(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】スパークプラグ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01T 13/20 20060101AFI20240110BHJP
H01T 13/34 20060101ALI20240110BHJP
H01T 21/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01T13/20 B
H01T13/20 C
H01T13/20 E
H01T13/34
H01T21/02
(21)【出願番号】P 2020074053
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 健一朗
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-175707(JP,A)
【文献】特開2011-150875(JP,A)
【文献】特開2017-010740(JP,A)
【文献】特開2017-098162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/20
H01T 13/34
H01T 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の絶縁碍子(2)と、
該絶縁碍子の軸孔(21)に挿入配置された中心電極(3)と、
上記軸孔内において上記中心電極の基端部の外周側及び基端側に配設された第1導電性ガラスシール部(41)と、
上記軸孔内において上記第1導電性ガラスシール部の基端側に配設された抵抗体(5)と、
上記軸孔内において上記抵抗体の基端側に配設された第2導電性ガラスシール部(42)と、
上記第2導電性ガラスシール部の基端側に配設されて上記軸孔の基端部を塞ぐステム(6)と、
を有し、
上記軸孔内には、該軸孔の軸方向に貫通した形状の筒状体(7)が配設されており、
上記軸孔の内周面が上記筒状体の外周面(71)と対向し、上記第1導電性ガラスシール部が上記筒状体の先端面(73)及び内周面(72)に接触し、上記抵抗体が上記筒状体の基端面(74)及び内周面に接触している、スパークプラグ(1)。
【請求項2】
上記筒状体の外径(d1)は、上記中心電極の基端部の外径(d3)よりも大きい、請求項1に記載のスパークプラグ。
【請求項3】
上記筒状体の内径(d2)は、上記中心電極の基端部の外径よりも小さい、請求項2に記載のスパークプラグ。
【請求項4】
上記筒状体の先端面は、外周側へ向かうほど基端側へ向かうように傾斜した外向傾斜面を有し、径方向における上記外向傾斜面と上記軸孔の内周面との間に、上記第1導電性ガラスシール部が介在している、請求項1~3のいずれか一項に記載のスパークプラグ。
【請求項5】
筒状の絶縁碍子(2)の軸孔(21)内に中心電極(3)を挿入配置し、
上記軸孔内における上記中心電極の基端側に第1導電性ガラス材料(410)を配置し、
上記軸孔内における上記第1導電性ガラス材料の基端側に、上記軸孔と同軸状となる姿勢にて筒状体(7)を挿入配置し、
上記軸孔内における上記筒状体の基端側に抵抗体材料(50)を配置し、
上記軸孔内における上記抵抗体材料の基端側に、第2導電性ガラス材料(420)を配置し、
上記軸孔内における上記第2導電性ガラス材料の基端側に、ステム(6)を挿入配置し、
上記第1導電性ガラス材料、上記抵抗体材料、及び上記第2導電性ガラス材料を加熱して軟化させながら、上記ステムを軸方向の先端側へ加圧した後、
上記第1導電性ガラス材料、上記抵抗体材料、及び上記第2導電性ガラス材料を固化させる、スパークプラグの製造方法。
【請求項6】
上記軸孔内に上記筒状体を挿入配置した後、上記軸孔内に抵抗体材料(50)を配置する前に、上記筒状体を軸方向の先端側へ加圧する、請求項5に記載のスパークプラグの製造方法。
【請求項7】
上記筒状体の外径(d1)は、上記中心電極の基端部の外径(d3)よりも大きい、請求項5又は6に記載のスパークプラグの製造方法。
【請求項8】
上記筒状体の内径(d2)は、上記中心電極の基端部の外径よりも小さい、請求項7に記載のスパークプラグ
の製造方法。
【請求項9】
上記筒状体の先端面は、外周側へ向かうほど基端側へ向かうように傾斜した外向傾斜面を有し、上記筒状体が先端側へ加圧される際に、径方向における上記外向傾斜面と上記軸孔の内周面との間に、上記第1導電性ガラス材料の一部が介在する、請求項5~8のいずれか一項に記載のスパークプラグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパークプラグ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の着火手段として用いられるスパークプラグは、筒状の絶縁碍子とその軸孔に挿入配置された中心電極とを有する。そして、絶縁碍子の軸孔内における中心電極の基端側に、導電性ガラスシール部が形成されている。絶縁碍子の軸孔の内周面と中心電極の基端部の外周面との間の隙間にも、導電性ガラスシール部が形成される。しかし、この部分の隙間が小さいと、導電性ガラスシール部の充填密度が低下しやすい。そして、この隙間に粗大な気泡が形成されると、当該箇所において部分放電が生じるおそれが懸念される。この場合、スパークプラグの耐電圧の向上が困難となる。
