてもよい。例えば、回転子3は、粉末状のフェライト磁性体を金型内で焼き固めた複数のフェライト焼結磁石(永久磁石部31に相当)を、ロータコア(連結部35に相当)の外周面に環状に貼り付けた、いわゆる表面磁石(SPM)型の回転子であってもよい。
【0016】
固定子2は、図示しない円筒形状のヨーク部と同ヨーク部から内径側に延びる図示しない複数のティース部を有した固定子鉄心(ステータコア)21と、インシュレータを介してティース部に巻回された図示しない巻線とを備えている。この固定子2は、樹脂一体成形によって、固定子鉄心21の内周面を除いて、樹脂で形成されたモータ外郭10(本体部)で覆われている(
図2、
図4参照)。すなわち、モータ外郭10は、固定子鉄心21と巻線とを備えた固定子2を覆っており、回転子3を内部に収容する。固定子2は、
図1、2に示すように、回転子3の外周側(永久磁石電動機1の径方向における外側)に配置される。また、固定子2の固定子鉄心21は、同固定子鉄心21の有するティース部が回転子3の永久磁石部31と径方向で対向するように配置されている。換言すれば、固定子2は、回転子3の備える環状の永久磁石部31が固定子2の固定子鉄心21に径方向で対向するように配置されている。
【0017】
本体部としてのモータ外郭10は、任意の形状でよいが、例えば、永久磁石電動機1の中心軸、つまり回転子3の回転軸(以下、回転軸C)の軸線方向の一端側(シャフト32の反出力側)に開口部Oを有する有底円筒状に形成される。本実施例では、モータ外郭10は、環状部12と、開口部Oと、開口部Oとは反対側(シャフト32の出力側)の端部に形成された端面部(底面)13とを備える。なお、モータ外郭10は、全体が樹脂等の絶縁性材料から形成される必要はなく、一部が導電性材料の金属で形成されてもよい。また、本実施例ではモータ外郭10の外観が円柱状である場合を例示したが、モータ外郭10の外観が四角柱状や六角柱状であってもよい。
【0018】
回転子3は、固定子2の固定子鉄心21の内周側に、固定子鉄心21と所定の空隙(ギャップ)を持って回転自在に配置されている。
図2、4、5に示すように、環状に配置された永久磁石部31は、固定子鉄心21に対向するように、回転子3における径方向の外側(外周側)に配置されている。
【0019】
回転子3は、シャフト32の周りに固定されている。シャフト32は、同シャフト32の外周面に固定された第1軸受33および第2軸受34(ベアリング、軸受)によって回転自在に支持(保持)されている。また、第1軸受33が後述する第1軸受収容部42に収容(保持)され、第2軸受34が後述する第2軸受収容部43に収容(保持)されることで、回転子3が回転自在に支持されている。第1軸受収容部42および第2軸受収容部43は、例えばクロムニッケル系ステンレス鋼の磁性体で形成されている。
【0020】
<軸受とブラケットとベアリングハウス部>
図2、3、5に示すように、第1軸受33は、同第1軸受33の内輪側がシャフト32の一端側(反出力側)に固定されている。第2軸受34は、同第2軸受34の内輪側がシャフト32の他端側(出力側)に固定されている。第1軸受33と第2軸受34(一対のベアリング)は協働して、シャフト32およびシャフト32に連結される回転子3を回転自在に支持している。第1軸受33および第2軸受34は、例えば、ボールベアリングが用いられる。
【0021】
ブラケット41は、磁性体で形成されて第1軸受33を収容する第1軸受収容部42と、非磁性体(例えば樹脂)で形成された非磁性部44(端面部)とを備える。ブラケット41は、永久磁石電動機1のモータ外郭10(本体部)において、回転軸Cの方向の一端、すなわちシャフト32の反出力側に配置される。ブラケット41の非磁性部(端面部)44は、第1軸受収容部42に接続される接続部45を有する(
図2、3、5参照)。ブラケット41の非磁性部(端面部)44は、インサート成形によって、磁性部である第1軸受収容部42と一体に成形される。非磁性部(端面部)44は、接続部45において第1軸受収容部42に接続される。
