(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-09
(45)【発行日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ハンドル
(51)【国際特許分類】
B62K 21/20 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B62K21/20
(21)【出願番号】P 2020075310
(22)【出願日】2020-04-21
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】三池 翔太
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-018684(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0367123(US,A1)
【文献】特開2000-280966(JP,A)
【文献】特開平10-100979(JP,A)
【文献】特開2007-022473(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0116442(US,A1)
【文献】実開昭57-148590(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 21/00-21/26,25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のフロントフォークの上端側を連ねるアッパーブラケットに設置されたハンドルであって、
前記アッパーブラケットの上面に設置されるベース部が形成された
セパレートタイプの一対のハンドルバーと、
前記アッパーブラケットの上面中央から前記一対のフロントフォークに向けて広が
り、前記一対のハンドルバーの前記ベース部を連結するハンドルホルダと、を備え、
前記ベース部及び前記ハンドルホルダが
上下方向に重なり、前記ベース部及び前記ハンドルホルダが前記アッパーブラケットに固定部材によって固定され、
前記ハンドルホルダの外縁には切り欠きが形成され、
前記ベース部の上面には前記切り欠きに沿った隆起部が形成されていることを特徴とするハンドル。
【請求項2】
前記ハンドルホルダには固定穴が形成され、前記ベース部には貫通穴が形成されており、前記アッパーブラケットを下面側から貫通した前記固定部材が前記貫通穴を通じて前記固定穴に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のハンドル。
【請求項3】
前記固定穴は有底穴であることを特徴とする請求項2に記載のハンドル。
【請求項4】
前記ハンドルホルダの前記固定穴の周囲及び前記ベース部の前記貫通穴の周囲の合わせ面のうち、いずれか一方の合わせ面に凸状部が形成され、いずれか他方の合わせ面に前記凸状部が入り込む凹状部が形成されていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のハンドル。
【請求項5】
前記一対のハンドルバーは前記アッパーブラケットに振動吸収材を介して支持されていることを特徴とする
請求項1に記載のハンドル。
【請求項6】
前記ベース部には前記フロントフォークを露出させる調整穴が形成され、当該調整穴の中心に対して車幅方向の内側で前記ベース部及び前記ハンドルホルダが前記アッパーブラケットに前記固定部材によって固定されていることを特徴とする請求項1から
請求項5のいずれか1項に記載のハンドル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鞍乗型車両のハンドルとして、一対のフロントフォークの上端側を連ねるアッパーブラケットに、一対のクランプ部材を介して一対のハンドルバーが設置されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のハンドルは、アッパーブラケットの上面から一対のフロントフォークが突出しており、アッパーブラケット上の一対のクランプ部材がフロントフォークの突出部分に取り付けられている。