【0003】
そこで、特許文献1においては、当該隙間に導電性ガラス粉末が入りやすくすることで、部分放電の発生を防ぎ、耐電圧の高いスパークプラグの製造方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、導電性ガラス粉末の平均粒径を制御したとしても、製造時において、導電性ガラス粉末を隙間に向わせる加圧力が充分に伝わらなければ、隙間における粗大な気泡の残留を防ぐことが困難となる。この場合、スパークプラグの耐電圧を向上させることが困難となる。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、高い耐電圧性を確保しやすい、スパークプラグ及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、筒状の絶縁碍子(2)と、
該絶縁碍子の軸孔(21)に挿入配置された中心電極(3)と、
上記軸孔内において上記中心電極の基端部の外周側及び基端側に配設された第1導電性ガラスシール部(41)と、
上記軸孔内において上記第1導電性ガラスシール部の基端側に配設された抵抗体(5)と、
上記軸孔内において上記抵抗体の基端側に配設された第2導電性ガラスシール部(42)と、
上記第2導電性ガラスシール部の基端側に配設されて上記軸孔の基端部を塞ぐステム(6)と、
を有し、
上記軸孔内には、該軸孔の軸方向に貫通した形状の筒状体(7)が配設されており、
上記軸孔の内周面が上記筒状体の外周面(71)と対向し、上記第1導電性ガラスシール部が上記筒状体の先端面(73)及び内周面(72)に接触し、上記抵抗体が上記筒状体の基端面(74)及び内周面に接触している、スパークプラグ(1)にある。
【0008】
本発明の他の態様は、筒状の絶縁碍子(2)の軸孔(21)内に中心電極(3)を挿入配置し、
上記軸孔内における上記中心電極の基端側に第1導電性ガラス材料(410)を配置し、
上記軸孔内における上記第1導電性ガラス材料の基端側に、上記軸孔と同軸状となる姿勢にて筒状体(7)を挿入配置し、
上記軸孔内における上記筒状体の基端側に抵抗体材料(50)を配置し、
上記軸孔内における上記抵抗体材料の基端側に、第2導電性ガラス材料(420)を配置し、
上記軸孔内における上記第2導電性ガラス材料の基端側に、ステム(6)を挿入配置し、
上記第1導電性ガラス材料、上記抵抗体材料、及び上記第2導電性ガラス材料を加熱して軟化させながら、上記ステムを軸方向の先端側へ加圧した後、
上記第1導電性ガラス材料、上記抵抗体材料、及び上記第2導電性ガラス材料を固化させる、スパークプラグの製造方法にある。
【発明の効果】
【0009】
上記スパークプラグにおいては、絶縁碍子の軸孔に上記筒状体が配設されている。そして、軸孔の内周面が筒状体の外周面と対向し、第1導電性ガラスシール部が筒状体の先端面及び内周面に接触し、抵抗体が筒状体の基端面及び内周面に接触している。このような状態で筒状体が配設されているため、スパークプラグを製造する際に、第1導電性ガラスシール部を形成する材料を中心電極の基端部の周囲に向わせる加圧力が、伝わりやすくなる。それゆえ、第1導電性ガラスシール部に粗大な気泡が形成されることを抑制することができる。その結果、スパークプラグの高い耐電圧性を確保しやすい。
【0010】
上記スパークプラグの製造方法においては、軸孔内における第1導電性ガラス材料の基端側に、上記筒状体を挿入配置する。これにより、第1導電性ガラス材料を中心電極の基端部の周囲に向わせる加圧力が、伝わりやすくなる。それゆえ、第1導電性ガラスシール部に粗大な気泡が形成されることを抑制することができる。その結果、耐電圧性に優れたスパークプラグを製造しやすい。
【0011】
以上のごとく、上記態様によれば、高い耐電圧性を確保しやすい、スパークプラグ及びその製造方法を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1における、スパークプラグの中心軸に沿った断面図。
【
図2】実施形態1における、スパークプラグの筒状体付近の拡大断面図。
【
図6】実施形態1における、第2工程の、
図5に続く説明図。
【
図9】実施形態1における、第4工程の、
図8に続く説明図。
【
図13】実施形態1における、第4工程の加圧力の伝わり方を示す説明図。
【
図14】実施形態1における、第7工程の加圧力の伝わり方を示す説明図。
【
図15】比較形態における、加圧力の伝わり方を示す説明図。
【
図16】実施形態1における、軟化ガラスの加圧力の伝わり方を微視的に示す説明図。
【
図19】実施形態2における、スパークプラグの筒状体付近の拡大断面図。
【
図21】実施形態2における、筒状体の一部の断面図。
【
図22】実施形態2における、スパークプラグの製造方法の断面説明図。
【
図23】実施形態2の変形例における、筒状体の斜視図。
【