このブラケット41は、モータ外郭10(本体部)の開口部Oを覆う蓋として、モータ外郭10(本体部)の反出力側の端部にねじ止めされて取り付けられる。なお、モータ外郭10(本体部)の開口部Oは、出力側に向けて開口するようにしてもよい。この場合、ブラケット41は、シャフト32の反出力側でなく、シャフト32の出力側に配置される。
【0022】
ブラケット41の非磁性部44(端面部)は、径方向の外形がモータ外郭10の外周面まで径方向に広がる、概ね円板形状に形成されている。また、ブラケット41の非磁性部44(端面部)は、モータ外郭10とともに、永久磁石電動機1の樹脂外郭を形成している。そして、非磁性部44は、回転軸C方向から見て、モータ外郭10の外周面よりも径方向の外側に突出した突出部410を備える。突出部410は、モータ外郭10の後述する脚部107の基端部に当接する。ブラケット41の突出部410は、脚部107と回転軸C方向に重なるように配置されている。
【0023】
ブラケット41の突出部410は、モータ外郭10に設けられた脚部107と同数形成され(3箇所)、例えば回転軸C方向から見て台形状に形成されており、突出部410の各々の中央部には回転軸C方向に貫通するねじ通し穴部413を有する。
【0024】
なお、ブラケット41には、組立後の永久磁石電動機1において外部に露出する外表面側に、後述する電食対策用の導通部材5を配置するための切り込み溝部416が形成されている(
図1および3参照)。
この切り込み溝部416は、ブラケット41の中央部(後述の非磁性部44の筒状の接続部45)から径方向の外側に向かってブラケット41の外周面まで延び、さらにそこからモータ外郭10と当接する位置まで軸方向に延びている。
【0025】
ブラケット41は、モータ外郭10(本体部)に嵌合された後に、ねじ通し穴部413を介してモータ外郭10の脚部107の脚部側締結部(ねじ穴部)103(後述)にねじ止めされる(
図1参照)。
また、円板状のブラケット41の中央部には、永久磁石電動機1の内部側(出力側)に第1軸受33を収容するための第1軸受収容部(ベアリングハウス部)42が配置されている。第1軸受収容部42は、例えばプレス加工によって概ね有底円筒状に形成されている。また、ブラケット41の非磁性部44の内径側には、第1軸受収容部42に接続される筒状の接続部45を有する(
図2、5参照)。
【0026】
モータ外郭10の出力側端部の中央部には、電動機1の内部側(反出力側)に第2軸受34を収容するための第2軸受収容部(ベアリングハウス部)43が配置されている(
図2、5、6参照)。この第2軸受収容部43は、第1軸受収容部42と同様に、概ね有底円筒状に形成されている。第2軸受収容部43は、回転子3の径方向において、環状の永久磁石部31よりも内側(内径側)に配置されている。モータ外郭10の端面部13は、第2軸受収容部43のフランジ部432(後述)に接続される接続部14を有する。
【0027】
図2および
図5に示すように、第1軸受収容部42は、第1軸受33の外輪側を径方向から保持する筒状部421と、筒状部421の回転軸C方向の一端部から回転子3における径方向の外側(外周側)に延びる円環状のフランジ部422と、筒状部421の回転軸C方向の他端部から径方向の内側(内周側)へと延びる冠部423と、を有する。冠部423は、第1軸受33の回転軸C方向の他端側を覆う。円環状のフランジ部422の外周縁は、永久磁石部31よりも回転子3の径方向における内側(内周側)に位置している。換言すると、第1軸受収容部42は、回転子3の回転軸C方向から見て、永久磁石部31と重ならないように形成されている。
【0028】