各クランプ部材にはハンドル用の挿込穴が形成されており、挿込穴にハンドルバーが挿し込まれた状態で、クランプ部材にハンドルバーがネジ止めされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ハンドル周辺にはマスターシリンダやブレーキレバー、クラッチレバー、ハンドルスイッチ等の部品が設置され、クランプ部材を設置するために十分なスペースを確保することが難しい。特許文献1に記載のクランプ部材にはハンドルバーがネジ止めされているため、ネジ頭とハンドル周辺の部品の干渉を避けるために、クランプ部材に対するハンドルバーの設置位置、設置向き、バー形状等の設計自由度が制約されていた。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ハンドルバーの設計自由度を向上させることができるハンドルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のハンドルは、一対のフロントフォークの上端側を連ねるアッパーブラケットに設置されたハンドルであって、前記アッパーブラケットの上面に設置されるベース部が形成されたセパレートタイプの一対のハンドルバーと、前記アッパーブラケットの上面中央から前記一対のフロントフォークに向けて広がり、前記一対のハンドルバーの前記ベース部を連結するハンドルホルダと、を備え、前記ベース部及び前記ハンドルホルダが上下方向に重なり、前記ベース部及び前記ハンドルホルダが前記アッパーブラケットに固定部材によって固定され、前記ハンドルホルダの外縁には切り欠きが形成され、前記ベース部の上面には前記切り欠きに沿った隆起部が形成されていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様のハンドルによれば、一対のフロントフォークよりも車幅方向の内側で、ハンドルバーのベース部及びハンドルホルダが重なり、ベース部及びハンドルホルダがアッパーブラケットに固定される。一対のフロントフォークよりも車幅方向の外側に部品が設置されても、ハンドルバーが部品に干渉せず、この部品によってハンドルバーの設置位置、設置向き、バー形状等の設計自由度が制約されることがない。よって、ハンドルバーの設計自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】本実施例のアッパーブラケットの斜視図である。
【
図8】
図7のハンドルをA-A線で切断した断面図である。
【
図9】
図7のハンドルをB-B線で切断した断面図である。
【
図10】本実施例のハンドルの組付け構造の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様のハンドルは、一対のフロントフォークの上端側を連ねるアッパーブラケットに設置されている。アッパーブラケットの上面にはハンドルバーが設置され、アッパーブラケットの上面中央から一対のフロントフォークに向かってハンドルホルダが広がっている。ハンドルバーにはベース部が形成されており、このベース部及びハンドルホルダが重ねられた状態で、一対のフロントフォークよりも車幅方向の内側で、ベース部及びハンドルホルダが固定部材によってアッパーブラケットに固定される。一対のフロントフォークよりも車幅方向の外側に部品が設置されても、ハンドルバーが部品に干渉せず、この部品によってハンドルバーの設置位置、設置向き、バー形状等の設計自由度が制約されることがない。よって、ハンドルバーの設計自由度を向上させることができる。
【実施例】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例について詳細に説明する。
図1は、本実施例の車両前部の前面図である。
図2は、本実施例の車両前部の上面図である。
図3は、比較例のハンドルの上面図である。また、以下の図では、矢印FRは車両前方、矢印REは車両後方、矢印Lは車両左方、矢印Rは車両右方をそれぞれ示している。
【0011】
図1及び
図2に示すように、鞍乗型車両1にはツインスパー型の車体フレーム10が設けられ、車体フレーム10のヘッドフレーム11から左右一対のメインフレーム13L、13Rが後方に延びている。ヘッドフレーム11の前側のヘッドパイプ12にはステアリングシャフト45が挿通され、ヘッドフレーム11の後方には燃料タンク15が設置されている。ステアリングシャフト45の上端部にはアッパーブラケット31が設けられ、ステアリングシャフト45の下端部にはロアブラケット41が設けられている。アッパーブラケット31及びロアブラケット41によって左右一対のフロントフォーク17L、17Rが保持されている。