図24】実施形態3における、スパークプラグの筒状体付近の拡大断面図。
【
図25】実施形態4における、スパークプラグの筒状体付近の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
スパークプラグ及びその製造方法に係る実施形態について、
図1~
図16を参照して説明する。
本形態のスパークプラグ1は、
図1に示すごとく、筒状の絶縁碍子2と、中心電極3と、第1導電性ガラスシール部41と、抵抗体5と、第2導電性ガラスシール部42と、ステム6と、を有する。
【0014】
中心電極3は、絶縁碍子2の軸孔21に挿入配置されている。第1導電性ガラスシール部41は、軸孔21内において中心電極3の基端部の外周側及び基端側に配設されている。抵抗体5は、軸孔21内において第1導電性ガラスシール部41の基端側に配設されている。第2導電性ガラスシール部42は、軸孔21内において抵抗体5の基端側に配設されている。ステム6は、第2導電性ガラスシール部42の基端側に配設されて軸孔21の基端部を塞ぐ。
【0015】
軸孔21内には、軸孔21の軸方向Zに貫通した形状の筒状体7が配設されている。
図2、
図3に示すごとく、軸孔21の内周面が筒状体7の外周面71と対向している。第1導電性ガラスシール部41が筒状体7の先端面73及び内周面72に接触している。抵抗体5が筒状体7の基端面74及び内周面72に接触している。
【0016】
スパークプラグ1は、例えば自動車エンジン等の内燃機関に取り付けられる。
図1に示すごとく、スパークプラグ1は、内側に絶縁碍子2を保持する、略筒状の取付金具11を備える。この取付金具11にて、スパークプラグ1は内燃機関のシリンダヘッドに取り付けられる。
【0017】
本明細書において、絶縁碍子2の軸孔21の貫通方向を、軸方向Zという。この軸方向Zにおいて、スパークプラグ1を内燃機関の燃焼室へ露出させる側を先端側といい、その反対側を基端側という。
【0018】
中心電極3は、先端部を絶縁碍子2の先端から突出させている。また、取付金具11の先端部に、接地電極12が接合されている。中心電極3と接地電極12との間に、放電ギャップGが形成されている。接地電極12は、例えば、Ni基合金等からなる。また、取付金具11は、例えば、炭素鋼等の鉄系合金材料からなる。
【0019】
中心電極3は、先端部に、貴金属チップ311を有するものとすることができる。すなわち、例えば、Ni基合金からなる中心電極3の母材の先端部に、貴金属チップ311を溶接等にて接合した構成とすることができる。貴金属チップ311としては、例えば、Pt(すなわち、白金)、Ir(すなわち、イリジウム)、Rh(すなわち、ロジウム)等、或いはこれら貴金属から選ばれる少なくとも1種類を主成分として含む貴金属又は貴金属合金を用いることができる。
【0020】
図1、
図2に示すごとく、絶縁碍子2の軸孔21は、先端側に開口した小径孔212と、基端側に開口した大径孔213とを有する。軸方向Zにおける、小径孔212と大径孔213との間に、テーパ状の段部211が形成されている。
【0021】
中心電極3は、基端部に大径の頭部32を有する。中心電極3は、頭部32が絶縁碍子2の段部211に、先端側から支承されている。そして、中心電極3における頭部32よりも先端側の部位は、絶縁碍子2の軸孔21の小径孔212に挿通されている。
【0022】
中心電極3の頭部32の外周面と、軸孔21の内周面との間には、隙間15が環状に形成されている。この隙間15を、以下において適宜、第1隙間15ともいう。径方向における第1隙間15の大きさは、例えば、0.1~0.8mm程度である。
【0023】
この第1隙間15には、第1導電性ガラスシール部41の一部が充填されている。第1導電性ガラスシール部41は、絶縁碍子2の軸孔21において、中心電極3の頭部32の外周側と、基端側とに、配設されている。軸孔21内において、第1導電性ガラスシール部41の基端側には、抵抗体5が配設されている。軸孔21内において、抵抗体5の基端側には、第2導電性ガラスシール部42を介して、ステム6が配設されている。
【0024】
抵抗体5は、導電性材料を含有する部材であり、所望の抵抗値に調整されている。抵抗体5は、中心電極3とステム6とを電気的に接続すると共に、電波雑音を吸収する機能を有する。抵抗体5は、例えば、ホウケイ酸ガラス等のガラス材料と骨材とを含む基材に、カーボン材料等の導電性材料が分散した集合体からなる。具体的には、導電性材料の粉末とガラス粉末と骨材粉末とを含む混合粉末材料を熱処理して得られる。この熱処理前の混合粉末材料が、後述する抵抗体材料50に相当する。例えば、骨材粉末としてジルコニア粉末等のセラミック粉末が用いられる。導電性材料の粉末は、例えば、カーボン粉末を混合したガラスを主成分とするカーボン-ガラス混合粉末として添加することができる。
【0025】
ステム6は、大径の端子部62と、これより小径の軸部61とを備える。ステム6は、軸部61が絶縁碍子2の軸孔21に挿入され、端子部62が絶縁碍子2の基端側へ突出している。
【0026】
第1導電性ガラスシール部41及び第2導電性ガラスシール部42は、例えば、導電性の接合ガラスからなる。接合ガラスは、例えば、ガラスに銅粉末を混入させてなる銅ガラスからなる。
