(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】貯湯システムおよび貯湯システムの排水方法並びに燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
F24H 9/16 20220101AFI20240110BHJP
F24H 1/00 20220101ALI20240110BHJP
F24H 1/18 20220101ALI20240110BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20240110BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240110BHJP
【FI】
F24H9/16 A
F24H1/00 631A
F24H1/18 G
H01M8/00 Z
H01M8/04 Z
(21)【出願番号】P 2020069502
(22)【出願日】2020-04-08
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智史
(72)【発明者】
【氏名】西口 康広
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-083059(JP,A)
【文献】特開2014-206317(JP,A)
【文献】特開2019-129115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00 - 15/493
H01M 8/00 - 8/04
F24D 18/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温流体と湯水とを熱交換する熱交換器と、
湯水を貯留するタンクと、
湯水が循環するように前記熱交換器と前記タンクとを接続すると共に一部に湯水をトラップするトラップ部を有する循環配管と、
前記循環配管内の湯水を循環させるポンプと、
前記タンク内の湯水を排水する第1排水管と、
前記第1排水管の出口を開閉する第1開閉部材と、
前記トラップ部の最下箇所に接続された第2排水管と、
前記第1開閉部材よりも高い位置に設置され、前記第2排水管の出口を開閉する第2開閉部材と、
を備え
、
前記第2開閉部材は、前記第2開閉部材を閉鎖した状態で前記第1開閉部材を開放して前記第1排水管の出口から湯水を排水させた際に排水に伴って前記タンク内に作用する負圧と前記タンクの水頭圧とが釣り合うときの前記タンクの水頭高さが、前記トラップ部の水頭高さよりも高くなるように設置されている、
貯湯システム。
【請求項2】
請求項1に記載の貯湯システムであって、
前記第2排水管は、前記循環配管および前記第1排水管よりも配管径が小さい、
貯湯システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の貯湯システムであって、
前記第1開閉部材および前記第2開閉部材は、手動による開閉操作が可能に構成される、
貯湯システム。
【請求項4】
請求項
1ないし3いずれか1項に記載の貯湯システムであって、
前記タンク内に設定圧を超える負圧が作用したときに開弁して前記タンク内の負圧を開放する負圧開放弁を備え、
前記第2開閉部材を閉鎖した状態で前記第1開閉部材を開放して前記第1排水管の出口から湯水を排水させた際に排水に伴って前記タンク内に作用する負圧と前記タンクの水頭圧とが釣り合うときの前記負圧は、前記負圧開放弁の設定圧よりも絶対値として小さい、
貯湯システム。
【請求項5】
高温流体と湯水とを熱交換する熱交換器と、
湯水を貯留するタンクと、
湯水が循環するように前記熱交換器と前記タンクとを接続すると共に一部に湯水をトラップするトラップ部を有する循環配管と、
前記循環配管内の湯水を循環させるポンプと、
前記タンク内の湯水を排水する第1排水管と、
前記第1排水管の出口を開閉する第1開閉部材と、
前記トラップ部の最下箇所に接続された第2排水管と、
前記第1開閉部材よりも高い位置に設置され、前記第2排水管の出口を開閉する第2開閉部材と、を備え、