すなわち、第1軸受収容部42(ブラケット41が備えるベアリングハウス部は、回転軸C方向から見て、永久磁石部31よりも回転子3における径方向の内側(内径側)に配置されている。また、第1軸受収容部42(ベアリングハウス部)のフランジ部422の外周縁部(外径側の縁部)は、非磁性体である樹脂によって覆われている。すなわち、ブラケット41において、第1軸受収容部42のフランジ部422の外周縁部は、樹脂製の非磁性部44によって覆われている。
【0029】
上述したように、ブラケット41は、一対の軸受収容部(ベアリングハウス部)の一方である第1軸受収容部(磁性部)42と、非磁性部44(端面部)とで形成される。第1軸受収容部(磁性部)42は、回転子3の径方向で永久磁石部31よりも内径側に配置されているので、磁性部としての第1軸受収容部42が備えるフランジ部422が、永久磁石部31と回転軸C方向で面対向するのを防止できる。これにより、永久磁石部31から第1軸受収容部(磁性部)42へと流れる漏れ磁束を抑制することができる。さらに、第1軸受収容部(磁性部)42は、回転子3の永久磁石部31と近接するフランジ部422の外周縁部が、非磁性部44で覆われる。これにより、永久磁石部31から磁性体で形成された第1軸受収容部(ベアリングハウス部)42へと流れる漏れ磁束の経路を非磁性体で形成された非磁性部44によって遮断することができるので、永久磁石部31から第1軸受収容部42へと流れる漏れ磁束を更に抑制することができる。
【0030】
なお、この漏れ磁束を抑制するための構造は、第1軸受収容部42側だけでなく、第2軸受収容部43側にも適用されることができる。このとき、第2軸受収容部43は、第1軸受収容部42と同様の形状に形成され、第2軸受34の外輪側を径方向から保持する筒状部431と、筒状部431の回転軸C方向の一端部から回転子3における径方向の外側に延びる円環状のフランジ部432と、筒状部431の回転軸C方向の他端部から径方向の内側へと延びる冠部433と、を有する。そして、第2軸受収容部43は、回転子3の径方向で永久磁石部31よりも内径側に配置されている。また、第2軸受収容部43が備えるフランジ部422の外周縁部が、非磁性体である樹脂製のモータ外郭10の端面部13(接続部14)によって覆われている。これにより、永久磁石31から第2軸受収容部43へと流れる漏れ磁束を抑制することができる。
【0031】
ブラケット41の非磁性部(端面部)44は、第1軸受収容部(ベアリングハウス部)42に接続される接続部45を有している。接続部45は、概ね筒状に形成されており、第1軸受収容部(ベアリングハウス部)42のフランジ部422は、筒状の接続部45の内径側の側面に差し込まれて固定されている。ここで、第1軸受収容部42の筒状部421は、ブラケット41の非磁性部44と接触しておらず(非磁性部44によって覆われておらず)、フランジ部422の外周縁部のみが、非磁性部44の接続部45に覆われるようにして接合(接続)されている。また、第1軸受収容部42の筒状部421と非磁性部44の筒状の接続部45との間には空隙部(エアギャップ)AG1が形成されている。これにより、熱や衝撃などによるモータ外郭10の変形が、第1軸受33に対して影響しにくくなる。さらに、ブラケット41の接続部45と、第1軸受収容部42のフランジ部422との接触面積を小さくすることができ、固定子鉄心(ステータコア)21に巻回された巻線での発熱がブラケット41を介して第1軸受33に伝達するのを抑制することができる。これにより、第1軸受33の温度上昇を抑え、第1軸受33の劣化を防止することができる。
【0032】