【0027】
図2に示すごとく、軸孔21内における、第1導電性ガラスシール部41と抵抗体5との間に、筒状体7が配設されている。筒状体7の内周側の空間には、第1導電性ガラスシール部41の一部と抵抗体5の一部とが配置されている。筒状体7の内周側の空間において、第1導電性ガラスシール部41と抵抗体5とが互いに接触している。
【0028】
筒状体7は、充分な剛性を有する。より具体的には、筒状体7は、例えば、室温~900℃を含む温度域において、第1導電性ガラスシール部41及び抵抗体5よりも高い剛性を有する。筒状体7は、例えば、アルミナ等の金属酸化物、インコネル(登録商標)等の上記温度域に対し充分高い融点を持つ金属等からなる。本形態において、筒状体7は、円筒形状を有する。
【0029】
図3に示すごとく、筒状体7の外径d1は、中心電極3の基端部の外径d3よりも大きい。筒状体7の内径d2は、中心電極3の基端部の外径d3よりも小さい。本形態において、外径d3は、頭部32の直径でもある。筒状体7の外周面71は、軸孔21の内周面に実質的に接触していることが好ましい。
図2に示すごとく、筒状体7の先端面73は、軸方向Zにおいて、第1隙間15に対向している。
【0030】
次に、本形態のスパークプラグ1の製造方法につき、主として
図4~
図12を用いて説明する。
【0031】
まず、
図4に示すごとく、筒状の絶縁碍子2の軸孔21内に中心電極3を挿入配置する。以下において、この工程を適宜、第1工程という。
次に、
図5、
図6に示すごとく、軸孔21内における中心電極3の基端側に第1導電性ガラス材料410を配置する。以下において、この工程を適宜、第2工程という。
【0032】
次いで、
図7に示すごとく、軸孔21内における第1導電性ガラス材料410の基端側に、軸孔21と同軸状となる姿勢にて筒状体7を挿入配置する。以下において、この工程を適宜、第3工程という。
次いで、
図8、
図9に示すごとく、軸孔21内における筒状体7の基端側に抵抗体材料50を配置する。以下において、この工程を適宜、第4工程という。
【0033】
次いで、
図10に示すごとく、軸孔21内における抵抗体材料50の基端側に、第2導電性ガラス材料420を配置する。以下において、この工程を適宜、第5工程という。
次いで、
図11に示すごとく、軸孔21内における第2導電性ガラス材料420の基端側に、ステム6を挿入配置する。以下において、この工程を適宜、第6工程という。
【0034】
次いで、第1導電性ガラス材料410、抵抗体材料50、及び第2導電性ガラス材料420を加熱して軟化させながら、
図12に示すごとく、ステム6を軸方向Zの先端側へ加圧する。以下において、この工程を適宜、第7工程という。
その後、第1導電性ガラス材料410、抵抗体材料50、及び第2導電性ガラス材料420を冷却して固化させる。以下において、この工程を適宜、第8工程という。
【0035】
上述の第1工程~第8工程は、便宜的な表現であり、各行程の間に、他の工程が入ることもあり得る。また、第8工程の後、取付金具11の内側に絶縁碍子2を挿入して固定することで、
図1に示すスパークプラグ1が得られる。
【0036】
第1工程においては、
図4に示すごとく、絶縁碍子2の軸孔21における小径孔212に、中心電極3を挿通させる。中心電極3の頭部32は、軸孔21の段部211に係止させる。そして、軸孔21の大径孔213の内周面と中心電極3の頭部32との間に、第1隙間15が形成される。本形態において、軸孔21の小径孔212及び大径孔213は、いずれも円柱形状の空間である。
【0037】
第2工程においては、軸孔21内に配置された第1導電性ガラス材料410を、
図6に示すごとく、加圧治具19によって、先端側へ加圧する。これにより、第1導電性ガラス材料410は、中心電極3の基端側において圧縮される。そして、第1導電性ガラス材料410の一部が、第1隙間15にも充填される。なお、第1導電性ガラス材料410としては、例えば、銅ガラス粉末等を用いることができる。
【0038】
第3工程においては、
図7に示すごとく、軸孔21内に筒状体7を挿入配置した後、軸孔21内に抵抗体材料50を配置する前に、筒状体7を軸方向Zの先端側へ加圧する。すなわち、第4工程の前において、筒状体7を軸方向Zの先端側へ加圧する。具体的には、
図7に示すごとく、加圧治具19を直接、筒状体7の基端面74に当接させて、筒状体7を先端側へ加圧する。これにより、実質的に剛体である筒状体7が、その先端側に存在する第1導電性ガラス材料410を先端側へ加圧することとなる。
【0039】
すなわち、筒状体7の基端面74に入力された加圧治具19の加圧力は、略そのまま、筒状体7の先端面73から、軸孔21の内周面付近の第1導電性ガラス材料410に入力される。その結果、第1導電性ガラス材料410の一部を、第1隙間15に押し込みやすくなる。
加圧治具19は、軸孔21の内径よりも若干小径の円柱形状を有する。また、第1導電性ガラス材料410の配置と加圧とは、複数回に分けて行うこともできる。
【0040】
第4工程においては、軸孔21内に抵抗体材料50を配置した後、
図8、