前記第2開閉部材は、前記第2開閉部材を閉鎖した状態で前記第1開閉部材を開放して前記第1排水管の出口から湯水を排水させた際に排水に伴って前記タンク内に作用する負圧と前記タンクの水頭圧とが釣り合うときの前記タンクの水頭高さが、前記トラップ部の水頭高さよりも高くなるように設置されている貯湯システムの排水方法であって、
前
記タンク内および前記トラップ部内の湯水を排水する際、前記第1開閉部材を開放し、その後、前記第2開閉部材を開放する、
貯湯システムの排水方法。
【請求項6】
燃料電池を含む燃料電池モジュールと、
前記燃料電池モジュールからの排気と湯水とを熱交換する熱交換器と、湯水を貯留するタンクと、湯水が循環するように前記熱交換器と前記タンクとを接続すると共に一部に湯水をトラップするトラップ部を有する循環配管と、前記循環配管内の湯水を循環させるポンプと、前記タンク内の湯水を排水する第1排水管と、前記第1排水管の出口を開閉する第1開閉部材と、前記トラップ部の最下箇所に接続された第2排水管と、前記第1開閉部材よりも高い位置に設置され、前記第2排水管の出口を開閉する第2開閉部材と、を有する貯湯システムと、
前記燃料電池モジュールと前記貯湯システムとを収容する筐体と、
を備える燃料電池システム。
【請求項7】
請求項
6に記載の燃料電池システムであって、
前記循環配管の湯水の流れ方向における前記熱交換器の上流側かつ前
記タンクの下流側に設置されるラジエータを備え、
前記熱交換器は、前記燃料電池モジュールの底部に接続され、前記燃料電池モジュールからの排気を導入する排気入口と前記排気と熱交換した湯水を導出する湯水出口とを上部に有すると共に、前記湯水を導入する湯水入口を下部に有し、
前記ラジエータは、前記燃料電池モジュールの底部に近接して設置され、
前記トラップ部は、前記ラジエータから前記熱交換器の内部における湯水の流路に至る経路上に形成される、
燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯システムおよび貯湯システムの排水方法並びに燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の貯湯システムとしては、貯湯タンクの最上部に貯湯タンク内と外方空間とを連通するよう接続された空気抜き用配管と、空気抜き用配管に設けられた自動空気抜き弁と、貯湯タンクの底面に接続された排水管と、排水管に設けられた排水弁と、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このシステムでは、排水指令が入力されると、自動空気抜き弁と排水弁とを開弁することで、排水時に貯湯タンク内に負圧を発生させることなく、排水をスムーズに行なうことができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、高温流体と湯水とを熱交換する熱交換器と、湯水と貯える貯湯タンクと、熱交換器と貯湯タンクとを接続する循環配管と、を備える貯湯システムにおいて、システムのレイアウトの都合上、循環配管に湯水がトラップされる(溜まる)トラップ部が形成される場合がある。この場合、貯湯タンク内の水に加えて、トラップ部内にトラップされている湯水についても、簡易な構成で効率良く排水することが望まれる。
【0005】
本発明は、熱交換器とタンクとを接続する循環配管の一部にトラップ部を有するものにおいて、簡易な構成によりタンクおよびトラップ部の排水を良好に行なうことを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の燃料電池システムは、
高温流体と湯水とを熱交換する熱交換器と、
湯水を貯留するタンクと、
湯水が循環するように前記熱交換器と前記タンクとを接続すると共に一部に湯水をトラップするトラップ部を有する循環配管と、
前記循環配管内の湯水を循環させるポンプと、
前記タンク内の湯水を排水する第1排水管と、
前記第1排水管の出口を開閉する第1開閉部材と、
前記トラップ部の最下箇所に接続された第2排水管と、