本実施例では、一対の軸受収容部(ベアリングハウス部)の他方である第2軸受収容部43側についても、第1軸受収容部42側と同様の構造とされている。すなわち、モータ外郭10が有底円筒状に形成されており、固定子(ステータ)2と一体のモータ外郭10の環状部12と、環状部12の端部に接続されて径方向の内側(内周側)に広がるモータ外郭10の端面部13とを備えている。そして、モータ外郭10の端面部13は、第2軸受収容部43に接続される円筒状の接続部14を有している。また、第1軸受収容部42と同様に、一対の軸受収容部の他方である第2軸受収容部43は、筒状部431と、筒状部431から径方向の外側に延びるフランジ部432とを有し、フランジ部432の外周縁部のみが、樹脂外郭(モータ外郭10)の接続部14の内径側の側面に差し込まれて固定されている。また、第2軸受収容部43の筒状部431と、樹脂外郭(モータ外郭10)の接続部14との間に、空隙部(エアギャップ)AG2が形成されている。
【0033】
これにより、熱や衝撃などによるモータ外郭10の変形が、第2軸受34に対して影響しにくくなる。さらに、モータ外郭10の接続部14と、第2軸受収容部43のフランジ部432との接触面積を小さくすることができ、固定子鉄心(ステータコア)21に巻回された巻線での発熱が樹脂外郭10を介して第2軸受34に伝達するのを抑制することができる。これにより、第1軸受33の温度上昇を抑え、第1軸受33の劣化を防止することができる。
【0034】
また、回転子3は、上述のように、シャフト32が固定され、永久磁石部31とシャフト32とを連結する連結部35を備える。永久磁石部31は、円筒状の固定子鉄心(ステータコア)21に径方向で対向するように配置されている。連結部35は、環状に配置された永久磁石部31の内径側に配置される。連結部35は、
図2、
図4に示すように、回転軸Cの軸線方向(回転軸C方向)に窪んだ凹部36を有する。凹部36は、同凹部36が形成された位置での連結部35の回転軸C方向における厚みが、永久磁石部31の回転軸C方向における厚みよりも小さくなるよう、形成されている。そして、第1軸受収容部42のフランジ部422は、この凹部36と回転軸C方向に重なるように配置されている。
【0035】
これにより、回転子3には、回転軸C方向に向かって窪んだ環状の凹部36が形成され、第1軸受収容部42のフランジ部422がこの凹部36内に配置されることができる。
このように、回転軸Cの軸線方向に窪んだ環状の凹部36に第1軸受収容部42の一部(フランジ部422)が入り込むことができ、永久磁石電動機1の回転軸C方向の厚みが抑制され、永久磁石電動機1が回転軸C方向に小型化される。
【0036】
図4に示すように、固定子2の回転軸C方向の反出力側の端部(
図4では上端部)には、固定子鉄心(ステータコア)21の図示しない巻線に電気的に接続される端子ピン26と、図示しない基板を取り付ける際の案内役としてのボス27とが設けられている。
ブラケット41は、端子ピン26が永久磁石電動機1の外部に露出するのを防止するための絶縁カバーとして機能する。
本実施形態において、端子ピン26は3カ所設けられており、これらの3カ所を覆い隠すように、ブラケット41はモータ外郭10に取り付けられる。
【0037】
ブラケット41は、固定子2の上端面に沿って取り付けられるカバー本体414と、カバー本体414と一体的に形成された嵌合部415とを備えている。これらのカバー本体414および嵌合部415は、上記の非磁性部44(端面部)に相当する。
カバー本体414は、全体が概ね円板形状に形成されている。嵌合部415は、
図3に示すように、カバー本体414の外周縁部に配置された円環形状の突起として形成されている。嵌合部415がモータ外郭10の反出力側の端部(
図4におけるモータ外郭10の上端面)に回転軸C方向から嵌合されることで、
図2に示すように、モータ外郭10(本体部)とブラケット41とが軸合わせされるとともに、第1軸受33がブラケット41に設けられた第1軸受収容部42に収容される。
【0038】
<発明の特徴部>
電動機1のモータ外郭10(本体部)は、回転軸C方向の一端側(反出力側の端部)において、円筒状のモータ外郭10の外周面(環状部12の外周面)から径方向の外側(外径側)に突出する複数の脚部107を備える(
図1、2、4~7参照)。この脚部107は、例えば、電動機1の周方向に等間隔に並ぶよう3つ設けられる。