図9に示すごとく、抵抗体材料50を加圧治具19によって先端側へ加圧する。本形態においては、抵抗体材料50を、複数回に分けて軸孔21内に配置する。すなわち、まず、
図8に示すごとく、最終的に配置する抵抗体材料50の量よりも少量の抵抗体材料50を、軸孔21内に配置する。その後、加圧治具19によって、抵抗体材料50を加圧する。次いで、
図9に示すごとく、さらに残りの量の抵抗体材料50を軸孔21内に配置した後、加圧治具19によって抵抗体材料50を加圧する。抵抗体材料50の配置と加圧との繰り返し回数は、3回以上とすることもできる。抵抗体材料50の配置及び加圧は、1回のみとすることもできる。
【0041】
第4工程における加圧治具19の加圧によって、抵抗体材料50が圧縮されるのみならず、その先端側に配置された第1導電性ガラス材料410も加圧される。そして、筒状体7の先端側に位置する第1導電性ガラス材料410は、筒状体7を介して、先端側へ向かう加圧力を受ける。
【0042】
ここで、仮に筒状体7を軸孔21に挿入しない場合を想定する。この場合、加圧治具19の加圧力は、抵抗体材料50及び第1導電性ガラス材料410において、粉末粒子の間の摩擦によって減衰してしまい、先端側へ向かうほど加圧力が小さくなってしまう。そうすると、中心電極3の頭部32付近の第1導電性ガラス材料410に伝わる加圧力は小さくなってしまう。第1導電性ガラス材料410に対して、第1隙間15に向う加圧力も小さくなってしまう。
【0043】
これに対して、
図13に示すように、軸孔21内に筒状体7が配置されていると、抵抗体材料50から筒状体7の基端面74に入力される加圧力Pαは、略そのまま筒状体7の先端面73から第1導電性ガラス材料410に入力される加圧力Pβとなる。すなわち、Pα≒Pβとなる。つまり、筒状体7が配された部分においては、加圧力が実質的に減衰することなく、軸孔21の内周面付近の第1導電性ガラス材料410に選択的に伝わることとなる。なお、筒状体7の内周側においては、軸方向Zに加わる加圧力Pγ、Pδが、先端側ほど減衰する。すなわち、Pγ>Pδとなる。このようにして、第4工程においても、第1導電性ガラス材料410の一部が、第1隙間15に押し込まれやすくなる。
【0044】
第5工程においては、軸孔21内に配置された第2導電性ガラス材料420を、
図10に示すごとく、加圧治具19によって先端側へ加圧する。これにより、第2導電性ガラス材料420は、抵抗体材料50の基端側において圧縮される。また、このときの加圧によって、第2導電性ガラス材料420が圧縮されるのみならず、その先端側に配置された抵抗体材料50及び第1導電性ガラス材料410も加圧される。そして、この工程においても、筒状体7の先端側に位置する第1導電性ガラス材料410は、筒状体7を介して、先端側へ向かう加圧力を受ける。これにより、この第5工程においても、第1導電性ガラス材料410の一部が、第1隙間15に押し込まれやすくなる。なお、第5工程においても、第1導電性ガラス材料410の配置と加圧とは、複数回に分けて行うこともできる。
【0045】
第6工程においては、上述のように、軸孔21内にステム6を挿入配置するが、この段階においては、
図11に示すごとく、ステム6の軸部61の一部が軸孔21の基端側に露出している。
【0046】
第7工程においては、第1導電性ガラス材料410、抵抗体材料50、及び第2導電性ガラス材料420を、例えば850~900℃程度に加熱する。これにより、第1導電性ガラス材料410、抵抗体材料50、及び第2導電性ガラス材料420は、少なくともガラス成分の一部が軟化した状態となる。この第1導電性ガラス材料410、抵抗体材料50、及び第2導電性ガラス材料420が軟化した状態のものを、便宜的に、それぞれ、軟化ガラス41G、5G、42Gともいう。
【0047】
第7工程においては、上述のように、第1導電性ガラス材料410、抵抗体材料50、及び第2導電性ガラス材料420が、溶融し、軟化するため、粉末粒子間に存在していた空隙が徐々に埋まる。なお、この空隙が、後述する気泡Aの素となる。これと共に、ステム6が軸方向Zの先端側に加圧されるため、軸孔21内における、第1導電性ガラス材料410、抵抗体材料50、及び第2導電性ガラス材料420の充填領域が、軸方向Zに圧縮される。また、軟化ガラス42G(すなわち、軟化した第2導電性ガラス材料420)の一部は、
図14に示すごとく、ステム6と軸孔21の内周面との間の隙間16(以下において、第2隙間16ともいう。)に這い上がる。
【0048】
その結果、
図12に示すごとく、ステム6の軸部61の全体が、軸孔21に挿入され、端子部62の先端が絶縁碍子2の基端に当接する。
【0049】
軟化ガラス41G、5G、42Gは、完全な液体状ではなく、ゲル状のように粘度がある程度高い状態にある。これらの軟化ガラス41G、5G、42Gは、粉末の状態に比べて、流動しやすくなる。それゆえ、第1隙間15にも、軟化ガラス41Gが充填されやすくなる。しかし、
図14に示すごとく、軟化ガラス41G内には、上述した第1導電性ガラス材料410の粉末粒子間の空隙に起因する気泡Aが生じている。そして、第1隙間15における軟化ガラス41G内に気泡Aが残ると、スパークプラグ1の耐電圧が低下することが懸念される。