前記第1開閉部材よりも高い位置に設置され、前記第2排水管の出口を開閉する第2開閉部材と、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の貯湯システムでは、湯水が循環するように熱交換器とタンクとを接続すると共に一部に湯水をトラップするトラップ部を有する循環配管と、タンク内の湯水を排水する第1排水管と、第1排水管の出口を開閉する第1開閉部材と、トラップ部の最下箇所に接続された第2排水管と、第2排水管の出口を開閉する第2開閉部材と、を備える。第2開閉部材は、第1開閉部材よりも高い位置に設置される。これにより、第1開閉部材が開放されることで、タンク内の湯水は、第1排水管の出口から排水され、第2開閉部材が開放されることで、トラップ部にトラップされている湯水は、主として、タンク内の湯水の排水に伴って生じる負圧で第2排水管から導入されるエアによって押し出されることで、第1排水管の出口から排水される。この結果、タンクおよびトラップ部の排水を良好に行なうことができる。また、主な排水を第1排水管で行なうことで、第2排水管や第2開閉部材をより簡易な構成とすることができ、低コスト化を図ることができる。
【0009】
こうした本発明の貯湯システムにおいて、前記第2排水管は、前記循環配管および前記第1排水管よりも配管径が小さいものとしてもよい。こうすれば、第2排水管からの排水をできる限り少なくすることができるため、第2排水管からの排水を所定の排水箇所へ導くための排水工事を不要とすることができる。
【0010】
また、本発明の貯湯システムにおいて、前記第1開閉部材および前記第2開閉部材は、手動による開閉操作が可能に構成されるものとしてもよい。こうすれば、システムの電源が停止しているときでも、タンクおよびトラップ部の排水を行なうことができる。
【0011】
さらに、本発明の貯湯システムにおいて、前記第2開閉部材は、前記第2開閉部材を閉鎖した状態で前記第1開閉部材を開放して前記第1排水管の出口から湯水を排水させた際に排水に伴って前記タンク内に作用する負圧と前記タンクの水頭圧とが釣り合うときの前記タンクの水頭高さが、前記トラップ部の水頭高さよりも高くなるように設置されているものとしてもよい。こうすれば、タンク内に負圧が作用した状態で第2開閉部材を開放させることで、当該負圧により第2排水管からエアをより確実に導入して、トラップ部の湯水を第1排水管からスムーズに排水させることができる。この態様の本発明の貯湯システムにおいて、前記タンク内に設定圧を超える負圧が作用したときに開弁して前記タンク内の負圧を開放する負圧開放弁を備え、前記第2開閉部材を閉鎖した状態で前記第1開閉部材を開放して前記第1排水管の出口から湯水を排水させた際に排水に伴って前記タンク内に作用する負圧と前記タンクの水頭圧とが釣り合うときの前記負圧は、前記負圧開放弁の設定圧よりも絶対値として小さいものとしてもよい。こうすれば、第1排水管からの排水に伴ってタンク内に作用する負圧が負圧開放弁によって開放されないようにすることができる。
【0012】
本発明の貯湯システムの排水方法は、
高温流体と湯水とを熱交換する熱交換器と、
湯水を貯留するタンクと、
湯水が循環するように前記熱交換器と前記タンクとを接続すると共に一部に湯水をトラップするトラップ部を有する循環配管と、
前記循環配管内の湯水を循環させるポンプと、
前記タンク内の湯水を排水する第1排水管と、
前記第1排水管の出口を開閉する第1開閉部材と、
前記トラップ部の最下箇所に接続された第2排水管と、
前記第1開閉部材よりも高い位置に設置され、前記第2排水管の出口を開閉する第2開閉部材と、を備える貯湯システムの排水方法であって、
前記貯湯タンク内および前記トラップ部内の湯水を排水する際、前記第1開閉部材を開放し、その後、前記第2開閉部材を開放する、
ことを要旨とする。
【0013】
この本発明の貯湯システムの排水方法では、上述した本発明の貯湯システムにおいて、貯湯タンク内およびトラップ部内の湯水を排水する際、第1開閉部材を開放し、その後、第2開閉部材を開放する。これにより、第2開閉部材が閉鎖した状態で第1開閉部材を開放することで、タンク内の湯水は、第1排水管の出口から排水される。タンク内の湯水の排水が進むと、タンク内に負圧が作用し、やがてタンク内に作用する負圧とタンクの水頭圧とが釣り合って第1排水管の出口からの排水が止まる。そして、第2開閉部材が開放されることで、タンク内の負圧によって第2排水管の出口からエアが導入され、トラップ部にトラップされている湯水は、主として、エアによって押し出されて循環配管内を流れ、第1排水管の出口から排水される。この結果、タンクおよびトラップ部の排水を良好に行なうことができる。また、主な排水を第1排水管で行なうことで、第2排水管や第2開閉部材をより簡易な構成とすることができ、低コスト化を図ることができる。