複数の脚部107は、電動機1の外径方向に台形状に突出しており、回転軸C方向に所定の厚みを有する。なお、脚部107は、2個、6個など任意の個数でよく、複数の脚部107の並びは等間隔でなくともよい。
【0039】
台形状に形成された脚部107は、
図1、4、7に示すように、電動機1の径方向の外側(外径側)に向かうにつれて、脚部107の周方向の長さが短くなるように形成されている。これにより、脚部107の強度を確保するとともに、脚部107に形成される後述のデッドスペースを有効活用することができる。
【0040】
複数の脚部107の各々には、脚部側締結部103と、防振部材6が配置される防振部材配置部104とが形成されている。防振部材配置部104は、脚部107の各々における電動機1の周方向の中央部に形成されている。
【0041】
防振部材6は、例えば中空のボビン状、または円筒型に成形された、防振ゴム、ブッシュなどが例示される。実施例の防振部材6は、ボビン状に形成されており、中芯部61と、中芯部61における回転軸C方向の両端に形成されたフランジ部62と、締結部材が挿通される挿通孔63とを有する(
図5、7参照)。なお、ボビン状の防振部材6は、回転軸C方向から見た形状(上面視の形状)が六角形状や四角形状であってもよい。防振部材6の挿通孔63には、永久磁石電動機1が固定される対象物(例えば空気調和機の筐体)への取り付け用の図示しない締結部材(例えば、ねじ)が回転軸C方向に挿通される。防振部材6は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)などの弾性材料で形成される。
【0042】
脚部側締結部103は、例えば、ねじ穴部、埋込ナットなどであり、図示しない締結部材(ねじ等)が締結される。脚部107に形成された脚部側締結部103と、ブラケット41に形成されたねじ通し穴部413とが、締結部材を介して締結されることで、脚部側締結部103は、防振部材6(防振部材配置部104)と重ならない位置に固定される。これにより、各脚部107における防振部材6が配置されない領域(デッドスペース)を有効活用することができるため、各脚部107が大型化するのを抑制することができる。
【0043】
脚部107に形成された防振部材配置部104には、防振部材6の中芯部61が嵌合される(取り付けられる)回転軸C方向に貫通した取付穴104Aと、取付穴104Aに外径側から防振部材6を嵌め込む(取り付ける)ために脚部107の外縁と取付穴104Aとをつなぐ切欠き部104Bと、が形成されている。これにより、切欠き部104Bを経由して、防振部材6の中芯部61を取付穴104Aに嵌合させることができる。
そして、防振部材配置部104に取り付けられた防振部材6は、同防振部材6が備えるフランジ部62によって、脚部107の厚み方向(回転軸C方向)への移動が規制される。
【0044】
なお、防振部材配置部104は、脚部107の外周縁とつながっている切欠き部104Bを備えなくともよく、回転軸C方向に貫通した単なる貫通孔からなる取付穴104Aであってもよい。この場合、防振部材6は、貫通孔として形成された取付穴104Aに回転軸C方向から挿入される。
【0045】
防振部材配置部104には、防振部材6の形状に合わせるように、脚部107の回転軸C方向の一方側(シャフト32の出力側)が窪んだ窪み部106が形成されていてもよい。これにより、脚部107の厚みを確保して強度を維持しつつ、防振部材6の形状を簡素化することができる。
【0046】
ここで、電動機1は、高周波スイッチングを行うPWM方式のインバータで駆動される場合に、巻線の中性点電位が零にならず、コモンモード電圧と呼ばれる電圧が発生する。このコモンモード電圧に起因して、電動機1の内部の浮遊容量によって、第1軸受33および第2軸受34の各々の内輪と外輪との間に電位差(軸電圧)を生じる。この軸電圧が軸受内部の油膜の絶縁破壊電圧に達すると、軸受内部に電流が流れて軸受に電食を発生させる。本実施例の電動機1は、この軸受での電食の発生を防止するために、2つの軸受のそれぞれが収容される第1軸受収容部42と第2軸受収容部43とを導通させる導通部材5を備えている。