【0012】
アッパーブラケット31の中央前側には、メインスイッチ18が設けられている。アッパーブラケット31の中央後側には、ヘッドパイプ12から上方に突出したステアリングシャフト45の上端部が固定されている。アッパーブラケット31の左右両側には、フロントフォーク17L、17Rの上端部を保持するアッパークランプ32L、32Rが形成されている。ロアブラケット41の中央には、ヘッドパイプ12から下方に突出したステアリングシャフト45の下端部が固定されている。ロアブラケット41の左右両側には、フロントフォーク17L、17Rの中間部を保持するロアクランプ42L、42Rが形成されている。
【0013】
このように、アッパーブラケット31及びロアブラケット41によってフロントフォーク17L、17Rが一体化され、アッパーブラケット31及びロアブラケット41を繋ぐステアリングシャフト45がヘッドパイプ12に支持されている。アッパーブラケット31の上面には、フロントフォーク17L、17Rを左右に揺動させるハンドル50が設置されている。ハンドル50は、アッパーブラケット31の上面を覆うハンドルホルダ71と、セパレートタイプの左右一対のハンドルバー51L、51Rとを備えている。ハンドルバー51L、51Rはハンドルホルダ71を介して連結されている。
【0014】
左側のハンドルバー51Lにはハンドルグリップ21が取り付けられ、ハンドルグリップ21の基端の隣りにはクラッチ用のマスターシリンダ22のバークランプ23が取り付けられている。マスターシリンダ22にはクラッチレバー24及びクラッチケーブルが取り付けられている。右側のハンドルバー51Rにはスロットルグリップ26が取り付けられ、スロットルグリップ26の基端の隣りにはブレーキ用のマスターシリンダ27のバークランプ28が取り付けられている。マスターシリンダ27にはフロントブレーキのブレーキレバー29及びブレーキケーブルが取り付けられている。
【0015】
ところで、
図3の比較例に示すハンドル80は、ハンドルホルダ82の左右両端にハンドルバー81L、81Rが固定されている。ハンドルホルダ82の左右両側にはフロントサスペンションを調整するための調整穴83L、83Rが形成されているため、ハンドルホルダ82の左右両端にハンドルバー81L、81Rの設置スペースを確保することが難しい。さらに、調整穴83Lの周辺にはクラッチ用のマスターシリンダ84やクラッチレバー85等が設置され、調整穴83Rの周辺にはブレーキ用のマスターシリンダ86やブレーキレバー87等が設置されている。
【0016】
このため、ハンドルバー81L、81Rがマスターシリンダ84、86やレバー85、87等の部品に干渉しないように、ハンドルバー81L、81Rの設置位置、設置向き、バー形状等の設計自由度がハンドル周辺の部品によって制約されている。そこで、本実施例のハンドル50では、ハンドルバー51L、51Rの基端側が車幅方向内側に延出されて、調整穴56L、56R(
図9参照)の間のスペースを利用して、ハンドルバー51L、51R及びハンドルホルダ71がアッパーブラケット31に固定されている(
図8参照)。これにより、調整穴56L、56Rの周辺の部品にハンドルバー51L、51Rが干渉することがなく、ハンドルバー51L、51Rの設計自由度が向上される。
【0017】
以下、
図4から
図9を参照して、ハンドルの詳細構成について説明する。
図4は、本実施例のアッパーブラケットの斜視図である。
図5は、本実施例のハンドルバーの斜視図である。
図6は、本実施例のハンドルホルダの斜視図である。
図7は、本実施例のハンドルの上面図である。
図8は、
図7のハンドルをA-A線で切断した断面図である。
図9は、
図7のハンドルをB-B線で切断した断面図である。
【0018】
図4に示すように、アッパーブラケット31の左右両側には、一対のフロントフォーク17L、17R(
図1参照)を固定する筒状のアッパークランプ32L、32Rが形成されている。アッパークランプ32L、32Rの側壁には上下方向にスリット33L、33Rが形成され、この側壁にはスリット33L、33Rに直交するように調整ボルト34L、34Rが設けられている。調整ボルト34L、34Rの締付によってスリット33L、33Rの間隔が狭められることで、アッパークランプ32L、32Rのクランプ穴に挿し込まれたフロントフォーク17L、17Rが固定されている。
【0019】