【0014】
本発明の燃料電池システムは、
燃料電池を含む燃料電池モジュールと、
前記燃料電池モジュールからの排気と湯水とを熱交換する熱交換器と、湯水を貯留するタンクと、湯水が循環するように前記熱交換器と前記タンクとを接続すると共に一部に湯水をトラップするトラップ部を有する循環配管と、前記循環配管内の湯水を循環させるポンプと、前記タンク内の湯水を排水する第1排水管と、前記第1排水管の出口を開閉する第1開閉部材と、前記トラップ部の最下箇所に接続された第2排水管と、前記第1開閉部材よりも高い位置に設置され、前記第2排水管の出口を開閉する第2開閉部材と、を有する貯湯システムと、
前記燃料電池モジュールと前記貯湯システムとを収容する筐体と、
を備えることを要旨とする。
【0015】
この本発明の燃料電池システムでは、燃料電池モジュールに加えて、上述した本発明の貯湯システムを備えるため、本発明の貯湯システムが奏する効果、すなわち、タンクおよびトラップ部の排水を良好に行なうことができる効果や、主な排水を第1排水管で行なうことで、第2排水管や第2開閉部材をより簡易な構成とすることができ、低コスト化を図ることができる効果などを奏することができる。
【0016】
こうした本発明の燃料電池システムにおいて、前記循環配管の湯水の流れ方向における前記熱交換器の上流側かつ前記貯湯タンクの下流側に設置されるラジエータを備え、前記熱交換器は、前記燃料電池モジュールの底部に接続され、前記燃料電池モジュールからの排気を導入する排気入口と前記排気と熱交換した湯水を導出する湯水出口とを上部に有すると共に前記湯水を導入する湯水入口を下部に有し、前記ラジエータは、前記燃料電池モジュールの底部に近接して設置され、前記トラップ部は、前記ラジエータから前記熱交換器の内部における湯水の流路に至る経路上に形成されるものとしてもよい。こうすれば、燃料電池モジュール底部における空きスペースにラジエータを配置しつつ、これによって形成されるトラップ部の排水を良好に行なうことができるため、システムをよりコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態の燃料電池システムの外観図である。
【
図2】本実施形態の燃料電池システムの構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本実施形態の燃料電池システムの外観図であり、
図2は、本実施形態の燃料電池システムの構成の概略を示す構成図である。図示するように、燃料電池システム10は、燃料電池スタックを含む燃料電池モジュール20と、燃料電池モジュール20からの排熱により湯水を加熱して貯湯タンク32に貯湯することで排熱を回収する排熱回収装置30と、これらを収容する箱形の筐体11と、を備えるコージェネレーションシステムとして構成される。
【0020】
燃料電池モジュール20は、図示しないが、改質水を気化させて水蒸気を生成する気化器や、原燃料ガス(例えば、天然ガスやLPガス)を水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質器、燃料ガスと空気との電気化学反応により発電する燃料電池スタック、燃料電池スタックから排出されるオフガスを燃焼させる燃焼部などを有する。これらは、断熱材により形成されるモジュールケース21に収容されており、
図1に示すように、筐体11の上段部に設置されている。また、筐体11の下段部には、改質器へ原燃料ガスを供給するガスポンプや、改質水を貯留する水タンク22、水タンク22から改質水を汲み上げて気化器へ供給する水ポンプ、燃料電池スタックへ空気(エア)を供給するエアポンプなどの各種補機が設置されている。
【0021】