【0050】
軟化ガラス41G内の気泡Aは、軟化ガラス41Gの流動が大きいと、比較的移動しやすい。しかし、仮に、
図15に示すように筒状体7を配置しない形態(以下、比較形態)とした場合には、特に第1隙間15付近において、軟化ガラス41Gの流動が生じにくくなる。つまり、ステム6からの加圧力P1は、第2導電性ガラス材料420の軟化ガラス42G、抵抗体材料50の軟化ガラス5G、第1導電性ガラス材料410の軟化ガラス41Gに、順次伝わる。しかし、これらの軸方向Zの加圧力P1,P2,P3は、先端側へ向かうにつれて、徐々に減衰する。これは、各部の軟化ガラス42G、5G、41Gに伝わる軸方向Zの先端側を向く加圧力が分散してしまい、軸方向Zの加圧力が減衰するためである。なお、
図14、
図15において、矢印f1は、軟化ガラス42G、5G、41Gの流動を示す。
【0051】
この現象を、より微視的に考察すると、次のように考えることができる。
すなわち、軟化ガラス41G、5G、42Gは、ミクロ的には、
図16に示すごとく、固形もしくは固形に近い状態の、多数の粒子(以下において、固形部4aという。)の間に、軟化したゲル状のガラス(以下において、軟化部4bという。)が満たされた状態にあると考えられる。したがって、ステム6から直接的又は間接的に受けた加圧力によって、軟化ガラス41G、5G、42Gのうちの軟化部4bは、固形部4aの間を、軸方向Zの先端側のみならず、矢印f0に示すように、様々な方向に移動することとなる。つまり、軸方向Zの先端側を向く加圧力Pzの一部は、他の方向に分散して逃げてしまう。その結果、先端側へ向かうほど、軸方向Zの先端側を向く加圧力Pzは、減衰してしまうと考えることができる。
【0052】
そうすると、
図15に示す比較形態において、第1隙間15に軟化ガラス41Gを押し込む加圧力P4は、小さくなり、第1隙間15における軟化ガラス41Gの流動性が低くなりやすい。それゆえ、比較形態においては、第1隙間15に気泡Aが残ることが懸念される。特に、第1隙間15の先端位置における軸孔21の内周面に、一定程度以上の大きさの気泡Aが残ると、耐電圧の低下につながることが懸念される(後述する実験例参照)。
【0053】
これに対して、本形態においては、
図14に示すように、筒状体7を配置するため、筒状体7の先端側における軟化ガラス41Gは、軸方向Zの先端側に押される。ここで、本形態においても、軸方向Zの先端側へ向かうほど、加圧力P1、P2,P3の減衰は生じる。しかし、実質的に剛体である筒状体7が存在する部分においては、この減衰が実質的に生じないと考えられる。つまり、第2導電性ガラス材料420の軟化ガラスから筒状体7の基端面74に入力される加圧力P51の大きさと、筒状体7の先端面73から第1導電性ガラス材料410の軟化ガラス41Gに伝わる加圧力P52の大きさとは、略同等と考えられる。そうすると、筒状体7の先端面73に対向する位置の軟化ガラス41Gには、選択的に比較的大きな加圧力が作用する。つまり、軸孔21の内周面付近の軟化ガラス41Gが、比較的大きな加圧力によって、第1隙間15に向かうこととなる。
【0054】
これにより、筒状体7の先端側に位置する第1隙間15に、軟化ガラス41Gが押し込まれる。そうすると、第1隙間15において、軟化ガラス41Gが流動しやすくなる。その結果、第1隙間15に存在していた気泡Aが移動する。また、仮に第1隙間15に気泡Aが残っても、軟化ガラス41Gにかかる圧力によって押し潰されて、小さくなる。
【0055】
また、一旦第1隙間15に押し込まれた軟化ガラス41Gの一部は、先端側に押し込まれる流れから外れて、基端側へ移動する。この流れに乗って、気泡Aが第1隙間15から排出される。そして、筒状体7の内側を通って、基端側へ移動する気泡Aも存在する。
このようにして、第1導電性ガラスシール部41、特に第1隙間15における第1導電性ガラスシール部41に残る気泡Aの量及び大きさが抑制される。
【0056】
次に、本実施形態の作用効果につき説明する。
上記スパークプラグ1においては、絶縁碍子2の軸孔21に筒状体7が配設されている。そして、軸孔21の内周面が筒状体7の外周面71と対向し、第1導電性ガラスシール部41が筒状体7の先端面73及び内周面72に接触し、抵抗体5が筒状体7の基端面74及び内周面72に接触している。このような状態で筒状体7が配設されているため、上述のように、スパークプラグ1を製造する際に、第1導電性ガラス材料410を中心電極3の基端部(すなわち、頭部32)の周囲(すなわち、第1隙間15)に向わせる加圧力が、伝わりやすくなる。それゆえ、第1導電性ガラスシール部41に粗大な気泡が形成されることを抑制することができる。その結果、スパークプラグ1の高い耐電圧性を確保しやすい。
【0057】
筒状体7の外径d1は、中心電極3の基端部の外径d3よりも大きい。これにより、第1導電性ガラス材料410を第1隙間15に向わせる加圧力が、より伝わりやすくなる。
【0058】
筒状体7の内径d2は、中心電極3の基端部の外径d3よりも小さい。これによっても、第1導電性ガラス材料410を第1隙間15に向わせる加圧力が、より伝わりやすくなる。