アッパークランプ32L、32Rの隣りには、ハンドルバー51L、51R及びハンドルホルダ71を固定するための4つの貫通穴35が形成されている。各貫通穴35の内周面は貫通方向の中間位置が最小穴径になるように傾斜しており、各貫通穴35には振動吸収材として筒状のゴムブッシュ36(
図8参照)が装着される。アッパーブラケット31の中央前側にはメインスイッチ18(
図1参照)を取り付けるための取付穴37が形成され、アッパーブラケット31の中央後側にはステアリングシャフト45(
図1参照)を固定するためのシャフト穴38が形成されている。
【0020】
図5に示すように、ハンドルバー51Rには、グリップが装着されるバー本体52Rと、アッパーブラケット31の上面に設置されるベース部53Rとが形成されている。ベース部53Rは、バー本体52Rの基端に連なる筒状部54Rと、筒状部54Rから車幅方向の内側に広がる板状部55Rとを有している。筒状部54Rは板状部55Rよりも上方に突出し、筒状部54Rの内側にはフロントフォーク17Rを露出させる調整穴56Rが形成されている。板状部55Rの前側及び後側には、アッパーブラケット31の貫通穴35に連なる一対の貫通穴57が形成されている。各貫通穴57の周囲には、ハンドルホルダ71の位置決め用に凹状部58が形成されている。
【0021】
板状部55Rの車幅方向の内側(図示左側)には、ハンドルホルダ71を固定するための貫通穴61が形成されている。貫通穴61の周囲には、ハンドルホルダ71の位置決め用に凹状部62が形成されている。板状部55Rの上面には、後述するハンドルホルダ71の外縁の切り欠き72R(
図6参照)に沿って隆起する隆起部63Rが形成されている。隆起部63Rは筒状部54Rから一対の貫通穴57の間に向かって延びている。なお、
図5では、右側のハンドルバー51Rについて説明しているが、左側のハンドルバー51Lも右側のハンドルバー51Rと同様な構成である。
【0022】
図6に示すように、ハンドルホルダ71の前側及び後側の外縁がアーチ状に切り欠かれ、ハンドルホルダ71の左側及び右側の外縁が対称的に切り欠かれて、ハンドルホルダ71が上面視X字状に形成されている。ハンドルホルダ71の前側の切り欠き72FRはメインスイッチ18(
図2参照)を避けるように形成され、ハンドルホルダ71の後側の切り欠き72REはステアリングシャフト45(
図2参照)を避けるように形成されている。ハンドルホルダ71の左右両側の切り欠き72L、72Rは、ハンドルバー51L、51Rの隆起部63L、63R(
図2参照)を避けるように形成されている。
【0023】
ハンドルホルダ71は、アッパーブラケット31の上面中央から一対のフロントフォーク17L、17Rに向かって上面視X字状に広がっている。ハンドルホルダ71の延出部分の下面には、ハンドルバー51L、51Rの貫通穴57に連なる有底のネジ穴(固定穴)73が形成されている(
図8参照)。ネジ穴73の周囲には、ハンドルバー51L、51Rの位置決め用に凸状部74が形成されている。ハンドルホルダ71の中央部分の下面には、ハンドルバー51L、51Rの貫通穴61に連なる有底のネジ穴75が形成されている(
図9参照)。ネジ穴75の周囲には、ハンドルバー51L、51Rの位置決め用に凸状部76(
図9参照)が形成されている。
【0024】
図7から
図9に示すように、アッパーブラケット31には、ハンドルバー51L、51R及びハンドルホルダ71が固定されている。上面視にてハンドルホルダ71の切り欠き72L、72Rにハンドルバー51L、51Rの隆起部63L、63Rが入り込んでいる(特に
図7参照)。断面視にてハンドルホルダ71の凸状部74がハンドルバー51L、51Rの凹状部58に入り込み(特に
図8参照)、断面視にてハンドルホルダ71の凸状部76がハンドルバー51L、51Rの凹状部62に入り込んでいる(特に
図9参照)。このように、ハンドルバー51L、51Rとハンドルホルダ71が位置決めされている。
【0025】
上記したように、アッパーブラケット31のアッパークランプ32L、32Rにはフロントフォーク17L、17Rの上部が固定されている。アッパークランプ32L、32Rの上方には、ハンドルバー51L、51Rの筒状部54L、54Rが位置付けられ、筒状部54L、54Rの調整穴56L、56Rからフロントフォーク17L、17Rが上方に露出している。断面視にて筒状部54L、54Rには調整穴56L、56Rが段状に形成され(特に