また、モジュールケース21の底部には、燃焼部においてオフガスの燃焼により生成される燃焼排ガスを排出するための排ガス排出口が形成されており、当該排ガス排出口には、燃焼排ガスと湯水との熱交換を行なう排熱回収装置30の熱交換器31が接続されている。
【0022】
排熱回収装置30は、上述した各種補機と共に筐体11の下段部に設置されており、
図2に示すように、上述した熱交換器31と、湯水を貯湯する貯湯タンク32と、貯湯タンク32の底部と熱交換器31の下部とを接続する循環配管33aおよび熱交換器31の上部と貯湯タンク32の頂部とを接続する循環配管33bと、循環配管33aに組み込まれたポンプ34,ヒータユニット35およびラジエータ36と、ラジエータ36に空気を送り込むラジエータファン(電動ファン)と、を有する。排熱回収装置30は、ポンプ34を作動させて湯水を循環配管33a,33b内で循環させることで、貯湯タンク32の底部から低温の湯水を取り出すと共に取り出した低温の湯水を熱交換器31にて高温の燃焼排ガスとの熱交換により加熱して貯湯タンク32の頂部へと返送する。熱交換器31において燃焼排ガス中に含まれる水分は、湯水との熱交換によって凝縮させられ、凝縮水として水タンク22に貯えられる。
【0023】
熱交換器31は、本実施形態では、燃焼排ガスの流れ方向と湯水の流れ方向とが逆の向流型熱交換器として構成されており、熱交換器31の上部には、モジュールケース21の排ガス排出口に接続される排ガス入口と循環配管33b(貯湯タンク32の頂部側)に接続される湯水出口とが形成され、熱交換器31の下部には、水タンク22に接続される凝縮水出口と凝縮後の排ガスを大気中に放出するための排ガス出口と循環配管33a(ラジエータ36側)に接続される湯水入口とが形成されている。
【0024】
貯湯タンク32の底部には、循環配管33aの他に加圧水が供給される給水口が形成され、貯湯タンク32の頂部には、循環配管33bの他に湯水を出湯する出湯口が形成されており、給水口を介して加圧水を貯湯タンク32へ供給することで貯湯タンク32の頂部の出湯口から出湯配管51を介して給湯箇所へ出湯する。出湯配管51には、負圧開放弁52が取り付けられており、負圧開放弁52の設定圧を超える負圧が貯湯タンク32内に作用したときに負圧開放弁52が開弁することで、負圧を開放して貯湯タンク32の破損を防止する。
【0025】
ヒータユニット35は、ユニットケースと、ユニットケースに内蔵するヒータ(例えば、セラミックヒータ)と、を備え、本実施形態では、燃料電池モジュール20の発電電力のうち余剰電力を消費して貯湯タンク32からユニットケース内に流入される低温の湯水を加熱する。また、ヒータユニット35は、本実施形態では、循環配管33a,33bの最下箇所に配置されており、ヒータユニット35のユニットケースには、貯湯タンク32内の湯水を排出するためのタンク排水管41が接続されている。タンク排水管41の出口は、
図1に示すように、筐体11における側面下部に形成され、当該タンク排水管41の出口には、タンク排水弁43が取り付けられている。タンク排水弁43は、本実施形態では、手動式ボール弁であり、手動操作により開閉可能に構成されている。
【0026】
ラジエータ36は、燃料電池モジュール20(モジュールケース21)の底部に近接して設置されている。これにより、ラジエータ36から熱交換器31の内部における湯水の流路に至る経路上には、湯水がトラップされるトラップ部33tが形成される。トラップ部33tの最下箇所には、トラップ排水管42が接続されている。本実施形態では、トラップ排水管42は、循環配管33a,33bおよびタンク排水管41よりも小さな配管径により構成されている。トラップ排水管42の出口は、
図1に示すように、筐体11における側面下部に形成され、当該トラップ排水管42の出口には、トラップ排水弁44が取り付けられている。トラップ排水弁44は、本実施形態では、簡易的な止水弁(栓)であり、タンク排水弁43と同様に、手動操作により開閉可能に構成されている。
【0027】
トラップ排水弁44(トラップ排水管42の出口)は、タンク排水弁43(タンク排水管41の出口)よりも高い位置に設置されている。すなわち、タンク排水弁43およびトラップ排水弁44は、