【0059】
また、本形態の製造方法において、軸孔21内に筒状体7を挿入配置した後、軸孔21内に抵抗体材料50を配置する前に、筒状体7を軸方向Zの先端側へ加圧する。これにより、筒状体7を介して、比較的大きな加圧力を、軸孔21の内周面付近の第2導電性ガラス材料420の軟化ガラス41Gに作用させることができる。その結果、効果的に、第1隙間15に粗大な気泡が残ることを抑制することができる。
【0060】
以上のごとく、本形態によれば、高い耐電圧性を確保しやすい、スパークプラグ及びその製造方法を提供することができる。
【0061】
(実験例)
本例は、気泡の電界強度を指標として、粗大な気泡が第1隙間15に残留することによる影響を、シミュレーション解析にて調べた例である。
本例においては、
図17に示すような、中心電極3の頭部32と軸孔21の内周面との間の第1隙間15に第1導電性ガラスシール部41が充填された状態を、解析モデルとして想定した。同図において、軸孔21の右側に付した目盛は、角部Rからの、軸方向Zの距離を示す。角部Rは、軸孔21の大径孔213の先端部であり、段部211と大径孔213の内周面との間の角部である。なお、同図に示す目盛の単位は、mmである。また、大径
孔213の直径を3.0mm、中心電極3の頭部32の直径を2.4mmとし、絶縁碍子の材質をアルミナ、中心電極3の頭部32の材質をインコネル600とした。
【0062】
そして、軸孔21の内周面に気泡が付着していた場合において、スパークプラグへの電圧印加時に、どの程度の電界強度が当該気泡に生じるかを解析した。
なお、気泡に生じる電界強度が大きくなるほど、絶縁碍子の耐電圧の低下を招きやすいことが知られている。すなわち、スパークプラグへの電圧印加時において、気泡内に電界集中が起こると、これをきっかけに絶縁碍子の絶縁破壊を招くおそれがあることが、知られている。したがって、気泡に生じる電界強度が大きいほど、耐電圧が低いと考えることができる。
【0063】
具体的な解析手法としては、上述の解析モデルにおいて、直径20μmの気泡が、軸孔21の内周面に付着した場合の電界強度と、当該気泡の付着した位置(以下において、気泡位置ZAともいう)との関係を解析した。また、直径100μmの気泡が、軸孔21の内周面に付着した場合の電界強度と、当該気泡の付着した位置(すなわち、気泡位置ZA)との関係を解析した。さらには、直径20μmの気泡が、中心電極3の頭部32の側面に付着した場合の電界強度についても、解析した。これらの結果を、
図18のグラフに示す。気泡位置ZAは、上述の角部Rからの軸方向Zの距離にて示される。
【0064】
同図から分かるように、軸孔21の内周面に気泡が付着した場合、気泡の直径が大きい方が、電界強度が大きい。また、気泡位置ZAが角部Rに近いと、電界強度が大きいことが確認された。一方、中心電極3の頭部32に気泡が付着しても、電界強度は略ゼロであった。
【0065】
上記の結果から分かるように、気泡が軸孔21の内周面に接触していないことが重要であるが、軸孔21の内周面に付着しても、その付着位置がより基端側である(すなわち、気泡位置ZAの値が大きい)こと、及び、気泡の直径が小さいことが、重要であると考えられる。つまり、第1隙間15における、より先端側の、粗大な気泡の付着を阻止することが、スパークプラグの耐電圧を確保するうえで、重要であるといえる。
【0066】
上述のように、実施形態1のスパークプラグ及びその製造方法によれば、筒状体7を軸孔21内に適切に配置することで、第1隙間15における第1導電性ガラス材料410に対して、より先端側まで、加圧力を付与することができる。このことは、より角部Rに近い位置の気泡を軸孔21の内周面から剥離しやすくなることに繋がるし、気泡をより小さく潰すことができることにも繋がる。つまり、実施形態1のスパークプラグ1は、第1隙間15における、より先端側の、粗大な気泡の付着を阻止することができる。したがって、実施形態1のスパークプラグは、高い耐電圧を実現しやすいといえる。
【0067】
(実施形態2)
本形態は、
図19~
図22に示すごとく、筒状体7の先端面73が外向傾斜面731を有する形態である。
外向傾斜面731は、外周側へ向かうほど基端側へ向かうように傾斜している。そして、径方向における外向傾斜面731と軸孔21の内周面との間に、第1導電性ガラスシール部41が介在している。
【0068】
本形態において、
図20、
図21に示すごとく、筒状体7は、先端面73の一部に、外向傾斜面731を有する。先端面73は、外向傾斜面731の内周側に、内向傾斜面732を有する。内向傾斜面732は、内周側へ向かうほど基端側へ向かうように傾斜している。外向傾斜面731は、内向傾斜面732よりも、径方向の形成領域が大きい。外向傾斜面731は、筒状体7の先端面73のうち、例えば、径方向の1/3以上、若しくは1/2以上の領域に形成されている。また、筒状体7の基端面74は、内周側へ向かうほど先端側へ向かうように傾斜した基端傾斜面741を有する。
なお、
図20にハッチングを付した領域は、筒状体7の中心軸を含む断面Cを示す。この断面Cの一部を、
図21に拡大して表している。