図9参照)、調整穴56L、56Rの下段側はフロントフォーク17L、17Rのアウターチューブまたはインナーチューブの上端部が入り込み可能な大きさに拡径されている。
【0026】
アッパーブラケット31の貫通穴35のそれぞれには上下一組のゴムブッシュ36が装着されている。ゴムブッシュ36はフランジ付きの筒状タイプであり、筒状部分は断面視円錐台状に形成されている。アッパーブラケット31の貫通穴35に上側からゴムブッシュ36が挿し込まれ、アッパーブラケット31の貫通穴35に下側からゴムブッシュ36が挿し込まれて、上下一組のゴムブッシュ36は筒状部分の先端同士が付き合わされている。上側のゴムブッシュ36のフランジはハンドルバー51L、51Rの支持面になっており、下側のゴムブッシュ36のフランジはボルト77の座面になっている。
【0027】
ハンドルホルダ71のネジ穴73はハンドルバー51L、51Rの貫通穴57を介してゴムブッシュ36の開口に連通している(
図8参照)。ゴムブッシュ36にはアッパーブラケット31の下面側からボルト(固定部材)77が挿し込まれ、アッパーブラケット31を貫通したボルト77がハンドルバー51L、51Rの貫通穴57を通じてハンドルホルダ71のネジ穴73に固定されている。ハンドルホルダ71のネジ穴73の周囲には凸状部74が形成されているため、凸状部74によってネジ穴73を上下方向に長く形成することができる。このように、ハンドルホルダ71及びハンドルバー51L、51Rがアッパーブラケット31にネジ止めされている。
【0028】
ハンドルホルダ71のネジ穴75はハンドルバー51L、51Rの貫通穴61に連通している(
図9参照)。ハンドルバー51L、51Rの貫通穴61には板状部55L、55Rの下面側からボルト79が挿し込まれ、ハンドルバー51L、51Rの貫通穴61を通じてボルト79がハンドルホルダ71のネジ穴75に固定されている。これにより、ハンドルホルダ71を介してハンドルバー51L、51Rの板状部55L、55Rが連結される。ハンドルバー51L、51Rがセパレートタイプでありながらハンドルバー51L、51Rの一体感が得られ、左右にハンドルを切ったときの全体の剛性感が増すことにより操作性が向上される。
【0029】
ハンドルホルダ71のネジ穴73、75は下面を開口した有底穴であるため、ハンドルホルダ71の上面にボルト77、79が露出することがない。ボルト77、79が目立ち難くなってハンドル周辺の外観性が向上される。また、ネジ穴73、75に水や砂埃等が入り難くなってボルト77、79への錆や傷の発生が抑えられる。ハンドルバー51L、51Rはゴムブッシュ36を介してアッパーブラケット31に浮動支持されている。アッパーブラケット31とハンドルバー51L、51Rの間にゴムブッシュ36が介在することで、アッパーブラケット31からハンドルバー51L、51Rに伝わる振動が低減される。
【0030】
また、ハンドルバー51L、51Rの板状部55L、55Rは筒状部54L、54Rよりも低く形成され、板状部55L、55Rの上面にハンドルホルダ71が設置されている。ハンドルホルダ71の厚みは、板状部55L、55Rの上面からの筒状部54L、54Rの突出量と略同じに形成されている。このため、板状部55L、55Rにハンドルホルダ71が重ねられても、ハンドルホルダ71が筒状部54L、54Rから大幅に突出することがない。ハンドルホルダ71の上面が低く抑えられ、ハンドル50がコンパクトに形成されることで、ハンドル周囲に設置されたメータ等が見易くなる。
【0031】
図10を参照して、アッパーブラケットに対するハンドルの組付け作業について説明する。
図10は、本実施例のハンドルの組付け構造の分解斜視図である。
【0032】
図10に示すように、先ずハンドルバー51L、51Rとハンドルホルダ71によってハンドル50が組み立てられる。このとき、ハンドルバー51L、51Rの隆起部63L、63Rとハンドルホルダ71の切り欠き72L、72Rをガイドにしてハンドルバー51L、51Rとハンドルホルダ71が位置合わせされる。ハンドルホルダ71の凸状部74、76(
図8及び
図9参照)がハンドルバー51L、51Rの凹状部58、62(
図8及び
図9参照)に入り込み、ハンドルホルダ71とハンドルバー51L、51Rが位置決めされる。ハンドルバー51L、51Rの貫通穴61に下方からボルト79が挿し込まれて、ハンドルホルダ71のネジ穴75にボルト79が固定される。