図2に示すように、タンク排水弁43を基準とした循環配管33a,33bにおける最上箇所までの高さが、トラップ排水弁44を基準とした上記最上箇所までの高さよりも高くなるように設置されている。
【0028】
燃料電池システム10では、長期間にわたって使用しない場合には、貯湯タンク32および循環配管33a,33bの水抜きが行なわれる。本実施形態の燃料電池システム10においては、水抜きを行なう場合、作業者は、まず、タンク排水弁43およびトラップ排水弁44のうちタンク排水弁43のみを開弁する。トラップ排水弁44が閉弁した状態でタンク排水弁43が開弁されると、貯湯タンク32内の湯水やトラップ部33tを除く循環配管33a,33b内の湯水は、循環配管33aあるいは循環配管33bを流れて、循環配管33a,33bの最下箇所(ヒータユニット35)に至り、当該最下箇所に接続されるタンク排水管41の出口から外部へ排水される。湯水の排水が進むと、貯湯タンク32内には負圧が作用し、やがて貯湯タンク32内に作用する負圧と貯湯タンク32の水頭圧とが釣り合ってタンク排水管41からの排水が止まる。
【0029】
次に、作業者は、タンク排水弁43を開弁したままトラップ排水弁44を開弁する。本実施形態では、トラップ排水弁44は、貯湯タンク32内に作用する負圧と釣り合うときの貯湯タンク32の水頭高さ(
図2中、h1)が、トラップ部33tの水頭高さ(
図2中、h2)よりも高くなるように設置されている。このため、トラップ排水弁44が開弁されると、貯湯タンク32内に作用する負圧によってトラップ排水管42の出口からエア(空気)が導入され、トラップ部33t内の湯水は、エアによって押し出されて貯湯タンク32側の循環配管33bあるいはラジエータ36側の循環配管33aを流れ、タンク排水管41の出口から排水される。これにより、貯湯タンク32およびトラップ部33tの排水を良好に行なうと共に、貯湯タンク32およびトラップ部33tの排水を主としてタンク排水管41を介して行なうことができる。
【0030】
また、トラップ排水管42は循環配管33a,33bやタンク排水管41よりも小さな配管径により形成されているため、トラップ排水弁44を開弁した際にトラップ排水管42から排水される湯水は、当該トラップ排水管42の高い圧損によって最小限に抑えられる。これにより、トラップ排水管42から排水箇所へ湯水を導くための排水工事を不要とすることができる。
【0031】
ここで、本実施形態の貯湯システムでは、貯湯タンク32に接続される配管(出湯配管51)には、負圧開放弁52が設置されており、その設定圧を超える負圧が貯湯タンク32内に作用すると、負圧開放弁52が開弁され、貯湯タンク32内の負圧が開放される。このため、トラップ排水弁44を閉弁した状態でタンク排水弁43を開弁した際に貯湯タンク32内に作用する負圧と貯湯タンク32の水頭圧とが釣り合ったとき、当該負圧が負圧開放弁52の設定圧(開放圧)を超えていると、当該負圧が負圧開放弁52によって開放されてしまい、トラップ排水弁44を開弁しても、トラップ排水管42からエアを導入することができなくなる。このため、本実施形態の貯湯システムでは、トラップ排水弁44を閉弁した状態でタンク排水弁43を開弁した際に貯湯タンク32内に作用する負圧と貯湯タンク32の水頭圧とが釣り合うときの当該負圧が負圧開放弁52の設定圧よりも絶対値として小さくなるように設計される。これにより、タンク排水管41からの排水に伴って生じる貯湯タンク32内の負圧を利用してトラップ排水管42からエアを導入し、トラップ部33t内の湯水を導入したエアによってトラップ部33t内の湯水を押し出してタンク排水管41から排水させることができる。
【0032】