【0047】
導通部材5は、例えば、導電性の材料を帯状やワイヤ状に加工して形成される。本実施例では、導通部材5は、帯状に打ち抜いた厚さ0.3mm程度の鋼板を、モータ外郭10及びブラケット41の外面に沿うようにコの字(Uの字)状に折り曲げて形成される(
図5、8参照)。導通部材5は、第1軸受33が収容される第1軸受収容部42と、第2軸受34が収容される第2軸受収容部43とを導通させることにより、第1軸受33と第2軸受34の各々の外輪側の電位を同電位とすることができ、各軸受の内外輪間の電位差を小さくすることで電食の発生を抑制できる。
【0048】
導通部材5は、軸受収容部42、43に接続される一対の接続端部51、51と、電動機1の外郭の端面部に径方向に延びて配置される一対の端面側配置部と52、52と、電動機1の外郭の外周面に回転軸C方向に沿って配置される外周面側配置部53とを備える。なお、本実施例では導通部材5が1本の帯状の部材から形成されている場合を例示したが、複数の導電性の部材を接続して導通部材5を形成してもよい。
【0049】
先述のように、実施例の電動機1は、モータ外郭10、ブラケット41のそれぞれに、切り込み溝部108、416が形成されている(
図1、5~7参照)。そして、モータ外郭10にブラケット41を嵌合することで、ブラケット41の切り込み溝部416とモータ外郭10の外面に形成された切込み溝部108とが連続するようになっている。
【0050】
導通部材5は、
図5、7に示すように、電動機1の外面に、第1軸受収容部42のフランジ部422の位置から、ブラケット41の切り込み溝部416、脚部107の後述の切り込み溝部105、およびモータ外郭10の切り込み溝部108を経て、第2軸受収容部43のフランジ部432の位置まで延びて配置される。導通部材5が各切り込み溝部(416、105、108)に配置されることにより、導通部材5が電動機1の外郭の表面に突出せず、電動機1から導通部材5が脱落するのを防止できる。
【0051】
ここで、3つの脚部107のうちのいずれか1つには、防振部材配置部104が有する取付穴104Aにおいて回転軸Cからの距離が最小となる位置に、切り込み溝部(導通部材固定部)105が形成されている。この切り込み溝部105は、取付穴104Aの縁から内径側に向かって窪むように、取付穴104Aに連続して形成された凹型、V字型などの溝部である。
これにより、取付穴104Aの縁が、導通部材5の外周面側配置部53を切り込み溝部105へと導くガイドとなり、導通部材5の位置決めが容易になる。また、モータ外郭10の外周から外径方向へ突出した脚部107に導通部材固定部としての切り込み溝部105を形成することで、モータ外郭10の側面に直接的に溝を設ける場合よりも深い溝を形成することができ、電動機1から導通部材5がより脱落しにくくなる。
【0052】
また、上述のように、防振部材配置部104は、脚部107の外周面と取付穴104Aとが連続して連なるよう、脚部107の一部が切り欠かれた切欠き部104Bを備える。これにより、防振部材6を取付穴104Aに取り付けるのと同様に、導通部材5を、脚部107の外周側から、切欠き部104Bを経由し、取付穴104Aに設けられた導通部材固定部(切り込み溝部)105に容易に配置することができる。すなわち、導通部材5を、電動機1の外側から這わせるようにして導通部材固定部105に取り付けられるので、導通部材5の電動機1への取り付けが容易である。
【0053】