【0033】
次に、ハンドルホルダ71を介して一体化されたハンドルバー51L、51Rがアッパーブラケット31に固定される。このとき、アッパーブラケット31の各貫通穴35に対して上下両方からゴムブッシュ36が装着される。また、ハンドルバー51L、51Rの調整穴56L、56Rがフロントフォーク17L、17Rの上端に位置合わせされ、ハンドルバー51L、51Rの貫通穴57がゴムブッシュ36の開口に位置合わせされる。ゴムブッシュ36の開口に下方からボルト77が挿し込まれて、ハンドルバー51L、51Rの貫通穴57を通じてハンドルホルダ71のネジ穴73にボルト77が固定される。
【0034】
このように、セパレートタイプのハンドルバー51L、51Rがハンドルホルダ71を介して一体化された状態で、アッパーブラケット31に対してハンドルバー51L、51R及びハンドルホルダ71が組付けられている。ハンドルバー51L、51Rの組付け後の微調整や、ハンドルバー51L、51Rの位置合わせのために特殊な構造を必要とせず組付け性が向上されている。上記したように、ハンドルホルダ71からボルト77、79が露出しないため、ハンドル周辺の外観性が向上されると共に、ボルト保護用のカバー部品が不要になって部品構成が簡略化される。また、ナットが必要な通しボルトではなく、ナットが不要な押えボルトによって固定されて締付作業が容易になっている。
【0035】
以上、本実施例によれば、一対のフロントフォーク17L、17Rよりも車幅方向の内側で、ハンドルバー51L、51Rのベース部53L、53R及びハンドルホルダ71が重なり、ベース部53L、53R及びハンドルホルダ71がアッパーブラケット31に固定される。一対のフロントフォーク17L、17Rよりも車幅方向の外側に部品が設置されても、ハンドルバー51L、51Rが部品に干渉せず、この部品によってハンドルバー51L、51Rの設置位置、設置向き、バー形状等の設計自由度が制約されることがない。よって、ハンドルバー51L、51Rの設計自由度を向上させることができる。
【0036】
なお、本実施例では、一対のハンドルバーがハンドルホルダに連結される構成にしたが、一対のハンドルバーがハンドルホルダに連結されていなくてもよい。例えば、ハンドルホルダは、アッパーブラケットの上面中央から一対のフロントフォークに向かって広がり、アッパーブラケットの上面を覆うカバー部材として機能してもよい。この場合、一対のハンドルバーがアッパーブラケットに直に固定されてもよい。
【0037】
また、本実施例では、ハンドルバーに貫通穴が形成され、ハンドルホルダにネジ穴が形成されて、押えボルトによってアッパーブラケットにハンドルバー及びハンドルホルダが固定されているが、組み付け構成はこの構成に限定されない。ハンドルバー及びハンドルホルダに貫通穴が形成されて、通しボルトとナットによってアッパーブラケットにハンドルバー及びハンドルホルダが固定されてもよい。
【0038】
また、本実施例では、ハンドルホルダのネジ穴が有底穴によって形成される構成にしたが、ハンドルホルダのネジ穴は貫通穴によって形成されてもよい。
【0039】
また、本実施例では、ハンドルホルダのネジ穴の周囲に凸状部が形成され、ハンドルバーの貫通穴の周囲に凹状部が形成されたが、凸状部及び凹状部はこの構成に限定されない。ハンドルホルダのネジ穴の周囲及びベース部の貫通穴の周囲の合わせ面のうち、いずれか一方の合わせ面に凸状部が形成され、いずれか他方の合わせ面に凸状部が入り込む凹状部が形成されていればよい。よって、ハンドルホルダのネジ穴の周囲に凹状部が形成され、ハンドルバーの貫通穴の周囲に凹状部に入り込む凸状部が形成されてもよい。
【0040】
また、本実施例では、振動吸収材としてゴムブッシュを介してハンドルバーがアッパーブラケットに支持される構成にしたが、振動吸収材はゴムブッシュに限定されない。振動吸収材は、アッパーブラケットからハンドルバーに伝わる振動を吸収可能な材料で形成されればよく、例えば、バネ等の弾性体、スポンジ等の発泡体によって形成されていてもよい。
【0041】
また、本実施例では、一対の調整穴よりも車幅方向の内側でベース部及びハンドルホルダがアッパーブラケットに固定部材によって固定されているが、固定部材による固定位置はこの構成に限定されない。一対の調整穴の中心に対して車幅方向の内側でベース部及びハンドルホルダがアッパーブラケットに固定部材によって固定されていればよい。
【0042】