以上説明した本実施形態の燃料電池システム10は、熱交換器31と貯湯タンク32とを接続すると共に一部に湯水をトラップするトラップ部33tを有する循環配管33a,33bと、貯湯タンク32内の湯水を排水するタンク排水管41と、タンク排水管41の出口を開閉するタンク排水弁43と、トラップ部33tの最下箇所に接続されたトラップ排水管42と、トラップ排水管42の出口を開閉するトラップ排水弁44と、を備える。そして、トラップ排水弁44(トラップ排水管42の出口)は、タンク排水弁43(タンク排水管41の出口)よりも高い位置に設置される。これにより、タンク排水弁43が開弁されることで、貯湯タンク32内の湯水は、タンク排水管41から排水され、トラップ排水弁44が開弁されることで、トラップ部33t内の湯水は、主として、貯湯タンク32内の湯水の排水により生じる負圧でトラップ排水管42から導入されるエアによって押し出されることで、タンク排水管41から排水される。この結果、貯湯タンク32およびトラップ部33tの排水を良好に行なうことができる。また、主な排水をタンク排水管41で行なうことで、トラップ排水管42やトラップ排水弁44をより簡易な構成とすることができ、低コスト化を図ることができる。
【0033】
また、本実施形態の燃料電池システム10では、トラップ排水管42は、循環配管33a,33bおよびタンク排水管41よりも小さな配管径により形成される。これにより、トラップ排水管42の高い圧損によりトラップ排水管42からの排水を最小限にすることができる。この結果、トラップ排水管42からの排水を排水箇所に導くための排水工事を不要とすることができる。また、トラップ排水弁44として簡易な構成の排水弁を採用したり、トラップ排水管42の配管径を小さくすることによる耐久性の向上に伴いトラップ排水管42を樹脂により構成したりするなど、低コスト化が一層可能となる。
【0034】
さらに、本実施形態の燃料電池システム10では、タンク排水弁43およびトラップ排水弁44は、手動操作により開閉可能に構成されるため、システムの電源が停止しているときでも、貯湯タンク32内およびトラップ部33t内の湯水を排水することができる。
【0035】
本実施形態では、タンク排水弁43およびトラップ排水弁44は、手動操作により開閉可能に構成されるものとしたが、燃料電池システム10の制御装置からの制御信号による自動操作により開閉可能に構成されてもよいし、手動操作と自動操作の双方が可能に構成されてもよい。
【0036】
本実施形態では、タンク排水管41は、循環配管33a,33bの最下箇所に設置されたヒータユニット35に接続されるものとしたが、貯湯タンク32の底部に接続されてもよい。
【0037】
本実施形態では、本発明を燃料電池システム10に適用して説明したが、これに限定されるものではなく、貯湯システムの形態としてもよいし、貯湯システムの排水方法の形態としてもよい。
【0038】
実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施形態では、熱交換器31が「熱交換器」に相当し、貯湯タンク32が「タンク」に相当し、循環配管33a,33bが「循環配管」に相当し、トラップ部33tが「トラップ部」に相当し、ポンプ34が「ポンプ」に相当し、タンク排水管41が「第1排水管」に相当し、タンク排水弁43が「第1開閉部材」に相当し、トラップ排水管42が「第2排水管」に相当し、トラップ排水弁44が「第2開閉部材」に相当する。また、燃料電池モジュール20が「燃料電池モジュール」に相当し、筐体11が「筐体」に相当する。また、ラジエータ36が「ラジエータ」に相当する。
【0039】
なお、実施形態の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施形態が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施形態は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0040】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、貯湯システムおよび燃料電池システムの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
10 燃料電池システム、11 筐体、20 燃料電池モジュール、21 モジュールケース、30 排熱回収装置、31 熱交換器、32 貯湯タンク、33a,33b 循環配管、33t トラップ部、34 ポンプ、35 ヒータユニット、36 ラジエータ、41 タンク排水管、42 トラップ排水管、43 タンク排水弁、44 トラップ排水弁。