さらに、防振部材6を脚部107の防振部材配置部104(取付穴104A)に嵌め込む前に、上述した切り込み溝部105に導通部材5の外周面側配置部53を予め通して配置しておき、その後、防振部材6を防振部材配置部104(取付穴104A)に対して嵌め込むことにより、導通部材5は、防振部材6によって外径方向への移動が規制される。また、導通部材5は、取付穴104Aに連続して形成された切り込み溝部(導通部材固定部)105によって周方向への移動が規制される。すなわち、防振部材6および切り込み溝部105が協働して導通部材5の移動を規制することで、導通部材5が電動機1から脱落してしまうのを防止することができる。
【0054】
この導通部材5の両端である接続端部51、51は、樹脂外郭の筒状の接続部(45、14)およびベアリングハウス部(42、43)の筒状部(421、431)に沿うように折り曲げられたうえで、ベアリングハウス部42、43の筒状部421、431の外側の空隙部AG1、AG2に圧入して固定される(
図1、5~7参照)。これにより、空隙部AG1、AG2を利用して、電食防止の導通部材5をベアリングハウス42、43に対して容易に固定することができる。そして、導通部材5の接続端部51、51がベアリングハウス部42、43のフランジ部422、432のそれぞれに当接した状態で固定されることにより、第1軸受33と第2軸受34とが導通される。
【0055】
なお、導通部材5の両端部をベアリングハウス部に固定する手段は、上述の手段に限定されない。例えば、導通部材5の接続端部51、51は、図示しないカシメ部材によってベアリングハウス部42、43に対して固定されていてもよい。
【0056】
また、導通部材5は、全体がコの字状に形成される場合に限定されず、脚部107に形成された取付穴104Aに固定される、外周面側配置部53を備えていればよい。例えば、金属製のベアリングハウス部(第1軸受収容部42および第2軸受収容部43)が円筒状のモータ外郭10の外周面まで延びるように形成されている場合には、導通部材5はモータ外郭10の側面(環状部12の外周面)に沿う外周面側配置部53だけを備えていればよく、電動機1の端面(端面部13、44)に沿う端面側配置部52を備えなくともよい。
【0057】
上述したように、電動機1は、回転子3と、回転子3の回転軸Cに沿って配置されて回転子3が固定されたシャフト32と、シャフト32の一端側に設けられた第1軸受33と、シャフト32の他端側に設けられた第2軸受34と、環状部12と、環状部12の回転軸C方向における両端に形成された端面部13、44と、を有し、環状部12と端面部13、44とで覆われた内部に回転子3を収容する外郭10、41と、第1軸受33と第2軸受34とを導通させる導通部材5と、外郭10の外周面から径方向の外側に突出した脚部107とを備える。脚部107には、防振部材6が取り付けられる取付穴104Aが形成される。取付穴104Aには、導通部材5が固定される導通部材固定部(切り込み溝部)105が設けられている。
これにより、導通部材5を、取付穴104Aに設けられた切り込み溝部(導通部材固定部)105を利用して電動機1に対して固定することができるので、導通部材5の電動機1への取り付けを容易にすることができるとともに、導通部材5が電動機1から脱落するのを防止できる。
【0058】
なお、取付穴A104に設けられた導通部材固定部105は、取付穴104Aの縁が切り込まれた切り込み溝部を備えなくともよい。このとき、導通部材5は、円形状の取付穴104Aの縁と、防振部材6とに挟持されて固定される。この場合も、取付穴104Aと取付穴104Aに取り付けられる防振部材6を利用して導通部材5を容易に固定することができるとともに、導通部材5が電動機1から脱落するのを防止できる。
【符号の説明】
【0059】
1…電動機
10…モータ外郭(外郭)
12…環状部
13…端面部
104…防振部材配置部
104A…取付穴
104B…切欠き部
105…切り込み溝部(導通部材固定部)
107…脚部
2…固定子
3…回転子
32…シャフト
33…第1軸受
34…第2軸受
41…ブラケット
44…端面部
5…導通部材
53…外周面側配置部
6…防振部材