また、本実施例のハンドルは、バギータイプの自動三輪車等の他の鞍乗型車両にも適宜適用することができる。ここで、鞍乗型車両とは、ライダーがシートに跨った姿勢で乗車する車両全般に限定されず、ライダーがシートに跨らずに乗車するスクータタイプの車両も含んでいる。
【0043】
以上の通り、本実施例のハンドル(50)は、一対のフロントフォーク(17L、17R)の上端側を連ねるアッパーブラケット(31)に設置されたハンドルであって、アッパーブラケットの上面に設置されるベース部(53L、53R)が形成されたハンドルバー(51L、51R)と、アッパーブラケットの上面中央から一対のフロントフォークに向けて広がるハンドルホルダ(71)と、を備え、ベース部及びハンドルホルダがアッパーブラケットに固定部材(ボルト77)によって固定されている。この構成によれば、一対のフロントフォークよりも車幅方向の内側で、ハンドルバーのベース部及びハンドルホルダが重なり、ベース部及びハンドルホルダがアッパーブラケットに固定される。一対のフロントフォークよりも車幅方向の外側に部品が設置されても、ハンドルバーが部品に干渉せず、この部品によってハンドルバーの設置位置、設置向き、バー形状等の設計自由度が制約されることがない。よって、ハンドルバーの設計自由度を向上させることができる。
【0044】
本実施例のハンドルにおいて、ハンドルホルダには固定穴(ネジ穴73)が形成され、ベース部には貫通穴(57)が形成されており、アッパーブラケットを下面側から貫通した固定部材が貫通穴を通じて固定穴に固定されている。この構成によれば、アッパーブラケットの下面側から固定部材によってハンドルバー及びハンドルホルダが固定されるため、固定部材が目立たなくなってハンドル周辺の外観性が向上される。
【0045】
本実施例のハンドルにおいて、固定穴は有底穴である。この構成によれば、上面視にてハンドルホルダから固定部材が露出しなくなるため、固定穴に水や砂埃等が入り難くなる。
【0046】
本実施例のハンドルにおいて、ハンドルホルダの固定穴の周囲及びベース部の貫通穴の周囲の合わせ面のうち、いずれか一方の合わせ面に凸状部(74)が形成され、いずれか他方の合わせ面に凸状部が入り込む凹状部(58)が形成されている。この構成によれば、ハンドルホルダとハンドルバーが位置決めされて組付け性が向上される。
【0047】
本実施例のハンドルにおいて、ハンドルバーは、セパレートタイプの一対のハンドルバーであり、ハンドルホルダは、一対のハンドルバーのベース部を連結する。この構成によれば、セパレートタイプのハンドルバーでありながら、一対のハンドルバーの一体感が得られて操作性が向上される。
【0048】
本実施例のハンドルにおいて、ハンドルホルダの外縁には切り欠き(72L、72R)が形成され、ベース部の上面には切り欠きに沿った隆起部(63L、63R)が形成されている。この構成によれば、ハンドルホルダの切り欠きとベース部の隆起部をガイドにして、ベース部にハンドルホルダが位置合わせされて組付性が向上される。
【0049】
本実施例のハンドルにおいて、一対のハンドルバーはアッパーブラケットに振動吸収材(ゴムブッシュ36)を介して支持されている。この構成によれば、振動吸収材によってアッパーブラケットからハンドルバーに伝わる振動を低減することができる。
【0050】
本実施例のハンドルにおいて、ベース部にはフロントフォークを露出させる調整穴(56L、56R)が形成され、当該調整穴の中心に対して車幅方向の内側でベース部及びハンドルホルダがアッパーブラケットに固定部材によって固定されている。この構成によれば、フロントフォークの調整穴の車幅方向の内側のスペースを利用して、ハンドルバーの設計自由度を制約することなく、アッパーブラケットに対してハンドルバーを設置することができる。
【0051】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0052】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0053】
17L、17R:フロントフォーク
31 :アッパーブラケット
36 :ゴムブッシュ
50 :ハンドル
51L、51R:ハンドルバー
53L、53R:ベース部
56L、56R:調整穴
57 :貫通穴
58 :凹状部
63L、63R:隆起部
71 :ハンドルホルダ
72L、72R:切り欠き
73 :ネジ穴
74 :凸状部
77 :ボルト(固定部材)