【0069】
本形態のスパークプラグ1の製造方法においては、
図22に示すごとく、筒状体7が先端側へ加圧される際に、径方向における外向傾斜面731と軸孔21の内周面との間に、第1導電性ガラス材料410の一部が介在する。
【0070】
その他は、実施形態1と同様である。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0071】
本形態においては、筒状体7の先端面73が外向傾斜面731を有する。これにより、スパークプラグ1の製造時において、筒状体7が先端側へ押し込まれる加圧力が作用したとき、外向傾斜面731と軸孔21の内周面との間の第1導電性ガラス材料410を塊として先端側へ押し込むようにすることができる。つまり、外向傾斜面731と軸孔21の内周面との間の領域に存在する第1導電性ガラス材料410は、内周側へ逃げにくいため、軸孔21の内周面に沿って先端側へ押し込まれやすい。
【0072】
これにより、軸孔21の内周面と中心電極3の頭部32との間の第1隙間15に、第1導電性ガラス材料410の一部が押し込まれやすくなる。このような作用は、実施形態1において説明した製造方法における、第3工程(
図7参照)、第4工程(
図8、
図9参照)、第5工程(
図10参照)、第7工程(
図12参照)のいずれにおいても、生じ得る。
【0073】
また、第7工程においては、第1導電性ガラス材料410の軟化ガラス41Gが第1隙間15に押し込まれるため、第1隙間15に存在していた気泡Aを、移動させたり、圧縮したりすることができる。これにより、粗大な気泡Aが第1隙間15に残ることを抑制することができる。
【0074】
また、筒状体7の先端面73は、内向傾斜面732をも有する。この内向傾斜面732によって、
図22に示すごとく、第1隙間15から基端側へ移動してきた気泡Aを、内周側に導くことができる。これにより、筒状体7の内周側から、気泡Aを逃がしやすくなる。
【0075】
また、筒状体7の基端面74は基端傾斜面741を有する。これにより、抵抗体材料50から筒状体7に加わる軸方向Zの加圧力は、基端傾斜面741において、斜め外周側、すなわち先端側へ向かうほど、外周側へ向かうようなベクトルの力として伝わる。これにより、筒状体7を先端側へ押し込む力とともに外周側へも加圧する力が作用する。それゆえ、筒状体7を軸孔21の内周面に沿わせて安定させつつ、先端側へ押し込むことができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0076】
なお、本形態に示した筒状体7の変形例として、
図23に示すように、周方向の一部に、スリット75を設けることもできる。スリット75を設けることにより、筒状体7は、周方向の寸法が変化するように弾性変形しやすくなる。つまり、弾性変形によって筒状体7の径方向寸法が変動する。それゆえ、筒状体7を、絶縁碍子2の軸孔21に挿入した後、筒状体7の外周面71を、軸孔21の内周面に接触させやすくなる。これにより、容易に、軸孔21の内周面付近の第1導電性ガラス材料410を、先端側へ押し込む加圧力を伝えやすくすることができる。
【0077】
(実施形態3)
本形態は、
図24に示すごとく、筒状体7の基端面74に、凹状面742を設けた形態である。本形態において、凹状面742は、基端傾斜面741と、その内側の逆傾斜面743とによって構成されている。
その他は、実施形態2と同様である。
【0078】
本形態においては、抵抗体材料50から筒状体7が受ける軸方向Zの加圧力を、凹状面742において、効率よく受けることができる。その結果、軸方向Zの先端側への加圧力を、より、第1導電性ガラス材料410に伝えやすくすることができる。
その他、実施形態2と同様の作用効果を有する。
【0079】
(実施形態4)
本形態は、
図25に示すごとく、中心電極3の頭部32の形状を、基端側へ向かうほど縮径した形状とした形態である。すなわち、中心軸に沿った頭部32の断面の形状が、略台形状となる。
【0080】
これに伴い、中心電極3の頭部32と、絶縁碍子2の軸孔21の内周面との間の空間である、第1隙間15は、基端側が大きくなるような形状となる。
その他は、実施形態2と同様である。
【0081】
本形態においては、第1隙間15は、基端側が大きくなるような形状となる。それゆえ、第1隙間15への第1導電性ガラス材料410の流入、第1隙間15からの第1導電性ガラス材料410の流出が、より円滑に行われやすくなる。その結果、第1隙間15に粗大な気泡が残ることを、より効果的に抑制することができる。
その他、実施形態2と同様の作用効果を有する。
【0082】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0083】
1…スパークプラグ、2…絶縁碍子、21…軸孔、3…中心電極、41…第1導電性ガラスシール部、410…第1導電性ガラス材料、42…第2導電性ガラスシール部、420…第2導電性ガラス材料、5…抵抗体、50…抵抗体材料、6…ステム、7…筒状体、71…(筒状体の)外周面、72…(筒状体の)内周面、73…(筒状体の)先端面、74…(筒状体の)基端面、Z…軸方向